2021-010751
情報取得装置及びその方法
- 審判番号
- 2021-010751
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-081343外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年08月11日
- 審決日
- 2022年04月22日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G06K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成29年4月17日の出願であって,令和2年11月12日付けで拒絶の理由が通知され,これに対して令和3年1月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,同年4月22日付けで拒絶査定がなされた。これに対して,令和3年8月11日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年4月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-6に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2010-050631号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって請求項1及び6の「読取面」を,「傾斜した読取面」とする補正は,「読取面」の形状を減縮するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,当該補正事項は,当初明細書の段落【0013】に記載されているから,当該補正は新規事項を追加するものではない。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-6に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は,令和3年8月11日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】傾斜した読取面と,加速度センサを有する情報提供装置から,前記加速度センサによって検出された加速度を示す加速度情報を取得する加速度情報取得部と,前記加速度情報取得部が取得した第1の加速度情報に基づいて,前記情報提供装置の傾きを示す傾き情報を取得するタイミングを決定するタイミング決定部と,前記情報提供装置から,前記タイミング決定部が決定した第1のタイミングで第1の傾き情報を取得する傾き情報取得部と,前記第1の傾き情報及び前記第1のタイミングで前記加速度情報取得部が取得した第2の加速度情報に基づいて,前記読取面に対する前記情報提供装置の移動方向を推定する移動方向推定部と,前記移動方向に関連付けられた意思情報を取得する意思情報取得部と,前記意思情報が取得されたことを示す意思確認信号を出力する意思確認信号出力部と,を有する,情報取得装置。」
なお,本願発明2-5は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明6は,実質的に,本願発明1の発明のカテゴリを変更しただけの発明である。
第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-050631号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同じ。)。
ア 「【0031】図2は,本発明の一実施の形態である非接触通信ICカードの構成例を示している。・・・(略)・・・【0032】この非接触通信ICカード10は,主に,アンテナ11,アナログ処理部20,ロジック部30,記憶部50,およびCPU60から構成される。【0033】アンテナ11は,リーダライタ(以下,R/Wと称する)70(図4)との間で電磁波を用いたデータ通信を行う。・・・(略)・・・【0043】レジスタ31は,加速度センサ25からの情報(非接触通信ICカード10の移動方向または静止を示す情報)を保持する。レジスタ31に保持されている情報を参照することにより,例えば,非接触通信ICカード10がR/W70に近づけられたときの面が,表面であるのか,裏面であるのかを判定することができる。」
イ 「【図2】[図:0001383933000001.jpg]」
ウ 「【0071】ステップS31において,CPU60は,ROM51に記憶されているOSをRAM52にロードして起動する。起動が完了したOSは,ステップS32において,R/W70から送信されるコマンドを受信するまで待機する。そして,R/W70から送信されるコマンドを受信した場合,処理はステップS33に進められる。【0072】ステップS33において,OSは,レジスタ31に保持されている情報を取得する。ステップS34において,OSは,ステップS33で取得した情報に基づき,非接触通信ICカード10の移動方向が方向D1であるのか,方向D2であるのか,あるいは,方向D1およびD2の何方でもないのかを判定する。続きを表示(全11行)【0073】ステップS34において,非接触通信ICカード10の移動方向が方向D1であると判定された場合(非接触通信ICカード10の表面をR/W70に向けて近づけた場合),処理はステップS35に進められる。ステップS35において,OSは,受信したコマンドに対応する所定の第1のコマンド処理を行い,第1のコマンド処理の結果を含むレスポンスを生成する。この後,処理はステップS38に進められる。【0074】反対に,ステップS34において,非接触通信ICカード10の移動方向が方向D2であると判定された場合(非接触通信ICカード10の裏面をR/W70に向けて近づけた場合),処理はステップS36に進められる。ステップS36において,OSは,受信したコマンドに対応する所定の第2のコマンド処理を行い,第2のコマンド処理の結果を含むレスポンスを生成する。この後,処理はステップS38に進められる。・・・(略)・・・【0077】ステップS39において,OSは,生成したレスポンスを符号化,変調させ,アンテナ11から送信させる。この後,処理は,接触通信ICカード10が通信エリア71から出て駆動電力の供給が止まるまで,ステップS32乃至S39が繰り返される。」
(2)引用発明の認定
ア 上記記載事項(1)アの段落【0032】の「この非接触通信ICカード10は,主に,アンテナ11,アナログ処理部20,ロジック部30,記憶部50,およびCPU60から構成される。」との記載,段落【0033】の「アンテナ11は,リーダライタ(以下,「R/W」と称する。)70(図4)との間で電磁波を用いたデータ通信を行う。」との記載,及び上記記載事項(1)イの図2から,引用文献1記載の「R/W70」は,非接触通信ICカード10との間でデータ通信を行うものと認められ,このことは,「R/W70」は,当該非接触通信ICカード10からデータを読み取っているといえる。また,当該読み取りを,「R/W70」が有するいずれかの面を介して行うことは明らかである。
よって,引用文献1には,“読取面を有する,R/W70”が記載されていると認められる。
イ 上記記載事項(1)アの段落【0043】の「レジスタ31は,加速度センサ25からの情報(非接触通信ICカード10の移動方向または静止を示す情報)を保持する。」との記載,上記記載事項(1)イの図2,及び上記記載事項(1)ウの下線部分の各記載から,非接触通信ICカード10のRAM52にロードして起動されたOSは,非接触通信ICカード10の加速度センサ25からの情報に基づき,非接触通信ICカード10の移動方向を判定し,当該移動方向が方向D1と判定された場合,受信したコマンドに対応する所定の第1のコマンド処理を行い,第1のコマンド処理の結果を含むレスポンスを生成して送信し,当該移動方向が方向D2と判定された場合,受信したコマンドに対応する所定の第2のコマンド処理を行い,第2のコマンド処理の結果を含むレスポンスを生成して送信するものである。
ここで,上記記載事項(1)ウの段落【0071】の「起動が完了したOSは,ステップS32において,R/W70から送信されるコマンドを受信するまで待機する。そして,R/W70から送信されるコマンドを受信した場合,処理はステップS33に進められる。」との記載から,上記「レスポンス」は,R/W70から送信されるコマンドに対するものであると認められるから,送信された上記「レスポンス」を受信するのは,R/W70であると認められる。そして,R/W70において,当該「レスポンス」を受信する手段を有することは明らかである。
以上から,引用文献1には,“非接触通信ICカード10のRAM52にロードして起動されたOSによって,非接触通信ICカード10の加速度センサ25からの情報に基づき,非接触通信ICカード10の移動方向が判定され,当該移動方向が方向D1と判定された場合,受信されたコマンドに対応する所定の第1のコマンド処理が行なわれて生成された第1のコマンド処理の結果を含むレスポンスを受信し,当該移動方向が方向D2と判定された場合,受信されたコマンドに対応する所定の第2のコマンド処理が行なわれて生成された第2のコマンド処理の結果を含むレスポンスを受信する手段を有する,R/W70”,が記載されていると認められる。
ウ 上記ア及びイによれば,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「読取面と,非接触通信ICカード10のRAM52にロードして起動されたOSによって,非接触通信ICカード10の加速度センサ25からの情報に基づき,非接触通信ICカード10の移動方向が判定され,当該移動方向が方向D1と判定された場合,受信されたコマンドに対応する所定の第1のコマンド処理が行なわれて生成された第1のコマンド処理の結果を含むレスポンスを受信し,当該移動方向が方向D2と判定された場合,受信されたコマンドに対応する所定の第2のコマンド処理が行なわれて生成された第2のコマンド処理の結果を含むレスポンスを受信する手段と,を有するR/W70。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明の「読取面」は,本願発明1の「読取面」に相当する。
イ 引用発明の「非接触通信ICカード10」は,本願発明1の「情報提供装置」に相当する。
ウ 引用発明の「レスポンス」は,非接触通信ICカード10の移動方向に関連付けられた情報といえ,また,当該移動方向は,非接触通信ICカード10を操作する者の意思が表れているといえる。
そうすると,上記認定イを踏まえれば,下記の点(相違点6)で相違するものの,引用発明の「レスポンスを受信する手段」と,本願発明1の「意思情報取得部」とは,“情報提供装置の移動方向に関連付けられた意思情報を取得する”点で一致する。
エ 引用発明の「R/W70」は,「レスポンス」という情報を受信,すなわち取得する装置であるといえるから,本願発明1の「情報取得装置」に相当する。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「読取面と,情報提供装置の移動方向に関連付けられた意思情報を取得する意思情報取得部と,を有する,情報取得装置。」
(相違点1)
本願発明1の「読取面」は,「傾斜し」ているのに対して,引用発明の「読取面」は傾斜しているか不明である点。
(相違点2)
本願発明1の「情報取得装置」は,「加速度センサを有する情報提供装置から,前記加速度センサによって検出された加速度を示す加速度情報を取得する加速度情報取得部」を有するのに対して,引用発明の「R/W70」は,そのような手段を有しない点。
(相違点3)
本願発明1の「情報取得装置」は,「前記加速度情報取得部が取得した第1の加速度情報に基づいて,前記情報提供装置の傾きを示す傾き情報を取得するタイミングを決定するタイミング決定部」を有するのに対して,引用発明の「R/W70」は,そのような手段を有しない点。
(相違点4)
本願発明1の「情報取得装置」は,「前記情報提供装置から,前記タイミング決定部が決定した第1のタイミングで第1の傾き情報を取得する傾き情報取得部」を有するのに対して,引用発明の「R/W70」は,そのような手段を有しない点。
(相違点5)
本願発明1の「情報取得装置」は,「前記第1の傾き情報及び前記第1のタイミングで前記加速度情報取得部が取得した第2の加速度情報に基づいて,前記読取面に対する前記情報提供装置の移動方向を推定する移動方向推定部」を有するのに対して,引用発明の「R/W70」は,そのような手段を有しない点。
(相違点6)
本願発明1の「意思情報取得部」が取得する「意思情報」は,「前記移動方向」,すなわち,「移動方向推定部」によって「前記第1の傾き情報及び前記第1のタイミングで前記加速度情報取得部が取得した第2の加速度情報に基づいて」推定された「前記読取面に対する前記情報提供装置の移動方向」に関連付けられたものであるのに対して,引用発明の「レスポンスを受信する手段」が受信する「レスポンス」は,「加速度センサ25」からの情報に基づいて判定された,非接触通信ICカード10の移動方向に関連付けられたものである点。
(相違点7)
本願発明1の「情報取得装置」は,「前記意思情報が取得されたことを示す意思確認信号を出力する意思確認信号出力部」を有するのに対して,引用発明の「R/W70」は,そのような手段を有しない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に上記相違点5及び6について検討する。
上記第5で認定したとおり,引用発明においては,加速度センサ25からの情報に基づく移動方向の判定は,R/W70(上記認定(1)エのとおり,本願発明1の「情報取得装置」に相当する。)ではなく,非接触通信ICカード10(上記認定(1)イのとおり,本願発明1の「情報提供装置」に相当する。)で行われるものである。さらに,引用発明においては,当該移動方向の判定を,加速度情報に加えて傾き情報に基づいて行うものでもない。
したがって,当業者といえども,引用発明において,上記相違点5及び6に係る本願発明1の構成を得ることは容易とまではいえず,また,上記相違点5及び6に係る構成は,本願の出願前に周知な構成ともいえないから,本願発明1は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。
2 本願発明2-6について
本願発明2-5は,本願発明1を減縮した発明であり,また,本願発明6は,実質的に,本願発明1の発明のカテゴリを変更しただけの発明であるから,上記1と同様に,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。
第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-6は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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