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特許拒絶査定不服審判

2021-015305

感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法

審判番号
2021-015305
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-561153外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年11月09日
審決日
2022年10月06日
公報発行日
2023年01月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G03F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-561153「感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月20日国際公開、WO2017/122717〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
理 由

第1 事案の概要

1 手続等の経緯

特願2017-561153号(以下「本件出願」という。)は、2017年(平成29年)1月12日を国際出願日とする特許出願(先の出願に基づく優先権主張 平成28年1月12日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 3年 3月23日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 4月28日提出:意見書
令和 3年 4月28日提出:手続補正書
令和 3年 9月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 3年11月 9日提出:審判請求書
令和 3年11月 9日提出:手続補正書

2 本願発明

本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年11月9日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のものである。

「(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)光重合開始剤、(C)Zr、Mg及びAlからなる群から選ばれる少なくとも1種を有するイオン捕捉剤、並びに(D)光重合性化合物を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(A)成分が、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)を用いてなる少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)と、該エポキシ樹脂(a1)とは異なるエポキシ樹脂(a2)を用いてなる少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)とを含有するものである、感光性樹脂組成物。」

3 原査定の理由

原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本件出願の優先権主張の基礎とされる先の出願前(以下「先の出願前」という。)に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献3:国際公開第2015/016362号
引用文献4:国際公開第2014/136897号
引用文献5:特開2011-164570号公報

(当合議体注:引用文献3及び4は、主引用例である。引用文献5は、副引用例である。)

第2 当合議体の判断

1 引用文献3を主引用例とした場合

(1)引用文献3の記載及び引用文献3に記載された発明

ア 引用文献3の記載

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(国際公開第2015/016362号)は、先の出願前に、日本国内又は外国において電気通信回線を介して公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。

(ア)「 発明の名称:感光性樹脂組成物
技術分野
[0001] 本発明は、感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、永久マスクレジスト、及び該永久マスクレジストを具備するプリント配線板に関する。
[0002] プリント配線板の製造分野において、プリント配線板上に永久マスクレジストを形成することが行われている。永久マスクレジストは、プリント配線板の使用時において、導体層の腐食を防止したり、導体層間の電気絶縁性を保持する役割を有している。」
(イ)「[0008]
・・・中略・・・
また、本発明の感光性樹脂組成物を用いることで、近年の電子機器の小型化、及び高性能化に伴う微細化した穴径の大きさと穴間の間隔ピッチの形成安定性に優れた、パターン形成が可能な感光性エレメント、永久マスクレジスト、及び該永久マスクレジストを具備するプリント配線板を提供することである。
課題を解決するための手段
続きを表示(全14行)
[0009] 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち本発明は、下記の感光性樹脂組成物、感光性エレメント、永久マスクレジスト、及びプリント配線板を提供するものである。
[0010][1](A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂と、(B)アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤と、(C1)アルキルアミノベンゼン誘導体、(C2)ピラゾリン系増感剤又はアントラセン系増感剤、(C3)イミダゾール系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、及びチタノセン系光重合開始剤から選ばれる少なくとも一種の光重合開始剤、(C4)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種の酸化防止剤、並びに(C5)チオール基含有化合物から選ばれる少なくとも1種の(C)添加剤と、(D)光重合性化合物とを含む感光性樹脂組成物。
・・・中略・・・
[0014]<(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂>
・・・中略・・・
[図:0001392727000001.jpg]
[図:0001392727000002.jpg]
・・・中略・・・
[図:0001392727000003.jpg]
」
(ウ)「[0157] 以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
[0158](評価方法)
(1)表面硬化性の評価
・・・中略・・・
続きを表示(全41行)
[0161](4)レジスト形状の評価
・・・中略・・・
A(優良):レジスト形状は矩形又は台形を呈し、且つパターン輪郭の直線性が良かった。
B(不良):レジスト形状はアンダーカット、裾引き、若しくは太りが確認された、又はパターン輪郭の直線性が悪かった。
・・・中略・・・
[0166](9)密着性の評価
各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、銅表面をバフ研磨(深さ方向で5μm粗化)した厚さ0.6mmの銅張積層基板(日立化成(株)製、商品名:MCL-E-67)と化学研磨(メック(株)製の研磨剤CZ8101を使用して深さ方向で0.5μm粗化)した厚さ0.6mmの銅張積層基板(日立化成(株)製、商品名:MCL-E-67)に、乾燥後の膜厚が35μmになるようにスクリーン印刷法で塗布して塗膜を形成した後、80℃で20分間熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させた。
次いで、図2に示されるパターンを有するネガマスクを各々塗膜に密着させ、紫外線露光装置((株)ハイテック製、商品名:HTE-5102S)を用いて600mJ/cm2の露光量で露光した。・・・中略・・・その後・・・中略・・・未露光部を溶解現像した。次に、紫外線露光装置・・・中略・・・を用いて1000mJ/cm2の露光量で露光し、150℃で1時間加熱して、試験片を作製した。
得られた試験片について、JIS K5600に準じて、1mmのごばん目を100個作製し、セロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:セロテープ(登録商標))を貼り付けた後、90度の方向にセロハンテープを強制的に剥離する剥離試験を行った。ごばん目の剥離状態を観察し、以下の基準で評価した。
A(優良):90/100以上で剥離がなかった。
B(良): 50/100以上、90/100未満で剥離がなかった。
C(不良):0/100以上、50/100未満で剥離がなかった。
・・・中略・・・
[0180] (合成例5;酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(IV)-cの合成)
温度計、滴下ロート、冷却管、及び撹拌機を設けたフラスコに、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名:EXA-7376、一般式(IV)において、Y4及びY5=グリシジル基、R13=水素原子)350質量部、アクリル酸70質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、カルビトールアセテート120質量部を混合し、90℃に加熱して撹拌することにより反応させ、混合物を完全に溶解した。次に、得られた溶液を60℃に冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部を加え、100℃に加熱して、溶液の酸価が1mgKOH/gになるまで反応させた。反応後の溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)98質量部とカルビトールアセテート85質量部とを加え、80℃に加熱して、6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、固形分の濃度が73質量%である酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(IV)-cを含む溶液を得た。
[0181] (合成例6;酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(II)-bの合成)
温度計、滴下ロート、冷却管、及び撹拌機を設けたフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:4004、エポキシ当量:526g/eq、一般式(II)において、Y2=水素原子、R12=水素原子)1,052質量部、アクリル酸(b)144質量部、メチルハイドロキノン1質量部、カルビトールアセテート850質量部及びソルベントナフサ100質量部を混合し、70℃で加熱撹拌して、混合物を溶解した。次に、溶液を50℃まで冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部、ソルベントナフサ75質量部を混合し、100℃に加熱し、固形分酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させた。次に、得られた溶液を50℃まで冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)745質量部、カルビトールアセテート75質量部及びソルベントナフサ75質量部を混合し、80℃に加熱して、6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、固形分酸価80mgKOH/g、固形分が62質量%である酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(II)-bを含む溶液を得た。
[0182]実施例1~32、及び比較例1~32
表1~6に示す配合組成に従って組成物を配合し、3本ロールミルにより混練し感光性樹脂組成物を調製した。固形分濃度が70質量%になるようにカルビトールアセテートを加えて、感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いて、上記の評価方法に基づき評価した。評価結果を表1~6に示す。なお、表中の各成分の配合量の単位は、質量部であり、表中(A)成分の配合量は各合成例で得られたエポキシ樹脂を含む溶液としての配合量を意味する。
・・・中略・・・
[0200] 註)表6中の各材料の詳細は以下の通りである。
・イルガキュア819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製、商品名)
・イルガキュア907:2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]モルホリノ-1-プロパノン(BASFジャパン(株)製、商品名)
・DETX-S:2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製、商品名)
・MBI:メルカプトベンゾイミダゾール
・フタロシアニン系顔料:山陽色素(株)製
・アロニックスM402:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(東亜合成(株)製、商品名)
・BaSO4:堺化学工業(株)製
・SiO2:(株)龍森製
・YSLV-80XY:テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、商品名)
・RE-306:ノボラック型多官能エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名)
・PB-3600:エポキシ化ポリブタジエン(ダイセル化学(株)製、商品名)
・SP1108:ポリエステル樹脂(日立化成(株)製、商品名)
・DICY 7:ジシアンジアミド
[0201] 表6に示される結果から、実施例31~34の本発明の感光性樹脂組成物は、感光性エレメント及び永久マスクレジスト(はんだレジスト)のパターンが、穴径の大きさが100μm且つ穴間の間隔ピッチが100μmのパターン、又は穴径の大きさが80μm且つ穴間の間隔ピッチが80μmという高精細なパターンであっても、アンダーカット、裾引き、あるいは太りが確認される、またはパターン輪郭の直線性が悪いといったことがなく、優れたレジスト形状が得られることが確認された。
また、耐無電界めっき性、はんだ耐熱性、耐クラック性、密着性、耐溶剤性、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性)等の各種性能にも優れていることが確認された。
これに対して比較例31~34の感光性樹脂組成物は、レジスト形状が悪化すると共に、はんだ耐熱性、及び耐クラック性にも劣るものであった。」

(当合議体注:上記[表6]は、下記表である。)

(エ)「
[図:0001392727000004.jpg]
」

イ 引用文献3に記載された発明

上記アの摘記事項によれば、引用文献3には、表6に示された配合組成(各製品名は[0200]に記載されたものである。)を用いて調整された、実施例31に係る「感光性樹脂組成物」の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。

また、表6に記載された「エポキシ樹脂(IV)-c」及び「エポキシ樹脂(II)-b」は、それぞれ引用文献3の[0180](合成例5)及び[0181](合成例6)に記載された樹脂であって、下記(イ)ないし(ウ)に示すものである。(以下、各樹脂の発明を、それぞれ「樹脂4発明」及び「樹脂2発明」という。)

さらに、上記「感光性樹脂組成物」の用途は、引用文献3の[0001]等に記載されている。

(ア)引用発明3

「感光性エレメント、永久マスクレジスト、及びプリント配線板を提供することを目的とした、感光性樹脂組成物であって、配合組成が以下のものであり、樹脂4及び樹脂2は、樹脂4発明及び樹脂2発明の樹脂である。
[配合組成]
・樹脂4を含有する溶液:30重量部(固形分濃度:73%)
・樹脂2を含有する溶液:23質量部(固形分濃度:62%)
続きを表示(全16行)
・イルガキュア819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製):0.77質量部
・DETX-S:2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製):0.03質量部
・MBI:メルカプトベンゾイミダゾール:0.92質量部
・アロニックスM402:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(東亜合成(株)製):7.38質量部
・BaSO4:堺化学工業(株)製:22.77質量部
・SiO2:(株)龍森製:6.29質量部
・フタロシアニン系顔料:山陽色素(株)製:0.94質量部
・YSLV-80XY:テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製):13.09質量部
・RE-306:ノボラック型多官能エポキシ樹脂(日本化薬(株)製):3.88質量部
・PB-3600:エポキシ化ポリブタジエン(ダイセル化学(株)製):3.04質量部
・SP1108:ポリエステル樹脂(日立化成(株)製):4.01質量部
・DICY 7:ジシアンジアミド:0.55質量部」

(イ)樹脂4発明

「ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名:EXA-7376、一般式(IV)において、Y4=グリシジル基、R13=水素原子)350質量部、アクリル酸70質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、カルビトールアセテート120質量部を混合し、反応させ、混合物を完全に溶解し、次に、得られた溶液を60℃に冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部を加え、100℃に加熱して、溶液の酸価が1mgKOH/gになるまで反応させ、反応後の溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)98質量部とカルビトールアセテート85質量部とを加え、80℃に加熱して、6時間反応させ、その後、室温まで冷却し、得た、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(IV)-c。
ここで、上記一般式(IV)は以下のものである。
[図:0001392727000005.jpg]
」

(当合議体注:上記認定は、[0180]の一般式(IV)の「Y5=」との記載は誤記であることを前提に行った。)

(ウ)樹脂2発明

「ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:4004、エポキシ当量:526g/eq、一般式(II)において、Y2=水素原子、R12=水素原子)1,052質量部、アクリル酸(b)144質量部、メチルハイドロキノン1質量部、カルビトールアセテート850質量部及びソルベントナフサ100質量部を混合し、加熱撹拌して、混合物を溶解し、次に、溶液を50℃まで冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部、ソルベントナフサ75質量部を混合し、100℃に加熱し、固形分酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させ、次に、得られた溶液を50℃まで冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)745質量部、カルビトールアセテート75質量部及びソルベントナフサ75質量部を混合し、80℃に加熱して、6時間反応させ、その後、室温まで冷却し、得た、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(II)-b。」

ここで、上記一般式(II)は以下のものである。

[図:0001392727000006.jpg]

」

(2)引用文献5の記載

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2011-164570号公報)は、先の出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーと、重合性化合物と、光重合開始剤と、イオン吸着剤とを少なくとも含む感光性組成物であって、前記イオン吸着剤が、ビスマス化合物と、ジルコニウム化合物及び酸化アンチモン化合物の少なくともいずれかとを含有することを特徴とする感光性組成。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ露光により画像形成を行うソルダーレジスト材料として好適な感光性組成物、感光性フィルム、感光性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板に関する。
・・・中略・・・
続きを表示(全14行)
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた絶縁信頼性、耐熱衝撃性、保存安定性、高感度、基板密着性、及び耐熱性を兼ね備え、特にパッケージ用ソルダーレジストとして好適な感光性組成物、該感光性組成物を用いた感光性フィルム、感光性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特にパッケージ用ソルダーレジストに求められる、絶縁信頼性、耐熱衝撃性、保存安定性、高感度、基板密着性、表面硬度、耐熱性などを向上させるため、イオン吸着剤として、ビスマス化合物と、ジルコニウム化合物及び酸化アンチモン化合物の少なくともいずれかとを併用することにより、前記課題を効果的に解決できることを知見した。
・・・中略・・・
【0011】
<イオン吸着剤>
前記イオン吸着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、陰イオン吸着剤と陽イオン吸着剤を組み合わせて用いることが、遊離Cl-、又は加水分解性Cl-等の陰イオン、及び遊離のNa+やCu2+の陰陽両イオンを捕捉することにより相乗的に絶縁信頼性が向上する点で好ましい。」
ウ 「【実施例】
【0157】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
・・・中略・・・
続きを表示(全48行)
【0161】
(実施例1)
-感光性フィルムの製造-
支持体としての厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、16FB50)上に、下記の組成からなる感光性組成物溶液を塗布し、乾燥させて、前記支持体上に厚さ30μmの感光層を形成した。前記感光層上に、保護層として、厚さ20μmのポリプロピレンフィルム(王子特殊紙株式会社製、アルファンE-200)を積層し、感光性フィルムを製造した。
【0162】
-感光性組成物溶液の組成-
・合成例1のバインダー(B-1)の溶液(固形分45質量%)・・・37.2質量部
・重合性化合物(A-DPH、新中村化学工業株式会社製)・・・11.15質量部
・熱架橋剤(エポトートYDF-170、東都化成株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)・・・2.0質量部
・・・中略・・・
・酸化ビスマス(東亞合成株式会社製、IXE-530)・・・0.45質量部
・リン酸ジルコニウム(東亞合成株式会社製、IXE-100)・・・0.45質量部
・・・中略・・・
【0164】
-基体への積層-
前記基体として、銅張積層板(スルーホールなし、銅厚み12μm)の表面に化学研磨処理を施して調製した。該銅張積層板上に、前記感光性フィルムの感光層が前記銅張積層板に接するようにして前記感光性フィルムにおける保護フィルムを剥がしながら、真空ラミネーター(ニチゴーモートン株式会社製、VP130)を用いて積層させ、前記銅張積層板と、前記感光層と、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)とがこの順に積層された積層体を調製した。
・・・中略・・・
【0165】
得られた積層体について、以下のようにして、絶縁信頼性、耐熱衝撃性、感度、現像性、解像性、保存安定性、耐熱性、基板密着性、及び表面硬度の評価を行った。結果を表1に示す。
・・・中略・・・
【0166】
<絶縁信頼性(HAST試験)>
前記基材として、銅厚12μmの銅張積層板をライン/スペース=50μm/50μmになるよう櫛型に配線形成したものを用いた以外は、前記永久パターンの形成方法と同様にして作成された永久パターンについて、高速加速寿命試験(HAST試験)を行いデンドライトと絶縁抵抗(Ω)を評価した。
・・・中略・・・
〔評価基準〕
◎:配線がまったく変化なし
○:デンドライトは見られないが陽極配線がやや変化している
△:デンドライトは見られないが陽極配線が見づらい
×:デンドライト有り
・・・中略・・・
【0173】
<基板密着性>
基板上に各感光性組成物からなるソルダーレジスト層を形成した。これに1cm四方の区画内を縦横1mm間隔の線で区切り、1mm四方の区画が100個できるようにカッターナイフで皮膜のみを切断し、基材が切れないように切込みを入れた。次に切込みを入れた被膜にセロハンテープ(日東電工株式会社製、商品名セロハンテープNo.29)を張り、90度の角度に引っ張り上げ、その時に1mm四方の区画が何個剥がれるかを測定した。1個の剥離もなく、またそれぞれの区画に欠損のないものが良好である。剥離性・欠損を、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
○:剥離及び欠損が無く、基板密着性が優れる
△:剥離しないが、一部欠損があり基板密着性がやや劣る
×:部分的に剥離が生じ、基板密着性が劣る
・・・中略・・・
【0191】
(比較例7)
実施例1の感光性組成物溶液における酸化ビスマス0.45質量部及びリン酸ジルコニウム0.45質量部を、五酸化アンチモン0.45質量部及びハイドロタルサイト0.45質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルム、積層体、及び永久パターンを製造した。
得られた積層体について、実施例1と同様にして、絶縁信頼性、耐熱衝撃性、感度、現像性、解像性、保存安定性、耐熱性、基板密着性、及び表面硬度の評価を行った。結果を表1に示す。
[図:0001392727000007.jpg]
」

(当合議体注:【表1-2】の摘記は省略した。)

(3)対比

ア 対比

本願発明と引用発明3を対比すると、以下のとおりとなる。

(ア)(B)光重合開始剤及び(D)光重合性化合物

引用発明3の「イルガキュア819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製)」及び「DETX-S:2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製)」は、技術的みて、本願発明の「(B)光重合開始剤」に相当する。

また、引用発明3の「アロニックスM402:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(東亜合成(株)製)」は、その化学構造からみて、本願発明の「(D)光重合性化合物」に相当する。

(イ)(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂

引用発明3の「感光性樹脂組成物」は、「樹脂4」及び「樹脂2」を、その配合組成に含む。

上記「樹脂4」(発明)は、上記(1)イ(イ)の製造工程で得られる樹脂、すなわち、一般式(IV)において、Y4=グリシジル基、R13=水素原子に該当する、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂350質量部、アクリル酸70質量部」「を混合し、反応させ、混合物を完全に溶解し、」さらに、「テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)98質量部」「を加え、」「6時間反応させ」て得た、「酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(IV)-c」である。

また、上記「樹脂2」(発明)は、上記(1)イ(ウ)の製造工程で得られる樹脂、すなわち、「一般式(II)において、Y2=水素原子、R12=水素原子に該当する、「ビスフェノールF型エポキシ樹脂」1,052質量部、アクリル酸(b)144質量部」「を混合し、」「混合物を溶解し、次に、得られた溶液を50℃まで冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)745質量部、」「を混合し、」「6時間反応させ」て得た、「酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(II)-b」である。

上記製造工程から、「樹脂4」は、「ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂」(本願発明の「ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)」に相当。)とアクリル酸とを反応させてビニル基を付加し、前記付加時に生成した水酸基に、テトラヒドロ無水フタル酸を反応させることで酸変性して製造された、ビニル基含有エポキシ樹脂といえる。また、「樹脂2」は、上記製造工程において、「ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂」とは異なる「ビスフェノールF型エポキシ樹脂」を用いた以外は同様の工程を経て、ビニル基の付加ないし酸変性がなされた樹脂である。

以上によれば、引用発明3の「樹脂4」及び「樹脂2」は、本願発明の「(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂」に相当し、本願発明の「(A)成分が、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)を用いてなる少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)と、該エポキシ樹脂(a1)とは異なるエポキシ樹脂(a2)を用いてなる少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)とを含有するものである」との要件も満たす。

(ウ)感光性樹脂組成物の配合組成

上記(ア)~(イ)によれば、引用発明3の「感光性樹脂組成物」は、本願発明の「感光性樹脂組成物」と、「(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)光重合開始剤、」「並びに(D)光重合性化合物を含有する」点で共通する。

イ 一致点及び相違点

本願発明と引用発明3は、次の構成で一致及び相違する。

[一致点]

「(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)光重合開始剤及び(D)光重合性化合物を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(A)成分が、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)を用いてなる少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)と、該エポキシ樹脂(a1)とは異なるエポキシ樹脂(a2)を用いてなる少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)とを含有するものである、感光性樹脂組成物。」

[相違点]

「感光性樹脂組成物」が、本願発明では、「(C)Zr、Mg及びAlからなる群から選ばれる少なくとも1種を有するイオン捕捉剤」「を含有する」のに対して、引用発明は、イオン捕捉剤を含有していない点。

(4)判断

上記相違点について検討する。

上記(2)によれば、引用文献5の【0001】、【0006】~【0007】には、優れた絶縁信頼性、耐熱衝撃性、保存安定性、高感度、基板密着性、及び耐熱性を兼ね備え、特にパッケージ用ソルダーレジストとして好適な感光性組成物、該感光性組成物を用いた永久パターン形成方法及びプリント基板を提供することを目的(課題)とし、イオン吸着剤として、ビスマス化合物と、ジルコニウム化合物及び酸化アンチモン化合物の少なくともいずれかとを併用することにより、前記課題を効果的に解決できるとの知見を得たことが記載され、同【0161】~【0162】には、その具体例として、「酸化ビスマス」及び「リン酸ジルコニウム」の組み合わせからなる特定のイオン吸着剤として含む、実施例1の「感光性組成物」が記載されており、当該感光性組成物によって、【表1-1】の評価結果(特に、絶縁信頼性(HAST)及び基板密着性の評価結果が最高ランクである。)が得られたことが、他のイオン吸着剤を用いた比較例との対比をもって記載されている。

一方、引用文献3の[0002]及び[0201]等の記載によれば、引用発明3の「感光性樹脂組成物」には、「レジスト形状、解像性、耐熱性、密着性、及び電気絶縁性のバランスにより優れたパターンが得られること」が求められていると理解される。加えて、引用文献3の[0008]には、「本発明の感光性樹脂組成物を用いることで、近年の電子機器の小型化、及び高性能化に伴う微細化した穴径の大きさと穴間の間隔ピッチの形成安定性に優れた、パターン形成が可能な感光性エレメント、永久マスクレジスト、及び該永久マスクレジストを具備するプリント配線板を提供することである。」と記載されている。

以上によれば、引用発明3の「感光性樹脂組成物」と、引用文献5の「感光性組成物」とは、プリント配線板等に用いられる永久レジスト形成用感光性樹脂組成物である点で技術分野が共通し、さらに、組成物に対する要求特性(絶縁信頼性及び(基板)密着性)の点において共通している。

そうしてみると、引用発明3において、絶縁信頼性及び基板密着性をさらに向上するために、引用文献5の実施例1~3に記載された、「酸化ビスマス」及び「リン酸ジルコニウム」の組み合わせからなるイオン吸着剤を添加し、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。

なお、本件出願の特許請求の範囲の請求項1には、「イオン捕捉剤」について「Zr、Mg及びAlからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する」と特定されているにとどまるから、本願発明の「イオン捕捉剤」は、他の金属元素を更に含有するか否かについては任意であり、したがって、引用文献5の実施例1~3に記載されるような、酸化ビスマス及びリン酸ジルコニウムからなるイオン捕捉剤を、明らかにその態様として含むものである点を、念のため付記しておく。

(5)請求人の主張について

請求人は、審判請求書において、特に、下記ア及びイの点を主張するので検討する。

ア 「本願発明の感光性樹脂組成物は・・・特に、上記(C)成分によって、優れたレジスト形状でレジストパターンを形成することができ、また、密着性及び流動性が向上する傾向があり、さらに、上記(C)成分は、信頼性に影響を与えるようなイオン(例えばナトリウムイオン(Na+)、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、銅イオン(Cu+、Cu2+)等のイオン)を捕捉及び不活性化することができるため、電気絶縁性、耐電食性が向上する点が注目に値します。」(3頁第1段落)

しかしながら、イオン捕捉剤による上記効果は、引用文献5における、イオン吸着剤が絶縁信頼性を向上させる旨の記載(【0011】)、とりわけ、リン酸ジルコニウムがNa+、K+等の陽イオンを選択的にイオン交換でき、イオン交換容量も優れる点で特に好ましい旨の記載(【0015】)及び【0192】【表1-1】に示される絶縁信頼性(HAST)及び基板密着性の評価結果(評価手法の詳細は、同【0166】及び【0173】参照。))から、特に絶縁信頼性の向上に関心を寄せる当業者が予測し得る範囲内にとどまるものであって、格別顕著なものでもない。

さらにいえば、請求人が「注目するに値します」と主張する、特定イオンの捕捉及び不活性化による電気絶縁性及び耐電食性の向上という効果は、先の出願時において既に市販されていた、イオン捕捉剤「IXEPLASR(イグゼプラス)」(東亜合成株式会社製)に本来予定されていた特性であり、先の出願時の技術水準からみても、請求人が主張する上記効果は、進歩性を推認し得る水準のものとはいえない。(必要ならば、宮村健太郎,次世代無機イオン捕捉剤「IXEPLASR(イグゼプラス)」,東亜合成グループ研究年報,2013年発行,第16号,55~57頁)

(当合議体注:IXEPLASの登録商標を表す記号は「R」と略記した。)

イ 「(C)成分は「Zr、Mg及びAlからなる群から選ばれる少なくとも1種を有するイオン捕捉剤」であって、「ビスマス化合物と、ジルコニウム化合物及び酸化アンチモン化合物の少なくともいずれかとを併用するもの」ではなく、イオン捕捉剤として「Zr、Mg及びAlからなる群から選ばれる少なくとも1種を有するイオン捕捉剤」を含有させたときに、Biを有するイオン補足剤を含有させたときよりも、レジスト形状、密着性、溶融粘度及び絶縁性の総合評価に優れるという結果は、引用文献3~5からは到底予測し得ないものであると思料致します。」(5頁第2段落)

しかしながら、上記(4)で述べたとおり、本願発明は、「Zr、Mg及びAlからなる群から選ばれる少なくとも1種」に加え、Biを含有する態様を明らかに含むものであるから、審判請求人の上記主張は、その前提において誤りがある。加えて、「Biを有するイオン補足剤を含有させたときよりも、レジスト形状、密着性、溶融粘度及び絶縁性の総合評価に優れるという結果」についてみても、その根拠とされる実施例及び比較例の結果は、IXE500(Bi含有陰イオン捕捉剤)と、IXE800(Zr含有陰イオン捕捉剤)あるいはIXEPLAS-A2(Zr、Mg、Al含有両イオン捕捉剤)という特定の組成のイオン捕捉剤について比較した結果であって、本願発明においては、これらイオン捕捉剤の組成については、明確に特定されていないのであるから、審判請求人の上記主張は、請求項に記載された事項に基づかない主張であって、採用の限りではない。

2 引用文献4を主引用例とした場合

(1)引用文献4の記載及び引用文献4に記載された発明

ア 引用文献4の記載

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(国際公開第2014/136897号)は、先の出願前に、日本国内又は外国において電気通信回線を介して公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。

(ア)「 発明の名称:
感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法に関する。
背景技術
[0002] プリント配線板分野では、従来から、プリント配線板上に永久マスクレジストを形成することが行われている。永久マスクレジストは、プリント配線板の使用時において、導体層の腐食を防止したり、導体層間の電気絶縁性を保持したりする役割を有している。」
(イ)「課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち本発明は、下記の感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供するものである。
[1](A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)光重合開始剤、(C)チオール基含有化合物、及び(E)光重合性化合物を含有し、該(A)成分が、下記一般式(IV)又は(V)で表される構成単位を有するビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)から得られる少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)と、該エポキシ樹脂(a1)とは異なるエポキシ樹脂(a2)から得られる酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)とを含有するものである、感光性樹脂組成物。」
(ウ)「[0117] 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[0118](合成例1)
ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(a)(EXA-7376、DIC(株)製、一般式(IV)において、Y4及びY5がグリシジル基、R13が水素原子である構成単位を含有するビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂)350質量部、アクリル酸(b)70質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、カルビトールアセテート120質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌することにより反応させ、混合物を完全に溶解した。次に、得られた溶液を60℃に冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部を加え、100℃に加熱して、溶液の酸価が1mgKOH/gになるまで反応させた。反応後の溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)(c)98質量部とカルビトールアセテート85質量部とを加え、80℃に加熱して、6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、固形分の濃度が73質量%である酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)成分としてのTHPAC変性ビスフェノールFノボラック型エポキシアクリレートを得た。
[0119](合成例2)
続きを表示(全41行)
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(一般式(II)において、Y2が水素原子、R12が水素原子である構成単位を含有するビスフェノールF型エポキシ樹脂)(a)(エポキシ当量:526)1,052質量部、アクリル酸(b)144質量部、メチルハイドロキノン1質量部、カルビトールアセテート850質量部及びソルベントナフサ100質量部を仕込み、70℃で加熱撹拌して、混合物を溶解した。次に、溶液を50℃まで冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部、ソルベントナフサ75質量部仕込み、100℃に加熱し、固形分酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させた。次に、得られた溶液を50℃まで冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)(c)745質量部、カルビトールアセテート75質量部及びソルベントナフサ75質量部を仕込み、80℃に加熱して、6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、固形分酸価80mgKOH/g、固形分62質量%の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)成分としてのTHPAC変性ビスフェノールF型エポキシアクリレートを得た。
・・・中略・・・
[0121](実施例1~4、比較例1~3及び比較例7~8)
表1に示す配合組成に従って組成物を配合し、3本ロールミルで混練し感光性樹脂組成物を調製した。固形分濃度が70質量%になるようにカルビトールアセテートを加えて、感光性樹脂組成物を得た。
[0122]
[図:0001392727000008.jpg]
[0123] なお、表1中の各材料の詳細は以下の通りである。
・イルガキュア819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製、商品名)
・イルガキュア907:2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]モルホリノ-1-プロパノン(BASFジャパン(株)製、商品名)
・DETX:DETX-S、2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製、商品名)
・MBI:メルカプトベンゾイミダゾール
・フタロシアニン系顔料:山陽色素(株)製
・アロニックスM402:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(東亜合成(株)製、商品名)
・ASA:硫酸バリウム微粒子(ソルベイ社製)
・FUSE-LEX:二酸化珪素((株)龍森製、商品名)
・YSLV-80XY:テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、商品名)
・RE-306:ノボラック型多官能エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名)
・PB-3600:エポキシ化ポリブタジエン(ダイセル化学(株)製、商品名)
・SP1108:ポリエステル樹脂(日立化成(株)製、商品名)
・DICY 7:ジシアンジアミド
[0124] 次に、上記で得られた感光性樹脂組成物を用いて、下記に示す条件で各評価を行った。評価結果を表1に示す。
(当合議体注:「表1」は「表2」の誤記である。)
[0125][試験片の作製]
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、厚さ0.6mmの銅張積層基板(MCL-E-67、日立化成(株)製)に、乾燥後の膜厚が35μmになるようにスクリーン印刷法で塗布した後、80℃で20分間熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させた。次に、所定のパターンを有するネガマスクを塗膜に密着させ、紫外線露光装置を用いて600mJ/cm2の露光量で露光した。その後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、1.765×105Paの圧力でスプレー現像し、未露光部を溶解現像した。次に、紫外線露光装置を用いて1000mJ/cm2の露光量で露光し、150℃で1時間加熱して、試験片を作製した。
[0126][レジスト形状]
・・・中略・・・
[0130][密着性]
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、銅表面をバフ研磨(深さ方向で5μm粗化)した厚さ0.6mmの銅張積層基板(MCL-E-67、日立化成(株)製)と化学研磨(メック(株)製研磨剤CZ8101を使用して深さ方向で0.5μm粗化)した厚さ0.6mmの銅張積層基板(MCL-E-67、日立化成(株)製)に、乾燥後の膜厚が35μmになるようにスクリーン印刷法で塗布した後、80℃で20分間熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させた。次に、所定のパターンを有するネガマスクを塗膜に密着させ、紫外線露光装置を用いて600mJ/cm2の露光量で露光した。その後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、1.765×105Paの圧力でスプレー現像し、未露光部を溶解現像した。次に、紫外線露光装置を用いて1000mJ/cm2の露光量で露光し、150℃で1時間加熱して、試験片を作製した。
次にJIS C5012-1974年制定に準じて、試験片に1mmのごばん目を100個作製してセロハンテープにより剥離試験を行った。ごばん目の剥離状態を観察し、以下の基準で評価した。なお剥離は、印刷面に直角の方向にすばやくテープを引き剥がした。
3:90/100以上で剥離なし
2:50/100以上~90/100未満で剥離なし
1:0/100以上~50/100未満で剥離なし
・・・中略・・・
[0134][表2]
[図:0001392727000009.jpg]
・・・中略・・・
[0138] 表2~3に示される結果から、本発明の感光性樹脂組成物を用いた実施例1~8は、底部硬化性を維持し、レジスト形状に優れていた。」

イ 引用発明4

上記アによれば、引用文献4には、表1に示された配合組成(各製品名は、[0123]に記載されている。)からなる、実施例1に係る「感光性樹脂組成物」の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されている。そして、上記「感光性樹脂組成物」の用途は、引用文献4の[0001]等に記載から理解されるものである。

また、表1に記載された、「A1成分」である「合成例1で得た酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂」及び「A2成分」である「合成例2で得た酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂」は、それぞれ引用文献4の[0118](合成例1)及び[0119](合成例2)に記載の製造工程で得られた樹脂である。

「ドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造に用いられる、感光性樹脂組成物であって、配合組成が以下のものである。
[配合組成]
・合成例1で得た酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂:21.81質量%
・合成例2で得た酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂:14.52質量%
続きを表示(全16行)
・イルガキュア819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製、商品名):0.77質量%
・DETX:2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製、商品名):0.03質量%
・MBI:メルカプトベンゾイミダゾール:0.92質量%
・フタロシアニン系顔料:山陽色素(株)製:0.94質量%
・アロニックスM402:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(東亜合成(株)製、商品名):7.38質量%
・ASA:硫酸バリウム微粒子(ソルベイ社製):22.77質量%
・FUSE-LEX:二酸化珪素((株)龍森製、商品名):6.29質量%
・YSLV-80XY:テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、商品名):13.09質量%
・RE-306:ノボラック型多官能エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名):3.88質量%
・PB-3600:エポキシ化ポリブタジエン(ダイセル化学(株)製、商品名):3.04質量%
・SP1108:ポリエステル樹脂(日立化成(株)製、商品名):4.01質量%
・DICY 7:ジシアンジアミド:0.55質量%」

(2)対比

引用発明3の配合成分と引用発明4の配合成分は同一である。

そうすると、本願発明と引用発明4との対比結果は、本願発明と引用発明3との対比結果と同様となる。

したがって、両者の一致点及び相違点は、上記「1(3)イ」に示したとおりである(「1 引用文献3を主引例とした場合」と同様である。)。

(3)判断

引用文献4の[0002]及び[0134]等の記載並びに永久マスクレジストについての技術常識(永久マスクレジストに求められる絶縁信頼性等)によれば、引用発明3と同様、引用発明4においても、レジスト形状、基板密着性(特に、引用文献4の[0130]及び密着性の評価結果を参照。)及び電気絶縁性に優れることが求められているといえる。

したがって、引用発明3を主引用発明とした場合と同様の理由により、引用発明4においても、絶縁信頼性及び基板密着性をさらに向上するために、引用文献5に記載された、相違点に係る、特定のイオン吸着剤(本願発明の「Zr、Mg及びAlからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する」との要件を満たす、「イオン捕捉剤」)を添加剤として採用することは当業者が容易に想到し得たことである。

3 小括

本願発明は、引用文献3又は4に記載された発明及び引用文献5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献3又は4に記載された発明及び引用文献5に記載された事項に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-015305

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