特許拒絶査定不服審判
2022-002663
太陽電池パネル
- 審判番号
- 2022-002663
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-183831外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年02月24日
- 審決日
- 2023年01月30日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 分類
- P18 .537-WY (H01L) / P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-183831「太陽電池パネル」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月16日出願公開、特開2020- 61551、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和元年10月4日(パリ条約による優先権主張2018年10月5日、韓国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 9月23日付け:拒絶理由通知書
令和3年 1月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 6月 4日付け:拒絶理由通知書
令和3年 8月31日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年11月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和4年 2月24日 :審判請求書、手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)の提出
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(1)明確性要件違反
本件補正前の請求項8に記載された「前記第1太陽電池の前記第1端」及び「前記第2太陽電池の前記第2端」は、引用元の請求項1に「前記太陽電池パネルの第1端」及び「前記太陽電池パネルの第2端」と記載されていることから、「太陽電池」の端部を意味するのか、「太陽電池パネル」の端部を意味するのか不明であり、よって、この出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)進歩性欠如
本件補正前の請求項1~3、5及び8~9に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、本件補正前の請求項4、7及び10に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、本件補正前の請求項6に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて、それぞれ、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2016-5002号公報
2.特開2016-72637号公報
3.特開2015-119008号公報
3 本願発明について
(1)本願の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明8」という。)は、令和4年2月24日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「複数の太陽電池と、前記複数の太陽電池を一方向に接続する複数の配線材とを含む太陽電池ストリングと、
前記太陽電池ストリングを密封するシール材と、
前記シール材の上で前記太陽電池ストリングの一面上に位置する第1カバー部材と、
前記シール材の上で前記太陽電池ストリングの他面上に位置する第2カバー部材と、
を含み、
前記複数の太陽電池の内、少なくとも一つに位置する前記複数の配線材は、
第1配線材と、
前記第1配線材より外側に配置される第2配線材と、を含み、
前記第2配線材の幅は、前記第1配線材の幅より狭く、
前記太陽電池ストリングは、前記一方向と交差する交差方向について、太陽電池パネルにおいて、前記太陽電池パネルの第1端に隣接して配置される第1太陽電池ストリングと、前記太陽電池パネルの第2端に隣接して配置される第2太陽電池ストリングを含み、
前記第1太陽電池ストリングに含まれる複数の第1太陽電池の内、少なくとも一つにおいては、前記第1端と前記第2端とにそれぞれ隣接して、複数の前記第2配線材が配置され、前記第1端に隣接して配置される前記複数の第2配線材は、前記第1端に隣接するほど幅が狭くなり、前記第2端に隣接して配置される前記複数の第2配線材は、前記第2端に隣接するほど幅が狭くなり、
前記第2太陽電池ストリングに含まれる複数の第2太陽電池の内、少なくとも一つにおいては、前記第1端と前記第2端とにそれぞれ隣接して、複数の前記第2配線材が配置され、前記第1端に隣接して配置される前記複数の第2配線材は、前記第1端に隣接するほど幅が狭くなり、前記第2端に隣接して配置される前記複数の第2配線材は、前記第2端に隣接するほど幅が狭くなる、太陽電池パネル。」
(2)本願発明2~8は、本願発明1の特定事項を全て含む発明である。
4 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2016-5002号公報(引用文献1)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
「【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板に形成され、異なる導電性電荷を収集する第1電極と第2電極を含む複数の太陽電池と、
前記複数の太陽電池の内で互いに隣接した第1太陽電池と第2太陽電池の前記第1電極と前記第2電極に接続された複数の配線であって、前記第1太陽電池と前記第2太陽電池の直列接続のために導電性接着剤で接続し、又は、前記第1太陽電池と第2太陽電池の前記第1電極と第2電極から絶縁層で絶縁される複数の配線と、
前記第1太陽電池と前記第2太陽電池との間に位置して前記複数の配線に接続されるコネクタを含み、
前記コネクタの幅は、前記第1太陽電池と前記コネクタとの間の第1距離又は前記第2太陽電池と前記コネクタとの間の第2距離の内の少なくとも一つと同じか大きく、
前記コネクタ上の前記絶縁層の塗布面積は、前記コネクタ上の前記導電性接着剤の塗布面積より大きい、太陽電池モジュール。」
「【請求項11】
前記第1電極と前記第2電極は、前記半導体基板の後面に互いに並行に交互に形成され、
前記複数の配線は、前記第1太陽電池の第1電極を前記第2太陽電池の第2電極に接続させる第1配線と、
前記第1太陽電池の第2電極を前記第2太陽電池の第1電極に接続させる第2配線を含む、請求項1に記載の太陽電池モジュール。」
「【0031】
図1は、本発明の一実施の形態に係る太陽電池モジュールの全体様子を示す図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態に係る太陽電池モジュールの後面平面様子を示す図であり、図3は、図2に適用される太陽電池の一例を示す図であり、図4は、図3に示された太陽電池の第1、第2電極(C141、C142)のパターンを示して図であり、図5は、図2でCSx1-CSx1ラインに沿った断面様子を示す図であり、図6は、コネクタの詳細の説明のために図2においてCSy1-CSy1ラインに沿った断面様子を示す図であり、図7は、コネクタ(Cn)の光反射効果を説明するための図である。
【0032】
示されたように、この実施の形態の太陽電池モジュール10は、コネクタ(Cn)によって接続された複数の太陽電池モジュールが列をなして形成された複数のストリング11と互いに隣り合ったストリング11を接続させるブッシュバー13を含みから構成されている。
【0033】
まず、ストリング11は、複数の太陽電池110が1列で配置され、隣接したものとはコネクタ(Cn)によって互に接続され、1列のストリングが互いに接続されている。この図では、10個の太陽電池110が1列を成していることで例示し、第1乃至第6ストリング(11a-11f)が存在することで例示する。」
「【0117】
このように、第1、第2配線(IC1、IC2)とコネクタ(Cn)により複数個の太陽電池(C1、C2)が直列接続されたストリングは、透明基板(FG)と第1充填材(EC1)と、第2充填材(EC2)及び後面シート(BS)との間に配置された状態で一緒にラミネート(lamination)され、図7に示すように、一つの一体化されたモジュールで形成することができる。」
「【0170】
図20で例示するように、この実施の形態の太陽電池は、薄い厚さを有する立方体形状を有しており、光が入射される面である前面には、第1電極113が位置して配線材125と接続される。この第1電極113は、半導体基板111と反対の導電性の電荷を収集する。一例では、半導体基板111がp型半導体基板であれば、第1電極113は、電子を収集する。」
「【0185】
以下、図22~図30を参照するに、配線材の太さが異なりに構成される実施の形態について説明する。以下で説明される実施の形態を説明するにあたり、太陽電池モジュールの構成は、前述したようと同一であるが、説明の便宜のために、単に太陽電池に位置する配線材のみを選択的に示して説明する。
【0186】
図22は、太陽電池100が3つの領域に区画されており、各領域に属する配線材の太さが領域に応じて異なることを示しており、図23は、図22のVIII-VIII’線に沿って切断した端面の様子を示す。
【0187】
配線材25は、太陽電池100の後面に隣接したものと並行するように配置されて電極と接続されている。この配線材25は、全体でストライプ配列を成しており、すべての領域で配線材は、隣接したものと一定の距離で離れている。したがって、電極ピッチを示す「d1」「d2」「d3」は「A1」「A2」「A3」においてすべて同じである。
【0188】
図において、「A1」「A2」「A3」は、配線材25の長さ方向と交差する横方向に基づいて、太陽電池を3つの領域に分けたとき、各領域を示す。第2領域(A2)は、基板の中央を示し、第1領域(A1)と第3領域(A3)は、それぞれ、第2領域(A2)を基準に左側と右側の領域である。
【0189】
この実施の形態において、第1領域(A1)から第3領域(A3)は、位置に応じて、太陽電池が曲がっ違いに基づいて割ったものである。
【0190】
配線材25が熱変形しながら発生する応力は、配線材の長さ方向に伝播され、太陽電池を曲げ、太陽電池の反りの程度は配線材から伝播される応力を含めて様々な変数、一例として、太陽電池の厚さの違い、形成物質に応じた物性の違いなどにより、位置に応じて異なる場合がことがある。そして、このような曲げ違いは、太陽電池の領域に関係なく、同じ条件の配線材を付着した後、熱工程を行い、この時、確認される太陽電池の曲げを持って、知ることができる。
【0191】
この実施の形態においては、このようなストレスの違いを減少させ、太陽電池が曲がる問題を減少させる。
【0192】
以下の説明では、第2領域(A2)のストレスは、第1領域(A1)と第3領域(A3)のストレスより小さく、第1領域(A1)と第3領域(A3)のストレスは、同じことで仮定する。
【0193】
この実施の形態においては、ストレスが小さい第2領域(A2)には、太い配線材25bが配置され、第1領域(A1)と第3領域(A3)には、細い配線材25aが配置される。
【0194】
図に示すように、第1領域(A1)において、長方形の断面を有する配線材25は、第1横幅(w1)と第1縦幅(t1)を有する。これと比較して第2領域(A2)において、配線材25は、第1横幅(w1)より大きい第2横幅(w2)と第1縦幅(t1)より大きい第2縦幅(t2)を有するので、第2領域(A2)に配置された大きい配線材25bの大きさは、第1領域(A1)に配置された小さな配線材25aより大きいことがある。
【0195】
また、第3領域(A3)に配置された配線材25は、第3横幅(w3)と第3縦幅(t3)を有し、第3横幅(w3)と第3縦幅(t3)は、すべて第2横幅(w2)と第2縦幅(t2)より小さい。
【0196】
この実施の形態においては、このように、ストレスが小さい第2領域(A2)に太い配線材25bを配置し、ストレスが大きい第1領域と第3領域には細い配線材25aを配置し、第2領域及び第3領域で配線材の長さ方向に伝播される応力を減少させ第2領域及び第3領域でのストレスを減少させる。
【0197】
すなわち、配線材は長さ方向に収縮と膨張をするため、その長さ方向に収縮と膨張に伴う応力が伝播されながら、太陽電池を曲げ、応力は媒質の配線材の断面積が大きいほどよく伝播される。ところが、この実施の形態においては、ストレスが大きい第1領域と第3領域には薄い配線材が位置しており、応力がよく伝播されないため、結果的に第1領域乃至第3領域のストレス偏差を減少することができる。
【0198】
図24及び図25は、前述したところと逆に配置された配線材を説明する図である。この実施の形態では、前述したものと異なり、第2領域(A2)のストレスは、第1領域(A1)と第3領域(A3)のストレスより大きい。」
「【0217】
以上の説明では、配線材が細い配線材と太い配線材の2つに分かれることで説明したが、必要によって太さをさらに細分化させて配置することもまた可能である。」
「図1
[図:0001394834000001.jpg]
」
「図2
[図:0001394834000002.jpg]
」
「図7
[図:0001394834000003.jpg]
」
「図23
[図:0001394834000004.jpg]
」
「図24
[図:0001394834000005.jpg]
」
(2)上記(1)より、引用文献1には、配線材の太さが異なって構成される実施の形態(【0185】~【0218】、図22~30)に係る太陽電池(以下「配線材太さ多様太陽電池」という。)について、以下の技術的事項が記載されていることが認められる。
ア 配線材太さ多様太陽電池を用いた太陽電池モジュールの構成は、【0185】の「以下で説明される実施の形態を説明するにあたり、太陽電池モジュールの構成は、前述したようと同一である」の記載によれば、第1の実施の形態(【0031】~【0133】、図1~7)に係る太陽電池モジュールと同一であること。
イ 配線材太さ多様太陽電池は、【0192】及び【0193】の記載によれば、太陽電池のストレスの違いに基づいて複数の領域に区画されること、ストレスの小さい領域は太い配線材が配置され、ストレスの大きい領域は細い配線材が配置されること。
(3)以上より、引用文献1には、配線材太さ多様太陽電池を用いた太陽電池モジュールに係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献1の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。
<引用発明>
「半導体基板と、前記半導体基板に形成され、異なる導電性電荷を収集する第1電極と第2電極を含む複数の太陽電池と、
前記複数の太陽電池の内で互いに隣接した第1太陽電池と第2太陽電池の前記第1電極と前記第2電極に接続された複数の配線であって、前記第1太陽電池と前記第2太陽電池の直列接続のために導電性接着剤で接続される複数の配線と、
前記第1太陽電池と前記第2太陽電池との間に位置して前記複数の配線に接続されるコネクタを含み、
前記コネクタの幅は、前記第1太陽電池と前記コネクタとの間の第1距離又は前記第2太陽電池と前記コネクタとの間の第2距離の内の少なくとも一つと同じか大きく、(請求項1)
前記第1電極と前記第2電極は、前記半導体基板の後面に互いに並行に交互に形成され、
前記複数の配線は、前記第1太陽電池の第1電極を前記第2太陽電池の第2電極に接続させる第1配線と、
前記第1太陽電池の第2電極を前記第2太陽電池の第1電極に接続させる第2配線を含む、太陽電池モジュールであって、(請求項11)
太陽電池モジュールは、複数のストリング11と互いに隣り合ったストリング11を接続させるブッシュバー13を含み、(【0032】)
ストリング11は、複数の太陽電池が1列で配置され、(【0033】)
複数個の太陽電池(C1、C2)が直列接続されたストリング11は、透明基板(FG)と第1充填材(EC1)と、第2充填材(EC2)及び後面シート(BS)との間に配置された状態で一緒にラミネートされ、(【0117】)
太陽電池は、配線の長さ方向と交差する横方向に、ストレスの違いに基づいて複数の領域に区画され、ストレスの小さい領域は太い配線材が配置され、ストレスの大きい領域は細い配線材が配置される、(上記(2)イ)
太陽電池モジュール。(上記(2)ア)」
5 引用発明との対比及び判断
(1)本願発明1について
ア 対比(一致点及び相違点)
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)本願発明1の「複数の太陽電池と、前記複数の太陽電池を一方向に接続する複数の配線材とを含む太陽電池ストリングと、前記太陽電池ストリングを密封するシール材と、前記シール材の上で前記太陽電池ストリングの一面上に位置する第1カバー部材と、前記シール材の上で前記太陽電池ストリングの他面上に位置する第2カバー部材と、を含み」との特定事項について
引用発明は、「複数の太陽電池が1列で配置され」た「ストリング」と「隣接した第1太陽電池と第2太陽電池の前記第1電極と前記第2電極に接続された複数の配線」を有し、当該「ストリング」は、「透明基板(FG)と第1充填材(EC1)と、第2充填材(EC2)及び後面シート(BS)との間に配置された状態で一緒にラミネートされ」ている。
そうすると、引用発明の「太陽電池」、「配線」、「ストリング」、「第1充填材及び第2充填材」、「透明基板」及び「後面シート」は、それぞれ本願発明1の「太陽電池」、「配線材」、「太陽電池ストリング」、「シール材」、「第1カバー部材」及び「第2カバー部材」に相当し、引用発明は、本願発明1の上記特定事項を満たしているといえる。
(イ)本願発明1の「前記複数の太陽電池の内、少なくとも一つに位置する前記複数の配線材は、第1配線材と、前記第1配線材より外側に配置される第2配線材と、を含み、前記第2配線材の幅は、前記第1配線材の幅より狭く、」との特定事項について
引用発明の「太陽電池」は、「配線の長さ方向と交差する横方向に、ストレスの違いに基づいて複数の領域に区画され、ストレスの小さい領域は太い配線材が配置され、ストレスの大きい領域は細い配線材が配置される」ものである。そして、引用発明の「細い配線材」(以下「細配線材」という。)の幅は、「太い配線材」(以下「太配線材」という。)の幅よりも狭い。
そうすると、引用発明の(「ストレスの大きい領域」に配置される)細配線材及び(「ストレスの小さい領域」に配置される)太配線材は、それぞれ、本願発明1の「第2配線材」及び「第1配線材」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明とは、「前記複数の太陽電池の内、少なくとも一つに位置する前記複数の配線材は、第1配線材と、」「第2配線材と、を含み、前記第2配線材の幅は、前記第1配線材の幅より狭」い点で共通する。しかし、本願発明1は、「(幅が狭い)第2配線材」が「(幅が太い)第1配線材より外側に配置される」のに対し、引用発明は、そうであるのか不明である。
(ウ)本願発明1の「前記太陽電池ストリングは、前記一方向と交差する交差方向について、太陽電池パネルにおいて、前記太陽電池パネルの第1端に隣接して配置される第1太陽電池ストリングと、前記太陽電池パネルの第2端に隣接して配置される第2太陽電池ストリングを含み」との特定事項について
引用発明の「太陽電池モジュール」は、「複数のストリング11と互いに隣り合ったストリング11を接続させるブッシュバー13」を含むものであるところ、この「ストリング11」は、「複数の太陽電池が1列で配置され」たものである。そうすると、引用発明の「ストリング11」は、「複数の太陽電池が1列で配置され」る方向と交差する方向に配列されることによって、「複数のストリング11」を形成していると理解できる。とすれば、引用発明の「ストリング11」には、「太陽電池モジュール」における当該交差する方向の一端(以下「モジュール一端」という。)に隣接する「ストリング」(以下「一端側ストリング」という。)と、当該一端とは反対側の他端(以下「モジュール他端」という。)に隣接する「ストリング」(以下「他端側ストリング」という。)とが含まれるといえる。そして、このようなモジュール一端及びモジュール他端が、それぞれ、本願発明1の「第1端」及び「第2端」に相当し、同じく一端側ストリング及び他端側ストリングが、それぞれ、本願発明1の「第1太陽電池ストリング」及び「第2太陽電池ストリング」に相当するといえる。
よって、引用発明は、本願発明1の上記特定事項を満たしている。
(エ)本願発明1の「前記第1太陽電池ストリングに含まれる複数の第1太陽電池の内、少なくとも一つにおいては、前記第1端と前記第2端とにそれぞれ隣接して、複数の前記第2配線材が配置され、前記第1端に隣接して配置される前記複数の第2配線材は、前記第1端に隣接するほど幅が狭くなり、前記第2端に隣接して配置される前記複数の第2配線材は、前記第2端に隣接するほど幅が狭くなり」との特定事項について
引用発明では、一端側ストリングに含まれる「複数の太陽電池」の内の少なくとも一つ(以下「一端側太陽電池」という。)には、太配線材及び細配線材が配置されている。
(オ)本願発明1の「前記第2太陽電池ストリングに含まれる複数の第2太陽電池の内、少なくとも一つにおいては、前記第1端と前記第2端とにそれぞれ隣接して、複数の前記第2配線材が配置され、前記第1端に隣接して配置される前記複数の第2配線材は、前記第1端に隣接するほど幅が狭くなり、前記第2端に隣接して配置される前記複数の第2配線材は、前記第2端に隣接するほど幅が狭くなる」との特定事項について
引用発明では、他端側ストリングに含まれる「複数の太陽電池」の内の少なくとも一つ(以下「他端側太陽電池」という。)には、太配線材及び細配線材が配置されている。
(カ)引用発明の「太陽電池モジュール」は、本願発明1の「太陽電池パネル」に相当する。
(キ)以上より、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「複数の太陽電池と、前記複数の太陽電池を一方向に接続する複数の配線材とを含む太陽電池ストリングと、
前記太陽電池ストリングを密封するシール材と、
前記シール材の上で前記太陽電池ストリングの一面上に位置する第1カバー部材と、
前記シール材の上で前記太陽電池ストリングの他面上に位置する第2カバー部材と、
を含み、
前記複数の太陽電池の内、少なくとも一つに位置する前記複数の配線材は、
第1配線材と、
第2配線材と、を含み、
前記第2配線材の幅は、前記第1配線材の幅より狭く、
前記太陽電池ストリングは、前記一方向と交差する交差方向について、太陽電池パネルにおいて、前記太陽電池パネルの第1端に隣接して配置される第1太陽電池ストリングと、前記太陽電池パネルの第2端に隣接して配置される第2太陽電池ストリングを含む、太陽電池パネル。」
<相違点>
・相違点1
「複数の太陽電池の内、少なくとも一つに位置する」「(幅が狭い)第2配線材」と「(幅が太い)第1配線材」との配置関係について、本願発明1では、「(幅が狭い)第2配線材」が「(幅が太い)第1配線材より外側に配置される」のに対し、引用発明では、細配線材と太配線材との配置関係が不明である点。
・相違点2
「第1太陽電池ストリングに含まれる複数の第1太陽電池の内、少なくとも一つ」について、本願発明1では、「前記第1端と前記第2端とにそれぞれ隣接して、複数の前記(幅が狭い)第2配線材が配置され、前記第1端に隣接して配置される前記複数の(幅が狭い)第2配線材は、前記第1端に隣接するほど幅が狭くなり、前記第2端に隣接して配置される前記複数の(幅が狭い)第2配線材は、前記第2端に隣接するほど幅が狭くな」るのに対し、引用発明では、太配線材及び細配線材が配置されているものの、本願発明1のように配置されているかは不明である点。
・相違点3
「第2太陽電池ストリングに含まれる複数の第2太陽電池の内、少なくとも一つ」について、本願発明1では、「前記第1端と前記第2端とにそれぞれ隣接して、複数の前記(幅が狭い)第2配線材が配置され、前記第1端に隣接して配置される前記複数の(幅が狭い)第2配線材は、前記第1端に隣接するほど幅が狭くなり、前記第2端に隣接して配置される前記複数の(幅が狭い)第2配線材は、前記第2端に隣接するほど幅が狭くな」るのに対し、引用発明では、太配線材及び細配線材が配置されているものの、本願発明1のように配置されているかは不明である点。
イ 判断
(ア)事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
a 引用発明において相違点2に係る構成に至るためには、引用発明が、以下のように構成されることが少なくとも必要であると解される。
すなわち、引用発明の(「太陽電池モジュール」に含まれる「複数の太陽電池」を構成する)「配線の長さ方向と交差する横方向に、ストレスの違いに基づいて複数の領域に区画され」た「太陽電池」について、(i)当該「太陽電池」の「複数の領域」が、4つ以上の領域に区画されていること、(ii)当該「複数の領域」のうち、当該「太陽電池」の一端の側から一つ目の領域に配置された配線材の幅が、当該「太陽電池」の一端の側から二つ目の領域に配置された配線材の幅より細く構成されていること、つまり、当該一つ目の領域のストレスが当該二つ目の領域のストレスよりも大きいこと、(iii)当該「複数の領域」のうち、当該「太陽電池」の他端の側から一つ目の領域に配置された配線材の幅が、当該「太陽電池」の他端の側から二つ目の領域に配置された配線材の幅より細く構成されていること、つまり、当該一つ目の領域のストレスが当該二つ目の領域のストレスよりも大きいこと、(iv)上記(i)~(iii)を満たす「太陽電池」が一端側ストリングに含まれていること、が少なくとも必要である。
b そこで、引用発明から出発した当業者が上記構成を得ることに容易に至るかについて検討する。
引用発明の(「太陽電池モジュール」に含まれる「複数の太陽電池」を構成する)「太陽電池」は、「ストレスの違いに基づいて複数の領域に区画され」ており、当該「太陽電池」に配置される「配線材」は、「複数の領域のストレスの違いに応じて、複数の領域毎に太さを異ならせて配置され、ストレスの小さい領域は太い配線材が配置され、ストレスの大きい領域は細い配線材が配置される」ものである。
ここで、当該「ストレスの違い」について、引用文献1(【0190】)には、「配線材25が熱変形しながら発生する応力は、配線材の長さ方向に伝播され、太陽電池を曲げ、太陽電池の反りの程度は配線材から伝播される応力を含めて様々な変数、一例として、太陽電池の厚さの違い、形成物質に応じた物性の違いなどにより、位置に応じて異なる場合がことがある。そして、このような曲げ違いは、太陽電池の領域に関係なく、同じ条件の配線材を付着した後、熱工程を行い、この時、確認される太陽電池の曲げを持って、知ることができる。」と記載されていることから、当該「ストレスの違い」は、「太陽電池の厚さの違い」や「形成物質に応じた物性の違い」などによって、太陽電池の位置に応じて異なるものと理解できる。
これを踏まえ、引用発明の「太陽電池」の「ストレスの違い」がどのようになっているのかをみると、当該「太陽電池」は「薄い厚さを有する立方体形状」であって、このような形状の太陽電池はインゴットなどをスライスして形成されることが技術常識であることから、当該「ストレスの違い」は、スライスに伴う製造誤差等により生じるものと解され、よって、それぞれの「太陽電池」毎に異なるものと解される。そして、この理解は、引用文献1には、図23の例(中央にある第2領域が端部にある第1及び第3領域よりもストレスが小さい。)のほかに、図24及び25の例(中央にある第2領域が端部にある第1及び第3領域よりもストレスが大きい。)が記載されていることからも首肯できる。
このように、引用発明は、(「太陽電池モジュール」に含まれる「複数の太陽電池」を構成する)「太陽電池」のストレスがそれぞれの「太陽電池」毎に異なっていることを前提とした上で、それぞれの「太陽電池」毎にストレスを測定し、その測定結果に基づいて、それぞれの「太陽電池」毎に細配線材と太配線材の配置を定めるものと解される。そうすると、引用発明の「複数の太陽電池」の中に、そもそも、上記a(i)~(iii)を満たす「太陽電池」が存在するとは限らないし、仮に、存在するとしても、上記a(iv)のとおりに一端側ストリングに存在するとも限らない。
そうだとすれば、引用発明において相違点2に係る構成に至るためには、引用発明における一端側ストリングに含まれる少なくとも一つの「太陽電池」を、上記a(i)~(iii)を満たすものとする動機付けが存在するかが問題となるが、引用文献1に記載された技術的事項は、それぞれの「太陽電池」毎のストレスに対応するというものでしかなく、どのようなストレスを備えた「太陽電池」をどこに配置するかにまで考慮に入れるものとはいえないから、「複数のストリング11」が存在する中で、あえて、一端側ストリングにそのような「太陽電池」を設ける動機付けが存在するとは認められない。そして、本願発明1は、相違点2に係る構成を備えることにより、太陽電池パネルの端で発生することができる配線材の損傷、断線などの問題を防止することができる(【0019】)という効果を奏するものと認められる。
c これに対し、原査定は、引用発明の(「太陽電池モジュール」に含まれる「複数の太陽電池」を構成する)「太陽電池」が上記a(i)~(iii)を満たすもののみであることを前提にした判断をしていると解されるが、上記bで説示したとおりである。
d 小括
以上によれば、引用発明において、相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(イ)相違点3について
相違点3は、相違点2とは、「第2太陽電池ストリング」に係る構成である点でのみ異なるものであるから、引用発明の「他端側ストリング」に含まれる少なくとも一つの太陽電池(つまり、他端側太陽電池)の配線材を、相違点3に係る構成とすることが当業者にとって容易になし得たものであるかは、上記(ア)と同様に判断される。
よって、引用発明において、相違点3に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
ウ 小括
そして、上記の判断は、原査定が引用した引用文献2及び3に記載された技術的事項をみても左右されるものではない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献1~3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本願発明2~8について
本願発明2~8は、上記相違点2及び相違点3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献1~3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
6 原査定の明確性要件違反の理由について
原査定が上記理由の対象とした本件補正前の請求項8は、本件補正により削除された。
なお、本願発明1の「前記第1太陽電池ストリングに含まれる複数の第1太陽電池の内、少なくとも一つにおいては、前記第1端と前記第2端とにそれぞれ隣接して、複数の前記第2配線材が配置され」るという記載では、「前記第1太陽電池ストリング」に配置される「複数の前記第2配線材」が、「太陽電池パネル」の「第1端」に「隣接」すると同時に、「太陽電池パネル」の「第2端」にも「隣接」することになるとされていることから、「隣接」の文言に照らして、そのようなことがあり得るのかが問題となる余地がある。
しかしながら、本願発明1の「前記第1端と前記第2端とにそれぞれ隣接」と記載されている当該「隣接」の文言は、「何それの隣に接しているもの」のみならず、「何それの側にあるもの」程度に広く解釈し得るものと理解できるから、上記の問題は生じないといえる。本願発明1の「前記第2太陽電池ストリングに含まれる複数の第2太陽電池の内、少なくとも一つにおいては、前記第1端と前記第2端とにそれぞれ隣接して、複数の前記第2配線材が配置され」るという記載についても同様である。
7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-002663