特許拒絶査定不服審判
2021-017766
被せ具を有する可搬機械工具
- 審判番号
- 2021-017766
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-554341
- 請求日
- 2021年12月23日
- 審決日
- 2023年02月21日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フェスツール ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 【請求人代理人】蔵田 昌俊
- 【請求人代理人】井上 正
- 【請求人代理人】飯野 茂
- 【請求人代理人】河野 直樹
- 【請求人代理人】金子 早苗
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 中里 翔平
- 審判官 見目 省二
- 分類
- P18 .121-WZ (B24B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-554341「被せ具を有する可搬機械工具」拒絶査定不服審判事件〔2017年(平成29年)10月19日国際公開、WO2017/178443、令和元年5月30日国内公表、特表2019-513570〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)4月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2016年4月13日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする特願2018-554341号の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年12月12日 :翻訳文提出
令和 3年 2月16日付け:拒絶理由の通知
令和 3年 5月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 8月27日付け:拒絶査定
令和 3年12月23日 :審判請求書の提出
令和 4年 7月 7日付け:拒絶理由の通知
令和 4年10月11日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正 書による補正を「本件補正」という。)の 提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した以下の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
ディスク工具(30、130、230)と、駆動モータ(12)とを、有する可搬機械工具であって、前記駆動モータ(12)は機械ハウジング(11)内に配置され、前記ディスク工具(30、130、230)を駆動して、前記ディスク工具(30、130、230)の加工面(31、131、231)の振動、回転、及び/又は、偏心の運動を生じさせ、
前記可搬機械工具(10、110、210)は、被加工材表面(O)の研磨又は艶出し作業のために、主加工方向(HA)において前方へ、また、少なくとも1つの横加工方向(QR、QL)において主加工方向(HA)を横切って横へ、前記加工面(31、131、231)とともに案内されることが可能であり、
前記可搬機械工具(10、110、210)は、障害物(HV、HR、HL)との接触からの保護のために、前記主加工方向(HA)及び/又は少なくとも1つの前記横加工方向(QR/QL)において、前記加工面(31、131、231)の隣に延在する、前記ディスク工具(30、130、230)の少なくとも1つの側面(47、48、49)の前記可搬機械工具を移動する側に配置される、少なくとも1つの保護壁(77、78、178、277、278)を有する、前記ディスク工具(30、130、230)用の被せ具(60、160、260)を有し、
少なくとも1つの前記保護壁(77、78、178、277、278)は、前記主加工方向(HA)、及び/又は、少なくとも1つの前記横加工方向(QR、QL)に、少なくとも1つの凹部(71、171、271)を有し、前記ディスク工具(30、130、230)の側縁領域(42、142、242)は、少なくとも1つの前記凹部(71、171、271)を通って、前記加工面(31、131、231)の領域において前記被せ具(60、160、260)の外周輪郭(80、180、280)から前方へ自由に突出し、それにより、前記側縁領域(42、142、242)まで延在する、前記ディスク工具(30、130、230)の前記加工面(31、131、231)の縁部又は角領域(41)は、少なくとも1つの前記保護壁(77、78、178、277、278)に妨げられることがない状態で、前記被加工材表面(O)の縁部側の加工をするための準備ができており、
前記ディスク工具(30、130、230)は、前記被せ具(60、160、260)による被覆が無い部分を介して、前記主加工方向(HA)と反対に後方へ自由に突出し、且つ/又は、前記被せ具(60、160、260)は、前記ディスク工具の前記主加工方向(HA)における後ろ部分を、被わない、ことを特徴とする可搬機械工具。」
第3 拒絶の理由
令和4年7月7日付けで当審が通知した拒絶理由のうち、本件補正前の請求項1に係る発明に対する理由1(進歩性)の概要は、次のとおりのものである。
本件補正前の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~3に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:独国実用新案第202005009030号明細書
引用文献2:韓国登録特許第10-0882805号公報(周知技術を示 す文献)
引用文献3:独国実用新案第202006021278号明細書(周知技 術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
ア 引用文献1には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審で付した。また、aウムラウトを「ae」と代替表記し、同様にuウムラウトを「ue」、oウムラウトを「oe」、エスツェットを「ss」と表記する。以下同じ。)
「[0001] Die Erfindung betrifft ・・・Flaeche ist.
・・・
[0003] Ein solches Stossschutzteil ist ・・・Exzenterbewegung ausfuehrt.」
<当審訳>
「[0001] 本考案は、操作時に研磨加工を行う研磨ディスク、特に偏心ディスク研磨器を有する手持ち式研磨機であって、手持ち式研磨機に取り外し可能に取り付けることができ、取り付けられた状態では、研磨ディスクの下側の面の上方に固定的に配置され、操作時に研磨ディスクによって作業される表面の外周の直径に等しい又はそれより大きい外形を有する、対応して設置される衝撃保護部材を含む手持ち式研磨機に関する。・・・
[0003] このような衝撃保護部材は、研磨ディスクが、研磨ディスク軸を中心とする同時回転を伴う又は伴わない偏心運動を行う偏心ディスク研磨器において、特に好適である。このような偏心運動は、使用者にとって、純粋な回転運動よりも制御が難しい。しかしながら、偏心運動を重畳することなく、研磨ディスクが回転運動のみを行う純粋な回転式研磨器にも衝撃保護部材が使用できることは自明である。」
「[0017] Aus der Zeichnung geht ・・・werden kann.
[0018] Der Maschinenkopf 2 enthaelt ・・・Versetzung parallel zueinander.」
<当審訳>
「[0017] 図面は、機械ヘッド2とそこから横方向に延びる機械領域3とを有する手持ち式研磨機1を示す。横方向に延びる機械領域3には、機械ヘッド2の領域で手持ち式研磨機の上側の面に配置されたオン/オフスイッチ5によってオン又はオフを切り替えることができる、図示しない駆動モーターが収容される。(当審注:図1-2の記載からみて、「オン/オフスイッチ5」は、「オン/オフスイッチ4」の誤記と認める。)
[0018] 機械ヘッド2は、詳細には図示しないが、駆動シャフトと、駆動シャフトの下部に設けられ、それに偏心して配置された偏心シャフト延長部と、取り外し可能に取り付けられた研磨ディスク6を保持するために偏心シャフト延長部にそれと同軸上に回転可能に設置された保持ユニット5とを有する作動ユニットを含む。駆動シャフトの軸線と、研磨ディスク6の軸線7に一致する偏心シャフト延長部の軸線とは、互いに偏心して平行に延在する。」
「[0020] Der Schleifteller 6 weist ・・・Werkstueck aufgesetzt.
[0021] Beim Betrieb fuehrt der Schleifteller 6 ・・・ausgeschaltet sein.」
<当審訳>
「[0020] 研磨ディスク6は円形状を有し、ワークの研磨加工のために、適切な砥粒コーティングを有する下側の面8がワーク上に配置される。
[0021] 操作時に、研磨ディスク6は、駆動シャフトを中心として旋回する偏心運動を行う。この偏心運動には、研磨ディスク軸線7を中心とする回転運動を重畳させることができる。ただし、この同時回転はオフにしておくこともできる。」
「[0023] Dem Schleifteller 6 ist ・・・Kreisflaeche der Schleifteller-Unterseite 8.」
<当審訳>
「[0023] 研磨ディスク6に衝撃保護部材9が対応付けられており、この部材により、操作時に、研磨ディスク6が研磨対象のワーク面から起立する面に衝突することが阻止される。衝撃保護部材9は、手持ち式研磨機1に取り外し可能に取り付けられ、取り付けられた状態で研磨ディスク6の下側の面8の上方に固定的に配置されている。衝撃保護部材9は、下方方向で、研磨ディスクの下側の面8までは延在しておらず、その上方で終端しているため、研磨加工を妨げることがない。衝撃保護部材9は、研磨ディスク6を囲み、操作時に研磨ディスク6によって作業される表面の円周の直径と少なくとも同じ大きさの外形すなわち外径Dを有する。この表面は、研磨ディスクが研磨ディスク軸線7を中心とする回転運動のみを行う場合、研磨ディスク下側の面8の円形表面と等しくなる。しかしながら、偏心ディスク研磨器である手持ち式研磨機1の場合、ワーク加工の際に研磨ディスク6が作業する表面は、偏心運動によって、研磨ディスク下側の面8の円形表面よりも大きくなる。」
「[0025] Das Stossschutzteil 9 geht ・・・in Werkstueckecken gelangenkann.」
<当審訳>
「[0025] 衝撃保護部材9は、その周方向において連続して延在するよう形成されておらず、いわば切断箇所を有する環状形状であるため、略C形状リング体10を形成するにとどまる。この構造において、衝撃保護部材9は、横方向に延びる機械領域3とは反対側の前方領域と、それに隣接する、研磨ディスク6の2つの横方向領域とを覆い、一方、突出する機械領域3に対向する研磨ディスク6の後方領域は露出したままである。ワークのコーナーの研磨は、研磨ディスク6の前方領域及び2つの横方向領域のみで行われ、これは、これらの研磨機領域のみがいわば露出して配置されているためであり、一方、衝撃保護部材9で覆われていない後方の研磨ディスク領域は、突出する機械領域3の下方に配置されているため、ワークのコーナーにそれが達することはない。」
「[0039] Das Stossschutzteil 9 weist ・・・Durchmesser des Schleiftellers 6.」
<当審訳>
「[0039] 衝撃保護部材9は、記載した方法で機械側の保持部材14に差込むことができる上方差込み部分33と、研磨ディスク6の周囲に係合して衝撃保護壁35を形成する下方衝撃保護部分34とを備えるフード様形状を有し、操作時に、衝撃保護部材9は、起立するワーク面に突き当て可能である。差込み部分33は、取り付けられた状態で研磨ディスク6の上方に配置され、衝撃保護部分34よりも小さい直径を有する。したがって、研磨ディスク6の上方で機械側に配置された保持部材14の直径もまた、研磨ディスク6の直径よりも小さい。」
「[0041] Das Stossschutzteil 9 ist ・・・aus Kunststoff.」
<当審訳>
「[0041] 好適には、衝撃保護部材9は、場合によっては視認孔36の部分を除いて、少なくとも実質的に閉じた壁により形成されている。さらに、好適には、それはプラスチックからなる。」
図1
「
[図:0001399888000001.jpg]
」
図2
「
[図:0001399888000002.jpg]
」
図4
「
[図:0001399888000003.jpg]
」
イ 引用文献1の上記記載から、次の事項が理解できる。
(ア)段落[0001]、[0017]~[0018]の記載から、手持ち式研磨機1が有する機械ヘッド2に、研磨ディスク6が取り付けられているといえる。
また、段落[0017]の記載から、手持ち式研磨機1が有する機械領域3に、駆動モーターが収容されているといえる。
さらにまた、段落[0020]の記載、及び図1、4から、研磨ディスク6は、下側の面8を有するといえる。
さらにまた、段落[0003]、[0021]、[0023]の記載から、研磨ディスク6は、偏心運動、回転運動、又は、回転運動を重畳させた偏心運動を行うといえる。
(イ)段落[0020]の記載から、手持ち式研磨機1は、下側の面8で研磨対象のワーク面を研磨加工するといえる。
また、段落[0025]の記載、及び図2から、衝撃保護部材9は、研磨ディスク6の機械領域3に対向する後方領域とは反対側の前方領域と、それに隣接する2つの横方向領域とを覆っているといえる。そして、段落[0023]の記載から、衝撃保護部材9は、研磨時に、研磨ディスク6が研磨対象のワーク面から起立する面に衝突することを阻止するために設けられているといえるところ、この衝突が、研磨時に、後方領域から前方領域に向かう方向、及び一方の横方向から他方の横方向領域に向かう方向に手持ち式研磨機1が操作された場合に生じることは明らかである。
したがって、手持ち式研磨機1は、下側の面8で研磨対象のワーク面を研磨加工する時に、機械領域3に対向する後方領域からその反対側の前方領域に向かう方向、及び前方領域に隣接する一方の横方向から他方の横方向領域に向かう方向に操作されることが可能といえる。
(ウ)段落[0023]の記載から、手持ち式研磨機1には、研磨対象のワーク面から起立する面との衝突を阻止するため、研磨ディスク6に対応付けられた衝撃保護部材9が取り付けられているといえる。
また、段落[0023]、[0035]の記載、及び図2、4、並びに上記(イ)から、衝撃保護部材9は、前方領域、及び2つの横方向領域において、下側の面8の上方の研磨ディスク6の周囲を覆う衝撃保護壁35を備えるといえる。
(エ)段落[0025]の記載、及び図1~2、並びに上記(イ)から、研磨ディスク6の後方領域は、衝撃保護部材9で覆われていないといえる。
(2)引用発明
上記(1)のア及びイから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「機械ヘッド2に取り付けられる研磨ディスク6と、機械領域3に収容された駆動モーターとを、有する手持ち式研磨機1であって、駆動モーターは機械領域3に収容され、下側の面8を有する研磨ディスク6は、偏心運動、回転運動、又は、回転運動を重畳させた偏心運動を行い、
手持ち式研磨機1は、下側の面8で研磨対象のワーク面を研磨加工する時に、機械領域3に対向する後方領域からその反対側の前方領域に向かう方向、及び前方領域に隣接する一方の横方向から他方の横方向領域に向かう方向に操作されることが可能であり、
手持ち式研磨機1には、研磨対象のワーク面から起立する面との衝突を阻止するため、前方領域、及び2つの横方向領域において、下側の面8の上方の研磨ディスク6の周囲を覆う衝撃保護壁35を備える、研磨ディスク6に対応付けられた衝撃保護部材9が取り付けられ、
研磨ディスク6の後方領域は、衝撃保護部材9で覆われていない、手持ち式研磨機1」
2 引用文献2~3の記載事項
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、図面とともに次の記載がある。
「
[図:0001399888000004.jpg]
」
<当審訳>
「<1> 本発明は研磨機に関し、より詳細には作業環境と安全性を高めながらも、作業に支障をきたさない研磨機に関する。」
「
[図:0001399888000005.jpg]
」
<当審訳>
「<24> 図5には、本発明による研磨機を用いてコーナー部を作業する状態を説明するための図を示した。図5を参照すると、本発明による研磨機のカバー(12)の作業方向前方に設けられた切開部(120)によって、研磨ホイール(104)の一部が前方に露出している。このような構成によれば、コーナー作業時に研磨ホイール(104)の一部が前方に露出することにより、カバー(12)によって研磨ホイール(104)が当たらないコーナー部分まで研磨ホイール(104)が接近できるようになり、作業性には大きな影響を受けない。」
図5
「
[図:0001399888000006.jpg]
」
(2)引用文献3の記載事項
引用文献3には、図面とともに次の記載がある。
「[0003] Bekannt sind darueber ・・・herangefuehrt werden kann.」
<当審訳>
「[0003] さらに、同じくハンドガイド式工作機であるコンクリート研削器が公知となっている。コンクリート研削器の研削ディスクは、その表面で加工を行い、研削ディスクの縁部を越えて放射状に延在可能な、円板形状の吸引・保護フードがそれに重なっている。縁部の領域においても研削加工が可能なように、吸引・保護フードを部分的に開口させており、この箇所において研削ディスクをその外縁部まで露出させ、外縁部を壁際まで導くことができるようになっている。」
「[0006] Bei der erfindungsgemaessen Schutzhaube ・・・Schleifpartikel ausgeschlossen ist.」
<当審訳>
「[0006] 本考案における、ハンドガイド式工作機、特にコンクリート研削器の保護フードによれば、位置調整可能なヒンジ式カバーは保護フード壁に回動可能に保持されており、ヒンジ式カバーは遮蔽位置と露出位置との両方においてスナップ係合可能である。この実施形態によれば、例えば床面とそれに隣接する壁との間のような境界領域での加工が所望される場合にも、ヒンジ式カバーを容易に回動させて開くことができる。その際、ヒンジ式カバーが通常の遮蔽位置および開かれた露出位置のどちらにおいても誤って脱落しないよう、スナップ係合により確実に防止されており、これにより、特にヒンジ式カバーが開いた状態の露出位置にある場合、意図せず回動して遮蔽位置に戻る可能性が排除される。しかしながら、通常の操作位置に相当し、かつヒンジ式カバーが好適に保護フード壁と共通の外周面にある遮蔽位置においても、スナップ係合により、操作時に振動が発生しても、ヒンジ式カバーがその閉じ位置に留まることで、除去された研磨粒子が排出されることが阻止されるため、操作上および機能上の安全性が改善される。」
「[0019] Wie Fig.2 zu entnehmen, ・・・den Stab 10.」
<当審訳>
「[0019] 図2から見て取れるように、保護フード7の保護フード壁8には、径方向外縁部まで延在する露出したセグメントとして形成された開口領域11が設けられている。この開口領域11には、保護フード壁8に回動可能に取り付けられたヒンジ式カバー9が配置される。この目的のために、ばね鋼からなる曲げロッドとして好適に形成されたロッド10が、ヒンジ式カバー9の円筒形状部13を通って案内され、収容開口部に挿入されており、収容開口部は、保護フード壁のセグメント形状の開口領域11の両側に延在する、保護フード壁8のタブ形状の側方の壁画定部分12に設けられている。側方の壁画定部分12のこれらの収容開口部は、ロッド10のための軸受を形成する。」
「[0023] In der geoeffneten Freigabeposition, ・・・durchfuehrbar ist.」
<当審訳>
「[0023] これに対し、研削ディスク6の周縁部分を露出させるためにヒンジ式カバー9が採る、図4に示す開かれた露出位置では、ヒンジ式カバーが閉じられた際に後方を向くスナップ係合凸部が、スナップ係合凹部に対して突出している。このように、ヒンジ式カバー9は、遮蔽位置と露出位置との両方においてそれぞれスナップ係合位置にある。曲げロッドとして形成されたロッド10の固有の弾性により、保護フード壁8またはヒンジ式カバー9が破損することなく、遮蔽位置と露出位置との間の移行が可能となる。」
図4
「
[図:0001399888000007.jpg]
」
第5 対比
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「研磨ディスク6」は、本願発明の「ディスク工具」に相当し、同様に、「駆動モーター」は「駆動モータ」に、「手持ち式研磨機1」は「可搬機械工具」に、それぞれ相当するから、引用発明の「機械ヘッド2に取り付けられる研磨ディスク6と、機械領域3に収容された駆動モーターとを、有する手持ち式研磨機1」は、本願発明の「ディスク工具と、駆動モータとを、有する可搬機械工具」に相当する。
また、引用発明の「機械ヘッド2」及び「機械領域3」が、本願発明の「機械ハウジング」に相当することは明らかであるから、引用発明の「機械領域3」は、本願発明の「機械ハウジング」の一部をなすものといえる。したがって、引用発明の「駆動モーターは機械領域3に収容され」ることは、本願発明の「前記駆動モータは機械ハウジング内に配置され」ることに相当する。
さらにまた、引用発明の「下側の面8」は、本願発明の「加工面」に相当し、同様に、「偏心運動、回転運動、又は、回転運動を重畳させた偏心運動」は「回転、及び/又は、偏心の運動」に相当する。そして、引用発明において、「研磨ディスク6」が「運動」を行う際、ディスク工具に相当する「手持ち式研磨機1」が駆動することは明らかであり、また、「研磨ディスク6」が「運動」を行うと、「研磨ディスク6」が有する「下側の面8」も「運動」を行うことは明らかである。したがって、引用発明の「下側の面8を有する研磨ディスク6は、偏心運動、回転運動、又は、回転運動を重畳させた偏心運動を行」うことと、本願発明の「前記ディスク工具を駆動して、前記ディスク工具の加工面の振動、回転、及び/又は、偏心の運動を生じさせ」ることとは、「前記ディスク工具を駆動して、前記ディスク工具の加工面の回転、及び/又は、偏心の運動を生じさせ」る点に限り一致する。
(2)引用発明の「研磨対象のワーク面」は、本願発明の「被加工材表面」に相当する。
また、引用発明の「研磨加工」と、本願発明の「研磨又は艶出し作業」とは、「研磨作業」である点に限り一致する。
さらにまた、引用発明の「機械領域3に対向する後方領域からその反対側の前方領域に向かう方向」は、本願発明の「主加工方向」に相当し、同様に、「前方領域に隣接する一方の横方向から他方の横方向領域に向かう方向」は「少なくとも1つの横加工方向」に、「操作される」ことは「案内される」ことにそれぞれ相当する。したがって、引用発明の「機械領域3に対向する後方領域からその反対側の前方領域に向かう方向、及び前方領域に隣接する一方の横方向から他方の横方向領域に向かう方向に操作されること」は、本願発明の「主加工方向において前方へ、また、少なくとも1つの横加工方向において主加工方向を横切って横へ、」「案内されること」に相当する。
さらにまた、引用発明において、「手持ち式研磨機1」が「下側の面8で」「研磨加工する時」に「操作される」ことは、「手持ち式研磨機1」が「研磨加工」のために「下側の面8」とともに「操作される」とも表現できることは明らかである。
したがって、引用発明の「手持ち式研磨機1は、下側の面8で研磨対象のワーク面を研磨加工する時に、機械領域3に対向する後方領域からその反対側の前方領域に向かう方向、及び前方領域に隣接する一方の横方向から他方の横方向領域に向かう方向に操作されることが可能であ」ることと、本願発明の「前記可搬機械工具は、被加工材表面の研磨又は艶出し作業のために、主加工方向において前方へ、また、少なくとも1つの横加工方向において主加工方向を横切って横へ、前記加工面とともに案内されることが可能であ」ることとは、「前記可搬機械工具は、被加工材表面の研磨作業のために、主加工方向において前方へ、また、少なくとも1つの横加工方向において主加工方向を横切って横へ、前記加工面とともに案内されることが可能であ」る点に限り一致する。
(3)引用発明の「研磨対象のワーク面から起立する面」は、本願発明の「障害物」に相当し、同様に、「衝突」は「接触」に相当する。そして、引用発明において、「衝突を阻止する」ことは、「衝突」から保護していることは明らかであるから、引用発明の「研磨対象のワーク面から起立する面との衝突を阻止するため」は、本願発明の「障害物との接触からの保護のため」に相当する。
また、引用発明の「衝撃保護壁35」は、本願発明の「少なくとも1つの保護壁」に相当する。そして、引用発明の「衝撃保護壁35」が「前方領域、及び2つの横方向領域において、下側の面8の上方の研磨ディスク6の周囲を覆う」ことは、本願発明の「少なくとも1つの保護壁」が「前記主加工方向及び/又は少なくとも1つの前記横加工方向において、前記加工面の隣に延在する、前記ディスク工具の少なくとも1つの側面の前記可搬機械工具を移動する側に配置される」ことに相当する。
さらにまた、引用発明の「衝撃保護部材9」は、本願発明の「被せ具」に相当する。そして、引用発明の「衝撃保護部材9」が「研磨ディスク6に対応付けられ」ることは、本願発明の「被せ具」が「前記ディスク工具用」であることに相当する。したがって、引用発明の「手持ち式研磨機1には、」「研磨ディスク6に対応付けられた衝撃保護部材9が取り付けられ」ることは、本願発明の「可搬機械工具は、」「前記ディスク工具用の被せ具を有」することに相当する。
(4)引用発明の「後方領域」は、本願発明の「前記主加工方向と反対」、又は「前記主加工方向における後ろ部分」に相当する。
また、引用発明の「研磨ディスク6」が「衝撃保護部材9で覆われていない」ことは、本願発明の「ディスク工具」が「前記被せ具による被覆が無い部分を介して、」「自由に突出」すること、又は「前記被せ具」が「前記ディスク工具」を「被わない」ことに相当する。
したがって、引用発明の「研磨ディスク6の後方領域は、衝撃保護部材9で覆われていない」ことは、本願発明の「前記ディスク工具は、前記被せ具による被覆が無い部分を介して、前記主加工方向と反対に後方へ自由に突出し、且つ/又は、前記被せ具は、前記ディスク工具の前記主加工方向における後ろ部分を、被わない」ことに相当する。
2 一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(1)一致点
「ディスク工具と、駆動モータとを、有する可搬機械工具であって、前記駆動モータは機械ハウジング内に配置され、前記ディスク工具を駆動して、前記ディスク工具の加工面の回転、及び/又は、偏心の運動を生じさせ、
前記可搬機械工具は、被加工材表面の研磨作業のために、主加工方向において前方へ、また、少なくとも1つの横加工方向において主加工方向を横切って横へ、前記加工面とともに案内されることが可能であり、
前記可搬機械工具は、障害物との接触からの保護のために、前記主加工方向及び/又は少なくとも1つの前記横加工方向において、前記加工面の隣に延在する、前記ディスク工具の少なくとも1つの側面の前記可搬機械工具を移動する側に配置される、少なくとも1つの保護壁を有する、前記ディスク工具用の被せ具を有し、
前記ディスク工具は、前記被せ具による被覆が無い部分を介して、前記主加工方向と反対に後方へ自由に突出し、且つ/又は、前記被せ具は、前記ディスク工具の前記主加工方向における後ろ部分を、被わない、可搬機械工具。」
(2)相違点
ア 相違点1
ディスク工具の加工面の運動について、本願発明は、「振動、回転、及び/又は、偏心の運動」であるのに対し、引用発明は、「偏心運動、回転運動、又は、回転運動を重畳させた偏心運動」であるものの、「振動」の運動を含むか不明である点。
イ 相違点2
可搬機械工具による作業について、本願発明は、「研磨又は艶出し作業」であるのに対し、引用発明は、研磨加工であるものの、「艶出し作業」を含むか明らかでない点。
ウ 相違点3
本願発明では、被せ具の保護壁が、主加工方向、及び/又は、横加工方向に「少なくとも1つの凹部」を有することで、ディスク工具の側縁領域は、前記凹部を通って、加工面の領域において前記被せ具の外周輪郭から前方へ自由に突出し、それにより、前記側縁領域まで延在する、前記ディスク工具の前記加工面の縁部又は角領域は、前記保護壁に妨げられることがない状態で、被加工材表面の縁部側の加工をするための準備ができるのに対し、引用発明では、衝撃保護部材9の衝撃保護壁35が、前方領域、及び/又は、横方向領域に「少なくとも1つの凹部」を有しないため、研磨ディスク6が、衝撃保護部材9から突出せず、研磨対象のワーク面から起立する面の近く、すなわち、研磨対象のワーク面の縁部側の加工の準備ができているといえるか明らかでない点。
第6 判断
上記相違点について検討する。
1 相違点1について
引用発明は、本願発明の発明特定事項の選択肢のうちの「回転、及び/又は、偏心の運動」を含んでいるから、残余の選択肢である「振動」を含まないとしても、相違点1は、実質的な相違点でない。
2 相違点2について
引用発明は、本願発明の発明特定事項の選択肢のうちの「研磨作業」を含んでいるから、残余の選択肢である「艶出し作業」を含まないとしても、相違点2は、実質的な相違点でない。
3 相違点3について
(1)引用文献2には、カバー(12)を備えた研磨機において、カバー(12)の作業方向前方に設けられた切開部(120)から研磨ホイール(104)の一部が露出する構成によって、コーナー作業時に、コーナー部分まで研磨ホイール(104)が接近できるようにすることが記載され、また、図5から、可搬型である研磨機によるコーナー作業時に、コーナー部分までカバー(12)から露出した研磨ホイール(104)が接近していることが看取できる(上記第4の2(1))。
(2)また、引用文献3には、保護フード7を備えたハンドガイド式工作機1において、保護フード7は、開口領域11が設けられた保護フード壁8と、開口領域11に配置されたヒンジ式カバー9とで形成され、床面とそれに隣接する壁との間のような境界領域を加工する場合、研削ディスク6の周縁部分を露出させるため、ヒンジ式カバー9を遮蔽位置から露出位置に回動させることが記載され、また、図4から、ヒンジ式カバー9が露出位置にある場合、研削ディスク6の周縁部分が開口領域11から露出していることが看取できる(上記第4の2(2))。
(3)上記(1)~(2)から、被せ具を有する可搬機械工具において、ディスク工具の加工面の縁部が、前記被せ具の保護壁に妨げられることがない状態で、被加工材表面の縁部側の加工ができるようにするため、前記保護壁に少なくとも1つの凹部を設け、前記ディスク工具の側縁領域を、前記凹部を通って、前記加工面の領域において前記被せ具の外周輪郭から突出させることは、従来周知の技術(以下「周知技術」という。)であるといえる。
(4)ここで、被加工材表面の縁部側の加工を行うことは通常の研磨等の加工においてなされることであるから、ディスク工具の加工面の縁部が、被せ具の保護壁に妨げられることがない状態で、被加工材表面の縁部側の加工をできるようにすることは、被せ具を有する可搬機械工具という技術分野における一般的な課題であって、当該技術分野に属する引用発明も内包する課題といえる。
そして、上記周知技術は、ディスク工具が障害物と接触することから保護することと、被加工部材の縁部側の加工をすることとの両方のためになされたものと理解できるところ、ディスク工具が障害物と接触することから保護するという課題を踏まえつつ、ディスク工具の加工面の縁部が、被せ具の保護壁に妨げられることがない状態で、被加工材表面の縁部側の加工をできるようにするという課題を解決するため、引用発明に上記周知技術を適用し、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(5)なお、引用文献1の段落[0041]には、「好適には、衝撃保護部材9は、場合によっては視認孔36の部分を除いて、少なくとも実質的に閉じた壁により形成されている。」と記載されていることから、引用発明に上記周知技術を適用すること、すなわち、衝撃保護部材9に、凹部を設けることの阻害要因について一応検討する。
引用文献1の段落[0041]の記載は、衝撃保護部材9を「場合によっては」視認孔36の部分を除いて、実質的に閉じた壁により形成することが「好適」であることを示す記載にすぎず、衝撃保護部材9を実質的に閉じた壁により形成すること以外を排除する記載ではないから、上記(4)に説示する課題(引用発明が内包する課題)を解決するために、衝撃保護部材9を改変することを妨げるほどの特段の事情があるとはいえない。
4 小括
したがって、本願発明は、引用発明、及び引用文献2~3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 審判請求人の主張について
1 審判請求人の主張の概要
審判請求人は、令和4年10月11日提出の意見書(以下「意見書」という。)において、概ね次の主張をしている。
(1)引用文献1に記載された保護部材9は、本質的に閉じた壁を備えることが記載されており、ディスク工具の加工面の縁部が、被せ具の保護壁に妨げられることがない状態で、被加工材表面の縁部側の加工をできるようにすることとは相容れないものであること(意見書の第2ページ下から第3行~第3ページ第2行)。(以下「主張1」という。)
(2)引用文献2においては、カバー12は加工に際してホイール104の底面が直ちに加工面に触れないように設けられることを特徴とするものであるから、引用文献1の保護壁に引用文献2のカバーを適用しても、保護壁に妨げられることがない状態で、被加工材表面の縁部側の加工をするための準備ができているものとはならないこと(意見書の第3ページ第3~7行)。(以下「主張2」という。)
(3)引用文献3は、保護カバーの開口部は開閉可能な蓋で閉じることを特徴とするものであるから、引用文献1の保護壁に引用文献3の保護カバーを適用しても、保護壁に妨げられることがない状態で、被加工材表面の縁部側の加工をするための準備ができているものとはならないこと(意見書の第3ページ第7~10行)。(以下「主張3」という。)
2 審判請求人の主張の検討
審判請求人の上記主張について検討する。
(1)主張1について
主張1は、引用文献1に上記周知技術を適用することに阻害要因があることをいうものと解されるが、引用文献1の記載が阻害要因とまではいえないことは、上記第6の3(5)で説示したとおりであるから、審判請求人の上記主張1は採用できない。
(2)主張2~3について
主張2~3は、引用文献2~3には「保護壁に妨げられることがない状態で、被加工材表面の縁部側の加工をするための準備ができている」ことが示されていないことをいうものと解されるが、上記第6の3(1)~(3)で説示したとおり、引用文献2~3の記載から、上記周知技術を把握できる。
したがって、審判請求人の上記主張2~3に理由はない。
3 小括
以上のとおり、審判請求人の上記主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び引用文献2~3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する
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2021-017766