商標取消審判
2021-300117
バリスタ
- 審判番号
- 2021-300117
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1999-106491
- 登録番号
- 4424558
- 請求日
- 2021年02月22日
- 審決日
- 2022年09月28日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オートリー、アクチエボラーグ
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】外川 奈美
- 【被請求人】アルプロ コム.ヴィーアー.
- 【被請求人代理人】達野 大輔
- 【被請求人代理人】竹中 陽輔
- 【被請求人代理人】中山 真理子
- 【被請求人代理人】山頭 めぐみ
- 審判長/審判官
- 審判長 小松 里美
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T132 .1 -Y (Z29)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第2項、商標法第50条第1項、商標法第50条、商標法第2条第3項、商標法第35条、特許法第98条第1項第1号、商標法第2条第3項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4424558号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第4424558号商標(以下「本件商標」という。)は、「バリスタ」の文字を標準文字で表してなり、平成11年11月19日に登録出願、第29類「乳製品,食用油脂」を指定商品として、同12年10月13日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和3年3月8日である。
なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成30年(2018年)3月8日ないし令和3年(2021年)3月7日である(以下「要証期間」という場合がある。)。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第29類「乳製品」を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書、審判事件弁駁書及び令和4年6月30日付け意見書において要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者により、第29類の指定商品中「乳製品」について使用されている事実はなく、また、本件商標について、専用使用権、通常使用権による使用の事実もないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人が提出した審判事件答弁書及び証拠方法からは、要証期間に我が国において第29類「乳製品」について本件商標が使用されている事実を認めることができない。
また、被請求人は令和3年3月9日に商標権の移転を受けたことが特許庁に登録されたところ、本件審判請求の登録日はその前日の同月8日であるから、被請求人は、要証期間の使用証拠の提出ができないはずであり、その点も疑義がある。
請求人は、以下のとおり、証拠方法ごとにその理由を述べる。
(1)本件商標の商標権者ないし使用許諾者による使用と認められないことについて
ア 乙第1号証について
被請求人は、本件商標について株式会社明治(以下「旧商標権者」という場合がある。)とフランスのコンパニ ジェルヴェ ダノン(以下「ダノン社」という。)の間で譲渡交渉が行われ、令和3年2月3日付けで商標権譲渡契約書(乙1)が締結され、同年3月9日付けでダノン社の関連会社である現商標権者(「アルプロ コム.ヴィーアー.」。以下「アルプロ社」という。)への移転登録が行われた旨説明しているが、「ダノン」の名前が登場するのは冒頭の「BACKGROUND(背景)」の「B」項の「アルプロ社はダノングループに属し(被請求人訳)」という契約の背景事実の説明部分のみであって、契約の中身自体には一切登場しない。本件「商標権譲渡契約」の当事者は当該契約書の署名欄にあるとおり「株式会社明治」と「アルプロ社」の2社のみであり、ダノン社ないしその関連会社は一切含まれていない。
したがって、上記契約書にダノン社ないしその関連会社が関与していることは、明らかではなく、ダノン社ないしその関連会社は、上記「商標権譲渡契約」に一切関与していないとみるのが客観的に合理的かつ妥当であって、ダノン社ないしその関連会社は、本件商標に関する証拠を提出する立場にないといわざるを得ない。
また、上記契約書中「BACKGROUND(背景)」の「B」項では「アルプロ社は、国際分類第29類のアルプロ商品にBARISTAを国際的に使用している(被請求人訳)」とあるが、「国際的」に「日本」が含まれているか明確ではなく、また、ここで言及されているのは「BARISTA」という商標のみであり、これが本件商標と社会通念上同一とされ得ないことは後述する。
さらに、旧商標権者がダノン社と商標権譲渡交渉を行っていたことを立証できる証拠資料は一切提出されていない。通常、企業間の契約交渉が全て口頭で行われることはなく、メールや契約書案のやり取りを示す書面は多く存在するであろうところ、これらが証拠として提出されていないことに疑問を感じる。
したがって、これに続く黙示の使用許諾の合意があった旨の主張についても、契約の当事者外であるダノン社ないしその関連会社に適用がないと考えるのが至当である。
イ 乙第3号証について
被請求人は、本件審判請求後に用意された「令和3年7月9日付け陳述書」(乙3)において、「旧商標権者は、契約締結日(令和3年2月3日)から移転登録完了日(令和3年3月9日)までの期間については、『ダノン社、アルプロ社又はその関連会社が(略)本件商標を使用することについて事実上許諾していたことに相違ありません』と明確に述べている」と主張しているが、「本件商標を使用することについて事実上許諾」していた対象商品が明確ではない。もし、これが「本件指定商品についての許諾」であると解釈できたとしても「令和3年2月3日から同3月9日まで」の「約1か月」程度の短期間に限定されており、乙第9号証の証拠の信ぴょう性に後述のとおり合理的疑義があるから、これを使用証拠と認めることはできない。
ウ 乙第13号証について
被請求人は、本件において譲渡交渉を担当したのはフランスのダノン社、現商標権者となったのはアルプロ社、日本における輸入、販売を行っているのはダノンジャパン株式会社(以下「ダノンジャパン社」という。)であるところ、いずれもフランスのDANONEの傘下企業である(乙13)としているが、ダノン社及びダノンジャパン社は、本件商標に係る商標権譲渡契約(乙1)の当事者ではないから、本来、法的に明示でも黙示でも正当な商標使用被許諾者たり得ない。これらの企業の関係図(乙13)を示されても、ダノンジャパン社が本件商標を本件指定商品に使用する権原ないし使用許諾を受けていることについて合理的な法的根拠となるものではない。
したがって、乙第10号証ないし乙第12号証は本件商標に関する証拠としての合理的かつ正当な根拠に欠けるものである。
(2)本件商標の商標第50条第2項に定める「使用」が認められないことについて
ア 乙第6号証ないし乙第8号証について
(ア)被請求人が提出した「日本の需要者向けに、本件商標及び本件商標と社会通念上同一の商標を使用した商品『オーツミルク』を紹介したウェブサイト」(乙6,乙7)は、ウェブサイトの掲載日の記載もなければ、ウェブサイトのアドレスもなく見受けられず、よって、乙第6号証及び乙第7号証の内容が掲載されているウェブサイトの存在の事実すら立証できるものではないし、それが要証期間のものかどうかも判別することができない。
(イ)被請求人は、「Wayback Machineにおいて、乙第6号証と同一のURLを有するサイトのアーカイブ版を抽出したものである」(乙8)と主張しているが、「URL」自体が不詳なのに、なぜアーカイブによって抽出できるのか不明である。さらに、乙第8号証には「saved 4 times between September 22,2020 and February 28,2021」とあるが、当該「4回」が具体的にいつなのかは明らかでない。また、キーワードとされている「https://www.alpro.com/jp/barista/」というウェブサイトのアドレスは、乙第6号証及び乙第7号証に全く見受けられないから、当該アドレスによるサイトが要証期間に乙第6号証及び乙第7号証と同一内容を表示していたかも定かではないし、これらウェブサイトが公衆の閲覧に供された事実があったかどうかも明らかではない。
(ウ)「商標が、出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているといえない場合は、形式的には商標法第2条第3項各号に掲げる行為に該当するとしても、当該行為は、商標の使用に当たらないと解する」のが通説・判例であるところ(甲3~甲5)、商標法第50条第2項の「使用」というためには、本件商標「バリスタ」が独立して本件指定商品について出所表示機能を発揮する態様で使用されていることが必要である。
乙第6号証には、冒頭に大きな文字で「SPECIALLY CRAFTED FOR BARISTAS」(請求人訳:「バリスタのために特別に作られた」)と書された下に、当該文字の10分の1程度の小さなフォントで「バリスタのためのオーツ麦から生まれたミルク。ALPRO バリスタシリーズ」という記載があり、「バリスタのための・・・」という部分は商品の説明文の一部にすぎず、独立して出所標識機能を果たしていないので、これを本件商標の使用ということはできない。
また「ALPRO バリスタシリーズ」という記載中「バリスタシリーズ」との記述は、「バリスタのための製品群」という一体的意味合いを看取できるところ、「バリスタ」部分のみを分離して認識、把握すべき必然性はない。むしろ、「バリスタ」の語は、イタリア語「barista」を語源とし、「バールのカウンターに立ち、客からの注文を受けてエスプレッソをはじめとするコーヒーを淹れる職業、およびその職業についている人物をいう」と定義するもので(甲6)、昨今、「コーヒー」のみならず、広く飲食料品に精通した者について「バリスタ」という表現が用いられ、「バリスタ」の語自体が、本件指定商品「乳製品」を含む飲食料品について専門的知見や経験を有する者を広く指称するものという認識が広く一般化しつつある中で、「特定の商品群」を指称する「シリーズ」の語と親和性があり、相互に結合しやすい語である。
したがって、これら証拠中の「バリスタシリーズ」は、外観表記の観点からも同書、同大で一連にまとまりよく書されていることから、常に一体不可分にのみ捉えられるとみるのが妥当であり、この文章中で出所標識機能を果たし得るのは、「バリスタシリーズ」の前にスペースを空けて欧文字で書かれた「ALPRO」部分のみであると考えるのが合理的かつ自然である。
そして、乙第6号証2葉目には「ALPRO(アルプロ)バリスタシリーズはヨーロッパで人気の植物性飲料ブランドALPROが提供する、バリスタ特別仕様のラインアップです」という説明文があり、この中でも「バリスタ」の語は明らかに説明文章中に埋没しており、上記のような態様で使用する限り、「バリスタ」の語は独立して自他商品識別機能を発揮し得るものではない。
そうすると、これら証拠は、本件商標「バリスタ」が独立して特定の商品の出所標識として使用されているとはいえず、特定の商品の出所標識として用いられているのは識別力の高い要素である「ALPRO(アルプロ)」のみであるから、商標法第50条第2項に定める使用に当たらないことが明らかであり、これに反する証拠もない。
(エ)商品本体の画像写真には「BARISTA」の語が見受けられるが、「バリスタ」の英語訳には「BARISTA」のほか「VARISTOR(2つの電極を持つ電子部品)」という意味合い(甲7、甲8)もあるから、この「BARISTA」は本件商標と「社会通念上の同一」ではない。
イ 乙第9号証について
(ア)被請求人は、「乙第9号証は、令和3年2月28日にオンライン上に存在していたhttp://www.alpro.com/jp/barista/の内容である」と主張し、同号証の上段部には「The Wayback Machine」の語と「20210228」という数字があるが、当該上段表示部分とウェブサイトの内容そのものが当初から同一紙面にあったものか、後から「上段部」がウェブサイトの内容の写しに貼りつけられたものなのか定かではない。
(イ)乙第9号証に記載の「バリスタのためのオーツ麦から生まれたミルク。」、「ALPROバリスタシリーズ」、「ALPRO(アルプロ)バリスタシリーズはヨーロッパで人気の植物性ブランドALPROが提供する、バリスタ特別仕様のラインアップです」という説明文において、本件商標が独立して特定の商品の出所標識として使用されているとはいえないこと、商標法第50条に定める使用に当たらないことが客観的に明らかであることは、上記アにおいて述べたとおりである。
(3)乙第10号証ないし乙第12号証について
被請求人は、「乙第10号証は、ダノンジャパン社から発表された令和2年9月15日付けニュースリリースである」、「乙第11号証は、令和2年9月25日付け食糧新聞の関連記事である。この記事では、ダノンジャパン社が、『ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク』の出荷を開始したことを紹介している。」、「乙第12号証は、令和2年12月3日付け食品化学新聞の関連記事である。この記事では、ダノンジャパン社が、『ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク』の販売を開始したことを紹介している。」と主張している。
しかしながら、ダノンジャパン社は、本件商標の譲受人でも、明示ないし黙示でも使用許諾者でもないところ、これら証拠を提出する法的立場になく、法的権原もない。また、上記日付はいずれも乙第3号証の使用許諾期間の範囲外で、これら証拠を採用すること自体に合理性や正当性がない。さらに、各証拠のいずれにおいても本件商標は独立して特定の商品の出所標識として使用されていない。
3 意見書の要旨
(1)被請求人は、乙第14号証の陳述書を追加提出し、「ウェブサイトhttps://www.alpro.com/jp/barista/は、被請求人が所有するドメインネームであり、被請求人が主体となり同ウェブサイトを運営している」旨主張しているが、同号証で陳述しているのは、ダノンジャパン社の社員にすぎず、被請求人との関係が不詳である。
また、被請求人がドメインネームを保有していることやウェブサイトを運営していることは、本件商標が要証期間に指定商品について商標的使用がされたことの直接的証拠とはなり得ない。
さらに、被請求人は、乙第14号証の別紙7によって「本件ウェブサイトが令和3年2月3日から同年3月7日までアクセス可能であったこと」を示そうとしているが、これが真正な証拠であったとしても、同号証には1日当たり多くて2件か3件クリックされているだけであり、これをもって「業として(事業として)」の使用といえるかについて甚だ疑問がある。
(2)「ダノンジャパン社のニュースレター」(乙10)において、同社が「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」を、令和2年9月17日から日本国内のカフェ・レストランに向けて出荷を開始することが発表され、また新聞記事(乙11、乙12)にも、同旨の記載はあるが、令和3年2月3日以前の期間について、現商標権者又はダノンジャパン社が前商標権者から通常使用権の許諾を得ていたことが確認できないとの点について、被請求人は回答していない。
(3)被請求人は、「「BARISTA」という商標を使用している商品(以下「本件商品」という場合がある。)は、乙第14号証に添付している別紙1又は2の態様であり」と主張しているが、これらはいずれも本件商標と社会通念上同一の商標ではない。また、被請求人は「本件商品を国内に輸入後に、当該別紙1の2頁目及び別紙2の3頁目のように日本語表記のシールをパッケージ裏面に添付し」と説明しているが、当該シール上に付されている表示も本件商標ないしこれと社会通念上同一の商標とみることはできない。
(4)被請求人は、本件商品をEU域内から輸出し、令和3年2月3日から同年3月7日までの期間に、本件商品が日本で輸入され、国内で販売されていることを立証しようとしているが、当該商品の出所標識として本件商標ないしこれと社会通念上同一の商標が、本件指定商品に関する独立した出所標識として使用されていない以上、意味のある主張立証ではない。
(5)被請求人は、審判便覧を引用し、「BARISTA」が本件商標と社会通念上の同一である主張の根拠として「ラブ(らぶ)」には「love」(愛)の他に同音表記の「lab」(実験室)や「rub」(摩擦する)など、種々の英単語がある旨主張するが、これは審判便覧の例示のごく一例のみを取り上げた上での詭弁にすぎず、不使用取消審判制度の制度趣旨(甲9)を考えれば、むやみに「社会通念上同一」の範囲を拡大解釈すべきではなく、また、使用をしなくなれば取り消されてもやむを得ない。
この観点から、「社会通念上の同一の商標」は、「社会一般に通用する常識」(甲9)からして、「同一の称呼及び観念を生じる商標」、すなわち「商標の構成から生ずる『呼び名』及び『意味・内容』のいずれをも同じくする商標」(甲9)に限定されるべきである。
インターネット上の一般的な英語の辞書で「バリスタ」に相応する英文字を検索したところ、(ア)「ballista」(カタカナ発音)、(イ)「barista」(イタリア語)(カフェでエスプレッソコーヒーをつくる専門職人)、(ウ)「barrister」(カタカナ発音)、(エ)「varistor」(【略】QvR)と様々かつ複数の英文字が発見された(甲10)。またウィキペディアでは、「バリスタ」とは「(ア)バリスタ(電子部品)(英語:varistor)(イ)バリスタ(兵器)(ラテン語:ballista)(ウ)法廷弁護士(英語:barrister, barrister-at-law)のこと。(エ)バリスタ(コーヒー)(イタリア語:barista)(オ)ネスカフェ バリスタ(カ)バリスタ(漫画)(キ)バッリスタ(Ballista)バリスタ(Balista)とも。」と多数の意味合いが記載されている(甲11)。
これらの証拠に鑑みると、本件商標「バリスタ」について「BARISTA」は「商標の構成から生ずる『意味。内容』を同じくする商標」と認めることはできないため、「社会通念上の同一商標」に該当しないと判断するのが極めて自然であり合理的である。
(6)まとめ
上述のとおり、被請求人から提出された証拠は、本件商標ないしこれと社会通念上同一の商標が、独立して、特定の商品の出所標識として使用されている形跡は一切見受けられず、被請求人が提出した証拠方法からは、要証期間に取消対象の第29類「乳製品」について商標法第50条第2項に定める使用事実を認めることはできない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を審判事件答弁書及び令和4年4月15日付け回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標は、以下のとおり、要証期間に、アルプロ社(現商標権者)、ダノンジャパン社によって指定商品「乳製品」について使用されていた。
(2)本件登録の譲渡について
本件商標は、平成22年及び令和2年に更新された後、株式会社明治(旧商標権者)とフランスのダノン社の間で譲渡交渉が行われ、令和3年2月3日付けで商標権譲渡契約書(乙1)が締結され、同年3月9日付けでダノン社の関連会社である現商標権者への移転登録が行われた(乙2)。
(3)通常使用権の許諾について
ア 本件商標の譲渡及び本件審判を時系列で並べると、以下のとおりである。
令和2年10月 旧商標権者とダノン社の間で商標権譲渡に関する交渉を開始
令和2年12月3日 旧商標権者とダノン社の間で商標権譲渡に関する基本合意
令和3年2月3日 旧商標権者と現商標権者の間で商標権譲渡契約書が締結
令和3年3月8日 本件審判の請求の登録
令和3年3月9日 本件商標の移転登録
イ 要証期間に本件商標をその指定商品に使用していたのは、現商標権者及びその関連会社であったが、移転登録が完了したのが令和3年3月9日であるため、商標法上は、同日までは旧商標権者が本件商標の商標権者であり、現商標権者及びその関連会社は、本件商標の商標権者ではなかった(商標法第35条、特許法第98条第1項第1号)。したがって、令和3年3月9日までの現商標権者及びその関連会社の法的位置づけについて説明する。
旧商標権者とダノン社の間で商標権の譲渡に関する基本合意が成立した令和2年12月3日から移転登録完了日(令和3年3月9日)までの期間、現商標権者及びその関連会社ダノンジャパン社は、本件商標に関する「通常使用権者」として本件商標を使用していた。ただし、本件においては、明確な証拠のある「契約締結日(令和3年2月3日)」からの使用に焦点を当てる。
本件においては、契約締結日から移転登録完了日までの約1か月間、旧商標権者、ダノン社、現商標権者は遅滞なく特許庁における移転登録の準備・手続を行っていたところ、この短期間の「登録商標の使用」について、書面において「登録商標の使用許諾契約書」を締結したわけではないが、同期間内において現商標権者及びその関連会社が「本件商標をその指定商品について使用すること」について、旧商標権者は合意をしていた。使用許諾契約は必ずしも書面により合意する必要はなく、口頭の契約であっても有効に成立することは民法の基本原則であるところ、本件使用許諾に関しても、両当事者間で書面による「使用許諾契約書」を締結しなかったものの、「登録商標の使用を許諾する合意」が存在していたことは、「現商標権者及びその関連会社が登録商標を使用すること」を前提に譲渡交渉が行われ、譲渡契約書が締結された事実から、「旧商標権者が、事実上、譲受人の登録商標の使用を許諾していた」ことは当然である。
また、譲渡契約書「BACKGROUND(B)」において、「アルプロ社はダノングループに属し」、「アルプロ社は、国際分類第29類のアルプロ商品にBARISTAを国際的に使用している」ことを明記していることからも、旧商標権者にとって、現商標権者、ダノン社(交渉相手)、その関連会社が、本件商標を既に使用している、若しくはすぐに使用することを認識していたことは明らかである。すなわち、旧商標権者は、遅くとも譲渡契約締結日(令和3年2月3日)の段階では、アルプロ社とその関連会社がBARISTAを現に使用していること、又はすぐに使用することを明確に認識しており、この使用に対して異議なども申し立てていない。したがって、旧商標権者と現商標権者の間において、「アルプロ社とその関連会社がBARISTAを使用することに関して合意があった」と考えるのが合理的である。
令和3年7月9日付け陳述書(乙3)においても、旧商標権者は、契約締結日(令和3年2月3日)から移転登録完了日(令和3年3月9日)までの期間については、「ダノン社、アルプロ社又はその関連会社が(略)本件商標を使用することについて事実上許諾していたことに相違ありません」と述べている。
ウ 「商標権の移転契約が移転登録の完了するまでの間につき通常使用権を許諾する黙示の合意を含むものと解し、当該合意に基づく通常使用権者の商標の使用が肯定された事例」(乙4)である知財高判平成26年7月17日(平26(行ケ)10037号)(乙5)に鑑みれば、本件においても、「移転登録前と言えども本件商標を使用できることは当事者間の当然の前提」であり、旧商標権者自身、「アルプロ社とその関連会社がBARISTAを現に使用していること、又はすぐに使用すること」を明確に認識していたものである。
したがって、商標権の移転契約が「通常使用権を許諾する黙示の合意を含むもの」と解すべきであり、また、当該合意に基づく通常使用権者の商標の使用を肯定すべきである。
(4)本件商標の「乳製品」についての使用事実について
現商標権者及びその関連会社は、要証期間に本件商標及び本件商標と社会通念上同一の商標を「乳製品」について使用していた(乙6~乙12)。
ア 乙第6号証及び乙第7号証は、日本の需要者向けに本件商標及び本件商標と社会通念上同一の商標を使用した商品「オーツミルク」を紹介したウェブサイトである。なお、「オーツミルク」とは「オーツ麦からできたミルク」であり、第29類「乳製品」に属する商品である。
イ 乙第8号証及び乙第9号証は、Wayback Machineにおいて、乙第6号証と同一のURLを有するサイトのアーカイブ版を抽出したものである。乙第8号証によれば、乙第6号証のウェブサイトは遅くとも令和3年1月18日から存在し、乙第6号証と同様の態様で提供されていた。乙第9号証は令和3年2月28日にオンライン上に存在していたhttps://www.alpro.com/jp/barista/の内容であり、同日の時点で、同サイト上において本件商標及び本件商標と社会通念上同一の商標が商品「オーツミルク」に使用されている。
したがって、乙第6号証ないし乙第9号証により、本件商標及び本件商標と社会通念上同一の商標が第29類「乳製品」について要証期間に使用されていたことは明らかである。
ウ 乙第10号証は、ダノンジャパン社の令和2年9月15日付けニュースリリースであり、「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」を令和2年9月17日から日本全国のカフェ・レストラン向けに出荷することが発表されている。同号証内の商品写真から本件商標と社会通念上同一の商標が第29類「乳製品」に使用されていることが明らかである。
なお、乙第10号証には、(ア)アルプロ社がダノン社の傘下企業であること、(イ)ダノンジャパン社も同様にダノン社の傘下企業(100%子会社)であり、(ウ)ダノンジャパン社が日本における該当商品の輸入者であることなどが明記されている。
エ 乙第11号証は、令和2年9月25日付け日本食糧新聞の関連記事であり、ダノンジャパン社が「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」の出荷を開始したことを紹介している。同記事の商品紹介写真において、本件商標と社会通念上同一の商標が第29類「乳製品」に使用されていることが示されている。
オ 乙第12号証は、令和2年12月3日付け食品化学新聞の関連記事であり、ダノンジャパン社「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」の販売を開始したことを紹介している。
(5)ダノン社、アルプロ社、ダノンジャパン社の関係について
本件においては、譲渡交渉を担当したのはフランスのダノン社、現商標権者となったのはアルプロ社、日本における輸入、販売を行っているのはダノンジャパン社であるところ、乙第13号証のとおり、いずれもフランスのDANONEの傘下企業である。チャート上の数字はそれぞれの持分比率である。
なお、アルプロ社に関しては、商標権譲渡契約書における名称は「ALPRO」、登録原簿上の名称は「アルプロ コム.ヴィーアー.」となっているが、これらの会社は同一の会社である。会社名称が異なるのは、法形式上のsuffixをつけているか否かの違いである。具体的には「ALPRO」がベルギーの商業登記簿に登録されている公式の名称であり、後ろに付けられた「Comm.VA」はlegal formで、商業登記簿に登録された名称の一部ではない。状況に応じてこの「Comm.VA」をつけることもあるため、その名称を「ALPRO Comm.VA」として使用することもあるというのが実情であり、我が国の商標登録原簿においては、この「ALPRO Comm.VA」という名称で移転登録を行った。
2 回答書の要旨
(1)新たな証拠について
被請求人は、回答書と共に新たな証拠を提出する(乙14~乙22)。
ア 乙第14号証は、ダノンジャパン社マーケティング部マーケティングマネジャーALPRO&DNYの陳述書であり、その要約は以下のとおりである。
(ア)被請求人及びダノンジャパン社は、いずれもダノン社の傘下企業であり、被請求人は本件商標を使用している本件商品の製造、販売を行い、ダノンジャパン社は日本でその輸入、販売を行っている。
(イ)本件商品は、添付した別紙1又は2の態様であり、国内へ輸入後に、当該別紙1の2頁目及び別紙2の3頁目のように日本語表記のシールをパッケージ裏面に添付し、その商品番号として「161608」を本件商品に付している。また別紙1の2頁目及び別紙2の8頁目のバーコード下に記載のある「5411188132110」についても、本件商品を識別する番号として、販売開始以来現在まで継続して表記している。商品パッケージは令和3年10月頃まで旧パッケージ(別紙1)を使用し、それ以降は新パッケージ(別紙2)を使用している。
(ウ)被請求人は、https://www.alpro.com/jp/barista/をURLとする日本の需要者向けのウェブサイトを令和2年9月15日に開設し、現在に至るまで当該ウェブサイトの運営を行っている。また、別紙4ないし7で、Googleアナリティクス(Googleが提供するウェブページのアクセス分析サービス)の結果を添付し、実際に当該ウェブサイトに「バリスタ」等の検索キーワードを使ってユーザ一から、令和3年2月3日から同3月9日の期間にアクセスがあった。
イ 被請求人の本件商品の輸入について
(ア)被請求人は、本件商品をEU域内から輸出し、令和3年2月3日から同年3月7日までの期間に本件商品が日本国内に輸入されている(乙17の1~4)。
乙第17号証の1は、被請求人からダノンジャパン社の商品倉庫行きの商品発送伝票(令和2年12月14日付)であり、同発送伝票の中の「Alpro Oat drink,For Professionals 8X1L」と書かれた商品が本件商品である。また、その2頁目に、商品番号「161608」と共に発送される商品の内容が明記されている。
乙第17号証の2は、商品発送伝票に記載された商品貨物がEU域内から日本のダノンジャパン社商品倉庫宛てに輸出されたことを示す「Export Accompanying Document」(2020年12月14日付)であり、上記商品発送伝票に記載された商品がEU域内から輸出された商品と同一のものであることは、以下の点から明確である。
a 乙第17号証の1に記載されたContainer番号:SEGU9320658が、乙第17号証の2の緑のハイライトの一番下の番号と一致している。
b 乙第17号証の1に記載されたShipment番号(1873583)が、乙第17号証の2の番号(1873583)と一致している。
c 乙第17号証の1に記載された貨物の総重量(17,560.380KG)が、乙第17号証の2に記載された貨物の総重量(17,560.380KG)と一致している。
d 乙第17号証の1に記載された発送商品の内容(Alpro Oat drink,For Professionals 8X1L等)が、乙第17号証の2に記載されている商品の内容と一致している。
(イ)乙第17号証の3は、被請求人からダノンジャパン社への請求書(2020年12月14日付)であり、上記商品発送伝票に記載され、EU域内から輸出された商品が購入者であり輸入者であるダノンジャパン社に販売され、商品がダノンジャパン社商品倉庫宛てに発送されたことを示すものである。請求書に記載された商品が上記商品発送伝票及び輸出許可証に記載された商品と同一のものであることは、以下の点から明確である。
a 乙第17号証の3に上述のContainer番号:SEGU9320658が記載されている。
b 請求書(乙17の3)に記載されている商品番号「161608」が、商品発送伝票及び輸出許可証に記載された商品番号と一致している。
c 乙第17号証の1に記載されたPacking list番号:82604701が、乙第17号証の3に記載された配送番号(82604701)と一致している。
d 乙第17号証の1及び2に記載された貨物の総重量(17,560.380KG)が、乙17号証の3に記載されている貨物の総重量(17,560.380KG)と一致している。
e 乙第17号証の1及び2に記載された商品の内容(Alpro Oat drink,For Professionals 8X1L等)が、乙第17号証の3に記載されている商品の内容と一致している。
(ウ)乙第17号証の4は、令和3年(2021年)2月12日に東京税関長が発行した貨物の「輸入許可通知書」である。同輸入許可通知書は貨物の日本への輸入許可が2月12日に行われたこと、輸入者がダノンジャパン社、仕出人が被請求人であることなどが明記されている。
本輸入許可通知書により輸入が許可された商品が、上記商品発送伝票、輸出許可証、請求書に記載された商品と同一のものであることは、以下の点から明確である。
a 乙第17号証の4の中央付近の仕入書番号の記載は、乙第17号証の2の番号「Z-380-0040502725」と一致している。
b 貨物個数3936や、貨物重量17,560,380KGMが、輸出許可証(乙17の2)等に記載された貨物個数、貨物重量と一致している。
ウ 国内での販売について
ダノンジャパン社は、被請求人から輸入した本件商品を、令和3年2月3日から同年3月7日までの期間に実際に販売しており、これを示す資料として、以下証拠を提出する(乙18、乙19の1~14)。
(ア)乙第18号証は、本件商品の納品先「タカナシ販売座間物流センター」に、当該期間に商品を納品した記録(出荷・納品リスト)であり、乙第19号証は乙第18号証(出荷,納品リスト)に対応した受領証である。これらから、以下の事実が明らかである。
a 本件商品(商品番号「161608」/アルプロ オーツプロフェッショナル 1LX8)(バーコード番号「5411188132110」)が、ダノンジャパン社からタカナシ販売座間物流センターに納品された。
b 商品の納品が令和3年2月3日から同年3月7日までの期間に行われた。
c 納品が行われた商品が、本件商品(商品番号「161608」/アルプロ オーツプロフェッショナル 1LX8)であること。乙第18号証のN列に記載の商品番号「161608」(アルプロ オーツプロフェッショナル 1LX8)は、乙第19号証の1ないし14の品目コードの欄にある商品番号と一致しており、それらの番号は乙第14号証の別紙1及び2に記載のある番号であり、上記商品発送伝票(乙17の1)、輸出許可証(乙17の2)、請求書(乙17の3)とも一致している。
また、乙第18号証のF列に記載の6桁目から10桁目までの数字(緑色ハイライト部分)は乙第19号証の1ないし14の左下の発注No.と完全に一致し、O列に記載の「5411188132110」は乙第14号証の別紙1及び別紙2記載のバーコード番号と一致している。
(イ)乙第19号証の1ないし14の受領書には、受領確認のための「タカナシ販売座間物流C」の担当者の署名がされており、本件商品が確かに当該期間にタカナシ販売座間物流Cに納品されていることが示されている。タカナシ販売座間物流Cには、受領確認を行う担当者が複数おり、担当者によって受領確認の署名をする場所が異なっている。ただし、受領署名ごとに見ると、署名をする場所(受領確認欄か、欄外か)は担当者により一貫している。
(2)弁駁書について
ア 「The Wayback Machine」で抽出した令和3年2月28日付でhttps://www.alpro.com/jp/barista/が存在していたことを示すページ(乙9)について、「The Wayback Machine」の画面そのものをコピーした写しを提出する(乙21)。「The Wayback Machine」のスニッピングツール画面により、乙第21号証のウェブサイトが当該期間に公開されていたものであることに疑義はない。
イ 被請求人が主張する、本件商標はいずれも社会通念上同一の商標ではないという点については、本件商品の中央部分に付された「BARISTA」は、以下の理由により社会通念上同一であるから、請求人の主張は合理的でない。
「ラブ(らぶ)」は、「love」(愛)と社会通念上同一とされている。ここで「ラブ(らぶ)」には、「love」(愛)の他に、同音表記の「lab」(実験室)や「rub」(摩擦する)など、種々の英単語があるが、「ラブ(らぶ)」と日本語表記した場合に、「love」が一般的に観念されることにより、社会通念上同一とされている。登録商標の使用に当たるか否かの認定に当たっては、登録商標に係る指定商品及び指定役務の属する産業分野における取引の実情を十分に考慮し、具体的な事例に基づいて判断すべきものである。
してみれば、本件商品の「乳製品」に属する産業分野における取引の実情に鑑みれば(乙10)、「BARISTA」からは、「variable」と「resistor」から由来する「varistor」(非直線性抵抗素子)の語は生じ得ない。よって、本件商品の中央部分に、他の語より大きく表示され、日本語のかっこ書きで付された「BARISTA」は、「バリスタ」と社会通念上同一の商標である。
なお、ダノンジャパン社は、本件商品の販促活動において片仮名「バリスタ」を使用している(乙15の1)。
第4 当審の判断
1 事実認定
(1)被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア ダノンジャパン社のニュースリリース及び新聞記事(乙10~乙12)
(ア)乙第10号証は、ダノンジャパン社が報道関係各位に宛てたニュースリリース(2020年9月15日付け)であり、第1頁には「・・・「ALPRO」から、バリスタ特別仕様のオーツミルクが登場 まろやかで滑らかな味わい、シルクのような舌触り、ラテアートにも最適な「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」」の見出しの下、「ダノンジャパン株式会社(本社:東京都目黒区・・・)は、ヨーロッパで人気の植物性食品ブランド「ALPRO(アルプロ)」から、バリスタ特別仕様の製品「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」を9月17日(木)より、全国のカフェ・レストラン向けに出荷を開始いたします。「ALPROバリスタシリーズ」は、・・・まさにバリスタのための植物性ミルクです。・・・ホットとアイス、どちらの状態にもよく馴染み、幅広いコーヒーの種類に対応し、その他のドリンクの割材としてもお使いいただけます。」の記載とともに、別掲1に示すとおりの商品パッケージ(包装)の画像が掲載され、当該パッケージの正面には、一部が欠け、かぎ括弧状の線内に大きく表された「BARISTA」の文字の表示がある。
また、第3頁には、「【製品特長】」として、「・「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」は、バリスタ特別仕様のオーツミルクです。」の記載があり、また、「【製品データ】」として「製品名/ALPRO(アルプロ) バリスタシリーズ オーツミルク」、「輸入者/ダノンジャパン株式会社」、「名称/オーツ麦飲料」、「原材料/オーツ(えん麦)・・・」の記載がある。
さらに、第3頁には、アルプロ社(http://www.alpro.com/jp/)について、「ALPRO(アルプロ)は1980年の創業当初より、大豆やオーツ麦といった植物素材の良さを活かすことにこだわった植物性食品ブランドです。・・・。日本では、ダノンジャパンが2020年4月より、オーツミルクおよび調製豆乳の展開を開始しました。ダノン(本社フランス、パリ)の傘下であるALPROは、ヘント(ベルギー)に本社を置き、ヨーロッパに1200人以上の従業員を擁し、ベルギー、フランス、英国に3つの製造拠点を有しています。」の記載がある。
そして、第4頁には、ダノンジャパン社(http://www.danone.co.jp)について、「ダノンは1980年に「味の素ダノン株式会社」として日本市場に初めて参入し、1992年に「カルピス味の素ダノン株式会社」を設立しました。2007年に100%子会社としてダノン傘下に入り、社名を「ダノンジャパン株式会社」に改めました。ダノンの日本法人であるダノンジャパン株式会社は・・・2020年4月より、新たに植物性食品「アルプロ」の販売を開始しました。」の記載がある。
(イ)乙第11号証は、日本食糧新聞の記事(2020年9月25日付け)であり、「ダノンジャパン ALPRO バリスタ仕様上市・・・」の見出しの下、「ダノンジャパンは17日、植物性食品ブランド「ALPRO(アルプロ)」から、バリスタ特別仕様製品「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」の出荷を開始した。全国のカフェ・レストラン向けに出荷を開始し、オーツミルクならではの味わいと舌触りを提供。・・・オーツ麦由来の自然な甘さで、ホットとアイス、どちらの状態にもよくなじみ、幅広いコーヒーに対応。」の記載とともに、別掲2に示すとおりの商品パッケージ(包装)の画像が掲載され、当該パッケージの正面には、一部が欠け、かぎ括弧状の線内に大きく表された「BARISTA」の文字の表示がある。
(ウ)乙第12号証は、食品化学新聞の記事(2020年12月3日付け)であり、「ダノンジャパン 植物性ミルク市場に注力 バリスタ仕様のオーツミルク販売」の見出しの下、「ダノンジャパンは、植物性食品ブランド「ALPRO」(アルプロ)から「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」を販売開始した。ラテアートなどバリスタ仕様として、泡立ち、きめ細かさなどの品質面にこだわった商品である。・・・欧米などで引き合いが強まる植物性ミルクにおける国内活性化を図る。」の記載がある。
イ アルプロ社からダノンジャパン社宛ての「Packing list」、「Invoice」等(乙17)
乙第17号証の1ないし4に係る「Packing list」、「EXPORT ACCOMPANYING DOCUMENT」、「Invoice」及び「輸入許可通知書」は、「Exporter」(輸出者)又は「輸入取引者/仕出人」をアルプロ社とし、「Consignee」(貨物受取人)又は「輸入者」をダノンジャパン社とする輸出入に係る一連の取引書類であって、商品名「Alpro Oat Drink,For Professionals 8X1L」、商品番号「161608」、Packing list番号「82604701」、Shipment番号「1873583」、Container番号「SEGU9320658」、総重量「17,560,380KG」等の記載が一致し、これらの書類上の日付である2020年12月14日ないし2021年2月12日にかけて、アルプロ社はダノンジャパン社に商品「Alpro Oat Drink,For Professionals 8X1L」(商品番号「161608」)を輸出し、ダノンジャパン社は同商品を我が国に輸入したことを示す記載がある。
ウ ダノンジャパン社からタカナシ販売座間物流センターへ宛てた送り状(受領証)(乙19)
乙第19号証1ないし14は、2021年2月3日から同年3月6日の間の日付を出荷日及び納品日とするダノンジャパン社がタカナシ販売座間物流センター(神奈川県座間市)に宛てた送り状(受領書)(以下「受領書」という。)であり、製品名「アルプロ オーツ プロフェッショナル 1LX8」、品目コード「161608」、JAN「5411188132110」に係る商品の出荷、納品についての記載があり、受領確認欄にタカナシ販売座間物流センターの担当者のものとされるサインが確認できる。
上記製品名「アルプロ オーツ プロフェッショナル 1LX8」及び品目コード「161608」は、上記イの輸出に係る商品名「Alpro Oat Drink,For Professionals 8X1L」と名称がおおむね一致し、かつ商品番号「161608」も一致しており、また、当該受領書の出荷(納品)時期(2021年2月3日~同年3月6日)と、上記イに係る輸出入の時期(2020年12月14日~2021年2月12日)も重複、近接している。
エ ダノンジャパン社の陳述書(乙14)
乙第14号証は、ダノンジャパン社において本件商品の商品企画及び販売促進業務に従事するマーケティング部マネージャー作成に係る令和4年4月15日付け陳述書(以下「ダノンジャパン陳述書」という。)であり、その要旨は次のとおりである。
(ア)アルプロ社及びダノンジャパン社について
アルプロ社及びダノンジャパン社は、いずれもフランスのダノン社の傘下企業であり、アルプロ社は本件商品の製造、販売を行い、ダノンジャパン社は日本における本件商品の輸入、販売を行っている。我が国において、ダノンジャパン社はアルプロ社の許諾の下で、本件商標を乳製品に使用している。
(イ)本件商品について
本件商品は、令和2年9月17日から、日本全国のカフェ・レストラン向けに出荷し、令和3年2月3日から同年3月9日の期間を含め、現在に至るまで、継続的に販売活動を行っている。
本件商品は、別掲3のとおりのパッケージデザインで、本件商品を欧州から輸入し、国内輸入後に日本語表記のシールをパッケージ裏面に添付し、国内で販売している。日本国内での販売開始以来、令和3年10月頃まで別掲3(旧パッケージ)にて販売しており、その後新しいパッケージデザイン(別紙2)へ変更しているが、常に「BARISTA」の文字を商品中央部分に表記している。また、四角で囲んでいる番号「161608」は、「BARISTA」商品を示す番号として、輸出、輸入時の商品番号として、また国内で流通させる際の商品番号として一貫して使用している。なお、JANコード「5411188132110」についても、当該製品を識別する番号として、販売開始以来現在まで継続して表記している。
オ 株式会社明治及び被請求人の間の商標権譲渡契約(乙1、乙3)
(ア)乙第1号証は、株式会社明治及び被請求人の間で2021年2月3日に作成、発効した「Agreement」(商標権譲渡契約書)であり、株式会社明治は、登録第4424558商標(本件商標)に係る商標権(片仮名の「バリスタ」:第29類「乳製品,食用油脂」)をアルプロ社に譲渡する旨の記載がある。
(イ)乙第3号証は、株式会社明治の知財戦略部商標Gに所属するG長により作成された令和3年7月9日付け陳述書(以下「明治陳述書」という。)であり、「先般、ダノン社から本件商標の譲渡の申入れを受けたことから、当社は、令和3年2月3日付けで譲渡契約を締結し、同日付けでダノン社の関連会社であるアルプロ社に対し、本件商標を譲渡した。また、本件譲渡契約上の譲渡日である令和3年2月3日以降、本件商標の移転登録が完了するまでの期間に関しては、・・・、ダノン社、アルプロ社及び関連企業が本件商標をその指定商品に使用していたことに異議がなく、これらの者が本件商標を使用することについて事実上許諾していた」旨の記載がある。
(2)上記(1)アないしオを総合すれば、以下の事実が認められる。
ア 上記(1)アに係るプレスリリース、新聞記事によれば、ベルギーのアルプロ社はオーツルミルク等の植物性食品の製造、販売を行う企業であり、日本ではダノンジャパン社がアルプロ社の製造に係る「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」(商品パッケージは別掲1及び2のとおり)を輸入し、2020年9月17日から我が国で同商品の販売を開始したといえる。なお、アルプロ社及びダノンジャパン社は、いずれもフランスのダノン社傘下の企業である(乙10~乙12)。
イ 上記(1)イ及びウに係る各種取引書類の記載によれば、製品(商品)に係る名称及び番号が一致し、輸出、輸入及び納品に係る時期も重複、近接していること、納品先の受領確認があることなどから、ダノンジャパン社は、アルプロ社から2020年12月14日ないし翌2021年2月12日に輸入した商品「Alpro Oat Drink,For Professionals 8X1L」(商品番号「161608」)を、2021年2月3日から同年3月6日に、「アルプロ オーツ プロフェッショナル 1LX8」品目コード「161608」)としてタカナシ販売座間物流センター(神奈川県座間市)に納品したことが推認できる(乙17、乙19)。
ウ 上記(1)エに係るダノンジャパン陳述書(乙14)に示された本件商品の商品パッケージのデザインは、上記(1)アに係るプレスリース、新聞記事に掲載された商品パッケージのデザインと共通である(別掲1~別掲3)。また、同陳述書に示された本件商品の商品パッケージに記載された商品番号「161608」は、上記(1)イに係る一連の取引書類に記載された商品番号及び上記(1)ウに係る受領書に記載された品目コードと一致し、かつ、別掲3の本件商品の商品パッケージに記載されたJANコード「5411188132110」は上記(1)ウに係る受領書のJANの記載と一致する。
そうすると、ダノンジャパン陳述書に示された本件商品は、プレスリリース及び新聞記事に掲載された商品「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」、ダノンジャパン社がアルプロ社から輸入した商品「Alpro Oat Drink,For Professionals 8X1L」並びにダノンジャパン社がタカナシ販売物流センターへ納品した商品「アルプロ オーツ プロフェッショナル 1LX8」と同一のものであると認められる(乙10、乙11、乙14、乙17、乙19)。
エ 本件商品(「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」)の商品パッケージ(包装)の正面には、別掲1ないし3のとおり、いずれも、一部が欠けたかぎ括弧状の線内に大きく表された「BARISTA」の文字の表示(以下「使用商標」という。)がある(乙10、乙11、乙14)。
オ アルプロ社、ダノンジャパン社及びダノン社は、上記アのとおりの関係を有し、ダノンジャパン社はアルプロ社及びダノン社の関連企業といえること、並びに、本件商標に係る商標権(片仮名の「バリスタ」:第29類「乳製品,食用油脂」)をアルプロ社に譲渡する旨の本件契約の内容及び「ダノン社、アルプロ社及び関連企業が本件商標をその指定商品に使用することについて異議はなく、本件商標の使用を事実上許諾していた」旨の明治陳述書の記載を踏まえれば、旧商標権者(株式会社明治)は、令和3年(2021年)2月3日以降、本件商標の移転登録が完了する同年3月9日の間は、アルプロ社及びダノン社の子会社であるダノンジャパン社に対し、日本国内において本件商標を指定商品について使用することを許諾していたといえる(乙10、乙14、乙1、乙3)。
2 判断
上記1の認定事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用者について
現商標権者(アルプロ社)が本件商標の移転の登録を受ける前の令和3年(2021年)2月3日から同年3月9日までの間、ダノンジャパン社は、本件商標の旧商標権者である株式会社明治から本件商標をその指定商品について使用することについて許諾を受けた通常使用権者であった。
(2)使用商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「バリスタ」の文字を標準文字で表してなるものである。
一方、本件商品(「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」)のパッケージ(包装)に表示された使用商標は、一部が欠けたかぎ括弧状の線内に大きく表された「BARISTA」の部分であるところ、一部が欠けたかぎ括弧状の線は、商品パッケージ全体の構成態様に照らせば、装飾的な表示として看取、理解されるとみるのが相当であるから、自他商品識別標識として強く支配的な印象を与えるのは、括弧の中に大きく表された「BARISTA」の文字部分であり、当該「BARISTA」の文字は独立して自他商品の識別標識としての機能を果たす要部といえる。
そうすると、本件商標「バリスタ」の文字と使用商標の要部である「BARISTA」の文字は、いずれも、「バリスタ」の称呼を生じ、本件指定商品を取り扱う分野では「バールのカウンターに立ち、客からの注文を受けてエスプレッソをはじめとするコーヒーを淹れる職業、およびその職業に就いている人物」を意味する語(甲6)であって、「エスプレッソを出す店(バール)で働く人。」といった観念を生じる商標であるから、両者は、片仮名とローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じる商標といい得るものである。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものと認められる。
(3)使用商品について
使用商標がパッケージに付された本件商品は、原材料をオーツ(えん麦)とするミルク状の飲料(乙10~乙12ほか)、すなわち、「オーツ麦ミルク(oat milk)」であり、本件審判の請求に係る指定商品中、第29類「乳製品」に含まれるものである。
(4)使用行為及び使用時期について
ダノンジャパン社は、2020年12月14日ないし翌2021年2月12日にかけてベルギーのアルプロ社から本件商品を輸入し、2021年2月3日から同年3月6日の間に、アルプロ社から輸入した本件商品をタカナシ販売座間物流センターへ出荷、納品した。
してみれば、ダノンジャパン社は、少なくとも令和3年(2021年)2月ないし同年3月までの間、本件商標と社会通念上同一の商標をパッケージ(包装)に付した本件商品を、譲渡又は引渡しのために我が国に輸入したものといえ、かつ、ダノンジャパン社が上記行為を行った期間(令和3年2月~同年3月)は要証期間である。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間に日本国内において本件審判の請求に係る指定商品中の「乳製品」に含まれる商品「オーツ麦ミルク」について、商品の包装に本件商標を付したものを譲渡若しくは引渡しのために輸入した(商標法第2条第3項第2号)ということができる。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、「乙第14号証の陳述書で陳述しているのは、ダノンジャパン社の社員にすぎず、被請求人との関係が不詳である。」旨主張している。
しかしながら、上記1(2)のとおり、ダノンジャパン社は、ダノン社の日本法人として、同じくダノン傘下のアルプロ社が製造する「ALPRO バリスタシリーズ オーツミルク」(本件商品)を我が国で輸入、販売する会社であるから、同社で本件商品の商品企画及び販売促進業務に従事するマーケティング部マネージャーである陳述者について、被請求人(アルプロ社)との関係が不詳であるということはできない。
(2)請求人は、「令和3年2月3日以前の期間について、現商標権者又はダノンジャパン社が前商標権者から通常使用権の許諾を得ていたことが確認できないとの点について、被請求人は回答していない。」旨主張している。
しかしながら、上記1(2)カのとおり、旧商標権者(株式会社明治)は、令和3年2月3日以降、本件商標の移転登録が完了する令和3年3月9日の間は、ダノンジャパン社に対し、日本国内において本件商標を指定商品について使用することを許諾していたことが認められ、かつ、上記1(2)のとおり、当該期間に使用行為が認められるから、令和3年2月3日以前の期間の使用許諾について問題にすることはできない。
(3)請求人は、「「バリスタ」に相応する英文字は、「(ア)バリスタ(電子部品)(英語:varistor) (イ)バリスタ(兵器)(ラテン語:ballista) (ウ)法廷弁護士(英語:barrister barrister-at-law)のこと。(エ)バリスタ(コーヒー)(イタリア語:barista)エスプレッソを出す店(バール)で働く人。(オ)ネスカフェバリスタ (カ)バリスタ(漫画) (キ)バッリスタ(Ballista)バリスタ(Balista)とも。」等と多数の意味がある(甲10、甲11)ことから、本件商標「バリスタ」と使用商標「BARISTA」は「商標の構成から生ずる『意味。内容』を同じくする商標」と認めることはできないため、「社会通念上の同一商標」に該当しないと判断するのが合理的である。」旨主張している。
しかしながら、登録商標の使用に当たるか否かの認定に当たっては、登録商標に係る指定商品及び指定役務の属する産業分野における取引の実情を十分に考慮し、具体的な事例に基づいて判断すべきものであところ(平成14年(行ケ)第591号等)、上記1(1)に係るプレススリリースや新聞記事のとおり、ミルクはコーヒーに混ぜて飲まれることも多く、バリスタがラテアートに用いることもあるから、指定商品「乳製品」の属する産業分野におけるかかる取引の実情(ミルクとコーヒーとの関連性)に鑑みれば、本件商標の「バリスタ」の文字は、上記(エ)「バリスタ(コーヒー)(イタリア語:barista)エスプレッソを出す店(バール)で働く人。」程の意味を認識させるものというのが相当であって、本件商標から(ア)バリスタ(電子部品)(イ)バリスタ(兵器)(ウ)法廷弁護士等の意味は認識させ難いから、本件商標「バリスタ」と使用商標「BARISTA」は「エスプレッソを出す店(バール)で働く人。」程の同一の観念を有するものというべきである。
(4)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の商標権者が、その請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したということができる。
したがって、本件商標は、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-300117