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特許拒絶査定不服審判

2021-011949

転写箔及びその製造方法

審判番号
2021-011949
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-176710外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年09月08日
審決日
2022年05月09日
公報発行日
2022年06月24日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WY (G02B) / P18 .121-WY (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-176710「転写箔及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月25日出願公開、特開2021- 47411、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続等の経緯

特願2020-176710号(以下「本件出願」という。)は、令和元年9月19日に出願した特願2019-170760号の一部を令和2年10月21日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 3年 2月 4日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 3月29日提出:意見書
令和 3年 3月29日提出:手続補正書
令和 3年 5月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 3年 9月 8日提出:審判請求書
令和 3年 9月 8日提出:手続補正書

第2 原査定の概要

原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1~8に係る発明は、(理由1)本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、(理由2)本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

記

引用文献1:特開2009-90464号公報
引用文献2:特開2009-175579号公報
引用文献3:特開2010-128096号公報

(当合議体注:引用文献1~2は主引用例であり、引用文献3は周知技術を示す文献である。)

第3 本件発明

本件出願の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、令和3年9月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本件発明1及び5は、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と、前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向き合った接着層とを備え、前記転写材層はレリーフ構造形成層と反射層とを含んだ帯状の転写箔の製造方法であって、
回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層を形成することと、
前記レリーフ構造が設けられた前記主面上に金属層を形成することと、
前記金属層上に、前記金属層の表面のうち、前記レリーフ構造形成層の長さ方向に各々が延びた一対の縁部を露出させ、それら縁部に挟まれた中央部を被覆したマスク層を形成することと、
前記マスク層をエッチングマスクとして用いたエッチングにより、前記金属層のうち前記一対の縁部に対応した部分を除去して、反射層を形成することと、
前記接着層を形成することとを含み、前記接着層の厚さを前記マスク層の厚さの2乃至40倍の範囲内とし、前記転写箔の長さ方向に延びた前記反射層の縁は凹部を含み、前記転写箔の一対の縁の各々から前記反射層までの最短距離を0.1乃至2.0mmの範囲内とする転写箔の製造方法。」
「 【請求項5】
転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と、前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向き合った接着層とを備えた帯状の転写箔であって、
前記転写材層は、回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層と、前記主面を部分的に被覆した金属製の反射層と、前記反射層を被覆し、前記反射層と同じ形状を有するマスク層とを含み、
前記反射層は、前記転写箔の長さ方向に延びた帯状の形状を有し、前記長さ方向に平行な前記転写箔の一対の縁から離間しており、前記転写箔の長さ方向に延びた前記反射層の縁は凹部を含み、前記転写箔の前記一対の縁の各々から前記反射層までの最短距離は0.1乃至2.0mmの範囲内にあり、
前記接着層の厚さは前記マスク層の厚さの2乃至40倍の範囲内にある転写箔。」

また、本件発明2~4は、本件発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加した「転写箔の製造方法」の発明であり、本件発明6~8は、本件発明5に対してさらに他の発明特定事項を付加した「転写箔」の発明である。

第4 引用文献の記載事項及び引用発明

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1 引用文献2の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2009-175579号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

(1)「【0024】
次に、図3は、本発明第3の事例を示す転写箔5を、図4におけるB-Bで切断した場合の断面の状態として、模式的に示した図である。転写箔5における転写層4も、剥離保護層11と、レーザ光や熱線などの光線を吸収して熱に変換する光吸収材や温度によって色が変化する示温性材料を含有する光吸収変色層12と、剥離保護層11側からの入射光によって回折光を発生させる回折構造形成層13と、回折構造であるエンボス加工面14と回折光を反射する反射層15、反射層15を部分的に設けるために必要な耐薬品保護層16、そして被転写媒体に接着するための接着層17を有している。
【0025】
また、図4は本発明第3の事例を示す転写箔5の平面図であって、図3の断面図において支持体1側から転写層4を見た場合を示している。図4の例では、耐薬品保護層16と同一形状の反射層15は、両端が円状の横長形状をしている部分と“Security”の小さな文字形状とがあり、その横長形状の内部では六角形の星型の回折光画像を観察することができ、また、“Security”の文字については同形状の回折光画像を観察することができる。一方、それ以外の反射層15が無い部分については、エンボス加工面14で発生する回折光が反射されないため、観察者は回折光画像を見ることはできない。反射層15のパタニングは、耐薬品保護層16を所望の形状にエッチング加工し、これをマスクとして開口部の反射層を除去することで行う。これらにより、偽造防止効果を一段と向上させた構成となっている。」
(2)「【0058】
(実施例2)
次に、前述第3の例である転写箔5について説明する。支持体1として、厚さ25μmの透明なポリエチレンテレフタレート(通称PET)フィルムを使用した。
【0059】
続きを表示(全41行)
この支持体1の片面に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚2μmの剥離保護層11を形成した。
【0060】
次に、保護層11上の一部分に、下記組成物からなるインキを数字の形状に塗布・乾燥し、膜厚1.5μmの光吸収変色層12形成した。尚、転写箔5では反射層15は部分的に形成されるため、光吸収変色層12はその全体もしくは一部分が必ず反射層15と重なるように形成する必要があり、本実施例では、光吸収変色層12は数字“10000”の形状にて、図4に示したように楕円状の反射層15の側に重なるように配置した。
【0061】
次に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚1μmの層を形成した後、ロールエンボス法により回折格子形成用のプレス版を熱圧してその表面に回折格子を発生させるためのエンボス形状14を形成し、回折構造形成層13とした。
【0062】
次に、この回折構造形成層13の全面に、真空蒸着法にてアルミニウム蒸着膜を膜厚50nmにて均一に形成し、更に、アルミニウム蒸着膜上に厚さ1μmの耐薬品保護層16を前記光吸収変色層12と位置が重なるように形成した。そして、50℃に保温された1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液が入った浴槽に10秒間浸し、前記耐薬品保護層16がマスクとなり、耐薬品保護層16が存在せずにアルミニウム蒸着膜が露出している部位をエッチングで除去した。更に、0.1Nの塩酸水溶液に浸して中和処理を行い、その後、水洗、乾燥した。こうして、独立した画像パターン状にアルミニウム蒸着膜から構成される反射層15と、この反射層15に重ねられ、且つ、この反射層15と同一形状を有する耐薬品保護層16を形成した。
【0063】
最後に下記組成物からなるインキを塗布・乾燥させて厚さ3μmの接着層17を形成し、本発明の第3の事例の転写箔5を製造した。
【0064】
「剥離保護層インキ組成物」
ポリアミドイミド樹脂(Tg.250℃) 19.2重量部
ポリエチレンパウダー 0.8重量部
ジメチルアセトアミド 45.0重量部
トルエン 35.0重量部
「光吸収変色層インキ組成物」
ウレタン樹脂 20.0重量部
赤外線吸収材(第二銅含有リン酸塩系組成物) 1.0重量部
示温性材料(ビスマス化合物) 2.5重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「回折構造形成層インキ組成物」
ウレタン樹脂 20.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「耐薬品保護層インキ組成物」
変性ノルボルネン樹脂(Tg.171℃) 20.0重量部
沈降性硫酸バリウム(比重5.5) 10.0重量部
メチルエチルケトン 40.0重量部
トルエン 30.0重量部
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 15.0重量部
アクリル樹脂(Tg.20℃) 10.0重量部
シリカ 1.0重量部
メチルエチルケトン 44.0重量部
トルエン 30.0重量部
次に、この転写箔5を、予め文字や絵柄など所望の印刷を行った紙の媒体6に重ね、温度120℃に熱した円型の熱ロールタイプの転写機を用いて媒体6に熱転写してすぐに支持体1を剥離除去し、偽造防止用紙8を製造した。」

(3)図3

[図:0001385044000001.jpg]

(4)図4

[図:0001385044000002.jpg]

2 引用発明

(1)引用文献2の【0059】~【0064】に記載された実施例2について、「下記組成物からなるインキ」(【0059】)、「下記組成物からなるインキ」(【0060】)、「下記組成物からなるインキ」(【0061】)及び「下記組成物からなるインキ」(【0063】)は、それぞれ、同【0064】に記載された、「剥離保護層用インキ組成物」、「光吸収変色層インキ組成物」、「回折構造形成層インキ組成物」及び「接着層インキ組成物」のことである。

また、引用文献2の図4等の記載により、「転写箔5」が帯状であることは明らかである。

そうしてみると、引用文献2には、本発明の第3の事例の転写箔5である実施例2として製造した、次の転写箔の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、保護層11を剥離保護層11と用語を統一して用いた。

「 支持体1の片面に、剥離保護層用インキ組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚2μmの剥離保護層11を形成し、
次に、剥離保護層11上の一部分に、光吸収変色層インキ組成物からなるインキを数字の形状に塗布・乾燥し、膜厚1.5μmの光吸収変色層12形成し、
次に、回折構造形成層インキ組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚1μmの層を形成した後、その表面に回折格子を発生させるためのエンボス形状14を形成し、回折構造形成層13とし、
次に、この回折構造形成層13の全面に、アルミニウム蒸着膜を膜厚50nmにて均一に形成し、更に、アルミニウム蒸着膜上に厚さ膜厚1μmの耐薬品保護層16を光吸収変色層12と位置が重なるように形成し、耐薬品保護層16がマスクとなり、耐薬品保護層16が存在せずにアルミニウム蒸着膜が露出している部位をエッチングで除去し、更に、中和処理を行い、その後、水洗、乾燥し、独立した画像パターン状にアルミニウム蒸着膜から構成される反射層15と、この反射層15に重ねられ、且つ、この反射層15と同一形状を有する耐薬品保護層16を形成し、
最後に接着層インキ組成物からなるインキを塗布・乾燥させて厚さ3μmの接着層17を形成し、
製造した帯状の転写箔5。」

第5 対比・判断

1 本件発明5について

(1)対比

本件発明5と引用発明とを対比する。

ア レリーフ構造形成層について

引用発明の「転写箔5」は、「剥離保護層11上の一部分に」「光吸収変色層12形成し」、「回折構造形成層インキ組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚1μmの層を形成した後、その表面に回折格子を発生させるためのエンボス形状14を形成し、回折構造形成層13とし」、「この回折構造形成層13の全面に、アルミニウム蒸着膜を膜厚50nmにて均一に形成し、更に、アルミニウム蒸着膜上に厚さ1μmの耐薬品保護層16を光吸収変色層12と位置が重なるように形成し、耐薬品保護層16がマスクとなり、耐薬品保護層16が存在せずにアルミニウム蒸着膜が露出している部位をエッチングで除去し、更に、中和処理を行い、その後、水洗、乾燥し、独立した画像パターン状にアルミニウム蒸着膜から構成される反射層15と、この反射層15に重ねられ、且つ、この反射層15と同一形状を有する耐薬品保護層16を形成し」た層を具備するものである。

上記製法からみて、引用発明の「回折構造形成層13」は、本件発明5の「レリーフ構造形成層」に相当する。

また、上記製法からみて、引用発明の「回折構造形成層13」は、画像パターンを表示する回折格子を発生させるためのエンボス形状が、一方の主面に設けられているといえる。そうしてみると、引用発明の「回折構造形成層13」は、本件発明5の「レリーフ構造形成層」の「回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられた」との要件を満たす。

イ 反射層について

上記アの製法からみて、引用発明の「反射層15」は、本件発明5の「反射層」に相当する。

また、上記アの製法からみて、引用発明の「反射層15」は、「回折構造形成層13」の主面を部分的に被覆したといえる(当合議体注:このことは、引用文献2の図3からも確認できる。)。そうしてみると、引用発明の「反射層15」は、本件発明5の「反射層」の「前記主面を部分的に被覆した金属製」であるとの要件を満たす。

ウ マスク層について

上記アの製法からみて、引用発明の「耐薬品保護層16」は、本件発明5の「マスク層」に相当する。

また、上記アの製法からみて、引用発明の「耐薬品保護層16」は、反射層15を被覆し、反射層15と同じ形状を有する。そうしてみると、引用発明の「耐薬品保護層16」は、本件発明5の「マスク層」の「前記反射層を被覆し、前記反射層と同じ形状を有する」との要件を満たす。

エ 転写材層について

引用発明の「転写箔5」は、「回折構造形成層13」、「反射層15」及び「耐薬品保護層16」とを含む層(以下「積層A」という。)を具備するものである。

上記ア~ウと上記の点を総合すると、引用発明の「積層A」は、本件発明5の「転写材層」に相当する。

オ 支持体、接着層について

引用発明の「転写箔5」は、「支持体1の片面に」「剥離保護層11」と、「光吸収変色層12」と、「回折構造形成層13」と、「反射層15」と、「耐薬品保護層16」「を形成し」、「接着層17を形成」したものである。

上記構成からみて、引用発明の「支持体1」及び「接着層17」は、それぞれ、本件発明5の「支持体」及び「接着層」に相当する。

カ 転写箔について

上記ア~オを総合すると、引用発明の「転写箔5」は、本件発明5の「転写箔」に相当する。

また、上記ア及びオからみて、引用発明の「転写箔5」は、「積層A」と、「積層A」を剥離可能に支持した「支持体1」と、「積層A」を間に挟んで「支持体1」と向き合った「接着層17」を備えた帯状のものであるといえる。

そうしてみると、引用発明の「転写箔5」は、本件発明5の「転写箔」の「転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と、前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向かった接着層を備えた帯状」であるとの要件を満たす。

キ 接着層の厚さとマスク層の厚さについて

引用発明の「耐薬品保護層16」は「厚さ1μm」であり、「接着層17」は「厚さ3μm」である。

上記構成からみて、引用発明の「接着層17」の厚さは、「耐薬品保護層16」の厚さの3倍(3μm/1μm)である。

そうしてみると、引用発明の「転写箔5」は、本件発明5の「転写箔」の「前記接着層の厚さは前記マスク層の厚さの2乃至40倍の範囲内にある」との要件を満たす。

(2)一致点及び相違点

ア 一致点

以上の対比結果を踏まえると、本件発明5と引用発明は、以下の点で一致する。

「 転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と、前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向き合った接着層とを備えた帯状の転写箔であって、
前記転写材層は、回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層と、前記主面を部分的に被覆した金属製の反射層と、前記反射層を被覆し、前記反射層と同じ形状を有するマスク層とを含み、
前記接着層の厚さは前記マスク層の厚さの2乃至40倍の範囲内にある転写箔。」

イ 相違点

本件発明5と引用発明は、以下の点で相違する。

(相違点)

「反射層」が、本件発明5は、「前記転写箔の長さ方向に延びた帯状の形状を有し、前記長さ方向に平行な前記転写箔の一対の縁から離間しており、前記転写箔の長さ方向に延びた前記反射層の縁は凹部を含み、前記転写箔の前記一対の縁の各々から前記反射層までの最短距離は0.1乃至2.0mmの範囲内にあ」るのに対して、引用発明の「反射層15」は、そのように特定されていない点。

(3)判断

ア 新規性について

上記(2)で示したとおり、本件発明5は、引用発明と上記相違点で相違するものであるから、引用文献2に記載された発明であるということができない。

イ 進歩性について

上記相違点について検討する。

引用文献2の図3は、図4の転写箔5のB-B断面の図であり、図4のB-B断面以外の転写箔5の断面は明らかでない。この点について、引用文献2の【0025】には、「図4の例では、耐薬品保護層16と同一形状の反射層15は、両端が円状の横長形状をしている部分と“Security”の小さな文字形状とがあり、その横長形状の内部では六角形の星型の回折光画像を観察することができ、また、“Security”の文字については同形状の回折光画像を観察することができる。一方、それ以外の反射層15が無い部分については、エンボス加工面14で発生する回折光が反射されないため、観察者は回折光画像を見ることはできない。」と記載されている。上記記載から、引用文献2の図4において、反射層15は文字形状のある部分にのみ部分的に設けられ、文字形状のない部分には反射層15がないと読み取れる。すると、反射層15は、転写箔5の長さ方向に延びた反射層15の縁は凹部を含むものとはいえない。

引用文献2の明細書及び図面の他の箇所にも、上記相違点に係る「前記転写箔の長さ方向に延びた前記反射層の縁は凹部を含み」との構成は、記載も示唆もされていない。

そうしてみると、たとえ当業者といえども、引用発明の「反射層15」を上記相違点に係る「前記転写箔の長さ方向に延びた前記反射層の縁は凹部を含み」との構成とすることは、容易になし得たということができない。

そして、原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2010-128096号公報(以下、同じく「引用文献3」という。)にも、上記相違点に係る「前記転写箔の長さ方向に延びた前記反射層の縁は凹部を含み」との構成を採用することが容易であることを窺わせる記載はない。

そうしてみると、当業者であっても、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて上記相違点に係る本件発明5の構成とすることは、容易に想到し得たということができない。

(4)引用文献1を主引用例とした場合について

原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2009-90464号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)にも、上記相違点に係る「前記転写箔の長さ方向に延びた前記反射層の縁は凹部を含み」との構成は、記載も示唆もされていない。

そうしてみると、上記(3)で示したのと同じ理由により、本件発明5は、引用文献1に記載された発明であるということができない。また、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて上記相違点に係る本件発明5の構成とすることは、容易に想到し得たということができない。

(5)小括

したがって、本件発明5は、引用文献1及び2に記載されたいずれかの発明であるということができない。また、本件発明5は、当業者であっても、引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

2 本件発明1について

本件発明1は、本件発明5に対応する製造方法の発明であり、本件発明5の「前記転写箔の長さ方向に延びた前記反射層の縁は凹部を含み」との構成を具備するものであるから、本件発明1は、本件発明5と同じ理由により、引用文献1及び2に記載されたいずれかの発明であるということができない。また、本件発明1は、当業者であっても、引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

3 本件発明2~4について

本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て具備するものであるから、本件発明2~4も、本件発明1と同じ理由により、引用文献1及び2に記載されたいずれかの発明であるということができない。また、本件発明2~4は、当業者であっても、引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

4 本件発明6~8について

本件発明6~8は、本件発明5の構成を全て具備するものであるから、本件発明5と同じ理由により、引用文献1及び2に記載されたいずれかの発明であるということができない。また、本件発明6~8は、当業者であっても、引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

第6 原査定について

上記第5で述べたように、本件の請求項1~8に係る発明は、拒絶査定において引用された引用文献1~2に記載されたいずれかの発明であるということができない。また、本件の請求項1~8に係る発明は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1~3に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたということができない。

したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-011949

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    共通の審決分類: 113・G02B、121・G02B
  • 2025-004931拒絶査定不服審判 / 2026-06-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)発光部材及びその製造方法、光学部材、発光装置
    共通の審決分類: 113・G02B、121・G02B
  • 2025-006538拒絶査定不服審判 / 2026-06-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)ポリビニルアルコール系フィルム、偏光膜および偏光板、ならびにポリビニルアルコール…
    共通の審決分類: 113・G02B、121・G02B

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