特許拒絶査定不服審判
2022-004288
自動車における表示デバイスの制御方法
- 審判番号
- 2022-004288
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-540672外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月23日
- 審決日
- 2023年01月13日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】弁理士法人森本国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-540672「自動車における表示デバイスの制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月18日国際公開、WO2019/072481、令和 2年12月17日国内公表、特表2020-537273、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,2018年(平成30年)9月12日(パリ条約による優先権主張 2017年10月9日 ドイツ)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
令和3年 4月16日付け:拒絶理由通知
令和3年 9月 7日 :意見書,手続補正書の提出
令和3年11月17日付け:拒絶査定(原査定)
令和4年 3月23日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出
令和4年 9月27日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知
令和4年11月28日 :意見書,手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は,次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1-2,5,6,8,9に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり,
この出願の請求項3,7に係る発明は,以下の引用文献1および2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,
この出願の請求項4に係る発明は,以下の引用文献1および3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2010-256878号公報
引用文献2:特開2015-204616号公報
引用文献3:特開2004-219664号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1~8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」~「本願発明8」という。)は,令和4年11月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される,次のとおりの発明である。
「【請求項1】
自動車(19)の表示デバイス(1,2)を制御する方法であって,
自動車(19)の周囲の環境に属し,かつユーザ(17)の視野内にある少なくとも1つの周囲領域に関連する環境データを,自動車のセンサシステム(4)によって検出し,
情報源(10,11,13)によってユーザ(17)に出力される少なくとも1つの情報を提供し,
前記情報を反映する情報表示(14,15,16)とユーザ(17)にとっての周囲領域とが少なくとも部分的に重ねられた表現(27)を,表示デバイス(1,2)によって可視化し,そのときに,情報表示の種類および/または情報表示(14,15,16)が可視化される位置および/または方向を,前記環境データに依存させ,
周囲領域を記述する3次元環境モデルを環境データから決定し,3次元または2次元の情報表示を,前記情報および環境モデルの関数として生成するとともに,前記環境モデルに関連した座標系において位置決めおよび/または方向付けし,その後に物体に前記情報を投影することによって前記情報表示(14,15,16)を生成し,
そのときに,自動車などの他の道路利用者の距離または相対速度を前記情報として取得し,環境モデルにおいて,それぞれの自動車の表面などの物体(8,9)を選択し,そして前記2次元の情報表示をピクセルまたはベクトル表示として提供して対応領域にテクスチャとして適用することによって,前記2次元の情報表示を前記表面に配置し,
かつ,そのときに,前記物体としての他の道路使用者である自動車(9)に関する情報を,自動車(19)に備えられた通信装置(12)を用いて,前記他の道路使用者である自動車(9)の前記情報源(11)からの通信によって提供することを特徴とする自動車における表示デバイスの制御方法。
【請求項2】
自動車(19)とは別個に設計され,かつユーザ(17)の視野内となるように頭部(18)に着用されるように設計された表示デバイス(1)を使用することを特徴とする請求項1記載の自動車における表示デバイスの制御方法。
【請求項3】
表示デバイス(1)が位置検出装置(25)を有し,この位置検出装置(25)によって,自動車に固定された基準位置および/または基準方向に対する,または相対的な位置および/または相対的な方向が決められる参照情報に対する,表示デバイス(1)の相対的な位置および/または相対的な方向を記録することを特徴とする請求項2記載の自動車における表示デバイスの制御方法。
【請求項4】
ビデオベースの表示デバイス(1,2)を使用して,周囲領域の画像をセンサシステム(4)または別のセンサシステム(24)により取り込んで表示するか,または 部分的に透明な表示デバイス(1,2)を使用して,この表示デバイス(1,2)によって周囲領域をユーザに対して少なくとも部分的に可視化するか,または
仮想網膜ディスプレイを表示デバイス(1,2)として使用して,情報表示を網膜に投影することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の自動車における表示デバイスの制御方法。
【請求項5】
環境データを評価することにより,少なくとも1つの物体(8,9)または少なくとも1つの位置(7)を認識し,出力する情報を,認識した物体(8,9)の特性の関数または位置(7)の関数として提供することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の自動車における表示デバイスの制御方法。
【請求項6】
物体(8,9)を,環境データを評価することによって認識し,そのときに,その評価を,物体(8,9)の位置および/または方向と,情報表示(14,15,16)の種類と,情報表示(14,15,16)が可視化される位置および/または方向とのうちの少なくともいずれかに応じて行うことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の自動車における表示デバイスの制御方法。
【請求項7】
環境データまたは環境モデルを,自動車の外部におけるデバイス(26)に提供し,このデバイス(26)によって,情報表示(14,15,16)の種類と,情報表示(14,15,16)が可視化される位置および/または方向とのうちの少なくともいずれかを特定することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項記載の自動車における表示デバイスの制御方法。
【請求項8】
周囲領域を検出するためのセンサシステム(4)と表示デバイスとを備えて,請求項1または請求項4から7までのいずれか1項に記載の方法を実行するように設定されていることを特徴とする自動車。」
第4 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には,図面とともに,次の記載がある(下線は当審による。以下同様。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,所定情報を表す情報像を運転者から見た車両外の風景に重畳して表示する情報表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,所定情報を表す情報像を運転者から見た車両外の風景に重畳して表示する情報表示装置として,例えば下記特許文献1に開示される「車上表示装置」がある。この技術では,2つの車載カメラで撮影した運転者の顔を画像上で認識して視点の位置を検出し,視点の位置変化に対して表示情報の位置を移動させたり大きさを調整する。これにより,運転者の姿勢が変化しても重畳表示される情報に位置ずれが生じるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開平6-247184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,この開示技術によると当該車両の挙動や姿勢までは考慮されていない。そのため,例えば,走行中の路面に凹凸等が存在していた場合には,当該車両が上下動したり,バウンドしたりして,車両外の風景が変化し得る。このような場合には,一般に,運転者とともに車載カメラも同様に上下動するため,重畳表示される情報の位置ずれ等を防止することは難しい。
【0005】
また,当該車両が比較的勾配(傾斜)の大きな坂を上ったり下ったりする場合には,車両の前方部分自体が上下動することから,前方風景が大きく変化することに起因して,表示情報の位置と重畳される風景中の表示位置との位置関係が変動し得る。そのため,単に,運転者の視点の位置変化だけに基づいて,表示情報の位置を移動させたり大きさを調整したとしても,このような風景の変化に追従した重畳表示は困難である。
【0006】
つまり,上記特許文献1に開示される「車上表示装置」では,当該車両の挙動,姿勢や重畳される風景中の表示位置の変動等を考慮すると,重畳表示の位置精度を高めることは難しいという問題がある。
【0007】
本発明は,上述した課題を解決するためになされたもので,重畳表示の位置精度を向上し得る情報表示装置を提供することを目的とする。」
イ 図1
[図:0001393846000001.jpg]
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,車両搭載型のナビゲーション装置のディスプレイおよびその表示制御に,本発明の情報表示装置を適用した実施形態を各図に基づいて説明する。まず,本ナビゲーション装置の構成例を図1を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように,本ナビゲーション装置は,ナビゲーションECU10を中心に,入力装置11,GPS12や車速センサ13等の各種センサ,HMD17,地図データベース20,顔向き認識ECU30,車両姿勢検出ECU40,モニタECU50等によって構成されている。
【0017】
ナビゲーションECU10は,CPU,半導体メモリ,入出力インタフェース,LANインタフェース等(以下「CPU等」)により構成される電子制御装置で,ナビゲーション装置全体を制御する機能を有する。基本的な機能は,地理的最短経路を案内する機能,つまりナビゲーション機能で,ナビゲーション部10aおよび車両位置検出部10bにより実現されている。なお,このナビゲーション部10aや車両位置検出部10bは,所定のプログラムが半導体メモリにロードされてCPUが実行することにより機能する。
【0018】
即ち,ナビゲーション部10aでは,車両位置検出部10bにより得られた当該車両の現在位置(出発地)から,入力装置11より入力された目的地までの最短距離経路を地図データベース20から得られる地図データに基づいて探索した後,当該最短経路とその案内情報をモニタECU50に出力する。これにより,当該車両の運転者は,モニタECU50によるモニタ画像や合成音声によって,現在地から目的地に至るまでの経路案内を受けられる。なお,出発地は入力装置11により入力しても良い。
【0019】
本ナビゲーション装置は,このようなナビゲーションECU10の基本的な機能に加えて,例えば,走行中の路面の道路標示やナビゲーション機能による案内表示等(所定情報を表す情報像)を運転者から見た車両外の風景に重畳して表示する機能(以下「重畳表示機能」)を備えている。この機能も,ナビゲーション部10aと同様に,車両位置検出部10b,表示情報取得部10c,位置関係検出部10d,3D画像変換部10e,表示位置決定部10fや表示画像生成部10gに対応する各種プログラムがそれぞれ半導体メモリにロードされてCPUが実行することにより実現される。
【0020】
GPS12は,当該車両の現在位置を緯度および経度からなる絶対座標値により検出する機能を有するもので,人工衛星を利用した全地球測位システムである。また,車速センサ13は,当該車両の速度(車速)に比例した周期で車速パルスを出力するもので,自車の車速を検出する。ジャイロ14は角速度を検出する機能を有するもので,GPS12が利用できない場合に自車の進行方向を検出可能にしている。地磁気を検出して進行方位を検出する地磁気センサでも良い。なお,これらは,例えば,CAN等の所定の通信プロトコルによる車載LANを介してナビゲーションECU10にデータを送信している。
【0021】
リアカメラ15は,当該車両の後方画像,つまり自車が走行している道路を撮影するもので,この映像に含まれるレーンマーク(車線境界線)の画像情報を車両位置検出部10bに出力することで自車の走行レーン(車線)位置を特定可能にしている。このリアカメラ15も,車載LANを介してナビゲーションECU10とデータ通信をしている。なお,リアカメラ15による走行レーンの画像認識技術は,公知技術であるので具体的な構成等については説明を省略する。
【0022】
HMD17は,当該車両の運転者の頭部に装着可能に構成されるヘッドマウントディスプレイで,本実施形態では,眼鏡型で運転者の片眼の網膜に直接結像を投影する網膜投影タイプを用いる。頭部装着ディスプレイであれば,眼鏡型で小型のハーフミラー等により虚像を投影する虚像投影タイプであっても良い。
【0023】
HUD18は,当該車両のフロントガラスに映像を投影可能にダッシュボード上部に構成されるヘッドアップディスプレイで,本実施形態では,運転者の視界(車両前方視界)のほぼ全面に亘って車外の風景に重なるように表示(重畳表示)可能に構成されている。
【0024】
なお,HMD17,HUD18は,通常,択一的に選択されるもので,いずれか一方が当該車両に設けられる。またHMD17やHUD18自体は,いずれも公知技術により構成されているので,構成等の説明は省略する。これらとナビゲーションECU10とは,例えば,専用の高速シリアルデータバスにより接続されて,大容量の画像データを高速に転送可能にしている。
【0025】
地図データベース20は,CDやDVD等からなる比較的大容量の,磁気や光による情報記憶媒体で,ナビゲーション部10aによる経路探索や経路案内に必要な地図データを蓄積している。本実施形態では,例えば,道路,信号機,標識(歩道橋や建物等に設けられた道路標識も含む),標示(路面に表示された道路標示),建物,河川,その他の情報を蓄積しており,その他,道路に関する情報として,道路種別(高速道路,主要幹線道路,細街路等),道路幅,車線数,傾斜角度,制限速度,通行方向制限,通行制限時間帯等,また信号機や標識の高さ,さらにはビルや鉄塔等の建造物の高さ情報も含んでいる。
【0026】
また,本実施形態では,道路のレーン情報として,路面に標示される線の緯度・経度による絶対座標値,線色(白色,黄色等),線種(点線,実線,二重線等)等が地図データベース20に蓄積されている。地図データベース20は,ナビゲーションECU10に対して,例えば,パラレルデータバスにより接続されている。
【0027】
顔向き認識ECU30は,顔(頭部)を中心とした運転者の上半身を撮影可能な図略の車載カメラを複数備えた電子制御装置で,ナビゲーションECU10と同様に,CPU等を備えている。そして,所定の画像処理プログラムにより,撮影された画像情報に基づいて運転者の両眼間の中心を視点として,その視点が移動する方向(角度)・速度に基づいて,当該運転者の顔の向き(顔向き)を検出している。なお,顔向き認識ECU30は,特許請求の範囲に記載の「顔向き情報取得手段」に相当し得るものである。
【0028】
本実施形態では,顔向きを検出する要素として,例えば,頭部の3種類の回転量(ヨー・ピッチ・ロール)と,頭部の3種類の移動量(回転を伴わない,前後方向・左右方向・上下方向の平行移動量)を用いている。つまり,後述する6種類(ヨー回転量,ロール回転量,ピッチ回転量,前後移動量,左右移動量および上下移動量)のパラメータにより運転者の顔向き情報を検出している。
【0029】
車両姿勢検出ECU40は,当該車両の挙動を検出可能な図略のセンサを複数備えた電子制御装置で,ナビゲーションECU10と同様に,CPU等を備えている。本実施形態では,センサとして,例えば,ジャイロ,Gセンサ,ヨーレイトセンサ等の当該車両の回転量や移動量を検出可能なものを用いており,当該車両の挙動を検出することで,結果的に当該車両の姿勢情報を検出している。つまり,前述した運転者の顔向きと同様に,6種類(ヨー回転量,ロール回転量,ピッチ回転量,前後移動量,左右移動量および上下移動量)のパラメータにより車両の姿勢情報を検出している。これらについても後述する。なお,車両挙動検出ECU40は,特許請求の範囲に記載の「姿勢情報取得手段」に相当し得るものである。」
エ 図3
[図:0001393846000002.jpg]
オ 「【0044】
このようにナビゲーション装置を構成することによって,図3に示すように,ナビゲーションECU10による重畳表示処理は行われる。この処理は,例えば,ナビゲーションECU10の電源が投入された直後から,前述したナビゲーション部10aと共に起動され,半導体メモリに確保される作業領域やレジスタのフラグ等をクリアするといった所定の初期化処理後,以下説明するステップS101~S119を,例えば100ミリ秒ごとに繰り返し実行している。
【0045】
図3に示すように,重畳表示処理では,まずステップS101により車両位置検出処理が行われる。この処理は自車位置を特定するもので,前述の車両位置検出部10bにより行われる。本実施形態では,車両Kの前後方向位置と左右方向位置により自車の現在の絶対座標値と現在走行している道路のレーン位置とを特定する。
【0046】
ステップS103では,表示情報取得処理が行われる。この処理は,重畳表示する対象物Jの情報(所定情報)を地図データベース20等から取得するもので,前述の表示情報取得部10cにより行われる。当該車両Kが現在走行している道路の路面標示(例えば,ゼブラマーク(歩行者横断指導線))を対象物Jとして地図データベース20から取得する場合には,ステップS101により取得した自車位置に基づいて自車の前方近くに存在する当該ゼブラマークに関する緯度・経度の絶対座標値情報を取得する。
【0047】
次のステップS107では,ディスプレイタイプ判定処理が行われる。この処理は,予めシステム設定されているナビゲーションECU10のハードウェア構成情報から,当該ナビゲーションECU10に接続されているディスプレイがHMDやHUDであるか否かを判断する。HMD17やHUD18が接続されている場合(S107;Yes)には,顔向き検出処理を行う必要があるため,続くステップS109に処理を移行する。
【0048】
これに対し,HMD17およびHUD18のいずれもナビゲーションECU10に接続されていない場合には(S107;No),ナビゲーションECU10のモニタECU50に出力するので,続くステップS109による顔向き検出処理の必要はなく,それをスキップしてステップS111に処理を移行する。
【0049】
ここでは,HMD17がナビゲーションECU10に接続されている場合を想定して,ステップS109による顔向き検出処理を行う。この処理は,顔向き認識ECU30により行われるもので,前述したように,運転者Dの顔の向きを6種類(ヨー回転量,ロール回転量,ピッチ回転量,前後移動量,左右移動量および上下移動量)のパラメータで顔向き情報を検出する。ここでは,運転者Dの顔向きが上向き方向にだけ10°回転(ピッチの回転量が+10°)していたとする。なお,このS109は,特許請求の範囲に記載の「顔向き情報取得手段」に相当し得るものである。
【0050】
続くステップS111では,車両姿勢検出処理が行われる。この処理は,車両姿勢検出ECU40により行われるもので,前述したように,当該車両Kの挙動を6種類(ヨー回転量,ロール回転量,ピッチ回転量,前後移動量,左右移動量および上下移動量)のパラメータで姿勢情報を検出する。ここでは,車両Kが前方に下向きにだけ5°回転(ピッチの回転量が-5°)していたとする。なお,このS111は,特許請求の範囲に記載の「姿勢情報取得手段」に相当し得るものである。
【0051】
次のステップS113では,位置関係検出処理が行われる。この処理は,対象物Jが車両外の風景中で存在すべき実際の位置と自車位置(当該車両Kの位置)との関係を位置情報として取得するもので,前述の位置関係検出部10dにより行われる。先の例では,対象物Jと当該車両Kの位置Qとの位置関係として,例えば,離隔距離Lを50m,道路の傾斜角度θvを登り3°とすると,その傾斜角度分の高低差Vとなる。また,車両Kの進行方向(前述したX軸)に対して正面に位置し左右差Hを0mとする。なお,このステップS113は,特許請求の範囲に記載の「位置情報取得手段」に相当し得るものである。
【0052】
ステップS114では,3D画像変換処理が行われる。この処理は,前述した3D画像変換部10eにより行われるもので,自車位置と対象物Jとの離隔距離Lに基づいて,運転者Dの視線から立体形状に見えるように画像変換する。先のゼブラマークの例では,平面的な矩形状のゼブラマークを離隔距離L(例えば50m)に基づいて,運転者Dの視線から台形状に見えるように三次元画像に変換する。
【0053】
ステップS115では,表示位置決定処理が行われる。この処理は,表示位置決定部10fにより行われるもので,図1に示すように,顔向き認識ECU30(S109)による顔向き情報,車両姿勢検出ECU40(S111)による姿勢情報および位置関係検出部10d(S113)による位置情報に基づいて,三次元画像に変換された対象物Jの表示位置を決定する。具体的には,6種類(ヨー回転量,ロール回転量,ピッチ回転量,前後移動量,左右移動量および上下移動量)のパラメータごとにそれぞれ加算演算を行う。なお,離隔距離Lは前後移動量に加算され,左右差Hは左右移動量に加算される。また,高低差Vは,距離として得られている場合には上下移動量に加算され,傾斜角度として得られている場合にはピッチ回転量に加算される。
【0054】
例えば,先の場合,運転者Dの顔向きが上向き方向にだけ10°回転(ピッチの回転量が+10°)し,車両Kが前方に下向きにだけ5°回転(ピッチの回転量が-5°)し,さらに対象物Jと車両Kとの位置関係として道路の傾斜角度θvが登り3°であるので,Y軸回り(ピッチ)の回転量は合計で+8°(=10+(-5)+3)であり,X軸回り(ロール)の回転量およびZ軸回り(ヨー)の回転量はいずれも0(ゼロ)°である。このため,対象物JをY軸回り(ピッチ)に+8°だけ,上向きに回転させた位置をHMD17における表示位置に決定する。この例では,理解を容易にするため,運転者Dの顔向きのズレ方向と車両Kの姿勢のズレ方向を同じY軸回り(ピッチ)方向に設定している。
【0055】
次のステップS117では,表示画像生成処理が行われる。この詳細は,図4に記載されているので,ここからは,図4および図5を参照して説明する。なお,このステップS117と次のステップS119は,特許請求の範囲に記載の「表示制御手段」に相当し得るものである。」
(2)引用文献1記載発明
上記(1)より,特に,下線部に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両搭載型のナビゲーション装置のディスプレイの表示制御方法であって,
ナビゲーション装置は,ナビゲーションECU10を中心に,入力装置11,GPS12や車速センサ13等の各種センサ,HMD17,地図データベース20,顔向き認識ECU30,車両姿勢検出ECU40,モニタECU50等によって構成されており,
ナビゲーション装置は,基本的な機能に加えて,例えば,走行中の路面の道路標示やナビゲーション機能による案内表示等(所定情報を表す情報像)を運転者から見た車両外の風景に重畳して表示する機能(以下「重畳表示機能」)を備えており,
車速センサ13は,自車の車速を検出しており,
ジャイロ14は角速度を検出する機能を有するもので,GPS12が利用できない場合に自車の進行方向を検出可能にしており,
リアカメラ15は,当該車両の後方画像,つまり自車が走行している道路を撮影するもので,この映像に含まれるレーンマーク(車線境界線)の画像情報を車両位置検出部10bに出力することで自車の走行レーン(車線)位置を特定可能にしており,
HMD17は,当該車両の運転者の頭部に装着可能に構成されるヘッドマウントディスプレイであり,HMD17は,車両に設けられており,
顔向き認識ECU30は,運転者の両眼間の中心を視点として,その視点が移動する方向(角度)・速度に基づいて,当該運転者の顔の向き(顔向き)を検出しており,
車両姿勢検出ECU40は,当該車両の挙動を検出可能な図略のセンサを複数備えた電子制御装置で,センサとして,例えば,ジャイロ,Gセンサ,ヨーレイトセンサ等の当該車両の回転量や移動量を検出可能なものを用いており,当該車両の挙動を検出することで,結果的に当該車両の姿勢情報を検出している,
ナビゲーション装置におけるナビゲーションECU10による重畳表示処理であって,
まずステップS101により車両位置検出処理が行われ,
ステップS103では,表示情報取得処理が行われ,この処理は,重畳表示する対象物Jの情報(所定情報)を地図データベース20等から取得するものであり,
次のステップS107では,ディスプレイタイプ判定処理が行われ,この処理は,予めシステム設定されているナビゲーションECU10のハードウェア構成情報から,当該ナビゲーションECU10に接続されているディスプレイがHMDやHUDであるか否かを判断しており,
HMD17がナビゲーションECU10に接続されている場合,ステップS109による顔向き検出処理を行い,
続くステップS111では,車両姿勢検出処理が行われ,
次のステップS113では,位置関係検出処理が行われ,
ステップS114では,3D画像変換処理が行われ,この処理は,自車位置と対象物Jとの離隔距離Lに基づいて,運転者Dの視線から立体形状に見えるように画像変換するものであり,
ステップS115では,表示位置決定処理が行われ,この処理は,顔向き認識ECU30(S109)による顔向き情報,車両姿勢検出ECU40(S111)による姿勢情報および位置関係検出部10d(S113)による位置情報に基づいて,三次元画像に変換された対象物Jの表示位置を決定するものであり,
次のステップS117では,表示画像生成処理が行われる
車両搭載型のナビゲーション装置のディスプレイの表示制御方法。」
2 引用文献2
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献2には,図面とともに,次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,そのいくつかの実施形態において,ヘッドマウントディスプレイの配向に関し,より具体的には,これらに限定されないが,車両でのヘッドマウントディスプレイの配向および提示の調整に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイまたはヘルメットマウントディスプレイは,どちらもHMDと略記され,頭部に装着するまたはヘルメットの一部としての表示デバイスであり,片目(単眼HMD)または両目(双眼HMD)の前方に小型の表示光学装置を有する。光学ヘッドマウントディスプレイ(OHMD)もあるが,これは,投影画像を反射させる能力,ならびにユーザがそれを通して見ることを可能にする能力を有する,着用可能なディスプレイである。
【0003】
代表的なHMDは,ヘルメット,眼鏡(データ眼鏡としても知られる),またはバイザーに埋め込まれたレンズおよび半透明の鏡を伴う,1つまたは2つの小型ディスプレイを有する。表示ユニットは,小型化されており,CRT,LCD,シリコン上液晶(LCos),またはOLEDが挙げられる。一部の販売業者は,総解像度および視野を高めるために,多数のマイクロディスプレイを用いている。
【0004】
拡張現実(AR)オブジェクトをHMD上に提示するとき,提示されるARオブジェクトは,ユーザの頭部の移動と相関させなければならない。これは,通常,HMD上に位置する画像センサ(複数可)および/または行動検出器(複数可)を使用して周囲に対するHMDの配向を計算し,その配向に基づいて,HMD上のARオブジェクトの提示を調整することによって確立される。
【0005】
HMDは,データ,運航指示,統計,リアルタイムメッセージ,および通知によって,運転経験を高めるために使用することができるので,運転しながらHMDを使用することは,多くの利点を有する。
【0006】
例えば,Nissan 3Eヘッドマウントディスプレイは,ユーザが自動車の内部構造に関する様々な細かい場所を見ることを可能にし,一方で,従来のダッシュボードの一群のメーター類は,通常通りに他のレイアウトを運転者に提供する。」
イ 図8
[図:0001393846000003.jpg]
ウ 「【0071】
以下,図8を参照すると,該図は,本発明のいくつかの実施形態による,1組のサイズ既知マーカーを使用してHMDの提示を動的に配向する方法を概略的に表す流れ図である。また,図9を参照すると,該図は,本発明のいくつかの実施形態による,1組のサイズ既知マーカーを使用してHMDの提示を動的に配向するためのシステムの概略図である。
【0072】
最初に,801で示されるように,既知の配設で配設される1組のサイズ既知マーカー211を備える運転者制御領域208のHMD画像を取り込むために,画像センサ202が使用される。マーカーは,例えば,画像処理アルゴリズムによって使用可能な,X字状もしくはO字状等の形状,数字,および/または任意の他のマークであり得る。マーカーは,画像センサ204で見ることができる運転者制御領域208の任意の場所に位置付けられ,配設され得る。
【0073】
次いで,802で示されるように,HMD画像の中の各マーカー211の見かけの位置およびサイズを識別するために,HMD画像の解析が行われる。各マーカー211の見かけの位置およびサイズは,例えば,SIFT過程のような,画像の中の局所的な特徴を検出し,説明するように設計されたアルゴリズムを使用することによって検出され得る。
【0074】
次いで,803で示されるように,各マーカー211の見かけの位置およびサイズに基づいて,車両207に対するHMDデバイス201の配向が計算される。これは,例えば三角測量によって,オブジェクトの位置に基づいてカメラの相対位置を計算するように設計された,解析および計算モジュール205で実現されるアルゴリズムによって行われ得る。
【0075】
最後に,804で示され,上で説明されるように,配向に基づいて,HMDデバイス201のディスプレイ上のデータの提示が調整される。」
3 引用文献3
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献3には,図面とともに,次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,車内のディスプレイ装置に各種情報を表示するものであり,透過型表示部を有するヘッドマウントディスプレイ装置を用いることで,運転者が車外を見る視野内に各種情報が表示されるようにした情報表示システム及び情報表示方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,車内のインストルメントパネルの上部又はセンターコンソール等に,ディスプレイ装置を設け,このディスプレイ装置の画面に渋滞情報及びナビゲーション装置が検索した地図画面等の各種情報を表示するようにした情報表示システムが存在している。
【0003】
また,情報表示システムは上記形態以外にも種々の形態がある。例えば,フロントウインドウの一部に設けたコンバイナに投射機が投射した情報の表示を行うヘッドアップディスプレイ装置を用いたもの,及び,装着状態でも外界が見える透過型表示部を有するヘッドマウントディスプレイ装置を用いたもの等がある。
【0004】
なお,ヘッドアップディスプレイ装置を用いた情報表示システムは,下記の特許文献1で開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9-2102号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
インストルメントパネル又はセンターコンソール等にディスプレイ装置を設けたシステムでは,運転者は表示される情報を見る場合,視線を車両前方からディスプレイ装置へ移す必要があるため,運転者の視線移動に対する負担が大きいと云う問題がある。また,ヘッドアップディスプレイ装置を用いた情報表示システムの場合,コンバイナに情報が表示されるため,運転者の視線移動に対する負担は軽減されるものの,コンバイナの表示解像度は一般的なディスプレイ装置に比べて低いため,ナビゲーション装置のルート案内に係る地図のような細かい画像を適切に表示するのが困難であると云う問題がある。
【0007】
さらに,ヘッドマウントディスプレイ装置を用いた情報表示システムでも,地図画面のような詳細な画像を表示するのは困難であると共に,情報の表示の仕方によっては運転者の視界を妨げることもある。
【0008】
一方,上述した3タイプの情報表示システムは,車両の現在位置に応じた情報を表示するに留まっており,運転者の見ている方向に応じた情報を表示することまでは実現できていないのが現状である。また,これら3タイプの表示システムは,車両前方に障害物等が存在する場合,障害物が存在することを適切に警告することにも対応できていない。
【0009】
本発明は,斯かる事情に鑑みてなされたものであり,ヘッドマウントディスプレイ装置を用いてヘッドマウントディスプレイ装置の向きを検出することで,運転者の視線方向に応じた情報を表示可能にした情報表示システムを提供することを目的とする。
【0010】
また,本発明は,ナビゲーション装置が検索したルートの道路が運転者の視線方向に存在する場合,検索に係る道路に応じた印をヘッドマウントディスプレイ装置の透過表示部に表示することで,地図を表示しなくても検索ルートに該当する道路を認識できるようにした情報表示システムを提供することを目的とする。」
第5 対比・判断
1 本願発明1
(1)対比
本願発明1と,引用発明とを対比する。
ア 引用発明において,「車両搭載型のナビゲーション装置のディスプレイの表示制御方法であって,ナビゲーション装置は,ナビゲーションECU10を中心に,入力装置11,GPS12や車速センサ13等の各種センサ,HMD17,地図データベース20,顔向き認識ECU30,車両姿勢検出ECU40,モニタECU50等によって構成されており,」「HMD17は,当該車両の運転者の頭部に装着可能に構成されるヘッドマウントディスプレイであり,HMD17は,車両に設けられて」いるとされている。
ここで,引用発明の「車両」,「HMD17」は,それぞれ,本願発明1の「自動車」,「表示デバイス」に相当するといえる。
したがって,本願発明1と引用発明とは,「自動車」「の表示デバイス」「を制御する方法であ」る点で共通しているといえる。
イ 引用発明は,「リアカメラ15は,当該車両の後方画像,つまり自車が走行している道路を撮影するもので,この映像に含まれるレーンマーク(車線境界線)の画像情報を車両位置検出部10bに出力することで自車の走行レーン(車線)位置を特定可能にして」いるとされている。
ここで,引用発明の「自車が走行している道路」は,本願発明1の「自動車」「の周囲の環境に属し,」「周囲領域に関連する環境データ」に相当するから,引用発明の「リアカメラ15」は,本願発明1の「自動車」「の周囲の環境に属」する「周囲領域に関連する環境データ」を「検出」する「自動車のセンサシステム」に相当するといえる。
したがって,本願発明1と引用発明とは,「自動車」「の周囲の環境に属し,」「少なくとも1つの周囲領域に関連する環境データを,自動車のセンサシステム」「によって検出し」ている点で共通しているといえる。
しかし,本願発明1では,「周囲領域に関連する環境データ」が「ユーザ」「の視野内にある」のに対し,引用発明では,「周囲領域に関連する環境データ」がユーザの視野内にない点で相違している。
ウ 引用発明は,「表示情報取得処理が行われ,この処理は,重畳表示する対象物Jの情報(所定情報)を地図データベース20等から取得する」とされている。
ここで,引用発明の「地図データベース20等」,「対象物Jの情報(所定情報)」は,それぞれ,本願発明1の「情報源」,「ユーザ」「に出力される少なくとも1つの情報」に相当するといえる。
したがって,本願発明1と引用発明とは,「情報源」「によってユーザ」「に出力される少なくとも1つの情報を提供し」ている点で共通しているといえる。
エ 引用発明は,「ナビゲーション装置は,基本的な機能に加えて,例えば,走行中の路面の道路標示やナビゲーション機能による案内表示等(所定情報を表す情報像)を運転者から見た車両外の風景に重畳して表示する機能(以下「重畳表示機能」)を備えており,」「ナビゲーション装置におけるナビゲーションECU10による重畳表示処理であって,」「3D画像変換処理が行われ,この処理は,自車位置と対象物Jとの離隔距離Lに基づいて,運転者Dの視線から立体形状に見えるように画像変換するものであり,」「表示位置決定処理が行われ,この処理は,顔向き認識ECU30(S109)による顔向き情報,車両姿勢検出ECU40(S111)による姿勢情報および位置関係検出部10d(S113)による位置情報に基づいて,三次元画像に変換された対象物Jの表示位置を決定するものであり,」「表示画像生成処理が行われる」とされている。
ここで,引用発明の「対象物J」,「三次元画像に変換された対象物J」は,それぞれ,本願発明1の「情報」,「前記情報を反映する情報表示」に相当するといえる。
また,引用発明における「走行中の路面の道路標示やナビゲーション機能による案内表示等(所定情報を表す情報像)を運転者から見た車両外の風景に重畳して表示する機能」である「重畳表示処理」は,本願発明1の「前記情報を反映する情報表示」「とユーザ」「にとっての周囲領域とが少なくとも部分的に重ねられた表現」「を,表示デバイス」「によって可視化」する処理に相当するといえる。
さらに,引用発明において,「三次元画像に変換された対象物Jの表示位置を決定する」ことは,本願発明1において,「情報表示」「が可視化される位置および/または方向を,前記環境データに依存させ」ていることに相当しているといえる。
したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記情報を反映する情報表示」「とユーザ」「にとっての周囲領域とが少なくとも部分的に重ねられた表現」「を,表示デバイス」「によって可視化し,そのときに,情報表示の種類および/または情報表示」「が可視化される位置および/または方向を,前記環境データに依存させ」ている点で共通しているといえる。
オ 引用発明は,「ナビゲーション装置は,基本的な機能に加えて,例えば,走行中の路面の道路標示やナビゲーション機能による案内表示等(所定情報を表す情報像)を運転者から見た車両外の風景に重畳して表示する機能(以下「重畳表示機能」)を備えており,」「ナビゲーション装置におけるナビゲーションECU10による重畳表示処理であって,」「3D画像変換処理が行われ,この処理は,自車位置と対象物Jとの離隔距離Lに基づいて,運転者Dの視線から立体形状に見えるように画像変換するものであり,」「表示位置決定処理が行われ,この処理は,顔向き認識ECU30(S109)による顔向き情報,車両姿勢検出ECU40(S111)による姿勢情報および位置関係検出部10d(S113)による位置情報に基づいて,三次元画像に変換された対象物Jの表示位置を決定するものであり,」「表示画像生成処理が行われる」とされている。
ここで,引用発明の「走行中の路面の道路標示やナビゲーション機能による案内表示等(所定情報を表す情報像)を運転者から見た車両外の風景に重畳して表示する」「重畳表示」において「三次元画像に変換された対象物Jの表示位置を決定」し「表示画像生成処理」を行うことは,本願発明1の「3次元または2次元の情報表示を,前記情報および環境モデルの関数として生成するとともに,前記環境モデルに関連した座標系において位置決めおよび/または方向付けし,その後に物体に前記情報を投影することによって前記情報表示」「を生成」することに相当するといえる。
したがって,本願発明1と引用発明とは,「3次元または2次元の情報表示を,前記情報および環境モデルの関数として生成するとともに,前記環境モデルに関連した座標系において位置決めおよび/または方向付けし,その後に物体に前記情報を投影することによって前記情報表示」「を生成し」ている点で共通しているといえる。
しかし,本願発明1では,「周囲領域を記述する3次元環境モデルを環境データから決定し」ているのに対し,引用発明では,周囲領域を記述する3次元環境モデルを環境データから決定しているか否か明らかでない点で相違している。
(2)一致点・相違点
本願発明1と,引用発明とは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。
ア 一致点
「 自動車の表示デバイスを制御する方法であって,
自動車の周囲の環境に属する少なくとも1つの周囲領域に関連する環境データを,自動車のセンサシステムによって検出し,
情報源によってユーザに出力される少なくとも1つの情報を提供し,
前記情報を反映する情報表示とユーザにとっての周囲領域とが少なくとも部分的に重ねられた表現を,表示デバイスによって可視化し,そのときに,情報表示の種類および/または情報表示が可視化される位置および/または方向を,前記環境データに依存させ,
3次元または2次元の情報表示を,前記情報および環境モデルの関数として生成するとともに,前記環境モデルに関連した座標系において位置決めおよび/または方向付けし,その後に物体に前記情報を投影することによって前記情報表示を生成する,
自動車における表示デバイスの制御方法。」
イ 相違点
(ア) 相違点1
本願発明1では,「周囲領域に関連する環境データ」が「ユーザ」「の視野内にある」のに対し,引用発明では,「周囲領域に関連する環境データ」がユーザの視野内にない点。
(イ) 相違点2
本願発明1では,「周囲領域を記述する3次元環境モデルを環境データから決定し」ているのに対し,引用発明では,周囲領域を記述する3次元環境モデルを環境データから決定しているか否か明らかでない点。
(ウ) 相違点3
本願発明1では,「情報表示」「を生成」する「ときに,自動車などの他の道路利用者の距離または相対速度を前記情報として取得し,環境モデルにおいて,それぞれの自動車の表面などの物体(8,9)を選択し,そして前記2次元の情報表示をピクセルまたはベクトル表示として提供して対応領域にテクスチャとして適用することによって,前記2次元の情報表示を前記表面に配置し,かつ,そのときに,前記物体としての他の道路使用者である自動車(9)に関する情報を,自動車(19)に備えられた通信装置(12)を用いて,前記他の道路使用者である自動車(9)の前記情報源(11)からの通信によって提供」しているのに対し,引用発明では,自動車などの他の道路利用者の距離または相対速度を前記情報として取得しておらず,環境モデルにおいて,それぞれの自動車の表面などの物体を選択し,そして前記2次元の情報表示をピクセルまたはベクトル表示として提供して対応領域にテクスチャとして適用することによって,前記2次元の情報表示を前記表面に配置しておらず,前記物体としての他の道路使用者である自動車に関する情報を,自動車に備えられた通信装置を用いて,前記他の道路使用者である自動車の前記情報源からの通信によって提供していない点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて,まず,相違点3について検討する。
本願発明1の上記相違点3に係る構成の「情報表示」「を生成」する「ときに,自動車などの他の道路利用者の距離または相対速度を前記情報として取得し,環境モデルにおいて,それぞれの自動車の表面などの物体(8,9)を選択し,そして前記2次元の情報表示をピクセルまたはベクトル表示として提供して対応領域にテクスチャとして適用することによって,前記2次元の情報表示を前記表面に配置し,かつ,そのときに,前記物体としての他の道路使用者である自動車(9)に関する情報を,自動車(19)に備えられた通信装置(12)を用いて,前記他の道路使用者である自動車(9)の前記情報源(11)からの通信によって提供」しているという構成は,引用文献1ないし3に,記載も示唆も無く,また,当該構成が周知であったとも認められない。
したがって,引用発明および引用文献2ないし引用文献3に記載された技術的事項に基づいて,当業者は本願発明1の相違点3に係る構成を容易に想到することができない。
以上から,上記相違点1および2について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明および引用文献2ないし引用文献3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2-8
本願発明2ないし8は,いずれも,本願発明1を引用したものであって,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,上記1の本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし引用文献3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 原査定についての判断
上記第5のとおり,本願発明1~8は,それぞれ,相違点3に係る発明特定事項を有しているから,いずれも,引用発明および引用文献2ないし引用文献3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
以上から,原査定を維持することはできない。
なお,原査定において付記された拒絶の理由(明確性)である,拒絶査定時の請求項9は明瞭でない旨の拒絶の理由は,審判請求時の補正により,当該請求項9が削除されているため解消している。
第7 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由
当審が令和4年9月27日付けで通知した当審拒絶理由は次のとおりである。
この出願は,特許請求の範囲の請求項1-8の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
(1)請求項1は,「自動車(19)の表示デバイス(1,2)を操作する方法」の発明であり,一般的に,何らかの操作を行う主体はユーザなどの人間が多いものの,請求項1記載の各操作は,それぞれの操作を人が行うのかが不明である。例えば,「自動車(19)の周囲の環境に属し,かつユーザ(17)の視野内にある少なくとも1つの周囲領域に関連する環境データを,自動車のセンサシステム(4)によって検出し」については,「自動車のセンサシステム」が環境データの検出を行うことが明確であるが,それ以外については,「情報源(10,11,13)によってユーザ(17)に出力される少なくとも1つの情報を提供し」のように,動作を行う主体が記載されていないため,(情報源によってユーザに出力された)情報の提供を人が行うのか,何らかの構成要素が行うのか明確でないため,発明の動作として不明確である。換言すると,本願発明は,人によって行われる操作方法ではなく,自動車の表示デバイスを制御する制御方法であると思われる。
(2)請求項1には,「情報源(10,11,13)によってユーザ(17)に出力される少なくとも1つの情報」,「情報を反映する情報表示(14,15,16)」,「前記情報および環境モデルの関数」,「物体に情報を投影する」,「自動車などの他の道路利用者の距離または相対速度を情報として表し」,及び「前記物体としての他の道路使用者である自動車(9)に関する情報」とあるが,それぞれの「情報」の異同が不明確である。換言すると,それぞれの「情報」の対応関係が不明であるため,同じ「情報」については同じ用語を用いて「前記」を付す等して明確にされたい。
(3)請求項1には,「自動車などの他の道路利用者の距離または相対速度を情報として表し」とあるが,自動車などの他の道路利用者の距離または相対速度を情報として取得するすると言う意味であるのか,「情報」がその後の処理である「環境モデルにおいて,それぞれの自動車の表面などの物体(8,9)を選択し,そして前記2次元の情報表示をピクセルまたはベクトル表示として提供して対応領域にテクスチャとして適用することによって,前記2次元の情報表示を前記表面に配置し」における,「2次元の情報表示」と同一もしくは対応しており,自動車の表面に「自動車などの他の道路利用者の距離または相対速度」を表示するという意味であるのかが不明である。
請求項1を引用する請求項2-8についても同じことが指摘される。
よって,請求項1-8に係る発明は明確でない。
2 検討
これに対し,令和4年11月28日に提出された手続補正書により,以下(1)~(3)のように補正された。
(1)請求項1の「自動車(19)の表示デバイス(1,2)を操作する方法」および「自動車における表示デバイスの操作方法」を,それぞれ,「自動車(19)の表示デバイス(1,2)を制御する方法」および「自動車における表示デバイスの制御方法」と補正した。
(2)請求項1の「情報」との記載の内,前記「情報」と同じものを示すものについて「前記情報」とした。
(3)請求項1の「表し」という記載を「取得し」との記載に補正した。
これにより,請求項1に係る発明は,明瞭となった。
また,請求項1を引用する請求項2-8についても,同様に,明瞭となった。
したがって,当審拒絶理由の上記理由は解消した。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-004288