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特許拒絶査定不服審判

2022-001289

トラクタ

審判番号
2022-001289
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-079770外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年01月27日
審決日
2023年04月17日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (A01B) / P18 .121-WZ (A01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020- 79770「トラクタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月 6日出願公開、特開2020-115892〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成27年5月26日(優先権主張 平成26年10月16日)に出願した特願2015-106873号の一部を令和2年4月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

令和3年 4月16日付け:拒絶理由通知(50条の2の通知を伴う)

同年 6月25日 :意見書及び手続補正書の提出

同年10月22日付け:補正の却下の決定及び拒絶査定
令和4年 1月27日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年10月27日付け:拒絶理由通知
同年12月20日 :意見書及び手続補正書の提出
令和5年 2月17日 :上申書の提出

第2 本願発明

令和4年12月20日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
作業機を装着できるトラクタにおいて、
前記作業機を連動状態に切り換え可能な決定操作部を設けるとともに、
前記トラクタは、表示部を有し、
前記表示部は、前記トラクタに設けられた操作具に、前記作業機が有する機能を割り当て設定する設定画面を有し、
前記設定画面のいずれか一方側には、前記操作具の名称が記された表示部分が配置され、
前記設定画面のいずれか他方側には、前記作業機の前記機能の名称が記された表示部分が配置され、
前記決定操作部によって前記作業機を連動状態にする
ことを特徴とするトラクタ。」

第3 拒絶の理由

令和4年10月27日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2及び3は、次のとおりのものである。

本願発明1は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項または2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2012-196158号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。

ア 「【背景技術】
【0002】
従来より、耕耘機を昇降させる昇降操作手段を設けたトラクタが知られており、昇降連結機構によって、その昇降が制御されている。また、昇降連結機構を手動にて、微小範囲において上昇/下降させる微小調整操作手段を主変速レバーに設けて、走行制御と共に耕耘機の微小調整を行いながら耕耘作業を行うトラクタが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
・・・
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラクタ後方には、耕耘機だけでなく他の作業機(例えば、ブームスプレーヤなど)が装着可能であり、耕耘作業以外の作業(例えば、薬液の散布作業など)をトラクタにて行うことができる。通常、トラクタ後方に耕耘機が装着されている場合に使用する耕耘機を昇降させるための操作手段は、操作しやすい変速レバー付近に設けられている。しかし、トラクタ後方に耕耘機以外の作業機が装着されている場合には、前記操作手段が使用されることはない。
【0005】
耕耘機以外の作業機が装着されている場合は、前記耕耘機以外の作業機の動作を制御するために、作業者が操作しやすい場所に前記耕耘機用の操作手段とは別に制御パネルを設置し、この制御パネルを操作することによって前記作業機の動作を制御する。しかしながら、走行しながら作業を行う場合には、主変速レバーと制御パネルとを同時的又は交互に操作しなければならいため、作業性が低下したり、安全性が低下したりするという問題点を有していた。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、耕耘機以外の作業機として薬液散布装置を装着した場合であっても、作業性の低下が発生しない作業車及び散布作業車を提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0025】
本発明による場合は、薬液散布装置が装着された場合には、耕耘機を操作する操作手段により、薬液散布装置を操作可能としている。薬液散布装置を耕耘機に代えて装着する場合には、この薬液散布装置を操作するための操作パネルを前記操作手段とは別に設置することが必要となるが、本発明では、操作パネルの一部の機能を耕耘機を操作する為に設けられた操作手段に割り当てることが可能となり、操作性を向上させることができる。また、作業車の走行を制御する主変速レバーに耕耘機を操作するための操作手段が設けられている場合、この操作手段に薬液散布装置を操作するための機能を割り当てることが可能であるため、安全性を向上させることができる。」
イ 「【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は本実施の形態に係る作業機の側面図、図2はその平面図である。本実施の形態に係る作業機は具体的にはトラクタであり、トラクタの走行機体2は、左右一対の前輪3L,3R及び後輪4L,4Rにより支持されている。走行機体2の前部にはエンジン20がボンネット6に覆われた状態で搭載されており、エンジン20にて後輪4L,4R(又は前輪3L,3R及び後輪4L,4Rの双方)を駆動することにより、トラクタは前進又は後進するように構成されている。」
ウ 「【0035】
このロータリ耕耘機200を操作するための操作手段は、主変速レバー84に設けられる。図3は主変速レバー84の一例を示す模式図である。主変速レバー84は、トラクタの走行速度を切り換えるための操作具であるが、この操作具の前面部分には第1スイッチ84a、側面部分には第2スイッチ84bが設けられている。また、第2スイッチ84bの上側には第3スイッチ84c、第3スイッチ84cの反対側面には第4スイッチ84dが設けられている。
【0036】
トラクタにロータリ耕耘機200が装着されている場合、主変速レバー84に設けられている4つのスイッチ84a~84dのうち、第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bは、ロータリ耕耘機200を操作するための操作手段として機能する。
第1スイッチ84aは、ロータリ耕耘機200を昇降させるためのスライド式のスイッチであり、上側にスライドさせることによりロータリ耕耘機200を上昇させ、下側にスライドさせることによりロータリ耕耘機200を下降させることができるように構成している。
第2スイッチ84bは、ロータリ耕耘機200を微小範囲で昇降させるための傾倒式のスイッチであり、上側に傾倒させることによりロータリ耕耘機200を微小範囲で上昇させ、下側に傾倒させることによりロータリ耕耘機200を微小範囲で下降させることができるように構成している。
・・・
【0038】
本実施の形態では、ロータリ耕耘機200に代えて薬液を散布するためのスプレーヤ30(図4等を参照)が装着された場合、主変速レバー84に設けられている4つのスイッチ84a~84dのうち、第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bは、スプレーヤ30を操作するための操作手段として機能するように構成している。」
エ 「【0060】
以下、本実施の形態に係るトラクタの制御系の構成について説明する。図8は本実施の形態に係るトラクタの制御系の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るトラクタは、車両の制御を行うトラクタ側コントローラ310とスプレーヤの制御を行うスプレーヤ側コントローラ320とを備える。トラクタ側コントローラ310及びスプレーヤ側コントローラ320は、CANにより接続されており、協同して各種制御を行うことにより、本実施の形態のトラクタを本発明に係る散布作業機として機能させる。
・・・
【0065】
また、トラクタにスプレーヤ30が装着されている場合であって、入出力IF314を通じて第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bからの信号が入力されたとき、CPU311は、EEPROM312に記憶されているテーブルを参照し、テーブルに記憶されている操作内容に従ってスプレーヤ30を操作するための制御を行う。なお、このテーブルに記憶される設定内容は、操作パネル330を通じて作業者の手により変更可能としている。」
オ 「【0078】
次に、操作パネル330を用いて、主変速レバー84の第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bに機能を割り当てるときの操作例について説明する。
図12及び図13は機能割り当て時の操作画面例を示す模式図である。作業者は、まず、操作パネル330の第1操作ボタン群331及び第2操作ボタン群332を用いて適宜の操作を行い、操作パネル330の表示部333にレバー設定画面500を表示させる(図12(a)を参照)。このとき、スプレーヤ側コントローラ320は、トラクタ側コントローラ310のEEPROM312に予め記憶されているデフォルトの操作パターン(テーブルに記憶されている操作内容)を取得し、レバー設定画面500に現在の設定を表示させる。図12(a)では、デフォルトの操作パターンとして、散布の開始/停止が第1スイッチ84aに割り当てられており、散布圧力の増減が第2スイッチ84bに割り当てられていることを示している。すなわち、デフォルトの操作パターンでは、第1スイッチ84aがブームスプレーヤコントローラ350の散布スイッチ352として機能し、第2スイッチ84bがブームスプレーヤコントローラ350の散布圧力スイッチ353として機能するように設定されている。
なお、デフォルトの操作パターンは上記のパターンに限定する必要はなく、適宜設定し得るものである。
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【0079】
レバー設定画面500を表示させた状態で操作パネル330のカーソルボタン332a又は332bを押下操作することにより、操作内容の変更対象のスイッチを選択する。図12(a)は、「1」のインデックスで示されているスイッチ(第1スイッチ84a)が選択されている状態を示しており、カーソルボタン332bが押下操作された場合、「2」のインデックスで示されているスイッチ(第2スイッチ84b)が選択される。
第1スイッチ84a又は第2スイッチ84bの一方が選択された状態で、操作パネル330の決定ボタン331b(又はカーソルボタン332d)が押下場合、変更対象のスイッチが確定し、図12(b)に示す機能選択画面510を表示する。
【0080】
図12(b)の機能選択画面510では、第1スイッチ84aに設定する操作内容として、散布の開始/停止(サンプ)、又は散布圧力の増減(アツリョク)をカーソルボタン332a及び332bにより選択できるようにしている。
薬液の散布に関し、散布の開始/停止、散布圧力の増減を操作内容として設定できるだけでなく、散布作業の自動制御(例えば、車速に連動させて散布量を自動的に制御する機能)における目標散布量を変更する機能を操作内容として設定できるようにしてもよい。
散布圧力の増減(アツリョク)が選択された状態で、更にカーソルボタン332bが押下操作された場合、図13(a)に示す機能選択画面520を表示する。
【0081】
図13(a)の機能選択画面520では、第1スイッチ84aに設定する操作内容として、ブーム33の伸縮(ブーム・スライド)、ブーム33の傾斜(ブーム・ケイシャ)、又はブーム33の開閉(ブーム・カイヘイ)をカーソルボタン332a及び332bにより選択できるようにしている。
ここで、ブーム33の伸縮(ブーム・スライド)は、ブームスプレーヤコントローラ350のブーム伸縮スイッチ356L,356Rに相当する機能である。
ブーム33の傾斜(ブーム・ケイシャ)は、同じくブーム傾斜スイッチ357L,357Rに相当する機能である。ブーム33の開閉(ブーム・カイヘイ)は、同じくブーム開閉スイッチ355L,355Rに相当する機能である。
ブーム33の開閉(ブーム・カイヘイ)が選択された状態で、更にカーソルボタン332bが押下操作された場合、図13(b)に示す機能選択画面530を表示する。一方、ブーム33の伸縮(ブーム・スライド)が選択された状態で、カーソルボタン332aが押下操作された場合、図12(b)に示す機能選択画面510を表示する。
【0082】
図13(b)の機能選択画面530では、第1スイッチ84aに設定する操作内容として、ブーム33の昇降(ブーム・ショウコウ)を選択できるようにしている。なお、ブーム33を旋回させる駆動機構を有している場合、ブーム33の旋回(ブーム・センカイ)を選択できるようにしてもよい。また、ブーム33を折り込む機能を選択できるようにしてもよい。」
カ 「【0084】
図14は機能設定時の処理手順を示すフローチャートである。トラクタ側コントローラ310のCPU311は、スプレーヤ30が装着されたか否かを判断する(ステップS11)。スプレーヤ30の装着は、例えば、スプレーヤ30が3点リンク機構を介して作業機用昇降機構70に連結され、トラクタ側コントローラ310と電気的に接続された場合、スプレーヤ30から自機の作業機種別を含む識別IDをトラクタ側コントローラ310へ送出するように構成しておき、CPU311がその識別IDから作業機種別を特定することによって判断する。
【0085】
スプレーヤ30が装着されたと判断した場合(S11:YES)、トラクタ側コントローラ310のCPU311は、スプレーヤ側コントローラ320等がトラクタ側のCANに接続されたか否かを判断する(ステップS12)。すなわち、CANゲートウェイ300を介してスプレーヤ側コントローラ320が接続されたことを示す信号を通信部315が受信した場合、トラクタ側のCANに接続されたと判断する。接続されていないと判断した場合(S12:NO)、スプレーヤ側コントローラ320が接続されるまで待機する。
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【0086】
スプレーヤ側コントローラ320等がトラクタ側CANに接続されたと判断した場合(S12:YES)、主変速レバー84によりロータリ耕耘機200を操作するための機能を停止させる。すなわち、スプレーヤ30が装着されている場合に、主変速レバー84の第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bが本来の機能である昇降機能として働くと危険であるため、第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bの昇降機能を停止させる処理を行う。
次いで、トラクタ側コントローラ310のCPU311は、EEPROM312からデフォルトの操作パターンを読み込み、第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bに割り当てる機能を設定する(ステップS13)。
【0087】
次いで、スプレーヤ側コントローラ320のCPU321は、レバー設定画面500の表示指示があるか否かを判断する(ステップS14)。レバー設定画面500の表示指示の有無は、操作パネル330が備える第1操作ボタン群331及び第2操作ボタン群332の操作により、レバー設定画面500が呼び出されたか否かを判断することによって行う。表示指示がない場合(S14:NO)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0088】
表示指示がある場合(S14:YES)、スプレーヤ側コントローラ320は、EEPROM322に予め記憶されているデフォルトの操作パターンを取得し、現在の設定状態を示したレバー設定画面500を操作パネル330の表示部333に表示する(ステップS15)。
【0089】
次いで、スプレーヤ側コントローラ320のCPU321は、操作パネル330を通じて、主変速レバー84の第1スイッチ84aに対する操作内容の変更を受け付けたか否かを判断する(ステップS16)。第1スイッチ84aに対する操作内容の変更を受け付けた場合(S16:YES)、第1スイッチ84aの操作内容を変更後の内容に設定する(ステップS17)。このとき、スプレーヤ側コントローラ320は、変更後の操作内容をトラクタ側コントローラ310に通知し、主変速レバー84の第1スイッチ84aに割り当てる機能として設定する。
【0090】
次いで、スプレーヤ側コントローラ320のCPU321は、操作パネル330を通じて、主変速レバー84の第2スイッチ84bに対する操作内容の変更を受け付けたか否かを判断する(ステップS18)。第2スイッチ84bに対する操作内容の変更を受け付けた場合(S18:YES)、第2スイッチ84bの操作内容を変更後の内容に設定する(ステップS19)。このとき、スプレーヤ側コントローラ320は、変更後の操作内容をトラクタ側コントローラ310に通知し、主変速レバー84の第2スイッチ84bに割り当てる機能として設定する。
なお、ステップS18以降の処理は、ステップS16で第1スイッチ84aに対する操作内容の変更を受け付けていないと判断した場合にも(S16:NO)、実行する。
【0091】
ステップS19で第2スイッチ84bに対する操作内容を変更した場合、又はステップS18で第2スイッチ84bに対する操作内容の変更を受け付けていないと判断した場合(S18:NO)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0092】
以上のように、本実施の形態では、トラクタにスプレーヤ30が装着された場合、スプレーヤ30を操作するための機能を主変速レバー84の第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bに割り当てることができ、主変速レバー84によりトラクタの走行を制御しながらスプレーヤ30を容易に操作することが可能となるため、作業性の向上及び安全性の向上を図ることができる。」

キ 【図12】は以下のとおり。

「
[図:0001398797000001.jpg]
」

上記オの記載を踏まえると、【図12】からは、操作内容が設定される第1スイッチ84aを表す「レバー1」の表示が機能選択画面510の上方に、操作内容を示す、「サンプ」、「アツリョク」の表示が機能選択画面510の下方に配置されることが看取される。

2 引用発明

上記1から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明1)

作業車の走行を制御する主変速レバーに耕耘機を操作するための操作手段が設けられている場合、この操作手段に薬液散布装置を操作するための機能を割り当てることが可能である作業車であって、(【0025】)

作業機(なお、この「作業機」は「作業車」の誤記と認める。)はトラクタであり、(【0027】)

トラクタの走行速度を切り換えるための操作具である主変速レバー84の前面部分には第1スイッチ84a、側面部分には第2スイッチ84bが設けられており、(【0035】)

薬液を散布するためのスプレーヤ30が装着された場合、主変速レバー84に設けられている第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bは、スプレーヤ30を操作するための操作手段として機能するように構成しており、(【0038】)

トラクタは、車両の制御を行うトラクタ側コントローラ310とスプレーヤの制御を行うスプレーヤ側コントローラ320とを備え、トラクタ側コントローラ310及びスプレーヤ側コントローラ320は、CANにより接続されており、協同して各種制御を行うことにより、トラクタを散布作業機として機能させるものであり、(【0060】)

トラクタにスプレーヤ30が装着されている場合であって、第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bからの信号が入力されたとき、CPU311は、EEPROM312に記憶されているテーブルを参照し、テーブルに記憶されている操作内容に従ってスプレーヤ30を操作するための制御を行うが、このテーブルに記憶される設定内容は、操作パネル330を通じて作業者の手により変更可能としており、(【0065】)

操作パネル330を用いて設定する内容には、主変速レバー84の第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bへの機能の割り当てが含まれ、(【0078】)

操作パネル330を用いて、主変速レバー84の第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bに機能を割り当てる操作画面は操作パネル330の表示部333に表示され、

機能選択画面510では、第1スイッチ84aに設定する操作内容として、散布の開始/停止(サンプ)、又は散布圧力の増減(アツリョク)を選択できるようにしており、薬液の散布に関し、散布作業の自動制御における目標散布量を変更する機能を操作内容として設定できるようにしてもよく、(【0080】)

操作内容が設定される第1スイッチ84aを表す「レバー1」の表示が機能選択画面510の上方に、操作内容を示す、「サンプ」、「アツリョク」の表示が機能選択画面510の下方に配置され、(【図12】)

機能選択画面520では、第1スイッチ84aに設定する操作内容として、ブーム33の伸縮(ブーム・スライド)、ブーム33の傾斜(ブーム・ケイシャ)、又はブーム33の開閉(ブーム・カイヘイ)を、機能選択画面530では、第1スイッチ84aに設定する操作内容として、ブーム33の昇降(ブーム・ショウコウ)を選択できるようにしており、(【0081】、【0082】)

トラクタ側コントローラ310のCPU311は、スプレーヤ30の装着を、例えば、スプレーヤ30が3点リンク機構を介して作業機用昇降機構70に連結され、トラクタ側コントローラ310と電気的に接続された場合、スプレーヤ30から自機の作業機種別を含む識別IDをトラクタ側コントローラ310へ送出するように構成しておき、CPU311がその識別IDから作業機種別を特定することによって判断し、

スプレーヤ30が装着されたと判断した場合、スプレーヤ側コントローラ320等がトラクタ側のCANに接続されたか否かを判断し、

スプレーヤ側コントローラ320等がトラクタ側CANに接続されたと判断した場合、主変速レバー84によりロータリ耕耘機200を操作するための機能を停止させ、次いで、EEPROM312からデフォルトの操作パターンを読み込み、第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bに割り当てる機能を設定する、(【0084】~【0086】)

作業車。

第5 当審の判断

1 対比

本願発明1と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「スプレーヤ30」及び「スプレーヤ30が装着され」る「トラクタ」は、それぞれ、本願発明1の「作業機」及び「作業機を装着できるトラクタ」に相当する。

(2)引用発明1は「車両の制御を行うトラクタ側コントローラ310とスプレーヤの制御を行うスプレーヤ側コントローラ320とを備え、トラクタ側コントローラ310及びスプレーヤ側コントローラ320」は、「協同して各種制御を行うことにより、トラクタを散布作業機として機能させる」ものである。

引用発明1は、また、「例えば、スプレーヤ30が3点リンク機構を介して作業機用昇降機構70に連結され、トラクタ側コントローラ310と電気的に接続された場合、スプレーヤ30から自機の作業機種別を含む識別IDをトラクタ側コントローラ310へ送出するように構成しておき、CPU311がその識別IDから作業機種別を特定する」ことによって「スプレーヤ30が装着されたと判断」し、その場合、「スプレーヤ側コントローラ320等がトラクタ側のCANに接続されたか否かを判断し、スプレーヤ側コントローラ320等がトラクタ側CANに接続されたと判断した場合」、「主変速レバー84によりロータリ耕耘機200を操作するための機能を停止させ」、「EEPROM312からデフォルトの操作パターンを読み込み、第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bに割り当てる機能を設定する」ものである。

ここで、EEPROM312は、「テーブル」を「記憶」し、トラクタにスプレーヤ30が装着されている場合には、第1スイッチ84a及び第2スイッチ84bからの信号が入力されたとき、「トラクタ側コントローラ310」の「CPU311」が「参照」して「テーブルに記憶されている操作内容に従ってスプレーヤ30を操作するための制御」を行うものである。

そうすると、引用発明1は、「トラクタ側コントローラ310」が、「スプレーヤ30」から「送出」される「識別ID」によってスプレーヤ30が装着されたと判断し、「スプレーヤ30側コントローラ320等」の「接続」を「判断」して「ロータリ耕耘機200を操作するための機能を停止させ」、「第1スイッチ84a及び第2スイッチ84b」にスプレーヤ30の「操作パターン」を設定する等して「トラクタを散布作業機として機能させる」ものであるから、本願発明1の「前記作業機を連動状態に切り換え可能な決定操作部」と引用発明1の「トラクタ側コントローラ310」等とは、「前記作業機を連動状態に切り替え可能な決定」「部」で共通し、引用発明1は、本願発明1と共通する「前記決定」「部によって作業機を連動状態にする」構成を備える。

(3)引用発明1の「操作パネル330の表示部333」は、本願発明1の「表示部」に相当する。

(4)引用発明1の「主変速レバー84の第1スイッチ84a及び第2スイッチ84b」は、本願発明1の「トラクタに設けられた操作具」に相当する。

(5)引用発明1の「スプレーヤ30」の「操作内容」としての「散布の開始/停止(サンプ)」及び「散布圧力の増減(アツリョク)」は、本願発明1の「作業機が有する機能」に相当する。

(6)上記(4)及び(5)の対比を踏まえると、引用発明1の「表示部333に表示され」る「第1スイッチ84aに設定する操作内容として、散布の開始/停止(サンプ)、又は散布圧力の増減(アツリョク)を選択できるようにし」た「機能選択画面510」は、本願発明1の「前記トラクタに設けられた操作具に、前記作業機が有する機能を割り当て設定する設定画面」に相当する。

(7)引用発明1において「操作内容が設定される第1スイッチ84aを表す「レバー1」の表示が機能選択画面510の上方に、操作内容を示す、「サンプ」、「アツリョク」の表示が機能選択画面510の下方に配置され」ることは、本願発明1の「前記設定画面のいずれか一方側には、前記操作具の名称が記された表示部分が配置され、前記設定画面のいずれか他方側には、前記作業機の前記機能の名称が記された表示部分が配置され」ることに相当する。

(8)上記(1)ないし(7)より、本願発明1と引用発明1とは、

「作業機を装着できるトラクタにおいて、
前記作業機を連動状態に切り換え可能な決定部を設けるとともに、
前記トラクタは、表示部を有し、
前記表示部は、前記トラクタに設けられた操作具に、前記作業機が有する機能を割り当て設定する設定画面を有し、
前記設定画面のいずれか一方側には、前記操作具の名称が記された表示部分が配置され、
前記設定画面のいずれか他方側には、前記作業機の前記機能の名称が記された表示部分が配置され、
前記決定部によって前記作業機を連動状態にする
トラクタ。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。

(相違点1)

本願発明1において、作業機を連動状態に切り換え可能とし、作業機を連動状態とする部位は「決定操作部」と呼称されているのに対し、引用発明1はそのように呼称されておらず、作業機を切り換えて連動状態とするのは、「トラクタ側コントローラ310」等である点。

2 判断

上記相違点1について検討する。

(1)本願発明1の「決定操作部」は、「前記作業機を連動状態に切り換え可能」なものとして特定される。

そして、引用発明1の「トラクタ側コントローラ310」等は、上記1(2)で検討したように、「スプレーヤ30が3点リンク機構を介して作業機用昇降機構70に連結され」た際に「トラクタ側コントローラ310」が「スプレーヤ30」から「送出」される「識別ID」を受け、「ロータリ耕耘機200を操作するための機能を停止させ」、「第1スイッチ84a及び第2スイッチ84b」にスプレーヤ30の「操作パターン」を設定する等して「トラクタを散布作業機として機能させる」ものであって、「前記作業機を連動状態に切り換え可能」なものであるから、本願発明1の「決定操作部」に相当するといえる。

(2)相違点1に関し、以下、本願の発明の詳細な説明の記載を検討する。

ア 本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

「【0065】
ところで、作業機にはトラクタ1と連動可能なものがあり、連動可能な作業機がトラクタ1に装着された場合、トラクタ1とその作業機とを連動させることができる。連動とは、作業機の動作に合わせてトラクタ1が最適に動作することを指す。また、連動とは、トラクタ1の動作に合わせて作業機が最適に動作することを含んでもよい。トラクタ1に連動可能な作業機としては、前部に装着されるローダー、後部に装着されるスプレイヤーやブロードキャスタ等がある。
【0066】
例えば、トラクタ1にローダーを装着して連動させた場合、トラクタ1はローダーに最適な設定に自動制御される。具体例としては、増速四輪駆動から自動的に等速四輪駆動に制御される。また、ローダーが倒されたことを検知した場合など、次にローダーを上げることが予測される場合には、エンジンの回転数を上げてローダーの上昇スピードを上げるように制御する。」

イ 上記アに摘記した発明の詳細な説明の記載、特に、「・・・連動可能な作業機がトラクタ1に装着された場合、トラクタ1とその作業機とを連動させることができる。連動とは、作業機の動作に合わせてトラクタ1が最適に動作することを指す。また、連動とは、トラクタ1の動作に合わせて作業機が最適に動作することを含んでもよい。」、「トラクタ1に連動可能な作業機としては、前部に装着されるローダー、後部に装着されるスプレイヤーやブロードキャスタ等がある。」(【0065】)、「例えば、トラクタ1にローダーを装着して連動させた場合、トラクタ1はローダーに最適な設定に自動制御される。具体例としては、増速四輪駆動から自動的に等速四輪駆動に制御される。」(【0066】)によれば、本願は、「連動」について、「連動可能な作業機がトラクタに装着された場合」に、「自動的」に「最適な設定」で動作するように制御されることが説明されている。

ウ 引用発明1において、「スプレーヤ30が3点リンク機構を介して作業機用昇降機構70に連結され」た際に「トラクタ側コントローラ310」が「スプレーヤ30」から「送出」される「識別ID」を受け、「ロータリ耕耘機200を操作するための機能を停止させ」、「第1スイッチ84a及び第2スイッチ84b」にスプレーヤ30の「操作パターン」を設定する等して「トラクタを散布作業機として機能させる」ことは、本願の発明の詳細な説明における「連動可能な作業機がトラクタに装着された場合」に、「自動的」に「最適な設定」で動作するように制御されることと同視できることであり、上記(1)における引用発明1の「トラクタ側コントローラ310」等が本願発明1の「決定操作部」に相当するとの判断と整合する。

(3)本願の発明の詳細な説明及び図面には、「作業機連動画面」において「操作」を行う例についても開示されている(図16、図21等)。

しかし、上記(1)において検討したとおり、本願発明1においては「決定操作部」は、「前記作業機を連動状態に切り換え可能」なものとして特定されるものであるから、このような実施例に限定して解釈されるものではない。

すなわち、本願発明1としてこのような実施例によるものに特定しようとする意図であれば、例えば、本願の分割基礎出願である特願2015-106873号(特開2016-78830号公報)のように、特許請求の範囲において「前記表示部に表示された作業機を選択及び決定操作するための操作部」といった特定をすることができるところ、本願発明1は、そのように特定されるものではない。また、下記3に示したように、決定操作部の認定について、審判請求人からの主張はない。

(4)以上のとおり、上記相違点1は、一応の相違点として検討したが、実質的な相違点ではない。

(5)なお、仮に、本願発明1における「決定操作部」における「操作」が上記のような画面上において連動を決定する「操作」を指すものであるとしても、引用発明1において、連動を決定するにあたり、「トラクタ側コントローラ310」等が自動で行うことに代えて、またはそれに加えて、画面上で決定ボタンを押下するものとする程度のことは、当業者が適宜なし得る設計事項であると考えられる。

3 審判請求人の主張について

(1)審判請求人は、令和4年12月20日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)中において、概略以下の主張をする。

ア 「今回の拒絶理由において、引用文献1の図面「図12」の(a)と(b)が一つの画面内で上下に表示されていると認定しているが、レバー設定画面500、機能選択画面510、520、530は表示部333において切り替えながら表示されるものであり、「図12」の(a)と(b)が一つの画面内で上下に表示されている」ということが開示されているとはいえず、審判官合議体の認定は妥当ではない。

よって、補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。(意見書(3).引用文献との比較対比)

イ 上記主張について検討する。

審判合議体は、当審における令和4年10月27日付け拒絶理由通知書(以下、単に「当審拒絶理由通知書」という。)中で、引用発明1の「機能選択画面510」(図12(b))が本願発明1の「前記トラクタに設けられた操作具に、前記作業機が有する機能を割り当て設定する設定画面」に相当するとしたものであって、「図12」の(a)と(b)が一つの画面内で上下に表示されている」としたものではない。

よって、審判請求人の上記主張は採用できない。

(2)審判請求人は、令和5年2月17日提出の上申書(以下、単に「上申書」という。)中において、以下の主張をする。

ア 「この審判事件に関しまして、本願発明と引用文献との差異を明確にするため、次のとおり、特許請求の範囲の[請求項1]の補正を希望いたします。
[請求項1]
作業機を装着できるトラクタにおいて、
前記作業機を連動状態に切り換え可能な決定操作部を設けるとともに、
続きを表示(全14行)
前記トラクタは、表示部を有し、
前記表示部は、前記トラクタに設けられた操作具に、前記作業機が有する機能を割り当て設定する設定画面を有し、
前記設定画面のいずれか一方側には、前記操作具の名称が記された表示部分が配置され、
前記設定画面のいずれか他方側には、前記作業機の前記機能の名称が記された表示部分が配置され、
前記設定画面には、設定画面である旨を表示する表示部を有し、
前記決定操作部によって前記作業機を連動状態にする
ことを特徴とするトラクタ。
この補正の根拠は、出願時の図面[図23]において、「割り当てる機能を選択」(次の参考図(図23)の太枠で囲っている部分)と表示されていることが図示されています。
[図:0001398797000002.jpg]
本願発明は、設定画面において、該画面が設定画面である旨を表示する表示部を有します。このことにより、操作者は現在操作している画面が何のための画面なのかが即時に理解でき、操作性が向上します。引用文献には、このような表示部は開示も示唆もなされていません。」

イ 上記主張について検討する。

審判合議体は、当審拒絶理由通知書において拒絶理由を通知し、補正の機会を与えたのであるから、手続補正は当該拒絶理由通知で指定した期間内に手続補正書を提出して行うべきものであり、上記主張は認められない。

なお、上申書に提示された上記手続補正案を検討しても、本願発明1は特許できるものとはなっていない心証であることについて、以下に付言する。

(ア)審判請求人は、特許請求の範囲の請求項1に「前記設定画面には、設定画面である旨を表示する表示部を有し、」との発明特定事項を付加した案を提示し、「本願発明は、設定画面において、該画面が設定画面である旨を表示する表示部を有します。このことにより、操作者は現在操作している画面が何のための画面なのかが即時に理解でき、操作性が向上します。引用文献には、このような表示部は開示も示唆もなされていません。」と主張する。

しかし、審判請求人が補正の根拠と主張する出願時の図面[図23]には、画面下欄に「割り当てる機能を選択」と読める図が示されているのみであって、「前記設定画面には、設定画面である旨を表示する表示部を有」することが示されているといえるものではなく、当該補正は新たな技術的事項の追加を含み、特許法17条の2第3項に違反してされたものであると考えられる。

(イ)また、設定画面において、設定についてのガイダンスを表示することは、画面設計における周知技術であり、引用発明1において、「機能選択画面510」(図12(b))にそのようなガイダンスを表示することは、当業者が適宜なし得た事項である。そうすると、仮に、本願発明1が、設定についてのガイダンスを表示するものであったとしても、依然として特許法29条2項に違反してされたものと考えられる。

4 小括

本願発明1は、引用文献1に記載された発明である。

本願発明1は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項または2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-001289

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