特許拒絶査定不服審判
2021-014873
肘掛け及び椅子
- 審判番号
- 2021-014873
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-199847
- 請求日
- 2021年11月02日
- 審決日
- 2022年08月02日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】タカノ株式会社
- 【請求人代理人】村瀬 一美
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 芦原 康裕
- 審判官 三宅 龍平
- 分類
- P18 .121-Z (A47C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-199847号「肘掛け及び椅子」拒絶査定不服審判事件〔令和1年5月16日出願公開、特開2019-72112号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月13日の出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和3年 4月22日付け:拒絶理由通知書
同年 6月28日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月30日付け:拒絶査定
同年11月 2日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
第2 令和3年11月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年11月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、当審が付与したものであり、補正箇所を示す。)
「 支持筒部と、当該支持筒部の内部空間に位置固定されて配設されるガイド部材と、当該ガイド部材によって案内されつつ摺動して前記支持筒部に対して昇降移動可能であるように前記支持筒部の前記内部空間へと挿し入れられる支柱部と、左右方向の水平支軸回りに回動可能であるように前記支柱部の内部空間に配設される操作レバーと、当該操作レバーに対して付勢力を与える付勢部材とを有し、前記操作レバーと前記付勢部材とが各々別個の部材として形成される一方、前記ガイド部材が、前記支柱部が昇降移動する方向に並んで複数形成される係合孔を備え、前記操作レバーが、当該操作レバーが水平支軸回りに回動することによって前後方向垂直面に沿って揺動するアーム部と当該アーム部に形成されて前記ガイド部材の前記係合孔へと係合可能な複数個の凸部を有する係合部とを備え、前記付勢部材が前記操作レバーを付勢することによって前記操作レバーの前記アーム部が回動して当該アーム部に形成されている前記係合部が前記ガイド部材の前記係合孔へと係合する
ことを特徴とする肘掛け。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の令和3年6月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「支持筒部と、当該支持筒部の内部空間に位置固定されて配設されるガイド部材と、当該ガイド部材によって案内されつつ摺動して前記支持筒部に対して昇降移動可能であるように前記支持筒部の前記内部空間へと挿し入れられる支柱部と、左右方向の水平支軸回りに回動可能であるように前記支柱部の内部空間に配設される操作レバーと、当該操作レバーに対して付勢力を与える付勢部材とを有し、前記ガイド部材が、前記支柱部が昇降移動する方向に並んで複数形成される係合孔を備え、前記操作レバーが、当該操作レバーが水平支軸回りに回動することによって前後方向垂直面に沿って揺動するアーム部と当該アーム部に形成されて前記ガイド部材の前記係合孔へと係合可能な複数個の凸部を有する係合部とを備え、前記付勢部材が前記操作レバーを付勢することによって前記操作レバーの前記アーム部が回動して当該アーム部に形成されている前記係合部が前記ガイド部材の前記係合孔へと係合することを特徴とする肘掛け。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「操作レバー」及び「付勢部材」について、「前記操作レバーと前記付勢部材とが各々別個の部材として形成される一方、」との限定を付加するものを含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献等の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2013-106630号公報(平成25年6月6日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
肘当てを上端に備えた昇降体が肘支柱に対して上下動自在に装着され、前記昇降体に配置されたストッパアームを操作することにより、前記昇降体を肘支柱に対して複数の位置に段階的に保持する肘掛け装置であって、
前記ストッパアームの上端部には被支持部が形成され、前記ストッパアームの上下中途部には回動中心となる膨出部が形成され、
前記肘当て部材より下方の前記昇降体には、前記被支持部を前記昇降体の昇降方向と交叉する横方向にのみスライド可能に吊支するための吊支部が設けられ、
前記昇降体には、前記膨出部を中心にして前記ストッパアームを回動するための回動支持部が形成され、
操作部材により前記被支持部が前記横方向に押圧されるとき前記ストッパアームが回動すると、前記ストッパアームの下部と前記肘支柱との係合部が解除されて昇降体が昇降可能となる、肘掛け装置。
【請求項2】
前記ストッパアームは前記昇降体の内径部に配置され、
前記係合部は、前記ストッパアームの下部に形成された係合爪部と前記肘支柱に設けられて昇降体の昇降方向に沿って適宜間隔にて形成されている複数の係合凹部とが備えられ、
前記操作部材には前記ストッパアームの前記被支持部を押圧する押圧部が備えられている請求項1に記載の肘掛け装置。
【請求項3】
前記膨出部の外周面は円弧状に形成され、
前記ストッパアームを回動するための回動支持部は、前記膨出部の外周面のうち前記吊支部に近い側のみまたは遠い側のみのいずれか一方を摺動自在に支持するように形成されている請求項1または2に記載の肘掛け装置。
【請求項4】
前記ストッパアームまたは前記昇降体には、前記係合爪部を前記係合凹部に係合する姿勢に付勢する付勢手段が備えられている請求項1乃至3のいずれかに記載の肘掛け装置。」
(イ)明細書
「【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、構成が簡単で、且つ組込み作業性を改善した肘掛けの昇降装置を提供することを目的とするものである。」
「【0019】
肘支柱2の基端部2aが横方向に延びる。基端部2aから上方に略直線的に延びる支柱部2bは、ほぼ円筒状の昇降体3が上下動自在に装着される円筒状に形成されている。
【0020】
支柱部2bの内径には、上下に貫通する嵌合孔5が形成されており、この嵌合孔5にスペーサ部材6が挿入固定され、そのスペーサ部材6の内径部に昇降体3が上下動自在に挿入される。実施例では、スペーサ部材6は嵌合孔5の中心軸線に沿って2分割された一対の半円筒状の半割体6a、6aからなり、両半割体6a、6aを同一形状にすることにより、スペーサ部材6用の金型を1種類のみとしてコストダウンを図ると共に、椅子の左右両側に配置する肘掛け装置に対して組み付け作業の単純化及びスペーサ部材6の誤った取付が発生しないようにしている。」
「【0022】
図7に示すように、各半割体6aの外周面下部には、支柱部2bの内径(嵌合孔5)の下端に設けられた段付き部9に弾性的に係合する弾性係合爪10が複数設けられている。さらに、各半割体6aにはその長手方向(上下方向)に沿って係合凹部11が適宜の所定間隔にて形成されている。」
「【0034】
ストッパアーム13の係合爪部15をスペーサ部材6の係合凹部11に押圧する付勢手段として、被支持部14の後面と昇降体3の装着孔26の内面と間であって、吊支部18内に圧縮ばね(不図示)を横向きに且つ脱落不能に配置することで、被支持部14を操作部材21の押圧部28に向かって押すように構成しても良い。」
(ウ)図面
あ 図4
「
[図:0001389105000001.jpg]
」
い 図5
「
[図:0001389105000002.jpg]
」
う 図7
「
[図:0001389105000003.jpg]
」
え 図8
「
[図:0001389105000004.jpg]
」
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「肘当てを上端に備えた昇降体が肘支柱に対して上下動自在に装着され、前記昇降体に配置されたストッパアームを操作することにより、前記昇降体を肘支柱に対して複数の位置に段階的に保持する肘掛け装置であって、
前記ストッパアームの上端部には被支持部が形成され、前記ストッパアームの上下中途部には回動中心となる膨出部が形成され、
前記肘当て部材より下方の前記昇降体には、前記被支持部を前記昇降体の昇降方向と交叉する横方向にのみスライド可能に吊支するための吊支部が設けられ、
前記昇降体には、前記膨出部を中心にして前記ストッパアームを回動するための回動支持部が形成され、
操作部材により前記被支持部が前記横方向に押圧されるとき前記ストッパアームが回動すると、前記ストッパアームの下部と前記肘支柱との係合部が解除されて昇降体が昇降可能となり、
前記ストッパアームは前記昇降体の内径部に配置され、
前記係合部は、前記ストッパアームの下部に形成された係合爪部と前記肘支柱に設けられて昇降体の昇降方向に沿って適宜間隔にて形成されている複数の係合凹部とが備えられ、
前記操作部材には前記ストッパアームの前記被支持部を押圧する押圧部が備えられており、
前記ストッパアームまたは前記昇降体には、前記係合爪部を前記係合凹部に係合する姿勢に付勢する付勢手段が備えられており、
肘支柱2の基端部2aから上方に略直線的に延びる支柱部2bは、ほぼ円筒状の昇降体3が上下動自在に装着される円筒状に形成され、
支柱部2bの内径には、上下に貫通する嵌合孔5が形成されており、この嵌合孔5にスペーサ部材6が挿入固定され、そのスペーサ部材6の内径部に昇降体3が上下動自在に挿入され、スペーサ部材6は嵌合孔5の中心軸線に沿って2分割された一対の半円筒状の半割体6a、6aからなり、
各半割体6aにはその長手方向(上下方向)に沿って係合凹部11が適宜の所定間隔にて形成されている、肘掛け装置。」
イ 提示文献2
原査定で周知技術を示す文献として提示され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許出願公開第2008/0296955号明細書(2008年(平成20年)12月4日出願公開。以下「提示文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、丸括弧内は、当審による日本語訳である。
(ア)明細書
「[0029](前略)・・・The first vertical surface 70 includes a series of positional detents 74 and a fastening aperture 76 (FIG. 5).」(日本語訳:第1垂直面70は、一連となった複数の戻り止め74及び一つの締結孔76(図5)を含む。)
「[0031] As shown in FIGS. 3 and 4, the height adjustable mechanism 28 includes an actuator rod 84, including an operative member 86, a locking member 88, and a spring 90.」(日本語訳:図3及び4に示されるように、高さ調整機構28は、操作部材86、ロッキング部材88及びバネ90を含む駆動ロッド84を含む。)」
「[0032] As best seen in FIGS. 6-8, the locking member 88 includes teeth 108 that selectively mateably engage the detents 74 on the post 46.」(日本語訳:図6~8によく見られるように、ロック部材88は、ポスト46の複数の戻り止め74と選択的に係合する複数個の歯108が設けられている。)
(イ)図面
あ 図3
「
[図:0001389105000005.jpg]
」
い 図4
「
[図:0001389105000006.jpg]
」
う 図5
「
[図:0001389105000007.jpg]
」
え 図6
「
[図:0001389105000008.jpg]
」
お 図7
「
[図:0001389105000009.jpg]
」
か 図8
「
[図:0001389105000010.jpg]
」
(ウ)上記(ア)の記載を踏まえると、上記(イ)の図4~8から、アームレスト昇降用のロック機構として、昇降方向に整列した複数の戻り止め74(係合孔)に係合するよう、ロック部材88が複数個の歯108を有する点が看取できる。
ウ 提示文献3
原査定で周知技術を示す文献として提示され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許出願公開第2011/0221251号明細書(2011年(平成23年)9月15日出願公開。以下「提示文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、丸括弧内は、当審による日本語訳である。
(ア)明細書
「[0021](前略)・・・and an elastic member 23 mounted between the mounting plate 21 and the control knob 222 to move the control knob 222 outwardly relative to the mounting plate 21 and to move the locking block 225 toward any one of the locking grooves 242 of the housing 24.」(日本語訳:弾性部材23は、制御つまみ222を取付プレート21から外側に向けて動かし、ロックブロック225をハウジング24のロック溝242のうちのどれか一つに向けて動かすよう、取付プレート21と制御つまみ222との間に取り付けられている。)
「[0026]The elastic member 23 of the lifting device 2 has a first end mounted in the mounting space 212 of the mounting plate 21 and a second end mounted in the mounting recess 224 of the control knob 222.」(日本語訳:リフティング装置2の弾性部材23は、取付プレート21の取付スペース212に取り付けられた第1端と、制御つまみ222の取付窪み224に取り付けられた第2端を有する。)
「[0028](前略)・・・After adjustment of the height of the armrest 1 is finished, the control knob 222 is pushed downward by the restoring force of the elastic member 23, and the control bar 22 is pivoted about the pivot shaft 223 to push the locking block 225 toward the locking grooves 242 of the housing 24 so that the locking block 225 is locked in another one of the locking grooves 242 of the housing 24 as shown in FIG. 7 so as to lock the control bar 22 onto the housing 24 and to lock the mounting sleeve 3 onto the armrest support 4.」(日本語訳:アームレスト1の高さの調整が終了した後、制御つまみ222は弾性部材23の復元力によって下方へ押圧され、そして、制御バー22をハウジング24にロックし、アームレスト支持体4に取付スリーブ3をロックするため、図7に見られるようにロックブロック225がハウジング24のもう一つほかの複数のロック溝242にロックされるよう、制御バー22は、ロックブロック225をハウジング24の複数のロック溝242に向けて押し込むようにピボット軸223のまわりに回動される。)
(イ)図面
あ 図2
「
[図:0001389105000011.jpg]
」
い 図3
「
[図:0001389105000012.jpg]
」
う 図7
「
[図:0001389105000013.jpg]
」
(ウ)上記(ア)の記載を踏まえると、図2、3及び7から、アームレスト昇降用のロック機構において、昇降方向に整列した複数のロック溝242に係合するよう、ロックブロック225が複数個の係合片を有する点が看取できる。
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は、引用文献1の【0008】に記載されたとおり、構成が簡単で、且つ組込み作業性を改善した肘掛けの昇降装置を提供することを目的とするものであり、本件補正発明と技術分野及び課題が共通する。
(イ)引用発明の「肘支柱」は、その機能及び構造からみて、本件補正発明の「支持筒部」に相当する。同様に、後者の「肘掛け装置」は、前者の「肘掛け」に相当する。
(ウ)引用発明の「スペーサ部材6」は、肘支柱の支柱部2bの内径に上下に貫通する嵌合孔5が形成され、その嵌合孔5に挿入固定されるものであるから、本件補正発明の「当該支持筒部の内部空間に位置固定されて配設されるガイド部材」に相当する。
(エ)引用発明の「昇降体」は、肘支柱に対して上下動自在に装着され、スペーサ部材6の内径部に上下動自在に挿入されるものであるから、本件補正発明の「当該ガイド部材によって案内されつつ摺動して前記支持筒部に対して昇降移動可能であるように前記支持筒部の前記内部空間へと挿し入れられる支柱部」に相当する。
(オ)引用発明の「ストッパアーム」は、昇降体の内径部に配置されるものであり、その上端部には被支持部が形成され、その上下中途部には回動中心となる膨出部が形成され、当該被支持部は昇降体の昇降方向と交差する横方向にのみスライド可能に吊支されるものであり、さらに、昇降体に形成された回転支持部によって、当該膨出部を中心にして回動するものであることから、本件補正発明の「左右方向の水平支軸回りに回動可能であるように前記支柱部の内部空間に配設される操作レバー」に相当するとともに、本件補正発明の「当該操作レバーが水平支軸回りに回動することによって前後方向垂直面に沿って揺動するアーム部」を備える構成に相当する。
(カ)引用発明の「付勢手段」は、ストッパアームを付勢するものであるから、本件補正発明の「当該操作レバーに対して付勢力を与える付勢部材」に相当する。
(キ)引用発明のスペーサ部材6の「各半割体6aにはその長手方向(上下方向)に沿って係合凹部11が適宜の所定間隔にて形成され」た構成は、スペーサ部材6が各半割体6aからなり、スペーサ部材6には上下方向に沿って所定間隔にて複数形成された係合凹部11を備えるといえることから、本件補正発明の「前記ガイド部材が、前記支柱部が昇降移動する方向に並んで複数形成される係合孔を備え」る構成に相当する。
(ク)引用発明の「係合爪部」は、ストッパアームの下部に形成されたものであり、スペーサ部材の係合凹部に係合するものであることから、本件補正発明の「当該アーム部に形成されて前記ガイド部材の前記係合孔へと係合可能な複数個の凸部を有する係合部」とは、当該アーム部に形成されて前記ガイド部材の前記係合孔へと係合可能な係合部である点で共通する。
(ケ)引用発明の「前記ストッパアームまたは前記昇降体には、前記係合爪部を前記係合凹部に係合する姿勢に付勢する付勢手段が備えられ」、「操作部材により前記被支持部が前記横方向に押圧されるとき前記ストッパアームが回動すると、前記ストッパアームの下部と前記肘支柱との係合部が解除され」る構成は、係合凹部がスペーサ部材6に形成されたものであり、付勢手段がストッパアームを付勢することによってストッパアームのアームが回動してアームの下部に形成された係合爪部がスペーサ部材6の係合凹部へ係合するものであるといえることから、本件補正発明の「前記付勢部材が前記操作レバーを付勢することによって前記操作レバーの前記アーム部が回動して当該アーム部に形成されている前記係合部が前記ガイド部材の前記係合孔へと係合する」構成に相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「支持筒部と、当該支持筒部の内部空間に位置固定されて配設されるガイド部材と、当該ガイド部材によって案内されつつ摺動して前記支持筒部に対して昇降移動可能であるように前記支持筒部の前記内部空間へと挿し入れられる支柱部と、左右方向の水平支軸回りに回動可能であるように前記支柱部の内部空間に配設される操作レバーと、当該操作レバーに対して付勢力を与える付勢部材とを有し、前記ガイド部材が、前記支柱部が昇降移動する方向に並んで複数形成される係合孔を備え、前記操作レバーが、当該操作レバーが水平支軸回りに回動することによって前後方向垂直面に沿って揺動するアーム部と当該アーム部に形成されて前記ガイド部材の前記係合孔へと係合可能な係合部とを備え、前記付勢部材が前記操作レバーを付勢することによって前記操作レバーの前記アーム部が回動して当該アーム部に形成されている前記係合部が前記ガイド部材の前記係合孔へと係合する
ことを特徴とする肘掛け。」
[相違点1]
操作レバーと付勢部材について、本件補正発明では、各々別個の部材として形成されるのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。
[相違点2]
係合部について、本件補正発明では、複数個の凸部を有するのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。
(4)判断
ア 相違点1について
引用文献1の【0034】には、「ストッパアーム13の係合爪部15をスペーサ部材6の係合凹部11に押圧する付勢手段として、被支持部14の後面と昇降体3の装着孔26の内面と間であって、吊支部18内に圧縮ばね(不図示)を横向きに且つ脱落不能に配置することで、被支持部14を操作部材21の押圧部28に向かって押すように構成しても良い。」と記載されていることから、引用文献1には、引用発明の付勢手段の代わりに、圧縮ばねを配置する技術が記載されているといえる。ここで、圧縮バネは、「脱落不能に配置する」との記載からもわかるとおり、脱落し得るもの、つまり、ストッパアームに一体成形されたものではなく、ストッパアームとは別個の部材として構成されたものであることは明らかである。そうすると、引用発明の付勢手段として当該技術を採用して、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者にとって何ら困難性はない。
イ 相違点2について
アームレスト昇降用のロック機構において、ロック部材が複数個の係合片を有し、これらがアームレストの昇降方向に整列した複数個の係合孔に係合するよう構成することは、本願の出願前に周知の技術(上記2(2)イの提示文献2の記載事項及び同ウの提示文献3の記載事項を参照。)である。
そして、引用発明の係合凹部も昇降体の昇降方向に沿って適宜間隔にて形成されていることから、その係合凹部に係合する係合爪について、この周知の技術を採用して、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者にとって何ら困難性はない。
ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、以下のとおり主張する。なお、下線は、請求人が付与したものである。
「 つまり、引用文献2及び3記載の発明には、操作レバーと別個の部材から成る操作レバーに対して付勢力を与える付勢部材(発明特定要素(i-2))に相当する部材を有していません。また、引用文献2及び3記載の発明には、付勢部材が操作レバーを付勢することによって操作レバーのアーム部が回動して当該アーム部に形成されている係合部がガイド部材の係合孔へと係合する(発明特定要素(i-5))構成は記載されておりません。
(iv) この構成上の差違は、操作レバーと付勢部材とを各々別個の部材として形成することで、一方に強度を持たせると共に他方に摺動性を持たせることが可能となります。これによって、例えば、操作レバーはガラス入りナイロン、付勢部材はPOMで成形することができます。ガラス入りナイロンは強度には優れますが、摺動性、弾力性には乏しいものであります。他方、POMから成る付勢部材は摺動性、弾力性に富むものにできます。したがって、強度と摺動性とを両立させた操作機構を構築することができるという格別なる効果を奏するものであります。」
しかしながら、付勢部材が操作レバーを付勢することによって操作レバーのアーム部が回動して当該アーム部に形成されている係合部がガイド部材の係合孔へと係合する構成は、引用発明がそもそも備えている構成である。
また、「引用文献2及び3」、つまり、提示文献2及び3は、アームレスト昇降用のロック機構における上記の周知の技術が本願の出願前に周知であったことが確認できるようその参照のために提示した文献にすぎず、操作レバーと付勢手段とが別個の部材であることや、付勢部材が操作レバーを付勢することまでをも含めて周知の技術であったことを示すための文献として提示されたものではない。なお、提示文献2の[0031]及び図3には、駆動ロッド84とバネ90が別個の部材である点が、また、提示文献の[0021]、[0026]、[0028]、図2及び図3には、制御バー22と弾性部材23が別個の部材である点が、それぞれ記載されているといえる。
さらに、請求人の「操作レバーと付勢部材とを各々別個の部材として形成することで、一方に強度を持たせると共に他方に摺動性を持たせることが可能となります。これによって、例えば、操作レバーはガラス入りナイロン、付勢部材はPOMで成形することができます。ガラス入りナイロンは強度には優れますが、摺動性、弾力性には乏しいものであります。他方、POMから成る付勢部材は摺動性、弾力性に富むものにできます。したがって、強度と摺動性とを両立させた操作機構を構築することができるという格別なる効果を奏するものであります。」という主張は、付勢部材が摺動することを前提とする主張のようであるが、そのような前提は本件補正後の請求項1に記載されていないことから、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
よって、請求人の主張は採用することができない。
4 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年11月2日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、令和3年6月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術(提示文献2及び3を参照。)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
引用文献1:特開2013-106630号公報
3 引用文献等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び周知技術を示す文献として提示した文献2及び3(提示文献2及び3)、並びに、その記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記操作レバーと前記付勢部材とが各々別個の部材として形成される一方、」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-014873