特許拒絶査定不服審判
2021-010131
一体型オリフィス板アセンブリ
- 審判番号
- 2021-010131
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-030377外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年07月29日
- 審決日
- 2022年12月19日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ディーテリヒ・スタンダード・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人 津国
- 分類
- P18 .121-WZ (G01F) / P18 .537-WZ (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 30377「一体型オリフィス板アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019- 95459〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、平成27年10月5日を国際出願日とする外国語特許出願である特願2017-518831号(パリ条約による優先権主張:平成26年10月8日 米国、平成27年9月25日 米国)の一部を平成31年2月22日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
平成31年 2月22日 :翻訳文の提出
同年 3月18日 :上申書、手続補正書の提出
令和 元年 9月10日付け:拒絶理由通知書
同年12月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 5月21日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 9月 8日 :意見書、誤訳訂正書の提出
令和 3年 3月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月30日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 3月17日付け:拒絶理由通知書
同年 8月22日 :意見書、手続補正書の提出
2 本願発明について
本願の請求項1~8に係る発明は、令和4年8月22日に提出された手続補正書により補正された請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。以下、次の請求項1に記載された事項により特定される発明を「本願発明」という。
「【請求項1】
プロセス流体が流れる第1プロセス配管の第1フランジと第2プロセス配管の第2フランジとの間に挿入され、上流側のプロセス流体と下流側のプロセス流体との間に差圧を発生させる少なくとも一つの制限的な開口部を含むオリフィス板を支持するために、前記オリフィス板と同心的に形成された円周支持リングであって、
接合する前記各フランジの外径と一致する外径を有し、
前記開口部が複数の開口部であり、前記複数の開口部は、前記オリフィス板の中心から半径方向に各々間隔を取って貫通させて形成され、
前記オリフィス板が、前記複数の開口部を有している平らな円形区画を含む調整オリフィス板であり、
前記円周支持リングが、前記オリフィス板を含んで単一ピースとして機械加工され、
前記第1フランジと前記第2フランジの各ボルト穴と整列して取り付け用ボルトを受けるように形成された複数の取り付け穴、
前記オリフィス板の上流側の前記プロセス流体を離れた位置に取り付けられた差圧センサに流体的に連結するため、前記円周支持リングを前記プロセス流体の上流側の流れ内まで貫いて延在する第1掘削孔、及び、
前記オリフィス板の下流側の前記プロセス流体を離れた位置に取り付けられた差圧センサに流体的に連結するため、前記円周支持リングを前記プロセス流体の下流側の流れ内まで貫いて延在する第2掘削孔、
を少なくとも含み、
前記第1掘削孔、前記第2掘削孔は、それぞれ第1及び第2導圧管で前記外部の差圧センサと連結され、
前記第1及び第2導圧管を前記円周支持リングへ各々連結するための圧力タップを含み、
前記第1掘削孔、前記第2掘削孔、及び前記各圧力タップの前記オリフィス板の中心から半径方向の向きは、前記円周支持リングの厚さを減らすように、互いにオフセットされている、
前記円周支持リング。」
3 当審が通知した拒絶の理由
当審が令和4年3月17日付けで通知した拒絶の理由のうち、令和3年7月29日付け手続補正書の請求項1~10に係る発明(以下「本願補正前発明」という。)についての理由1、2の概要は、次のとおりである。
(1) 理由1(明確性)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1において、
「前記開口部が複数の開口部であり、前記複数の開口部は、前記プロセス流体が前記開口部を通過するときに前記プロセス流体の流れの乱れを低減しつつ制限するように、前記オリフィス板の放射の方向に間隔を取って貫通させて形成され」
と記載されているが、「前記プロセス流体が前記開口部を通過するときに前記プロセス流体の流れの乱れを低減しつつ制限するように」「形成され」た「複数の開口部」とは、どのような状態を基準として「前記プロセス流体の流れの乱れを低減しつつ制限する」機能を有するものかが不明である。また、どのような形状、サイズ、配置の開口部によりそのような機能をなすのか、その構成が不明である。
また、「オリフィス板の放射の方向」とはどのように定義される方向であるのかも不明である。
(2) 理由2(進歩性)
本願補正前発明は、下記の引用文献13に記載されている引用発明及び下記の引用文献1、8、11、14、15に記載されているような周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1 :実願平5-33515号(実開平7-5022号)のCD-ROM(周知技術を示す文献)
引用文献8 :実願昭57-85357号(実開昭58-187690号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
引用文献11:米国特許出願公開第2008/0011821号明細書(周知技術を示す文献)
引用文献13:特表2005-522686号公報
引用文献14:実願昭46-72322号(実開昭48-29853号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
引用文献15:特表2013-542429号公報(周知技術を示す文献)
4 当審の判断
(1) 理由1(明確性)について
本願の請求項1における「前記開口部が複数の開口部であり、前記複数の開口部は、前記プロセス流体が前記開口部を通過するときに前記プロセス流体の流れの乱れを低減しつつ制限するように、前記オリフィス板の放射の方向に間隔を取って貫通させて形成され」なる記載は、令和4年8月22日に提出された手続補正書により「前記開口部が複数の開口部であり、前記複数の開口部は、前記オリフィス板の中心から半径方向に各々間隔を取って貫通させて形成され」と補正された。
しかしながら、前記補正後の「前記複数の開口部は、前記オリフィス板の中心から半径方向に各々間隔を取って貫通させて形成され」なる記載の意味は不明瞭であり、「前記複数の開口部」の構成を特定することができない。
通常「半径方向」とは、円の中心を始点とする線分に沿った方向を指すものであるから、「前記オリフィス板の中心から半径方向に各々間隔を取って貫通させて形成され[た]」「前記複数の開口部」を文言どおりに一般的に解釈すれば、円の中心と円周上の一点を結ぶ共通の線分上に複数の貫通開口部が設けられたものとなる。しかしながら、本願の発明の詳細な説明及び図面に記載されているものは、図1に示されているような、共通の円の円周上に間隔を取って形成された四つの開口部104Aであって、前記解釈とは明らかに異なる。そして、複数の開口部について、それ以外の配置構成は記載も示唆もされていないことを考慮すれば、前記補正後の記載の意味は、前記文言どおりの解釈とは異なるものであると解さざるを得ないところ、それでは、前記補正後の記載がどのような構成を含み、また含まないのかを特定することができない。
そうすると、前記補正後の記載がどのような構成を特定するのかが不明であるといわざるを得ず、請求項1の記載は不明瞭であって、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
(2) 理由2(進歩性)について
当審は、以下に詳述するとおり、本願発明は当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した。
ア 引用文献13の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献13の記載事項
当審が通知した拒絶の理由において主たる引用例として引用した引用文献13(特表2005-522686号公報)には、以下の記載がある。下線は、合議体が付与したものである。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、流体の速度プロフィールが導管の長手方向軸線に対して非対称となる箇所たる、流体輸送導管内のある点にて、差圧法によって、流体の体積流量を測定する自動平均化オリフィス板型式のプライマリーフロー要素を有するプロセス流量装置に関する。」
「【0009】
しかし、速度プロフィールが歪んだならば、オリフィスを通ってより低速度の流体が流れ、下流の静圧はその低速度流体を反映するものとなろう。このようにして、絞り板を横切って発生された差圧は、流体の流量を真に示すことにはならない。
【0010】
本発明によれば、色々に配置された複数のオリフィスを有する絞り板すなわち流体妨害装置が流体輸送導管内に配置され、板の上流側及び下流側にて静圧の測定が行われる。複数のオリフィスの各々は、導管内の全流体流量の一部分を伝導する。ベルヌーイの定理によれば、オリフィスの各々を通る流体の速度は、増大し、別個のオリフィスの各々に起因する絞り板の下流側に加わる流体静圧は、流体内にて平均化され、平均的な下流の静圧を提供する。いかなる速度プロフィールが多数のオリフィス板に提供されたかに拘わらず、この平均的な下流の静圧が上流の静圧と比較されて平均的な差圧を提供し、その結果、管内の流体の流量が正確に測定されることになる。
【0011】
多数のオリフィス板を環状リングの中央開口部内に一体に組み込み、上流及び下流間の静圧測定ポートをリング内に配置すると、プライマリーフロー要素を更に簡略なものにする。検出された差圧をステムに取り付けられたその他の流れ処理アクセサリに伝導することのできる突出したステムが環状リングに設けられるとき、この簡略さは更に向上する。
【実施の形態】
【0012】
本発明の簡略化した型式のものは、図1及び図1Aに示されている。速度プロフィール7が歪む箇所であるエルボ9のすぐ下にて流体輸送導管8の端部に固定された2つの対向する取り付けフランジ4、6の間に平均化オリフィスプライマリーフロー要素2が配置される。取り付けフランジの各々は、半径方向に伸びる圧力検出ポート10、12を有しており、これらの圧力検出ポート10、12は、管内を流れる流体と連通し且つ、それぞれ導管14、16を通じて弁マニホルド18及び圧力変換器19内に接続される。ポート10、12の間の検出された差圧を表わす電気信号は、トランスミッタ20により処理装置(図示せず)に伝送される。」
「【0015】
図1Aから、絞り板2の対の上側開口22に接近する流体の速度は、対の下側開口22に接近する流体の速度よりも遅いことが分かる。これらの流体速度の当初の差は、板2の上流側にて、圧力ポート10により検出された静圧に影響を与えるのみならず、それぞれの対の開口を通って流れる流体の速度にも強く影響を与え、従って、下流側ポート12により検出される流体の静圧に影響を与えることになろう。開口の各々又は各対の開口を通って流れる流体の速度は相違するであろうから、開口の各々を通る流体の速度の関数である、板2の下流側に加わる静圧は流体内部で平均化され、下流側の圧力ポート12がその平均化された静圧を検出する。例えば、図2及び図5に示した4つの開口22のような、複数の開口が板2の中心の周りに配置されたとき、流体が旋回するときであるように、流体プロフィールが管の2つの軸線の周りで非対称であるときでも、静圧は平均化されよう。
【0016】
4つの開口を有するプライマリーフロー要素板30の変更形態が流体輸送管40の2つの部分の端部に取り付けられたフランジ34、36の間に挿入可能である環状リングすなわちウェハ32と一体に形成された状態で図5に示されている。上流側及び下流側の圧力検出ポート35、37は、図6に示すように、フロー要素板30の各側部に配置されている。圧力検出ポート35、37は、ステム45内の貫通導管39、41を介してマニホルド18の導管46、47に接続している。その流量を測定すべき流体を運ぶ管部分内に挿入された全流量計組立体を示す、図5の実施の形態は、図6及び図7にも図示されている。」
「【図1】
[図:0001397465000001.jpg]
」
「【図5】
[図:0001397465000002.jpg]
」
「【図6】
[図:0001397465000003.jpg]
」
(イ) 図5から読み取れる事項の認定
前記図5より「環状リングであるウェハ32が、プライマリーフロー要素板30と同心的に形成されていること」及び「プライマリーフロー要素板30が、複数の開口部を有している平らな円形区画を含むオリフィス板であること」が読み取れる。
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した記載事項及び上記(イ)において認定した図5から読み取れる事項を総合すると、引用文献13には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「差圧法によって、流体の体積流量を測定する自動平均化オリフィス板型式のプライマリーフロー要素を有するプロセス流量装置(【0001】)の、流体輸送管40の2つの部分の端部に取り付けられたフランジ34、36の間に挿入可能であり、4つの開口22を有するプライマリーフロー要素板30と同心的に一体に形成された環状リング(【0016】、図5から読み取れる事項)であって、
4つの開口22が板2の中心の周りに配置され(【0015】)、
前記プライマリーフロー要素板30が、複数の開口部を有している平らな円形区画を含むオリフィス板であり(図5から読み取れる事項)、
上流側及び下流側の圧力検出ポート35、37は、フロー要素板30の各側部に配置され、
圧力検出ポート35、37は、ステム45内の貫通導管39、41を介してマニホルド18の導管46、47に接続し(【0016】)、圧力変換器19内に接続されて、差圧を表わす電気信号が、トランスミッタ20により処理装置に伝送される(【0012】)、
環状リング。」
イ 引用文献1記載の技術事項並びに周知技術1及び周知技術2の認定
(ア) 引用文献1記載の技術事項及び周知技術1の認定
a 引用文献1の記載事項
当審において通知した拒絶の理由において周知例として引用した引用文献1(実願平5-33515号(実開平7-5022号)のCD-ROM)には、以下の記載がある。下線は、合議体が付したものである。
「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、流量検出に用いられる差圧式流量計のなかのオリフィス流量計の検出端に関するものである。」
「【0020】
以下に図1を用いて本考案を説明するが、本考案はこれに限定されるものではない。
【0021】
導管1には、オリフィスプレート2と、該プレートの前後の圧力を導管外部に取り出すための前圧伝達穴3及び後圧伝達穴4を一体化した、オリフィス流量検出端5が挿入されている。
【0022】
オリフィスプレート2には、導管1と同心円で、該導管1の内径より小さい径(以下、開口径と記す。)の穴があけてあり、ここで流体の流れは一旦狭められ、通過後、再び元の導管1内径に沿った流れに復帰するが、この流れの挙動により、流速に応じたオリフィスプレート2での前後の差圧が発生する。
【0023】
圧伝達穴3,4は、各々オリフィスプレート2に最も近接した位置に、該オリフィスプレート2に並行のスリット状で、しかも、この形状を維持しつつ圧伝達管6に接続されている。
【0024】
スリットの長辺は、圧伝達管6に接合した位置で、圧伝達管6の内径と同じ長さ以上の長さとし、短辺は導管1内を流れる流体の流線の乱れ,渦等に起因する不必要な圧変動の影響を起こさない程度の幅にする。
【0025】
該スリットの長辺は、流体の流れる導管中心部に向かって、次第に拡大した形状で、その最大の長辺の長さが導管1の内壁で最大となっている。
【0026】
さらに、この2つのスリット状の圧伝達穴3,4は、この長辺の中心線が、導管内を流れ方向から見て、90°の角度でずらすことにより、圧伝達管6がお互いに接しないようにしてある。」
「【0029】
実施例
図1に示すようなオリフィス流量検出端を用いた。すなわち、オリフィスプレート2、圧伝達穴3,4は、単一の金属塊から研削により製作した。また、スリットの長辺は60.0mm幅とし、スリットの短辺は3mm幅とし、開口径の大きさは65.67mmとした。」
「【図1】
[図:0001397465000004.jpg]
」
また、図1から、「圧伝達管6」がオリフィスプレートの周辺部に設けられた穴部に挿入連結されていることが読み取れる。
b 引用文献1記載の技術事項の認定
前記aにおいて摘記した記載事項(特に段落【0024】、【0026】、図1から読み取れる事項)から、引用文献1には次の技術事項が記載されているものと認められる。(以下「引用文献1記載の技術事項」という。)
[引用文献1記載の技術事項]
「オリフィス流量計の圧力取り出し構造であって、二つの圧伝達管をオリフィスプレートの周辺部に設けられた二つの穴部にそれぞれ挿入連結して圧伝達穴に接合し、圧伝達管がお互いに接しないようにするために、圧伝達穴を90°の角度でずらしたオリフィス流量計の圧力取り出し構造」
c 周知技術1の認定
前記aにおいて摘記した記載事項(特に段落【0029】)から、次の技術事項は当業者にとって周知なものであったと認められる(以下「周知技術1」という。)
[周知技術1]
「オリフィス流量計のオリフィスプレートや圧伝達穴を、研削のような機械加工によって作成すること」
(イ) 周知技術2の認定
a 引用文献8の記載事項
当審において通知した拒絶の理由において周知例として引用した引用文献8(実願昭57-85357号(実開昭58-187690号)のマイクロフィルム)には、以下の記載がある。下線は、合議体が付与したものである。
「本考案は配管内の流体の流量を制御するために使用される流量調整装置に関する。
管路中を流れる油、蒸気、水等種々の流体の流量を制御するための流量調整装置としてオリフイスが使用されている。第1図は従来のオリフイスを示し、第2図は配管フランジへの取付状態を示したものである。これらの図において、(1)はオリフイスであり、中央に開口(2)を有し、周辺に4個の取付孔(3)を有している。このオリフイス(1)は、配管フランジ(4)(5)の間に位置し、取付孔(3)に挿通された締付ボルト(6)によつて固定される。なお(7)はガスケツトであり、オリフイス(1)の周縁両面に介在させてある。」(明細書1ページ19行目~2ページ11行目)
「
[図:0001397465000005.jpg]
」
「
[図:0001397465000006.jpg]
」
また、前記第1図及び第2図から、部分的な突出部を除き、オリフイスの外径が配管フランジの外径と一致していることが読み取れる。
b 周知技術2の認定
前記aにおいて摘記した記載事項から、次の技術事項は当業者にとって周知なものであったと認められる(以下「周知技術2」という。)
[周知技術2]
「取り付け対象の配管フランジと一致した外径を有し、周辺部分にフランジ固定ボルトを挿通するための複数の取付け穴を設けたオリフィス構造」
ウ 対比・判断について
(ア) 対比
a 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
(a) 引用発明において「プロセス流量装置」の「環状リング」が「流体輸送管40の2つの部分の端部に取り付けられたフランジ34、36の間に挿入[される]」ことは、本願発明において「円周支持リング」が「プロセス流体が流れる第1プロセス配管の第1フランジと第2プロセス配管の第2フランジとの間に挿入され[る]」ことに相当する。
また、引用発明の「4つの開口22を有するプライマリーフロー要素板30と同心的に一体に形成された環状リング」は、本願発明の「上流側のプロセス流体と下流側のプロセス流体との間に差圧を発生させる少なくとも一つの制限的な開口部を含むオリフィス板を支持するために、前記オリフィス板と同心的に形成された円周支持リング」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「プロセス流体が流れる第1プロセス配管の第1フランジと第2プロセス配管の第2フランジとの間に挿入され、上流側のプロセス流体と下流側のプロセス流体との間に差圧を発生させる少なくとも一つの制限的な開口部を含むオリフィス板を支持するために、前記オリフィス板と同心的に形成された円周支持リング」の発明である点で一致する。
(b) 引用発明は「4つの開口22が板の中心の周りに配置され[る]」から、本願発明と引用発明は、「前記開口部が複数の開口部であ[る]」点で一致する。
(c) 引用発明は、「プライマリーフロー要素板30」と「環状リング」が「同心的に一体に形成され[て]」いるから、本願発明と引用発明は、「前記円周支持リングが、前記オリフィス板を含んで単一ピースとして加工され[て]」いる点で一致する。
(d) 引用発明においては、「前記プライマリーフロー要素板30が、複数の開口部を有している平らな円形区画を含むオリフィス板であ[る]」から、本願発明と引用発明は、「前記オリフィス板が、前記複数の開口部を有している平らな円形区画を含む調整オリフィス板であ[る]」点で一致する。
(e) 引用発明において「上流側及び下流側の圧力検出ポート35、37は、フロー要素板30の各側部に配置され、圧力検出ポート35、37は、ステム45内の貫通導管39、41を介してマニホルド18の導管46、47に接続し、圧力変換器19内に接続されて、差圧を表わす電気信号は、トランスミッタ20により処理装置に伝送される」のであるから、「上流側及び下流側の圧力検出ポート35、37」が上流側及び下流側の流れまで貫いて延在し、差圧を表わす電気信号をトランスミッタ20に出力する「圧力変換器19」(本願発明の「差圧センサ」に相当。)まで、貫通導管39、41及びマニホルド18の導管46、47を介して流体的に連結されていることは明らかといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記オリフィス板の上流側の前記プロセス流体を離れた位置に取り付けられた差圧センサに流体的に連結するため、前記円周支持リングを前記プロセス流体の上流側の流れ内まで貫いて延在する第1孔、及び、前記オリフィス板の下流側の前記プロセス流体を離れた位置に取り付けられた差圧センサに流体的に連結するため、前記円周支持リングを前記プロセス流体の下流側の流れ内まで貫いて延在する第2孔、を少なくとも含[む]」点で一致する。
b 一致点及び相違点の認定
前記aの対比分析の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次の一致点で一致し、次の相違点において相違する。
[一致点]
「プロセス流体が流れる第1プロセス配管の第1フランジと第2プロセス配管の第2フランジとの間に挿入され、上流側のプロセス流体と下流側のプロセス流体との間に差圧を発生させる少なくとも一つの制限的な開口部を含むオリフィス板を支持するために、前記オリフィス板と同心的に形成された円周支持リングであって、
前記開口部が複数の開口部であり、
前記オリフィス板が、前記複数の開口部を有している平らな円形区画を含む調整オリフィス板であり、
前記円周支持リングが、前記オリフィス板を含んで単一ピースとして加工され、
前記オリフィス板の上流側の前記プロセス流体を離れた位置に取り付けられた差圧センサに流体的に連結するため、前記円周支持リングを前記プロセス流体の上流側の流れ内まで貫いて延在する第1孔、及び、
前記オリフィス板の下流側の前記プロセス流体を離れた位置に取り付けられた差圧センサに流体的に連結するため、前記円周支持リングを前記プロセス流体の下流側の流れ内まで貫いて延在する第2孔、
を少なくとも含む、
前記円周支持リング」である点。
[相違点]
(a) 相違点1
本願発明においては、プロセス流体を差圧センサに連結する構成が、「第1及び第2導圧管」、「前記第1及び第2導圧管を前記円周支持リングへ各々連結するための圧力タップ」、及び「円周支持リング」を貫いて掘削により形成された2つの「掘削孔」を含み、また「前記第1掘削孔、前記第2掘削孔、及び前記各圧力タップの前記オリフィス板の中心から半径方向の向きは、前記円周支持リングの厚さを減らすように、互いにオフセットされている」ように配置されているのに対し、
引用発明は「第1及び第2導圧管」及び「圧力タップ」を有しておらず、また「上流側及び下流側の圧力検出ポート35、37」が掘削により形成されたものであるかは不明であり、その配置も「互いにオフセット」されてはいない点。
(b) 相違点2
本願発明においては「円周支持リング」が「接合する前記各フランジの外径と一致する外径を有[し]」、また「前記第1フランジと前記第2フランジの各ボルト穴と整列して取り付け用ボルトを受けるように形成された複数の取り付け穴」を含むのに対して、
引用発明の「環状リング」はフランジより小径なものであって、取り付け穴も備えていない点。
(c) 相違点3
本願発明においては「前記複数の開口部は、前記オリフィス板の中心から半径方向に各々間隔を取って貫通させて形成され[る]」のに対し、引用発明の「4つの開口」の配置がこれに相当するかが一応不明である点。
(d) 相違点4
本願発明においては「円周支持リング」が「機械加工され[る]」のに対し、引用発明の「環状リング」がどのように加工されるか不明である点。
(イ) 判断
a 相違点1について
前記イ(ア)bにおいて引用文献1記載の技術事項として認定したように「オリフィス流量計の圧力取り出し構造であって、二つの圧伝達管をオリフィスプレートの周辺部に設けられた二つの穴部にそれぞれ挿入連結して圧伝達穴に接合し、圧伝達管がお互いに接しないようにするために、圧伝達穴を90°の角度でずらしたオリフィス流量計の圧力取り出し構造」(前記「二つの圧伝達管圧」が本願発明の「第1及び第2導圧管」に相当し、伝達管が挿入連結される前記「穴部」が本願発明の「圧力タップ」に相当する。)は、引用文献1に記載されており、これを引用発明に採用する程度のことは、当業者が容易になし得たものである。
またその際、前記イ(ア)cにおいて周知技術1として認定したように「オリフィス流量計のオリフィスプレートや圧伝達穴を、研削のような機械加工によって作成すること」は周知技術であるから、前記圧伝達穴を掘削により形成するか否かは設計事項の範囲内のものにすぎない。
なお、圧伝達穴(及び圧伝達管)を90°の角度でずらすことにより、オリフィス部材の厚さを減らすことができることは自明の効果にすぎない。
したがって、相違点1は、引用文献1記載の技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
b 相違点2について
前記イ(イ)bにおいて周知技術2として認定したように「取り付け対象の配管フランジと一致した外径を有し、周辺部分にフランジ固定ボルトを挿通するための複数の取付け穴を設けたオリフィス構造」は周知技術であり、これを引用発明に採用するか否かは設計事項の範囲内のものにすぎない。
したがって、相違点2は、周知技術2に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
c 相違点3について
前記(1)において検討したように「前記複数の開口部は、前記オリフィス板の中心から半径方向に各々間隔を取って貫通させて形成され」なる記載がどのような構成を含み、また含まないのかは不明瞭であるが、少なくとも本願の発明の詳細な説明及び図面に唯一記載されている、共通の円の円周上に間隔を取って形成された4つの開口部104Aの構成が前記記載の特定する構成に含まれるものであることは明らかといえる。
そして、引用発明の「板の中心の周りに配置され[る]」「4つの開口22」は、前記「共通の円の円周上に間隔を取って形成された4つの開口部104A」と同一の構成であるから、引用発明は相違点3に係る構成を有するものであるといえる。
したがって、相違点3は実質的な相違点ではない。
d 相違点4について
前記イ(ア)cにおいて周知技術1として認定したように「オリフィス流量計のオリフィスプレートや圧伝達穴を、研削のような機械加工によって作成すること」は周知技術であるから、引用発明の「プライマリーフロー要素板30と同心的に一体に形成された環状リング」を研削(掘削)加工により作成することは、当業者にとっては設計事項にすぎず、容易に想到し得たものである。
e 総合評価
前記aからdにおいて検討したとおり、相違点1から相違点4は、いずれも格別のものでなく、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果としては、引用発明、引用文献1記載の技術事項、周知技術1及び周知技術2からは予測困難であって、かつ、格別顕著な効果を奏するものを認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1記載の技術事項、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(3) 請求人の主張について
ア 請求人の主張の内容
請求人は、令和4年8月22日に提出した意見書において、概略次のように主張している。
(ア) 理由1(明確性)について
請求項1の、
「前記開口部が複数の開口部であり、前記複数の開口部は、前記プロセス流体が前記開口部を通過するときに前記プロセス流体の流れの乱れを低減しつつ制限するように、前記オリフィス板の放射の方向に間隔を取って貫通させて形成され」との記載を、
「前記開口部が複数の開口部であり、前記複数の開口部は、前記オリフィス板の中心から半径方向に各々間隔を取って貫通させて形成され、」と補正した。
また、「オリフィス板の放射の方向」については、出願時の請求項等に記載されていた「半径の方向」という表記に戻した。
これらの補正により、拒絶理由通知書の理由1(明確性)については明確になっており、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものと思料する。
(イ) 理由2(進歩性)について
引用文献1、8、11、13、14、15の発明のいずれも、本願発明と相違する構成であり、本願発明の効果も得られないので、引用文献1、8、11、13、14、15のいずれからも当業者が本願発明を想到できたとは考えられない。
主たる引用例として用いられている引用文献13に、残りの(周知技術を示す文献)である引用文献1、8、11、14、15を適用しても、あるいは、引用文献13と残りの引用文献1、8、11、14、15を任意に組み合わせて適用しても、本願明細書に示したような、「円周支持リングの第1掘削孔、第2掘削孔、及び、第1/第2の各圧力タップについて、オリフィス板の中心から半径方向の向きは、円周支持リングの厚さを減らすように、互いにオフセットされている」という構成を示唆することにはならない。
イ 請求人の主張についての検討
前記主張について検討する。
(ア) 理由1(明確性)について
前記(1)において説示したとおり、前記補正後の「前記複数の開口部は、前記オリフィス板の中心から半径方向に各々間隔を取って貫通させて形成され」なる記載については、依然としてその意味は不明瞭であり、「前記複数の開口部」の構成を特定することができない。
したがって、請求人の前記主張を採用することはできない。
(イ) 理由2(進歩性)について
前記請求人の主張における「円周支持リングの第1掘削孔、第2掘削孔、及び、第1/第2の各圧力タップについて、オリフィス板の中心から半径方向の向きは、円周支持リングの厚さを減らすように、互いにオフセットされている」という構成は、前記(2)ウ(ア)bにおいて認定した前記相違点1に全て含まれるものである。そして、当該相違点1に係る構成が当業者によって容易に想到し得た点については、前記(2)ウ(イ)aにおいて検討したとおりである。
(ウ) 以上のとおりであるから、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
5 むすび
以上検討のとおりであるから、本願は、特許請求の範囲の記載が不明確であって、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないものであるから、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明、引用文献1記載の技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-010131