2022-003526
有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板及びその製造方法、表示装置
- 審判番号
- 2022-003526
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-513657外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月08日
- 審決日
- 2023年10月13日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 分類
- P18 .121-WZ (H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第184条の6第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
1 手続の経緯
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本件査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,2017年(平成29年)8月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年1月19日,中国)を国際出願日とする外国語特許出願であって,平成30年3月14日に明細書,請求の範囲及び図面(図面の中の説明)の日本語による翻訳文(特許法184条の6第2項の規定により,明細書の翻訳文及び請求の範囲の翻訳文を,願書に添付して提出した明細書及び特許請求の範囲とみなし,国際出願日における図面及び図面の中の説明の翻訳文を,願書に添付して提出した図面とみなす。)が提出され,令和3年3月23日付けで拒絶理由が通知され,同年6月29日に手続補正書及び意見書が提出され,同年7月6日付けで拒絶理由(最後)が通知され,同年10月12日に手続補正書及び意見書が提出されたが,同年11月1日付けで同年10月12日提出の手続補正書による補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされた。
本件査定不服審判事件は,「原査定を取り消す,本願は特許すべきものである,との審決を求める。」との趣旨で,令和4年3月8日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出され,同年9月6日に上申書が提出され,当審において,令和5年1月17日付けで拒絶理由が通知され,同年4月24日に手続補正書及び意見書が提出された。
2 本件出願の請求項1に係る発明について
本件出願の請求項1に係る発明(以下,「本件発明」という。)は,令和5年4月24日に提出された手続補正書による補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ,当該請求項1の記載は,次のとおりである。
「ベース基板と,前記ベース基板に設置される駆動トランジスタ,第一電極,第二電極,有機材料機能層,前記第二電極に接続される複数の補助電極,及び前記第二電極と前記補助電極との間に設置される絶縁構造とを備え,前記有機材料機能層は前記第一電極と前記第二電極との間に位置し,前記駆動トランジスタは,ゲート電極,ソース電極及びドレイン電極を備え,前記第一電極は前記ソース電極又は前記ドレイン電極と電気的に接続され,前記補助電極は前記第一電極と同層に設置され,前記絶縁構造に複数のビア構造が設置され,前記第二電極は,それぞれ前記複数の補助電極に接続され,前記ベース基板における前記補助電極の少なくとも1つの正射影が,前記ベース基板における電源線及びデータ線の正射影と交差する,有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板であって,前記OLEDアレイ基板が,前記データ線と交差するゲート線をさらに含み,前記補助電極の少なくとも1つの延伸方向が,前記ゲート線の延伸方向と同じであり,前記補助電極の少なくとも1つの平面形状がストリップ形状であり,前記第一電極が,金属導電材料の層が透明導電酸化物の2つの層の間に挟まれた構造である,有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板。」
3 当審において通知された拒絶理由の概要
当審において,令和5年1月17日付けで通知された拒絶理由は,概略,次のような理由(以下,「当審拒絶理由」という。)を含んでいる。
(令和4年3月8日に提出された手続補正書による補正後の)請求項1に係る発明は,本件出願の優先権主張に係る出願の出願日(以下,「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
当審拒絶理由で引用された引用例及び周知例は,次のとおりである。
4 引用例及び周知例
(1)引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1の記載
引用文献1は,本件優先日前である平成27年4月23日に,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって,当該引用文献1には,次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定及び判断に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】【0001】本発明は有機発光表示装置及びその製造方法に係り,より詳しくは補助電極及び吸収電極を含む有機発光表示装置に関する。【背景技術】続きを表示(全23行)【0002】表示装置はイメージを表示する装置であって,最近,有機発光表示装置(organic light emitting diode display)が注目されている。【0003】従来の有機発光表示装置は第1電極,第1電極上に位置する有機発光層及び有機発光層上に位置する第2電極を有する有機発光素子を含んでいる。【0004】一方,有機発光表示装置は前面,後面または両面に光を発光するタイプに分けられ,このうちの前面に光を発光するタイプの有機発光表示装置は,有機発光層から発生する光の輝度低下を最少化するために,有機発光素子の第2電極が,有機発光素子が形成された基板全体にわたって薄膜の形態で形成される。【0005】しかし,このような前面発光タイプの有機発光表示装置は,有機発光層を駆動するための第2電極が薄膜であり基板全体にわたって形成されるため,第2電極の電気的抵抗によって第2電極を通る電源に電圧降下などの発生する問題点がある。【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0006】本発明が達成しようとする技術的課題は,有機発光表示装置の有機発光層の駆動のために薄膜であり面積が大きい電極を通る電源の電圧降下を最小化することができ,補助電極の上部に吸収電極を追加することにより補助電極上の有機層の除去工程が簡便である有機発光表示装置及びその製造方法を提供しようとすることである。【課題を解決するための手段】【0007】このような課題を解決するために本発明の実施形態によれば,基板,前記基板上に位置し互いに分離されている第1電極及び補助電極,前記補助電極上に位置する吸収電極,前記第1電極上に位置し前記補助電極及び前記吸収電極を露出する接触孔を有する有機発光層,及び前記有機発光層上に位置し前記接触孔を通じて前記補助電極及び前記吸収電極と連結されている第2電極を含む有機発光表示装置を提供する。・・・(中略)・・・【発明の効果】【0020】本発明の実施形態によれば,有機発光表示装置の有機発光層の駆動のために薄膜であり面積が大きい電極を通る電源の電圧降下を最小化することができ,補助電極上部に吸収電極を追加することにより補助電極上の有機層の除去工程が簡便であるという長所がある。」
(イ) 「【発明を実施するための形態】【0022】・・・(中略)・・・【0025】続きを表示(全103行)図1は本発明の一実施形態による有機発光表示装置が有する画素回路を示す回路図である。【0026】図1に示したように,本実施形態の一実施形態による有機発光表示装置は複数の信号線121,171,172とこれらに連結されておりほぼ行列(matrix)の形態に配列された複数の画素PXを含む。【0027】信号線はゲート信号(または走査信号)を伝達する複数のゲート線121,データ信号を伝達する複数のデータ線171及び駆動電圧(Vdd)を伝達する複数の駆動電圧線172を含む。ゲート線121はほぼ行方向に伸びており互いにほとんど平行であり,データ線171と駆動電圧線172の垂直方向部分はほぼ列方向に伸びており互いにほとんど平行である。【0028】各画素PXはスイッチング薄膜トランジスタ(switching thin film transistor)Qs,駆動薄膜トランジスタ(driving thin film transistor)Qd,ストレージキャパシタ(storage capacitor)Cst及び有機発光素子(organic light emitting diode,OLED)70を含む。【0029】スイッチング薄膜トランジスタQsは制御端子,入力端子及び出力端子を有し,制御端子はゲート線121に連結されており,入力端子はデータ線171に連結されており,出力端子は駆動薄膜トランジスタQdに連結されている。スイッチング薄膜トランジスタQsはゲート線121に印加される走査信号に応答してデータ線171に印加されるデータ信号を駆動薄膜トランジスタQdに伝達する。【0030】駆動薄膜トランジスタQdも制御端子,入力端子及び出力端子を有し,制御端子はスイッチング薄膜トランジスタQsに連結されており,入力端子は駆動電圧線172に連結されており,出力端子は有機発光素子70に連結されている。駆動薄膜トランジスタQdは制御端子と出力端子の間にかかる電圧によってその大きさが変わる出力電流ILDを流す。【0031】キャパシタCstは駆動薄膜トランジスタQdの制御端子と入力端子の間に連結されている。このキャパシタCstは駆動薄膜トランジスタQdの制御端子に印加されるデータ信号を充電し,スイッチング薄膜トランジスタQsがターンオフ(turn-off)された後にもこれを維持する。【0032】有機発光素子70は駆動薄膜トランジスタQdの出力端子に連結されているアノード(anode),共通電圧Vssに連結されているカソード(cathode)を有する。有機発光素子70は駆動薄膜トランジスタQdの出力電流ILDによって強さを異にして発光することによって映像を表示する。・・・(中略)・・・【0034】しかし,第2電極が薄膜の形態に有機発光素子が形成された基板全体にわたって形成された有機発光表示装置は第2電極の電気的抵抗によって有機発光層を駆動するために第2電極を通る電源に電圧降下などの発生を防止するために第2電極上に補助電極を形成する方法を用いている。【0035】しかし,補助電極と第1電極を接触させるために有機層を除去する工程が必要であり,有機層のエネルギー吸収度が低いためエネルギー伝達効率が大きく落ち,環境が自由でない真空条件で遂行しなければならない。【0036】以下,図2及び図3を参照して本発明の一実施形態による有機発光表示装置を具体的に説明する。【0037】図2は図1の有機発光表示装置の一画素に対する配置図であり,図3は図2のIII-III線による断面図である。【0038】図2及び図3に示したように,基板100上にはバッファー層120が形成されている。・・・(中略)・・・【0040】基板100の上にはバッファー層120が形成されている。【0041】バッファー層120は酸化ケイ素または窒化ケイ素(SiNx)の単層または窒化ケイ素(SiNx)と酸化ケイ素(SiO2)が積層された複数層構造で形成することができる。バッファー層は不純物または水分のように不必要な成分の浸透を防止しながら同時に表面を平坦化する役割を果たす。【0042】バッファー層120の上には多結晶シリコンからなる第1半導体135a及び第2半導体135bと第1キャパシタ電極138が形成されている。【0043】第1半導体135a及び第2半導体135bはチャンネル領域1355a,1355bとチャンネル領域1355a,1355bの両側にそれぞれ形成されたソース領域1356a,1356b及びドレイン領域1357a,1357bに区分される。第1半導体135a及び第2半導体135bのチャンネル領域1355a,1355bは不純物がドーピングされていない多結晶シリコン,即ち,真性半導体(intrinsic semiconductor)である。第1半導体135a及び第2半導体135bのソース領域1356a,1356b及びドレイン領域1357a,1357bは導電性不純物がドーピングされた多結晶シリコン,即ち,不純物半導体(impurity semiconductor)である。・・・(中略)・・・【0045】第1半導体135a及び第2半導体135bと第1キャパシタ電極138の上にはゲート絶縁膜140が形成されている。ゲート絶縁膜140はテトラエトキシシラン(tetra ethyl ortho silicate,TEOS),窒化ケイ素及び酸化ケイ素のうちの少なくとも一つを含む単層または複数層であり得る。【0046】ゲート絶縁膜140の上にはゲート線121,第2ゲート電極155b及び第2キャパシタ電極158が形成されている。【0047】ゲート線121は横方向に長く伸びてゲート信号を伝達し,ゲート線121から第1半導体135aに突出した第1ゲート電極155aを含む。【0048】第1ゲート電極155a及び第2ゲート電極155bはそれぞれチャンネル領域1355a,1355bと重畳し,第2キャパシタ電極158は第1キャパシタ電極138と重畳する。・・・(中略)・・・【0050】第1キャパシタ電極138と第2キャパシタ電極158はゲート絶縁膜140を誘電体にしてキャパシタCstをなす。【0051】第1ゲート電極155a,第2ゲート電極155b及び第2キャパシタ電極158の上には第1層間絶縁膜160が形成される。第1層間絶縁膜160はゲート絶縁膜140と同様にテトラエトキシシラン(tetra ethyl ortho silicate,TEOS),窒化ケイ素または酸化ケイ素などで形成することができる。【0052】第1層間絶縁膜160とゲート絶縁膜140にはソース領域1356a,1356bとドレイン領域1357a,1357bをそれぞれ露出するソース接触孔166とドレイン接触孔167を有する。【0053】第1層間絶縁膜160の上には第1ソース電極176aを有するデータ線171,第2ソース電極176bを有する駆動電圧線172,第1ドレイン電極177a,及び第2ドレイン電極177bが形成されている。【0054】データ線171はデータ信号を伝達しゲート線121と交差する方向に伸びている。【0055】駆動電圧線172は一定の電圧を伝達しデータ線171と分離されてデータ線171と同じ方向に伸びている。【0056】第1ソース電極176aはデータ線171から第1半導体135aに向かって突出しており,第2ソース電極176bは駆動電圧線172から第2半導体135bに向かって突出している。第1ソース電極176aと第2ソース電極176bはそれぞれソース接触孔166を通じてソース領域1356a,1356bと連結されている。【0057】第1ドレイン電極177aは第1ソース電極176aと対向し接触孔167を通じてドレイン領域1357aと連結される。【0058】第1ドレイン電極177aはゲート線に沿って延長されており,接触孔81を通じて第2ゲート電極155bと電気的に連結される。【0059】第2ドレイン電極177bは接触孔を通じてドレイン領域1357bと連結される。・・・(中略)・・・【0062】データ線171,駆動電圧線172,第1ドレイン電極177a及び第1電極710(審決注:【0053】の記載や,図3からみて,「第1電極710」は誤記であり,正しくは「第2ドレイン電極177b」と認める。)の上には第2層間絶縁膜180が形成されている。【0063】第2層間絶縁膜180の上には第1電極710及び補助電極740が形成されている。【0064】第1電極710は図1の有機発光素子のアノード電極であり得る。第1電極710は接触孔82を通じて第2ドレイン電極177bと連結されている。【0065】本発明の一実施形態では第2層間絶縁膜180を挟んで第2ドレイン電極177bと第1電極710が接触孔を通じて連結されているが,第2ドレイン電極177bと第1電極710は一体形に形成することもできる。【0066】補助電極740は第1電極710と分離されており,データ線171及び駆動電圧線172のうちの少なくとも一つと重畳しこれらに沿って長く形成されている。補助電極740は第2電極730の電圧降下を減らすためのものであって,第2電極730と同一な電圧を印加することができる。【0067】補助電極740の上には吸収電極770が形成されている。【0068】補助電極740は一般に第2電極730と連結され,補助電極740と第2電極730を相互連結するためには補助電極740及び第2電極730の間に配置された有機発光層720が除去されなければならない。この時,有機発光層720はエネルギー吸収度が低くエネルギー伝達効率が大きく落ちるため有機発光層720と補助電極740の間に吸収電極770を配置することによって吸収電極770がエネルギーを容易に吸収するようになり有機発光層720を昇温して気化させる方法で有機発光層720をより簡単に除去することができる。【0069】吸収電極770は有機発光層720除去時にエネルギーを吸収する役割を果たすため,エネルギー吸収率が高い材料でなければならず,補助電極740と第2電極730の間に配置されるため補助電極740と第2電極730間の電気的連結のために導電性がなければならない。・・・(中略)・・・【0076】第1電極710を含む基板全体には第1電極710及び補助電極740の少なくとも一部が露出され,吸収電極770の全部が露出されるように絶縁性物質でパターニングされた画素定義膜116が形成されており,その次に第1電極710を含む基板全体に形成された画素定義膜116の上,そして第1電極710の露出された部分に発光層を含む有機発光層720が形成されている。有機発光層720は補助電極740及び吸収電極770を露出する接触孔74を含む。・・・(中略)・・・【0082】有機発光層720及び接触孔74を露出する開口部99の上には第2電極730が形成されている。【0083】第2電極730は有機発光素子のカソード電極になる。したがって第1電極710及び吸収電極770,有機発光層720及び第2電極730は有機発光素子70をなす。【0084】一方,第2電極730は接触孔74内で補助電極740の上面,吸収電極770の上面及び側面,開口部99のエッチング面と接触するように形成されている。【0085】有機発光素子70が光を放出する方向によって有機発光表示装置は前面表示型,背面表示型及び両面表示型のうちのいずれか一つの構造を有し得る。【0086】本発明の一実施形態では前面表示型であって,第1電極710は反射膜で形成し,第2電極730は透明膜または半透過膜で形成する。・・・(中略)・・・【0088】このように本発明の実施形態のように第2電極730と連結される補助電極740及び吸収電極770を形成すれば,基板100全体に形成される第2電極730を通る駆動電圧の電圧降下を最小化することができ,接触孔74を簡単に形成することができる。」
(ウ) 「【0107】図7乃至13は本発明の一実施形態による有機発光表示装置の製造方法の工程順に示した断面図である。【0108】まず,図7に示したように,基板100の上にバッファー層120を形成する。バッファー層120は窒化ケイ素または酸化ケイ素から形成することができる。続きを表示(全40行)【0109】バッファー層120の上に多結晶シリコン膜を形成した後にパターニングして第1半導体135a及び第2半導体135bと第1キャパシタ電極138を形成する。【0110】その次に,図8に示したように,第1半導体135a及び第2半導体135bの上にゲート絶縁膜140を形成する。ゲート絶縁膜140は窒化ケイ素または酸化ケイ素からなり得る。【0111】そしてゲート絶縁膜140の上に金属膜を積層した後にパターニングして第1ゲート電極155a,155bと第2キャパシタ電極158を形成する。【0112】第1ゲート電極155a及び第2ゲート電極155bをマスクにして第1半導体135a及び第2半導体135bに導電型不純物をドーピングしてソース領域,ドレイン領域及びチャンネル領域を形成する。または第1ゲート電極155a及び第2ゲート電極155bを形成する前に感光膜を用いて第1キャパシタ電極138にも共にドーピングすることができる。また,第1ゲート電極155a及び第2ゲート電極155bを二重膜で形成し,第2キャパシタ電極158は単一膜で形成すればソース領域及びドレイン領域と共に第1キャパシタ電極138にもドーピングすることができる。【0113】その次に,図9に示したように,第1ゲート電極155a,155bと第2キャパシタ電極158の上にソース領域及びドレイン領域を露出する接触孔166,167を有する層間絶縁膜160を形成する。層間絶縁膜160はテトラエトキシシラン(tetra ethyl ortho silicate,TEOS),窒化ケイ素または酸化ケイ素などで形成することができる。また,層間絶縁膜160は低誘電率物質で形成して基板を平坦化することができる。【0114】その次に,図10に示したように,層間絶縁膜160の上にITO/Ag/ITOを蒸着した後にパターニングして第1電極710及び補助電極740を形成する。・・・(中略)・・・【0123】その次に,図11に示したように,補助電極740の上に吸収電極770を形成する。【0124】吸収電極770は補助電極740と並んだライン形態に形成することができ,図4に示したように補助電極740の上にドット形態に形成することができる。【0125】吸収電極770は有機発光層720の除去時にエネルギーを吸収する役割を果たすため,エネルギー吸収率が高い材料でなければならず,補助電極740と第2電極730の間に配置されるため補助電極740と第2電極730間の電気的連結のために導電性がなければならない。・・・(中略)・・・【0132】その次に,図12に示したように,第1電極710,補助電極740及び吸収電極770の上に第1電極710及び補助電極740の少なくとも一部が露出され,吸収電極770の全部が露出されるように絶縁性物質でパターニングされた画素定義膜116を形成し,画素定義膜116,露出された第1電極710,補助電極740及び吸収電極770の上に有機発光層720を積層する。【0133】有機発光層720は別途のマスクなしで基板全体に形成し,正孔付帯層,赤色有機発光層,緑色有機発光層,青色有機発光層及び電子付帯層を順に積層することができる。【0134】その後,吸収電極770がエネルギーを吸収できる波長領域帯のエネルギーを有する光源を照射して有機発光層720をエッチングして下部の補助電極740及び吸収電極770を露出する開口部99を有する第2電極730及び接触孔74を形成する。【0135】この時,従来は有機発光層720をエッチングすることにおいて一般にレーザーを使用したが,本発明の一実施形態による有機発光表示装置の製造においては吸収電極770のエネルギー吸収度が高いため有機発光層720をエッチングすることに使用可能なエネルギー光源としてレーザー,フラッシュランプ(flash lamp),タングステンハロゲンランプ(tungsten halogen lamp)などを多様に使用することができる。【0136】このようなエネルギー光源によって照射された光源のエネルギーは吸収電極770に容易に吸収され吸収電極770が昇温し,この時,吸収電極770の上部に形成されている有機発光層720が昇温して気化する方式でエッチングされ得る。【0137】したがって,本発明の実施形態による有機発光表示装置の製造においては有機発光層720に開口部99を形成するエッチング過程を吸収電極770を用いて有機発光層720を昇温,気化させる方式で遂行することによって,有機発光層720のエッチングにパターニングマスクを使用しなくてもよい。【0138】その次に,図13のように,基板全体に金属膜を積層して有機発光層720の上に形成されており,有機発光層720の開口部99を通じて露出された補助電極740及び吸収電極770と連結された第2電極730を形成する。【0139】金属膜は半透明膜であってMg-Ag合金を積層して形成することができる。第2電極730は500Åの厚さで形成する。」
(エ) 「【図1】[図:0001407059000001.jpg]【図2】[図:0001407059000002.jpg]続きを表示(全22行)【図3】[図:0001407059000003.jpg]・・・(中略)・・・【図7】[図:0001407059000004.jpg]【図8】[図:0001407059000005.jpg]【図9】[図:0001407059000006.jpg]【図10】[図:0001407059000007.jpg]【図11】[図:0001407059000008.jpg]【図12】[図:0001407059000009.jpg]【図13】[図:0001407059000010.jpg]」
イ 引用文献1の記載から把握される発明
前記ア(ア)ないし(エ)で摘記した引用文献1の記載から,図1ないし3に示された有機発光表示装置における,複数のゲート線121,複数のデータ線171及び複数の駆動電圧線172と,これらに連結されておりほぼ行列の形態に配列された複数の画素PXが形成された基板100(以下,当該複数のゲート線121,複数のデータ線171及び複数の駆動電圧線172と,複数の画素が形成された基板100を「有機発光素子アレイ基板」という。)であって,第1電極710及び補助電極740として,【0114】に記載された構造のものを採用した「有機発光素子アレイ基板」に係る発明を把握することができるところ,【0029】,【0030】,【0043】,【0059】,【0064】等の記載からみて,スイッチング薄膜トランジスタQsが第1半導体135aを有し,駆動薄膜トランジスタQdが第2半導体135bを有することは明らかである。
また,引用文献1の【0058】に記載された,第1ドレイン電極177aと第2ゲート電極155bを電気的に連結する「接触孔81」が,第1層間絶縁膜160に形成されたものであることは,【0051】に,第2ゲート電極155bの上に第1層間絶縁膜160が形成されることが記載され,【0053】に,第1層間絶縁膜160の上に,第1ドレイン電極177aが形成されることが記載されていることから,明らかであり,【0059】に記載された,第2ドレイン電極177bとドレイン領域1357bを連結する「接触孔」が,第1層間絶縁膜160及びゲート絶縁膜140に形成されたドレイン接触孔167のことであることは,図3に示されており,【0064】に記載された,第1電極710と第2ドレイン電極177bを連結する「接触孔82」が,第2層間絶縁膜180に形成されたものであることは,【0062】に,第2ドレイン電極177bの上に第2層間絶縁膜180が記載されることが記載され,【0063】に,第2層間絶縁膜180の上に第1電極710が形成されることが記載されていることから,明らかである。
そして,【0114】の「その次に,図10に示したように,層間絶縁膜160の上にITO/Ag/ITOを蒸着した後にパターニングして第1電極710及び補助電極740を形成する。」なる記載には,図10からみて,誤記があることは明らかであり,その真意は,第1層間絶縁膜160の上に,駆動電圧線172第1ドレイン電極177a,及び第2ドレイン電極177b等を形成した後,その上に,第2層間絶縁膜180を形成し,当該第2層間絶縁膜180の上にITO/Ag/ITOを蒸着した後にパターニングして第1電極710及び補助電極740を形成する,というものであると認められる。
以上によれば,前記有機発光素子アレイ基板に係る発明は,次のとおりのものと認められる。
「ゲート信号または走査信号を伝達する信号線であって,ほぼ行方向に伸びており互いにほとんど平行な複数のゲート線121と,データ信号及び駆動電圧(Vdd)を伝達する信号線であって,その垂直方向部分がほぼ列方向に伸びており互いにほとんど平行な複数のデータ線171及び複数の駆動電圧線172と,前記複数のゲート線121,前記複数のデータ線171及び前記複数の駆動電圧線172に連結されておりほぼ行列の形態に配列された複数の画素PXとを含み,前記各画素PXは,それぞれ,スイッチング薄膜トランジスタQs,駆動薄膜トランジスタQd,ストレージキャパシタCst及び有機発光素子70を含み,前記有機発光素子70は,前記駆動薄膜トランジスタQdの出力端子に連結されているアノード電極である第1電極710と,共通電圧Vssに連結されているカソード電極である第2電極730と,有機発光層720により構成され,前記スイッチング薄膜トランジスタQsの制御端子は前記ゲート線121に連結されており,入力端子はデータ線171に連結され,出力端子は駆動薄膜トランジスタQdに連結され,続きを表示(全19行)前記駆動薄膜トランジスタQdの制御端子はスイッチング薄膜トランジスタQsに連結され,入力端子は駆動電圧線172に連結され,出力端子は有機発光素子70に連結され,前記ストレージキャパシタCstは前記駆動薄膜トランジスタQdの制御端子と入力端子の間に連結された,有機発光素子アレイ基板であって,基板100上にバッファー層120が形成され,前記バッファー層120の上には,多結晶シリコンからなるとともに,それぞれ,チャンネル領域1355a,1355bと当該チャンネル領域1355a,1355bの両側にそれぞれ形成されたソース領域1356a,1356b及びドレイン領域1357a,1357bに区分される前記スイッチング薄膜トランジスタQsの第1半導体135a及び前記駆動薄膜トランジスタQdの第2半導体135bと,第1キャパシタ電極138とが形成され,前記第1半導体135a及び前記第2半導体135bと前記第1キャパシタ電極138の上にはゲート絶縁膜140が形成され,前記ゲート絶縁膜140の上には,前記ゲート線121から前記第1半導体135aに突出した第1ゲート電極155aを含む前記ゲート線121,第2ゲート電極155b及び第2キャパシタ電極158が形成され,前記第1ゲート電極155a及び前記第2ゲート電極155bはそれぞれ前記チャンネル領域1355a,1355bと重畳し,前記第2キャパシタ電極158は前記第1キャパシタ電極138と重畳して前記第1キャパシタ電極138と前記第2キャパシタ電極158は,前記ゲート絶縁膜140を誘電体にして前記キャパシタCstをなし,前記第1ゲート電極155a,前記第2ゲート電極155b及び前記第2キャパシタ電極158の上には第1層間絶縁膜160が形成され,前記第1層間絶縁膜160の上には第1ソース電極176aを有する前記データ線171,第2ソース電極176bを有する前記駆動電圧線172,第1ドレイン電極177a,及び第2ドレイン電極177bが形成され,前記第1ソース電極176aは前記データ線171から前記第1半導体135aに向かって突出し,前記第2ソース電極176bは前記駆動電圧線172から前記第2半導体135bに向かって突出し,前記第1ソース電極176aと前記第2ソース電極176bはそれぞれ前記第1層間絶縁膜160及び前記ゲート絶縁膜140のソース接触孔166を通じて前記ソース領域1356a,1356bと連結され,前記第1ドレイン電極177aは,前記第1ソース電極176aと対向し,前記第1層間絶縁膜160及び前記ゲート絶縁膜140のドレイン接触孔167を通じて前記ドレイン領域1357aと連結されるとともに,前記ゲート線121に沿って延長され,前記第1層間絶縁膜160の接触孔81を通じて第2ゲート電極155bと電気的に連結されており,前記第2ドレイン電極177bは,前記第1層間絶縁膜160及び前記ゲート絶縁膜140に形成されたドレイン接触孔167を通じて前記ドレイン領域1357bと連結されており,前記データ線171,前記駆動電圧線172,前記第1ドレイン電極177a及び前記第2ドレイン電極177bの上には第2層間絶縁膜180が形成され,前記第2層間絶縁膜180の上には,ITO/Ag/ITOを蒸着した後にパターニングして形成した前記第1電極710及び補助電極740が形成され,前記第1電極710は,前記第2層間絶縁膜180の接触孔82を通じて前記第2ドレイン電極177bと連結され,前記補助電極740は,前記第1電極710と分離されており,前記データ線171及び前記駆動電圧線172のうちの少なくとも一つと重畳しこれらに沿って長く形成され,その上には吸収電極770が形成されるとともに,前記第2電極730と連結され,前記第1電極710を含む基板全体には,前記第1電極710及び前記補助電極740の少なくとも一部が露出され,吸収電極770の全部が露出されるように絶縁性物質でパターニングされた画素定義膜116が形成されており,その次に前記第1電極710を含む基板全体に形成された前記画素定義膜116の上,そして前記第1電極710の露出された部分に発光層を含む前記有機発光層720が形成され,当該有機発光層720は,前記補助電極740及び前記吸収電極770を露出する接触孔74を含み,前記有機発光層720及び前記接触孔74を露出する開口部99の上には,前記第2電極730が形成されており,前記吸収電極770は,有機発光表示装置の製造時に,前記基板100全体に有機発光層720を形成した後,前記吸収電極770がエネルギーを吸収できる波長領域帯のエネルギーを有する光源を照射することにより,前記吸収電極770を昇温させ,前記吸収電極770の上部に形成されている前記有機発光層720を気化させる方法で,前記接触孔74を形成するために用いられる,有機発光素子アレイ基板。」(以下,「引用発明」という。)
(2)周知の技術事項
ア 引用文献2の記載
引用文献2は,本件優先日前である平成20年9月18日に頒布された刊行物であって,当該引用文献2には,次の記載がある。(下線は,後述する周知事項の認定及び判断に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】【0001】本発明は,有機EL(Electroluminescence)素子などの発光素子を用いた発光装置に関する。【背景技術】続きを表示(全19行)【0002】基板上の有効領域に複数の発光素子が配列され,有効領域を囲む周辺領域に各種配線等が配置された発光装置が知られている。各発光素子は,第1電極と第2電極の間に挟まれ有機EL材料などの発光材料で形成される発光層を有する。多くの場合,この第2電極は複数の発光素子に共通して設けられた共通電極であり,上記有効領域全体にわたって設けられる。しかしながら,電極自体が有する抵抗により電極の面内において電圧降下が発生し,基板における位置によって発光素子に供給される電位がばらついて発光素子の輝度が位置によってばらつくおそれがある。そこで,従来から,共通電極よりも低抵抗の材料で形成され共通電極と電気的に接続された補助電極を設け,共通電極の抵抗を下げることが行われている(例えば,特許文献1)。【特許文献1】特開2002-352963号公報【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0003】ところで,補助電極は,例えば,アルミニウムなどの遮光性の部材で形成される場合が多い。このため,発光素子からの出射光を遮ることがないように発光素子の間隙の領域を通るように形成されるのが望ましく,高精度な位置合わせ機構を用いて形成されるのが望ましい。これに対し,共通電極は光透過性の材料で形成されて,有効領域全体を覆う領域に一様に形成される。よって,補助電極と比較して,位置合わせにおける誤差が許容され得る。よって,補助電極よりも共通陰極の位置合わせの誤差が問題となる。したがって,共通電極の誤差を吸収可能なように基板上において周辺領域の幅(いわゆる,「額縁領域」)を十分に確保することが望ましく,装置の小型化の妨げとなっていた。【0004】また,発光素子の発光を制御するためのトランジスタなどの回路素子は,共通電極や補助電極の下層に配置される。このため,共通電極および補助電極との間に絶縁層を設けて,共通電極および補助電極を回路素子から絶縁する。ところが,絶縁層が段差を含む場合には,その段差と重なる上層部分で電極に断線や亀裂が生じるおそれがある。断線や亀裂が生じた箇所では電極の抵抗値が増加するので,発光素子の輝度ムラが顕著となる。本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり,発光装置の額縁領域を縮小するとともに,発光素子の輝度ムラを抑制するこが可能な発光装置を提供することを解決課題とする。【課題を解決するための手段】【0005】上記課題を解決するため,本発明の第1の発光装置は,基板上に複数の発光素子が配列された有効領域と当該有効領域を囲む周辺領域とを有し,前記各発光素子は第1電極と第2電極と両者の間にある発光層とを有し,前記第2電極は前記複数の発光素子に共通に設けられ,前記発光素子の発光を制御するための回路素子が配置された素子層を有する発光装置であって,前記第2電極と電気的に接続した補助電極と,前記素子層の上層に配置されるとともに,前記第2電極および前記補助電極よりも下層に配置される部分を有し,前記第2電極および前記補助電極を前記回路素子から絶縁するための絶縁層とを有し,前記第2電極は,前記有効領域を覆い,前記周辺領域にはみだして一様に形成され,前記補助電極は,前記有効領域において前記複数の発光素子の間隙を通り,前記周辺領域の一部に形成され,前記周辺領域において,前記第2電極の端は,前記基板の面内において前記補助電極の端および前記絶縁層の端の各々よりも内側に位置する。【0006】本発明の発光装置においては,補助電極の端は共通電極の端よりも外側に配置される。また,補助電極は,有効領域においては,発光素子の間隙の領域を通るように形成される。このため,高精度な位置合わせ機構を用いて形成されるのが望ましい。これに対し,共通電極は有効領域全体を覆う領域に一様に形成されるから,共通電極の形成に際しては,位置合わせ精度が補助電極ほど要求されない。すなわち,補助電極は共通電極よりも小さな誤差で形成される場合が多い。よって,本発明によれば,共通電極の端を補助陰極の端よりも外側に配置する構成と比較して,補助電極の誤差に応じて額縁領域を縮小することができ,装置の小型化が可能となる。そして,補助電極は,第2電極よりも抵抗が低くなるように構成される。特に,補助電極は,第2電極よりも低抵抗の材料で形成されることが好ましい。」
(イ) 「【発明を実施するための最良の形態】【0014】以下,添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお,図面においては,各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。<A-1:第1実施形態>続きを表示(全14行)図1(A)は,本発明の第1実施形態に係る発光装置1の構成の一部を示す概略平面図であり,図1(B)は図1(A)の状態の後に補助電極150および画素電極76をさらに形成した状態を示す平面図である。図1(A)に示すように,この発光装置1は,基板10とフレキシブル基板20とを備える。・・・(中略)・・・【0015】基板10には,有効領域Aと,その外側(つまり基板もしくは基板10の外周と有効領域Aの間)の周辺領域Bが設けられている。周辺領域Bには走査線駆動回路100Aおよび100B,ならびにプリチャージ回路120が形成されている。・・・(中略)・・・【0016】有効領域Aには,複数の走査線111と複数のデータ線112が形成され,それらの交差点の各々の近傍には複数の単位回路(画素回路)Pが設けられている。単位回路PはOLED(organic light emitting diode)素子を含み,電流供給線113から給電を受ける。複数の電流供給線113は第1電極用電源線130に接続されている。・・・(中略)・・・【0020】発光素子70は,画素電極76(陽極)と共通電極72(陰極)との間に挟まれた発光機能層(発光層を含む)74を有する(図4参照)。共通電極72は,図1(B)に示すように有効領域A全体と周辺領域Bの一部にわたる領域(第1の領域)に形成される。また,共通電極72と第2電極用電源線140とを接続する補助電極150が,周辺領域Bにおいて周辺回路を覆うように形成される。補助電極150は,有効領域Aに設けられる補助電極の第1部分150aと,周辺領域Bに設けられる補助電極の第2部分150bとを含んでいる。有効領域Aでは補助電極150の第1部分150aと画素電極76とが接触しないように,補助電極150の第1部分150aが格子状に形成されている。つまり発光素子70の間隙に補助電極150の第1部分150aが配置されている。本明細書でいう補助電極とは,共通電極72に重ねて電気的に接続され,共通電極72の抵抗を下げる導体のことである。明確化のため,図3に,図1(B)の一部を拡大して示す。【0021】この実施形態の発光装置1は,トップエミッションの形式で構成されており,発光機能層74からの光が共通電極72を通過して射出される。共通電極72は,透明材料から形成されている。このため,周辺領域Bを共通電極72によって遮光することはできない。一方,上述した補助電極150には,導電性および遮光性を有する金属が用いられるため,補助電極150によって遮光が可能である。これにより,周辺回路に光が入射して光電流が発生することを抑制できる。また,補助電極150は,有効領域Aの画素電極76と同一の工程で形成され得る。したがって,周辺領域Bに遮光性を付加するために特別な工程は不要である。」
【0022】
図4に発光装置1の部分断面図を示す。同図において,有効領域Aには発光素子70が形成される一方,周辺領域Bには周辺回路たる走査線駆動回路100Aが形成される。同図において発光装置1の上面が光を射出する射出面となる。・・・(中略)・・・
【0029】
第2層間絶縁膜35上には,有効領域Aで画素電極76(第1電極)および補助電極の第1部分150aを形成すると同時に,周辺領域Bに補助電極の第2部分150bを形成する。即ち,画素電極76と補助電極150とは同一の層において,同一の材料を用いて同時に形成される。この実施形態における画素電極76は発光素子70の陽極であり,発光素子70ごとに相互に離間して形成されて,第2層間絶縁膜35および回路保護膜34を貫通するコンタクトホールを介してトランジスタ60のドレイン電極61と接続される。・・・(中略)・・・
【0031】
補助電極150は,有効領域Aにおいて複数の発光素子70の間隙を通るように格子状に形成され(第1部分150a),周辺領域においては第2層間絶縁膜35が形成された第2の領域が,共通電極72が形成された第1の領域よりもはみ出した側(本実施形態では基板10の左右両辺および上辺側)において,第1の領域の内側と第1の領域の外側であって且つ第2の領域の内側である領域とを通り第2の領域の外側に至るように形成される(第2部分150b)。補助電極150は,周辺領域Bにおいて,回路保護膜34に形成されたコンタクトホールを介して第2電極用電源線140と接続される。・・・(中略)・・・
【0032】
次に,隔壁37を形成する。隔壁37は,各画素電極76の外形縁を隔壁37により覆うように形成されることにより,開口部37aを有する。よって,開口部37aの各々の全体は,画素電極76に重なり,発光機能層74が形成される前の段階では,開口部37aを通して画素電極76が露出している。隔壁37は,画素電極76とその後に形成される共通電極72(第2電極)との間,もしくは複数の画素電極76同士の間を絶縁するものである。・・・(中略)・・・
【0033】
次に,画素電極76の上に,少なくとも発光層を含む発光機能層74を形成する。発光層には有機EL物質が用いられる。有機EL物質は,低分子材料であっても良いし,高分子材料であっても良い。発光機能層74を構成する他の層として,正孔注入層,正孔輸送層,電子輸送層,電子注入層,正孔ブロック層,および電子ブロック層の一部又は全部を備えていてもよい。
【0034】
次に,有効領域Aおよび周辺領域Bにわたって補助電極150および発光機能層74を覆うように,共通電極72(第2電極)が形成される。共通電極72は透光性であり,発光素子70からの光は,共通電極72を透過して図中上側の方向に射出される。・・・(中略)・・・
【0036】
また,共通電極72を形成するに先立って,隔壁37にはコンタクトホールCHが形成される。このコンタクトホールCHを介して有効領域Aにおいて補助電極の第1部分150aと共通電極72が接続される。有効領域Aにおいて格子状に形成される補助電極の第1部分150a(図1(B)参照)に共通電極72が接続されることにより,共通電極72の電源インピーダンスを大幅に低減することができる。これに加えて,補助電極の第2部分150bは,周辺領域Bにおいて隔壁37により覆われていないため共通電極72と広い面積で面接触するので,接続抵抗を下げることができる。したがって,電源インピーダンスを大幅に低減することが可能となる。」
(ウ) 「【0054】(2)上記第1~第4実施形態においては,第2電極用電源線140が周辺領域Bにコの字状に形成された態様について説明したが,これに限られず適宜変形が可能である。各図12および図13は,本変形例に係る各発光装置のレイアウトの概略を説明するための図である。これらの図において,上述した実施形態と共通する部分については同一の符号を付し,その説明は適宜省略する。【0055】続きを表示(全20行)図12の(A)に示すように,発光装置3Aにおいては,基板10の対向する2辺の各辺縁部に沿って第2電極用電源線140が配設される。さらに,残る2辺の一方の辺に沿う領域に信号入力端子Gが配設され,当該信号入力端子Gの基板10の面内における内側には第1電極用電源線130が配設される。第2電極用電源線140の内側には有効領域Aに沿って走査線駆動回路100Aおよび100Bが各々有効領域Aに沿って配置され,電源線140によって給電されるとともに,信号入力端子Gを介して外部からの制御信号が与えられる。また,第1電極用電源線130の内側にはデータ線駆動回路200が有効領域Aに沿って配置される。データ線駆動回路200は,第1電極用電源線130から給電されつつ信号入力端子Gを介して外部からの制御信号を受け取り,各データ線に与える。・・・(中略)・・・【0057】補助電極は,信号入力端子Gが配設される辺と同じ方向を長手とするストライプ状の個別電極150cとして形成される。詳細には,個別電極150cは有効領域Aにおいては発光素子Pの間隙を通り,周辺領域Bにおいては第1の領域の内側と第1の領域の外側であって且つ第2の領域の内側である領域とを通り,第2の領域の外側に至り,第2電極用電源線140と重なる領域まで延びて第2電極用電源線140と電気的に接続する。すなわち,その端は,第2層間絶縁膜35の端よりも外側であり,且つ,共通電極72の端よりも外側に位置する。本変形例によっても,上述した各実施形態と同様の効果が得られる。【0058】次に,図12の(B)に示されるように,発光装置3Bは,走査線駆動回路とデータ線駆動回路の位置が逆転している点を除いて,発光装置3Aと同様の構成をしている。すなわち,発光装置3Bにおいては,走査線駆動回路100が基板10の下辺側の周辺領域Bにおいて有効領域Aに沿って配置され,データ線駆動回路200A,200Bが基板10の各左辺および右辺側の周辺領域Bに配置される。第2電極用電源線140は,各データ線駆動回路200A,200Bの外側に,基板10の対向する2辺(左右両辺)に沿って配置され,補助電極150は,第2電極用電源線140と直交する方向(すなわち,信号入力端子Gが配設される辺と同じ方向)を長手としたストライプ状に形成される。発光装置3Aと同様に,補助電極150の左右の各端は,共通電極72の端よりも外側であり,さらに,第2層間絶縁膜35の端よりも外側に位置し,第2電極用電源線140と重なり接するように形成される。よって,発光装置3Bによっても,上述した実施形態と同様の効果が得られる。・・・(中略)・・・【0060】図13の(A)および(B)に,発光装置の他のレイアウト例を示す。図13の(A)に示されるように,発光装置4Aにおいては,基板10の下辺縁に沿って信号入力端子Gが配設され,その内側に第2電極用電源線140がコの字状に配設される。さらに,第2電極用電源線140の内側には第1電極用電源線130がコの字状に配設され,この電源線130と有効領域Aとの間にデータ線駆動回路200が配設される。走査線駆動回路100A,100Bは有効領域Aの左右各辺に沿う領域に各々配設される。・・・(中略)・・・【0062】図示のように,補助電極は,走査線駆動回路100A,100Bと平行な方向を長手として延在するストライプ状の個別電極150eとして形成される。基板10の下端側における個別電極150eの端は,第2電極用電源線140と重なって接するように形成される。なお,この例において,個別電極150eは第1電極用電源線130と交差しているが,第1電極用電源線130と第2電極用電源線140とを別々の層で形成することにより,個別電極150eが第1電極用電源線130と接することなく第2電極用電源線140とのみ接するように形成する。同様に,共通電極72と第1電極用電源線130とは重なるが,第1電極用電源線130と第2電極用電源線140とを別々の層で形成することで,共通電極72と第1電極用電源線130とが電気的に接触しない構成とすることができる。一方,基板10の上端側における個別電極150eの端は,共通電極72の端個別電極150eよりも外側であり,さらに,第2層間絶縁膜35の端(第2の領域)よりも外側に位置するように形成される。よって,発光装置4Aによっても,上述した各実施形態と同様の効果が得られる。【0063】次に,図13の(B)に示されるように,発光装置4Bは,走査線駆動回路とデータ線駆動回路の位置が逆転している点を除いて,発光装置4Aと同様の構成をしている。すなわち,発光装置4Bにおいては,走査線駆動回路100が基板10の下辺側の周辺領域Bにおいて有効領域Aに沿って配置され,データ線駆動回路200A,200Bが基板10の各左辺および右辺側の周辺領域Bに配置される。第2電極用電源線140は,基板10下端側において信号入力端子Gよりも内側にコの字状に配置され,補助電極150は,データ線駆動回路200A,200Bと平行な方向を長手としたストライプ状に形成される。発光装置4Aと同様に,補助電極150の上下の各端は,共通電極72の端よりも外側にであり,且つ,第2層間絶縁膜35の端よりも外側に位置するとともに,下端は,第2電極用電源線140と重なり接するように形成される。よって,発光装置4Bによっても,上述した実施形態と同様の効果が得られる。【0064】図12(A),図12(B),図13(A)及び図13(B)に示すように,周辺領域Bにおいて,補助配線150は,第2電極用電源線140の延在方向に対し交差する方向に,ストライプ状に延在している。即ち,図1乃至図3では,補助配線150bは第2電極用電源線140の延在方向にも延在しているが,第2電極用電源線140の延在方向に対して交差する方向にのみ延在させてもよい。換言すれば,補助配線150は,第2電極用電源線140の延在方向と平行に形成される必要は必ずしもなく,第2電極用電源140と交差するように形成されていればよい。」
(エ) 「【図面の簡単な説明】【0070】【図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成の一部を示す概略平面図であり,(B)は(A)の状態の後に補助電極および画素電極をさらに形成した状態を示す平面図である。【図2】同装置の画素回路の詳細を示す回路図である。続きを表示(全24行)【図3】図1(B)の一部の拡大図である。【図4】同装置の部分断面図である。・・・(中略)・・・【図12】本発明の変形例に係る発光装置のレイアウトの概略である。【図13】本発明の変形例に係る発光装置のレイアウトの概略である。・・・(中略)・・・【図1】[図:0001407059000011.jpg]【図2】[図:0001407059000012.jpg]【図3】[図:0001407059000013.jpg]【図4】[図:0001407059000014.jpg]・・・(中略)・・・【図12】[図:0001407059000015.jpg]【図13】[図:0001407059000016.jpg]」
イ 引用文献3の記載
引用文献3は,本件優先日前である平成14年10月31日に頒布された刊行物であって,当該引用文献3には,次の記載がある。(下線は,後述する周知事項の認定及び判断に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置等の平面表示装置およびその製造方法に係り,特に各表示素子にスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス型平面表示装置およびその製造方法に関する。【0002】【従来の技術】・・・(中略)・・・続きを表示(全16行)【0004】有機EL表示装置は,有機ELパネルと有機ELパネルを駆動する外部駆動回路から構成される。有機ELパネルはガラス等の支持基板上に,第1電極と,第1電極と対向して配置される第2電極と,これら電極間に有機発光層を備えた表示素子をマトリクス状に配置して構成される表示領域と,外部駆動回路からの信号に基づいて各表示素子を駆動する駆動回路領域とから構成される。【0005】この有機EL表示装置のEL発光を外部に取り出す方式には,支持基板を介して外部に取り出す下面発光方式と,支持基板と対向する側に取り出す上面発光方式とがある。【0006】アクティブマトリクス型の下面発光方式の有機EL表示装置は,有機発光層の下部にEL発光の透過を阻止する薄膜トランジスタ(TFT)等の回路が配置されるため,十分な開口率を確保することが難しく,このため光利用効率の向上が課題となっている。【0007】これに対して,上面発光方式の有機EL表示装置は,支持基板と対向する側にEL発光を取り出すため,支持基板側に配置される回路に制約されずに開口率を決定されるため,高い光利用効率の確保が可能となる。【0008】【発明が解決しようとする課題】ところで平面表示装置においては,光取出し側にある電極に光透過性の導電膜を用いることが必須であり,上面発光方式でアクティブマトリクス型を採用する場合には,光取出し側に配置される共通電極を光透過性の導電膜で作成する必要がある。ところが一般に,光透過性を有する透明導電材料は,通常の金属材料と比較して抵抗率が2-3桁程度高いことが知られている。【0009】このため,光取出側の電極の画面面内で電極電圧が不均一となることがあり,表示品位を低下させる原因となっていた。【0010】このことは,特に画面サイズが大きくなるほど顕著であり,このため画面サイズに制約が生じる等の問題もあった。【0011】本発明は,上記技術課題に対してなされたもので,表示面内で表示ムラの少ないアクティブマトリクス型平面表示装置およびその製造方法を提供することを目的としている。【0012】また本発明は,表示品位が画面サイズの制約を受けないアクティブマトリクス型平面表示装置を提供することを目的とし,またその生産性を損なうことのない製造方法を提供することを目的としている。【0013】【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は,基板上に配置される複数の走査信号線と,前記走査信号線に略直交して配置される複数の映像信号線と,これら交点付近に配置されるスイッチング素子と,前記スイッチング素子に接続され,第1電極および第2電極間に独立島状に形成される光変調層を備えた表示素子がマトリクス状に配置されるアクティブマトリクス型平面表示装置において,前記第1電極と同層に形成され,かつ前記第1電極とは電気的に絶縁され,前記第2電極と電気的に接続された補助配線とを備えたことを特徴とする。」
(イ) 「【0014】【発明の実施の形態】以下,本発明の一実施形態に係るアクティブマトリクス型平面表示装置として自己発光型のディスプレイ,有機EL表示装置を例にとり,図面を用いて詳細に説明する。図1は,この実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置1の概略平面図で,図2は,図1の表示領域の一部を拡大した一部概略平面図,図3は,図2のA-A線に沿って切断した時の断面図である。【0015】有機ELパネル2の表示領域について詳しく説明すると,この実施形態では10.4型サイズの表示領域が構成され,ガラス等の絶縁基板101上に映像信号線109と走査信号線107とがマトリクス状に配置され,その交差部にスイッチング素子SW1としてn型TFT,映像信号電圧保持用コンデンサ110,駆動用制御素子SW2としてp型TFT,有機EL表示素子Pが形成される。【0016】有機EL表示素子Pは,駆動用制御素子SW2に接続された光反射性導電膜からなる第1電極117と,第1電極117上に配置される有機発光層121と,有機発光層121を介して第1電極117に対向配置された第2電極122と,を備えている。尚,有機発光層121は,各色共通に形成されるホール輸送層,エレクトロン輸送層,及び各色毎に形成される発光層の3層積層で構成されてもよく,機能的に複合された2層または単層で構成されてもよい。この有機発光層121は,各表示素子Pを分離する黒色レジスト材料からなる厚さ3μmの隔壁120の開口部120bから露出される第1電極117上に配置される。【0017】この有機EL表示装置1は第2電極122側を表示面とした上面発光方式であり,有機EL表示素子Pの第2電極122は,光透過性を有する導電膜で構成される。光透過性導電膜は,材料自体の透明度が高い透明導電材料を用いる,或いは透明度が低い材料を薄く形成して光透過性をもたせるなどして形成できる。ここでは,Baを光透過する程度に薄く,例えば膜厚10nmに成膜し,透明導電膜として全表示素子にわたって共通に形成した。この光透過性導電膜のシート抵抗はおよそ105Ω/□であった。【0018】また,図3に示すように第1電極117と同層に設けられた補助配線118と第2電極122とは,隔壁120に補助配線118を露出するように設けられたコンタクト部120aを介して電気的に接続される。この補助配線118は,第1電極117とは隔壁120にて電気的に絶縁され,各表示素子Pの第1電極117を囲むよう格子状に設けられており,それぞれ表示領域にわたり互いに連結されている。【0019】このように第2電極122と電気的に接続される補助配線118を表示領域全体に均等に備えるので,光取出し側電極の画面面内での電位のバラツキを抑制することが可能となる。・・・(中略)・・・【0023】本実施例においては,補助配線118は,第1電極と同一材料で形成され,Al,Mo,ITOの3層が積層され抵抗率4×10-6Ωcmの導電材料を用いて,シート抵抗10-1Ω/□となるよう形成されている。このMoは,ITOとAlとが直接接触することによる腐食防止のために設けられており,この機能を有するものであればよく,例えばTi,W等であってもよい。【0024】このようにして構成される有機EL表示装置では,光取出し側電極,ここでは陰極電位の面内ばらつきを従来に比べて十分に低減でき,本実施形態においては10型サイズ超の画面サイズにも関わらず面内での輝度分布を±3cd/m2以内に抑えることができた。」
(ウ) 「【0025】図4(a)~(e)は,第2電極電源線と補助配線の配置の例を示しており,図5(a)~(c)は,図4の(a)~(c)の表示領域の一部を拡大したものである。上述の実施例においては,図4(a)に示すように,各表示素子Pの第1電極117周囲を包囲し,互いに連結されたパターン(図5(a))で表示領域に均等に配置された補助配線118を設けたが,これに限定されず種々のパターンで形成することができ,少なくとも補助配線118と第1電極117が電気的に分離され,且つ補助配線118と第2電極122とが電気的に接続されていればよい。例えば,図4(b)に示すように,表示領域を囲む矩形枠状の第2電極電源線119の内部に,マトリクス状に補助配線118を形成し,第2電極電源線119から遠い矩形枠状の中心部では補助配線118を密に形成し,第2電極電源線119に近い矩形枠状の内側周辺部分では補助配線118を疎に形成し,パネル面内で密度を変化(図5(b))させてもよい。また,補助配線118は直線状でなくてもよく,図4(c),(d)に示すように,第1電極117の周囲をジグザグ状(図5(c))に形成してもよい。また,図4(e)に示すように,第2電極電源線内側にストライプ状に形成するものでもよい。また,画素のサイズを色毎に変え,隣接第1電極間の距離に対応して大きさが決定される補助配線を設けてもよく,画面サイズ,画素数等の条件により,適宜最適なパターンを採用することができる。【0026】このように,第1電極が独立島状に設けられ,第2電極が表示素子にわたって共通に配置されるアクティブマトリクス型を採用するので,第1電極と同層に,隣接画素間で連結した補助配線を設けることができる。【0027】また,本発明によれば,隣接する表示素子間に一定電位を持つ補助配線が配設されていることにより,画素間の容量カップリングを軽減できクロストーク等の表示品悪化の原因を取除きより高品位の表面表示装置を達成することができる。・・・(中略)・・・【0030】以上説明したように,本実施形態によれば第2電極に補助配線を接続するので,光取出し側電極全体の抵抗を下げることができ,表示面内で表示ムラを十分に抑制することができる。」
(エ) 「【0052】【発明の効果】本発明によれば,表示ムラの発生を抑制し,表示品位の高い平面表示装置を実現することができる。また,製造工程を増大させることなく上記平面表示装置を達成することができる。」
(オ) 「【図面の簡単な説明】【図1】図1は,本発明の一実施形態を示す有機EL表示装置の一概略平面図である。【図2】図2は,本発明の一実施形態を示す有機EL表示装置の表示領域を示す一部概略平面図である。【図3】図3は,本発明の一実施形態を示す有機EL表示装置の表示領域を示す一部概略断面図である。続きを表示(全18行)【図4】図4は,本発明の一実施形態を示す補助配線,第2電極電源線を示す平面図である。【図5】図5は,本発明の一実施形態を示す第1電極,補助配線を示す平面図である。・・・(中略)・・・【図1】[図:0001407059000017.jpg]【図2】[図:0001407059000018.jpg]【図3】[図:0001407059000019.jpg]【図4】[図:0001407059000020.jpg]【図5】[図:0001407059000021.jpg]」
ウ 引用文献2,3の記載から把握される周知の技術事項
前記ア(ア)ないし(エ)及び前記イ(ア)ないし(オ)で摘記した引用文献2及び引用文献3の記載から,次の事項が,本件優先日前に当業者に周知であったと認められる。
「OLEDアレイ基板の技術分野において,画素電極と同層に形成されるとともに共通電極と接続される補助電極について,画素電極と電気的に接続されることがない限りはその平面形状を自由に設定できること。」(以下,「周知事項」という。)
5 対比
(1)本件発明と引用発明の対比
本件発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「基板100」,「駆動薄膜トランジスタQd」,「第1電極710」,「第2電極730」,「有機発光層720」,「補助電極740」,「『画素定義膜116』及び『有機発光層720』」,「第2ゲート電極155b」,「第2ソース電極176b」,「第2ドレイン電極177b」,「接触孔74」,「駆動電圧線172」,「データ線171」,「ゲート線121」及び「前有機発光素子アレイ基板」が,本件発明の「ベース基板」,「駆動トランジスタ」,「第一電極」,「第二電極」,「有機材料機能層」,「補助電極」,「絶縁構造」,「ゲート電極」,「ソース電極」,「ドレイン電極」,「ビア構造」,「電源線」,「データ線」,「ゲート線」及び「有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板」にそれぞれ対応する。
イ 引用発明において,「駆動薄膜トランジスタQd」(本件発明の「駆動トランジスタ」に対応する。以下,本「(1)本件発明と引用発明の対比」欄において,カギ括弧で囲まれた引用発明の構成に続く丸括弧内の文言は,当該引用発明の構成に対応する本件発明の発明特定事項を表す。),「第1電極710」(第一電極),「第2電極730」(第二電極),「有機発光層720」(有機材料機能層),「補助電極740」(補助電極),「『画素定義膜116』及び『有機発光層720』」(絶縁構造)は,「基板100」(ベース基板)上に積層して形成されるところ,「補助電極749」(補助電極)がデータ線171及び駆動電圧線172(いずれも画素の列数分存在する。)のうちの少なくとも一つと重畳していることから,「補助電極749」(補助電極)が画素の列数分存在することは明らかであるから,引用発明は,本件発明の「ベース基板と,前記ベース基板に設置される駆動トランジスタ,第一電極,第二電極,有機材料機能層,前記第二電極に接続される複数の補助電極,及び前記第二電極と前記補助電極との間に設置される絶縁構造とを備え,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。
ウ 引用発明の「有機発光層720」(有機材料機能層)は,「第1電極710」(第一電極)上に位置しており,当該「有機発光層720」(有機材料機能層)上に「第2電極730」(第二電極)が位置しているから,引用基板発明は,本件発明の「前記有機材料機能層は前記第一電極と前記第二電極との間に位置し,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。
エ 引用発明の「駆動薄膜トランジスタQd」は,「第2ゲート電極155b」(ゲート電極),「第2ソース電極176b」(ソース電極),「第2ドレイン電極177b」(ドレイン電極)及び第2半導体135bを有しており,「第1電極710」(第一電極)が接触孔82を通じて「第2ドレイン電極177b」(ドレイン電極)と連結されているから,引用発明は,本件発明の「前記駆動トランジスタは,ゲート電極,ソース電極及びドレイン電極を備え,前記第一電極は前記ソース電極又は前記ドレイン電極と電気的に接続され,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。
オ 引用発明において,「第1電極710」(第一電極)と「補助電極740」(補助電極)は,ともに,第2層間絶縁膜180の上に形成されているから,引用発明は,本件発明の「前記補助電極は前記第一電極と同層に設置され,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。
カ 前記イで述べたように,引用発明において,「補助電極740」(補助電極)が複数存在することは明らかであるところ,「第2電極730」(第二電極)と複数の「補助電極749」(補助電極)が,複数の「接触孔74」(ビア構造)を通して「第2電極730」(第二電極)と接続されることは明らかであるから,引用発明は,本件発明の「前記絶縁構造に複数のビア構造が設置され,前記第二電極は,それぞれ前記複数の補助電極に接続され,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。(なお,仮に,当該発明特定事項が,各補助電極がそれぞれ複数のビア構造を通して第二電極と接続されることを意味しているのだとしても,引用文献1の図2から看取されるように,引用基板発明の各補助電極740も,それぞれ複数の接触孔74を通して第2電極730に接続されるとものと認められるから,当該発明特定事項が相違点となることはない。)
キ 引用発明の「有機発光素子アレイ基板」は,「駆動電圧線172」(電源線)及び「データ線171」(データ線)を有する「有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板」であるといえるから,本件発明と引用発明は,「電源線及びデータ線を有する有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板であって,」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。
ク 引用発明の「有機発光素子アレイ基板」(有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板)において,「ゲート線121」(ゲート線)は,ほぼ行方向に延びており,「データ線171」(データ線)の垂直方向部分は,ほぼ列方向に伸びていて,両者が交差していることは明らかであるから,引用発明「有機発光素子アレイ基板」(有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板)は,「データ線171」(データ線)及び「駆動電圧線172」(電源線)のほかに,「データ線171」(データ線)と交差する「ゲート線121」(ゲート線)をさらに含んでいるといえる。
また,引用発明の「補助電極740」(補助電極)は,データ線171及び駆動電圧線172に沿って長く形成されているから,その平面形状は,「ストリップ形状」であるといえる。
したがって,本件発明と引用発明は,「前記OLEDアレイ基板が,前記データ線と交差するゲート線をさらに含み,前記補助電極の少なくとも1つの平面形状がストリップ形状であ」る点で一致する。
ケ 引用発明の「第1電極710」(第一電極)は,第2層間絶縁膜180の上に,ITO/Ag/ITOを蒸着した後にパターニングして形成されたものであるところ,ITO及びAgは,本件発明の「透明導電酸化物」及び「金属導電材料」に相当するから,引用発明は,本件発明の「前記第一電極が,金属導電材料の層が透明導電酸化物の2つの層の間に挟まれた構造である,有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板。」なる発明特定事項に相当する構成を具備している。
(2)一致点及び相違点
ア 前記(1)アないしケに照らせば,本件発明と引用発明は,
「ベース基板と,前記ベース基板に設置される駆動トランジスタ,第一電極,第二電極,有機材料機能層,前記第二電極に接続される複数の補助電極,及び前記第二電極と前記補助電極との間に設置される絶縁構造とを備え,前記有機材料機能層は前記第一電極と前記第二電極との間に位置し,前記駆動トランジスタは,ゲート電極,ソース電極及びドレイン電極を備え,前記第一電極は前記ソース電極又は前記ドレイン電極と電気的に接続され,前記補助電極は前記第一電極と同層に設置され,前記絶縁構造に複数のビア構造が設置され,前記第二電極は,それぞれ前記複数の補助電極に接続され,電源線及びデータ線を有する,有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板であって,前記OLEDアレイ基板が,前記データ線と交差するゲート線をさらに含み,前記補助電極の少なくとも1つの平面形状がストリップ形状であり,前記第一電極が,金属導電材料の層が透明導電酸化物の2つの層の間に挟まれた構造である,有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板。」
である点で一致し,次の点で相違する。
相違点1:
本件発明では,ベース基板における補助電極の少なくとも1つの正射影が,ベース基板における電源線及びデータ線の正射影と交差し,補助電極の少なくとも1つの延伸方向が,ゲート線の延伸方向と同じであるのに対して,
引用発明では,補助電極740が,データ線171及び駆動電圧線172のうちの少なくとも一つと重畳しこれらに沿って長く形成されていて,交差しておらず,補助電極740の延伸方向は,ゲート線121と交差する列方向である点。
イ 請求人は,令和5年4月24日に提出した意見書において,引用文献1は,“前記第一電極が,金属導電材料の層が透明導電酸化物の2つの層の間に挟まれた構造である”という特徴を開示していないなどと主張するが(3ページ6ないし9行),引用文献1の【0114】には,ITO/Ag/ITOを蒸着した後にパターニングして形成した第1電極710について,記載されているから,当該請求人の主張は,採用できない。
6 判断
(1)相違点1の容易想到性
前記4(2)ウで認定したとおり,「OLEDアレイ基板の技術分野において,画素電極と同層に形成されるとともに共通電極と接続される補助電極について,画素電極と電気的に接続されることがない限りはその平面形状を自由に設定できること。」(周知事項)は,本件優先日前に当業者に周知であった。
ここで,引用発明の補助電極740は,第2層間絶縁膜180の上にITO/Ag/ITOを蒸着した後にパターニングして形成するという工程により,画素電極である第1電極710とともに形成されたものであり,かつ,共通電極である第2電極に連結された補助電極であるから,第1電極710と電気的に接続されることがない限りはその平面形状を自由に設定できることは,前記周知事項を熟知する当業者が,直ちに理解できることである。
そして,引用発明の補助電極740の平面形状を,ゲート線121の延伸方向である行方向に延伸する形状に変更することによって,格別の技術上の効果を生じるものとは認められない。
そうすると,引用発明において,ゲート線121と交差する列方向に延伸する形状に代えて,ゲート線121の延伸方向である行方向に延伸する形状を採用すること,すなわち相違点1に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が適宜なし得た設計変更にすぎない。
(2)効果について
本件発明の効果は,本件優先日当時,本件発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができた程度のものであり,当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものではない。
(3)小括
以上のとおりであるから,本件発明は,引用発明及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 むすび
前記6(3)のとおり,本件発明は,引用発明及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-003526