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特許拒絶査定不服審判

2021-013209

血漿中の蛍光化合物を調製及び分析する方法

審判番号
2021-013209
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-506139外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年09月30日
審決日
2023年03月13日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (C07D) / P18 .121-Z (C07D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項
データ出所
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事件の表示

特願2020-506139「血漿中の蛍光化合物を調製及び分析する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月23日国際公開、WO2019/099672、令和 2年 6月11日国内公表、特表2020-516692〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)11月15日(パリ条約による優先権主張 2017年11月20日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和2年10月13日付けで拒絶理由が通知され、令和3年1月25日付けで意見書、手続補正書及び誤訳訂正書が提出され、同年6月22日付けで拒絶査定されたところ、同年9月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 本件補正について 1 本件補正の内容 (1) 令和3年1月25日にされた手続補正により補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりである。 「 【請求項1】 血漿中の蛍光化合物の量を測定する方法であって、 血漿試料を少なくとも1つの溶媒で希釈するステップと、 希釈した前記血漿試料を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で分析して、前記血漿中の前記蛍光化合物の量を測定するステップと、を含み、 前記血漿試料はHPLC分析前に乾燥させられておらず、前記血漿試料に内部標準物質が添加されておらず、 前記蛍光化合物は、アクリジン、アクリドン、アントラセン、アントラサイクリン、アントラキノン、アザアズレン、アゾアズレン、ベンゼン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾインドカルボシアニン、ベンゾインドール、ベンゾチオフェン、カルバゾール、クマリン、シアニン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジピロロ染料、フラボン、フルオレセイン、イミダゾール、インドカルボシアニン、インドシアニン、インドール、イソインドール、イソキノリン、ナフタセンジオン、ナフタレン、ナフトキノン、フェナントレン、フェナントリジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フェニルキサンテン、ポリフルオロベンゼン、プリン、ピラジン、ピラゾール、ピリジン、ピリミドン、ピロール、量子ドット、キノリン、キノロン、ローダミン、スクアライン、テトラセン、チオフェン、トリフェニルメタン染料、キサンテン、キサントン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される蛍光染料であることを特徴とする方法。」 (2) 令和3年9月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、以下のとおりである。(下線部は、補正箇所である。) 「 【請求項1】 血漿中の蛍光化合物の量を測定する方法であって、 前記蛍光化合物を含む血漿試料を少なくとも1つの溶媒で希釈するステップと、 希釈した前記血漿試料を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で分析して、前記血漿中の前記蛍光化合物の量を測定するステップと、を含み、 前記血漿試料はHPLC分析前に乾燥させられておらず、前記血漿試料に内部標準物質が添加されておらず、 前記蛍光化合物は、アクリジン、アクリドン、アントラセン、アントラサイクリン、アントラキノン、アザアズレン、アゾアズレン、ベンゼン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾインドカルボシアニン、ベンゾインドール、ベンゾチオフェン、カルバゾール、クマリン、シアニン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジピロロ染料、フラボン、フルオレセイン、イミダゾール、インドカルボシアニン、インドシアニン、インドール、イソインドール、イソキノリン、ナフタセンジオン、ナフタレン、ナフトキノン、フェナントレン、フェナントリジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フェニルキサンテン、ポリフルオロベンゼン、プリン、ピラジン、ピラゾール、ピリジン、ピリミドン、ピロール、量子ドット、キノリン、キノロン、ローダミン、スクアライン、テトラセン、チオフェン、トリフェニルメタン染料、キサンテン、キサントン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される蛍光染料であることを特徴とする方法。」 2 補正の適否について 本件補正による請求項1についての補正は、「血漿中の蛍光化合物の量を測定する方法であって、血漿試料を少なくとも1つの溶媒で希釈するステップ」を、「血漿中の蛍光化合物の量を測定する方法であって、前記蛍光化合物を含む血漿試料を少なくとも1つの溶媒で希釈するステップ」とする補正であって、「血漿中の蛍光化合物の量を測定する方法」における「血漿試料」が「前記蛍光化合物」を含んでいる旨明確にする補正であるから、特許法17条の2第5項4号に掲げる、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正である。 したがって、請求項1に係る本件補正は適法になされたものである 。 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の本件補正前の請求項1についての拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明又は引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号に該当するか又は同条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:RAJAGOPALAN, R. et al., "Hydrophilic pyrazine dyes as exogenous fluorescent tracer agents for real-time point-of-care measurement of glomerular filtration rate", Journal of Medicinal Chemistry, 2011, Vol.54, p.5048-5058 引用文献2:Huang, Z. et al., "High-performance liquid chromatographic-fluorescent method to determine chloroacetaldehyde, a neurotoxic metabolite of the anticancer drug Ifosfamide, in plasma and in liver microsomal incubations", Analytical Biochemistry, 1999, Vol.273, p.117-125 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1について (1)引用文献1に記載された事項 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 (引1a)「 [図:0001399842000001.jpg] 」(5050頁、当審訳:「a試薬(a)Et3N,EDC・HCl,HOBt・H2O,DMF;(b)ジオキサン中の4N HCl;(c)EDC・HCl,HOBt・H2O,DMF;(d)1N HCl,THF;(e)DIPEA,EDC・HCl,HOBt・H2O,DMF;(f)H2,10%Pd-C,EtOH―H2O(3:1,v/v);(g)HCO2NH4,10%Pd-C,MeOH-H2O(2:1,v/v),60℃。注意:各矢印の下に示されたパーセンテージは、反応収率を意味する。」) (引1b)「In Vitro Studies. Absorption (λabs) and emission (λem)maxima and plasma protein binding (PPB) were determined for all compounds prior to in vivo evaluation (Table 1). Compounds 2a_e exhibited absorption maxima in the range of 430_440 nm and emission maxima in the range of 550_560 nm. Compounds 2f_j exhibited absorption maxima in the range of 480_490 nm and emission maxima in the range of 590_600 nm. The fluorescence quantum yield of 2c in DMSO was measured to be 0.42. With the exception of 2f and 2g, all compounds exhibited low plasma protein binding (PPB), comparable to or lower (i.e., better) than iothalamate. As would be expected, the introduction of hydrophobic propyl group in 2f resulted in high PPB. Surprisingly, the two regioisomeric compounds 2b and 2g exhibited measurably different PPB. It is possible that the primary carboxamide, which contains an additional site for hydrogen bonding at the amide site in 2g is contributing to the higher interaction with the protein.」(5050頁左欄18行-右欄15行、当審訳:「In Vitro試験。in vivo評価に先立ち、すべての化合物について吸収(λabs)および発光(λem)極大と血漿タンパク質結合(PPB)を測定した(表1)。化合物2a-eは430-440nmに吸収極大を、550-560nmに発光極大を示した。化合物2f-jは480-490nmの範囲に吸収極大、590-600nmの範囲に発光極大を示した。DMSO中における2cの蛍光量子収率は0.42と測定された。2fと2gを除いて、すべての化合物は低い血漿タンパク質結合(PPB)を示し、イオタラメートと同等かそれより低い(すなわち、より良い)ものであった。予想されるように、2fの疎水性プロピル基の導入は高いPPBをもたらすことになった。意外なことに、2つの位置異性体化合物2bと2gは、測定可能なほど異なるPPBを示した。2gのアミド部位に水素結合のための追加の部位を持つ第一カルボキサミドが、タンパク質との高い相互作用に寄与している可能性がある。」) (引1c)「■CONCLUSION On the basis of the fluorescence properties, plasma protein binding data, the injected dose recovered in urine, the plasma clearance data, and the renal tubular secretion studies, the pyrazine serine derivatives 2d, 2h, and 2j are viable candidates for translation to the clinic as exogenous fluorescent tracer agents for the measurement of GFR. In the rat animal model, these compounds display superior properties compared to iothalamate, which is currently an accepted standard for the measurement of GFR. Formal preclinical development studies are in progress and will be reported elsewhere.」(5052頁15-25行、当審訳「■結論 ピラジンセリン誘導体2d,2h,2jは,蛍光特性,血漿タンパク質結合量,尿中回収量,血漿クリアランス,尿細管分泌試験から,GFR測定用外来性蛍光トレーサーとして臨床応用が期待される。これらの化合物は、ラット動物モデルにおいて、現在GFR測定の標準とされているイオタラメートと比較して、優れた特性を示している。正式な前臨床開発研究は現在進行中であり、別途報告する予定である。」) (引1d)「Measurement of Photophysical Properties and Protein Binding. In general, each test compound was dissolved in PBS buffer to form a 2 mM stock solution. The UV absorbance properties were determined on a 100 μM solution in PBS using a UV-3101PC UV-vis-NIR scanning spectrophotometer system from Shimadzu. The fluorescence properties (λex, λem, and intensity maximum at λem) were determined on a 10 μM solution in PBS using a Fluorolog-3 spectrofluorometer system from Jobin Yvon Horiba. The percent plasma protein binding was determined on a 20 μMcompound solution in rat plasma incubated at 37 C for 1 h. The separation of free from bound was made using an Amicon Centrifree YM-30 device (Regenerated Cellulose 30000 MWCO) and a Z400K refrigerated universal centrifuge from Hermle. The concentration of protein-free was determined via HPLC analysis using a set of external calibration standards and fluorescence detection.」(5056頁右欄37-51行、当審訳:「光物性およびタンパク質結合の測定。一般に、各試験化合物はPBS緩衝液に溶解され、2mMのストック溶液を形成した。島津製作所製UV-vis-NIR走査型分光光度計UV-3101PCを用いて,PBS中の100μM溶液の紫外吸光度特性を測定した。蛍光特性(λex、λem、およびλemでの最大強度)は、Jobin Yvon HoribaのFluorolog-3分光蛍光計システムを使用して、PBS中の10μM溶液で決定された。血漿タンパク質結合率は、37℃で1時間インキュベートしたラット血漿中の20μM化合物溶液で測定した。遊離と結合の分離は、Amicon Centrifree YM-30装置(再生セルロース30000MWCO)とHermle社のZ400K冷蔵万能遠心分離機を使用して行われた。プロテインフリーの濃度は、一連の外部校正標準と蛍光検出を用いたHPLC分析によって決定された。」) (引1e)「Invasive Pharmacokinetic Studies. Male Sprague-Dawley rats (330-380 g) were anesthetized by Inactin (IP). Rats were surgically instrumented with a trachea tube (PE-190) to facilitate breathing and femoral artery and vein catheters (PE-50 filled with 20 units/mL heparinized saline) for blood sampling and drug administration, respectively. After administration of 1 mL of a 2 mM solution of agent, approximately 200 μL of blood was sampled and placed into a heparinized tube (Microtainer Brand Tube w/Lithium Heparin,BD 365971) at 0, 1, 6, 12, 18, 30, 45, 60, 90, 120min.The concentration of compound in each centrifuged plasma sample was determined via HPLC analysis using a set of external calibration standards and fluorescence detection. The resulting pharmacokinetic parameters of the compound were analyzed using WinNonLin pharmacokinetic modeling software (Pharsight, Mountainview, CA).」(5057頁5-17行、当審訳:「侵襲的薬物動態試験 雄のSprague-Dawleyラット(330-380g)をイナクチン(IP)により麻酔をかけた。ラットは、呼吸を容易にするために気管チューブ(PE-190)を、血液サンプリングおよび薬物投与のために大腿動脈および静脈カテーテル(PE-50に20ユニット/mLのヘパリン化生理食塩水を充填)をそれぞれ外科的に装着した。2mMの薬剤を1 mL投与後、0, 1, 6, 12, 18, 30, 45, 60, 90, 120分に約200μLの血液を採取してヘパリン処理チューブ(Microtainer Brand Tube w/Lithium Heparin, BD 365971)に入れ、各遠心血漿試料中の化合物を外部校正標準物質を用いたHPLC分析と蛍光検出により定量した。得られた化合物の薬物動態パラメータは、WinNonLin薬物動態モデリングソフトウェア(Pharsight, Mountainview, CA)を使用して解析した。」) (2)引用文献1に記載された発明 a 上記(引1a)より、引用文献1には、「2d」として、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0018】に記載された【化1】と同様のピラジン誘導体が記載されている。 b 上記(引1b)には、「In Vitro試験」において、「2fと2gを除いて、すべての化合物は低い血漿タンパク質結合(PPB)を示し、iothalamateと同等かそれより低い(すなわち、より良い)ものであった」旨記載され、上記(引1c)には、「ピラジンセリン誘導体2d・・・は,蛍光特性,血漿タンパク質結合量・・・から,GFR測定用外来性蛍光トレーサーとして臨床応用が期待される」旨記載されていることから、引用文献1は、「GFR測定用外来性蛍光トレーサーとして」「蛍光特性」を示す「ピラジンセリン誘導体2d」の量を測定する方法が記載されているといえる。 c 上記(引1d)より、引用文献1には、「物性およびタンパク質結合の測定」として、「試験化合物はPBS緩衝液に溶解され、2mMのストック溶液を形成し」、「プロテインフリーの濃度は、一連の外部校正標準と蛍光検出を用いたHPLC分析によって決定され」た旨記載されているから、物性およびタンパク質結合の測定」における「試験化合物」は、「一連の外部校正標準と蛍光検出を用いたHPLC分析によって」「プロテインフリーの濃度」が測定されるものである。 d 上記(引1e)より、引用文献1には、「侵襲的薬物動態試験」においては、「血液を採取して」「各遠心血漿試料中の化合物を外部校正標準物質を用いたHPLC分析と蛍光検出により定量した」旨記載されているから、上記bの「GFR測定用外来性蛍光トレーサーとして」「蛍光特性」を示す「ピラジンセリン誘導体2d」の量の測定は、採取された血液の遠心血漿試料中で行われるものであり、また、上記cより、「遠心血漿試料中の化合物を外部校正標準物質を用いたHPLC分析と蛍光検出により定量」する際に、「試験化合物はPBS緩衝液に溶解され、2mMのストック溶液を形成」するものである。そうすると、引用文献1の「ピラジンセリン誘導体2dの量の測定」は、「遠心血漿試料中の」「ピラジンセリン誘導体2d」を「外部校正標準物質を用いたHPLC分析と」「光検出を用いたHPLC分析によって」「定量」するものである。 e 以上a~dより、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「採取された血液の遠心血漿試料中で行われるGFR測定用外来性蛍光トレーサーとして蛍光特性を示すピラジンセリン誘導体2dの量の測定は、 一連の外部校正標準と蛍光検出を用いたHPLC分析によって、プロテインフリーの濃度が測定される試験化合物をPBS緩衝液に溶解することにより、2mMのストック溶液を形成し、 遠心血漿試料中のピラジンセリン誘導体2dを外部校正標準物質を用いたHPLC分析と蛍光検出を用いたHPLC分析によって定量する ピラジンセリン誘導体2dの量を測定する方法。」 第5 対比 ・判断 本件補正発明と引用発明とを対比する。 1 引用発明の「蛍光特性を示すピラジンセリン誘導体2d」は、本件補正発明の「蛍光化合物」に相当する。そして、引用発明の「採取された血液の遠心血漿試料中で行われるGFR測定用外来性蛍光トレーサーとして蛍光特性を示すピラジンセリン誘導体2dの量」は、本件補正発明の「血漿中の蛍光化合物の量」に相当し、引用発明の「採取された血液の遠心血漿試料中で行われるGFR測定用外来性蛍光トレーサーとして蛍光特性を示すピラジンセリン誘導体2d」は、「採取された血液の遠心血漿試料」に含まれているといえるから、「ピラジンセリン誘導体2d」を含む、「採取された血液の遠心血漿試料」は、本件補正発明の「前記蛍光化合物を含む血漿試料」に相当する。 2 引用発明の「PBS緩衝液」は、本件補正発明の「溶媒」に相当する。また、引用発明の「試験化合物」は、「一連の外部校正標準と蛍光検出を用いたHPLC分析によって、プロテインフリーの濃度が測定される」ものであるから、「採取された血液の遠心血漿試料」である。 そうすると、引用発明の「試験化合物をPBS緩衝液に溶解すること」は、「ピラジンセリン誘導体2d」を含む、「採取された血液の遠心血漿試料」を、「PBS緩衝液に溶解」することであるから、引用発明の「試験化合物をPBS緩衝液に溶解すること」は、本件補正発明の「前記蛍光化合物を含む血漿試料を少なくとも1つの溶媒で希釈するステップ」に相当する。 3 引用発明の「採取された血液の遠心血漿試料中で行われる」「ピラジンセリン誘導体2dの量の測定」は、「一連の外部校正標準と蛍光検出を用いたHPLC分析によって定量するものであるから、引用発明の「ピラジンセリン誘導体2dの量の測定」は、「ピラジンセリン誘導体2d」を含む「遠心血漿試料中のピラジンセリン誘導体2d」を「HPLC分析によって」「定量」するものであるから、引用発明の「ピラジンセリン誘導体2d」を含む「採取された血液の遠心血漿試料」を「HPLC分析によって」「ピラジンセリン誘導体2d」を「定量」することは、本件補正発明の「希釈した前記血漿試料を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で分析して、前記血漿中の前記蛍光化合物の量を測定するステップ」に相当する。 4 引用発明の「ピラジンセリン誘導体2dの量の測定する方法」は血液を採取してから「HPLC分析によって」「ピラジンセリン誘導体2d」を「定量」するまでに乾燥する工程を含まず、また、「ピラジンセリン誘導体2d」の「定量」は、「外部校正標準物質を用いたHPLC分析と蛍光検出を用いたHPLC分析によって」行うから、「ピラジンセリン誘導体2d」を含む「遠心血漿試料中」には、「内部標準物質」は含まれないのは明らかである。 そうすると、引用発明の「ピラジンセリン誘導体2d」を含む「遠心血漿試料」と本件補正発明の「前記血漿試料」とは、「HPLC分析前に乾燥させられておらず、前記血漿試料に内部標準物質が添加されて」いない点で一致する。 5 上記第4の1(2)aで検討したとおり、引用発明の「ピラジンセリン誘導体2d」は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0018】に記載された【化1】と同様のピラジン誘導体である。 そうすると、引用発明の「ピラジンセリン誘導体2d」と、本件補正発明の「前記蛍光化合物は、アクリジン、アクリドン、アントラセン、アントラサイクリン、アントラキノン、アザアズレン、アゾアズレン、ベンゼン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾインドカルボシアニン、ベンゾインドール、ベンゾチオフェン、カルバゾール、クマリン、シアニン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジピロロ染料、フラボン、フルオレセイン、イミダゾール、インドカルボシアニン、インドシアニン、インドール、イソインドール、イソキノリン、ナフタセンジオン、ナフタレン、ナフトキノン、フェナントレン、フェナントリジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フェニルキサンテン、ポリフルオロベンゼン、プリン、ピラジン、ピラゾール、ピリジン、ピリミドン、ピロール、量子ドット、キノリン、キノロン、ローダミン、スクアライン、テトラセン、チオフェン、トリフェニルメタン染料、キサンテン、キサントン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される蛍光染料」とは、ピラジン誘導体である点で一致する。 6 以上1~5より、本件補正発明と引用発明との間に相違点はないといえる。 仮に、上記(引1e)の「侵襲的薬物動態試験」において、「各試験化合物」を「PBS緩衝液に溶解」する旨の記載がないことから、本件補正発明は「前記蛍光化合物を含む血漿試料を少なくとも1つの溶媒で希釈するステップ」を有しているのに対し、「侵襲的薬物動態試験」である引用発明は「採取された血液の遠心血漿試料」を希釈しているか不明である点が、本件補正発明と引用発明との間の相違点となったとしても、上記(引1d)より、引用文献1には、「物性およびタンパク質結合の測定。一般に、各試験化合物はPBS緩衝液に溶解し、2mMのストック溶液を形成」する旨の記載があり、また、HPLCの試料をPBSなどの少なくとも1つの溶媒で希釈することは例示するまでもなく周知であるから、本件補正発明は、引用発明に引用文献1の該構成を適用することにより当業者が容易に想到できたものであるといえる。 第6 請求人の主張について 令和3年9月30日に提出された審判請求書において請求人は、 「本発明の効果を実証する実験結果としては、例えば明細書の段落0095の表1に、方法の妥当性確認試験の結果が示されている。異なるサンプル間の唯一の差異は、蛍光化合物の濃度である。これらの濃度は、調製された溶液の希釈によって達成される(段落0070~0073を参照)。得られた試験結果では、99.2%の回収率、0.45%のRSD、及び調査したすべての条件で95.7%から101.2%の回収率の範囲の精度を示し(段落0096)、本発明の精度が優れたものであることが立証されている。また、図3Aに示すように、0.4ng/mLのLLOQの信号/ノイズ比は15.18、USPテーリング係数は1.072、USPプレートカウントは39934であった。図3Bに示すように、信号/ノイズ比の大幅な改善は本願の方法を微調整した場合に得られる(段落0094~0095)。以上のように、本発明の方法では、希釈の結果として、信号対ノイズ比、ピーク形状、及び効率が向上することが実証されている。」(【本願発明が特許されるべき理由】(B)〔本願発明の内容及び効果〕3段落) 「引用例1には、その5057頁、左欄、第2段落に記載のように、実際に試料希釈なしで行うHPLC分析を行ったことが開示されている。また引用例1には、希釈した場合の信号/ノイズ比についても全く記載しておらず、すなわち引用例1においては、希釈されていない濃縮試料は、定量分析に十分な濃度で存在していたため、希釈により測定が最適化される可能性については全く認識していなかったことは明白である。 上記のように、一般的に試料を希釈すると、分析物の濃度が低くなって信号はベースラインノイズで失われ、検出に悪影響を与え得るが、本発明者の知見(適切な希釈で濃度を適切に調節することでむしろS/N比が改善して正確な検出結果が得られる)が引用例1には開示されていないので、引用例1を参照した当業者が、分析前に試料を不必要に希釈して信号を低減させることは想到し得ない。 上記のように、一般的に試料を希釈すると、分析物の濃度が低くなって信号はベースラインノイズで失われ、検出に悪影響を与え得るが、本発明者の知見(適切な希釈で濃度を適切に調節することでむしろS/N比が改善して正確な検出結果が得られる)が引用例1には開示されていないので、引用例1を参照した当業者が、分析前に試料を不必要に希釈して信号を低減させることは想到し得ない。」(【本願発明が特許されるべき理由】(B)〔本願発明と引用文献の発明との比較〕5及び6段落) 旨、主張している。 上記主張について検討する。 まず、本願補正発明の効果について検討すると、請求人は、本件補正発明の「前記蛍光化合物を含む血漿試料を少なくとも1つの溶媒で希釈するステップ」についての効果は、希釈の結果として、信号対ノイズ比、ピーク形状、及び効率が向上することである旨主張している。 確かに、本願の発明の詳細な説明には、実験結果として、適当な濃度に希釈されたものにおいて、信号対ノイズ比、ピーク形状、及び効率が向上することは記載されているが、全ての濃度において同様のことはいえず、本件補正発明においては、単に「前記蛍光化合物を含む血漿試料を少なくとも1つの溶媒で希釈するステップ」と特定されているだけであって、信号対ノイズ比、ピーク形状、及び効率が向上する濃度以外の濃度に希釈するステップも含んでいるから、上記効果に関する主張は、本件補正発明に基づく主張であるとはいえない。 次に、引用文献1との対比について検討する。 確かに、引用文献1の5057頁、左欄、第2段落に記載された「侵襲的薬物動態試験」では、「各遠心血漿試料」を何らかの溶媒で希釈した旨の記載はないが、上記(引1d)で摘記したとおり、引用文献1の5056頁右欄37-51行には、「光物性およびタンパク質結合の測定」において、「各試験化合物は、一般に、各試験化合物はPBS緩衝液に溶解され、2mMのストック溶液を形成した」旨記載され、この「光物性およびタンパク質結合の測定」の「各試験化合物」と、「侵襲的薬物動態試験」の「各遠心血漿試料」とは、いずれも「外部校正標準物質を用いたHPLC分析と蛍光検出を用いたHPLC分析」により、試料中の化合物を測定するものであるから、「侵襲的薬物動態試験」の「各遠心血漿試料」も「光物性およびタンパク質結合の測定」の「各試験化合物」と同様に「PBS緩衝液に溶解され」るものであるといえる。仮に、「侵襲的薬物動態試験」において「各遠心血漿試料」を何らかの溶媒で希釈した旨の記載はないことから、「侵襲的薬物動態試験」の「各遠心血漿試料」が希釈されているか不明であったとしても、上記(引1d)の記載より、当業者が、容易に想到できたものであるといえる。 以上のことから、請求人の上記主張は採用されない。 第7 むすび 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明であるか、または、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものであるといえるから、特許法29条1項3号に該当するか又は同条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-013209

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    同じ当事者: メディビーコン,インク.
  • 2021-006598拒絶査定不服審判 / 2022-11-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)腎機能測定のための組成物及びシステム
    同じ当事者: メディビーコン,インク.
同じ論点・分野の審決(審決分類)554件(113・C07D、121・C07D)
  • 2024-002953拒絶査定不服審判 / 2026-08-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)RIPK1阻害剤としての縮合環ヘテロアリール化合物
    共通の審決分類: 113・C07D、121・C07D
  • 2024-011315拒絶査定不服審判 / 2026-08-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)バイオベースポリマーを生成するためのモノマー及び他の反応物の色安定化
    共通の審決分類: 113・C07D、121・C07D
  • 2023-020877拒絶査定不服審判 / 2026-08-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)PKC阻害剤の固体状態形態
    共通の審決分類: 113・C07D、121・C07D
  • 2024-006765拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)高純度医薬品等級タシメルテオン
    共通の審決分類: 113・C07D、121・C07D
  • 2024-006254拒絶査定不服審判 / 2026-06-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)ヒストンデメチラーゼ5阻害剤およびその使用
    共通の審決分類: 113・C07D、121・C07D

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