商標取消審判
2021-300267
レメックス、リメックス
- 審判番号
- 2021-300267
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2016-089371
- 登録番号
- 5923830
- 請求日
- 2021年04月07日
- 審決日
- 2022年03月15日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】北川 眞理子
- 【被請求人】株式会社Cysay
- 【被請求人代理人】特許業務法人綾船国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 森山 啓
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 茂木 祐輔
- 分類
- T132 .1 -Z (W05)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第2項、商標法第50条第1項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5923830号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5923830号商標の指定商品及び指定役務中,第5類「絆創膏,ガーゼ,医療用シート状粘着テープ,医療用粘着テープ」についての商標登録を取り消す。
審判費用は,被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5923830号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成28年8月17日登録出願,第5類「絆創膏,ガーゼ,医療用シート状粘着テープ,医療用粘着テープ」を含む,第3類,第5類,第35類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同29年2月17日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録は,令和3年4月21日であり,商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは,平成30年(2018年)4月21日から令和3年(2021年)4月20日までの期間(以下「要証期間」という。)である。
第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,第5類「絆創膏,ガーゼ,医療用シート状粘着テープ,医療用粘着テープ」(以下「請求に係る指定商品」という。)について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用をした事実が存しないから,その登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第50条第2項ただし書の「正当な理由」としては,その商標を使用する予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合や,時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合があるとされている(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕)。
この点,答弁書において,被請求人は,コロナ禍による緊急事態宣言により,請求に係る指定商品の製造開発の協議に時間を要している旨述べるのみであり,被請求人提出の乙第1号証ないし乙第6号証によっては,被請求人が請求に係る指定商品に本件商標を使用していないことに正当な理由があったことの立証は何らなされていない。
すなわち,テレワークの浸透もあり,緊急事態宣言下においても経済活動は止まることなく動いていたのであり,仮に緊急事態宣言の発出により被請求人会社が休業を余儀なくされたのであれば,その事実を示す書証を提出すべきであるし,全社員が就業できない状態であったのであれば,その事実を示す書証を提出すべきである。被請求人会社の所在地である東京都において,これまでに4度の緊急事態宣言が発出されているものの,緊急事態措置はコロナ禍が始まってから途切れることなく実施されていたわけではない。緊急事態措置期間と要証期間が重なるのは,4度の緊急事態宣言のうち,最初の2回のみである。そもそも,このような理屈が通用するのであれば,不使用による商標登録取消審判において,被請求人はコロナ禍により使用できていないとさえ述べれば商標登録の取消を免れることになってしまい,到底是認されるものではない。コロナ禍により経済活動が制限された側面はあったとしても,それをもって商標法第50条第2項ただし書の「正当な理由」に該当するということはできない。
(2)被請求人提出の証拠について触れると,乙第3号証の2の作成日は,被請求人提出の証拠説明書によれば,平成29年4月4日となっているが,当該日にこの書証が作成されたことを裏付ける資料は何ら提出されていない。もっとも,当該日は要証期間外であると共に,乙第3号証の2に表示されている標章は本件商標とは別異の標章であり,該書証が本件商標の使用の事実を示すものでないのはもちろんのこと,不使用についての正当な理由を示す証拠となるものでもない。
また,被請求人は,被請求人会社と取引先である大手製薬企業とのメールの写しであるとして,乙第5号証を提出している。このメールは,送信日が2020年2月20日であることは窺えるものの,送信先(To)アドレス等は黒塗りされており判別できず,送信先(Cc)のメールアドレスに至ってはヤフーやグーグルのフリーメールのアドレスであるが,大手製薬企業の社員がこのようなフリーメールのアドレスを業務上使用しているとは到底考えられない。加えて,メール本文には「歯髄幹細胞培養上清にご興味を持っていただき感謝申し上げます。」と記載されているにもかかわらず,被請求人がメールの添付物と主張する資料は「創傷被覆材」に関するものであり関連性がなく,該資料がこのメールの添付物であったとする被請求人の主張は信憑性がない。もっとも,該資料に表示されている標章は本件商標とは別異の標章であり,乙第5号証が本件商標の使用の事実を示すものでないのはもちろんのこと,不使用についての正当な理由を示す証拠となるものでもない。
なお,前記答弁書において,被請求人は,本件商標からいかなる称呼が生じるか,本件商標と請求人商標との類否等について種々述べているが,本件審判において被請求人が立証すべきは,要証期間内の本件商標の使用の事実又は不使用についての正当な理由があることなのであって,本件商標から生じる称呼や本件商標と請求人商標との類否は一切関係がなく,被請求人の主張は失当といわざるを得ない。
(3)以上のことから,乙各号証のいずれをもってしても,商標法第50条第2項で定める登録商標の使用を証明するに十分なものではなく,本件商標の使用を証明したということはできないし,同項ただし書で定める登録商標を使用していないことについての正当な理由も明らかにされておらず,本件商標の商標登録は取り消されるべきである。
第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第6号証を提出した(枝番号を含む。)。
1 本件商標について
(1)構成態様及び称呼
本件商標は,別掲のとおり,ロゴデザインした欧文字「P」と欧文字の「remex」の文字を組み合わせたものであり,そのため,生じる称呼は「プリメックス」であり,「レメックス」又は「リメックス」ではない。
(2)指定商品又は指定役務及び審査経過
本件商標は,第3類,第5類,第35類及び第44類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として,2016年8月17日に登録出願,2017年2月17日に設定登録されたものである(乙1)。
本件商標については,2016年12月26日付けで拒絶理由通知を受けたため,使用予定のない指定商品を削除する補正を行ったものの,意見書において,本件商標の称呼については何ら言及をしていない。
本件商標の称呼については,本件商標の商標公報(乙1)において,【検索用文字商標】の欄には「PREMEX」と記載されている。また,【称呼】の欄に「レメックス,リメックス」と記載されている理由は不明である。
本件商標は,指定商品から明らかなとおり,「石鹸類,医薬品」等に関連する商品,役務に付すものであるため,「リメックス」又は「レメックス」という称呼が生じる商標ではない。「リメックス」又は「レメックス」という称呼は,その語感から,一般的にはハード素材に使用されるものであり,医薬品・化粧品等に使用される称呼ではない。例えば,「レメックス」でインターネット検索を行うと,オフィスチェア,パソコンデスク等を販売しているレメックス・ジャパンがヒットする(乙2の1)。また,「リメックス」で同様に検索を行う空調設備施工会社,新素材を開発する会社等がヒットする(乙2の2)。
したがって,そもそも本件商標は,請求人の先行商標とはならないはずである。
2 本件商標の権利者及び使用の態様について
本件商標は,2017年4月4日付けの株式会社プリメックスのパンフレットに掲載されたとおりの態様で使用されていた。
株式会社プリメックスは,平成28年(2016年)6月23日に社名をQuarrymen&Medと変更し,平成29年(2017年)12月1日に株式会社Quarrymen&Co.に合併して登記簿が閉鎖となった。株式会社Quarrymen&Co.との合併を視野に入れて,株式会社Quarrymen&Co.が出願し,権利を取得したものであるため,乙第3号証の2に記載された株式会社プリメックスは,本件商標の権利者と同一人である(乙3の1)。
なお,株式会社Quarrymen&Co.は,2020年に社名を株式会社Cysayに変更しており(乙4の1),本件商標の登録原簿(乙4の2)でもそのように変更がされている。
その後,2020年初頭から,大手製薬企業と株式会社Cysayとの間で,請求に係る指定商品の製造開発についての協議が進んでいるが,コロナ禍の中で進行が遅れており,現在も協議が続いている。現在も協議中であるため上記企業名は明らかにできないが,2020年2月20日付けのメールで,同年2月19日に二社間で打ち合わせが行われており,その際に使用した資料を乙第5号証として提出する。
乙第5号証に明記されているように,今後,本件商標を付した商品を,「Premexシリーズ」として発売することを予定していること,また,創傷被覆材がその一つであることが明記されている。創傷被覆材は第5類の商品であり,その類似群コードは01C01である。そして,乙第6号証に示すように,「絆創膏」は,「傷口や患部の手当てに用いられる衛生材料の一種」であり,「創傷被覆材」である。
このことから,乙第5号証は,乙第1号証に示す態様で,請求に係る指定商品に使用されている予定があったことを証明するものである。
また,コロナウイルスの蔓延により,度重なる緊急事態宣言等が出されるという状況の下で,協議に時間を要している。
以上より,請求人の主張は事実誤認であり,請求人の主張が成り立たないことは明らかである。すなわち,被請求人には,本件審判の予告登録前3年以内に,日本国内において,本件商標を請求に係る指定商品について使用していなかったことについては,以上のような事情がある。そして,このことは,商標法第50条第2項の「正当な理由」に該当するものである。
3 まとめ
以上より,被請求人の提出した証拠は,被請求人が上記の商品について本件商標を要証期間内に使用していないことについて正当な理由があることを示すものである。
第4 当審の判断
1 本件商標を使用していないことの正当な理由について
(1)商標法第50条第2項ただし書にいう「正当な理由」とは,地震,水害等の不可抗力によって生じた事由,放火,破壊等の第三者の故意又は過失によって生じた事由,法令による禁止等の公権力の発動に係る事由その他の商標権者等の責めに帰すことができない事由(以下,「不可抗力等の事由」という。)が発生したために,商標権者等において,登録商標をその指定商品又は指定役務について使用することができなかった場合をいい,また,不可抗力等の事由の発生と登録商標の不使用との間には,因果関係が存在することを要するものと解すべきであり,さらに,当該因果関係が存在するというためには,不可抗力等の事由が発生した時点における,商標権者等の登録商標使用の具体的準備の有無・程度を前提とし,その時点から予告登録までの間が,仮に当該不可抗力等の事由の発生がなかったとすれば,登録商標の使用に至ることができたと認めるに足りる程度の期間であり,かつ,当該不可抗力等の事由が,その発生により,上記期間内に商標権者等が登録商標の使用に至ることを妨げたであろうと客観的に認め得る程度のものであることを要すると解すべきである。(知的財産高等裁判所 平成19年(行ケ)第10227号判決)
(2)被請求人の主張及び提出された証拠によれば,以下のとおりである。
ア 被請求人は,被請求人と大手製薬企業とされる企業(以下,「製薬企業」という。)との間で,請求に係る指定商品の製造開発についての協議が進められており,2020年2月20日付けのメールが送信され,またその前日に二社間で打ち合わせが行われた(乙5)旨主張する。
しかしながら,乙第5号証のメールには,2020年2月20日の日付と,メール本文における「弊社の歯髄幹細胞培養上清にご興味を持っていただき感謝申し上げます。」,「昨日、私が使いましたスライドのパワーポイント版(市場情報を含む)を、お届け申し上げます。」といった記載は見られるものの,請求に係る指定商品や創傷被覆材についての記述は一切見られない。また,乙5の2葉目には創傷被覆材についての資料が添付されているが,上記のメール本文と整合が取れないことから,そもそもこれが1葉目のメールに添付された資料であるか不明である。仮にメールに添付された資料であったとしても,当該資料は,主に創傷被覆材の市場規模や動向が記載されているものであり,最後に「・Premex(商標登録第5923830号)シリーズの一つとして検討。」の一文が見られるのみである。
イ 被請求人は,新型コロナウイルスの蔓延により,度重なる緊急事態宣言等が発出されるという状況の下で,協議に時間を要している旨主張するものの,具体的な影響についての説明及び裏付けのための証拠の提出はない。
ウ 乙第5号証以外に,製薬企業とのやり取りを示す証拠は提出されていない。また,その他,請求に係る指定商品について,本件商標の使用の具体的準備を示す証拠は見当たらない。
(3)上記(2)によれば,以下のとおり判断できる。
ア 2020年2月20日の時点において,仮に被請求人が創傷被覆材の市場動向等についての記述が見られる資料を製薬企業に送付したとしても,メール本文には,創傷被覆材又は請求に係る指定商品についての具体的な協議に関する記載は見あたらないことからすれば,請求に係る指定商品の製造開発についての協議が進められていたと認めることはできない。加えて,乙第5号証以外に製薬企業とのやり取り等の資料の提出はない。
その他,被請求人が,本件商標を,請求に係る指定商品に使用する具体的準備を行っていたことは確認できない。
以上よりすれば,2020年2月20日の時点で,被請求人と製薬企業との間で請求に係る指定商品についての事業計画や協議等が具体的に進展していたと認めることはできず,その他,請求に係る指定商品について本件商標の使用の準備が具体的に進められていたと認めることはできない。
イ 被請求人は,コロナウイルスの蔓延により,度重なる緊急事態宣言が発出されるという状況の下で,製薬企業との協議に時間を要している旨主張するが,例えば行政機関から営業自粛等の要請又は命令を受けているといったような具体的な不可抗力等の事由は何ら示されていない。また,2020年2月20日から要証期間の終期までは1年以上の期間があるところ,そもそも緊急事態宣言が要証期間中,継続していたわけではなく,例えば東京都における1回目の緊急事態宣言終了(令和2年5月25日まで)から2回目の緊急事態宣言開始(令和3年1月8日から)まで半年以上の期間がある。さらに,仮に緊急事態宣言の直接的な影響によって事業計画に支障が生じたとしても,製薬企業との間で連絡や協議を継続するなど一定程度の進展があって然るべきである。
以上よりすれば,仮に緊急事態宣言の発出がなかったとすれば,要証期間内に本件商標の使用に至ることができたと認めるに足りる客観的な事情が存すると認めることはできない。
ウ 上記ア及びイからすれば,2020年2月20日時点又は緊急事態宣言の発出時点において,被請求人が,請求に係る指定商品について本件商標の使用の準備を具体的に進めていたと認めることはできず,また,仮に緊急事態宣言の発出がなかったとすれば,要証期間内に本件商標の使用に至ることができたと認められる客観的な事実を把握することもできないから,新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発出と,本件商標の不使用との間に,因果関係が存在するということはできない。
(4)上記(3)よりすれば,被請求人が主張する事由は,その責めに帰すことができない事由と認めることはできないから,商標法第50条第2項にいう「正当な理由」には当たらないというべきであって,その他,本件に関し,上記「正当な理由」があるとみるべき特段の事情も見当たらない。
2 本件商標の使用の有無について
被請求人は,前記第3のとおり,要証期間に,請求に係る指定商品について本件商標を使用していることについては,何ら主張,立証していない。
なお,乙第3号証の2においては,「Premex」の文字よりなる標章が確認できるものの,その構成態様は本件商標と大きく異なるものであり,また掲載されている商品も請求に係る指定商品とは異なるものである。
3 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間に日本国内において,商標権者,通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが,請求に係る指定商品について,本件商標を使用していた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件商標を請求に係る指定商品に使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしたともいえない。
したがって,本件商標の登録は,その指定商品及び指定役務中,第5類「絆創膏,ガーゼ,医療用シート状粘着テープ,医療用粘着テープ」について,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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