2021-012525
文書管理システム、文書管理方法及び文書管理プログラム
- 審判番号
- 2021-012525
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-001096外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月17日
- 審決日
- 2022年03月30日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (H04L) / P18 .121-Z (H04L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第164条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1.手続の経緯
本願は,平成30年1月9日の出願であって,
令和2年1月8日付けで審査請求がなされ,令和2年11月19日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して令和3年1月13日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,令和3年6月24日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して令和3年9月17日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,令和3年11月24日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。
第2.令和3年9月17日付けの手続補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年9月17日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
令和3年9月17日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,令和3年1月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】文書を作成又は更新したエンティティから,当該文書を示すトランザクションを受信する受信部と,前記トランザクションをブロックチェーンに登録する登録部と,を備え,前記受信部は,続きを表示(全30行)文書を新規に作成した第1エンティティから,当該作成した文書の状態を要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた起点トランザクションを受信し,元の文書を新たな文書に更新した第2エンティティから,前記新たな文書の状態,当該新たな文書に至るまでの前記元の文書からの更新操作,及び前記元の文書を示すトランザクションへのポインタを要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた更新トランザクションを受信し,前記登録部は,前記起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションの状態と類似していないことを確認する文書管理装置。【請求項2】前記登録部は,複数のトランザクションをリーフノードとする木構造のルートハッシュを,定期的に前記ブロックチェーンのブロックに格納する請求項1に記載の文書管理装置。【請求項3】前記第2エンティティが前記元の文書を削除した場合,前記新たな文書の状態を,削除を示す特定のデータとする請求項1又は請求項2に記載の文書管理装置。【請求項4】前記登録部は,前記起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションのうち,削除に至った文書を除く文書の状態と類似していないことを確認する請求項3に記載の文書管理装置。【請求項5】文書を作成又は更新したエンティティから,当該文書を示すトランザクションを受信する受信ステップと,前記トランザクションをブロックチェーンに登録する登録ステップと,をコンピュータが実行し,前記受信ステップにおいて,文書を新規に作成した第1エンティティから,当該作成した文書の状態を要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた起点トランザクションを受信し,元の文書を新たな文書に更新した第2エンティティから,前記新たな文書の状態,当該新たな文書に至るまでの前記元の文書からの更新操作,及び前記元の文書を示すトランザクションへのポインタを要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた更新トランザクションを受信し,前記登録ステップにおいて,前記起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションの状態と類似していないことを確認する文書管理方法。【請求項6】文書を作成又は更新したエンティティから,当該文書を示すトランザクションを受信する受信ステップと,前記トランザクションをブロックチェーンに登録する登録ステップと,をコンピュータに実行させ,前記受信ステップにおいて,文書を新規に作成した第1エンティティから,当該作成した文書の状態を要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた起点トランザクションを受信させ,元の文書を新たな文書に更新した第2エンティティから,前記新たな文書の状態,当該新たな文書に至るまでの前記元の文書からの更新操作,及び前記元の文書を示すトランザクションへのポインタを要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた更新トランザクションを受信させ,前記登録ステップにおいて,前記起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションの状態と類似していないことを確認させるための文書管理プログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】文書を作成又は更新したエンティティから,当該文書を示すトランザクションを受信する受信部と,前記トランザクションをブロックチェーンに登録する登録部と,を備え,前記受信部は,続きを表示(全30行)文書を新規に作成した第1エンティティから,当該作成した文書の状態を要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた起点トランザクションを受信し,元の文書を新たな文書に更新した第2エンティティから,前記新たな文書の状態,当該新たな文書に至るまでの前記元の文書からの更新操作,及び前記元の文書を示すトランザクションへのポインタを要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた更新トランザクションを受信し,前記登録部は,前記起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションの状態と類似していないことを確認し,一致又は類似しているトランザクションの登録を拒否する文書管理装置。【請求項2】前記登録部は,複数のトランザクションをリーフノードとする木構造のルートハッシュを,定期的に前記ブロックチェーンのブロックに格納する請求項1に記載の文書管理装置。【請求項3】前記第2エンティティが前記元の文書を削除した場合,前記新たな文書の状態を,削除を示す特定のデータとする請求項1又は請求項2に記載の文書管理装置。【請求項4】前記登録部は,前記起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションのうち,削除に至った文書を除く文書の状態と類似していないことを確認する請求項3に記載の文書管理装置。【請求項5】文書を作成又は更新したエンティティから,当該文書を示すトランザクションを受信する受信ステップと,前記トランザクションをブロックチェーンに登録する登録ステップと,をコンピュータが実行し,前記受信ステップにおいて,文書を新規に作成した第1エンティティから,当該作成した文書の状態を要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた起点トランザクションを受信し,元の文書を新たな文書に更新した第2エンティティから,前記新たな文書の状態,当該新たな文書に至るまでの前記元の文書からの更新操作,及び前記元の文書を示すトランザクションへのポインタを要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた更新トランザクションを受信し,前記登録ステップにおいて,前記起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションの状態と類似していないことを確認し,一致又は類似しているトランザクションの登録を拒否する文書管理方法。【請求項6】文書を作成又は更新したエンティティから,当該文書を示すトランザクションを受信する受信ステップと,前記トランザクションをブロックチェーンに登録する登録ステップと,をコンピュータに実行させ,前記受信ステップにおいて,文書を新規に作成した第1エンティティから,当該作成した文書の状態を要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた起点トランザクションを受信させ,元の文書を新たな文書に更新した第2エンティティから,前記新たな文書の状態,当該新たな文書に至るまでの前記元の文書からの更新操作,及び前記元の文書を示すトランザクションへのポインタを要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた更新トランザクションを受信させ,前記登録ステップにおいて,前記起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションの状態と類似していないことを確認し,一致又は類似しているトランザクションの登録を拒否させるための文書管理プログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。
2.補正の適否
(1)本件手続補正は,補正前の請求項1に記載の「文書管理装置」における「登録部」について,「一致又は類似しているトランザクションの登録を拒否」するという限定を付加し,補正前の請求項5,及び,請求項6に記載の「登録ステップ」について,「一致又は類似しているトランザクションの登録を拒否」するという限定を付加するものであって,当該限定事項は,願書の最初に添付された明細書(以下,これを「当初明細書」という)の段落【0023】,段落【0030】,及び,段落【0036】に記載された内容に基づくものであるから,本件手続補正は,当初明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるから,特許法17条の2第3項の規定を満たすものであり,限定的減縮を目的とするものであるから,同法17条の2第5項の規定を満たすものである。
そこで,本件手続補正が,同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。
(2)補正後の請求項5に係る発明
補正後の請求項5に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「第2.令和3年9月17日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正後の請求項5として引用した,次のとおりのものである。
「文書を作成又は更新したエンティティから,当該文書を示すトランザクションを受信する受信ステップと,前記トランザクションをブロックチェーンに登録する登録ステップと,をコンピュータが実行し,前記受信ステップにおいて,文書を新規に作成した第1エンティティから,当該作成した文書の状態を要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた起点トランザクションを受信し,元の文書を新たな文書に更新した第2エンティティから,前記新たな文書の状態,当該新たな文書に至るまでの前記元の文書からの更新操作,及び前記元の文書を示すトランザクションへのポインタを要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた更新トランザクションを受信し,前記登録ステップにおいて,前記起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションの状態と類似していないことを確認し,一致又は類似しているトランザクションの登録を拒否する文書管理方法。」
(3)引用文献に記載の事項
原審における令和2年11月19日付けの拒絶理由に引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2017-204707号公報(平成29年11月16日公開,以下,これを「引用文献」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
A.「【0024】
図1に示すコンテンツ生成装置1は,コンテンツ生成部11,メタデータ生成部12,暗号化部13,電子署名部14,及び送信部15を備える。コンテンツ生成装置1が備える各部は,演算処理装置,記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して,各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムはコンテンツ生成装置1が備える記憶装置に記憶されており,磁気ディスク,光ディスク,半導体メモリ等の記録媒体に記録することも,ネットワークを通して提供することも可能である。
【0025】
コンテンツ生成部11は,映像や画像などのコンテンツを生成するとともに,コンテンツのハッシュ値を計算する。コンテンツ生成部11は,例えば,スマートフォンのカメラアプリケーション,ボイスレコーダである。映像等をエンコードするエンコーダーチップを備える場合は,エンコーダーチップがコンテンツ生成部11として機能する。コンテンツは映像や画像に限らず音声であってもよい。コンテンツが生成されたときとは,コンテンツがメモリやディスクなどに書き出されてアクセス可能になった時点である。例えば,利用者がコンテンツ生成装置1を用いて動画や静止画を撮影したときである。
【0026】
メタデータ生成部12は,コンテンツのメタデータを生成する。コンテンツのメタデータには,コンテンツ内から取得できるメタデータとコンテンツ外のメタデータがある。コンテンツ内のメタデータは,例えば,撮影日時や位置情報などコンテンツ内に記載されるデータである。コンテンツ外のメタデータは,コンテンツ内に記載されていないがコンテンツ生成装置1が取得可能な情報である。コンテンツ外のメタデータは,例えば,コンテンツ生成装置1に付与された端末ID,コンテンツの生成に利用したソフトウェアやハードウェアの情報,コンテンツの生成者名などのデータである。メタデータ内にコンテンツの生成に利用したソフトウェアやハードウェアの情報を含めることで,そのソフトウェアやハードウェアが十分に信頼できるものであれば,コンテンツの真正性を担保可能である。図2に,メタデータの例を示す。図2の左側のメタデータはコンテンツ内に記載されたメタデータの例であり,右側のメタデータはメタデータ生成部12が取得して付与したメタデータの例である。日時や場所など複数ソースから取得できる情報は複数取得し,取得元も記載する。例えば,日時の取得元としては,端末内の時計,GPS,NTPサーバなどがあり,場所の取得元としては,GPSや無線基地局などがある。」
B.「【0029】
送信部15は,電子署名を付けたコンテンツのハッシュ値とメタデータをウォレット3に送信する。送信部15は,コンテンツ本体をコンテンツ管理解析サーバ2に送信する。コンテンツ管理解析サーバ2がコンテンツ本体を保持して配信する。コンテンツ本体は,コンテンツ生成装置1が保持し,求めに応じてコンテンツを配信してもよい。コンテンツの取得先はメタデータに記録してもよい。
【0030】
ハッシュ値とメタデータのブロックチェーンへの登録は,ブロックチェーンのP2Pネットワークに参加するウォレット3,マイナー4によって行われる。ウォレット3は,コンテンツ生成装置1からハッシュ値とメタデータを受信し,ハッシュ値とメタデータを登録する一連の処理を記載したトランザクションを発行してネットワークにブロードキャストする。マイナー4は,トランザクションを含むブロックを生成してブロックチェーンに追加する。ネットワーク上には多数のマイナー4が存在する。所定の条件を満たすブロックを最も早く生成したマイナー4がブロックチェーンにブロックを追加できる。全てのトランザクションを記録したブロックチェーンはネットワークで共有される。ブロックチェーンに含まれるトランザクションの内容は参加者であれば誰でも確認可能であり,かつ,改ざんすることは事実上不可能である。」
C.「【0042】
ウォレット3は,ハッシュ値とメタデータを受信すると,ハッシュ値がブロックチェーンに登録されていないか確認する(ステップS21)。同じハッシュ値が既にブロックチェーンに登録されている場合は登録を中止する。ここで,ウォレット3がハッシュ値とメタデータに付与された電子署名を検証してもよい。
【0043】
ウォレット3は,ハッシュ値とメタデータを登録するトランザクションを発行する(ステップS22)。トランザクションは,ブロックチェーンのP2Pネットワークに参加するノードにブロードキャストされる。
【0044】
マイナー4は,トランザクションを受信し,トランザクションを含むブロックを生成してブロックチェーンの末尾に追加する(ステップS23)。
【0045】
続いて,図6のフローチャートについて説明する。図6のフローチャートも図5と同様にハッシュ値とメタデータをブロックチェーンに登録する処理であるが,マイナー4が,ハッシュ値がブロックチェーンに既に登録されていないか確認する点で相違する。
【0046】
ウォレット3は,ハッシュ値とメタデータを登録するトランザクションを発行する(ステップS24)。トランザクションは,ブロックチェーンに参加するノードにブロードキャストされる。
【0047】
マイナー4は,トランザクションを受信し,トランザクションに含まれるハッシュ値がブロックチェーンに登録されていないか確認する(ステップS25)。同じハッシュ値がブロックチェーンに既に登録されている場合はそのトランザクションを破棄する。ここで,マイナー4がハッシュ値とメタデータに付与された電子署名を検証してもよい。
【0048】
マイナー4は,トランザクションを含むブロックを生成してブロックチェーンの末尾に追加する(ステップS26)。」
D.「【0055】
続いて,コンテンツ管理解析サーバ2による解析結果をブロックチェーンに登録する処理について説明する。
【0056】
図9は,コンテンツ管理解析サーバ2の解析結果をブロックチェーンに登録する処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
ウォレット3は,コンテンツ管理解析サーバ2からコンテンツのハッシュ値と解析結果等を受信すると,ハッシュ値がブロックチェーンに登録されているか確認する(ステップS41)。
【0058】
ハッシュ値が登録されている場合,ウォレット3は,ハッシュ値をキーにコンテンツの解析結果やURLを登録するトランザクションを発行する(ステップS42)。トランザクションは,ブロックチェーンに参加するノードにブロードキャストされる。
【0059】
マイナー4は,トランザクションを受信し,トランザクションを含むブロックを生成してブロックチェーンの末尾に追加する(ステップS43)。」
(4)引用文献に記載の発明
ア.上記Aの「図1に示すコンテンツ生成装置1は,コンテンツ生成部11,メタデータ生成部12,暗号化部13,電子署名部14,及び送信部15を備える。コンテンツ生成装置1が備える各部は,演算処理装置,記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して,各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい」という記載,同じく,上記Aの「コンテンツ生成部11は,映像や画像などのコンテンツを生成するとともに,コンテンツのハッシュ値を計算する」という記載,上記Bの「送信部15は,電子署名を付けたコンテンツのハッシュ値とメタデータをウォレット3に送信する」という記載,同じく,上記Bの「ハッシュ値とメタデータのブロックチェーンへの登録は,ブロックチェーンのP2Pネットワークに参加するウォレット3,マイナー4によって行われる。ウォレット3は,コンテンツ生成装置1からハッシュ値とメタデータを受信し,ハッシュ値とメタデータを登録する一連の処理を記載したトランザクションを発行してネットワークにブロードキャストする。マイナー4は,トランザクションを含むブロックを生成してブロックチェーンに追加する」という記載,上記C「ウォレット3は,ハッシュ値とメタデータを登録するトランザクションを発行する」という記載,及び,同じく,上記Cの「マイナー4は,トランザクションを受信し,トランザクションを含むブロックを生成してブロックチェーンの末尾に追加する」という記載から,引用文献においては,
“コンテンツ生成装置が生成したコンテンツの電子署名を付けたハッシュ値とメタデータについてのトランザクションをウォレットを介して発行し,前記トランザクションを,マイナーが受信する”ものであることが読み取れる。
イ.上記Dの「続いて,コンテンツ管理解析サーバ2による解析結果をブロックチェーンに登録する処理について説明する」という記載,同じく,上記Dの「ウォレット3は,コンテンツ管理解析サーバ2からコンテンツのハッシュ値と解析結果等を受信すると,ハッシュ値がブロックチェーンに登録されているか確認する」という記載,同じく,上記Dの「ハッシュ値が登録されている場合,ウォレット3は,ハッシュ値をキーにコンテンツの解析結果やURLを登録するトランザクションを発行する」という記載,及び,同じく,上記Dの「マイナー4は,トランザクションを受信し,トランザクションを含むブロックを生成してブロックチェーンの末尾に追加する」という記載と,上記ア.において検討した事項から,引用文献においては,
“コンテンツ管理解析サーバからの解析結果等についてのトランザクションをウォレットを介して発行し,前記解析結果等のトランザクションを,マイナーが受信する”ものであることが読み取れる。
ウ.上記Cの「マイナー4は,トランザクションを受信し,トランザクションに含まれるハッシュ値がブロックチェーンに登録されていないか確認する(ステップS25)。同じハッシュ値がブロックチェーンに既に登録されている場合はそのトランザクションを破棄する。ここで,マイナー4がハッシュ値とメタデータに付与された電子署名を検証してもよい」という記載,及び,同じく,上記Cの「マイナー4は,トランザクションを含むブロックを生成してブロックチェーンの末尾に追加する」という記載と,上記ア.において検討した事項から,引用文献においては,
“マイナーは,トランザクションを受信し,トランザクションに含まれるハッシュ値,或いは,電子署名がブロックチェーンに登録されていないかを確認し,
前記ハッシュ値,或いは,電子署名がブロックチェーンに登録されている場合は,前記トランザクションを破棄する”ものであることが読み取れる。
エ.以上,上記ア.~ウ.において検討した事項から,引用文献には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。
「コンテンツ生成装置が生成したコンテンツの電子署名を付けたハッシュ値とメタデータについてのトランザクションをウォレットを介して発行し,前記トランザクションを,マイナーが受信し,コンテンツ管理解析サーバからの解析結果等についてのトランザクションをウォレットを介して発行し,前記解析結果等のトランザクションを,マイナーが受信し,マイナーは,トランザクションを受信し,トランザクションに含まれるハッシュ値,或いは,電子署名がブロックチェーンに登録されていないかを確認し,前記ハッシュ値,或いは,電子署名がブロックチェーンに登録されている場合は,前記トランザクションを破棄する,方法。」
(5)本件補正発明と引用発明との対比
ア.引用発明において,「コンテンツ生成装置」が生成する「コンテンツ」として“文書コンテンツ”を含み得ることは,当業者にとって自明の事項であり,
引用発明において,「コンテンツ生成装置」の「コンテンツ」に関する「トランザクション」を,「マイナー」が受信し,当該「マイナー」が,当該「トランザクション」を「ブロックチェーン」に登録するものであって,これらの処理が「コンピュータ」によって行われることも明らかであるから,
引用発明における「コンテンツ生成装置」,「コンテンツ管理解析サーバ」が,
本件補正発明における「エンティティ(情報処理装置)」に相当し,
引用発明における「コンテンツ」が,
本件補正発明における「文書」に相当するので,
引用発明において,「コンテンツ生成装置」,「コンテンツ管理解析サーバ」からの「トランザクション」を「マイナー」が受信すること,及び,
引用発明において,「マイナー」が,「トランザクション」を「ブロックチェーン」に「追加」することが,
本件補正発明における「文書を作成又は更新したエンティティから,当該文書を示すトランザクションを受信する受信ステップと,
前記トランザクションをブロックチェーンに登録する登録ステップと,をコンピュータが実行」することに相当する。
イ.引用発明において,「コンテンツ生成装置」が「コンテンツ」を「生成」するということは,新たな「コンテンツ」を生成することにほかならないから,
引用発明における「コンテンツ生成装置」が,
本件補正発明における「第1エンティティ」に相当し,
引用発明において,新たに生成された「コンテンツ」に関する「トランザクション」が,
本件補正発明における「起点トランザクション」に相当するので,
引用発明において,「コンテンツの電子署名を付けたハッシュ値」は,「コンテンツの電子署名」と,「ハッシュ値」とが存在していることを示すことに外ならず,
本件補正発明における「要素のハッシュ値及び電子署名」に相当するので,
引用発明において,「コンテンツ生成装置が生成したコンテンツの電子署名を付けたハッシュ値とメタデータについてのトランザクションをウォレットを介して発行し,前記トランザクションを,マイナーが受信」することが,
本件補正発明における「文書を新規に作成した第1エンティティから,当該作成した文書の状態を要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた起点トランザクションを受信」することに相当する。
ウ.引用発明においては,「コンテンツ管理解析サーバ」からの「解析結果等」に関する「トランザクション」を,「マイナー」が受信しており,当該「コンテンツ管理解析サーバ」も,一つの「エンティティ」と言い得るものである。
したがって,引用発明においても,本件補正発明における「第1エンティティ」に相当する「コンテンツ生成装置」以外の,「エンティティ」からの「トランザクション」を受信する態様を有していることは明らかである。
引用発明においては,生成した「コンテンツ」を更新することについての明確な言及はないものの,引用発明においては,「改ざん」等,不正規な「編集」を排除するものであって,「ブロックチェーン」の技術的要件から,正規に編集された「コンテンツ」に関する「トランザクション」を「ブロックチェーン」に登録する態様を含み得ることは,当業者にとって自明の事項である。
そして,「ブロックチェーン」において,「ハッシュポインタ」は,自明の技術事項であるから,
明文の記載はないものの,引用発明においても,本件補正発明における「元の文書を新たな文書に更新した第2エンティティから,前記新たな文書の状態,当該新たな文書に至るまでの前記元の文書からの更新操作,及び前記元の文書を示すトランザクションへのポインタを要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた更新トランザクションを受信」する態様を含み得る。
エ.引用発明において,「ブロックチェーン」に登録されている「ハッシュ値」を比較することは,元の「トランザクション」を比較することと同等である。
そして,引用発明において「トランザクションを破棄する」ことは,
本件補正発明における「トランザクションの登録を拒否する」ことに相当するので,文言上の相違があるものの,
引用発明における「マイナーは,トランザクションを受信し,トランザクションに含まれるハッシュ値,或いは,電子署名がブロックチェーンに登録されていないかを確認し,
前記ハッシュ値,或いは,電子書名がブロックチェーンに登録されている場合は,前記トランザクションを破棄する」ことが,
本件補正発明における「起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションの状態と類似していないことを確認し,一致又は類似しているトランザクションの登録を拒否する」ことに相当する。
オ.以上,ア.~エ.において検討したとおりであるから,文言上の相違があるものの,本件補正発明は,引用文献に記載された発明と同じものである。
以上のとおりであるから,本件補正発明は,引用文献に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当するので,特許出願の際,独立して特許を受けることができない。
そして,本件補正発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際,独立して特許を受けることができない。
3.補正却下むすび
したがって,本件手続補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3.本願発明について
令和3年9月17日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項5に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,令和3年1月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5に記載された,上記「第2.令和3年9月17日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項5として引用した,次のとおりのものである。
「文書を作成又は更新したエンティティから,当該文書を示すトランザクションを受信する受信ステップと,前記トランザクションをブロックチェーンに登録する登録ステップと,をコンピュータが実行し,前記受信ステップにおいて,文書を新規に作成した第1エンティティから,当該作成した文書の状態を要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた起点トランザクションを受信し,元の文書を新たな文書に更新した第2エンティティから,前記新たな文書の状態,当該新たな文書に至るまでの前記元の文書からの更新操作,及び前記元の文書を示すトランザクションへのポインタを要素として,当該要素のハッシュ値及び電子署名を加えた更新トランザクションを受信し,前記登録ステップにおいて,前記起点トランザクション又は前記更新トランザクションを登録する際に,前記ブロックチェーンに登録されている既存のトランザクションの状態と類似していないことを確認する文書管理方法。」
第4.原審における拒絶査定の理由
原審における拒絶査定の理由は,概略,次のとおりである。
「本願の請求項5に係る発明は,引用文献に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない。
加えて,本願の請求項5に係る発明は,引用文献に記載された発明に基づいて,本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献一覧
特開2017-204707号公報
第5.引用文献に記載の発明
原審の拒絶理由に引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2017-204707号公報(平成29年11月16日公開)には,上記「第2.令和3年9月17日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」おける「(4)引用文献に記載の発明」において検討したとおりの次の引用発明が記載されている。
「コンテンツ生成装置が生成したコンテンツの電子署名を付けたハッシュ値とメタデータについてのトランザクションをウォレットを介して発行し,前記トランザクションを,マイナーが受信し,コンテンツ管理解析サーバからの解析結果等についてのトランザクションをウォレットを介して発行し,前記解析結果等のトランザクションを,マイナーが受信し,マイナーは,トランザクションを受信し,トランザクションに含まれるハッシュ値,或いは,電子署名がブロックチェーンに登録されていないかを確認し,前記ハッシュ値,或いは,電子署名がブロックチェーンに登録されている場合は,前記トランザクションを破棄する,方法。」
第6.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,本件補正発明から,「登録ステップ」における「一致又は類似しているトランザクションの登録を拒否する」という限定を取り除いたものであるから,
本願発明と,引用発明とは,上記「第2.令和3年9月17日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」おける「(5)本件補正発明と引用発明との対比」において検討したとおり,文言上の相違があるものの,実質的には,同一である。
第7.むすび
以上に検討したとおりであるから,本願発明は,引用文献に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない。
そして,本願発明は,引用文献に記載された発明に基づいて,本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-012525