特許拒絶査定不服審判
2021-013049
電気加熱装置
- 審判番号
- 2021-013049
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-538370
- 請求日
- 2021年09月29日
- 審決日
- 2022年06月08日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベバスト エスエー
- 【請求人代理人】松浦 憲三
- 審判長/審判官
- 審判長 平城 俊雅
- 審判官 田村 佳孝
- 審判官 松下 聡
- 分類
- P18 .121-Z (B60H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-538370「電気加熱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月27日国際公開、WO2018/172387、令和 2年 3月12日国内公表、特表2020-507502〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年3月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年3月23日 (DE)ドイツ)を国際出願日とする出願であって、その手続きの経緯は概略以下のとおりである。
令和2年 7月 3日付け 拒絶理由通知
令和2年12月 4日 意見書及び手続補正書の提出
令和3年 5月31日付け 拒絶査定
令和3年 9月29日 拒絶査定不服審判請求書の提出
令和3年11月 4日 手続補正書(審判請求書)の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和2年12月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
液体、具体的には水を収容し伝えるための容積区域(11)と、
前記液体が液体入口(19)を通って前記容積区域(11)内に流入し、液体出口(20)を通って流出することが可能な液体入口(19)及び液体出口(20)と、
を備える自動車用の電気加熱装置であって、
加熱要素(12)が前記容積区域(11)内に配置されており、
前記電気加熱装置は、少なくとも二つの異なる設置位置に設置され、排出可能に構成される、電気加熱装置。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由である、令和2年7月3日付け拒絶理由通知の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという理由を含むものである。
記
引用例:特開2013-256274号公報
第4 引用文献
1.引用例
(1)引用例の記載
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2013-256274号公報(以下、「引用例」という。)には、「加熱装置」に関して図面とともに以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下、同様。)。
ア「【0018】
加熱装置1は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に搭載され、ハイブリッド自動車の場合には、エンジン(熱源)の不足する廃熱を補うようにして熱供給する補助熱源として、電気自動車の場合には、存在しないエンジンに代わって熱供給する代替熱源として、車両用空調装置の冷凍回路を循環する冷媒等の熱媒体の加熱に用いられる。
【0019】
具体的には、ハイブリッド自動車の場合には、加熱装置1は、エンジンの冷却水回路に介装され、冷却水回路を循環するLLC(冷却水、不凍液)を熱媒体として導入し電熱線ヒータ2により加熱することが可能である。この冷却水回路は車両用空調装置に設けられ、エンジン及び加熱装置1で加熱されたLLCの熱は上記空調装置に設けられた冷凍回路を循環する冷媒の加熱に用いられ、車室内の冷暖房が可能となる。
【0020】
一方、電気自動車の場合には、加熱装置1は、冷媒を循環する冷凍回路に介装され、熱媒体として冷媒を導入し電熱線ヒータ2により加熱することが可能である。この冷凍回路は上記ハイブリッド自動車と同様に車両用空調装置に設けられ、加熱装置1で加熱された冷媒の熱によって車室内の冷暖房が可能となる。また、熱媒体として水を導入し、当該水を電熱線ヒータ2によって加熱して温水にし、この温水をエンジンの代替熱源として車両用空調装置の暖房用回路を循環する冷媒などを加熱するための熱源として利用することも考えられる。
【0021】
更に、ハイブリッド自動車、電気自動車の何れの場合においても、不凍液が循環する暖房用回路に図示しないヒータコアとともに加熱装置1を設け、加熱装置1を不凍液の熱源の一つとして利用し、ヒータコアで暖房された空気を送風することも考えられる。
【0022】
図1に示すように、ケース3は、内部に空間を有する直方体の箱型に形成されており、一側面に電熱線ヒータ2を挿入する孔30が、上下方向に間隔をおいて2個設けられている。また、ケース3の上面には、冷却水の入口部32と出口部33とが設けられている。
ケース3の内部は、図1中左右方向中間部を上下方向に延び、ケース3内の空間を左右に仕切る隔壁部35が設けられている。隔壁部35には、電熱線ヒータ2が挿入可能な穴が形成されている。また、隔壁部35は、2つの電熱線ヒータ2より下方でケース3内の空間が左右で連通可能となるように形成されている。」
イ「【0030】
以上のような構成により、本実施形態の加熱装置1では、入口部32に冷却水を流入させると、図1内の2点鎖線矢印で示すように、冷却水は、電熱線ヒータ2の側方を通過して下方に流通し、ケース3内の下部で入口部32側から出口部33側に左右方向に移動して、更に電熱線52の側方を通過しながら上方に移動して出口部33から排出される。
【0031】
このように加熱装置1内に冷却水を導入して、電熱線ヒータ2の側方を通過する際には、電熱線ヒータ2の外周壁に面した隙間45を冷却水が通過するので、電源装置56から電熱線ヒータ2の電熱線52に電力を供給することで、電熱線52から発生する熱により冷却水を加熱することができる。
【0032】
本実施形態では、電熱線ヒータ2の外周壁に直接冷却水が接触する構造であるので、熱交換効率が高く、また、加熱装置1の寸法や重量を抑制することができ、車両搭載に好適な加熱装置1とすることができる。」
ウ「【0038】
更に、本発明の加熱装置1をハイブリッド自動車や電気自動車の車両用空調装置に組み込むことにより、冷却水回路、冷凍回路、ひいてはこれらの回路が設けられる空調装置、ひいてはこの空調装置が搭載される上記車両の組立性の向上及び製造コストの低減を図ることができて好ましい。また、加熱装置1を上記車両用空調装置に組み込むのみならず、他の用途の熱源としても利用可能であるのは勿論である。」
エ「
[図:0001390252000001.jpg]
」
(2)上記(1)から分かること
ア 引用例の段落【0018】の記載から、加熱装置1は、自動車用の加熱装置であることが分かり、また、段落【0019】、【0020】、【0031】には、電熱線ヒータ2によって加熱することが記載されているので、当該加熱装置1は電気加熱装置であることが分かる。
イ 引用例の段落【0022】、【0030】、図1の記載から、加熱装置1は冷却水を収納し流通させるケース3を備えていることが分かる。
ウ 引用例の段落【0022】、【0030】、図1の記載から、加熱装置1は冷却水を流入させる入口部32と冷却水を排出する出口部33とを備えていることが分かる。
エ 引用例の段落【0022】、図1の記載から、電熱線ヒータ2はケース3内に配置されていることが分かる。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)からみて、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「冷却水を収容し流通させるためのケース3と、
前記冷却水が入口部32側を通って前記ケース3内に流入し、出口部33を通って流出することが可能な入口部32及び出口部33と、
を備える自動車用の電気加熱装置であって、
電熱線ヒータ2が前記ケース3内に配置されている、
加熱装置1。」
第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「冷却水」は本願発明における「液体、具体的には水」に相当し、以下同様に、「収容し流通させる」ことは「収容し伝える」ことに、「入口部32」は「液体入口(19)」に、「出口部33」は「液体出口(20)」に、「電熱線ヒータ2」は「加熱要素(12)」に、「加熱装置1」は「電気加熱装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「ケース3」がある容積の区域を有することは自明であるから、引用発明の「ケース3」が有する当該区域は、本願発明の「容積区域(11)」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「液体、具体的には水を収容し伝えるための容積区域(11)と、
前記液体が液体入口(19)を通って前記容積区域(11)内に流入し、液体出口(20)を通って流出することが可能な液体入口(19)及び液体出口(20)と、
を備える自動車用の電気加熱装置であって、
加熱要素(12)が前記容積区域(11)内に配置されている、
電気加熱装置。」
[相違点]
本願発明の「電気加熱装置」は、「少なくとも二つの異なる設置位置に設置され、排出可能に構成される」のに対し、引用発明の「加熱装置1」は「少なくとも二つの異なる設置位置に設置され、排出可能に構成される」ものであるのか特定されていない点。
以下、相違点について検討する。
[相違点について]
引用例の段落【0038】には、「加熱装置1をハイブリッド自動車や電気自動車の車両用空調装置に組み込む」との記載があることから、加熱装置1は、車両用空調装置を構成する部材と一体成形されておらず、互いに別部材であることが分かる。
そして、別部材である車両用空調装置に組み込むのであれば、当然、取り外すことも可能であるので、当該加熱装置1は組み込み(設置)及び取り外し(排出)可能なものであると認められる。
また、自動車の仕様によって空調装置の場所は異なるものであり、加熱装置1の設置位置は、自動車内における加熱装置が取り付けられる空調装置の場所によって異なるものとなるから、自動車内における空調装置の場所に応じたそれぞれ少なくとも二つの異なる設置位置に、加熱装置1を設置することは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。
さらに、相違点における「少なくとも二つの異なる設置位置」が、「電気加熱装置」の向きを変えて設置することを意味するとしても、引用発明の加熱装置1はケース3により冷却水と電熱線ヒータ2が密閉された構造であって(引用例の図1等を参照。)、向きを変えて設置したとしても電熱線ヒータ2と冷却水とで熱交換を行うとの機能(段落【0032】参照。)が損なわれるとまでは認められないので、加熱装置1が取り付けられる空調装置の受け側部材の向きや加熱装置1を設置する周囲のスペースの形状などにより、必要に応じて加熱装置1の向きを変えることにより、少なくとも二つの異なる設置位置に設置するように構成することは、当業者が適宜なし得たことであり、格別の困難性があるとも認められない。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 審判請求人の主張
審判請求人は、令和3年9月29日提出の審判請求書の手続補正書(令和3年11月4日提出)において、次のとおり概略主張している。
「本願発明1は、『前記電気加熱装置は、少なくとも二つの異なる設置位置に設置され、排出可能に構成される』という構成を含んでいる。『少なくとも二つの異なる設置位置』の例として、明細書段落0035乃至0037に、「図1及び図2に示された第1の設置位置(水平方向)」、「第1の設置位置から長手方向軸を中心として90度回転され、液体出口が液体入口より上に位置する、第2の設置位置」及び「第1の設置位置から横軸を中心として90度回転され、液体入口及び液体出口が容積区域の上端に横向きに配置される、第3の設置位置」が説明されている。
それに対して、引用文献2には、加熱装置1が、冷却水の入口部32と出口部33とがケース3の上側に位置する設置位置(図1参照)以外の設置位置で使用されることについて、記載も示唆も全くない。
更に、引用文献2には、『ケース3内の空間を左右に仕切る隔壁部35が設けられている』(段落0022)、『冷却水は、電熱線ヒータ2の側方を通過して下方に流通し、ケース3内の下部で入口部32側から出口部33側に左右方向に移動して、更に電熱線52の側方を通過しながら上方に移動して出口部33から排出される』(段落0030)といった記載がある。これらの「左、右、下方、上方」という方向を示す記載は、加熱装置1が図1に示されている設置位置に設置されていなければ意味をなさないので、加熱装置1を図1に示されている設置位置以外の設置位置に設置することから当業者を遠ざける記載となっている。なお、拒絶査定において『引用文献2の記載が主張のとおりであったとしても、記載された設置位置で使用してはいけない理由がない以上、適宜なし得ることである。』との指摘があるが、阻害要因があるにもかかわらず『適宜なし得ることである』と認定することは妥当でない。」
上記の主張について検討する。
審判請求人が主張する引用例における冷却水の流れの方向に係る記載は、図1及び図2を基準とした場合の方向を記載したに過ぎず、当然、加熱装置1の向きが変われば、「左、右、下方、上方」という方向を示す表現も変わってくるものである。
そして、「第5 対比・判断」で上述したとおり、加熱装置1の向きを変えて設置したとしても、電熱線ヒータ2と冷却水とで熱交換を行うとの機能が損なわれるとまでは認められないので、加熱装置1が取り付けられる空調装置の受け側部材の向きや加熱装置1を設置する周囲のスペースの形状などにより、必要に応じて加熱装置1の向きを変えることにより、少なくとも二つの異なる設置位置に設置するように構成することは、当業者が適宜なし得たことであり、格別の困難性があるとも認められない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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