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特許拒絶査定不服審判

2022-001122

有機発光表示装置、有機発光表示パネル、有機発光表示装置の映像駆動方法、並びに有機発光表示装置の有機発光ダイオード劣化センシング駆動方法

審判番号
2022-001122
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-010427外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年01月25日
審決日
2022年09月29日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G09G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 10427「有機発光表示装置、有機発光表示パネル、有機発光表示装置の映像駆動方法、並びに有機発光表示装置の有機発光ダイオード劣化センシング駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月16日出願公開、特開2019- 74764〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成28年12月19日に出願した特願2016-245319号の一部を平成31年1月24日に新たな特許出願としたものであって(パリ条約による優先権主張2015年12月31日、韓国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和元年12月19日 :手続補正書の提出
令和3年 1月19日付け:拒絶理由通知書

同年 4月13日 :意見書、手続補正書の提出

同年 9月16日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月28日 :原査定の謄本の送達)

令和4年 1月25日 :審判請求書、手続補正書の提出

同年 5月18日 :上申書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年1月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。

なお、上記補正は請求項5を削除するものであり、請求項1の記載は当該補正の前後において変更されていない。

「 【請求項1】
複数のデータライン及び複数のゲートラインにより定義される複数のサブピクセルが配列された有機発光表示パネルと、
前記複数のデータラインを駆動するデータドライバと、
前記複数のゲートラインを駆動するゲートドライバと、
続きを表示(全17行)
前記データドライバ及び前記ゲートドライバを制御するコントローラとを含み、
前記各サブピクセルは、
有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードを駆動するための駆動トランジスタと、
ゲートノードに印加されるスキャン信号により制御され、前記駆動トランジスタのゲートノードである第1ノードとデータラインとの間に電気的に連結されたスイッチングトランジスタと、
ゲートノードに印加されるセンシング信号により制御され、前記ゲートノードとは異なる前記駆動トランジスタの第2ノードと基準電圧ラインとの間に電気的に連結されたセンシングトランジスタであって、一つの端子が前記基準電圧ラインに電気的に連結されたセンシングトランジスタと、
前記駆動トランジスタの第1ノードと第2ノードとの間に電気的に連結されたストレージキャパシタとを含み、
前記複数のゲートラインの各々は、1つのサブピクセルライン毎に配置され、
n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のスイッチングトランジスタのゲートノードは、前記n番目サブピクセルラインに配置されたn番目ゲートラインを通じて出力されるn番目スキャン信号の印加を受け、
前記n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のセンシングトランジスタのゲートノードは、n+1番目サブピクセルラインに配置されたn+1番目ゲートラインであって、前記n+1番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のスイッチングトランジスタのゲートノードと、n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のセンシングトランジスタのゲートノードに共通に連結されたn+1番目ゲートラインを通じて出力されるn+1番目スキャン信号をn番目センシング信号として印加を受け、
前記n番目サブピクセルラインでの駆動トランジスタの移動度補償モードにおいて、
前記n+1番目スキャン信号がターン-オンレベル電圧で出力される間、前記n番目スキャン信号がターン-オンレベル電圧で出力されてからターン-オフレベル電圧で出力され、
前記n番目スキャン信号がターン-オンレベルの電圧で出力される間、前記データラインに移動度センシング用データ電圧が印加され、前記基準電圧ラインに基準電圧が印加される、有機発光表示装置。」

第3 原査定における拒絶の理由の概要

原査定における拒絶の理由のうち、本願発明についての理由2(進歩性要件違反)の概要は、次のとおりである。

(進歩性)本願発明は、本願の優先権主張の日である2015年12月31日(以下「優先日」という。)より前に発行された下記の引用文献1~6に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1.特表2009-526248号公報

引用文献2.特開2015-108828号公報

引用文献3.米国特許出願公開第2013/0050292号明細書

引用文献4.米国特許出願公開第2014/0252988号明細書

引用文献5.米国特許出願公開第2015/0294626号明細書

引用文献6.米国特許出願公開第2007/0164937号明細書

第4 当審の判断

1 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定

(1) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定

ア 引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された前記引用文献1には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものである。

(ア) 技術分野及び背景技術

「【技術分野】
【0001】
本発明は、表示技術に係り、更に詳細には発光デバイス表示器のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気発光(electro-luminance)表示器は、携帯電話等の広範囲の装置に対して開発されている。特に、アモルファスシリコン(a-Si)、ポリシリコン、有機又は他の駆動バックプレーンを用いたアクティブマトリクス型有機発光ダイオード(AMOLED)表示器は、可能な可撓性表示器、その低コスト製造、高解像度及び広視野角等の利点により一層魅力的となってきている。
【0003】
AMOLED表示器は、各ピクセルが有機発光ダイオード(OLED)を有するような行及び列のピクセルのアレイ、及び当該行及び列のアレイ内に配設されたバックプレーン電子回路を含んでいる。OLEDは電流駆動デバイスであるので、AMOLEDのピクセル回路は正確且つ一定の駆動電流を供給することができなければならない。」

(イ) 【0010】

「【0010】
以下の説明において、“ピクセル回路”及び“ピクセル”は、入れ替え可能に使用される。以下の説明において、“信号”及び“ライン”は入れ替え可能に使用することができる。以下の説明において、“ライン”及び“ノード”なる用語は入れ替え可能に使用することができる。当該説明において、“選択ライン”及び“アドレスライン”は入れ替え可能に使用することができる。以下の説明において、“接続する(又は接続された)”及び“結合する(又は結合された)”は、入れ替え可能に使用することができ、2つ以上のエレメントが直接的又は間接的に互いに物理的又は電気的接触状態にあることを示すために使用される。当該説明において、i番目の行及びj番目の列におけるピクセル(回路)は、位置(i,j)におけるピクセル(回路)と称される。」

(ウ) 【0044】-【0048】

「【0044】
図14は、本発明の他の実施例によるピクセル作動技術が好適に応用される4トランジスタ(4T)ピクセル回路の一例を示している。図14の該ピクセル回路130は、OLED132と、記憶キャパシタ134と、スイッチトランジスタ136と、駆動トランジスタ138とを含んでいる。該ピクセル回路130は、AMOLED表示器を形成する。
【0045】
駆動トランジスタ138のドレイン端子はOLED132に接続され、該駆動トランジスタ138のソース端子は電源ラインVSS(例えば、接地点)に接続されている。スイッチトランジスタ136の一方の端子は、データラインVDATAに接続され、該スイッチトランジスタ136の他方の端子は駆動トランジスタ138のゲート端子に接続されている。スイッチトランジスタ136のゲート端子は、選択ラインSEL[j]に接続されている。記憶キャパシタ134の一方の端子は駆動トランジスタ138のゲート端子に接続され、該記憶キャパシタ134の他方の端子はVSSに接続されている。
(後略)」

(エ) 【0049】-【0059】

「【0049】
図15は、図14に関連するピクセル作動技術が好適に応用される4Tピクセル回路の他の例を示している。図15の該ピクセル回路150は、OLED152と、記憶キャパシタ154と、スイッチトランジスタ156と、駆動トランジスタ158とを含んでいる。該ピクセル回路150は、AMOLED表示器を形成する。OLED152は、図14のOLED132に対応する。記憶キャパシタ154は、図14の記憶キャパシタ134に対応する。トランジスタ156及び158は、図14のトランジスタ136及び138に対応する。
【0050】
駆動トランジスタ158のソース端子はOLED152に接続され、該駆動トランジスタ158のドレイン端子は電源ラインVDDに接続されている。スイッチトランジスタ156は、データラインVDATAと、駆動トランジスタ158のゲート端子の間に接続されている。記憶キャパシタ154の一方の端子は駆動トランジスタ158のゲート端子に接続され、該記憶キャパシタ154の他方の端子はOLED152及び駆動トランジスタ158のソース端子に接続されている。
続きを表示(全19行)
【0051】
該ピクセル回路150には、感知ネットワーク160が設けられている。該ネットワーク160は、ピクセル回路150に含めることができる。回路160は、トランジスタ162及び164を含んでいる。該トランジスタ162及び164は、駆動トランジスタ158のソース端子と、出力ラインVOUTとの間に直列に接続されている。トランジスタ162のゲート端子は、選択ラインSEL[j-1]に接続されている。トランジスタ164のゲート端子は、選択ラインSEL[j+1]に接続されている。トランジスタ162及び164は、図14のトランジスタ142及び144に対応する。
【0052】
ピクセル回路150の経時変化は、出力ラインVOUTの電圧を監視することにより抽出される。一例において、VOUTは、VDATAとは別に設けることができる。他の例では、VOUTは、物理的に隣接する列(行)に対するデータラインVDATAとすることができる。
【0053】
図16Aは、抽出動作の間に図14及び15のピクセル回路に供給される信号波形の一例を示している。また、図16Bは、通常動作の間に図14及び15のピクセル回路に供給される信号波形の一例を示している。
【0054】
図14、15及び16Aを参照して、位置(i,j)におけるピクセルに対する抽出動作は、第1及び第2の抽出サイクル170及び172を含んでいる。第1抽出サイクル170の間において、駆動トランジスタ(図14の138又は図15の158)のゲート端子は校正電圧VCGに充電される。この校正電圧VCGは、前のエージングデータに基づいて計算されたエージング予測を含んでいる。第2抽出サイクル172の間において、選択ラインSEL[j]はゼロとなり、従って、駆動トランジスタ(図14の138又は図15の158)のゲート電圧は、電荷注入及びクロックフィードスルーを含む動的効果により影響を受ける。第2抽出サイクル172の間において、駆動トランジスタ(図14の138又は図15の158)は増幅器として作用する。何故なら、該トランジスタはVOUTを介して一定電流によりバイアスされるからである。該トランジスタに供給される電流ICの結果としてVOUT上に発生される電圧は、(VCD+ΔVCD)である。かくして、当該ピクセルの経時変化は増幅され、VOUTの電圧を変化させる。従って、この方法は非常に少ない量の電圧閾値(VT)のずれの抽出を可能にし、結果として高精度の校正が得られる。VOUTの変化は、監視される。次いで、VOUTの変化(又は複数の変化)は、プログラミングデータの校正のために使用される。
…(中略)…
【0057】
図17は、図14又は15のピクセル回路を有するような表示システムの一例を示し、この例においてVOUTはVDATAから分離されている。図17の表示システム1060は、図10の表示システム1020と類似している。表示システム1060は、行及び列に配列された複数のピクセル1064を有するピクセルアレイ1062を含んでいる。図17には、4つのピクセル1064が示されている。しかしながら、ピクセル1064の数はシステム設計に依存して変化し得、4つに限定されるものではない。ピクセル1064は、図14のピクセル回路130とするか、又は図15のピクセル回路150とすることができる。図13のピクセルアレイは、アクティブマトリクス型発光表示器であり、AMOLED表示器とすることができる。
【0058】
SEL(k)(k=i-1,i,i+1,i+2)は、k番目の行を選択するための選択ラインであり、図14及び15のSEL[j-1],SEL[j]及びSEL[j+1]に対応する。VOUT(l)(l=j,j+1)は、l番目の列のための出力ラインであり、図14及び15のVOUTに対応する。VDATA(l)は、l番目の列のためのデータラインであり、図14及び15のVDATAに対応する。
【0059】
ゲートドライバ1066は、SEL(k)を駆動する。該ゲートドライバ1066は、アドレス信号をSEL(k)に供給するためのアドレスドライバを含んでいる。データドライバ1068は、プログラミングデータを発生し、VDATA(l)を駆動する。データドライバ1068は、VOUT(l)の電圧を駆動及び監視するためのモニタ1070を含んでいる。抽出器ブロック1074は、VOUT(l)上に発生された電圧に基づいて当該ピクセルの経時変化を計算する。VDATA(l)及びVOUT(l)は、図16A及び16Bの動作のために適切に活性化される。VDATA(l)は、監視結果(即ち、VOUT(l)の変化)を使用して校正される。該監視結果は、コントローラ1072に供給することができる。データドライバ1068、コントローラ1072、抽出器1074又はこれらの組み合わせは、上記監視結果を記憶するためのメモリを含むことができる。コントローラ1072は、ドライバ1066及び1068並びに抽出器1074を制御して、ピクセル1064を前述したように駆動する。」

(オ) 図15

「
[図:0001394766000001.jpg]
」

(カ) 図16A

「
[図:0001394766000002.jpg]
」

(キ) 図17

「
[図:0001394766000003.jpg]
」

(ク) 【0129】

「【0129】
図38は、図37のピクセル回路に関するレイアウトを示している。図38において、“R”は赤のピクセルに関連する領域であり、“G”は緑のピクセルに関連する領域であり、“B”は青のピクセルに関連する領域であり、“W”は白のピクセルに関連する領域である。“TWB”は図37の感知トランジスタTWBに対応し、白のピクセル及び青のピクセルにより共用される。“TGR”は図37の感知トランジスタTGRに対応し、緑のピクセル及び赤のピクセルにより共用される。ピクセルの寸法は、例えば、208μmx208μmである。これは、当該回路の高解像度表示器用の非常に小さなピクセルへの適用可能性を示している。」

イ 図15から読み取れる事項の認定

図15(前記ア(オ)参照)におけるスイッチングトランジスタ156と選択ラインSEL[j]との接続関係、及び、図15と類似の図14について説明する、【0045】(前記ア(ウ)参照)の「スイッチトランジスタ136のゲート端子は、選択ラインSEL[j]に接続されている」との記載から見て、引用文献1には、「スイッチトランジスタ156のゲート端子は、選択ラインSEL[j]に接続されている」ことが記載されていると認められる。

ウ 引用発明の認定

前記アに摘記した引用文献1の記載事項及び前記イにおいて認定した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>

「行及び列に配列された複数のピクセル1064を有するピクセルアレイ1062を含む表示システム1060であって、(【0057】)
ピクセルアレイは、アクティブマトリクス型有機発光ダイオード(AMOLED)表示器であり、(【0002】、【0057】)
ピクセル回路150は、OLED152と、記憶キャパシタ154と、スイッチトランジスタ156と、駆動トランジスタ158を含み、(【0049】)
駆動トランジスタ158のソース端子はOLED152に接続され、該駆動トランジスタ158のドレイン端子は電源ラインVDDに接続され、スイッチトランジスタ156は、データラインVDATAと、駆動トランジスタ158のゲート端子の間に接続され、記憶キャパシタ154の一方の端子は駆動トランジスタ158のゲート端子に接続され、該記憶キャパシタ154の他方の端子はOLED152及び駆動トランジスタ158のソース端子に接続され、(【0050】)
続きを表示(全11行)
スイッチトランジスタ156のゲート端子は選択ラインSEL[j]に接続され、(前記イの認定事項)
該ピクセル回路150には、感知ネットワーク160が設けられ、回路160は、トランジスタ162及び164を含んでおり、該トランジスタ162及び164は、駆動トランジスタ158のソース端子と、出力ラインVOUTとの間に直列に接続されており、トランジスタ164のゲート端子は、選択ラインSEL[j+1]に接続されており、(【0051】)
ピクセル回路150の経時変化は、出力ラインVOUTの電圧を監視することにより抽出され、(【0052】)
位置(i,j)におけるピクセルに対する抽出動作は、第1及び第2の抽出サイクル170及び172を含んでおり、第1抽出サイクル170の間において、駆動トランジスタ158のゲート端子は校正電圧VCGに充電され、第2抽出サイクル172の間において、選択ラインSEL[j]はゼロとなり、当該ピクセルの経時変化は増幅され、VOUTの電圧を変化させ、非常に少ない量の電圧閾値(VT)のずれの抽出を可能にし、結果として高精度の校正が得られ、VOUTの変化は、監視され、次いで、VOUTの変化は、プログラミングデータの校正のために使用され、(【0054】)
SEL(k)(k=i-1,i,i+1,i+2)は、k番目の行を選択するための選択ラインであり、VOUT(l)(l=j,j+1)は、l番目の列のための出力ラインであり、VDATA(l)は、l番目の列のためのデータラインであり、(【0058】)
ゲートドライバ1066は、SEL(k)を駆動し、該ゲートドライバ1066は、アドレス信号をSEL(k)に供給するためのアドレスドライバを含んでおり、データドライバ1068は、プログラミングデータを発生し、VDATA(l)を駆動し、データドライバ1068は、VOUT(l)の電圧を駆動及び監視するためのモニタ1070を含んでおり、抽出器ブロック1074は、VOUT(l)上に発生された電圧に基づいて当該ピクセルの経時変化を計算し、コントローラ1072は、ゲートドライバ1066及びデータドライバ1068並びに抽出器1074を制御して、ピクセル1064を駆動する、(【0059】)
表示システム1060(【0057】)」

(2) 引用文献2に記載された事項及び引用文献2技術事項の認定

ア 引用文献2に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された前記引用文献2には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものである。

(ア) 技術分野及び背景技術

「【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス型の有機発光表示装置に関し、特に、有機発光表示装置とその画質補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の有機発光表示装置は、自ら発光する有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:以下、「OLED」という)を含み、応答速度が速く、発光効率、輝度及び視野角が大きい、という長所を有している。
【0003】
自発光素子であるOLEDは、アノード電極及びカソード電極と、これらの間に形成された有機化合物層(HIL、HTL、EML、ETL、EIL)を含む。有機化合物層は、正孔注入層(Hole Injection layer、HIL)、正孔輸送層(Hole transport layer、HTL)、発光層(Emission layer、EML)、電子輸送層(Electron transport layer、ETL)、電子注入層(Electron Injection layer、EIL)からなる。アノード電極とカソード電極に駆動電圧が印加されると、正孔輸送層(HTL)を通過した正孔及び電子輸送層(ETL)を通過した電子が発光層(EML)に移動して励起子を形成し、その結果、発光層(EML)から可視光が発生する。
【0004】
有機発光表示装置は、OLEDをそれぞれ含む画素をマトリクス形態で配列し、ビデオデータの階調に応じて、画素の輝度を調節する。画素の各々は、OLEDに流れる駆動電流を制御するための駆動TFT(Thin Film Transistor)を含む。しきい値電圧、移動度などのような駆動TFTの電気的特性は、全ての画素で同じように設計されることが望ましいが、実際には、プロセス条件、駆動環境等により、画素ごとに駆動TFTの電気的特性は不均一である。このような理由から、同じデータ電圧に応じた駆動電流は、画素ごとに変わり、その結果、画素間の輝度ばらつきが発生することになる。この問題を解決するために、各画素からの駆動TFTの特性パラメータ(しきい値電圧、移動度)をセンシングし、センシング結果に基づいて入力データを適切に補償することで、輝度不均一を減少させる画質補償技術が知られている。」

(イ) 【0040】-【0056】

「【0040】
図6は、外部補償用の画素の具体的な構成と共に、タイミングコントローラ及びデータ駆動回路と画素との間の接続構造を示す。図7は、センシング駆動時のファストモードセンシングを実現することができるセンシング用の第1及び第2ゲートパルスと、サンプリングと、初期化制御信号のタイミングを示す。図8は、画像表示駆動時に、画像表示用の第1及び第2ゲートパルス、サンプリング、及び初期化制御信号のタイミングを示す。図9は、画像表示区間とその両側に配置された非表示区間を示す。
【0041】
図6を参照すると、画素(P)は、OLED、駆動TFT(DT)、ストレージキャパシタ(Cst)、第1スイッチTFT(ST)、及び第2スイッチTFT(ST2)を備えることができる。
続きを表示(全34行)
【0042】
OLEDは、第2ノード(N2)に接続されたアノード電極と、低電位駆動電圧(EVSS)の入力端に接続されたカソード電極と、アノード電極とカソード電極との間に位置する有機化合物層を含む。
【0043】
駆動TFT(DT)は、ゲートーソース間電圧(Vgs)に応じて、OLEDに流れる電流(Ioled)を制御する。駆動TFT(DT)は、第1ノード(N1)に接続されたゲート電極、高電位駆動電圧(EVDD)の入力端に接続されたドレイン電極、及び第2ノード(N2)に接続されたソース電極を備える。
【0044】
ストレージキャパシタ(Cst)は、第1ノード(N1)と第2ノード(N2)との間に接続される。
【0045】
第1スイッチTFT(ST1)は、センシング駆動時に、センシング用の第1ゲートパルス(図7のSCAN)に応答して、データ電圧供給ライン(14A)に充電されたセンシング用データ電圧(駆動TFTのしきい値電圧より高い一定電圧)を第1ノード(N1)に印加する。第1スイッチTFT(ST1)は、画像表示駆動時に、画像表示用の第1ゲートパルス(図8のSCAN)に応答して、データ電圧供給ライン(14A)に充電された画像表示用のデータ電圧(Vdata、駆動TFTのしきい値電圧の変化と移動度の変化が補償されたデータ電圧)を第1ノード(N1)に印加して、駆動TFTをターンオンさせる。第1スイッチTFT(ST1)は、第1ゲートライン(15A)に接続されたゲート電極、データ電圧供給ライン(14A)に接続されたドレイン電極、及び第1ノード(N1)に接続されたソース電極を備える。
【0046】
第2スイッチTFT(ST2)は、センシング駆動時に、センシング用第2ゲートパルス(図7のSEN)に応答して、第2ノード(N2)とセンシング電圧リードアウトライン(14B)との間の電流の流れをスイッチングすることにより、第2ノード(N2)のソース電圧をセンシング電圧リードアウトライン(14B)のセンシングキャパシタ(CX)で保持する。第2スイッチTFT(ST2)は、画像表示駆動時に、画像表示用の第2ゲートパルス(図8のSEN)に応答して、第2ノード(N2)とセンシング電圧リードアウトライン(14B)との間の電流の流れをスイッチングすることにより、駆動TFT(DT)のソース電圧を初期化電圧(Vpre)でリセットする。第2スイッチTFT(ST2)のゲート電極は、第2ゲートライン(15B)に接続され、第2スイッチTFT(ST2)のドレイン電極は、第2ノード(N2)に接続され、第2スイッチTFT(ST2)のソース電極は、センシング電圧リードアウトライン(14B)に接続される。
【0047】
データ駆動回路12は、データ電圧供給ライン(14A)及びセンシング電圧リードアウトライン(14B)を介して画素(P)に接続されている。センシング電圧リードアウトライン(14B)には、第2ノード(N2)のソース電圧をセンシング電圧(Vsen)で保持するためのセンシングキャパシタ(CX)が形成されることができる。データ駆動回路12は、デジタル‐アナログコンバータ(DAC)、アナログ‐デジタル・コンバータ(ADC)、初期化スイッチ(SW1)、及びサンプリング・スイッチ(SW2)などを含む。
【0048】
DACは、センシング駆動時のタイミングコントローラ11の制御下にセンシング用のデータ電圧(Vdata)を生成して、データ電圧供給ライン(14A)に出力することができる。DACは、画像表示駆動時のタイミングコントローラ11の制御下にデジタル補償データを画像表示用のデータ電圧(Vdata)に変換して、データ電圧供給ライン(14A)に出力することができる。
【0049】
初期化スイッチ(SW1)は、初期化制御信号(図7及び図8のSPRE)に応答して初期化電圧(Vpre)入力端とセンシング電圧リードアウトライン(14B)との間の電流の流れをスイッチングする。サンプリングスイッチ(SW2)は、センシング駆動時のサンプリング制御信号(図7のSSAM)に応答して、センシング電圧リードアウトライン(14B)とADCとの間の電流の流れをスイッチングして、一定時間の間、センシング電圧リードアウトライン(14B)のセンシングキャパシタ(CX)で保持された駆動TFT(DT)のソース電圧をセンシング電圧としてADCに供給する。ADCは、センシングキャパシタ(CX)で保持されたアナログセンシング電圧をデジタル値(Vsen)に変換してタイミングコントローラ11に供給する。サンプリングスイッチ(SW2)は、画像表示駆動時のサンプリング制御信号(図8のSSAM)に応答して、継続してターンオフ状態を維持する。
【0050】
図6及び図7を参照してセンシング駆動時画素(P)の動作を説明すると次の通りである。
【0051】
本発明のファストモードセンシング方法によるセンシング駆動は、プログラミング期間(Tpg)、センシング及び保持期間(Tsen)、及びサンプリング期間(Tsam)を含む。
【0052】
プログラミング期間(Tpg)では、駆動TFT(DT)をターンオンさせるために、駆動TFT(DT)のゲート-ソース間電圧が設定される。このため、センシング用の第1及び第2ゲートパルス(SCAN、SEN)並びに初期化制御信号(SPRE)は、オンレベルで入力され、サンプリング制御信号(SSAM)はオフレベルで入力される。これにより、第1スイッチTFT(ST1)は、オンされて、センシング用のデータ電圧を第1ノード(N1)に供給し、第1スイッチ(SW1)と第2スイッチTFT(ST2)は、オンされて、初期化電圧(Vpre)を第2ノード(N2)に供給する。このとき、第2スイッチ(SW2)はオフになっている。
【0053】
センシング&保持期間(Tsen)は、駆動TFT(DT)に流れる電流(Ids)によって駆動TFT(DT)のソース電圧が増加されることをセンシング及び保持する。センシング&保持期間(Tsen)では、正確なセンシングのための駆動TFT(DT)のゲート-ソース間電圧が一定に維持されなければならない。このため、センシング用の第1ゲートパルス(SCAN)は、オフレベルで入力され、センシング用の第2ゲートパルス(SEN)は、オンレベルで入力され、初期化制御信号(SPRE)及びサンプリング制御信号(SSAM)もオフレベルで入力される。センシング&保持期間(Tsen)で駆動TFT(DT)を介して流れる電流(Ids)により、第2ノード(N2)の電位は増加し、第2ノード(N2)の充電電圧(ソース電圧)が第2スイッチTFT(ST2)を経由してセンシングキャパシタ(CX)で保持されることになる。
【0054】
サンプリング期間(Tsam)では、一定時間の間センシングキャパシタ(CX)で保持された駆動TFT(DT)のソース電圧をセンシング電圧としてADCに供給する。このため、センシング用の第1ゲートパルス(SCAN)は、オフレベルで入力され、センシング用の第2ゲートパルス(SEN)とサンプリング制御信号(SSAM)は、オンレベルで入力され、初期化制御信号(SPRE)は、オフレベルで入力される。
【0055】
本発明は、ファストモードセンシング方法のみを利用してセンシング電圧を得て、このセンシング電圧に基づいて、駆動TFTのしきい値電圧の変化量と移動度の変化量の双方を求める。本発明においては、駆動TFTのしきい値電圧の変化量を求めるために、従来のスローモードセンシング方法を採用しない。ファストモードセンシング方法は、ソースフォロワ方式のスローモードセンシング方法に比べてセンシング速度が数十倍~数百倍ほど速いので、本発明において、センシングに所要する時間は大幅に減る。本発明のセンシング駆動はファストモードセンシング方法を採用するために、図9のように、画像表示区間(X0)内に属する垂直ブランク期間(VB)、または、画像表示区間(X0)の前部に配置された第1非表示区間(X1)で行われることができる。本発明は、ファストモードセンシング方法によって得られたセンシング電圧に基づいて駆動TFTのしきい値電圧の変化量までを導出するために、画像表示区間(X0)の後部に配置された第2非表示区間(X2)でセンシング駆動を行う必要がない。ここで、垂直ブランク期間(VB)は、隣接した画像表示フレーム(DF)との間の区間で定義される。第1非表示区間(X1)は、駆動電源イネーブル信号(PEN)の印加時点から数十~数百フレーム経過するまでの区間で定義され、第2非表示区間(X2)は、駆動電源をディセーブル信号(PDIS)の印加時点から数十~数百フレーム経過するまでの区間で定義することができる。
【0056】
一方、このようなセンシング駆動を介して駆動TFTのしきい値電圧の変化と移動度の変化を補償するための補償値が決定されると、補償データ電圧を画素に印加して画像を表示する画像表示駆動が行われる。」

(ウ) 図6

「
[図:0001394766000004.jpg]
」

(エ) 図7

「
[図:0001394766000005.jpg]
」

(オ) 【0063】

「【0063】
図10を参照すると、本発明は、前述したように、画像を表示する前に(図9のX1)、または、画像表示中(図9のX0中のVB)に、ファストモードセンシング方法によってセンシング電圧を得る。このセンシング電圧に基づいて、移動度の変化量をセンシングした後、この移動度の変化量に応じたしきい値電圧の変化量を獲得する。本発明は、しきい値電圧の変化量を獲得するために、移動度の変化量センシング時に求められた関数式を利用し、あるいは、予め設定されたルックアップテーブルの移動度の変化量-しきい値電
圧の変化量の間の相関関係を利用することもできる。移動度の変化量は、ゲイン値の補正と算出の基礎となり、算出されたゲイン値は、メモリに記憶される。しきい値電圧の変化量は、オフセット値補正と、算出の基礎となり、算出されたオフセット値は、メモリに記憶される。」

イ 引用文献2技術事項の認定

前記アに摘記した引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献2技術事項]

「 アクティブマトリクス型の有機発光表示装置に関し、(【0001】)
画素(P)は、OLED、駆動TFT(DT)、ストレージキャパシタ(Cst)、第1スイッチTFT(ST1)、及び第2スイッチTFT(ST2)を備え、(【0041】、【0045】)
駆動TFT(DT)は、第1ノード(N1)に接続されたゲート電極、高電位駆動電圧(EVDD)の入力端に接続されたドレイン電極、及び第2ノード(N2)に接続されたソース電極を備え、(【0043】)
ストレージキャパシタ(Cst)は、第1ノード(N1)と第2ノード(N2)との間に接続され、(【0044】)
続きを表示(全12行)
第1スイッチTFT(ST1)は、センシング駆動時に、センシング用の第1ゲートパルスに応答して、データ電圧供給ライン(14A)に充電されたセンシング用データ電圧を第1ノード(N1)に印加し、第1スイッチTFT(ST1)は、第1ゲートライン(15A)に接続されたゲート電極、データ電圧供給ライン(14A)に接続されたドレイン電極、及び第1ノード(N1)に接続されたソース電極を備え、(【0045】)
第2スイッチTFT(ST2)は、センシング駆動時に、センシング用第2ゲートパルスに応答して、第2ノード(N2)とセンシング電圧リードアウトライン(14B)との間の電流の流れをスイッチングすることにより、第2ノード(N2)のソース電圧をセンシング電圧リードアウトライン(14B)のセンシングキャパシタ(CX)で保持し、第2スイッチTFT(ST2)のゲート電極は、第2ゲートライン(15B)に接続され、第2スイッチTFT(ST2)のドレイン電極は、第2ノード(N2)に接続され、第2スイッチTFT(ST2)のソース電極は、センシング電圧リードアウトライン(14B)に接続され、(【0046】)
初期化スイッチ(SW1)は、初期化制御信号に応答して初期化電圧(Vpre)入力端とセンシング電圧リードアウトライン(14B)との間の電流の流れをスイッチングし、サンプリングスイッチ(SW2)は、センシング駆動時のサンプリング制御信号(図7のSSAM)に応答して、センシング電圧リードアウトライン(14B)とADCとの間の電流の流れをスイッチングして、一定時間の間、センシング電圧リードアウトライン(14B)のセンシングキャパシタ(CX)で保持された駆動TFT(DT)のソース電圧をセンシング電圧としてADCに供給し、(【0049】)
センシング駆動は、プログラミング期間(Tpg)、センシング及び保持期間(Tsen)、及びサンプリング期間(Tsam)を含み、(【0051】)
プログラミング期間(Tpg)では、センシング用の第1及び第2ゲートパルス(SCAN、SEN)並びに初期化制御信号(SPRE)は、オンレベルで入力され、サンプリング制御信号(SSAM)はオフレベルで入力され、これにより、第1スイッチTFT(ST1)は、オンされて、センシング用のデータ電圧を第1ノード(N1)に供給し、第1スイッチ(SW1)と第2スイッチTFT(ST2)は、オンされて、初期化電圧(Vpre)を第2ノード(N2)に供給し、(【0052】)
センシング及び保持期間(Tsen)では、センシング用の第1ゲートパルス(SCAN)は、オフレベルで入力され、センシング用の第2ゲートパルス(SEN)は、オンレベルで入力され、(【0053】)
センシング駆動を介して駆動TFTのしきい値電圧の変化と移動度の変化を補償するための補償値が決定されると、補償データ電圧を画素に印加して画像を表示する画像表示駆動が行われ、【0056】
ファストモードセンシング方法によってセンシング電圧を得て、このセンシング電圧に基づいて、駆動TFTの移動度の変化量をセンシングすること(【0004】、【0063】)」

2 対比

(1) 対比分析

本願発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明は、「行及び列に配列された複数のピクセル1064を有するピクセルアレイ1062を含む表示システム1060」の発明であって、「ピクセルアレイは、アクティブマトリクス型有機発光ダイオード(AMOLED)表示器であ[る]」。

したがって、本願発明と引用発明は「有機発光表示装置」の発明である点で一致する。

イ(ア) 引用文献1の段落【0129】(前記1(1)ア(ク)参照)の「赤のピクセル」、「緑のピクセル」等の記載から、引用文献1においては、本願発明でいう「サブピクセル」を「ピクセル」と呼んでいることが理解される。

この点を踏まえると、引用発明の「ピクセル」は、本願発明の「サブピクセル」に相当する。

(イ) 引用発明の「行及び列に配列された複数のピクセル1064」は、「(i,j)」により各ピクセルの「位置」が特定されるものであるところ、「ピクセルアレイは、アクティブマトリクス型有機発光ダイオード(AMOLED)表示器」であるから、「位置(i,j)」の「ピクセル」は、i行目の「選択ライン」及びj列目の「データライン」によって定義されることは明らかである。

よって、引用発明のi行目の「選択ライン」及びj列目の「データライン」は、それぞれ本願発明の「ゲートライン」及び「データライン」に相当する。

(ウ) i及びjの値は、それぞれ「ピクセルアレイ1062」全体の行の数及び列の数に対応する自然数まで取り得るから、引用発明の「ピクセルアレイ1062」には、複数の選択ライン及び複数のデータラインが存在することも明らかであり、引用発明の「複数のピクセル1064」は、複数のデータライン及び複数の選択ラインにより定義されているといえる。

(エ) 引用発明における「アクティブマトリクス型有機発光ダイオード(AMOLED)表示器であ[る]」「行及び列に配列された複数のピクセル1064を有するピクセルアレイ1062」は、本願発明における「有機発光表示パネル」に相当する。

(オ) 前記(ア)から(エ)の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、「複数のデータライン及び複数のゲートラインにより定義される複数のサブピクセルが配列された有機発光表示パネル」を含む点で一致する。

ウ(ア) 引用発明の「VDATA(l)を駆動」する「データドライバ1068」は、l列(l=j,j+1)のデータラインに係るものであるが、前記イの検討内容を踏まえると、それ以外のデータラインについても駆動することは明らかであるから、本願発明の「前記複数のデータラインを駆動するデータドライバ」に相当する。

(イ) 同様に、引用発明の「SEL(k)を駆動」する「ゲートドライバ1066」は、k行(k=i-1,i,i+1,i+2)の選択ラインに係るものであるが、それ以外の選択ラインについても駆動することは明らかであるから、本願発明の「前記複数のゲートラインを駆動するゲートドライバ」に相当する。

(ウ) そして、引用発明の「ゲートドライバ1066及びデータドライバ1068」を「制御」する「コントローラ」は、本願発明の「前記データドライバ及び前記ゲートドライバを制御するコントローラ」に、相当する。

(エ) 前記(ア)から(ウ)の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。

「前記複数のデータラインを駆動するデータドライバと、
前記複数のゲートラインを駆動するゲートドライバと、
前記データドライバ及び前記ゲートドライバを制御するコントローラとを含[む]」点。

エ(ア) 引用発明の「OLED152」は、本願発明の「有機発光ダイオード」に相当する。

(イ) 引用発明の「ソース端子はOLED152に接続され」、「ドレイン端子は電源ラインVDDに接続され[る]」「駆動トランジスタ」は、OLEDを駆動するためのトランジスタであることは明らかであるから、本願発明の「前記有機発光ダイオードを駆動するための駆動トランジスタ」に相当する。

(ウ)a 引用発明の「駆動トランジスタ158のゲート端子」と「記憶キャパシタ154の一方の端子」の接続点は、本願発明の「前記駆動トランジスタのゲートノードである第1ノード」に相当する。

b 引用発明の「データラインVDATAと、駆動トランジスタ158のゲート端子の間に接続され」、「ゲート端子は選択ラインSEL[j]に接続され[る]」、「スイッチトランジスタ156」は、「ゲートドライバ1066」から「供給」され、「ゲート端子」に印加される「アドレス信号」により制御されるものである。したがって、引用発明の「アドレス信号」は本願発明の「スキャン信号」に相当する。

c 前記a及びbを踏まえると、引用発明の「スイッチトランジスタ156」は、本願発明の「ゲートノードに印加されるスキャン信号により制御され、前記駆動トランジスタのゲートノードである第1ノードとデータラインとの間に電気的に連結されたスイッチングトランジスタ」に相当する。

(エ)a 引用発明の「感知ネットワーク160」に含まれ、「駆動トランジスタ158のソース端子と、出力ラインVOUTとの間に直列に接続され[る]」、トランジスタ162及び164のうち、「ゲート端子は、選択ラインSEL[j+1]に接続されて[いる]」トランジスタ164について検討する。

b(a) まず、引用発明の「感知ネットワーク160」に含まれる「トランジスタ164」は、本願発明の「センシングトランジスタ」に相当する。

(b) また、感知ネットワークに含まれるトランジスタ164のゲート端子が選択ラインSEL[j+1]に接続されていることは、j行目の「トランジスタ164」がj+1行目の「スイッチトランジスタ156」のゲート端子に印加される「アドレス信号」により制御されることを意味するところ、上記(a)において検討したとおり、引用発明の「トランジスタ164」は、本願発明の「センシングトランジスタ」に相当するから、引用発明のj行目のトランジスタ164のゲート端子に印加される「アドレス信号」は本願発明の「センシング信号」に相当する。

(c) 前記(a)及び(b)の検討結果を踏まえると、引用発明の「トランジスタ164のゲート端子は、選択ラインSEL[j+1]に接続されて[いる]」ことは、本願発明のセンシングトランジスタが「ゲートノードに印加されるセンシング信号により制御され[る]」ことに相当する。

c(a) 引用発明の「駆動トランジスタ158のソース端子」、「記憶キャパシタ154の他方の端子」及び「OLED152」の接続点は、本願発明の「前記ゲートノードとは異なる前記駆動トランジスタの第2ノード」に相当する。

(b) 引用発明の「出力ライン」と、本願発明の「基準電圧ライン」は、「ライン」の点で共通する。

(c) 本願発明の「電気的に連結」の定義について、明細書の記載を参酌すると、【0031】には次の記載がある。

「(前略)ある構成要素が他の構成要素に“連結”、“結合”、または“接続”されると記載された場合、その構成要素はその他の構成要素に直接的に連結、または接続できるが、各構成要素の間に他の構成要素が介されるか、または各構成要素が他の構成要素を通じて“連結”、“結合”、または“接続”されることもできると理解されるべきである。」

そうすると、本願発明の「電気的に連結」は、【0031】の記載のとおり、各構成要素が他の構成要素を通じて「電気的に連結」することを包含すると解するのが相当である。

(d) 前記(a)から(c)の検討結果を踏まえると、引用発明の「トランジスタ164」が、「トランジスタ162」とともに「駆動トランジスタ158のソース端子と、出力ラインVOUTとの間に直列に接続され[る]」ることと、本願発明の「センシングトランジスタ」が「前記ゲートノードとは異なる前記駆動トランジスタの第2ノードと基準電圧ラインとの間に電気的に連結され」、「一つの端子が前記基準電圧ラインに電気的に連結され[る]」ことは、「センシングトランジスタが、前記ゲートノードとは異なる前記駆動トランジスタの第2ノードとラインとの間に電気的に連結され」、「一つの端子が前記ラインに電気的に連結され[る]」点で共通する。

d 前記aからcまでの検討結果をまとめると、

引用発明の「感知ネットワーク160」に含まれ、トランジスタ162とともに「駆動トランジスタ158のソース端子と、出力ラインVOUTとの間に直列に接続され」、「ゲート端子は、選択ラインSEL[j+1]に接続されて[いる]」、「トランジスタ164」と、

本願発明の「ゲートノードに印加されるセンシング信号により制御され、前記ゲートノードとは異なる前記駆動トランジスタの第2ノードと基準電圧ラインとの間に電気的に連結されたセンシングトランジスタであって、一つの端子が前記基準電圧ラインに電気的に連結されたセンシングトランジスタ」は、

「ゲートノードに印加されるセンシング信号により制御され、前記ゲートノードとは異なる前記駆動トランジスタの第2ノードとラインとの間に電気的に連結されたセンシングトランジスタであって、一つの端子が前記ラインに電気的に連結されたセンシングトランジスタ」

の点で共通する。

(オ) 引用発明の「一方の端子は駆動トランジスタ158のゲート端子に接続され」、「他方の端子はOLED152及び駆動トランジスタ158のソース端子に接続され[る]」「記憶キャパシタ」は、本願発明の「前記駆動トランジスタの第1ノードと第2ノードとの間に電気的に連結されたストレージキャパシタ」に相当する。

(カ)a 引用発明の「ピクセル回路150」という表現は、「ピクセル」という表現と入れ替え可能に使用され(【0010】(前記1(1)ア(イ)参照))、引用発明の「ピクセル」は、本願発明の「サブピクセル」に相当することは前記イ(ア)で検討したとおりである。

b このことと、前記(ア)から(オ)で検討した事項から、引用発明の「ピクセル回路150は、OLED152と、記憶キャパシタ154と、スイッチトランジスタ156と、駆動トランジスタ158を含み」、「該ピクセル回路150には、感知ネットワーク160が設けられ、回路160は、トランジスタ162及び164を含んで[いる]」ことは、本願発明の「前記各サブピクセルは」、「有機発光ダイオードと」、「駆動トランジスタと」、「スイッチングトランジスタと、」「センシングトランジスタと、」「ストレージキャパシタとを含[む]」ことに相当する。

(キ) 前記(ア)から(カ)の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は次の点で共通する。

「 前記各サブピクセルは、
有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードを駆動するための駆動トランジスタと、
ゲートノードに印加されるスキャン信号により制御され、前記駆動トランジスタのゲートノードである第1ノードとデータラインとの間に電気的に連結されたスイッチングトランジスタと、
ゲートノードに印加されるセンシング信号により制御され、前記ゲートノードとは異なる前記駆動トランジスタの第2ノードとラインとの間に電気的に連結されたセンシングトランジスタであって、一つの端子が前記ラインに電気的に連結されたセンシングトランジスタと、
前記駆動トランジスタの第1ノードと第2ノードとの間に電気的に連結されたストレージキャパシタとを含[む]」点。

オ(ア) 引用発明の「行及び列に配列された複数のピクセル1064」は、前記イにおいて検討したとおり、「(i,j)」により各ピクセルの「位置」が特定されるところ、iの値を一つ指定したときにその行に沿って並ぶ複数のピクセルはライン状の配列であるから、このような行方向に沿ってライン状に配列した複数のピクセルの集合体は、本願発明の「サブピクセルライン」に相当する。

(イ) そして、SEL(k)は、k番目の行を選択するための選択ラインであり、これは任意のk番目の行に対して一本の選択ラインが設けられることを意味するから、引用発明は、本願発明の「前記複数のゲートラインの各々は、1つのサブピクセルライン毎に配置され[る]」ことに相当する構成を備えていることは明らかである。

(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、「前記複数のゲートラインの各々は、1つのサブピクセルライン毎に配置され[ている]」点で一致する。

カ 引用発明において、「SEL(k)(k=i-1,i,i+1,i+2)は、k番目の行を選択するための選択ラインであ[り]」「アドレス信号をSEL(k)に供給する」こと、前記エ(ウ)bのとおり、引用発明のスイッチトランジスタのゲート端子に印加される「アドレス信号」は本願発明の「スキャン信号」に相当すること、及び前記オの本願発明と引用発明は、「前記複数のゲートラインの各々は、1つのサブピクセルライン毎に配置され[ている]」点で一致することを踏まえると、引用発明は、「スイッチトランジスタ156のゲート端子は選択ラインSEL[j]に接続され」、「アドレス信号をSEL(k)に供給する」ものであるから、本願発明と引用発明は、「n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のスイッチングトランジスタのゲートノードは、前記n番目サブピクセルラインに配置されたn番目ゲートラインを通じて出力されるn番目スキャン信号の印加を受け[る]」点で一致する。

キ 引用発明において、「SEL(k)(k=i-1,i,i+1,i+2)は、k番目の行を選択するための選択ラインであ[り]」「アドレス信号をSEL(k)に供給する」ことと、前記エ(エ)b(b)のとおり、引用発明のトランジスタ164のゲート端子に印加される「アドレス信号」は本願発明の「センシング信号」に相当すること、及び、前記カの対比分析の結果を踏まえると、引用発明は、「トランジスタ164のゲート端子は、選択ラインSEL[j+1]に接続されており」、「アドレス信号をSEL(k)に供給する」ものであるから、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。

「 前記n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のセンシングトランジスタのゲートノードは、n+1番目サブピクセルラインに配置されたn+1番目ゲートラインであって、前記n+1番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のスイッチングトランジスタのゲートノードと、n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のセンシングトランジスタのゲートノードに共通に連結されたn+1番目ゲートラインを通じて出力されるn+1番目スキャン信号をn番目センシング信号として印加を受け[る]」点。

ク(ア) 引用発明の「電圧閾値(VT)」が、駆動トランジスタ158の電圧閾値(VT)を意味することは技術常識からみて明らかである。

(イ) また、引用発明の「当該ピクセルの経時変化は増幅され、VOUTの電圧を変化させ」、「VOUTの変化は、プログラミングデータの校正のために使用され[る]」ことと、本願発明の「駆動トランジスタの移動度補償モード」は、駆動トランジスタの特性値の変化の補償を行う点で共通している。

(ウ) 前記(ア)及び(イ)から、本願発明と引用発明は、「駆動トランジスタの特性値の変化の補償を行う」点で共通する。

(2) 一致点及び相違点の認定

前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点

「 複数のデータライン及び複数のゲートラインにより定義される複数のサブピクセルが配列された有機発光表示パネルと、
前記複数のデータラインを駆動するデータドライバと、
前記複数のゲートラインを駆動するゲートドライバと、
前記データドライバ及び前記ゲートドライバを制御するコントローラとを含み、
続きを表示(全13行)
前記各サブピクセルは、
有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードを駆動するための駆動トランジスタと、
ゲートノードに印加されるスキャン信号により制御され、前記駆動トランジスタのゲートノードである第1ノードとデータラインとの間に電気的に連結されたスイッチングトランジスタと、
ゲートノードに印加されるセンシング信号により制御され、前記ゲートノードとは異なる前記駆動トランジスタの第2ノードとラインとの間に電気的に連結されたセンシングトランジスタであって、一つの端子が前記ラインに電気的に連結されたセンシングトランジスタと、
前記駆動トランジスタの第1ノードと第2ノードとの間に電気的に連結されたストレージキャパシタとを含み、
前記複数のゲートラインの各々は、1つのサブピクセルライン毎に配置され、
n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のスイッチングトランジスタのゲートノードは、前記n番目サブピクセルラインに配置されたn番目ゲートラインを通じて出力されるn番目スキャン信号の印加を受け、
前記n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のセンシングトランジスタのゲートノードは、n+1番目サブピクセルラインに配置されたn+1番目ゲートラインであって、前記n+1番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のスイッチングトランジスタのゲートノードと、n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のセンシングトランジスタのゲートノードに共通に連結されたn+1番目ゲートラインを通じて出力されるn+1番目スキャン信号をn番目センシング信号として印加を受け、駆動トランジスタの特性値の変化の補償を行うものである、有機発光表示装置」である点。

イ 相違点

駆動トランジスタの特性値の変化の補償及びセンシングトランジスタの一つの端子が電気的に連結された「ライン」について、本願発明は、ラインに基準電圧を印加し、データラインに移動度センシング用データ電圧を印加して、駆動トランジスタの移動度の補償を行うモードを備えるものであり、「n番目サブピクセルラインでの駆動トランジスタの移動度補償モードにおいて、n+1番目スキャン信号がターン-オンレベル電圧で出力される間、n番目スキャン信号がターン-オンレベル電圧で出力されてからターン-オフレベル電圧で出力され、前記n番目スキャン信号がターン-オンレベルの電圧で出力される間、前記データラインに移動度センシング用データ電圧が印加され、前記基準電圧ラインに基準電圧が印加される」のに対して、

引用発明は、電圧閾値(VT)のずれを抽出するものであって、駆動トランジスタの移動度補償モードは備えておらず、前記「ライン」が「出力ライン」である点。

3 判断

(1) 相違点について

前記相違点について検討する。

ア 引用発明と引用文献2技術事項の対応関係

次の対応関係に示すとおり、引用発明と引用文献2技術事項は、画素回路の構成が以下の点で共通するものである。

<引用発明> <引用文献2技術事項>

OLED152 OLED

駆動トランジスタ158 駆動TFT(DT)

スイッチトランジスタ156 第1スイッチTFT(ST1)

トランジスタ162及び164 第2スイッチTFT(ST2)

記憶キャパシタ154 ストレージキャパシタ(Cst)

イ 引用発明への引用文献2技術事項の適用

(ア) 引用発明と引用文献2技術事項はいずれも、アクティブマトリクス型有機発光ダイオード表示器において、本願発明の「センシングトランジスタ」に相当するトランジスタ(引用発明の「トランジスタ162及び164」、引用文献2技術事項の「第2スイッチTFT(ST2)」)を利用して駆動トランジスタの経時変化を抽出し、校正又は補償する技術に関する点で共通の作用を有するものであって、画素回路の構成も共通するものである。

(イ) そして、引用発明では駆動トランジスタの電圧閾値のずれを校正しているところ、引用文献2技術事項のように、駆動トランジスタの移動度の変化も校正又は補償するのが望ましいことは当業者には自明の課題である。

(ウ) よって、引用発明において、駆動トランジスタの移動度の変化を補償するために、引用文献2技術事項を適用して、

j行目のピクセルの駆動トランジスタの移動度の変化を補償するに際し、

「プログラミング期間(Tpg)」では、「センシング用の第1及び第2ゲートパルス(SCAN、SEN)」にそれぞれ対応するSEL[j]へのアドレス信号及びSEL[j+1]へのアドレス信号が「オンレベルで入力され」、「センシング用のデータ電圧」を「第1ノード(N1)」に供給するためにデータラインVDATAに印加し、「初期化電圧(Vpre)」を「第2ノード(N2)」に供給するために出力ラインVOUTに印加し、

「センシング及び保持期間(Tsen)」では、「センシング用の第1ゲートパルス(SCAN)」に対応するSEL[j]へのアドレス信号が「オフレベルで入力され」、「センシング用の第2ゲートパルス(SEN)」に対応するSEL[j+1]へのアドレス信号がオンレベルで入力され[る]」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 引用発明に引用文献2技術事項を適用した構成と相違点に係る本願発明の構成の対比

ここで、前記イのように引用発明に引用文献2技術事項を適用した構成と前記相違点に係る本願発明の構成を対比すると、以下のとおりである。

(ア) j行目のピクセルの移動度の変化を補償するために前記イ(ウ)のように信号や電圧を印加する態様は、前記相違点に係る本願発明の「n番目サブピクセルラインでの駆動トランジスタの移動度補償モード」に相当する。

(イ) プログラミング期間(Tpg)では、SEL[j]へのアドレス信号(すなわち、n番目スキャン信号)及びSEL[j+1]へのアドレス信号(すなわち、n+1番目スキャン信号)がオンレベルで入力され、センシング及び保持期間(Tsen)では、SEL[j]へのアドレス信号がオフレベルで入力され、SEL[j+1]へのアドレス信号がオンレベルで入力されることは、前記相違点に係る本願発明の「n+1番目スキャン信号がターン-オンレベル電圧で出力される間、n番目スキャン信号がターン-オンレベル電圧で出力されてからターン-オフレベル電圧で出力され[る]」ことに相当する。

(ウ) プログラミング期間(Tpg)では、センシング用のデータ電圧(すなわち、移動度センシング用データ電圧)をデータラインVDATAに印加し、初期化電圧(Vpre)(すなわち、基準電圧)を出力ラインVOUTに印加することは、プログラミング期間(Tpg)ではSEL[j]へのアドレス信号(すなわち、n番目スキャン信号)がオンレベルで入力されることを考慮すると、前記相違点に係る本願発明の「前記n番目スキャン信号がターン-オンレベルの電圧で出力される間、前記データラインに移動度センシング用データ電圧が印加され、前記基準電圧ラインに基準電圧が印加され」に相当する。

(エ) プログラミング期間(Tpg)では、出力ラインVOUTに初期化電圧(Vpre)(すなわち、基準電圧)を印加するのであるから、初期化電圧(Vpre)が印加される出力ラインは、前記相違点に係る本願発明の「基準電圧ライン」に相当する。

(オ) 以上(ア)から(エ)で検討したとおり、前記イのように引用発明に引用文献2技術事項を適用した構成は、前記相違点に係る本願発明の構成を備えることとなる。

エ 作用効果について

本願発明の奏する効果は、引用発明と引用文献2技術事項から予測される程度のものにすぎず、予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

オ 相違点の判断についてのまとめ

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 請求人の主張について

ア 審判請求書及び上申書における請求人の主張内容

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。

(ア) 主張1

引用文献1の図16A、16B等において、駆動トランジスタの移動度補償モードにあたるものは考察すらされていない。

また、引用文献2(段落0037-0038、0063)に関しても、引用文献2に記載されているのは1つの画素にセンシング用の第1及び第2のゲートパルス(SCANとSEN)を与えるもの(引用文献2の図6)であるから、2スキャン構造のみである。本願発明のように、1サブピクセルラインあたり1つのゲートラインのみを含むような1スキャン構造ではない。

したがって、引用文献2を参照しても、引用文献1に組み合わせて、「前記n番目サブピクセルラインでの駆動トランジスタの移動度補償モードにおいて、前記n+1番目スキャン信号がターン-オンレベル電圧で出力される間、前記n番目スキャン信号がターン-オンレベル電圧で出力されてからターン-オフレベル電圧で出力され、前記n番目スキャン信号がターン-オンレベルの電圧で出力される間、前記データラインに移動度センシング用データ電圧が印加され、前記基準電圧ラインに基準電圧が印加される」との構成アに想到することはできない。

引用文献3(段落0099)についても、引用文献3の図4にあるように、SL1とSL2の2スキャン構造が記載されているのみであって、1スキャン構造による移動度補償モードは開示されていない。

したがって、引用文献3を参照しても、引用文献1に組み合わせて、構成アに想到することはできない。

以上の考察に鑑みれば、当業者であっても、引用文献1及び引用文献2、3に基づいて、本願発明に容易に想到できるものでないことは明らかである。引用文献4から6を考慮しても事情は変わらない。

(イ) 主張2

請求人は、令和4年1月25日に提出された上申書においても、前記主張1と同様の主張を繰り返すとともに、請求項1を次のように補正する意向を示している。

「 【請求項1】
複数のデータライン及び複数のゲートラインにより定義される複数のサブピクセルが配列された有機発光表示パネルと、
前記複数のデータラインを駆動するデータドライバと、
前記複数のゲートラインを駆動するゲートドライバと、
続きを表示(全16行)
前記データドライバ及び前記ゲートドライバを制御するコントローラとを含み、
前記各サブピクセルは、
有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードを駆動するための駆動トランジスタと、
ゲートノードに印加されるスキャン信号により制御され、前記駆動トランジスタのゲートノードである第1ノードとデータラインとの間に電気的に連結されたスイッチングトランジスタと、
ゲートノードに印加されるセンシング信号により制御され、前記ゲートノードとは異なる前記駆動トランジスタの第2ノードと基準電圧ラインとの間に電気的に連結されたセンシングトランジスタであって、一つの端子が前記基準電圧ラインに電気的に連結されたセンシングトランジスタと、
前記駆動トランジスタの第1ノードと第2ノードとの間に電気的に連結されたストレージキャパシタとを含み、
前記複数のゲートラインの各々は、1つのサブピクセルライン毎に配置され、
n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のスイッチングトランジスタのゲートノードは、前記n番目サブピクセルラインに配置されたn番目ゲートラインを通じて出力されるn番目スキャン信号の印加を受け、
前記n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のセンシングトランジスタのゲートノードは、n+1番目サブピクセルラインに配置されたn+1番目ゲートラインであって、前記n+1番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のスイッチングトランジスタのゲートノードと、n番目サブピクセルラインに配列された各サブピクセル内のセンシングトランジスタのゲートノードに共通に連結されたn+1番目ゲートラインを通じて出力されるn+1番目スキャン信号をn番目センシング信号として印加を受け、
前記n番目サブピクセルラインでの駆動トランジスタの移動度補償モードにおいて、
前記n番目サブピクセルラインの各サブピクセル内のセンシングトランジスタのゲートノードが、ターン-オンレベル電圧を有する前記n+1番目スキャン信号の印加を受けるように前記n+1番目スキャン信号が前記ターン-オンレベル電圧で出力される間、前記n番目サブピクセルラインの各サブピクセル内の前記スイッチングトランジスタのゲートノードが、前記ターン-オンレベル電圧を有する前記n番目スキャン信号の印加を受けるように前記n番目スキャン信号が前記ターン-オンレベル電圧で出力され、前記データラインが移動度をセンシングするためのデータ電圧の印加を受け、前記基準電圧ラインが前記基準電圧の印加を受け、それから、前記n番目スキャン信号がターン-オフレベル電圧で出力され、その後、前記n+1番目スキャン信号が前記ターン-オンレベル電圧で出力される、有機発光表示装置。」

イ 請求人の主張についての検討

折りたたみ中(クリックで表示)

(ア) 請求人の主張は要するに、構成アで特定される1スキャン構造による移動度補償モードはいずれの引用文献にも開示されておらず、引用文献を組み合わせても構成アを容易に想到することはできない、というものである。

しかしながら、構成アが引用文献1に記載された発明である引用発明及び引用文献2技術事項から当業者が容易に想到し得たものであることは前記(1)で検討したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

(イ) また、請求人が上申書で提示する補正の内容を検討しても、依然として引用発明及び引用文献2技術事項から容易に想到される構成であるから(特に、引用発明でトランジスタ164のゲート端子が選択ラインSEL[j+1]に接続されている点と、引用文献2技術事項のセンシング駆動におけるプログラミング期間(Tpg)及びセンシング及び保持期間(Tsen)に関する点を参照)、当該補正の内容を考慮したとしても、当審の判断の結論を左右するものではない。

4 当審の判断のまとめ

以上検討のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-001122

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