特許拒絶査定不服審判
2021-015121
HIV-1プロテアーゼ阻害剤およびその使用
- 審判番号
- 2021-015121
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-509575
- 請求日
- 2021年11月08日
- 審決日
- 2023年07月11日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
- 【請求人代理人】清水 初志
- 【請求人代理人】春名 雅夫
- 【請求人代理人】山口 裕孝
- 【請求人代理人】刑部 俊
- 【請求人代理人】井上 隆一
- 【請求人代理人】佐藤 利光
- 【請求人代理人】新見 浩一
- 【請求人代理人】小林 智彦
- 【請求人代理人】小寺 秀紀
- 【請求人代理人】大関 雅人
- 【請求人代理人】川本 和弥
- 【請求人】国立大学法人 熊本大学
- 【請求人代理人】清水 初志
- 【請求人代理人】春名 雅夫
- 【請求人代理人】山口 裕孝
- 【請求人代理人】刑部 俊
- 【請求人代理人】井上 隆一
- 【請求人代理人】佐藤 利光
- 【請求人代理人】新見 浩一
- 【請求人代理人】小林 智彦
- 【請求人代理人】小寺 秀紀
- 【請求人代理人】大関 雅人
- 【請求人代理人】川本 和弥
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 典之
- 審判官 野田 定文
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P18 .536-Z (C07D) / P18 .537-Z (C07D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-509575「HIV-1プロテアーゼ阻害剤およびその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成29年2月23日国際公開、WO2017/031220、平成30年9月6日国内公表、特表2018-525404〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)8月17日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年8月17日 (US)米国〕を国際出願日とする出願であって、令和元年8月14日に上申書が提出されるとともに手続補正がされ、令和2年7月30日付けの拒絶理由通知に対し、令和3年2月5日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年7月5日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年11月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年12月14日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 令和3年11月8日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和3年11月8日付けの手続補正を却下する。
〔理由〕
1 補正の内容
令和3年11月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を、以下の(A)の記載から(B)の記載とするものであって、請求人が令和3年12月14日提出の手続補正書(方式)により補正された審判請求書(以下、単に「補正された審判請求書」という。)において述べているとおり、補正前の請求項1を補正後の請求項1とする補正事項(以下「補正事項a」という。)、及び、補正前の請求項17を補正後の請求項7とする補正事項(以下「補正事項b」という。)を含むものである。
(A) 補正前
「 【請求項1】
式(I)の化合物
[図:0001403973000001.jpg]
、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物:
式中、
nは1~3の整数であり;
XおよびX1は、それぞれ独立して(-CH2-)mであって、ここでmは1または2であり;
R1は-N3または-NR52であって、ここで各R5は、独立して、H、無置換もしくは置換アルキル、または無置換もしくは置換アルケニルであり;
R7はHまたは無置換もしくは置換アルキルであるか、あるいはR1およびR7は、それらが結合している炭素原子と一緒になって複素環を形成し;
R2は無置換もしくは置換アルキル、無置換もしくは置換アルケニル、無置換もしくは置換アルコキシ、無置換もしくは置換ヒドロキシアルキル、ハロ、無置換もしくは置換ヘテロシクリルアルキルオキシ、-O-(CH2)0~2P(O)(OR6)2であって、ここで各R6は、独立して、Hまたは無置換もしくは置換アルキルまたは置換もしくは無置換アリールであるか、あるいは、R1は-NR52であって、ここで1つのR5と1つのR2とが連結されて基-(CH2)p(CHCH)d(CH2)qO-となり、ここで、pは0~5の整数であり、dは0または1であり、qは0~5の整数であり;
R3は置換または無置換アルキルであり;かつ
R4は無置換もしくは置換アリール、無置換もしくは置換ベンゾチアゾール(benzthiazole)、無置換もしくは置換ベンゾオキサゾール、無置換もしくは置換ベンゾフラニル、または無置換もしくは置換インドリルである。
【請求項2】
R2が無置換もしくは置換アルキル、無置換もしくは置換アルケニル、無置換もしくは置換アルコキシ、無置換もしくは置換ヒドロキシアルキル、ハロ、無置換もしくは置換ヘテロシクリルアルキルオキシであり;かつ
R4が無置換もしくは置換ベンゾチアゾール、無置換もしくは置換ベンゾオキサゾール、無置換もしくは置換ベンゾフラニルまたは無置換もしくは置換インドリルである、
請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物。
【請求項3】
R4が無置換または置換ベンゾチアゾールである、請求項2記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物。
【請求項4】
R1が-NR52である、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
以下の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物:
[図:0001403973000002.jpg]
[図:0001403973000003.jpg]
[図:0001403973000004.jpg]
[図:0001403973000005.jpg]
[図:0001403973000006.jpg]
。
【請求項6】
式(I)の化合物が式:
[図:0001403973000007.jpg]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物であり、式中、eは0または1であり; R’はHまたは無置換もしくは置換アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
式(I)の化合物が式:
[図:0001403973000008.jpg]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物であり、式中、eは0または1であり; R’はHまたは無置換もしくは置換アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
式(I)の化合物が式:
[図:0001403973000009.jpg]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物であり、式中、eは0または1であり; X7は
[図:0001403973000010.jpg]
である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
下記式の化合物:
[図:0001403973000011.jpg]
、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物:
式中、eは0または1であり; R’はHまたは無置換もしくは置換アルキルであり;各R’’は、独立して、Hまたはハロであり; X4はCHまたはNであり; X5はCHまたはNである。
【請求項10】
R’がHであり; R’’のうちの1つだけがハロであり; X4およびX5のうちの1つだけがNである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
R’がHであり;両R’’基がHであり;X4およびX5のうちの1つだけがNである、請求項9記載の化合物。
【請求項12】
下記式の化合物:
[図:0001403973000012.jpg]
、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物:
式中、eは0または1であり、R’はHまたは無置換もしくは置換アルキルであり、X6は
[図:0001403973000013.jpg]
である。
【請求項13】
R’がHである、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
式(I)の化合物が式:
[図:0001403973000014.jpg]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物であり、式中、fは0、1、2、3、4または5であり;R8はC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C3~C6シクロアルキルアミノ、C3~C6シクロアルキル-C3~C6ヘテロシクロアミノ、C3~C6ヘテロシクロ-C3~C6シクロアルキルアミノ、またはC3~C6ヘテロシクロアミノである、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
式(I)の化合物が式:
[図:0001403973000015.jpg]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物であり、式中、fは0、1、2、3、4または5である、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項記載の化合物と1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項17】
治療有効量の1種または複数種の請求項1~15のいずれか一項記載の化合物を含む、患者のHIV感染症を処置するための薬学的組成物。
【請求項18】
治療有効量の1種または複数種の請求項1~15のいずれか一項記載の化合物を含む、HIV感染症の緩和を必要とする患者を処置するための薬学的組成物。」
(B) 補正後
「 【請求項1】
下記の化合物:
[図:0001403973000016.jpg]
、下記式の化合物:
[図:0001403973000017.jpg]
(式中、eは0または1であり; R’はHまたは無置換もしくは置換アルキルである);
下記式の化合物:
[図:0001403973000018.jpg]
(式中、eは0または1であり; R’はHまたは無置換もしくは置換アルキルである);および、
下記式の化合物:
[図:0001403973000019.jpg]
(式中、eは0または1であり、R’はHまたは無置換もしくは置換アルキルであり、X6は
[図:0001403973000020.jpg]
である。)
から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物
(前記式中、置換アルキルは、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、ニトロ、アルコキシ、およびハロゲン基から選択される基により、1回または複数回置換されたアルキルである。)。
【請求項2】
前記化合物が式:
[図:0001403973000021.jpg]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物であり、式中、eは0または1であり; R’はHまたは無置換もしくは置換アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が式:
[図:0001403973000022.jpg]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物であり、式中、eは0または1であり; R’はHまたは無置換もしくは置換アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が式:
[図:0001403973000023.jpg]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物であり、
式中、eは0または1であり、R’はHまたは無置換もしくは置換アルキルであり、X6は
[図:0001403973000024.jpg]
である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
下記:
[図:0001403973000025.jpg]
[図:0001403973000026.jpg]
[図:0001403973000027.jpg]
から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物である、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項記載の化合物と1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項7】
治療有効量の1種または複数種の請求項1~5のいずれか一項記載の化合物を含む、患者のHIV感染症を処置するための薬学的組成物。」
2 補正の目的
補正事項aは、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「式(I)の化合物(審決注:分子構造の一般式は記載を省略する。)」を、補正後の請求項1では、当該式(I)に包含される、本願明細書【0044】、【0046】及び【0049】に記載の化合物のうちの一部のものに限定するものであって、補正前の式(I)の化合物を、補正後は、6つの特定の化合物及び3つの一般式の化合物から選択される化合物に限定するものである。
また、補正事項bは、補正前の請求項17に記載された発明を特定するために必要な事項である、薬学的組成物が含む化合物を、補正前の請求項17では、記載を引用する補正前の請求項1~15のいずれか一項記載の化合物とされていたのを、補正後の請求項7では、記載を引用する補正後の請求項1~5のいずれか一項記載の化合物に限定するものである。
そして、補正前の請求項1及び17に記載された発明と補正後の請求項1及び7に記載された発明の「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」は同一である。
したがって、補正事項a及びbは、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1及び7に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか、いわゆる「独立特許要件」。)について、以下検討する。
3 独立特許要件について
(1) 本願補正発明及びその独立特許要件の充足について
本件補正後の請求項1に記載された発明及び請求項7に記載された発明(以下、それぞれ、「本願補正発明1」及び「本願補正発明7」という。)は、上記1(B)に摘記した請求項1及び請求項7に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願補正発明1及び本願補正発明7は、以下の理由A(実施可能要件)及び理由B(サポート要件)の点で、独立特許要件を満たしていない。以下詳述する。
(2) 理由A(実施可能要件)について
ア 実施可能要件の判断の前提
(ア) 明細書の発明の詳細な説明の記載が、物の発明について実施可能要件を満たすためには、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用することができる程度のものでなければならない。
(イ) 物の発明のうち、特に医薬用途発明においては、一般に、物質名や化学構造などが示されることのみによっては、その有用性を予測することは困難であり、明細書の発明の詳細な説明に、医薬の有効量や投与方法、製剤化のための事項などがある程度記載されていても、それだけでは、当業者において当該医薬が実際にその用途において使用できるかを予測することは困難であるから、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を使用することができる程度の記載があるというためには、明細書の発明の詳細な説明において、当該物質が当該用途に使用できることにつき薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項を記載し、出願時の技術常識に照らして、当該物質が当該用途の医薬として使用できることを当業者が理解できるようにする必要がある。
(知財高判令4.3.7(令和2(行ケ)10135号)、知財高判令4.1.19(令和2(行ケ)10122号)参照)
イ 発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願補正発明1及び本願補正発明7に関係する事項として、以下の摘記(A)~摘記(E)の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。
摘記(A)
「【発明の概要】
【0006】
本発明の態様は、AIDSおよびHIV感染症を処置するための強力なHIV-1プロテアーゼ阻害剤またはアスパルチルプロテアーゼ阻害剤に向けられる。HIV-1プロテアーゼ阻害剤は、HIV/AIDSの抗レトロウイルス処置の決定的構成要素になりうる。HIV-1プロテアーゼ阻害剤は、本発明のさまざまな態様のHIV-1プロテアーゼ阻害剤またはアスパルチルプロテアーゼ阻害剤が単独で、すなわち例えばRTIの非存在下で、投与される単剤治療レジメンにおけるHIV/AIDSの抗レトロウイルス処置の構成要素にもなりうる。
【0007】
本発明のさまざまな態様のHIV-1プロテアーゼ阻害剤またはアスパルチルプロテアーゼ阻害剤は、驚くべきことにそしてまた思いがけないことに、細胞培養アッセイにおいて例えばダルナビルより100倍近く強力な化合物をもたらす前例のない置換パターンを含有する概念的に新しい種類のHIV-1プロテアーゼ阻害剤である。いくつかの態様において、本発明のさまざまな態様のHIV-1プロテアーゼ阻害剤またはアスパルチルプロテアーゼ阻害剤は、ダルナビル抵抗性HIV-1変異体に対して著しい抗ウイルス活性を有しうる。」
摘記(B)
「【0035】
薬学的に許容される塩は、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から、従来の化学的方法によって合成することができる。いくつかの例において、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸型または遊離塩基型を、化学量論量の適当な塩基または酸と、水中もしくは有機溶媒中またはそれら2つの混合物中で反応させることによって、調製することができ、一般的には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒質が好ましい。適切な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985に見いだされ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
用語「溶媒和物」とは、非共有結合的分子間力によって結合した化学量論量または非化学量論量の溶媒をさらに含む化合物またはその塩を意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。
【0037】
用語「プロドラッグ」とは、生物学的条件下(インビトロまたはインビボ)で、加水分解し、酸化し、または他の形で反応して活性化合物、特に本発明の化合物を与える、化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例には、生物加水分解性部分、例えば生物加水分解性アミド、生物加水分解性エステル、生物加水分解性カルバメート、生物加水分解性カーボネート、生物加水分解性ウレイド、および生物加水分解性ホスフェート類似体を含む本発明の化合物の誘導体および代謝産物があるが、それらに限定されるわけではない。カルボキシル官能基を持つ化合物の具体的プロドラッグは、そのカルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子上に存在するどのカルボン酸部分のエステル化によっても、都合よく形成される。プロドラッグは、典型的には、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed.(Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)およびDesign and Application of Prodrugs(H. Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers GmbH)に記載されている方法など、周知の方法によって調製することができる。」
摘記(C)
「【0038】
本発明のさまざまな態様は、式(I)の化合物:
[図:0001403973000028.jpg]
またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートに向けられ、式中、nは0~3の整数であり; XおよびX1は、それぞれ独立して(-CH2-)mであって、ここでmは1または2であり; R1は-N3または-NR52であって、ここで各R5は、独立して、H、無置換もしくは置換アルキル、無置換もしくは置換アルケニル、または窒素保護基、例えば、t-ブチルオキシカルボニル基を含むアルキルオキシカルボニル基であり; R7はHまたは無置換もしくは置換アルキルであるか、あるいはR1およびR7は、それらが結合している炭素原子と一緒になって複素環を形成し; R2は無置換もしくは置換アルキル、無置換もしくは置換アルケニル、無置換もしくは置換アルコキシ、無置換もしくは置換ヒドロキシアルキル、ハロ、無置換もしくは置換ヘテロシクリルアルキルオキシ、-O-(CH2)0~2P(O)(OR6)2であって、ここで各R6は、独立して、Hまたは無置換もしくは置換アルキルまたは置換もしくは無置換アリールであるか、あるいは、R1は-NR52であって、ここで1つのR5と1つのR2とが連結されて基-(CH2)p(CHCH)d(CH2)qO-となり、ここで、pは0~5の整数であり、dは0または1であり、qは0~5の整数であり; R3は置換または無置換アルキルであり; R4は無置換もしくは置換アリール、無置換もしくは置換ベンゾチアゾール(benzthiazole)、無置換もしくは置換ベンゾオキサゾール、無置換もしくは置換ベンゾフラニル、または無置換もしくは置換インドリルである。
【0039】
いくつかの例では、R2は無置換もしくは置換アルキル、無置換もしくは置換アルケニル、無置換もしくは置換アルコキシ、無置換もしくは置換ヒドロキシアルキル、ハロ、無置換もしくは置換ヘテロシクリルアルキルオキシであり; R4は無置換もしくは置換ベンゾチアゾール、無置換もしくは置換ベンゾオキサゾール、無置換もしくは置換ベンゾフラニル、または無置換もしくは置換インドリルである。別の例では、R1は-NR52である。
【0040】
本発明のさまざまな他の態様は、式(Ia)の化合物:
[図:0001403973000029.jpg]
またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートに向けられ、式中、n、X、X1、R1、R2、R4、およびR7は本明細書において定義されるとおりである。
【0041】
本明細書では、式(Ib)および(Ic)の化合物:
[図:0001403973000030.jpg]
を含む、式(I)および(Ia)の化合物のすべてのジアステレオマーが考えられ、式中、n、X、X1、R1、R2、R3、R4、およびR7は本明細書において定義されるとおりである。
【0042】
いくつかの態様において、本明細書においてR4によって表される置換アリール基は、
[図:0001403973000031.jpg]
からなる群より選択することができる。
【0043】
いくつかの態様において、R4は
[図:0001403973000032.jpg]
であり、式中、R8はC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C3~C6シクロアルキルアミノ、C3~C6シクロアルキル-C3~C6ヘテロシクロアミノ、C3~C6ヘテロシクロ-C3~C6シクロアルキルアミノまたはC3~C6ヘテロシクロアミノであり; X2はS、OまたはNR9であって、R9はH、アルキル(alklyl)、シクロアルキル(cylcoalkyl)またはアルキルアリールであり; X3はS、O、NR9またはCR9であって、R9はH、アルキル(alklyl)、シクロアルキル(cylcoalkyl)またはアルキルアリールである。R4の非限定的な例として、-NHCH3、-NHCH(CH3)2、-NHシクロプロピル、-NHCH2CH(CH3)2、-NHC(CH3)3、および
[図:0001403973000033.jpg]
が挙げられる。
【0044】
式(I)および(Ia)~(Ic)の化合物の例として、以下、またはそれらの薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
[図:0001403973000034.jpg]
[図:0001403973000035.jpg]
[図:0001403973000036.jpg]
[図:0001403973000037.jpg]
[図:0001403973000038.jpg]
[図:0001403973000039.jpg]
[図:0001403973000040.jpg]
[図:0001403973000041.jpg]
[図:0001403973000042.jpg]
[図:0001403973000043.jpg]
[図:0001403973000044.jpg]
[図:0001403973000045.jpg]
[図:0001403973000046.jpg]
[図:0001403973000047.jpg]
[図:0001403973000048.jpg]
[図:0001403973000049.jpg]
[図:0001403973000050.jpg]
[図:0001403973000051.jpg]
[図:0001403973000052.jpg]
・・・
【0046】
式(I)および(Ia)~(Ic)の化合物の例として、
[図:0001403973000053.jpg]
またはそれらの薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートも挙げられるが、それらに限定されるわけではなく、式中、eは0または1であり; R’はHまたは無置換もしくは置換アルキル(例えばメチル)である。
【0047】
式(I)および(Ia)~(Ic)の化合物の例として、
[図:0001403973000054.jpg]
またはそれらの薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートも挙げられるが、それらに限定されるわけではなく、式中、eは0または1(例えば0)であり; X7は
[図:0001403973000055.jpg]
である。
【0048】
式(I)および(Ia)~(Ic)の化合物の例として、
[図:0001403973000056.jpg]
またはそれらの薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートも挙げられるが、それらに限定されるわけではなく、式中、eは0または1(例えば0)であり; R’はHまたは無置換もしくは置換アルキル(例えばメチル)であり; 各R’’は独立してHまたはハロ(例えばF)であり; X4はCHまたはNであり; X5はCHまたはNである。いくつかの例において、R’はHであり; R’’のうちの1つだけがハロ(例えば3-Fまたは4-F)であり; X4およびX5のうちの1つだけがN(例えばX4がN)である。別の例において、R’はHであり; 両R’’基はHであり; X4およびX5のうちの1つだけがN(例えばX5がN)である。
【0049】
式(I)および(Ia)~(Ic)の化合物の例として、
[図:0001403973000057.jpg]
またはそれらの薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートも挙げられるが、それらに限定されるわけではなく、式中、eは0または1(例えば0)であり; R’はHまたは無置換もしくは置換アルキル(例えばメチル)であり; X6は
[図:0001403973000058.jpg]
である。いくつかの例において、R’はHである。
【0050】
式(I)および(Ia)~(Ic)の化合物の例として、
[図:0001403973000059.jpg]
またはそれらの薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートも挙げられるが、それらに限定されるわけではなく、式中、fは0、1、2、3、4または5であり; R8はC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C3~C6シクロアルキルアミノ(例えばイソプロピルまたはシクロプロピル)、C3~C6シクロアルキル-C3~C6ヘテロシクロアミノ、C3~C6ヘテロシクロ-C3~C6シクロアルキルアミノまたはC3~C6ヘテロシクロアミノである。
【0051】
式(I)および(Ia)~(Ic)の化合物の例として、
[図:0001403973000060.jpg]
またはそれらの薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートも挙げられるが、それらに限定されるわけではなく、式中、fは0、1、2、3、4または5である。
【0052】
本発明のさまざまな態様は、式(II)の化合物
[図:0001403973000061.jpg]
またはそれらの薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートに向けられ、式中、nは0~3の整数であり; XおよびX1は、それぞれ独立して(-CH2-)mであって、ここでmは1または2であり; R5は無置換もしくは置換アルキルであり; R7はHまたは無置換もしくは置換アルキルであり; R2は無置換もしくは置換アルキル、無置換もしくは置換アルケニル、無置換もしくは置換アルコキシ、無置換もしくは置換ヒドロキシアルキル、ハロ、無置換もしくは置換ヘテロシクリルアルキルオキシ、-O-(CH2)0~2P(O)(OR6)2であって、ここで各R6は、独立して、Hまたは無置換もしくは置換アルキルまたは置換もしくは無置換アリールであり; R3は置換または無置換アルキルであり; R4は無置換もしくは置換アリール、無置換もしくは置換ベンゾチアゾール、無置換もしくは置換ベンゾオキサゾール、無置換もしくは置換ベンゾフラニル、または無置換もしくは置換インドリルである。
【0053】
本発明のさまざまな他の態様は、式(IIa)の化合物
[図:0001403973000062.jpg]
またはそれらの薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートに向けられ、式中、n、X、X1、R2、R4、R5、およびR7は本明細書において定義されるとおりである。
【0054】
本明細書では、式(IIb)および(IIc)の化合物:
[図:0001403973000063.jpg]
を含む、式(II)および(IIa)の化合物のすべてのジアステレオマーが考えられ、式中、n、X、X1、R1、R2、R4、R5、およびR7は本明細書において定義されるとおりである。
【0055】
いくつかの態様では、本明細書においてR4によって表される置換アリール基を、
[図:0001403973000064.jpg]
[図:0001403973000065.jpg]
からなる群より選択することができる。
【0056】
いくつかの態様において、R4は
[図:0001403973000066.jpg]
であり、式中、R8はC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C3~C6シクロアルキルアミノ、C3~C6シクロアルキル-C3~C6ヘテロシクロアミノ、C3~C6ヘテロシクロ-C3~C6シクロアルキルアミノまたはC3~C6ヘテロシクロアミノであり; X2はS、OまたはNR9であって、R9はH、アルキル(alklyl)、シクロアルキル(cylcoalkyl)またはアルキルアリールであり; X3はS、O、NR9またはCR9であって、R9はH、アルキル(alklyl)、シクロアルキル(cylcoalkyl)またはアルキルアリールである。R4の非限定的な例として、-NHCH3、-NHCH(CH3)2、-NHシクロプロピル、-NHCH2CH(CH3)2、-NHC(CH3)3、および
[図:0001403973000067.jpg]
が挙げられる。」
摘記(D)
「【0057】
本発明のさまざまな態様では、本発明のさまざまな態様の1種または複数種の化合物(例えば式(I)、(Ia)~(Ic)、(II)、および(IIa)~(IIc)の化合物)と1種または複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤もしくはそれらの組み合わせとを含む薬学的組成物も考えられる。「薬学的組成物」は、対象(例えば哺乳動物)への投与に適した化学的または生物学的組成物を指す。そのような組成物は、限定するわけではないが、口腔粘膜、皮膚、皮膚上、硬膜外、注入、吸入、動脈内、心臓内、脳室内、皮内、筋肉内、鼻腔内、眼内、腹腔内、脊髄内、髄腔内、静脈内、経口、非経口、肺、浣腸剤または坐剤による経直腸、皮下、真皮下、舌下、経皮、および経粘膜などといった、いくつかある経路の1つまたは複数による投与のために特別に製剤化されうる。加えて、投与は、カプセル剤、滴剤、フォーム剤、ゲル剤、ガム剤、注射剤、溶液剤、貼付剤、丸剤、多孔性小袋(porous pouch)、粉剤、錠剤、または他の適切な投与手段を使って行うことができる。
【0058】
「薬学的賦形剤」または「薬学的に許容される賦形剤」は(時には液状の)担体を含み、その中に活性治療作用物質が調合される。一般に賦形剤は、製剤に、化学的および/または生物学的安定性ならびに放出特徴は与えうるが、薬理学的活性はなにも与えない。適切な製剤の例は、例えばRemington, The Science And Practice of Pharmacy, 20th Edition,(Gennaro, A. R., Chief Editor), Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000に見いだすことができ、この文献は、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0059】
本明細書にいう「薬学的に許容される担体」または「賦形剤」には、生理学的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤が含まれる。一態様において、担体は非経口投与に適している。あるいは、担体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、舌下、または経口投与に適しうる。薬学的に許容される担体として、滅菌水溶液または滅菌水性分散液、および滅菌注射用溶液または滅菌注射用分散液を即時調製するための滅菌粉末が挙げられる。薬学的活性物質のためのそのような媒質および作用物質の使用は、当技術分野においては周知である。従来の媒質または作用物質は、それらが活性化合物と不適合でない限り、本発明の薬学的組成物におけるその使用が考えられる。組成物には補助活性化合物も組み込むことができる。
【0060】
薬学的組成物は滅菌されており、製造条件下および貯蔵条件下で安定でありうる。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコール)、ならびにそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散系の場合は要求される粒径の維持、および界面活性剤の使用などによって維持することができる。
【0061】
多くの場合、組成物には等張化剤、例えば糖類、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含めることが、好ましいであろう。注射用組成物の長時間にわたる吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンなどを組成物中に含めることによって引き起こすことができる。そのうえ、本明細書に記載する化合物は、持効性製剤中に、例えば遅放性ポリマーを含む組成物中に、調合することができる。活性化合物は、急速な放出から化合物を保護することになる担体を使って、例えばインプラントおよびマイクロカプセル化送達システムなどといった放出制御製剤を使って、調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、およびポリ乳酸ポリグリコール酸コポリマー(PLG)などの生分解性生体適合性ポリマーを使用しうる。そのような製剤を調製するための方法は当業者には数多く知られている。
【0062】
本明細書では経口投与剤形も考えられる。本発明の薬学的組成物は、カプセル剤(硬または軟)、錠剤(フィルムコート錠、腸溶性錠または非コート錠)、散剤または顆粒剤(コート剤もしくは非コート剤)または液剤(溶液剤もしくは懸濁剤)として経口投与しうる。製剤は、都合がよいように、当技術分野において周知のどの方法で調製してもよい。本発明の薬学的組成物は、1種または複数種の適切な製造助剤または賦形剤、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、希釈剤、流動剤、緩衝剤、保湿剤、保存剤、着色剤、甘味料、香料、および薬学的に適合する担体を含みうる。
【0063】
具陳する態様のそれぞれについて、当技術分野において公知のさまざまな剤形によって、化合物を投与することができる。当業者に公知の生物学的に許容される任意の剤形およびそれらの組み合わせが考えられる。そのような剤形の例には、咀嚼錠、速溶錠、発泡錠、再構成用散剤、エリキシル剤、液剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、多層錠剤、二層錠剤、カプセル剤、軟ゼラチンカプセル剤、硬ゼラチンカプセル剤、カプレット、口中錠、チュアブル口中錠、ビーズ剤、散剤、ガム剤、顆粒剤、粒剤、微粒子剤、分散性顆粒剤、カシェ剤、潅注液、坐剤、クリーム剤、外用剤、吸入剤、エアロゾル吸入剤、貼付剤、粒子吸入剤、インプラント、デポーインプラント、経口摂取剤(ingestibles)、注射剤(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内注射剤を含む)、注入剤、およびそれらの組み合わせがあるが、それらに限定されるわけではない。
【0064】
混合によって含めることができる他の化合物は、例えば医学的に不活性な成分(例えば固形および液状の希釈剤)、例えば錠剤またはカプセル剤用のラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、デンプンまたはリン酸カルシウム、軟カプセル剤用のオリーブ油またはオレイン酸エチル、および懸濁剤または乳剤用の水または植物油;シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムおよび/またはポリエチレングリコールなどの潤滑剤;コロイド状粘土などのゲル化剤;トラガカントゴムまたはアルギン酸ナトリウムなどの増粘剤、デンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンなどの結合剤;デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウムなどの崩壊剤;発泡混合物;染料;甘味料;レシチン、ポリソルベートまたはラウリル硫酸などの湿潤剤;および他の治療上許容される補助成分、例えばそのような製剤用の公知の添加剤である保水剤、保存剤、緩衝剤および酸化防止剤である。
【0065】
経口投与用の分散液は、シロップ剤、乳剤、溶液剤、または懸濁剤であることができる。シロップ剤は、担体として、例えばサッカロースまたはサッカロースとグリセロールおよび/もしくはマンニトールおよび/もしくはソルビトールを含有することができる。懸濁剤および乳剤は、担体として、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含有することができる。」
摘記(E)
「【0066】
本発明のさまざまな態様による治療組成物中の活性化合物の量は、個体の疾患状態、年齢、性別、体重、病歴、リスク因子、疾患に対する素因、投与経路、既存の処置レジメン(例えば他の薬物療法との考えうる相互作用)、および体重などといった因子に応じて変動しうる。投薬レジメンは最適な治療応答が得られるように調節しうる。例えば単回ボーラス投与を行ってもよいし、ある期間にわたって分割量を数回投与してもよいし、治療状況の要求に応じて、用量を比例的に増減してもよい。
【0067】
本明細書にいう「投薬単位形(dosage unit form)」とは、処置される哺乳動物対照への単位投薬量として好適な物理的に離散した単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された前もって決定された分量の活性化合物を必要な薬学的担体と共に含有する。本発明の投薬単位形の仕様は、活性化合物に特有の特徴および達成しようとする特定治療効果、ならびに個体における感受性の処置のためにそのような活性化合物を配合する技術に固有の制約によって決まり、それらに直接依存する。本発明の化合物またはその適当な薬学的組成物が有効である哺乳動物(例えばヒト)における状態の処置に治療的に使用する場合は、本発明の化合物を有効量で投与することができる。本発明に適した投薬量は、組成物、薬学的組成物、または本明細書に記載する他の任意の組成物でありうる。
【0068】
具陳した態様のそれぞれについて、投薬量は、典型的には1日に1回、2回、または3回投与されるが、それより頻繁な投与間隔も可能である。投薬量は、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、および/または7日ごと(週に1回)に投与してもよい。ある態様では、投薬量を、最長30日(30日を含む)にわたって、好ましくは7~10日にわたって、毎日投与しうる。別の一態様では、投薬量を10日にわたって1日2回投与しうる。患者が慢性疾患または慢性状態の処置を必要とする場合は、徴候および/または症状が続く限り、投薬量を投与することができる。患者は「維持処置」を必要とすることもあり、その場合、患者は数ヶ月、数年または生存中はずっと投薬を受けていく。加えて、本発明の組成物は、症状の再発予防を達成するための組成物であってもよい。例えば投薬量は、リスクがある患者における症状の発生を防止するために、特に無症候性の患者に、1日に1回または2回投与しうる。
【0069】
本明細書に記載する組成物は、次に挙げるどの経路でも投与しうる:口腔粘膜、皮膚上、硬膜外、注入、吸入、動脈内、心臓内、脳室内、皮内、筋肉内、鼻腔内、眼内、腹腔内、脊髄内、髄腔内、静脈内、経口、非経口、肺、浣腸剤または坐剤による経直腸、皮下、真皮下、舌下、経皮、および経粘膜。好ましい投与経路は口腔粘膜および経口である。投与は、局所的であることができ、その場合は、組成物が疾患(例えば炎症)の部位の近くに、限局的に、その部位に、その部位付近に、またはその部位の近傍に直接投与される。また、投与は全身性であることもでき、その場合は、組成物が患者に与えられ、広く体じゅうを通過し、その結果、疾患の部位に到達する。局所投与は、疾患を包含し、かつ/または疾患に冒されており、かつ/または疾患の徴候および/または症状が活動性であるか、疾患の徴候および/または症状が生じる可能性がある、細胞、組織、器官、および/または器官系に投与することができる。投与は局所効果を持つ外用であることができ、組成物はその作用が望まれる場所に直接塗布される。投与は経腸投与であることができ、その場合、所望の効果は全身性(非局所性)であって、組成物は消化管を通して与えられる。投与は非経口投与であることができ、その場合は、所望の効果は全身性であって、組成物は消化管以外の経路によって与えられる。
【0070】
いくつかの態様において、本発明のさまざまな態様では、治療有効量の1種または複数種の本発明のさまざまな態様の化合物(例えば式(I)、(Ia)~(Ic)、(II)、および(IIa)~(IIc)の化合物)を含む組成物が考えられる。いくつかの態様において、組成物は、HIV(例えばHIV-1)感染症またはAIDSを処置するための方法であって、治療有効量の1種または複数種の任意の上記請求項の化合物を、それを必要とする患者に投与する工程を含む方法において有用である。いくつかの局面において、本発明のさまざまな態様では、HIV感染症またはAIDSの緩和を必要とする患者を処置するための医薬として使用するための、式(I)、(Ia)~(Ic)、(II)、および(IIa)~(IIc)の化合物が考えられる。
【0071】
本明細書において使用する用語「治療有効量」とは、組織系、動物またはヒトにおいて研究者、獣医、医師または他の臨床家が求めている生物学的または医学的応答(処置される疾患または障害の症状の軽減を含む)を引き出す、1種または複数種の本発明のさまざまな態様の化合物(例えば式(I)、(Ia)~(Ic)、(II)、および(IIa)~(IIc)の化合物)の量を指す。いくつかの態様において、治療有効量は、任意の医学的処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で疾患または疾患の症状を処置しまたは軽減しうる量である。ただし、本明細書に記載する化合物および組成物の総1日量は、担当医が妥当な医学的判断の範囲内で決定しうると理解すべきである。どの特定患者についても、具体的な治療有効量レベルは、処置される状態およびその状態の重症度;使用する具体的化合物の活性;使用する具体的組成物;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事;投与時間、投与経路、使用する具体的化合物の排泄速度;処置の継続時間;使用する具体的化合物と併用されるまたは同時に使用される薬物などといった、研究者、獣医、医師または他の臨床家に周知の因子を含む、さまざまな因子に依存するであろう。1種または複数種の本明細書に記載する化合物の投与中に生じるかも知れないあらゆる毒性または他の望ましくない副作用に照らして治療有効量を選択できることも理解される。
【0072】
いくつかの態様において、本発明のさまざまな態様の化合物は、約1fM~約200nM(例えば約100fM~約200nM、約100fM~約100pM、約250fM~約100pM、約500fM~約5pM、約5pM~約100pM、約50pM~約250pM、約500pM~約100nMまたは約300pM~約75nM)のHIV-1プロテアーゼ阻害定数(Ki)を有する。
【0073】
別の態様において、本発明のさまざまな態様の化合物は、インビトロで、野生型実験室株HIV-1LAIに対して、50%阻害濃度(IC50)が約1fM~約200nM(例えば約100fM~約200nM、約100fM~約100pM、約250fM~約100pM、約500fM~約5pM、約10pM~約50nM、約10pM~約500pM、約100pM~約750pM、約500pM~約1nMまたは約500pM~約50nM)である抗ウイルス活性を有する。
【0074】
さらに別の態様において、本発明のさまざまな態様の化合物は、約200fM~約100nM(例えば約200fM~約600fM、約200fM~約50pM、約500fM~約500pM、約300fM~約1pM)のダルナビル抵抗性HIV-1変異体(例えばNL4-3R、DRVRP20、DRVRP30、およびDRVRP51)抗ウイルスIC50を有する。さらなる別の態様において、本発明のさまざまな態様の化合物は、約50pM~約50nM(例えば約100pM~約50nMまたは約500pM~約10nM)のダルナビル抵抗性HIV-1変異体(例えばNL4-3R、DRVRP20、DRVRP30、およびDRVRP51)IC50を有する。さらに別の態様において、本発明のさまざまな態様の化合物は、約1nM~約100nM(例えば約10nM~約75nMまたは約10nM~約75nM)のダルナビル抵抗性HIV-1プロテアーゼ(例えばNL4-3R、DRVRP20、DRVRP30、およびDRVRP51)抗ウイルスIC50を有する。」
ウ 本願補正発明1について
(ア) 検討
a 本願補正発明1は、化合物(審決注:「塩」及び「溶媒和物」は、広義の「化合物」の1種であり、以下「化合物」という場合、「塩」及び「溶媒和物」を含む概念を意味することがある。)という物の発明である。
そうすると、上記ア(ア)で説示したように、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が、本願補正発明1について実施可能要件を満たすためには、当業者が、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本願補正発明1に係る化合物を少なくとも製造できることが必要である。
b 本願明細書の発明の詳細な説明には、発明の概要(摘記(A))、技術文献の引用を伴う用語の定義及び説明(摘記(B))、本願補正発明1の化合物を含む式(I)の化合物や同式に包含される幾つかの個々の化合物の例示(摘記(C))、当該化合物を含む薬学的組成物とした場合の他の成分及びその薬学的組成物の態様の説明(摘記(D))、並びに当該薬学的組成物の投薬量、投薬態様及び当該化合物の抗ウイルスIC50等の範囲(摘記(E))が記載されているが、式(I)の化合物の製造に関する記載は全くない。すなわち、摘記(C)には、式(I)の化合物及び同式に包含される幾つかの個々の化合物の例示が、物性値等の実際に製造されたことが確認できるデータを伴わずに記載されているのみであり、原料及び反応スキーム並びに製造の参考となる技術文献などの一般的な記載すらなく(なお、摘記(B)に記載の技術文献は、化合物の合成に関する文献ではなく、「塩」や「プロドラック」に関する一般的な技術を補足説明するものにすぎない。)、本願明細書の発明の詳細な説明の記載全体を参照しても、分子構造が特定できる個々の化合物について、原料や製造工程、及び反応条件等の開示を伴って、具体的に化合物を製造した実施例は全く記載されていない。
c 本願明細書の発明の詳細な説明には、「本発明のさまざまな態様のHIV-1プロテアーゼ阻害剤またはアスパルチルプロテアーゼ阻害剤」について、「細胞培養アッセイにおいて例えばダルナビルより100倍近く強力な化合物をもたらす前例のない置換パターンを含有する概念的に新しい種類のHIV-1プロテアーゼ阻害剤である」という記載はあるものの(摘記(A))、ダルナビルの製造方法や、ダルナビルの製造方法と本願補正発明1の化合物の製造方法との関係等は何ら記載されていない。
ここで、ダルナビルは、以下の分子構造の化合物(審決注:本願の審査で引用された引用文献1(米国特許出願公開第2013/0289067号明細書、以下「参考文献1」ということがある。)の69頁「EAMPLES TABLE 3」の「Entry 5」より転記した。α~γは化合物の部位を特定するために当審合議体が便宜的に追記した記号である。)であるところ、
[図:0001403973000068.jpg]
本願補正発明1の化合物の分子構造は、少なくとも次の点でダルナビルとは異なる複数の構造部分を有するものである。
・αの炭素原子が、窒素原子で結合した種々の置換基を有する。
・βのフェニル基(ph)が、3,5-ジフルオロフェニル基:
[図:0001403973000069.jpg]
に変わっている。
・γの4-アミノフェニル基が、2位に種々の置換アミノ基を有するベンゾチアゾール-6-イル基:
[図:0001403973000070.jpg]
に変わっている。
d そして、本願出願時において、ダルナビルの製造方法が既に知られていたとしても、ダルナビルと同様の製造方法によって、本願補正発明1の化合物を実際に製造できることが技術常識であったとはいえない。すなわち、ダルナビルの製造方法が既知であったとしても、本願補正発明1の化合物は、ダルナビルとは、少なくとも上記α~γの部位の構造部分が異なるうえ、上記式中の左側の含酸素飽和縮合環が、テトラヒドロフラニル-テトラヒドロフラニル(THF-THF)環系:
[図:0001403973000071.jpg]
ではなく、テトラヒドロフラニル-テトラヒドロピラニル(THF-THP)環系:
[図:0001403973000072.jpg]
又は
[図:0001403973000073.jpg]
である点で、基本骨格が同一とはいえない化合物まで含むものであるから、その製造において、用いる原料や製造工程、及び反応条件等が、ダルナビルとは異なることは明らかであり、具体的にいかなる製造方法とすれば、本願補正発明1の化合物を製造することができるかについて、本願明細書の発明の詳細な説明には一切の記載がなく、そのことが本願出願時の技術常識であったともいえないから、本願補正発明1の化合物を製造するためには、当業者において、通常期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験を要するというべきである。
e 以上のとおり、本願補正発明1の化合物は、当業者が、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、製造できるとはいえない。
(イ) 請求人の主張について
a 請求人の主張の概要
請求人は、補正された審判請求書において、「当業者は、一旦化合物の構造を本願明細書中で把握できたならば、本願明細書に記載された化合物自体の構造、および本技術分野における出願時の技術常識を参照して、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を要することなく、この出願の補正後の請求項に記載の化合物を調製することができる」旨とともに、その具体的な理由として、以下の(a)~(d)の点を主張している。
(a) ダルナビルに関連する化合物の技術分野は極めて高い技術水準にあり、その当業者は、極めて高い水準のダルナビル関連化合物に係る技術的知見を有している。
(b) ダルナビルは、本願の発明者であるゴーシュ博士により2007年に見出された、薬剤耐性HIVの治療のために用い得るとしてFDAにより承認されている化合物であり(Bioorg. Med. Chem. 15: 7576-7580 (2007))、ゴーシュ博士は、少なくとも薬剤耐性HIVの治療に有効であることが示された更なる化合物の開発を進展させてきた。
(c) ダルナビルに関連する化合物およびその基本的な合成方法は、例えば、米国特許第9359317号明細書、米国特許第879135号明細書及び米国特許第8563597号明細書(対応日本出願:特表2013-536871号公報(審決注:以下「参考文献2」という。))、米国特許第9346820号明細書及び米国特許第9670225号明細書(対応日本出願:特表2017-515914号公報(審決注:以下「参考文献3」という。対応する国際公開は国際公開第2015/175994号。))などに記載されており、本技術分野の当業者においてよく知られており、審査で引用された引用文献1(ゴーシュ博士の文献)(審決注:参考文献1である米国特許出願公開第2013/0289067号明細書)にも本技術分野の技術水準が記載され、化合物の基本的合成方法なども記載されている。
(d) したがって、一旦本願明細書に記載される化合物の構造を理解した当業者であれば、これらの文献に開示されるダルナビルに関連する化合物に係る技術的知見および有機化学の通常の知見を踏まえて、この出願の補正後の請求項に記載の化合物を容易に合成し、実施することができる。
b 請求人の主張についての当審合議体の判断
(a) 上記a(a)の主張に関し、「ダルナビルに関連する化合物の技術分野は極めて高い技術水準」にあるとされているが、その根拠、及び、何に対して「極めて高い技術水準」にあるのかが不明であり、「極めて高い水準のダルナビル関連化合物に係る技術的知見」が、具体的にどのような技術的知見を意味しているのかも不明であって、本願補正発明1の化合物を過度の試行錯誤等を要することなく当業者が製造できることを何ら具体的に示すものではないから、当該主張は上記(ア)の判断を左右するものではない。
(b) 上記a(b)の主張に関し、上記(ア)cでも説示したとおり、ダルナビルが本願出願時に既に知られており製造されていたとしても、本願補正発明1の化合物は、ダルナビルと比較すると、その分子構造が少なくとも3箇所以上で異なり、基本骨格が同一とはいえない化合物まで含むものであるから、ダルナビルが製造されていたからといって、本願補正発明1の化合物を過度の試行錯誤等を要することなく当業者が製造できることの根拠とはならない。
(c) 上記a(c)及び(d)の主張に関し、参考文献1~3のいずれも、ダルナビルについて、上記α~γの部位の構造部分を全て変更し、場合によっては、含酸素飽和縮合環の部分をTHF-THP環系に変更した、本願補正発明1の化合物を実際に製造できることを示すものではない。また、請求人が主張する「本技術分野の技術水準」及び「有機化学の通常の知見」が具体的にどのような事項を指しているのか不明であり、かかる主張は上記(ア)の判断を左右するものではない。
したがって、参考文献1~3を参照しても、ダルナビルと同様に、本願補正発明1の化合物を過度の試行錯誤等を要することなく当業者が製造できるとはいえない。
(d) 以上のとおりであるから、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
エ 本願補正発明7について
(ア) 検討
a 本願補正発明7は、「薬学的組成物」という物の発明であって、「治療有効量の1種または複数種の請求項1~5のいずれか一項記載の化合物」を含み、「患者のHIV感染症を処置する」ことを用途とする医薬用途発明である。
そうすると、上記ア(イ)で説示したように、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が、本願訂正発明7について実施可能要件を満たすためには、本願明細書の発明の詳細な説明において、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、「治療有効量の1種または複数種の請求項1~5のいずれか一項記載の化合物」を含む「薬学的組成物」を、製造することができることに加えて、「患者のHIV感染症を処置する」という医薬用途に使用できることにつき、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項を記載し、出願時の技術常識に照らして、当該用途の医薬として使用できることを当業者が理解できることが必要である。
b 本願明細書の発明の詳細な説明には、上記ウ(ア)bで説示したとおり、本願補正発明7の薬学的組成物が含む本願補正発明1の化合物の製造方法について記載されておらず、上記ウで述べたとおり、本願補正発明1の化合物は、当業者が、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本願補正発明1に係る化合物を製造できるとはいえないから、本願補正発明7の薬学的組成物を製造できるものとはいえない。
さらに、摘記(D)及び(E)を参照しても、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願補正発明7の薬学的組成物に関し、「患者のHIV感染症を処置する」という用途に使用できることを裏付ける、具体的な薬理データ等の実際に薬理作用を有することを当業者が把握できるような記載があるとはいえない。すなわち、摘記(E)には、具体的な化合物の特定を伴わない「本発明のさまざまな態様の化合物」が有するとされる、HIV-1プロテアーゼ阻害定数(Ki)の範囲(約1fM~約200nM)、インビトロでの野生型実験室株HIV-1LAIに対する50%阻害濃度(IC50)の範囲(約1fM~約200nM)、及び、ダルナビル抵抗性HIV-1変異体に対する抗ウイルス活性(IC50)の範囲(約200fM~約100nM)等が、一般的に示されているにすぎない(段落0072~0074)。そして、当該一般的な活性の範囲の記載は、具体的な化合物とその活性との対応関係を特定するものでないから、当該範囲内の活性を有する化合物が実際に存在することを客観的に確認できる根拠がないままに提示されたものといわざるを得ない。その一方で、ある化合物が有する薬理活性は、その分子構造から予測することが困難であるから、当該一般的な記載によって、本願補正発明7の薬学的組成物が含む化合物が、当該範囲内の活性を実際に有することを、当業者が認識できるとはいえない。
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願補正発明7の薬学的組成物が「患者のHIV感染症を処置する」という用途に使用できることについて、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項が記載されているとはいえない。
c そして、本願出願時の技術常識に照らしても、医薬用途発明においては、一般に、物質名や化学構造などが示されることのみによっては、当業者においてその有用性を予測することは困難である(例えば、上記ウ(イ)a(c)の参考文献1の表1及び参考文献2の表1の記載によれば、それぞれ、化合物全体としてみれば類似の分子構造を有するといえる場合であっても、わずかな構造の差違、例えば、飽和縮合環の部位における環構成元素としての酸素の有無や立体配置の違いのみで、KiやIC50の値が確認できなかったり、著しく異なったりしていることからも理解できるとおり、実際の化合物の有用性が予測困難であることは技術常識である。)から、本願補正発明7の薬学的組成物が含む化合物と構造の一部が類似するダルナビルがHIV-1プロテアーゼ阻害活性を有することが知られていたとしても、本願補正発明7の薬学的組成物が「患者のHIV感染症を処置する」という用途に使用できることを、当業者が認識できるとはいえない。
d 以上のとおり、本願補正発明7の薬学的組成物が含む本願補正発明1の化合物は、当業者が、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、製造できるとはいえないから、本願補正発明7の薬学的組成物を製造できるものとはいえないし、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願補正発明7の薬学的組成物が「患者のHIV感染症を処置する」という用途に使用できることにつき、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項を記載したものでなく、かつ、本願出願時の技術常識に照らして、当該組成物が当該用途に使用できることを当業者が理解できるものではないから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願補正発明7について実施可能要件を満たすものとはいえない。
(イ) 請求人の主張について
a 請求人の主張の概要
請求人は、補正された審判請求書において、以下(a)~(d)の点を主張している。
(a) 本願明細書には、本発明の化合物の特性や用途が具体的に記載されており、医薬用途に関し、明細書の段落0072~0074等には、この出願の化合物がダルナビル抵抗性HIV-1プロテアーゼ抗ウイルス活性を有する旨記載され、例えば、明細書には、「別の態様において、本発明のさまざまな態様の化合物は、インビトロで、野生型実験室株HIV-1LAIに対して、・・・である抗ウイルス活性を有する。」(段落0073)、「さらに別の態様において、本発明のさまざまな態様の化合物は、約1nM~約100nM(例えば約10nM~約75nMまたは約10nM~約75nM)のダルナビル抵抗性HIV-1プロテアーゼ(例えばNL4-3R、DRVRP20、DRVRP30、およびDRVRP51)抗ウイルスIC50を有する。」(段落0074の最後の文)などと記載されている。
(b) 追加で提出した活性を比較したデータについて
(b-1) 化合物1および2(compound1及び2)は、この出願の補正後の請求項5(最後の2つの化合物)に記載の化合物であり、請求項1に記載の化合物の代表例の一つであるのに対し、化合物3(compound3)は、ベンジル基が無置換である、補正後の請求項1に含まれない化合物である。
[図:0001403973000074.jpg]
下記データでは、ダルナビル(darunavir)を対照化合物として用いており、ダルナビルは、HIVおよびADISを治療又は予防に使用される抗レトロウイルス薬として許可されている化合物であり、薬剤耐性HIV-1の出現に対して高いジェネティックバリアを有する、有効かつ良好な耐容性を示すプロテアーゼ阻害剤である。
それぞれの化合物について、野生型HIV-1NL4-3および5つの組み換え臨床HIV-1分離株(中央値が7.5年間にわたって多重プロテアーゼ阻害剤を含む抗レトロウイルス治療を受けた患者から分離されたもの)に対する抗HIV活性を評価した。これらのウイルスは、これらのプロテアーゼをコードする遺伝子におけるアミノ酸置換基に関連するプロテアーゼ阻害剤(PI)-抵抗性を獲得しており、アッセイの結果を下記の表1に示す。
EC50は半数効果濃度を示し(すなわち、特定の暴露時間の後、最低値からの最大反応の50%を示す阻害剤の濃度を意味する。)、EC50は各阻害剤の有効性の評価基準である。
表1
[図:0001403973000075.jpg]
(b-2) 上述の表1にも示したとおり、この出願の補正後の請求項1に記載の化合物は、野生型HIV-1活性と比較して、阻害活性を保持するか、あるいはrCLHIV-1単離体に対する活性において顕著な改善効果を示している。
例えば、化合物1は、ある分離株においてよりよい活性を示し、rCLHIV-1V40に関しては、EC50が2.7nMであることを示している。また例えば、化合物2は、ある分離株においてよりよい活性を示し、rCLHIV-1V40に関しては、EC50が2.1nMであることを示している。これに対し、ダルナビルでは、rCLHIV-1V40に関し、EC50が11.9nM、化合物3では27.3nMであり、本願化合物の抗ウイルス活性が、ダルナビルや無置換のベンジル基を有する類似化合物と比較して、顕著に優れていることを示している。
すなわち、特定の化合物の提供、特に、HIV-1に対する優れた活性を有する化合物を提供するという課題に対応して、請求項に記載の化合物が所望の活性を有することが、明確に把握できる。
(b-3) このような上記表1のデータは、明細書中の化合物の薬理学的活性の記載を単に強調するものであり、審理に際し、考慮してしかるべきものである。
(c) 化合物1および2は、この出願の補正後の請求項1に記載の化合物のうちの代表例の一つであるが、この出願の補正後の請求項1に記載の化合物は、これらの化合物1、2の構造を踏まえ、合理的な範囲の記載となっているから、当業者は、明細書の記載および上記データをも踏まえ、この出願の補正後の請求項に記載の発明の医薬用途を理解できる。
b 請求人の主張についての当審合議体の判断
(a) 上記a(a)の主張に関し、上記(ア)bで述べたとおり、明細書の段落0072~0074の記載は、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項の記載に該当するとはいえない。
(b) 上記a(b)の主張に関し、上記(ア)のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは、本願出願時の技術常識に照らして、本願補正発明7の薬学的組成物が「患者のHIV感染症を処置する」という用途に使用できることを、当業者が理解できるとはいえないから、出願後に追加の実験データを提出して、本願明細書の発明の詳細な説明の記載の不足を補うことはできず、上記追加の実験データをもって、本願明細書の発明の詳細な説明が、本願補正発明7の薬学的組成物が含む化合物が、同組成物を「患者のHIV感染症を処置する」という用途に使用できる薬理薬理作用を有することを、当業者が把握することができるように記載されているものと認めることはできない。
そうすると、請求人が追加で提出した活性を比較したデータは、本願補正発明7の薬学的組成物が「患者のHIV感染症を処置する」という用途に使用できることについて、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項として、参酌することはできない。
(c) 上記a(c)の主張に関し、請求人は、当業者は、明細書の記載および上記データをも踏まえ、この出願の補正後の請求項に記載の発明の医薬用途を理解できる旨を主張しているが、本願補正発明7の薬学的組成物が「患者のHIV感染症を処置する」ことを医薬用途とするものであることは、本件補正後の請求項7の記載から明らかであるものの、本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは、本願出願時の技術常識に照らして、本願補正発明7の薬学的組成物が「患者のHIV感染症を処置する」という用途に使用できることについて、当業者が理解できるとはいえないことは、上記(ア)で説示したとおりである。
(d) したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
オ 理由A(実施可能要件)についてのまとめ
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願補正発明1及び本願補正発明7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3) 理由B(サポート要件)について
ア サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
(知財高判平17.11.11(平17(行ケ)10042号)参照)
イ 検討
本願明細書の発明の詳細な説明には、上記(2)イに摘記したとおりの事項が記載されているところ、当該発明の詳細な説明の記載(特に、摘記(A)の段落0006の記載)、及び、本件補正後の特許請求の範囲の記載によれば、本願補正発明1の課題は、「AIDSおよびHIV感染症を処置するための強力なHIV-1プロテアーゼ阻害剤またはアスパルチルプロテアーゼ阻害剤として用いることができる化合物の提供」であり、本願補正発明7の課題は、「患者のHIV感染症を処置するための薬学的組成物の提供」にあるものと認められる。
しかしながら、上記(2)ウで詳述したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、出願時の技術常識に照らし、本願補正発明1の化合物の製造ができるように記載されておらず、そもそも本願補正発明1の化合物は、物性値等の実際に製造されたことが確認できるデータも伴わずに単に例示されているにとどまり、また、上記(2)エで詳述したように、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願補正発明7の薬学的組成物が含む本願補正発明1の化合物について、具体的な薬理データ等の実際に薬理作用を有することを当業者が把握できるような記載があるとはいえないから、本願補正発明1は、上記の本願補正発明1の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるとはいえず、また、出願時の技術常識に照らし、当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
また、本願補正発明7の薬学的組成物についても、サポート要件を満たさない本願補正発明1の化合物を含むものであることに加えて、本願明細書の発明の詳細な説明には、「患者のHIV感染症を処置する」という用途に使用できることについて、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項が記載されているとはいえないから、本願補正発明7は、上記の本願補正発明7の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるとはいえず、また、出願時の技術常識に照らし、当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
したがって、本願補正発明1及び本願補正発明7は、発明の詳細な説明に記載した発明でない。
ウ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の概要
請求人は、補正された審判請求書において、この出願の発明の課題は、許可されているプロテアーゼ阻害剤であるダルナビルと比較したときに、いくつかのrCLHIV-1単離体に対して改善された活性を有する、HIV感染症の治療に使用するための化合物を提供することであり、この課題は、この出願の請求項に記載の発明により解決されている旨を主張している。
(イ) 請求人の主張についての当審合議体の判断
上記イで説示したとおり、本願補正発明1及び本願補正発明7は、本願補正発明1及び本願補正発明7の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえず、また、出願時の技術常識に照らし、当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものともいえないから、請求人の上記主張は採用できない。
エ 理由B(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、本願補正発明1及び本願補正発明7は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(4) 独立特許要件についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願補正発明1及び本願補正発明7について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、また、本願の特許請求の範囲の記載は、本願補正発明1及び本願補正発明7について、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願補正発明1及び本願補正発明7は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本願補正発明1及び本願補正発明7は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、令和3年2月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1及び17に係る発明は、上記第2の1(A)に摘記したとおりのものである(以下、当該請求項1及び17に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」及び「本願発明17」という。)。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「この出願については、令和2年7月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由2-4によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、その理由2-4のうち、理由3は、
「3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」
というものであり、理由4は、
「4.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
というものである。
そして、令和2年7月30日付け拒絶理由通知書では、上記理由3及び4について、[C]及び[D]として、概略、次の点が指摘されている。
「[C]
●理由3(実施可能要件)、理由4(サポート要件)について
・・・
本願の請求項1-20に係る発明は、本願請求項1の式(I)で示される化合物に関する発明であるところ、化学物質は、一般にその構造や名称からそのものをどのように作るのか予測することが困難な技術分野に該当するから、当業者がその発明の実施をすることができるためには、該化学物質が製造できることを把握するに足る具体例が記載されていなければならない。そして、化学物質が製造できることを把握するに足る具体例というためには所望の化学物質を製造・単離するに必要な反応条件が具体的に開示されると共に、実験化学データをもってその生成が客観的に裏付けられる必要がある。
しかしながら、本願の発明の詳細な説明には、本願発明の化合物の製造例が一切記載されていない。
したがって、本願発明の詳細な説明は、請求項1-20に係る発明に関し、当業者が式(I)の化合物を製造することができる程度に記載されているものとは認められない。
また、上記のような発明の詳細な説明の記載、及び、出願時の技術常識を考慮すると、発明の詳細な説明は、本願発明の化合物を提供するという発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。
・・・
[D]
●理由3(実施可能要件)、理由4(サポート要件)について
・・・
本願の請求項18-20に係る発明は、本願請求項1の式(I)で示される化合物を含有する薬学的組成物に関する発明である。
ここで、医薬についての用途発明においては、一般に、物質名、化学構造だけからその用途を予測することは困難であるから、当業者がその実施をするためには、明細書に特定の薬理試験結果又はそれと同視すべき程度の記載をしてその用途を裏付ける必要がある。
しかしながら、本願の明細書においては、本願発明の化合物がおおよそどの程度の活性を有するのか記載されているのみで、どの化合物が、どのような試験系でどのような活性を示すのか、具体的な試験結果が一切記載されておらず、本願発明の化合物の医薬用途が裏付けられているものとは認められない。」
また、原査定では、上記理由3及び4ついて、[C]及び[D]として、概略、次の点が指摘されている。
「[C],[D]
●理由3(特許法第36条第4項第1号)、理由4(特許法第36条第6項第1号)について
・・・
先の拒絶理由通知にも記載のとおり、本願明細書には、請求項1の式(I)、及び請求項5,9,12の化合物を製造・入手するために必要な具体的な方法が何ら記載されていない。また、医薬についての用途発明においては、一般に、物質名、化学構造だけからその用途を予測することは困難であるから、当業者がその実施をするためには、明細書に特定の薬理試験結果又はそれと同視すべき程度の記載をしてその用途を裏付ける必要がある。しかしながら、本願明細書には、例えば、出願人の主張する段落0074における、「さらに別の態様において、本発明のさまざまな態様の化合物は、約1nM~約100nM(例えば約10nM~約75nMまたは約10nM~約75nM)のダルナビル抵抗性HIV-1プロテアーゼ(例えばNL4-3R、DRVRP20、DRVRP30、およびDRVRP51)抗ウイルスIC50を有する。」の形式で、段落0072~0074において、いくつかの活性について目標値と解し得る数値範囲が列記されているのみである。そうすると、どの化合物が、どのような試験系でどのような活性を示すのか、具体的な試験結果が記載されているとはいえず、本願発明の化合物の医薬用途が裏付けられているものとは認められない。
・・・出願人は、・・・本願は実施可能要件およびサポート要件を満足する旨主張する。また、・・・本発明の化合物が、所望の医薬用途に使用できることを十分に理解できる旨も主張している。
しかしながら、反応条件などの具体的な実験操作や化合物の物理データなどを一切開示しない実体のない明細書の記載をみても、当業者が過度な実験を要することなく本願発明の化合物を調製でき、また、当該化合物を使用できるとは解せない。さらに、上記主張を考慮しても、本願発明の化合物の医薬用途が裏付けられているものとは認められない。
したがって、上記出願人の主張は採用できない。」
3 当審における判断
(1) 理由3(実施可能要件)について
ア 本願発明1について
上記第2の2で説示したとおり、本願補正発明1は、本願発明1における「式(I)の化合物」を、6つの特定の化合物及び3つの一般式の化合物から選択される化合物に限定したものである。
そうすると、本願発明1と比べて、化合物が限定された本願補正発明1について、上記第2の3(2)ウで説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たしていないのであるから、本願発明1についても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たしていない。
イ 本願発明17について
上記第2の2で説示したとおり、本願補正発明7は、本願発明7の薬学的組成物が含む化合物を限定したものである。
そうすると、本願発明17と比べて、化合物が限定された本願補正発明7について、上記第2の3(2)エで説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たしていないのであるから、本願発明17についても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たしていない。
ウ まとめ
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1及び本願発明17の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2) 理由4(サポート要件)について
本願発明1及び本願発明17と本願補正発明1及び本願補正発明7との関係は、上記(1)で述べたとおりである。
そうすると、本願発明1と比べて、化合物が限定された本願補正発明1について、上記第2の3(3)で説示したとおり、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たしていないのであるから、本願発明1についても、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていない。
また、本願発明17と比べて、化合物が限定された本願補正発明7が、上記第2の3(3)で説示したとおり、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たしていないのであるから、本願発明17についても、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていない。
ウ まとめ
したがって、本願発明1及び本願発明17は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
4 むすび
以上のとおり、本願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が請求項1及び17に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、請求項1及び17に係る発明が、明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載が同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、原査定に誤りはなく、その他の理由及び請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-015121