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特許拒絶査定不服審判

2022-000301

液晶パネルおよびその製造方法

審判番号
2022-000301
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-501559
請求日
2022年01月07日
審決日
2023年01月30日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】杉金光電(蘇州)有限公司
  • 【請求人代理人】木村 満
  • 【請求人代理人】森川 泰司
  • 【請求人代理人】桜田 圭
  • 【請求人代理人】美恵 英樹
審判長/審判官
  • 審判長 山村 浩
  • 審判官 金高 敏康
  • 審判官 廣田 かおり
分類
P18 .121-Z (G02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-501559「液晶パネルおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日国際公開、WO2019/013604、令和 2年 8月31日国内公表、特表2020-526798〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)7月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年 7月14日(以下「優先日」という。)、2018年 7月16日 いずれも韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年12月17日付け:拒絶理由通知書 令和 3年 3月10日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 9月 3日付け:拒絶査定 令和 4年 1月 7日 :審判請求書、手続補正書(以下、この手続 補正書によりなされた補正を「本件補正」 という。)の提出 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 第1面および該第1面と反対方向の第2面を有する液晶セルと;前記第1面に設けられた第1偏光板と;前記第2面に設けられた第2偏光板と;を含み、 前記第1偏光板および前記第2偏光板は、それぞれ、偏光子層と、該偏光子層に結合された低透湿基材層と、低透湿基材層の反対面に該偏光子層に結合された保護層とを含み、 前記第1偏光板の吸収軸方向は、前記第2偏光板の透過軸方向と同一であり、前記第1偏光板の透過軸方向は、前記第2偏光板の吸収軸方向と同一であり、 下記一般式1を満たす液晶パネル: [一般式1] │αMD-αTD|≦1 一般式1で、αMDは、一般式2により定められる値であり、αTDは、一般式3により定められる値であり、 前記αMDおよび前記αTDが、それぞれ、0.8~1.2である: [一般式2] αMD=(前記第1偏光板の各層に作用する吸収軸方向の曲げモーメントの合計)/(前記第2偏光板の各層に作用する透過軸方向の曲げモーメントの合計)、 [一般式3] αTD=(前記第1偏光板の各層に作用する透過軸方向の曲げモーメントの合計)/(前記第2偏光板の各層に作用する吸収軸方向の曲げモーメントの合計) 一般式2および3で、前記各層に作用する吸収軸方向の曲げモーメントは、液晶パネルの中心から当該層の中心までの距離と当該層に作用する吸収軸方向の収縮力との積により決定され、 前記各層に作用する透過軸方向の曲げモーメントは、液晶パネルの中心から当該層の中心までの距離と当該層に作用する透過軸方向の収縮力との積により決定され、 前記低透湿基材層は、ポリエステルから形成され、Tg~Tg+30℃で乾燥されて、80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力が、幅5.3mmにおいて3N~10Nである。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 第1面および該第1面と反対方向の第2面を有する液晶セルと;前記第1面に設けられた第1偏光板と;前記第2面に設けられた第2偏光板と;を含み、 前記第1偏光板および前記第2偏光板は、それぞれ、偏光子層と、該偏光子層に結合された低透湿基材層と、低透湿基材層の反対面に該偏光子層に結合された保護層とを含み、 前記第1偏光板の吸収軸方向は、前記第2偏光板の透過軸方向と同一であり、前記第1偏光板の透過軸方向は、前記第2偏光板の吸収軸方向と同一であり、 下記一般式1を満たす液晶パネル: [一般式1] │αMD-αTD|≦1 一般式1で、αMDは、一般式2により定められる値であり、αTDは、一般式3により定められる値であり、 前記αMDおよび前記αTDが、それぞれ、0.8~1.2である: [一般式2] αMD=(前記第1偏光板の各層に作用する吸収軸方向の曲げモーメントの合計)/(前記第2偏光板の各層に作用する透過軸方向の曲げモーメントの合計)、 [一般式3] αTD=(前記第1偏光板の各層に作用する透過軸方向の曲げモーメントの合計)/(前記第2偏光板の各層に作用する吸収軸方向の曲げモーメントの合計) 一般式2および3で、前記各層に作用する吸収軸方向の曲げモーメントは、液晶パネルの中心から当該層の中心までの距離と当該層に作用する吸収軸方向の収縮力との積により決定され、 前記各層に作用する透過軸方向の曲げモーメントは、液晶パネルの中心から当該層の中心までの距離と当該層に作用する透過軸方向の収縮力との積により決定される。」 2 本件補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「低透湿基材層」について、「ポリエステルから形成され、Tg~Tg+30℃で乾燥されて、80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力が、幅5.3mmにおいて3N~10Nである」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1) 本件補正発明の認定 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)を、上記1(1)に記載された事項のとおりに認定する。 (2) 引用文献の記載事項及び引用発明の認定 本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である韓国公開特許第10-2015-0072993号公報(原査定の引用文献1。以下「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。なお、引用文献の原文(韓国語)の摘記を省略し、当合議体による訳文を記載する。 ア 「請求項1 液晶表示装置用パネル、 上記液晶表示装置用パネルの上部に形成された第1偏光子、および 上記液晶表示装置用パネルの下部に形成された第2偏光子を含み、 上記第1偏光子および上記第2偏光子のいずれか1つ以上の片面又は両面に光学フィルムを含み、 上記光学フィルムは、TD熱収縮率がMD熱収縮率より大きく、 上記光学フィルムのTDは、上記偏光子のMDを0°としたとき85~95°方向である液晶表示装置用モジュール。」 「請求項7 第1項において、上記偏光子の他の一面に、光学機能性フィルム、粘着層、またはコーティング層のうちの少なくとも1つがさらに形成されている液晶表示装置用モジュール。」 「[0002]近年、液晶表示装置のモジュール全体を薄くするためのモジュールの薄型化が求められている。しかしながら、モジュールを薄型化するにつれて、液晶表示パネルが偏光板によって反りが発生するようになると、反りが少ないモジュールに対する要求が高まっている。偏光板は偏光子を含み、偏光子はポリビニルアルコール系フィルムを延伸して製造されるため、延伸方向に熱収縮が発生し、偏光板は偏光子により延伸方向の収縮力を受けて偏光板に熱ストレスが加わると、熱変形により偏光板またはパネルの寸法変化が起こり得る。」 「[0004]本発明の目的は、薄型であり、偏光子の偏光度をそのまま維持することができ、反りの抑えられた液晶表示装置用モジュールを提供することである。」 「[0027]液晶表示装置において、画面視認のために第1偏光子の吸収軸と第2偏光子の吸収軸は互いに直交し、偏光子は延伸方向が吸収軸となるので、第1偏光子と第2偏光子は熱に露出すると熱収縮が起こり、反りが発生する可能性がある。 [0028]しかし、本発明液晶表示装置用モジュールでは偏光子の一面に光学フィルムが形成され、光学フィルムのTD熱収縮率をMD熱収縮率より大きくし、光学フィルムのTDを偏光子のMDすなわち吸収軸を0°としたとき85~95°方向となるようにすることで、液晶表示パネルを基準に第1偏光板と第2偏光板の反りとを相殺して液晶表示パネルの反りを防止することができる。 [0029]偏光子の他の一面には、上述した光学フィルムと同一物性を有する光学機能性フィルム、上述した光学フィルムと同一物性を有しない光学機能性フィルム、粘着層、コーティング層などが形成されてもよく、光学機能性フィルムは、位相差フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシートなどの光学シートのうちの1つ以上が可能である。 [0030]偏光子の他の一面には、上述した光学フィルムと同一物性を有する光学機能性フィルム、上述した光学フィルムと同一物性を有しない光学機能性フィルム、粘着層、コーティング層などが形成されなくてもよい。すなわち、偏光子と光学フィルムのみからなる偏光板であってもよい。」 「[0031]以下、図1、図2を参照して本発明の一実施例の液晶表示装置用モジュールを説明する。図1は、本発明の一実施例の液晶表示装置用モジュールの断面図であり、図2は、図1の液晶表示装置用モジュールのうちの第1偏光子、第2偏光子および第4光学フィルムの分解斜視図である。 [0032]図1、図2を参照すると、本発明の一実施例の液晶表示装置用モジュール(100)は、液晶表示パネル(10)、液晶表示パネル(10)の上部に形成された第1偏光板(20)、および液晶表示パネル(10)の下部に形成された第2偏光板(30a)を含み、第1偏光板(20)は、第1偏光子(21)、第1偏光子(21)の上部に形成された第1光学フィルム(22)、および第1偏光子(21)の下部に形成された第2光学フィルム(23)を含み、第2偏光板(30a)は、第2偏光子(31)、第2偏光子(31)の上部に形成された第3光学フィルム(32)、および第2偏光子(31)の下部に形成された第4光学フィルム(33)を含み、第4光学フィルム(33)は、TD熱収縮率がMD熱収縮率より大きく、第4光学フィルム(33)のTD(33a)は、第2偏光子(31)の吸収軸(31a)を0°としたとき85~95°方向となる。 [0033]第1偏光子(21)の吸収軸(21a)と第2偏光子(31)の吸収軸(31a)は互いに直交し、第4光学フィルム(33)のTD熱収縮率をMD熱収縮率よりも大きくし、第4光学フィルム(33)のTD(33a)を第2偏光子(31)のMD、すなわち吸収軸(31a)を0°としたとき85~95°方向となるようにすることにより、液晶表示パネルを基準に第1偏光板と第2偏光板の反りを相殺して液晶表示パネルの反りを防止することができる。また、第1偏光子と第2偏光子の熱収縮率制御のみで反りを抑えることは困難であったが、光学フィルムによって反りを制御することにより、薄型のパネルに対しても反りを抑えることができる。」 「[0036]第4光学フィルムは、TD熱収縮率>MD熱収縮率とするためにTD延伸フィルムであってもよい。実施例では、第4光学フィルムは、TDのみ延伸されたフィルム、MD/TD二軸が延伸されるがTD延伸比がMD延伸比よりも大きいフィルムが可能である。また、フィルムの安定性を与えるために、延伸した後、テンションリラックス(tension-relaxation)したフィルムであってもよい。 [0037]TDのみ延伸されたフィルムは、無延伸フィルムを延伸比1~7、例えば2~7、延伸温度は50~200℃でTD延伸したフィルムであり、上記範囲において、第4光学フィルムはTD熱収縮率>MD熱収縮率となり、薄型のパネルでも反りを抑えることができる。 [0038]MD/TD二軸が延伸されるがTD延伸比がMD延伸比より大きいフィルムは、無延伸フィルムをそれぞれ延伸比1~7、例えば2~7、延伸温度は50~200℃でMD/TD二軸延伸するが、MD延伸比<TD延伸比となるように延伸したフィルムで、上記範囲において、第4光学フィルムはTD熱収縮率>MD熱収縮率となり、薄型のパネルでも反りを抑制することができる。」 「[0041]第4光学フィルムは透明な光学フィルムであり、トリアセチルセルロースなどを含むセルロース系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル系、環状ポリオレフィン系 、ポリカーボネート系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリアリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系のうち少なくとも1種の樹脂からなる フィルムが可能である。」 「[0052]第1光学フィルム(22)、第2光学フィルム(23)、第3光学フィルム(32)は第4光学フィルム(33)と同一物性を有してもよく、同一物性を有していなくてもよい。 [0053]第1光学フィルム、第2光学フィルム、第3光学フィルムは、無延伸または延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムの場合、延伸方向によって熱収縮が起こり得るが、MD収縮率とTD熱収縮率を制御することによりパネルの反り現象を抑える効果がある。具体的には、第1光学フィルム、第2光学フィルム、第3光学フィルムは、それぞれMD熱収縮率は0.01~0.3%、TD熱収縮率は0.1~0.8%とすることにより、上記範囲で、上記効果を示すことができる。上記MD熱収縮率とTD熱収縮率とを有する第1光学フィルム、第2光学フィルム、第3光学フィルムは無延伸フィルムで製造することができる。 [0054]第1光学フィルム、第2光学フィルム、第3光学フィルムはそれぞれ透明な光学フィルムであり、トリアセチルセルロースなどを含むセルロース系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル系、環状ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリアリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系のうちの1つ以上の樹脂からなるフィルムであってもよい。」 「[0066]図5を参照すると、本発明のまた別の実施例の液晶表示装置用モジュール(400)は、液晶表示パネル(10)、液晶表示パネル(10)の上部に形成された第1偏光板(20)、および液晶表示パネル(10)の下部に形成された第2偏光板(30d)を含み、第1偏光板(20)は、第1偏光子(21)、第1偏光子(21)の上部に形成された第1光学フィルム(22)、および第1偏光子(21)の下部に形成された第2光学フィルム(23)を含み、第2偏光板(30d)は第2偏光子(31)、第2偏光子(31)の上部に形成された第4光学フィルム(33)、および第2偏光子(31)の下部に形成されたコーティング層(34)を含み、第4光学フィルム(33)は、TD熱収縮率がMD熱収縮率より大きく、第4光学フィルム(33)のTD(33a)は、第2偏光子(31)の吸収軸(31a)を0°としたとき85~95°となる。コーティング層(34)が形成されたことを除いては、本発明の一実施例の液晶表示装置用モジュールと実質的に同じである。 以下、コーティング層(34)について説明する。 [0067]コーティング層(34)は、活性エネルギー線硬化性化合物と重合開始剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からできている。コーティング層は、偏光子に対する良好な密着性、透明性、機械的強度、熱安定性、防湿性、耐久性を高めることができる。」 「[0094]実施例1~5 ・・・(略)・・・ [0096]ポリビニルアルコールフィルム(VF-PS6000, 日本クラレ社, 厚さ:60μm)を60℃で3倍MD方向に延伸し、ヨウ素を吸着させた後、40~50℃のホウ酸水溶液で2~4倍MD方向に延伸してそれぞれ第1偏光子と第2偏光子を製造した。 [0097]トリアセチルセルロースフィルム(Konica社のKC4DR-1, 厚さ40μm)をPVA水系接着剤を用いて第1偏光子の両面にそれぞれ貼合して第1偏光板を製造した。 [0098]第2偏光子の一面にトリアセチルセルロースフィルム(Konica社のKC4DR-1, 厚さ40μm)、他の一面に表1のTACフィルムをPVA系水系接着剤を用いて付着して第2偏光板を製造した。このとき、第2偏光子のMDと表1のTACフィルムのTDは、下記表1の角度となるように貼合した。 ・・・(略)・・・ [0103]実施例7 [0104]ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出しし、MD方向には延伸せずにTD方向に6.1倍延伸し、150℃でテンションリラックスして結晶化および安定化処理してポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さは80μm)を製造した。 [0105]実施例1において、第2偏光子製造時に表1のMD熱収縮率とTD熱収縮率を有するTACフィルムの代わりに上記ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたことを除いては同様の方法で偏光板を製造した。」 イ 図1、2及び5は、次のとおりである。 「図1 [図:0001398777000001.jpg] 図2 [図:0001398777000002.jpg] 図5 [図:0001398777000003.jpg] 」 ウ 上記ア及びイによれば、引用文献には、図1及び2に係る一実施例の液晶表示用モジュールについて、次の発明が記載されていると認められる。(以下「引用発明」という。なお、括弧内は認定の根拠とした段落番号などを参考までに示す。以下同じ。) 「液晶表示パネル(10)、液晶表示パネル(10)の上部に形成された第1偏光板(20)、および液晶表示パネル(10)の下部に形成された第2偏光板(30a)を含み、第1偏光板(20)は、第1偏光子(21)、第1偏光子(21)の上部に形成された第1光学フィルム(22)、および第1偏光子(21)の下部に形成された第2光学フィルム(23)を含み、第2偏光板(30a)は、第2偏光子(31)、第2偏光子(31)の上部に形成された第3光学フィルム(32)、および第2偏光子(31)の下部に形成された第4光学フィルム(33)を含んでおり、([0032]) 第4光学フィルム(33)は、TD熱収縮率がMD熱収縮率より大きく、第4光学フィルム(33)のTD(33a)は、第2偏光子(31)の吸収軸(31a)を0°としたとき85~95°方向になっており、([0032]) 液晶表示装置において、画面視認のために第1偏光子の吸収軸と第2偏光子の吸収軸は互いに直交し、偏光子は延伸方向が吸収軸となるので、第1偏光子と第2偏光子は熱に露出すると熱収縮が起こり、反りが発生する可能性があり、([0027]) 偏光子の一面に光学フィルムが形成され、光学フィルムのTD熱収縮率をMD熱収縮率より大きくし、光学フィルムのTDを偏光子のMDすなわち吸収軸を0°としたとき85~95°方向となるようにすることで、液晶表示パネルを基準に第1偏光板と第2偏光板の反りとを相殺して液晶表示パネルの反りを防止することができるものであり、([0028]) 第4光学フィルムは透明な光学フィルムであり、トリアセチルセルロースなどを含むセルロース系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル系、環状ポリオレフィン系 、ポリカーボネート系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリアリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系のうち少なくとも1種の樹脂からなるフィルムが可能であり、([0041]) 第1光学フィルム、第2光学フィルム、第3光学フィルムはそれぞれ透明な光学フィルムであり、トリアセチルセルロースなどを含むセルロース系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル系、環状ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリアリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系のうちの1つ以上の樹脂からなるフィルムであってもよく、([0054]) 第1光学フィルム(22)、第2光学フィルム(23)、第3光学フィルム(32)は第4光学フィルム(33)と同一物性を有してもよく、同一物性を有していなくてもよく、([0052]) 第1光学フィルム、第2光学フィルム、第3光学フィルムは、無延伸または延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムの場合、延伸方向によって熱収縮が起こり得るが、MD収縮率とTD熱収縮率を制御することによりパネルの反り現象を抑える効果があり、([0053]) 第4光学フィルムは、TD熱収縮率>MD熱収縮率とするためにTD延伸フィルムであり、([0036]) TDのみ延伸されたフィルムは、無延伸フィルムを延伸比1~7、例えば2~7、延伸温度は50~200℃でTD延伸したフィルムであり、([0037]) 偏光子の他の一面には、上述した光学フィルムと同一物性を有する光学機能性フィルム、上述した光学フィルムと同一物性を有しない光学機能性フィルム、粘着層、コーティング層などが形成されてもよく、([0029]) コーティング層は、偏光子に対する良好な密着性、透明性、機械的強度、熱安定性、防湿性、耐久性を高めることができる、([0067]) 液晶表示装置用モジュール。([0031])」 (3) 対比 ア 本件補正発明の「第1面および該第1面と反対方向の第2面を有する液晶セルと;前記第1面に設けられた第1偏光板と;前記第2面に設けられた第2偏光板と;を含み」との特定事項について (ア) 引用発明の「液晶表示パネル(10)」は、本件補正発明の「液晶セル」に相当する。 (イ) 引用発明の「第1偏光板(20)」は、本件補正発明の「第1偏光板」に相当する。さらに、引用発明の「第1偏光板(20)」が形成される「液晶表示パネル(10)の上部」の面は、本件補正発明の「第1面」に相当する。 (ウ) 引用発明の「第2偏光板(30a)」は、本件補正発明の「第2偏光板」に相当する。さらに、引用発明の「第2偏光板(30a)」が形成される「液晶表示パネル(10)の下部」の面は、本件補正発明の「第2面」に相当する。また、「液晶表示パネル(10)」において、引用発明の「下部」の面は、本件補正発明の「第1面」に相当する「上部」の面と「反対方向」の面であるといえる。 (エ) 上記(ア)~(ウ)によれば、引用発明は、上記特定事項を満たす。 イ 本件補正発明の「前記第1偏光板および前記第2偏光板は、それぞれ、偏光子層と、該偏光子層に結合された低透湿基材層と、低透湿基材層の反対面に該偏光子層に結合された保護層とを含み」との特定事項について (ア) 引用発明の「第1偏光子(21)」及び「第2偏光子(31)」は、本件補正発明の「前記第1偏光板および前記第2偏光板」にそれぞれ含まれる「偏光子層」に相当する。 (イ) 引用発明の「第2偏光板(30a)」に含まれる「第4光学フィルム(33)」は、本件補正発明の「該偏光子層に結合された低透湿基材層」とは、「偏光子層」の一方の面に形成された層(以下「一方層」という。)であることで一致し、同じく「第3光学フィルム(32)」は、本件補正発明の「低透湿基材層の反対面に該偏光子層に結合された保護層」とは、「反対面に該偏光子層に結合された」層(以下「他方層」という。)であることで一致する。 (ウ) 引用発明の「第1偏光板(20)」に含まれる「第1光学フィルム(22)」及び「第2光学フィルム(23)」のいずれか一方は、本件補正発明の「該偏光子層に結合された低透湿基材層」とは、一方層であることで一致し、いずれか他方は、本件補正発明の「低透湿基材層の反対面に該偏光子層に結合された保護層」とは、他方層であることで一致する。 (エ) 上記(ア)~(ウ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1偏光板および前記第2偏光板は、それぞれ、偏光子層と、該偏光子層に結合された」一方層と、一方層の「反対面に該偏光子層に結合された」他方層「とを含」む点で一致するが、引用発明では、一方層及び他方層が、それぞれ、本件補正発明の「低透湿基材層」及び「保護層」といえるのか不明である。 ウ 本件補正発明の「前記第1偏光板の吸収軸方向は、前記第2偏光板の透過軸方向と同一であり、前記第1偏光板の透過軸方向は、前記第2偏光板の吸収軸方向と同一であり」との特定事項について 引用発明は「画面視認のために第1偏光子の吸収軸と第2偏光子の吸収軸は互いに直交」しているところ、一般に偏光子において吸収軸と透過軸は直交していることを踏まえると、引用発明は「第1偏光子(21)の吸収軸(21a)と」「第2偏光子(31)の」透過軸とが同じ方向であり、かつ、「第1偏光子(21)の」透過軸と「第2偏光子(31)の吸収軸(31a)」とが同じ方向であるといえる。また、偏光子の吸収軸等の方向が、当該偏光子を含む偏光板の吸収軸等の方向となることは自明である。 よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たす。 エ 本件補正発明の「下記一般式1を満たす液晶パネル」との特定事項について (ア) 引用発明の「液晶表示装置用モジュール」は、本件補正発明の「液晶パネル」に相当する。 (イ) 引用発明は、本件補正発明の「一般式1」を満たすか不明である。 オ 本件補正発明の「前記低透湿基材層は、ポリエステルから形成され、Tg~Tg+30℃で乾燥されて、80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力が、幅5.3mmにおいて3N~10Nである」との特定事項について 引用発明は、上記特定事項を満たしているか不明である。 (4) 一致点及び相違点の認定 上記(3)によれば、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「第1面および該第1面と反対方向の第2面を有する液晶セルと;前記第1面に設けられた第1偏光板と;前記第2面に設けられた第2偏光板と;を含み、 前記第1偏光板および前記第2偏光板は、それぞれ、偏光子層と、該偏光子層に結合された一方層と、一方層の反対面に該偏光子層に結合された他方層とを含み、 前記第1偏光板の吸収軸方向は、前記第2偏光板の透過軸方向と同一であり、前記第1偏光板の透過軸方向は、前記第2偏光板の吸収軸方向と同一である、 液晶パネル。」 <相違点1> 「液晶パネル」が、本件補正発明は、一般式1を満たし、かつ、「前記αMDおよび前記αTDが、それぞれ、0.8~1.2である」のに対して、引用発明は、そうなっているのかが不明である点。 <相違点2> 「一方層」が、本件補正発明は、「低透湿基材層」であって、「ポリエステルから形成され、Tg~Tg+30℃で乾燥されて、80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力が、幅5.3mmにおいて3N~10Nである」のに対して、引用発明は、「透明な光学フィルムとして、トリアセチルセルロースなどを含むセルロース系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル系、環式ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリアリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニール系、ポリ塩化ビニリデン系中の一つ以上の樹脂になったフィルム」であることができる点。 <相違点3> 「他方層」が、本件補正発明は、「保護層」であるのに対して、引用発明は、光学フィルムである点。 (5) 相違点1及び2の判断 事案に鑑み、相違点1及び2をまとめて検討する。 ア 相違点2のうち、一方層が「低透湿基材層」であって「ポリエステルから形成され」るという構成について 引用発明において、一方層に該当する構成は、(i)第2偏光板(30a)の「第4光学フィルム(33)」と(ii)第1偏光板(20)の「第1光学フィルム(22)」又は「第2光学フィルム(23)」のいずれか一方の光学フィルムであるところ、これらの光学フィルムの材料は、「ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル系」であってよいとされており、しかも、光学フィルムの材料としてポリエチレンテレフタレートなどの低透湿性材料を用いることは例示するまでもなく技術常識である。 そうすると、引用発明の(一方層に該当する構成である)(i)第2偏光板(30a)の「第4光学フィルム(33)」と(ii)第1偏光板(20)の「第1光学フィルム(22)」又は「第2光学フィルム(23)」のいずれか一方の光学フィルムについて、ポリエチレンテレフタレートなどの低透湿性材料により構成することは当業者が適宜なし得たことであり、そのようにすることにより、当業者は、相違点2に係る本件補正発明の構成のうち、一方層が「低透湿基材層」であって「ポリエステルから形成され」るとの構成に至る。 イ 相違点1のうち、(i)αMD及びαTDが、それぞれ、0.8~1.2であるという構成(以下「本件構成」という。)と(ii)「低透湿基材層」の「80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力が、幅5.3mmにおいて3N~10Nである」という構成について (ア) 検討に先立ち、本件補正発明が備える本件構成の技術的意義及びその技術的意義を奏するためのメカニズムについて検討する。 a 本件補正後の本願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件補正明細書等」という。)の記載(【0053】・【0069】)によれば、本件構成の技術的意義は、第1偏光板と第2偏光板の特定層の曲げモーメントを調節することにより、液晶パネルの反りバランスを調節することにあると認められる。 b 次に、本件構成により液晶パネルの反りバランスを調整できるメカニズムをみると、第1偏光板の吸収軸方向(以下「A方向」という。)における、(液晶セルの第1面に設けられた)第1偏光板の各層に作用する曲げモーメントと(液晶セルの第1面の反対方向の第2面に設けられた)第2偏光板の各層に作用する曲げモーメントとを可能な範囲で一致させることにより、液晶パネル10のA方向の反りを抑制するとともに、第1偏光板の透過軸方向(以下「B方向」といい、一般に、A方向とは垂直である。)における、(液晶セルの第1面に設けられた)第1偏光板の各層に作用する曲げモーメントと(液晶セルの第1面の反対方向の第2面に設けられた)第2偏光板の各層に作用する曲げモーメントとを可能な範囲で一致させることにより、液晶パネルのB方向の反りを抑制することにあると認められる。 すなわち、αMDは、「(前記第1偏光板の各層に作用する吸収軸方向の曲げモーメントの合計)/(前記第2偏光板の各層に作用する透過軸方向の曲げモーメントの合計)」であり、「前記第1偏光板の吸収軸方向は、前記第2偏光板の透過軸方向と同一であ」るとされているから、αMDは、A方向における、第1偏光板の各層に作用する曲げモーメントと第2偏光板の各層に作用する曲げモーメントとの比ということになる。しかるに、本件構成におけるαMDは「0.8~1.2」であるが、「0.85~1.15」であることが好ましく、「1」であることが好ましい(【0054】)とされていることに加え、第1偏光板は液晶セルの第1面に設けられている一方、第2偏光板は液晶セルの第1面と反対方向の第2面に設けられていることに照らせば、A方向における(液晶セルの第1面に設けられた)第1偏光板の各層に作用する曲げモーメントと(液晶セルの第1面の反対方向の第2面に設けられた)第2偏光板の各層に作用する曲げモーメントとを可能な範囲で一致させれば、液晶セルの上下にそれぞれに作用する曲げモーメントが釣り合うことを通じて、A方向での液晶パネルの反りを抑制できることが当業者には理解できる。 また、本件構成におけるαTDは、同様の理由で、B方向(上記のとおり、一般にA方向とは垂直である。)での液晶パネルの反りを抑制できることが当業者には理解できる。 c 以上のとおり、本件構成の技術的意義は、第1偏光板と第2偏光板の特定層の曲げモーメントを調節することにより、液晶パネルの反りバランスを調節することにあり、そのメカニズムは、偏光板の各層に作用する曲げモーメントにつき、液晶パネルの上下それぞれに作用する当該曲げモーメントを、A方向において可能な範囲で一致させることによりA方向での液晶パネルの反りを抑制するとともに、A方向と垂直なB方向においても可能な範囲で一致させることによりB方向での液晶パネルの反りを抑制することにあると認められる。 そして、本件補正発明にも特定されるように、曲げモーメントは、距離と収縮力に依存するところ、収縮力は、収縮率に基づいて決定され得るものであって(【0068】)、この収縮がいわゆる熱収縮であることは明らかである。 (イ) 本件発明の本件構成は、上記(ア)で説示した技術的意義及びメカニズムを有するところ、以下のとおり、引用発明も同様の技術的意義及びメカニズムを有しており、そのため、引用発明において液晶表示パネル(10)の反りを防止することをより完全にするようにすれば、本件構成に至るといえる。 a すなわち、引用発明は、「液晶表示装置において、画面視認のために第1偏光子の吸収軸と第2偏光子の吸収軸は互いに直交し、偏光子は延伸方向が吸収軸となるので、第1偏光子と第2偏光子は熱に露出すると熱収縮が起こり、反りが発生する可能性があり、偏光子の一面に光学フィルムが形成され、光学フィルムのTD熱収縮率をMD熱収縮率より大きくし、光学フィルムのTDを偏光子のMDすなわち吸収軸を0°としたとき85~95°方向となるようにすることで、液晶表示パネルを基準に第1偏光板と第2偏光板の反りとを相殺して液晶表示パネルの反りを防止することができるものであ」る。 これを引用文献の図2に係る例でみると、当該例では、第1偏光子(21)が、(延伸方向である)吸収軸(21a)の方向(当審注:A方向とみても一般性を失わない。)に熱的に収縮するので、これによる反りを相殺する必要があるところ、第2偏光子(31)の吸収軸(31a)の方向(当審注:B方向とみても一般性を失わない。)は、A方向と直交しているから、相殺に貢献できない一方、第4光学フィルム(33)のTD方向(A方向)の熱収縮率は、MD方向(B方向)の熱収縮率よりも大きいから、相殺に貢献できる。そして、当該例には、第3光学フィルム(32)が記載されていないが、引用発明は、「第3光学フィルム(32)」が「延伸フィルムであ」る場合、「延伸方向によって熱収縮が起こり得るが、MD収縮率とTD熱収縮率を制御することによりパネルの反り現象を抑える効果があ」るから、第3光学フィルムが存在すれば、このフィルムのTD方向及びMD方向における熱収縮率も、上記の相殺に影響するといえる。 このように、図2に係る例では、液晶表示パネル(10)の上にある第1偏光子(21)のA方向における熱的な収縮に起因する第1偏光板(21)のA方向の反りと、同パネル(10)の下にある第4光学フィルム(33)(及び第3光学フィルム(32)が存在すれば、その第3光学フィルム(32))のA方向における熱的な収縮に起因する第2偏光板のA方向の反りとを相殺させることによって、A方向での液晶表示パネルの反りを防止していることが当業者にとって理解できる。 b ところで、上記の図2に係る例では、液晶表示パネル(10)の反りのうち、B方向の反りについての明記がないが、第2偏光板(30a)がB方向に反ること、つまり、第2偏光板(30a)に含まれる第2偏光子(31)(吸収軸(31a)の方向がB方向である。)と第4光学フィルム(33)(及び第3光学フィルム(32)が存在すれば、その第3光学フィルム(32))がいずれもB方向において熱的に収縮し、これに起因して第2偏光板(30a)がB方向に反ることが明らかである。 そして、引用発明は、「第1光学フィルム(22)、第2光学フィルム(23)、第3光学フィルム(32)」が「延伸フィルムであ」る場合、「延伸方向によって熱収縮が起こり得るが、MD収縮率とTD熱収縮率を制御することにより、パネルの反り現象を抑える効果があ」るものであり、上記のとおり、「偏光子の一面に光学フィルムが形成され、光学フィルムのTD熱収縮率をMD熱収縮率より大きくし」、「液晶表示パネルを基準に第1偏光板と第2偏光板の反りとを相殺して液晶表示パネルの反りを防止することができる」ものである。そうすると、引用発明は、液晶表示パネルのB方向の反りの防止につき、第1偏光板(20)に含まれる第1光学フィルム(22)又は第2光学フィルム(23)の少なくともいずれかにつき、TD熱収縮率(B方向ということになる。)をMD熱収縮率(A方向ということになる。)より大きくすることで対応するものといえる。 このようにして、図2に係る例では、第2偏光板(30a)がB方向に反ることに起因する液晶表示パネル(10)のB方向の反りを防止するために、第1偏光板(20)に含まれる第1光学フィルム(22)又は第2光学フィルム(23)の少なくとも一方のTD熱収縮率(B方向の熱収縮率)をMD熱収縮率(A方向の熱収縮率)より大きくして、液晶表示パネルを基準に第1偏光板(20)と第2偏光板(30a)のB方向の反りとを相殺して液晶表示パネル(10)のB方向の反りを防止できることが、当業者にとって理解できる。 そして、上記のように、第1光学フィルム(22)又は第2光学フィルム(23)の少なくとも一方の熱収縮率を方向的に制御すると、第1偏光板(20)のA方向の反りにも影響し得ることが明らかであるから、第4光学フィルム(33)(及び第3光学フィルム(32)が存在すれば、その第3光学フィルム(32))のA方向の熱収縮率は、この影響をも考慮して定められることもまた明らかである。 c 上記a及びbのとおり、引用発明は、第1偏光板(20)に含まれる第1光学フィルム(22)、第1偏光子(21)及び第2光学フィルム(23)のA方向における熱収縮に起因した第1偏光板(20)のA方向の反りを、第2偏光板(30a)に含まれる第3光学フィルム(32)及び第4光学フィルム(33)のA方向における熱収縮に起因した第2偏光板(30a)のA方向の反りによって相殺させることによって、A方向での液晶表示パネル(10)の反りを防止することができ、同時に、第2偏光板(30a)に含まれる第3光学フィルム(32)、第2偏光子(31)及び第4光学フィルム(33)のB方向における熱収縮に起因した第2偏光板(30a)のB方向の反りを、第1偏光板(20)に含まれる第1光学フィルム(22)又は第2光学フィルム(23)の少なくとも一方のB方向における熱収縮に起因した第1偏光板(20)のB方向の反りにより相殺させることによって、B方向での液晶表示パネル(10)の反りを防止することができるものであることが、当業者には理解できる。 以上によれば、引用発明の技術的意義及びメカニズムは、液晶表示パネル(10)の上面にある第1偏光板(20)のA方向の反りと、同下面にある第2偏光板(30a)のA方向の反りとを相殺させることによって、A方向での液晶表示パネル(10)の反りを防止するとともに、A方向と垂直なB方向においても、第1偏光板(20)の反りと第2偏光板(30a)の反りとを相殺させることによって、B方向での液晶表示パネル(10)の反りを防止することにあるといえる。そして、引用発明では、上記の相殺を行うためには、第1光学フィルム~第4光学フィルムのTD熱収縮率及びMD熱収縮率を制御することになる。 d そこで、本件補正発明の本件構成の技術的意義及びメカニズムと引用発明の技術的意義及びメカニズムとの関係をみると、両者は、液晶表示パネル(10)のA方向及びB方向の反りを抑制するという目的で一致しているといえる上、メカニズムについても、液晶表示パネル(10)の上下にある偏光板のA方向及びB方向の反りに係る物理量(本件補正発明は曲げモーメント、引用発明は反り)に着目することで共通し、当該物理量が熱収縮率に係るものであることで共通し、さらに、これらの物理量を、A方向及びB方向双方において、一致させるという方向性でも共通するといえる。 そして、引用発明には、本件補正発明で特定された「曲げモーメント」という概念は登場せず、「αMD」及び「αTD」という概念も登場しないけれども、引用発明において第1光学フィルム~第4光学フィルムのTD熱収縮率及びMD熱収縮率を制御することは、物理的にみれば、曲げモーメントを制御していることと同じである。 このように、本件補正発明と引用発明とは、目的が一致するとともに、メカニズムが相当程度共通しており、しかも、引用発明の熱収縮率の制御は、本件補正発明の曲げモーメントの制御に直結することになることに照らせば、両者が依拠する物理的原理も一致すると解するのが相当である。そうすると、引用発明において、熱収縮率を調整して、液晶表示パネル(10)のA方向及びB方向の反りを防止することをより完全にするという通常の方向性を採用すれば、本件構成に至ることになるといえる。 (ウ) そして、引用発明において液晶表示パネル(10)のA方向及びB方向の反りを防止することをより完全にするためには、第1光学フィルム~第4光学フィルムのTD熱収縮率及びMD熱収縮率を制御することになるところ、上記(ア)のとおり、引用発明の第2偏光板(30a)の「第4光学フィルム(33)」と第1偏光板(20)の「第1光学フィルム(22)」又は「第2光学フィルム(23)」のいずれか一方の光学フィルムについて、ポリエチレンテレフタレートなどの低透湿性材料により構成することは当業者が適宜なし得たことである。しかるに、その際に、当該低透湿性材料の熱収縮率を調整し、その結果、「80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力」が「幅5.3mmにおいて3N~10N」となるようにすることは、本件補正発明と同様のポリエチレンテレフタレートが用いられるとともに、引用発明が本件補正発明と同様の目的の達成を目指すものである以上、格別のことではないといえる。 (エ) 以上、要するに、引用発明から出発した当業者が、液晶表示パネル(10)の反りをより完全に防止することは通常の方向性であるとともに、引用発明の第2偏光板(30a)の「第4光学フィルム(33)」と第1偏光板(20)の「第1光学フィルム(22)」又は「第2光学フィルム(23)」のいずれか一方の光学フィルムについて、ポリエチレンテレフタレートなどの低透湿性材料により構成することは当業者が適宜なし得たことを踏まえれば、上記当業者が、引用発明において、相違点1のうち、αMD及びαTDが、それぞれ、0.8~1.2であるという構成(本件構成)及び「低透湿基材層」の「80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力が、幅5.3mmにおいて3N~10Nである」という構成に至ることは、容易であるというべきである。 ウ 相違点1のうち、一般式1を満たすという構成について 本件構成においては、αMD及びαTDが、それぞれ、1であることが好ましいところ、この場合、液晶表示パネル(10)のA方向及びB方向での反りが最も抑制されるといえる。そして、そのときに一般式1を満たすことになるのは明らかである。 そうすると、引用発明において、上記イ(イ)のとおり、引用発明から出発した当業者が、液晶表示パネル(10)の反りをより完全に防止するようにすれば、相違点1のうち一般式を満たすという構成に至るといえる。 エ 相違点1のうち、「低透湿基材層」が「Tg~Tg+30℃で乾燥されて」いるとの構成(以下「低透湿基材層乾燥構成」という。)について 上記ア~ウのとおり、引用発明において、低透湿基材層乾燥構成以外の相違点1及び2に係る本件補正発明の構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たものであるところ、そのようにして至った構成(以下「容易想到構成」という。)において、「低透湿基材層」が「Tg~Tg+30℃で乾燥されて」いるものであることは、以下のとおり、当然に満たされていることにすぎないか、仮にそうでないとしても、当業者が適宜なし得たことにすぎない。 (ア)容易想到構成において、(i)第2偏光板(30a)の「第4光学フィルム(33)」と(ii)第1偏光板(20)の「第1光学フィルム(22)」又は「第2光学フィルム(23)」のいずれか一方の光学フィルム(本件補正発明の「低透湿基材層」に相当することになる。)は、「TDのみ延伸されたフィルム」であって、TD熱収縮率及びMD熱収縮率を制御する際に、「延伸温度は50ないし300℃でTD延伸」されてよいものである。 しかるに、まず、容易想到構成においては、低透湿基材層乾燥構成以外の相違点1及び2に係る本件補正発明の構成を満たすところ、低透湿基材層乾燥構成は、「TD方向収縮力(透過軸方向の収縮力)を調整する」(本件補正明細書等の【0036】参照。)ためのものであって、結局、「80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力」が「幅5.3mmにおいて3N~10Nである」ことを得るための構成にすぎないと解されるから、容易想到構成は、低透湿基材層乾燥構成も当然に満たしているといえる。よって、低透湿基材層乾燥構成に係る相違点は実質的でない。 (イ)仮に、相違点が実質的であるとしても、容易想到構成において低透湿基材層乾燥構成を得ることは当業者が適宜なし得たことである。 すなわち、容易想到構成において、上記光学フィルムの材料は「ポリエチレンテレフタレート」であるところ、当該材料のガラス転移温度(Tg)は一般に60~80℃程度であることから、容易想到構成の「延伸温度」は、本件補正発明の「Tg~Tg+30℃」であってよく、その場合、本件補正発明の「乾燥」がなされたといえる。そして、容易想到構成は、「80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力」が「幅5.3mmにおいて3N~10Nである」ものである。 そうすると、容易想到構成における延伸温度として、ポリエチレンテレフタレートのTg~Tg+30℃を選択することにより、結果として、低透湿基材層乾燥構成を得ることは、当業者が適宜なし得たことである。 オ 小括 したがって、相違点1及び2に係る本件補正発明の構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (6) 相違点3の判断 引用発明から出発した当業者が相違点3に係る本件補正発明の構成に至るためには、(i)引用発明の他方層に当たる光学フィルム、つまり、第1偏光板(20)の「第1光学フィルム(22)」及び「第2光学フィルム(23)」のいずれか他方、並びに、第2偏光板(30a)の「第3光学フィルム(32)」を、「コーティング層」といった保護層に置換すれば足りると解される。その際、当業者は、この置換を踏まえて、引用発明の一方層に当たる光学フィルムのTD熱収縮率及びMD熱収縮熱を制御して本件構成を満たすようにすることを当然行うのであり、このことは、引用発明が、上記(5)イ(イ)cで認定したとおり、第1偏光板(20)の反りと第2偏光板(30a)の反りとをA方向にもB方向にも相殺させるものであって、そのためにTD熱収縮率及びMD熱収縮率を制御する光学フィルムが、第1光学フィルム~第4光学フィルムの全てであることからみても明らかである。 そこで、当業者が上記置換を行うかについて検討すると、引用発明は、「偏光子の一面に光学フィルム」が形成され、「他の一面には、」「上述した光学フィルムと同一物性を有しない」「コーティング層」などが形成されることもできるものである。そうすると、引用発明において、他方層に当たる第1偏光板(20)の「第1光学フィルム(22)」及び「第2光学フィルム(23)」のいずれか他方、並びに、第2偏光板(30a)の「第3光学フィルム(32)」を、「コーティング層」といった保護層に置換することは、当業者が適宜なし得たことである。 したがって、相違点3に係る本件補正発明の構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (7) 本件補正発明の効果について 相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明の作用効果は、引用発明及び引用文献に記載された技術的事項に基づいて、本件補正発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができたものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (8) 請求人の主張について 請求人は、本件補正により追加された「前記低透湿基材層は、ポリエステルから形成され、Tg~Tg+30℃で乾燥されて、80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力が、幅5.3mmにおいて3N~10Nである」構成について、引用文献1は、光学フィルムの乾燥について、何ら開示も示唆もない旨主張するが、上記(5)で説示したとおりである。 (9) まとめ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和4年1月7日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年3月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含んでいる。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から「ポリエステルから形成され、Tg~Tg+30℃で乾燥されて、80℃で2時間維持したときの透過軸方向の収縮力が、幅5.3mmにおいて3N~10Nである。」に係る限定事項を省いた発明である。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-000301

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