特許異議申立
2021-700037
紙葉類処理装置
- 審判番号
- 2021-700037
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-148836
- 登録番号
- 6725354
- 請求日
- 2021年01月14日
- 審決日
- 2021年10月27日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】グローリー株式会社
- 【権利者代理人】中辻 史郎
- 【権利者代理人】諏訪 淳一
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 藤田 年彦
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 佐々木 創太郎
- 分類
- P1651.16 -YAA(B65H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6725354号発明「紙葉類処理装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6725354号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり〔1-21〕について訂正することを認める。
特許第6725354号の請求項1ないし21に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6725354号の請求項1乃至21に係る特許についての出願は,平成28年7月28日に出願され,令和2年6月29日にその特許権の設定登録がされ,同年7月15日に特許掲載公報が発行された。
その後,その特許について,令和3年1月14日に特許異議申立人赤松智信(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ,当審は,令和3年4月6日付けで取消理由を通知した。特許権者は,その指定期間内である同年6月11日に意見書の提出及び訂正の請求を行い,その訂正の請求に対して,特許異議申立人は,同年8月26日に意見書を提出し,同年9月18日に上申書を提出した。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は,以下の(1)乃至(8)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記拡張モジュールは,前記第1搬送部によって前記基本モジュールから排出された紙葉類を前記拡張モジュール内へ取り込んで搬送する第2搬送部と,集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,前記第1方向と異なる第2方向に沿って配置された複数の第2集積部とを含む」と記載されていたのを,「前記拡張モジュールは,前記第1搬送部によって前記基本モジュールから排出された紙葉類を前記拡張モジュール内へ取り込んで搬送する第2搬送部と,集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,前記第1方向と異なる第2方向に沿って配置された複数の第2集積部と,前記第2搬送部が内部に収められている前記拡張モジュールの筐体に設けられ,前記筐体の一部を開閉可能に支持する支持部とを含む」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2乃至21も同様に訂正する。)。
また,特許請求の範囲の請求項1に「前記制御部は,前記第1集積部と前記第2集積部との少なくとも一方に紙葉類を搬送する制御を行う紙葉類処理装置」と記載されていたのを,「前記制御部は,前記第1集積部と前記第2集積部との少なくとも一方に紙葉類を搬送する制御を行い,前記拡張モジュールの筐体の一部が前記支持部周りに回動して開くことにより,前記第2搬送部が前記拡張モジュールから露出する紙葉類処理装置」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2乃至21も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「前記第1集積部と前記第2集積部が略L字型に配置されている」と記載されていたのを,「前記基本モジュールは表示部をさらに備え,前記表示部の下方で水平方向に配置された前記複数の第1集積部と,前記表示部の側方で垂直方向に配置された前記複数の第2集積部とが,略L字型に配置されている」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5乃至21も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「前記基本モジュールは,前記第1集積部の上方で,両外側の第1集積部の間の略中央の位置に重なるように配置された表示部をさらに有する」と記載されていたのを,「前記表示部は,前記第1集積部の上方で,両外側の第1集積部の間の略中央の位置に重なるように配置されている」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6乃至21も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「前記第2拡張モジュールは,前記第1拡張モジュールにより,前記基本モジュールから取り込まれて,前記基本モジュールと連結された面と異なる面から排出された紙葉類を,前記第2拡張モジュール内に取り込んで搬送する第3搬送部と,集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,前記第2方向に沿って配置された複数の第3集積部とを含み」と記載されていたのを,「前記第2拡張モジュールは,前記第1拡張モジュールにより,前記基本モジュールから取り込まれて,前記基本モジュールと連結された面と異なる面から排出された紙葉類を,前記第2拡張モジュール内に取り込んで搬送する第3搬送部と,集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,前記第2方向に沿って配置された複数の第3集積部と,前記第3搬送部が内部に収められている前記第2拡張モジュールの筐体に設けられ,前記筐体の一部を開閉可能に支持する支持部とを含み」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項9乃至21も同様に訂正する。)。
また,特許請求の範囲の請求項7に「前記制御部は,前記第1集積部,前記第2集積部,前記第3集積部の少なくともいずれか一つに紙葉類を搬送する制御を行う請求項1~6のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置」と記載されていたのを,「前記制御部は,前記第1集積部,前記第2集積部,前記第3集積部の少なくともいずれか一つに紙葉類を搬送する制御を行い,前記第2拡張モジュールの筐体の一部が前記支持部周りに回動して開くことにより,前記第3搬送部が前記第2拡張モジュールから露出する請求項1~6のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項9乃至21も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項15に「1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数より少ない」と記載されていたのを,「紙葉類を集積する各第2集積部の集積空間が,紙葉類を集積する各第1集積部の集積空間より小さく形成されることにより,1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数より少ない」に訂正する(請求項15の記載を引用する請求項16乃至21も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項19に「前記拡張モジュールに集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数と等しく」と記載されていたのを,「前記拡張モジュールが有する複数の第2集積部それぞれに集積可能な紙葉類の最大集積枚数の合計枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数と等しく」に訂正する(請求項19の記載を引用する請求項20及び21も同様に訂正する。)。
また,特許請求の範囲の請求項19に「前記制御部は,前記拡張モジュールを1つの第1集積部とみなして紙葉類の搬送を制御する」と記載されていたのを,「前記制御部は,前記拡張モジュールを1つの第1集積部とみなし,n個(nは2以上の整数)の第1集積部を有する前記紙葉類処理装置が(n+1)個の第1集積部を有するものとして紙葉類の搬送を制御する」に訂正する(請求項19の記載を引用する請求項20及び21も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項20に「前記基本モジュールは,前記垂直搬送部に対して前記拡張モジュールが連結される側と反対側に,リジェクト紙幣を集積するリジェクト部をさらに有する請求項1~19のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置」と記載されていたのを,「前記基本モジュールは,前記垂直搬送部に対して前記拡張モジュールが連結される側と反対側に,リジェクト紙幣を集積するリジェクト部をさらに有し,前記拡張モジュールの第2搬送部は,紙葉類を水平方向に搬送する水平搬送部と,紙葉類を垂直方向に搬送する垂直搬送部とを有し,前記拡張モジュールの筐体に,筐体正面を開閉可能に支持する支持部と,筐体側面を開閉可能に支持する支持部が設けられ,前記筐体上面が上方に回動して開くことにより前記水平搬送部が前記拡張ジュールから露出し,前記筐体前面が前面側に回動して開くことにより前記垂直搬送部が前記拡張モジュールから露出する請求項1~19のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置」に訂正する(請求項20の記載を引用する請求項21も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の【0058】に記載された「第2集積部160の4つの集積部60a~60d」を,「第2集積部160の4つの集積部160a~160d」に訂正する。
2 訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否,新規事項の有無,一群の請求項,及び明細書又は図面の訂正と関係する請求項について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明は,「紙葉類処理装置」の「拡張モジュール」が「第2搬送部及び複数の第2集積部を含む」ことを特定している。
これに対して,訂正後の請求項1に係る発明は,「拡張モジュール」が「第2搬送部及び複数の第2集積部」に加えてさらに,「前記第2搬送部が内部に収められている前記拡張モジュールの筐体に設けられ,前記筐体の一部を開閉可能に支持する支持部」を含むとの記載によって,「拡張モジュール」の構成をさらに限定するものである。
さらに,「前記拡張モジュールの筐体の一部が前記支持部周りに回動して開くことにより,前記第2搬送部が前記拡張モジュールから露出する」との記載によって,「拡張モジュール」を構成する「筐体の一部」の機能を限定するものである。
そうすると,訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に,請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項2乃至21では,訂正後の請求項1の記載を引用することにより,訂正後の請求項2乃至21に係る発明において,「拡張モジュール」の構成及び機能を上記のとおり限定するものであるから,訂正後の請求項2乃至21に係る発明における訂正事項1による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否か
上記アのとおり,訂正事項1は,訂正前の請求項1に記載されていた「拡張モジュール」の構成及び機能を,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
同様に,訂正事項1は,訂正前の請求項2乃至21が引用する請求項1に記載されていた「拡張モジュール」を,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
そうすると,訂正事項1は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項1において,「拡張モジュール」が「前記第2搬送部が内部に収められている前記拡張モジュールの筐体に設けられ,前記筐体の一部を開閉可能に支持する支持部」を備えることは,明細書の【0043】に「拡張モジュール12の上面12aは,上方に開くことができる。拡張モジュール12の前面は,第2集積部160が設けられた左側と,第2表示灯170及び枚数表示部180が設けられた右側とに分かれ,右前面12bを手前側に開くことができる。」,【0074】に「上面12aの左端部分は,拡張モジュール12の左側面内側上部に前後方向に設けられた支持軸によって回動可能に支持されている。上面12aは,この支持軸回りに回動して上方に開く。」,【0077】に「拡張モジュール12の右前面12bが,裏面左側の支持軸回りに回動して装置前面側に開く。」,との記載がなされていること,及び,図面の図6及び図7に基づいて導き出される事項である。
また,訂正事項1において,「拡張モジュール」の「前記拡張モジュールの筐体の一部が前記支持部周りに回動して開くことにより,前記第2搬送部が前記拡張モジュールから露出する」との機能は,明細書の【0043】に「拡張モジュール12の上面12a及び右前面12bを開くことにより,紙幣処理装置1の内部にある搬送路を開放することができる。」,【0073】に「第2搬送部150の搬送路は,紙幣を水平方向に搬送する水平搬送路150aと,紙幣を上下方向に搬送する垂直搬送路150bとを含む。」,【0074】に「図6(b)に示すように水平搬送路150aを開放して,詰まった紙幣を取り除くことができる。」,【0077】に「続いて,図7(b)に矢印で示したように,拡張モジュール12内にある右側ユニット152を,背面側の支持軸回りに回動させて,前面側を右側へ開けば,垂直搬送路150bを開放することができる。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)については,訂正事項1に係る本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項2乃至21に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正請求による訂正後の請求項1及び請求項1を引用する請求項2乃至21に係る発明については課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項4に係る発明は,「紙葉類処理装置」の「基本モジュールの第1集積部」と「拡張モジュールの第2集積部」が「第1集積部と第2集積部が略L字型に配置されている」ことを特定している。
これに対して,訂正後の請求項4に係る発明は,「基本モジュール」が「表示部」をさらに備えることを限定し,「第1集積部」が,「表示部の下方で水平方向に配置され」ていること,及び「第2集積部」が「表示部の側方で垂直方向に配置され」ていることをさらに限定するものである。
そうすると,訂正事項2は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に,請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項5乃至21では,訂正後の請求項4の記載を引用することにより,訂正後の請求項5乃至21に係る発明において,「基本モジュール」,「第1集積部」及び「第2集積部」の構成を上記のとおり限定するものであるから,訂正後の請求項5乃至21に係る発明における訂正事項1による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否か
上記アのとおり,訂正事項2は,訂正前の請求項4に記載されていた「基本モジュール」,「第1集積部」及び「第2集積部」の構成を,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
同様に,訂正事項2は,訂正前の請求項5乃至21が引用する請求項1に記載されていた「基本モジュール」,「第1集積部」及び「第2集積部」を,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
そうすると,訂正事項2は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項2において,「基本モジュール」が「表示部」をさらに備えることは,明細書の【0034】に「操作表示部20は,基本モジュール11の前面で,第1集積部60の上方に配置されている。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
また,訂正事項2において,「第1集積部」が,「表示部の下方で水平方向に配置され」ていることは,明細書の【0036】に「第1集積部60は,例えば,4つの集積部60a~60dを含んでいる。集積部60a~60dは,左右方向(水平方向)に並んで配置されている。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
さらに,訂正事項2において,「第2集積部」が「表示部の側方で垂直方向に配置され」ていることは,明細書の【0038】に「第2集積部160は,例えば,4つの集積部160a~160dを含んでいる。集積部160a~160dは,上下方向(鉛直方向)に並んで配置されている。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)については,訂正事項2に係る本件特許の請求項4及び請求項4を引用する請求項5乃至21に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正請求による訂正後の請求項4及び請求項4を引用する請求項5乃至21に係る発明については課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は,上記請求項4に係る訂正事項2の訂正に伴い,請求項4を引用する訂正後の請求項5の記載を訂正後の請求項4の記載と整合させるものである。
そうすると,訂正事項3は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
同様に,請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項6乃至21では,訂正後の請求項5の記載を引用することにより,訂正後の請求項6乃至21に係る発明において,訂正後の請求項4の記載と整合させるものであるから,訂正後の請求項6乃至21に係る発明における訂正事項3による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否か
上記アのとおり,訂正事項3は,訂正前の請求項5の記載を,訂正後の請求項4の記載と整合させるものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
そうすると,訂正事項3は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記アのとおり,訂正事項3は,訂正前の請求項5の記載を,訂正後の請求項4の記載と整合させるものであるから,訂正事項3は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項7に係る発明は,「紙葉類処理装置」の「第2拡張モジュール」が「基前記第1拡張モジュールにより,本モジュールから取り込まれて,前記基本モジュールと連結された面と異なる面から排出された紙葉類」を「取り込む」こと,及び「紙葉類」を,「取り込んで搬送する第3搬送部と,集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,前記第2方向に沿って配置された複数の第3集積部」を含むことを特定している。
これに対して,訂正後の請求項7に係る発明は,「第2拡張モジュール」には「第3搬送部」が「内部に収められている」こと,及び,「第2拡張モジュール」が「第2拡張モジュールの筐体に設けられ,前記筐体の一部を開閉可能に支持する支持部」をさらに備えることを限定するものである。
さらに,「第2拡張モジュールの筐体の一部が前記支持部周りに回動して開くことにより,前記第3搬送部が前記第2拡張モジュールから露出する」ことを限定するものである。
そうすると,訂正事項4は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に,請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項9乃至21では,訂正後の請求項7の記載を引用することにより,訂正後の請求項9乃至21に係る発明において,「第2拡張モジュール」には「第3搬送部」が「内部に収められている」こと,及び,「第2拡張モジュール」が「第2拡張モジュールの筐体に設けられ,前記筐体の一部を開閉可能に支持する支持部」をさらに備え,「第2拡張モジュールの筐体の一部が前記支持部周りに回動して開くことにより,前記第3搬送部が前記第2拡張モジュールから露出する」ことを限定するものであるから,訂正後の請求項9乃至21に係る発明における訂正事項1による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否か
上記アのとおり,訂正事項4は,訂正前の請求項7に記載されていた「第2拡張モジュール」の構成を,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
同様に,訂正事項4は,訂正前の請求項9乃至21が引用する請求項7に記載されていた「第2拡張モジュール」を,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
そうすると,訂正事項2は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項4において,「第2拡張モジュール」には「第3搬送部」が「内部に収められている」ことは,明細書の【0088】に「拡張モジュール12の第2搬送部150は,拡張モジュール12の右側面から取り込んだ紙幣を水平方向に搬送して左側面から排出する。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
また,訂正事項4において,「第2拡張モジュール」が「第2拡張モジュールの筐体に設けられ,前記筐体の一部を開閉可能に支持する支持部」をさらに備えることは,明細書の【0043】に「拡張モジュール12の上面12aは,上方に開くことができる。拡張モジュール12の前面は,第2集積部160が設けられた左側と,第2表示灯170及び枚数表示部180が設けられた右側とに分かれ,右前面12bを手前側に開くことができる。」,【0074】に「上面12aの左端部分は,拡張モジュール12の左側面内側上部に前後方向に設けられた支持軸によって回動可能に支持されている。上面12aは,この支持軸回りに回動して上方に開く。」,【0077】に「拡張モジュール12の右前面12bが,裏面左側の支持軸回りに回動して装置前面側に開く。」,との記載がなされていること,及び,図面の図6及び図7に基づいて導き出される事項である。
また,訂正事項4において,「第2拡張モジュールの筐体の一部が前記支持部周りに回動して開くことにより,前記第3搬送部が前記第2拡張モジュールから露出する」との機能は,明細書の【0043】に「拡張モジュール12の上面12a及び右前面12bを開くことにより,紙幣処理装置1の内部にある搬送路を開放することができる。」,【0073】に「第2搬送部150の搬送路は,紙幣を水平方向に搬送する水平搬送路150aと,紙幣を上下方向に搬送する垂直搬送路150bとを含む。」,【0074】に「図6(b)に示すように水平搬送路150aを開放して,詰まった紙幣を取り除くことができる。」,【0077】に「続いて,図7(b)に矢印で示したように,拡張モジュール12内にある右側ユニット152を,背面側の支持軸回りに回動させて,前面側を右側へ開けば,垂直搬送路150bを開放することができる。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)については,訂正事項4に係る本件特許の請求項7及び請求項7を引用する請求項9乃至21に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正請求による訂正後の請求項7及び請求項7を引用する請求項9乃至21に係る発明については課されない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項15に係る発明は,「1つの第1集積部」の「最大集積枚数」と「1つの第2集積部」の「最大集積枚数」について,「1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数より少ない」ことを特定している。
これに対して,訂正後の請求項15に係る発明は,上記「1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数より少ない」ことが,「紙葉類を集積する各第2集積部の集積空間が,紙葉類を集積する各第1集積部の集積空間より小さく形成されることによ」るものであることを限定するものである。
そうすると,訂正事項5は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に,請求項15の記載を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項16乃至21では,訂正後の請求項15の記載を引用することにより,訂正後の請求項16乃至21に係る発明において,上記「1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数より少ない」ことが,「紙葉類を集積する各第2集積部の集積空間が,紙葉類を集積する各第1集積部の集積空間より小さく形成されることによ」るものであることを限定するものであるから,訂正後の請求項16乃至21に係る発明における訂正事項5による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否か
上記アのとおり,訂正事項5は,訂正前の請求項15に記載されていた「1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数より少ない」ことが,「紙葉類を集積する各第2集積部の集積空間が,紙葉類を集積する各第1集積部の集積空間より小さく形成されることによ」るものであることを限定するものであって,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
同様に,訂正事項5は,訂正前の請求項16乃至21が引用する請求項15に記載されていた「1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数より少ない」ことが,「紙葉類を集積する各第2集積部の集積空間が,紙葉類を集積する各第1集積部の集積空間より小さく形成されることによ」るものであることを限定するものであって,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
そうすると,訂正事項5は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項5において,「1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数より少ない」ことが,「紙葉類を集積する各第2集積部の集積空間が,紙葉類を集積する各第1集積部の集積空間より小さく形成されることによ」るものであることは,明細書の【0057】に「第2集積部160を構成する各集積部160a~160dには,例えば紙幣を最大125枚ずつ集積することができる。1つの集積部160a~160dに集積可能な最大集積枚数125枚は,第1集積部60の1つの集積部60a~60dに集積可能な最大集積枚数500枚の約数となっている」,【0058】に「第2集積部160の4つの集積部60a~60dのそれぞれに満杯まで紙幣を集積すれば,第1集積部60の1つの集積部60a~60dと同一枚数の紙幣を集積できる。」,【0060】に「第1集積部60の羽根車61の外径は例えば100mmである。第2集積部160の羽根車161の外径は例えば70mmで,第1集積部60の羽根車61に比べて小さい。」,【0062】に「左側壁165aの壁面に紙幣面を沿わせて集積された紙幣203は,紙幣面と水平面との間の傾斜角度が,例えば45度以上となっている。すなわち,図3に示す,集積紙幣203の左側で,紙幣面と水平面との間の角度が45度以上ある。図2に示す第1集積部60に集積された紙幣の紙幣面と水平面との間の傾斜角度は45度以下で,第2集積部160の集積紙幣に比べて水平面との間で成す角度が小さくなっている。」,【0063】に「図3に示すように,第2集積部160の集積空間内に集積された紙幣203は,長辺を底面(底壁164aの上面)に接して短辺を装置前方に向け,この短辺の下端より上端を紙幣処理装置1の左外側方向とする傾斜した立位姿勢で集積される。紙幣203を立位姿勢で集積することにより,紙幣面を略水平にして集積する場合に比べて,第2集積部160の集積空間の横幅を小さくすることができる。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項5は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)については,訂正事項5に係る本件特許の請求項15及び請求項15を引用する請求項16乃至21に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正請求による訂正後の請求項15及び請求項15を引用する請求項16乃至21に係る発明については課されない。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項19に係る発明は,「拡張モジュールに集積可能な紙葉類の最大集積枚数」が,「1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数と等し」いことを特定している。
また,「制御部」が,「前記拡張モジュールを1つの第1集積部とみなして紙葉類の搬送を制御する」ことを特定している。
これに対して,訂正後の請求項19に係る発明は,「拡張モジュール」が「複数の第2集積部」を有することを限定した上で,「複数の第2集積部それぞれに集積可能な紙葉類の最大集積枚数の合計枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数と等し」いことを限定するものである。
さらに,「制御部」が,「n個(nは2以上の整数)の第1集積部を有する前記紙葉類処理装置が(n+1)個の第1集積部を有するものとして紙葉類の搬送を制御する」ことをさらに限定するものである。
そうすると,訂正事項6は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に,請求項19の記載を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項20及び21では,訂正後の請求項19の記載を引用することにより,訂正後の請求項20及び21に係る発明において,「拡張モジュール」が「複数の第2集積部」を有することを限定した上で,「複数の第2集積部それぞれに集積可能な紙葉類の最大集積枚数の合計枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数と等し」いことを限定し,さらに,「制御部」が,「n個(nは2以上の整数)の第1集積部を有する前記紙葉類処理装置が(n+1)個の第1集積部を有するものとして紙葉類の搬送を制御する」ことをさらに限定するものであるから,訂正後の請求項20及び21に係る発明における訂正事項6による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否か
上記アのとおり,訂正事項6は,訂正前の請求項1に記載されていた「拡張モジュール」及び「制御部」の構成及び機能を,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
同様に,訂正事項6は,訂正前の請求項20及び21が引用する請求項19に記載されていた「拡張モジュール」及び「制御部」の構成及び機能を,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
そうすると,訂正事項6は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項6において,「拡張モジュール」が「複数の第2集積部」を有することを限定した上で,「複数の第2集積部それぞれに集積可能な紙葉類の最大集積枚数の合計枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数と等し」いことは,明細書の【0058】に「第2集積部160の4つの集積部60a~60dのそれぞれに満杯まで紙幣を集積すれば,第1集積部60の1つの集積部60a~60dと同一枚数の紙幣を集積できる。操作者は,1つの拡張モジュール12を1つの集積部とみなして利用することができる。具体的には,操作表示部20で所定操作を行うことにより,制御部90は,1つの拡張モジュール12を1つの集積部とみなして,紙幣の集積に利用する。これにより,操作者は,4つの集積部60a~60d及び1つの拡張モジュール12を,最大集積枚数が500枚の5つの集積部とみなして紙幣処理を実行することができる。」,との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
また,訂正事項1において,「制御部」が,「n個(nは2以上の整数)の第1集積部を有する前記紙葉類処理装置が(n+1)個の第1集積部を有するものとして紙葉類の搬送を制御する」ことは,明細書の【0036】に「第1集積部60は,例えば,4つの集積部60a~60dを含んでいる。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項6は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)については,訂正事項6に係る本件特許の請求項19及び請求項19を引用する請求項20及び21に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正請求による訂正後の請求項19及び請求項19を引用する請求項20及び21に係る発明については課されない。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項20に係る発明は,「紙葉類処理装置」の「拡張モジュール」が「基本モジュールの垂直搬送部に対して」「連結される」こと,及び「基本モジュール」が「垂直搬送部に対して前記拡張モジュールが連結される側と反対側に,リジェクト紙幣を集積するリジェクト部をさらに有する」ことを特定している。
これに対して,訂正後の請求項20に係る発明は,「拡張モジュール」の「第2搬送部」が「紙葉類を水平方向に搬送する水平搬送部と,紙葉類を垂直方向に搬送する垂直搬送部とを有し」,「拡張モジュール」の「筐体」に,「筐体正面を開閉可能に支持する支持部と,筐体側面を開閉可能に支持する支持部が設けられ」,「拡張モジュール」の「筐体上面」が「上方に回動して開くことにより前記水平搬送部が前記拡張ジュールから露出し,前記筐体前面が前面側に回動して開くことにより前記垂直搬送部が前記拡張モジュールから露出する」との記載によって,「拡張モジュール」の構成をさらに限定するものである。
そうすると,訂正事項7は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に,請求項20の記載を直接的に引用する訂正後の請求項21では,訂正後の請求項20の記載を引用することにより,訂正後の請求項21に係る発明において,「拡張モジュール」の構成を上記のとおり限定するものであるから,訂正後の請求項21に係る発明における訂正事項7による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否か
上記アのとおり,訂正事項7は,訂正前の請求項7に記載されていた「拡張モジュール」の構成を,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
同様に,訂正事項7は,訂正前の請求項21が引用する請求項7に記載されていた「拡張モジュール」を,概念的により下位のものにするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
そうすると,訂正事項7は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項7において,「拡張モジュール」の「第2搬送部」が「紙葉類を水平方向に搬送する水平搬送部と,紙葉類を垂直方向に搬送する垂直搬送部とを有」することは,明細書の【0073】に「図6(a)に示すように,第2搬送部150の搬送路は,紙幣を水平方向に搬送する水平搬送路150aと,紙幣を上下方向に搬送する垂直搬送路150bとを含む。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
また,訂正事項7において,「拡張モジュール」の「筐体」に,「筐体正面を開閉可能に支持する支持部と,筐体側面を開閉可能に支持する支持部が設けられ」ていることは,明細書の【0074】に「上面12aの左端部分は,拡張モジュール12の左側面内側上部に前後方向に設けられた支持軸によって回動可能に支持されている。上面12aは,この支持軸回りに回動して上方に開く。」,【0077】に「拡張モジュール12の右前面12bが,裏面左側の支持軸回りに回動して装置前面側に開く。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
さらに,訂正事項7において,「拡張モジュール」の「筐体上面」が「上方に回動して開くことにより前記水平搬送部が前記拡張ジュールから露出し,前記筐体前面が前面側に回動して開くことにより前記垂直搬送部が前記拡張モジュールから露出する」ことは,明細書の【0043】に「拡張モジュール12の上面12a及び右前面12bを開くことにより,紙幣処理装置1の内部にある搬送路を開放することができる。」,【0074】に「上側ユニット151は,上面12aに固定支持されており,上面12aを開くと,上面12aと共に上側ユニット151が上方へ移動する。これにより,図6(b)に示すように水平搬送路150aを開放して,詰まった紙幣を取り除くことができる。」,【0077】に「図7(b)に矢印で示したように,拡張モジュール12内にある右側ユニット152を,背面側の支持軸回りに回動させて,前面側を右側へ開けば,垂直搬送路150bを開放することができる。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項7は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)については,訂正事項7に係る本件特許の請求項20及び請求項20を引用する請求項21に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正請求による訂正後の請求項20及び請求項20を引用する請求項21に係る発明については課されない。
(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的について
訂正事項8は,訂正前の明細書の【0058】の「第2集積部160の4つの集積部60a~60d」との記載について,「第2集積部160」の「4つの集積部」の符号を,明細書の他の記載と整合させ,「第2集積部160の4つの集積部60a~60d」を,「第2集積部160の4つの集積部160a~160d」との記載に訂正するものである。
そうすると,訂正事項8は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否か
上記アのとおり,訂正事項8は,訂正前の明細書の【0058】の記載において整合していない符号を他の記載と整合させるものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
そうすると,訂正事項8は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項8において,「第2集積部160の4つの集積部」の符号が「160a~160d」であることは,明細書の【0057】,【0060】,【0061】,【0075】の「各集積部160a~160d」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項8は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(9)一群の請求項について
訂正前の請求項1乃至21について,請求項2乃至21は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって,訂正事項1による請求項1の訂正に連動して訂正されるものである。
したがって,訂正前の請求項1乃至21に対応する訂正後の請求項1乃至21は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(10)明細書又は図面の訂正と関係する請求項について
訂正事項8に係る明細書の訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,一群の請求項である請求項1乃至21の何れかに対応する訂正であるから,特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に適合する。
(11)小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第4項乃至第6項の規定に適合する。
したがって,明細書,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-21〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件特許第6725354号(以下,「本件特許」という。)の請求項1乃至21に係る発明(以下,「本件発明1」乃至「本件発明21」といい,これらを総称して「本件発明」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1乃至21に記載された事項により特定されるとおりの発明であると認める。
「【請求項1】
基本モジュールと,
前記基本モジュールに連結された拡張モジュール
とを備え,
前記基本モジュールは,
前記基本モジュールの内部へ紙葉類を取り込む取込部と,
前記取込部により取り込まれた紙葉類を搬送する第1搬送部と,
前記第1搬送部により搬送される紙葉類を識別する識別部と,
集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,第1方向に沿って配置された複数の第1集積部と,
前記識別部による識別結果に基づいて紙葉類の搬送を制御する制御部とを含み,
前記拡張モジュールは,
前記第1搬送部によって前記基本モジュールから排出された紙葉類を前記拡張モジュール内へ取り込んで搬送する第2搬送部と,
集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,前記第1方向と異なる第2方向に沿って配置された複数の第2集積部と,
前記第2搬送部が内部に収められている前記拡張モジュールの筐体に設けられ,前記筐体の一部を開閉可能に支持する支持部と
を含むとともに,
前記基本モジュールの外側において前記複数の第1集積部の側方に配置され,
前記制御部は,前記第1集積部と前記第2集積部との少なくとも一方に紙葉類を搬送する制御を行い,
前記拡張モジュールの筐体の一部が前記支持部周りに回動して開くことにより,前記第2搬送部が前記拡張モジュールから露出する
紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記第1方向と前記第2方向とは互いに直交する方向である請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記第1方向は水平方向であり,前記第2方向は垂直方向である請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記基本モジュールは表示部をさらに備え,
前記表示部の下方で水平方向に配置された前記複数の第1集積部と,前記表示部の側方で垂直方向に配置された前記複数の第2集積部とが,略L字型に配置されている請求項3に記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
前記表示部は,前記第1集積部の上方で,両外側の第1集積部の間の略中央の位置に重なるように配置されている請求項4に記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
前記拡張モジュールは,前記基本モジュールと連結された側面と反対側の側面に,前記第2集積部に集積された紙葉類の一部を外部に露出する切欠部を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
前記拡張モジュールを第1拡張モジュールとして,該第1拡張モジュールに連結された第2拡張モジュール
をさらに備え,
前記第2拡張モジュールは,
前記第1拡張モジュールにより,前記基本モジュールから取り込まれて,前記基本モジュールと連結された面と異なる面から排出された紙葉類を,前記第2拡張モジュール内に取り込んで搬送する第3搬送部と,
集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,前記第2方向に沿って配置された複数の第3集積部と,
前記第3搬送部が内部に収められている前記第2拡張モジュールの筐体に設けられ,前記筐体の一部を開閉可能に支持する支持部と
を含み,
前記制御部は,前記第1集積部,前記第2集積部,前記第3集積部の少なくともいずれか一つに紙葉類を搬送する制御を行い,
前記第2拡張モジュールの筐体の一部が前記支持部周りに回動して開くことにより,前記第3搬送部が前記第2拡張モジュールから露出する
請求項1~6のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項8】
前記第1集積部は,前記第1搬送部で搬送された紙葉類を受けて整列集積するための第1羽根車を有し,
前記第2集積部は,前記第2搬送部で搬送された紙葉類を受けて整列集積するための第2羽根車を有し,
前記第2羽根車の外径が前記第1羽根車の外径より小さい請求項1~6のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項9】
前記第1集積部の開口部は,該開口部の上部縁部から背面側に行くに従い下方に向けて傾斜する傾斜面を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項10】
前記第1搬送部は,
前記識別部より搬送方向下流側の位置に配置され,紙葉類の搬送方向を,前記拡張モジュールへ向けて前記基本モジュールから紙葉類を排出する搬送方向と,前記第1集積部へ向けて紙葉類を搬送する搬送方向とに分岐する第1分岐部を有する請求項1~9のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。__
【請求項11】
前記第2搬送部は,
前記基本モジュールから前記拡張モジュール内に取り込んだ紙葉類の搬送方向を,前記基本モジュールと連結された面と異なる面から排出する搬送方向と,前記第2集積部へ向けて紙葉類を搬送する搬送方向とに分岐する第2分岐部を有する
請求項10に記載の紙葉類処理装置。
【請求項12】
前記第2集積部は,紙葉類表面が水平面に対して傾斜した立位姿勢で紙葉類を集積する請求項1~11のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項13】
前記第2集積部は,紙葉類表面が水平面に対して45度以上傾斜した立位姿勢で前記紙葉類を集積する請求項12に記載の紙葉類処理装置。
【請求項14】
前記第1集積部に集積された紙葉類の水平面に対する傾斜角度が,前記第2集積部に集積された紙葉類の傾斜角度より小さい請求項13に記載の紙葉類処理装置。
【請求項15】
紙葉類を集積する各第2集積部の集積空間が,紙葉類を集積する各第1集積部の集積空間より小さく形成されることにより,1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数より少ない請求項1~14のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項16】
1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数の約数に等しい請求項15に記載の紙葉類処理装置。
【請求項17】
1つの第2集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数の1/4である請求項15に記載の紙葉類処理装置。
【請求項18】
前記拡張モジュールは4つの第2集積部を有する請求項17に記載の紙葉類処理装置。
【請求項19】
前記拡張モジュールが有する複数の第2集積部それぞれに集積可能な紙葉類の最大集積枚数の合計枚数が,1つの第1集積部に集積可能な紙葉類の最大集積枚数と等しく,
前記制御部は,前記拡張モジュールを1つの第1集積部とみなし,n個(nは2以上の整数)の第1集積部を有する前記紙葉類処理装置が(n+1)個の第1集積部を有するものとして紙葉類の搬送を制御する請求項15に記載の紙葉類処理装置。
【請求項20】
前記第1搬送部は,水平面に対して略垂直な方向に紙葉類を搬送する垂直搬送部を有し,
前記基本モジュールは,
前記垂直搬送部に対して前記拡張モジュールが連結される側と反対側に,リジェクト紙幣を集積するリジェクト部
をさらに有し,
前記拡張モジュールの第2搬送部は,紙葉類を水平方向に搬送する水平搬送部と,紙葉類を垂直方向に搬送する垂直搬送部とを有し,
前記拡張モジュールの筐体に,筐体正面を開閉可能に支持する支持部と,筐体側面を開閉可能に支持する支持部が設けられ,
前記筐体上面が上方に回動して開くことにより前記水平搬送部が前記拡張ジュールから露出し,前記筐体前面が前面側に回動して開くことにより前記垂直搬送部が前記拡張モジュールから露出する
請求項1~19のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項21】
前記基本モジュールの筐体は,前記取込部と前記リジェクト部の間に位置する略水平な平面部を含む請求項20に記載の紙葉類処理装置。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件発明1乃至21は,本件特許の出願の日前の特許出願であって,本件特許の出願後に出願公開がされた引用出願(特願2016-65579号(特開2017-178509号)(甲第1号証))の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,本件特許の発明者が本件特許の出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件特許の出願の時において,その出願人が上記引用出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1乃至21に係る特許は,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
2 甲第1号証の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面の記載
甲第1号証である引用出願(特願2016-65579号(特開2017-178509号))は,本件特許の出願より前である平成28年3月29日に出願された特許出願であり,本件特許の出願後である平成29年10月5日に出願公開がされたものであって,本件特許の発明者が引用出願に係る発明の発明者と同一ではないから,引用出願は,特許法29条の2本文における「他の特許出願」の形式的要件を満足する。
また,本件特許の出願の時に,本件特許の出願人と引用出願の出願人は同一ではなかったから,引用出願は,同条ただし書における「他の特許出願」の形式的要件も満足する。
しかるに,引用出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「引用出願の当初明細書等」という。)には,次の記載がある。(下線部は,後述する「先願発明」の認定に特に関連する箇所を示す。)
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は,紙葉類処理装置の組立方法および紙葉類処理装置に関する。」
(2)「【0027】
本発明の一実施形態を図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る紙葉類処理装置1は,図1に示すように,ベース機2と,例えば複数種類の拡張機3~6とが組み合わせられて構成されるものである。ここで,本実施形態は,複数種類の拡張機3~6の,数および種類のうちの少なくともいずれか一方を選択設定してベース機2に組み合わせる紙葉類処理装置1の組立方法を含んでいる。紙葉類処理装置1は,各種紙葉類の中の紙幣Sを処理するものである。」
(3)「【0029】
ベース機2は,その機体の操作者側から見て右側の右側面11(第1の側面)に設けられて右側面11および機体の操作者側の前面12に連続して開口する取込部15と,同じく右側面11の取込部15よりも上方に設けられて機体の右側面11および前面12に連続して開口するリジェクト部16(集積部)とを有している。
【0030】
…つまり,取込部15は,紙幣Sをその短辺方向に移動させて一枚ずつ機内に繰り出す。
【0031】
ベース機2は,取込部15から繰り出された紙幣Sを受け取り,この受け取りも含めた全範囲で紙幣Sを短辺方向に移動させて機外に繰り出す受取繰出搬送部21と,受取繰出搬送部21で搬送中の紙幣Sを識別する識別部22とを有している。受取繰出搬送部21は,取込部15から機体の右側面11とは反対の左側面24(第2の側面)に向けて延出する左方延出部26(第1の延出部)と,左方延出部26の左側面24近傍の端部から上方に延出する上方延出部27(第2の延出部)と,上方延出部27の上端部から左側面24に向け延出して左側面24に開口部29で開口する左方延出部28(第3の延出部)とを有している。受取繰出搬送部21には,これらのうちの最も取込部15側の左方延出部26に識別部22が設けられている。
【0032】
ベース機2は,受取繰出搬送部21の上方延出部27の上端部から分岐して右側面11に向け延出しつつさらに分岐する分岐搬送部30を有している。…分岐搬送部30は,受取繰出搬送部21とは反対側が複数に分岐されており,具体的には4つの分岐部31~34に分岐されている。…
【0033】
分岐部31~34のうちの最も右側の分岐部34(第1の分岐部)は,分岐搬送部30において機体の右側面11に向けて分岐してリジェクト部16に接続されている。言い換えれば,リジェクト部16は,分岐搬送部30の右側面11側に分岐する分岐部34に接続されている。リジェクト部16は,対応する分岐部34から紙幣Sがその短辺方向に移動して繰り出され,このように繰り出された紙幣Sを外部に取り出し可能に集積させる。リジェクト部16は,具体的に,識別部22で受け入れ不可と識別された紙幣Sを集積させる。…
【0034】
分岐部31~34のうちの残りの分岐部31~33(第2の分岐部)は,いずれも分岐搬送部30において下方に向けて分岐しており,これらに合わせて,これらの下側に複数具体的には三つの同形状の集積部41~43が,上下方向の位置を重ね合わせて,機体の右側面11と左側面24とを結ぶ左右方向に並んで設けられている。集積部41~43は,前面12に開口している。…
【0035】
集積部41は,対応する分岐部31から紙幣Sがその短辺方向に移動して繰り出され,このように繰り出された紙幣Sを前面12から外部に取り出し可能となるように集積させる。集積部41は,水平に対し若干右下がりに傾斜する昇降可能な底板部45と,底板部45の右側で上方に延出する壁面46と,壁面46の上部に配置され分岐部31から繰り出された紙幣Sを壁面46に当接させて底板部45に向け落下させる羽根車47とを有している。よって,集積部41に繰り出された紙幣Sは,長辺を機体前後方向に沿わせ,短辺を機体左右方向に沿わせて底板部45上で上下に集積されることになり,前面12の開口から前方に取り出される。・・・
【0036】
集積部42,43も同様の構造であり,集積部42は,対応する分岐部32から繰り出された紙幣Sを外部に取り出し可能に集積させ,集積部43は,対応する分岐部33から繰り出された紙幣Sを外部に取り出し可能に集積させる。…」
(4)「【0038】
ベース機2の前面12には,操作者により操作入力がなされると共に操作者に向け表示を行うタッチパネル式の操作表示部55と,集積部41~43のそれぞれの紙幣Sの集積枚数を表示させるカウンタパネル41a~43aとが設けられている。また,ベース機2には,内部に,識別部22の識別結果に基づいてリジェクト部16および集積部41~43に紙幣Sを振り分ける等,取込部15,リジェクト部16,受取繰出搬送部21,識別部22,分岐搬送部30および集積部41~43を制御する制御部56が設けられている。制御部56は,ベース機2の全体を制御すると共に,拡張機3~6のうちベース機2に連設されて同じ紙葉類処理装置1を構成するものにもインタフェースを介して通信可能に接続されて制御指令を出力する。
【0039】
「拡張機3」
図4,図5に示すように,拡張機3は,機体の右側面61(第3の側面)の上部に開口部60で開口し,右側面61とは反対の左側面62(第4の側面)に向け水平かつ直線状に延出して,左側面62の上部に開口部63において開口する受取繰出搬送部64と,受取繰出搬送部64の左側面62側から分岐して下方に延出する内部搬送部65とを有している。受取繰出搬送部64は,その開口部60,63が,ベース機2の受取繰出搬送部21の開口部29と高さ位置を合わせており,拡張機3がその右側面61を例えばベース機2の左側面24に重ねてベース機2に連設されると,受取繰出搬送部64が開口部60において,紙幣Sを,拡張機3の機外であるベース機2の受取繰出搬送部21の開口部29から受け取る。受取繰出搬送部64は,このように機外から紙幣Sを受け取り,この受け取りを含めた全範囲で紙幣Sを短辺方向に移動させて,場合により開口部63から機外に繰り出す。受取繰出搬送部64には,開口部60の位置に紙幣Sの開口部60への受け入れを検知する紙幣検知センサ67が設けられている。
【0040】
内部搬送部65は,紙幣Sを受取繰出搬送部64の中間位置から受け取り,この受け取りを含めた全範囲で紙幣Sを短辺方向に移動させる。内部搬送部65は,受取繰出搬送部64とは反対側が複数具体的には4つの分岐部71~74に分岐されている。分岐部71~74は,機体上下方向に並んで配置されており,右側面61に向けて分岐している。これら分岐部71~74に合わせて,これらの右側に複数具体的には四つの同形状の集積部81~84(処理部)が,機体左右方向の位置を重ね合わせて,上下方向に並んで設けられている。集積部81~84は,それぞれが,内部搬送部65から短辺方向に移動して繰り出される紙幣Sを受け入れて集積させる集積処理を行うもので,拡張機3の機体の前面86に開口している。分岐部71~74のうちの最も上側の分岐部71に,集積部81~84のうちの最も上側の集積部81が,分岐部71の下の分岐部72に,集積部81の下の集積部82が,分岐部72の下の分岐部73に,集積部82の下の集積部83が,最も下側の分岐部74に,最も下側の集積部84が,それぞれ繋がっている。
【0041】
集積部81は,対応する分岐部71から紙幣Sがその短辺方向に移動して繰り出され,このように繰り出された紙幣Sを前面86から外部に取り出し可能となるように集積させる。集積部81は,水平に対し若干右下がりに傾斜する底面88と,底面88の上側にこれと垂直に配置された左右に移動可能な壁板部89と,底面88の左部に配置され分岐部71から繰り出された紙幣Sを底面88に当接させて壁板部89に向けて押し出す羽根車90とを有している。よって,集積部81に繰り出された紙幣Sは,長辺を機体前後方向に沿わせ,短辺を上下方向に沿わせて左右に集積されることになり,前面86の開口から前方に取り出される。壁板部89は,集積部81の紙幣Sの集積量に応じて左右に移動する。」
(5)「【0045】
「拡張機4」
図6,図7に示すように,拡張機4は,機体の右側面101(第3の側面)の上部に開口部100で開口し,右側面101とは反対の左側面102(第4の側面)に向け水平かつ直線状に延出して,上部の開口部103で左側面102に開口する受取繰出搬送部104と,受取繰出搬送部104の左側面102側から分岐して下方に延出する内部搬送部105とを有している。受取繰出搬送部104は,その開口部100,103が,拡張機3の受取繰出搬送部64の開口部60,63と高さ位置を合わせており,拡張機4がその右側面101を例えば拡張機3の左側面62に重ねて拡張機3に連設されると,受取繰出搬送部104が開口部100において,紙幣Sを,拡張機4の機外である拡張機3の受取繰出搬送部64の開口部63から受け取る。受取繰出搬送部104は,このように機外から紙幣Sを受け取り,この受け取りを含めた全範囲で紙幣Sを短辺方向に移動させて,場合により開口部103から機外に繰り出す。受取繰出搬送部104には,開口部100の位置に紙幣Sの開口部100への受け入れを検知する紙幣検知センサ107が設けられている。
【0046】
内部搬送部105は,紙幣Sを受取繰出搬送部104の中間位置から受け取り,この受け取りを含めた全範囲で紙幣Sを短辺方向に移動させる。内部搬送部105は,受取繰出搬送部104とは反対側が複数具体的には2つの分岐部111,112に分岐されている。分岐部111,112は,機体上下方向に並んで配置されており,右側面101に向けて分岐している。これら分岐部111,112に合わせて,これらの右側に複数具体的には二つの集積部121,122(処理部)が,左右方向の位置を重ね合わせて,上下方向に並んで設けられている。集積部121,122は,それぞれが,内部搬送部105から短辺方向に移動して繰り出される紙幣Sを受け入れて集積させる集積処理を行うもので,拡張機4の機体の前面124に開口している。分岐部111,112のうちの上側の分岐部111に,集積部121,122のうちの上側の集積部121が,下側の分岐部112に,下側の集積部122が,それぞれ繋がっている。
【0047】
集積部121は,対応する分岐部111から紙幣Sがその短辺方向に移動して繰り出され,このように繰り出された紙幣Sを前面124から外部に取り出し可能となるように集積させる。集積部121は,水平に配置される昇降可能な底板部126と,底板部126の左側にこれと垂直に配置された壁面127と,壁面127の上部に配置され分岐部111から繰り出された紙幣Sを壁面127に当接させて底板部126に落下させる羽根車128とを有している。よって,集積部121に繰り出された紙幣Sは,長辺を機体前後方向に沿わせ,短辺を左右方向に沿わせて底板部126上で上下に集積されることになり,前面124の開口から前方に取り出される。底板部126は,集積部121の紙幣Sの集積量に応じて上下に移動する。集積部122も同様の構造であり,集積部122は,対応する分岐部112から繰り出された紙幣Sを外部に取り出し可能に集積させる。」
(6)「【0048】
拡張機4は,上記した受取繰出搬送部104,内部搬送部105および集積部121,122が,すべて機体前後方向の位置を重ね合わせている。拡張機4の前面124には,集積部121,122のそれぞれの紙幣Sの集積枚数を表示させるカウンタパネル121a,122aが設けられている。拡張機4の内部には,ベース機2に通信可能に接続されてその制御部56から制御指令を受信して,この制御指令に基づいて拡張機4を制御する制御部135が設けられている。また,拡張機4には,外部電源に接続されて拡張機4の各部に給電する電源部136が設けられている。集積部121,122は,それぞれの紙幣Sの集積可能量が,拡張機3の集積部81~84のそれぞれの紙幣Sの集積可能量よりも多くなっている。」
(7)「【0064】
また,ベース機2の左側面24側と,拡張機3の左側面62側と,拡張機4の左側面102側と,拡張機5の左側面142側と,拡張機6の左側面182側とには,図示略の連結機構の共通形状の一部が設けられており,拡張機3の右側面61側と,拡張機4の右側面101側と,拡張機5の右側面141側と,拡張機6の右側面181側とには,図示略の連結機構の共通形状の他の一部が設けられている。そして,連結機構の一部と他部とが連結されることで,ベース機2および拡張機3~6は,隣り合うもの同士が前後方向の位置および高さを合わせて連結される。」
(8)「【0068】
例えば,図1に示すように,ベース機2に,一台の拡張機3を,受取繰出搬送部21と受取繰出搬送部64とを紙幣Sの受け渡しが可能に配置して図示略の連結機構で連結し,この拡張機3に,一台の拡張機4を,受取繰出搬送部64と受取繰出搬送部104とを紙幣Sの受け渡しが可能に配置して図示略の連結機構で連結し,この拡張機4に,一台の拡張機5を,受取繰出搬送部104と受取繰出搬送部144とを紙幣Sの受け渡しが可能に配置して図示略の連結機構で連結し,この拡張機5に,一台の拡張機6を,受取繰出搬送部144と受取繰出搬送部184とを紙幣Sの受け渡しが可能に配置して図示略の連結機構で連結して,一体の紙葉類処理装置1を製造する。」
(9)「【0070】
紙葉類処理装置1は,そのベース機2の制御部56が,分類した紙幣Sの分類別の搬送先を,ベース機2の集積部41~43,拡張機3の集積部81~84,拡張機4の集積部121,122,拡張機5の集積部161~163,拡張機6の結束部188のいずれにするかを設定する。」
(10)「【0086】
また,ベース機2は,取込部15が,右側面11に,この右側面11および前面12に開口して設けられているため,機外からの紙幣Sの装填操作がしやすい。また,識別部22で受け入れ不可と識別された紙幣を集積させるリジェクト部16が,右側面11の取込部15よりも上方に,右側面11および前面12に開口して設けられているため,紙幣Sの取込部15への再装填操作がしやすい。また,受取繰出搬送部21の,取込部15から左側面24に向けて延出する左方延出部26に識別部22が設けられ,上方延出部27の上部から右側面11に向け延出しつつ分岐する分岐搬送部30が,右側面11と左側面24とを結ぶ方向に並び前面12に開口して設けられた複数の集積部41~43に接続されるため,これらをコンパクトに配置することができる。また,左方延出部26の左側面24側から上方に延出する上方延出部27から,左方延出部28が,左側面24に向け延出して左側面24に開口するため,拡張機3~6のうちの連設されたものへの紙幣Sの受け渡しが容易となる。」
(11)「
[図:0001382361000001.jpg]
」
(12)「
[図:0001382361000002.jpg]
」
(13)「
[図:0001382361000003.jpg]
」
(14)上記【0064】及び【図1】より,ベース機2には拡張機3が連結され,拡張機3には拡張機4が連結され,拡張機4には拡張機5が連結され,拡張機5には拡張機6が連結されているものと認められ,また,拡張機3は,ベース機2の外側であって,集積部41~43の側方に配置されていること,及び,操作表示部55は,集積部41~43に対して略中央部に設けられていることが看取できる。
(15)【図3】及び【図5】より,集積部41~43に集積された紙幣Sの角度は,集積部81~84に集積された紙幣Sの角度より小さいことが看取できる。
3 引用出願の当初明細書等に記載の発明
上記2(1)乃至(15)より,引用出願の当初明細書等には,次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認める。
「ベース機2と,複数種類の拡張機3~6とが組み合わせられて構成される,各種紙葉類の中の紙幣Sを処理する紙葉類処理装置1であって,
ベース機2には拡張機3が連結され,拡張機3には拡張機4が連結され,拡張機4には拡張機5が連結され,拡張機5には拡張機6が連結され,
ベース機2は,その機体の操作者側から見て右側の右側面11(第1の側面)に設けられて右側面11および機体の操作者側の前面12に連続して開口する取込部15を有し,取込部15は,紙幣Sをその短辺方向に移動させて一枚ずつ機内に繰り出し,
さらに,ベース機2は,取込部15から繰り出された紙幣Sを受け取り,紙幣Sを短辺方向に移動させて機外に繰り出す受取繰出搬送部21と,受取繰出搬送部21で搬送中の紙幣Sを識別する識別部22とを有し,受取繰出搬送部21は,取込部15から機体の右側面11とは反対の左側面24(第2の側面)に向けて延出する左方延出部26(第1の延出部)と,左方延出部26の左側面24近傍の端部から上方に延出する上方延出部27(第2の延出部)と,上方延出部27の上端部から左側面24に向け延出して左側面24に開口部29で開口する左方延出部28(第3の延出部)とを有し,
さらに,ベース機2は,受取繰出搬送部21の上方延出部27の上端部から分岐して右側面11に向け延出しつつさらに分岐する分岐搬送部30を有し,分岐搬送部30は,受取繰出搬送部21とは反対側が,4つの分岐部31~34に分岐され,
最も右側の分岐部34(第1の分岐部)は,分岐搬送部30において機体の右側面11に向けて分岐してリジェクト部16に接続され,リジェクト部16には,紙幣Sがその短辺方向に移動して繰り出され,このように繰り出された紙幣Sを外部に取り出し可能に集積され,
分岐部31~33(第2の分岐部)は,いずれも分岐搬送部30において下方に向けて分岐しており,これらに合わせて,これらの下側には三つの同形状の集積部41~43が,上下方向の位置を重ね合わせて,機体の右側面11と左側面24とを結ぶ左右方向に並んで設けられ,集積部41~43は,前面12に開口し,
集積部41は,対応する分岐部31から紙幣Sがその短辺方向に移動して繰り出され,このように繰り出された紙幣Sを前面12から外部に取り出し可能となるように集積させ,水平に対し若干右下がりに傾斜する昇降可能な底板部45と,底板部45の右側で上方に延出する壁面46と,壁面46の上部に配置され分岐部31から繰り出された紙幣Sを壁面46に当接させて底板部45に向け落下させる羽根車47とを有し,集積部41に繰り出された紙幣Sは,長辺を機体前後方向に沿わせ,短辺を機体左右方向に沿わせて底板部45上で上下に集積されることになり,
集積部42,43も同様の構造であり,集積部42は,対応する分岐部32から繰り出された紙幣Sを外部に取り出し可能に集積させ,集積部43は,対応する分岐部33から繰り出された紙幣Sを外部に取り出し可能に集積させ,
ベース機2の前面12には,操作者により操作入力がなされると共に操作者に向け表示を行うタッチパネル式の操作表示部55が集積部41~43に対して略中央部に設けられ,また,ベース機2の内部には,識別部22の識別結果に基づいてリジェクト部16および集積部41~43に紙幣Sを振り分ける等,取込部15,リジェクト部16,受取繰出搬送部21,識別部22,分岐搬送部30および集積部41~43を制御する制御部56が設けられ,
拡張機3は,ベース機2の外側であって,集積部41~43の側方に配置され,機体の右側面61(第3の側面)の上部に開口部60で開口し,右側面61とは反対の左側面62(第4の側面)に向け水平かつ直線状に延出して,左側面62の上部に開口部63において開口する受取繰出搬送部64と,受取繰出搬送部64の左側面62側から分岐して下方に延出する内部搬送部65とを有し,受取繰出搬送部64は,その開口部60,63が,ベース機2の受取繰出搬送部21の開口部29と高さ位置を合わせており,拡張機3がその右側面61を例えばベース機2の左側面24に重ねてベース機2に連設されると,受取繰出搬送部64が開口部60において,紙幣Sを,拡張機3の機外であるベース機2の受取繰出搬送部21の開口部29から受け取り,受取繰出搬送部64は,紙幣Sを短辺方向に移動させて,開口部63から機外に繰り出し,
内部搬送部65は,紙幣Sを受取繰出搬送部64の中間位置から受け取り,紙幣Sを短辺方向に移動させ,内部搬送部65は,受取繰出搬送部64とは反対側が4つの分岐部71~74に分岐され,分岐部71~74は,機体上下方向に並んで配置されており,右側面61に向けて分岐し,これら分岐部71~74に合わせて,これらの右側に四つの同形状の集積部81~84(処理部)が,機体左右方向の位置を重ね合わせて,上下方向に並んで設けられ,集積部81~84は,それぞれが,内部搬送部65から短辺方向に移動して繰り出される紙幣Sを受け入れて集積させる集積処理を行うもので,拡張機3の機体の前面86に開口し,分岐部71~74のうちの最も上側の分岐部71に,集積部81~84のうちの最も上側の集積部81が,分岐部71の下の分岐部72に,集積部81の下の集積部82が,分岐部72の下の分岐部73に,集積部82の下の集積部83が,最も下側の分岐部74に,最も下側の集積部84が,それぞれ繋がっており,
集積部81は,対応する分岐部71から紙幣Sがその短辺方向に移動して繰り出され,このように繰り出された紙幣Sを前面86から外部に取り出し可能となるように集積させ,集積部81は,水平に対し若干右下がりに傾斜する底面88と,底面88の上側にこれと垂直に配置された左右に移動可能な壁板部89と,底面88の左部に配置され分岐部71から繰り出された紙幣Sを底面88に当接させて壁板部89に向けて押し出す羽根車90とを有し,集積部81に繰り出された紙幣Sは,長辺を機体前後方向に沿わせ,短辺を上下方向に沿わせて左右に集積されることになり,
集積部41~43に集積された紙幣Sの角度は,集積部81~84に集積された紙幣Sの角度より小さく設定され,
拡張機4は,機体の右側面101(第3の側面)の上部に開口部100で開口し,右側面101とは反対の左側面102(第4の側面)に向け水平かつ直線状に延出して,上部の開口部103で左側面102に開口する受取繰出搬送部104と,受取繰出搬送部104の左側面102側から分岐して下方に延出する内部搬送部105とを有しており,受取繰出搬送部104は,その開口部100,103が,拡張機3の受取繰出搬送部64の開口部60,63と高さ位置を合わせており,拡張機4がその右側面101を例えば拡張機3の左側面62に重ねて拡張機3に連設されると,受取繰出搬送部104が開口部100において,紙幣Sを,拡張機4の機外である拡張機3の受取繰出搬送部64の開口部63から受け取り,内部搬送部105は,紙幣Sを受取繰出搬送部104の中間位置から受け取り,上下方向に並んで設けられている集積部121,122に集積させ,紙幣Sは,前面124の開口から前方に取り出され,
集積部121,122は,それぞれの紙幣Sの集積可能量が,拡張機3の集積部81~84のそれぞれの紙幣Sの集積可能量よりも多くなっており,
ベース機2の制御部56が,分類した紙幣Sの分類別の搬送先を,ベース機2の集積部41~43,拡張機3の集積部81~84,拡張機4の集積部121,122,拡張機5の集積部161~163,拡張機6の結束部188のいずれにするかを設定する,
紙葉類処理装置1。」
4 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と先願発明とを対比すると,
(ア)後者の「ベース機2」は,前者の「基本モジュール」に相当する。
(イ)後者の「拡張機3~6」は,前者の「拡張モジュール」に相当し,後者の「拡張機3~6」は,ベース機2に連結されるものであるから,前者の「拡張モジュール」と後者の「拡張機3~6」とは,「基本モジュールに連結された」ものとの概念で共通する。
(ウ)後者の「取込部15」は,前者の「取込部」に相当し,後者の「取込部15」は,紙幣Sをその短辺方向に移動させて一枚ずつ機内に繰り出すものであるから,前者の「取込部」と後者の「取込部15」とは,「基本モジュールの内部へ紙葉類を取り込む」ものとの概念で共通する。
(エ)後者の「受取繰出搬送部21」は,前者の「第1搬送部」に相当し,後者の「受取繰出搬送部21」は,取込部15から繰り出された紙幣Sを受け取り,紙幣Sを短辺方向に移動させて機外に繰り出すものであるから,前者の「第1搬送部」と後者の「受取繰出搬送部21」とは,「取込部により取り込まれた紙葉類を搬送する」ものとの概念で共通する。
(オ)後者の「紙幣S」及び「識別部22」は,それぞれ,前者の「紙葉類」及び「識別部」に相当し,後者の「識別部22」は,受取繰出搬送部21で搬送中の紙幣Sを識別するものであるから,前者の「識別部」と後者の「識別部22」とは,「第1搬送部により搬送される紙葉類を識別する」ものとの概念で共通する。
(カ)後者の「三つの同形状の集積部41~43」は,前者の「複数の第1集積部」に相当し,後者の「三つの同形状の集積部41~43」は,上下方向の位置を重ね合わせて,機体の右側面11と左側面24とを結ぶ左右方向に並んで設けられ,前面12に開口し,前面12から外部に取り出し可能となるように集積させるものであるから,前者の「複数の第1集積部」と後者の「三つの同形状の集積部41~43」とは,「集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,第1方向に沿って配置された」ものとの概念で共通する。
(キ)後者の「制御部56」は,前者の「制御部」に相当し,後者の「制御部56」は,識別部22の識別結果に基づいてリジェクト部16および集積部41~43に紙幣Sを振り分ける等,取込部15,リジェクト部16,受取繰出搬送部21,識別部22,分岐搬送部30および集積部41~43を制御するものであるから,前者の「制御部」と後者の「制御部56」とは,「識別部による識別結果に基づいて紙葉類の搬送を制御する」ものとの概念で共通する。
(ク)後者の「受取繰出搬送部64」は,前者の「第2搬送部」に相当し,後者の「受取繰出搬送部64」は,開口部60において,紙幣Sを,拡張機3の機外であるベース機2の受取繰出搬送部21の開口部29から受け取り,紙幣Sを短辺方向に移動させて,開口部63から機外に繰り出すものであるから,前者の「第2搬送部」と後者の「受取繰出搬送部64」とは,「第1搬送部によって基本モジュールから排出された紙葉類を拡張モジュール内へ取り込んで搬送する」ものとの概念で共通する。
(ケ)後者の「四つの同形状の集積部81~84」は,前者の「複数の第2集積部」に相当し,後者の「四つの同形状の集積部81~84」は,機体左右方向の位置を重ね合わせて,上下方向に並んで設けられ,それぞれが,内部搬送部65から短辺方向に移動して繰り出される紙幣Sを受け入れて集積させる集積処理を行うもので,拡張機3の機体の前面86に開口し,紙幣Sを前面86から外部に取り出し可能となるように集積させるものであるから,前者の「複数の第2集積部」と後者の「四つの同形状の集積部81~84」とは,「集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,第1方向と異なる第2方向に沿って配置された」ものとの概念で共通する。
(コ)後者の「拡張機3」は,ベース機2の外側であって,集積部41~43の側方に配置されているものであるから,前者の「拡張モジュール」と後者の「拡張機3~6」における少なくとも「拡張機3」とは,「基本モジュールの外側において複数の第1集積部の側方に配置され」ているものとの概念で共通する。
(サ)後者の「制御部56」は,分類した紙幣Sの分類別の搬送先を,ベース機2の集積部41~43,拡張機3の集積部81~84,拡張機4の集積部121,122,拡張機5の集積部161~163,拡張機6の結束部188のいずれにするかを設定するものであるから,前者の「制御部」と後者の「制御部56」とは,「第1集積部と第2集積部との少なくとも一方に紙葉類を搬送する制御を行う」ものとの概念で共通する。
(シ)後者の「紙葉類処理装置1」は,前者の「紙葉類処理装置」に相当する。
そうすると,両者の一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「基本モジュールと,
前記基本モジュールに連結された拡張モジュール
とを備え,
前記基本モジュールは,
前記基本モジュールの内部へ紙葉類を取り込む取込部と,
前記取込部により取り込まれた紙葉類を搬送する第1搬送部と,
前記第1搬送部により搬送される紙葉類を識別する識別部と,
集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,第1方向に沿って配置された複数の第1集積部と,
前記識別部による識別結果に基づいて紙葉類の搬送を制御する制御部とを含み,
前記拡張モジュールは,
前記第1搬送部によって前記基本モジュールから排出された紙葉類を前記拡張モジュール内へ取り込んで搬送する第2搬送部と,
集積された紙葉類を抜取可能な開口部を有し,前記第1方向と異なる第2方向に沿って配置された複数の第2集積部と
を含むとともに,
前記基本モジュールの外側において前記複数の第1集積部の側方に配置され,
前記制御部は,前記第1集積部と前記第2集積部との少なくとも一方に紙葉類を搬送する制御を行う紙葉類処理装置。」
[相違点]
拡張モジュールが,本件発明1は,「第2搬送部が内部に収められている前記拡張モジュールの筐体に設けられ,前記筐体の一部を開閉可能に支持する支持部」を含み,「拡張モジュールの筐体の一部が前記支持部周りに回動して開くことにより,前記第2搬送部が前記拡張モジュールから露出する」ものであるのに対し,先願発明は,その様な構成を備えていない点。
イ 判断
上記アで認定したとおり,本件発明1と先願発明の間には上記相違点が存在する。
そして,上記相違点が課題解決のための具体化手段における微差であって,新たな効果を奏するものではないといえる理由もない。
よって,本件発明1は,先願発明と同一ではない。
異議申立人は,「先願発明において,搬送部に異物が混入したり紙葉がつまった場合に,搬送部を拡張機から露出させて異物やつまった紙を取り除く必要があることから,拡張機の筐体の一部を開いて,搬送部を拡張機から露出させる構成にすることは技術常識である。」と主張し,甲第3号証及び甲第4号証に技術常識として露出する構成が示されている,と主張する。
しかし,引用出願の当初明細書等に前面214には紙幣を機外へ取り出す扉216が記載されているだけであって,搬送部を外部に露出させるものではない。
また,甲第3号証の第2構成要素及び第3構成要素は旋回可能に設けられるものであるものの,搬送部が露出し,異物・紙を取り除くことができるか否かまでは明らかでない。甲第4号証はユニット自体が回動するものであるから,筐体の一部が回動するものとは言えない。
甲第3号証及び甲第4号証のように,紙葉類処理装置を構成する筐体が回動可能であることが示された公知文献があるからと言って,先願発明が,その筐体の一部が開き,搬送部が外部に露出する構成であるとはいえない。
よって,異議申立人の主張は,採用できない。
(2)本件発明2乃至21について
本件特許の請求項2乃至21は,いずれも,本件特許の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する形式で記載されたものであるから,本件発明2乃至21は,いずれも,本件発明1の発明特定事項を全て有しているところ,前記(1)アで述べたとおり,本件発明1と先願発明との間に相違点が存在する以上,本件発明1の発明特定事項を全て有している本件発明2乃至21のいずれについても,先願発明との間に少なくとも同じ相違点が存在することとなる。
そして,上記(1)イの判断と同様に,上記相違点が課題解決のための具体化手段における微差であって,新たな効果を奏するものではないといえる理由もない。
したがって,本件発明2乃至21は,いずれも,先願発明と同一ではない。
(3)小括
以上のとおりであるから,理由1(拡大先願同一)について,本件特許の請求項1乃至21に係る特許が,特許法29条の2の規定に違反してされたものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから,特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件特許の請求項1乃至21に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1乃至21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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2021-700037