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特許拒絶査定不服審判

2022-003261

基材物品および装置の特性および性能を増強するためのコーティング

審判番号
2022-003261
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-070683外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年03月03日
審決日
2023年09月05日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .537-WZ (C23C) / P18 .536-WZ (C23C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第2条、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020- 70683「基材物品および装置の特性および性能を増強するためのコーティング」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月27日出願公開、特開2020-128594〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2016年(平成28年)2月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2015年9月21日、米国(US)、2015年5月28日、米国(US)、2015年2月13日、米国(US)、2015年7月2日、米国(US))を国際出願日とする特許出願(特願2017-542099号)の一部を、平成30年9月5日に新たな出願とした特許出願(特願2018-166431号)の一部を、さらに令和2年4月10日に新たな出願とした特許出願(特願2020-70683号)であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 5月 8日提出 手続補正書

令和3年 4月19日付け 拒絶理由通知書

7月26日提出 意見書及び手続補正書

10月28日付け 拒絶査定

令和4年 3月 3日提出 審判請求書及び手続補正書

12月 5日付け 拒絶理由通知書

令和5年 5月15日提出 意見書

第2 特許請求の範囲の記載

特許請求の範囲の記載は、令和4年3月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

【請求項1】

基材部分上にパターン化ALD被膜を形成させる方法であって、前記基材部分上にALD膜成長を防止するのに有効な表面終端材料からなる層のパターンを形成させ、パターン化された前記基材部分をALD被膜で被覆することを含み、前記基材部分が半導体製造機器の構成要素であり、ALD被膜がアルミナを含み、前記表面終端材料が自己制限ALD層である、方法。

第3 当審における拒絶の理由

当審における令和4年12月5日付けの拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。

1 拒絶理由1(明確性要件)

本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

2 拒絶理由2(実施可能要件)

本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

第4 当審の判断

1 拒絶理由1(明確性要件)

(1)「表面終端材料」について

ア 請求項1の記載によれば、請求項1における「表面終端材料」は、「アルミナを含」む「ALD被膜」について、その「ALD膜成長を防止するのに有効な」ものであり、「自己制限ALD層」であるとされているものの、技術常識を考慮しても、そのような「表面終端材料」が具体的にどのような材質からなる材料であるのか不明である。

イ また、本願の願書に添付した明細書(以下、「本願明細書」という。)には、上記「表面終端材料」に関し、以下の記載がある。

「・方法3:ALD膜成長を遮断する表面終端を有する基材上にパターンを作製する。例えば、H2OおよびTMA(トリメチルアルミニウム)の付着係数が「ゼロ」である表面終端層が使用され得る。本明細書において使用する場合、表面終端層は、自己制限層、例えば、自己制限ALD層である。本明細書において使用する場合、付着係数は、同じ時間の間に、表面に吸着または「付着」した吸着物質原子(または分子)の数と、この表面に影響を及ぼすものの総数との比である。」(【0165】)

「本開示は、基材上にパターン化ALD被膜を形成させる方法であって、基材上にALD膜成長を防止するのに有効な表面終端材料からなる層のパターンを形成させるステップを含む、方法をさらに企図する。特定の実施におけるこのような表面終端材料は、基本的にゼロの、水およびトリメチルアルミニウムの付着係数を示し得る。様々な実施形態において、ALD被膜はアルミナを含んでもよい。」(【0194】)

ウ 本願明細書の上記イの記載によれば、上記「表面終端材料」は、ALD膜成長を遮断する表面終端を有するものであり、水及びトリメチルアルミニウムの付着係数がゼロである表面終端層や、自己制限層(例えば、自己制限ALD層)を意味するとされているものの、技術常識を考慮しても、これらが具体的にどのような材質からなる材料であるのか不明である。

エ 以上のとおり、本願明細書の記載及び技術常識を考慮しても、請求項1における「表面終端材料」が具体的にどのような材質からなる材料であるのか不明であり、請求項1における「表面終端材料」の意味は不明である。

よって、請求項1に係る発明は明確であるとはいえない。

(2)「自己制限ALD層」について

請求項1における「表面終端材料」を構成する「自己制限ALD層」が、具体的にどのような材質からなる材料の層であるのか不明であり、また、本願明細書【0165】の記載(上記(1)イを参照。)及び技術常識を考慮しても、やはり具体的にどのような材質からなる材料の層であるのか不明であり、請求項1における「自己制限ALD層」の意味は不明である。

よって、請求項1に係る発明は明確であるとはいえない。

2 拒絶理由2(実施可能要件)

(1)請求項1に係る発明は、「基材部分上にパターン化ALD被膜を形成させる方法」に関するものであるところ、「基材部分上にパターン化ALD被膜を形成」した「基材部分」という物を生産する方法の発明であるということができる。

物を生産する方法の発明における発明の「実施」とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法2条3項3号)、物を生産する方法の発明について、発明の詳細な説明の記載が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである(すなわち、実施可能要件を満たす)というためには、発明の詳細な説明には、当業者がその物を生産する方法を使用することができ、その方法により生産した物を使用することができる程度に明確かつ十分に記載されている必要がある。以下、検討する。

(2)請求項1に係る発明は、基材部分上にパターン化したアルミナを含むALD被膜を形成させる方法であって、基材部分上に、アルミナを含むALD被膜の成長を防止するのに有効な「自己制限ALD層」である「表面終端材料」からなる層のパターンを形成させておき、そのパターン化された基材部分をアルミナを含むALD被膜で被覆することで、基材部分上にパターン化したアルミナを含むALD被膜を形成させるものと解される。

すなわち、請求項1に係る発明は、基材部分上にパターン化したアルミナを含むALD被膜を形成させるために、所定の「表面終端材料」を用いるものであり、当該「表面終端材料」がアルミナを含むALD被膜の成長を防止することにより、基材部分上にパターン化したアルミナを含むALD被膜を形成することができるものといえる。

(3)しかしながら、上記1で指摘したとおり、本願明細書の記載及び技術常識を考慮しても、請求項1における「表面終端材料」が具体的にどのような材質からなる材料であるのか不明であり、また、請求項1における「表面終端材料」を構成する「自己制限ALD層」が具体的にどのような材質からなる材料の層であるのか不明である。

すなわち、上記1のとおり、本願明細書には、上記「表面終端材料」及び上記「表面終端材料」を構成する「自己制限ALD層」について、具体的に説明されているとはいえない。

(4)そうすると、上記(2)のとおり、請求項1に係る発明が、基材部分上にパターン化したアルミナを含むALD被膜を形成させるために、所定の「表面終端材料」を用いるものであることを踏まえると、アルミナを含むALD被膜の成長を防止するとの作用を有する「表面終端材料」が具体的にどのような材質からなる材料であるのか、また、同作用を有する「表面終端材料」を構成する「自己制限ALD層」が具体的にどのような材質からなる材料の層であるのか、当業者が理解できるとはいえない以上、当業者といえども、請求項1に係る「基材部分上にパターン化ALD被膜を形成」した「基材部分」という物を生産することができるとはいえない。

あるいは、請求項1に係る「基材部分上にパターン化ALD被膜を形成」した「基材部分」という物を生産するためには、「自己制限ALD層」である「表面終端材料」として各種の材料を用いて、当該材料からなる層のパターンを形成し、そのパターン化された基材部分をアルミナを含むALD被膜で被覆することで、実際に基材部分上にパターン化したアルミナを含むALD被膜を形成させることができるかを確認するという、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を行うほかない。

(5)以上によれば、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

3 請求人の主張について

(1)当審は、令和4年12月5日付けの拒絶理由通知書において、「請求項1における「表面終端材料」が具体的にどのような材料であるのか、また、同「自己制限ALD層」が具体的にどのような材料からなる層であるのかについて、本願出願時の技術常識に基づいて、証拠を示しながら具体的に説明すれば、上記拒絶理由はいずれも解消する。」と付記した。

しかしながら、請求人は、令和5年5月15日提出の意見書において、

「(1)「表面終端材料」について
「表面終端材料」という用語は、明細書において、基材上にALD膜成長を防止するのに有効な材料であることが定義されております(段落〔0019〕、〔0194〕)。これにより、ALDサイクル中の選択的な堆積と表面のパターニングが可能になるものです。
(2)「自己制限ALD層」について
「自己制限ALD層」という用語は本発明の技術分野において広く使われております。「ALD」は、ほとんどの蒸着条件(例えば、パルス時間が十分な場合)において各々の反応体が基板表面と自己制御的に反応するものです。この用語の意味については、例えば、ウィキペディアの原子層堆積(ALD)の項目に記載されております。
以上のように、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしたものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしたものであると思料致します。」

と主張するにすぎない。

請求人の上記主張を踏まえても、本願明細書の記載及び技術常識を考慮しても、請求項1における「表面終端材料」が具体的にどのような材質からなる材料であるのか不明であり、また、請求項1における「表面終端材料」を構成する「自己制限ALD層」が具体的にどのような材質からなる材料の層であるのか不明である。

(2)また、請求人は、令和3年7月26日提出の意見書において、

「ADLの技術分野において付着係数が重要なパラメータであり、種々の材料における付着係数は当該技術分野では長年にわたり調べられてきております。そのため、当業者は、H2O及びTMAの付着係数が実質的にゼロである材料を選択し、請求項2に係る発明を実施することは可能であると思料致します。」

と主張する。

確かに、アルミナを含むALD被膜は、前駆体として、H2O(水)及びTMA(トリメチルアルミニウム)を用いることにより形成されるものである(本願明細書【0080】、【0089】、【0090】)から、請求項1における「自己制限ALD層」である「表面終端材料」として、「H2O及びTMAの付着係数が実質的にゼロである材料」を用いることにより、基材部分上にパターン化したアルミナを含むALD被膜を形成させることが可能であると解する余地がある。

しかしながら、本願明細書の記載及び技術常識のほか、請求人の上記主張を考慮しても、「H2O及びTMAの付着係数が実質的にゼロである材料」が、具体的にどのような材質からなる材料であるのか不明である。

なお、この点、前駆体として、O3(オゾン)及びTMA(トリメチルアルミニウム)を用いることにより、アルミナを含むALD被膜を形成する場合(本願明細書【0080】、【0089】、【0090】)についても、同様である。

(3)さらに、請求人は、令和4年3月3日提出の審判請求書において、

「当業者であれば、基材部分状に表面終端材料としての自己制限ALD層を形成することは当然に可能であると思料する。本願発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであると思料する。」

と主張するが、本願明細書の記載及び技術常識を考慮しても、請求項1における「表面終端材料」が具体的にどのような材質からなる材料であるのか不明であり、また、請求項1における「表面終端材料」を構成する「自己制限ALD層」が具体的にどのような材質からなる材料の層であるのか不明である。

(4)以上のとおり、請求人の主張を考慮したとしても、請求項1に係る発明は明確であるとはいえず、また、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

4 まとめ

したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

また、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび

以上のとおり、本願は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず、また、同法同条4項1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-003261

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