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特許拒絶査定不服審判

2022-002380

吹き付け塗装用のポリオール組成物、発泡性ポリウレタンプレミックス組成物、および発泡性ポリウレタン組成物

審判番号
2022-002380
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-242346外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年02月17日
審決日
2023年11月27日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C08G) / P18 .575-Z (C08G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-242346「吹き付け塗装用のポリオール組成物、発泡性ポリウレタンプレミックス組成物、および発泡性ポリウレタン組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日出願公開、特開2018-100404〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成29年12月19日(優先権主張 平成28年12月19日)の出願であって、以降の手続の経緯は次のとおりである。 令和3年2月22日 刊行物等提出書 令和3年6月8日付け 拒絶理由通知書 令和3年8月11日 意見書及び手続補正書の提出 令和3年12月3日付け 拒絶査定 令和4年2月17日 審判請求書及び手続補正書の提出 第2 令和4年2月17日になされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年2月17日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、補正前の請求項1の 「ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、ポリオール、触媒、発泡剤、整泡剤、および難燃剤を含有し、 ポリオール100重量部に対する前記触媒の量が10重量部~56重量部であり、 前記触媒がカルボン酸アルカリ金属塩及び4級アンモニウム塩を含み、 前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含み、 前記難燃剤は粉体難燃剤を含み、粉体難燃剤の量がポリオール100重量部に対して13~99重量部であり、ポリオール100重量部に対して13~59重量部の赤リンを含む、 吹き付け塗装用のポリオール組成物。」 を 「ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、ポリオール、触媒、発泡剤、整泡剤、および難燃剤を含有し、 ポリオール100重量部に対する前記触媒の量が10重量部~56重量部であり、 前記触媒が三量化触媒とウレタン化触媒とを含み、 前記三量化触媒がカルボン酸アルカリ金属塩及び4級アンモニウム塩を含み、 前記ウレタン化触媒がウレタン化金属触媒を含み、 前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含み、 前記難燃剤は粉体難燃剤を含み、粉体難燃剤の量がポリオール100重量部に対して13~99重量部であり、ポリオール100重量部に対して13~59重量部の赤リンを含む、 吹き付け塗装用のポリオール組成物。」(下線は補正箇所である。) とするものである。 2 補正の適否 (1)補正の目的 本件補正は、補正前の請求項1のポリオール組成物において、「前記触媒が三量化触媒とウレタン化触媒とを含み」、「前記ウレタン化触媒がウレタン化金属触媒を含み、」という限定を加えるとともに、「カルボン酸アルカリ金属塩及び4級アンモニウム塩を含」む「触媒」が「三量化触媒」であることを限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)独立特許要件についての検討 本件補正は、上記(1)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。 ア 本願補正発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりである。 「ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、ポリオール、触媒、発泡剤、整泡剤、および難燃剤を含有し、 ポリオール100重量部に対する前記触媒の量が10重量部~56重量部であり、 前記触媒が三量化触媒とウレタン化触媒とを含み、 前記三量化触媒がカルボン酸アルカリ金属塩及び4級アンモニウム塩を含み、 前記ウレタン化触媒がウレタン化金属触媒を含み、 前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含み、 前記難燃剤は粉体難燃剤を含み、粉体難燃剤の量がポリオール100重量部に対して13~99重量部であり、ポリオール100重量部に対して13~59重量部の赤リンを含む、 吹き付け塗装用のポリオール組成物。」 イ 引用文献10の記載事項 拒絶査定において引用文献10として引用された、本願の優先日(平成28年12月19日)前の平成28年12月8日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2016-205624号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は合議体が付した。以下同様。) 「【請求項1】 ポリイソシアネート、ポリオール、三量化触媒、発泡剤、整泡剤、および添加剤を含み、前記添加剤が、赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ酸含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、および針状フィラーから選ばれる少なくとも1つとを含む、難燃性ウレタン組成物からなる発泡ポリウレタン断熱層を備えた配管または機器用耐火性断熱被覆材。」 「【0047】 発泡剤 難燃性ウレタン組成物に使用される発泡剤は、ウレタン樹脂の発泡を促進する。 【0048】 発泡剤の具体例としては、例えば、水、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、 ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、 トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン、CHF3、CH2F2、CH3F、例えばトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等のハイドロフルオロオレフィン(HFO)等のフッ素化合物、 ジクロロモノフルオロエタン、(例えば、HCFC141b (1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22 (クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン)) 等のハイドロクロロフルオロカーボン化合物、 HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等のハイドロクロロフルオロカーボン化合物、 ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物、あるいはこれらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。」 「【0056】 また難燃性ウレタン組成物に使用される赤リンの添加量は、ウレタン樹脂100重量部に対して、3.0重量部~18重量部の範囲であることが好ましい。 【0057】 赤リンの範囲が3.0重量部以上の場合は、難燃性ウレタン樹脂組成物の自己消火性が保持され、また18重量部以下の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。」 「【0106】 本発明に使用する針状フィラーの添加量に特に限定はないが、ウレタン樹脂100重量部に対して、3.0~30重量部の範囲であることが好ましく、3.0~20重量部の範囲であることがより好ましく、3.0~18重量部の範囲であることが更に好ましく、6.0~18重量部の範囲であることが最も好ましい。 【0107】 前記針状フィラーの範囲が3.0重量部以上の場合は、本発明に係る難燃断熱材組成物の燃焼後の形状が保持され、また30重量部以下の場合には本発明に係る難燃断熱材組成物の発泡が阻害されない。 【0108】 本発明に使用する添加剤の添加量はウレタン樹脂100重量部に対して4.5重量部~70重量部の範囲であることが好ましく、4.5重量部~40重量部の範囲であることがより好ましく、4.5重量部~30重量部の範囲であることが更に好ましく、4.5重量部~20重量部の範囲であることが最も好ましい。 【0109】 添加剤の範囲が4.5重量部以上の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物からなる成形品が火災の熱により形成される緻密残渣が割れることを防止でき、70重量部以下の場合には難燃性ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。」 「【0111】 その他の成分 難燃性ウレタン組成物は、上記の三量化触媒以外の触媒をさらに含んでもよく、そのような触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”, N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N, N, N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチル, N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、イミダゾール環中の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物等の窒素原子含有触媒等が挙げられる。」 「【0125】 次に、難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化方法について説明する。 【0126】 難燃性ウレタン樹脂組成物のそれぞれの成分を混合すると反応が始まり時間の経過と共に粘度合が上昇し、流動性を失う。例えば難燃性ウレタン樹脂組成物を配管へ直接噴霧、塗布(刷毛塗りを含む)、印刷、浸漬、吹付するか、金型、枠材等の容器へ注入するか等して硬化させることにより、難燃性ウレタン樹脂組成物からなる難燃性ウレタン樹脂発泡体が得られ、配管状の発泡ポリウレタン断熱層を形成する。」 「【実施例】 【0134】 実施例1 難燃性ポリウレタン発泡体の評価試験 表1に示した配合により、実施例1~19に係る難燃性ウレタン樹脂組成物を、(1)ポリオール組成物、(2)ポリイソシアネート、および(3)添加物の3つの成分に分割して準備した。なお表中の各成分の詳細は次の通りである(各成分の割合をポリイソシアヌレート樹脂100重量部に対する重量部で示す)。同様に、表2に示した配合により、比較例1~14に係る難燃性ウレタン樹脂組成物も準備した。 【0135】 (1)ポリオール組成物 ・ポリオール化合物 (A-1) p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRFK-505、水酸基価=250mgKOH/g) ・整泡剤 ポリアルキレングリコール系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名:SH-193) ・三量化触媒 (B-1)オクチル酸カリウム(東京化成工業社製、製品コード:P0048) (B-2)3量化触媒(東ソー社製、製品名:TOYOCAT-TR20) ・ウレタン化触媒 ペンタメチルジエチレントリアミン(東ソー社製、製品名:TOYOCAT-DT) ・発泡剤 水 HFC HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、日本ソルベイ株式会社製)及びHFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、セントラル硝子株式会社製)、混合比率HFC-365mfc:HFC-245fa=7:3、以下「HFC」という) HFO SOLSTICE LBA(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HONEYWELL JAPAN社製、以下「HFO」という) (2)ポリイソシアネート MDI(東ソー株式会社製、製品名:ミリオネートMR-200)粘度:167mPa・s (3)添加剤 (C-1) 赤リン (燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140) (C-2) リン酸二水素アンモニウム(太平化学産業社製) (C-3) トリス(β―クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP、以下「TMCPP」という。) (C-4) トリクレジルホスフェート(大八化学社製、製品名:TCP、以下「TCP」という。) (C-5) クレジルジフェニルホスフェート(大八化学社製、製品名:CDP、以下「CDP」という。) (C-6) ヘキサブロモベンゼン(マナック社製、製品名:HBB-b、以下「HBB」という。) (C-7) ホウ酸亜鉛(早川商事社製、製品名:Firebrake ZB) (C-8) 三酸化アンチモン(日本精鉱社製、製品名:パトックスC) (C-9) 水酸化アルミニウム(アルモリックス社製、製品名:B-325) (C-10)針状フィラー(キンセイマテック社製、ウォラストナイト、製品名:SH1250) 【0136】 下記の表1及び表2の配合に従い、(1)ポリオール組成物の成分および(3)添加物の成分を1000mLポリプロピレンビーカーにはかりとり、汎用攪拌機(HEIDON社製、製品名:BL1200)にて、25℃、1分間500rpmで撹拝した。撹拝後の(1)ポリオール組成物の成分および(3)添加物の成分の混練物に対して、(2)ポリイソシアネートの成分を加え、上記汎用攪拌機にて、1000rpmで約10秒間擾拝し発泡体を作成した。得られた難燃性ウレタン樹脂組成物は時間の経過と共に流動性を失い、難燃性ウレタン樹脂発泡体を得た。前記発泡体を下記の基準により評価し、結果を表1及び表2に示した。 【0137】 [熱量の測定] 硬化物から10cm×10cm×5cmになるようにコーンカロリーメーター試験用サンプルを切り出し、ISO-5660に準拠し、放射熱強度50kW/m2にて10分、及び20分間 加熱したときの最大発熱速度、総発熱量を測定した結果を表1及び表2に記載した。 【0138】 この測定方法は、建築基準法施行令第 108条の2に規定される公的機関である建築総合試験所にて、コーンカロリーメーター法による基準に対応するものとして規定された試験法であり、ISO-5660の試験方法に準拠したものである。 【0139】 20分間加熱でコーンカロリーメーターの総発熱量が8MJ/m2以下の場合に合格であるが、本試験では20分間加熱で8MJ以下のものを◎、10分間加熱で8MJ以下のものを○、10分間加熱で8MJ/m2を超えるものを×とした。 【0140】 [膨張の測定] 前記ISO-5660の試験を実施したときに、加熱後の成形体が点火器に接触した場合は×、接触しなかった場合は○として表1及び表2に記載した。 【0141】 [変形 (ヒビ割れ)の測定] 前記ISO-5660の試験を実施したときに、前記試験用サンプルの裏面まで到達する変形が見られた場合は×、裏面まで到達する変形が見られなかった場合は○として表1及び表2に記載した。 【0142】 [収縮の測定] 前記ISO-5660の試験を実施したときに、前記試験用サンプルの横方向に1cm以上かつ厚み方向に5mm以上の変形が見られた場合は×、変形が見られなかった場合は○として表1及び表2に記載した。 【0143】 熱量、膨張、変形、及び収縮の測定ですべてが○の場合をOKとし、それ以外をNGと判定した。 【0144】 [熱伝導率の測定] 硬化物から20cm×20cm×5cmになるように熱伝導率用サンプルを切り出し、JIS A 1412-2に準拠し、上板37.5℃、下板12.5℃で、温度差25℃、平均温度25℃の条件で測定した結果を表1及び表2に記載した。測定装置として、熱伝導測定装置HC-074(英弘精機社製)を使用した。」 「【0146】 【表2】 [図:0001406129000001.jpg] 」 ウ 引用文献10に記載された発明 引用文献10には、上記イの請求項1に記載される配管または機器用耐火性断熱被覆材が記載されており、その具体的な例として実施例18が開示されている。 そして、実施例18では、【0136】の記載からみて、(1)ポリオール組成物の成分と(3)添加物の成分を攪拌して混練し、その混練物に対して(2)ポリイソシアネートの成分を加えて発泡体を作成していることから、その(1)ポリオール組成物の成分と(3)添加物の成分の混練物(組成物)に着目して請求項1の記載にならって整理すると、引用文献10には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「ポリイソシアネートを加えて難燃性ウレタン組成物からなる発泡ポリウレタン断熱層とするためのポリオール組成物であって、前記発泡ポリウレタン断熱層は配管または機器用の断熱被覆材に用いられるものであり、ポリオールとしてp-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、マキシモールRFK-505)を10.8重量部、整泡剤としてポリアルキレングリコール系整泡剤(東レダウコーニング社製、SH-193)を1.7重量部、三量化触媒としてオクチル酸カリウムを0.5重量部及び東ソー社製「TOYOCAT-TR20」を0.7重量部、ウレタン化触媒としてペンタメチルジエチレントリアミンを0.1重量部、発泡剤として水を0.6重量部及びHFC(ハイドロフルオロカーボン)を3.9重量部、添加剤として赤リンを6.0重量部、リン酸エステルであるトリス(β-クロロプロピル)ホスフェートを7.0重量部及び針状フィラーであるウォラストナイトを6.0重量部含む、ポリオール組成物。」 エ 本願補正発明と引用発明との対比 引用発明の「ポリイソシアネートを加えて難燃性ウレタン組成物からなる発泡ポリウレタン断熱層とするためのポリオール組成物」は、本願補正発明の「ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物」に相当する。 引用発明の「三量化触媒」及び「ウレタン化触媒」は、本願補正発明の「触媒」である「三量化触媒」及び「ウレタン化触媒」に相当する。 引用発明のポリオール100重量部に対する触媒の量を計算すると、約12.0重量部(=(0.5+0.7+0.1)×100/10.8)となるから、このことは本願補正発明の「ポリオール100重量部に対する前記触媒の量が10重量部~56重量部であり」に相当する。 引用発明の「オクチル酸カリウム」は本願補正発明の「カルボン酸アルカリ金属塩」に相当し、引用発明の「TOYOCAT-TR20」は、令和3年8月11日の手続補正によって補正された本願の明細書(以下「本願明細書」という。)の【0145】に「(C-2)三量化触媒(東ソー社製、製品名:TOYOCAT-TR20、4級アンモニウム塩とエチレングリコールの混合物)」と記載されていることから、本願補正発明の「4級アンモニウム塩」を含む「三量化触媒」に相当する。 引用発明の「赤リン」及び「針状フィラーであるウォラストナイト」は、本願明細書の【0055】に「粉体難燃剤としては、赤リン・・・、無機充填剤が挙げられる。」と記載され、【0102】に「無機充填剤としては、無機フィラー・・・が挙げられる。」と記載され、【0106】に「好ましくはフィラーは針状フィラーである。」と記載されていることから、いずれも本願補正発明の「難燃剤」及び「粉体難燃剤」に相当する。なお、引用発明の「リン酸エステルであるトリス(β-クロロプロピル)ホスフェート」は、本願明細書の【0145】に「液体難燃剤(G) トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート」と記載されていることから、(粉体ではない)液体の「難燃剤」に相当する。 そして、引用発明のポリオール100重量部に対する粉体難燃剤及び赤リンの含有量を計算すると、粉体難燃剤は約111重量部((6+6)×100/10.8)、赤リンは約55.6重量部(6×100/10.8)である。 そうすると、両者は 「ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、ポリオール、触媒、発泡剤、整泡剤、および難燃剤を含有し、 ポリオール100重量部に対する前記触媒の量が10重量部~56重量部であり、 前記触媒が三量化触媒とウレタン化触媒とを含み、 前記三量化触媒がカルボン酸アルカリ金属塩及び4級アンモニウム塩を含み、 前記難燃剤は粉体難燃剤を含み、ポリオール100重量部に対して13~59重量部の赤リンを含む、 ポリオール組成物。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 「ウレタン化触媒」が、本願補正発明では「ウレタン化金属触媒を含」むのに対し、引用発明では「ペンタメチルジエチレントリアミン」を含む点 <相違点2> 「発泡剤」が、本願補正発明では「ハイドロフルオロオレフィンを含」むのに対し、引用発明では「水」及び「HFC(ハイドロフルオロカーボン)」を含む点 <相違点3> ポリオール100重量部に対する粉体難燃剤の量が、本願補正発明では「13~99重量部」であるのに対し、引用発明では111重量部である点 <相違点4> ポリオール組成物が、本願補正発明では「吹き付け塗装用」のものであるのに対し、引用発明では「配管または機器用の断熱被覆材」の「発泡ポリウレタン断熱層」に用いられるものである点 オ 相違点についての判断 (ア)相違点1 引用文献14,16,17に以下のように記載されるように、ポリウレタンの製造に用いられるウレタン化触媒としては、引用発明の「ペンタメチルジエチレントリアミン」だけでなく、ジブチルチン(スズ)ジラウレート等の金属触媒も、本願の優先日前に周知のものである。 ・引用文献14(特開2013-241537号公報,令和3年6月8日付け拒絶理由通知書の「引用文献14」) 「【0030】 触媒としては、イソシアネートの三量化触媒(B)の他、通常のポリウレタンフォームの製造に使用される公知の触媒(ウレタン化触媒)が使用できる。例えば、・・・等のアミン系触媒の他に、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等の錫系、オクチル酸鉛等の鉛系等の金属系触媒等が挙げられる。」 ・引用文献16(特許第4457305号公報,引用文献10の【0004】の「特許文献3」) 「【0057】 任意成分として使用できる『触媒』としては、・・・ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)・・・などのアミン化合物、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレートなどのスズ化合物・・・に代表されるウレタン化触媒を挙げることができる。」 ・引用文献17(特開2008-74880号公報,引用文献10の【0004】の「特許文献4」) 「【0062】 任意成分として使用できる『触媒』としては、・・・ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)・・・などのアミン化合物、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレートなどのスズ化合物・・・に代表されるウレタン化触媒を挙げることができる。」 そして、引用文献10の請求項1ではウレタン化触媒は必須成分とされておらず、【0111】に「難燃性ウレタン組成物は、上記の三量化触媒以外の触媒をさらに含んでもよく、そのような触媒としては、例えば、・・・N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン・・・等の窒素原子含有触媒等が挙げられる。」と記載されるように、引用発明において、「ウレタン化触媒であるペンタメチルジエチレントリアミン」は三量化触媒以外の触媒として任意に配合した触媒にすぎないものであるから、そのような「ペンタメチルジエチレントリアミン」を、同じウレタン化触媒として働く周知の触媒であるウレタン化金属触媒に置き換えてみることは当業者が容易になしえることである。 (イ)相違点2 引用文献10には、その請求項1に記載された「発泡剤」の例として、水やHFCと共に、「ハイドロフルオロオレフィン(HFO)」が記載されており(【0048】)、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いた実施例の記載もある(実施例19)。 したがって、引用発明において、「発泡剤」である水とHFC(ハイドロフルオロカーボン)に代えて、ハイドロフルオロオレフィンを用いてみることは、当業者が容易に想到することである。 (ウ)相違点3 引用発明において、ポリウレタン樹脂組成物100重量部に対する赤リン及び針状フィラー剤の含有量を、引用文献10の【0056】に記載された赤リンの添加量(ウレタン樹脂100重量部に対して3~18重量部)、【0106】に記載された針状フィラーの添加量(ウレタン樹脂100重量部に対して3~30重量部)、【0108】に記載された添加剤の添加量(ウレタン樹脂100重量部に対して4.5~70重量部)の範囲内で、実施例18以外の他の実施例の含有量等も参考にしつつ調節してみる程度のことは、当業者が適宜なしえることである。 そして、例えば実施例19には、ポリオール21.8重量部に対して赤リンを6.0重量部、針状フィラーを6.0重量部配合した例が記載されており、この配合割合は、ポリオール100重量部に換算すると、赤リンと針状フィラーの合計(粉体難燃剤の合計)が55重量部((6+6)×100/21.8)、赤リンの配合量が27.5重量部となるところ、引用発明において、ポリオール100重量部に対する赤リン及び針状フィラーの配合割合を実施例19のような範囲としてみることは、当業者が適宜なしえることである。 (エ)相違点4 引用文献10には、引用発明の難燃性ウレタン組成物の硬化方法に関して、「難燃性ウレタン樹脂組成物を配管へ直接噴霧、・・・吹付するか、・・・注入するか等して硬化させる」(【0126】)と記載されているから、引用発明のポリオール組成物を「吹き付け塗装用」としてみることは、当業者が容易に想到することである。 (オ)本願補正発明の効果について 本願明細書の【0006】には、「ポリオール組成物中に含まれる触媒量を一定量にすることで、難燃性、特には不燃性と、液だれ防止との両方の効果を奏する吹き付け塗装に適した組成とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載され、【0152】の【表1】には、本願補正発明の要件を満たす実施例13のポリオール組成物を用いて吹き付け塗装を行った結果、難燃性と液だれ防止の両方の効果を奏する吹き付け塗装に適したものであり、20℃のクリームタイムが1秒以下であることが記載される一方、「ポリオール100重量部に対する触媒の量」が「10~56重量部」よりも少ない比較例1,3,4,5の組成物が、20℃のクリームタイムが3秒以上(すなわち、反応が開始するまでの時間が長い)で、「ポリオール100重量部に対する触媒の量」が「10~56重量部」よりも多い比較例2の組成物が、実施例13よりも総発熱量が多く、難燃性に劣ることが示されている。 しかし、引用発明の組成物が難燃性に優れ、吹き付け塗装に適したものであることは、引用文献10の【0126】の記載や、引用発明に相当する実施例18の「総発熱量」の評価が「◎」であること等から当業者が予測できることであるし、触媒の量が少なすぎれば反応速度が遅くなり、クリームタイムが長く液だれが生じるおそれがあることも当業者の予測の範囲内である。加えて、「ポリオール100重量部に対する触媒の量」は、本願補正発明と引用発明との相違点でもない。 また、ウレタン化触媒としてウレタン化金属触媒を用いたこと、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いたこと、ポリオール100重量部に対する粉体難燃剤の配合量を13~99重量部としたことの効果について検討しても、本願明細書、特に触媒について言及している【0036】~【0046】、発泡剤について言及している【0047】~【0050】、ポリオール100重量部に対する粉体難燃剤の配合量について言及している【0068】には、ウレタン化金属触媒やハイドロフルオロオレフィンを選択したこと、ポリオール100重量部に対する粉体難燃剤の含有量を本願補正発明の範囲に特定したことによって、どのような効果が得られるのか記載されていない。さらに、本願補正発明の具体例に相当する実施例13を、ウレタン化金属触媒及びハイドロフルオロオレフィンを用いていない実施例1~4,6~12,14,15と比較しても、評価項目の結果に特段の差は認められず、また、本願明細書には、ポリオール100重量部に対する粉体難燃剤の配合量のみが本願補正発明の範囲外となる比較実験の記載もない。 したがって、本願補正発明が、ウレタン化触媒として特にウレタン化金属触媒を用い、発泡剤として特にハイドロフルオロオレフィンを用い、ポリオール100重量部に対する粉体難燃剤の含有量を13~99重量部としたことによって、当業者に予測できない効果が得られるものとは認められない。 カ 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、 「引用文献10の[0111]には、難燃性ウレタン組成物が、三量化触媒以外の触媒をさらに含んでもよいとの記載があり、三量化触媒以外の触媒である化合物の具体例もいくつか挙げられていますが、イミダゾール化合物等の窒素原子含有触媒が挙げられているにすぎません。 実施例でも[0135]に、ウレタン化触媒としてはペンタメチルジエチレントリアミン(TOYOCAT-DT)が挙げられているのみであり、この化合物は[0111]に明示的に列挙されている窒素原子含有触媒です。 引用文献10には、吹き付け塗装用のポリオール組成物が、触媒が三量化触媒とウレタン化触媒とを含んだ上で、ウレタン化触媒がウレタン化金属触媒を含むことの記載はありません。引用文献10の実施例18および19にもウレタン化触媒は使用されていません。よって、引用文献10の記載から、補正後請求項1に係る発明に当業者が容易に想到することはできないものと思料いたします。」 と主張する。 しかし、上記オ(ア)で述べたように、ウレタン化触媒としてウレタン化金属触媒自体は周知のものにすぎない。そして、本願明細書において、吹き付け塗装用のポリオール組成物に用いるウレタン化触媒として、金属触媒は【0044】に例示している1つにすぎず、他の触媒と比べて有利であることが記載されているわけでもない。 したがって、審判請求人の主張は採用することができない。 キ 独立特許要件についてのまとめ よって、本願補正発明は、引用文献10に記載された発明及び本願の優先日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和4年2月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年8月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、ポリオール、触媒、発泡剤、整泡剤、および難燃剤を含有し、 ポリオール100重量部に対する前記触媒の量が10重量部~56重量部であり、 前記触媒がカルボン酸アルカリ金属塩及び4級アンモニウム塩を含み、 前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含み、 前記難燃剤は粉体難燃剤を含み、粉体難燃剤の量がポリオール100重量部に対して13~99重量部であり、ポリオール100重量部に対して13~59重量部の赤リンを含む、 吹き付け塗装用のポリオール組成物。」 2 拒絶査定における拒絶の理由の概要 令和3年12月3日付け拒絶査定は、この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 3 引用文献10の記載事項及び引用文献10に記載された発明 拒絶査定の拒絶の理由に引用された引用文献10の記載事項及び引用文献10に記載された発明(引用発明)は、前記第2の2(2)イ,ウに記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、実質的に「前記触媒が三量化触媒とウレタン化触媒を含み」という要件及び「前記ウレタン化触媒がウレタン化金属触媒を含み」という要件を除いたものということができる。 そうすると、本願発明を引用発明と対比すると、両者は上記第2のエで述べた相違点2~4において相違する。 そして、相違点2~4については、上記第2のオで述べたように、引用文献10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することである。 よって、本願発明は、引用文献10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-002380

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