2021-008489
非接触情報媒体及びその製造方法
- 審判番号
- 2021-008489
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-126458外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年06月28日
- 審決日
- 2022年04月15日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ユニバーサルエンターテインメント
- 【請求人代理人】特許業務法人梶・須原特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G06K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第164条、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 21項目
第1 手続の経緯
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本願は,平成29年6月28日の出願であって,令和2年11月2日付けで拒絶の理由が通知され,同年12月24日に意見書とともに手続補正書が提出され,令和3年4月19日付けで拒絶査定(謄本送達日同年4月27日)がなされ,これに対して同年6月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年8月10日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,令和4年1月28日付けで当審により拒絶の理由が通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)され,同年3月9日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年4月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-5
・引用文献等 1
<引用文献等一覧>
1.特開2014-093017号公報
第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(進歩性)について
・請求項 1
・引用文献等 1-3
・請求項 2-4
・引用文献等 1-4
<引用文献等一覧>
1.特開2014-93017号公報
2.国際公開第2013/099546号
3.特開2009-147560号公報
4.特開昭58-151006号公報
第4 本願発明
本願請求項1~5に係る発明(以下,「本願発明1」~「本願発明5」という。)は,令和4年3月9日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された,次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】フレキシブルプリント基板からなり、積層状態で構成される複数の基板と、前記複数の基板のそれぞれに一体的に設けられ、予め導電パターンが形成された導電体と、前記複数の基板の何れか1つに設けられ、前記導電体と接続されるICチップと、を有し、続きを表示(全38行)前記導電パターンは、その一部が螺旋状に形成された螺旋パターンを含み、前記基板は、前記導電パターンを、異なる層の前記基板の前記導電パターンに導通させる導通孔部を有し、前記螺旋パターンは、前記複数の基板の積層方向から見て、互いに重複しない位置に配置されることを特徴とする非接触情報媒体。【請求項2】フレキシブルプリント基板からなり、積層状態で構成される複数の基板と、前記複数の基板のそれぞれに一体的に設けられ、予め導電パターンが形成された導電体と、積層方向の最上部に位置する前記基板に設けられたICチップと、を有し、前記導電パターンは、外周端から内周端にかけて螺旋状に形成した複数の螺旋パターンと、前記螺旋パターンの外周端に接続された導通連絡パターンとを含み、前記基板は、前記螺旋パターンの内周端を異なる層の前記基板に導通させる導通孔部を有し、前記螺旋パターンは、前記複数の基板の積層方向から見て、互いに重複しない位置に配置されており、前記導通連絡パターンは、前記導通孔部と前記螺旋パターンの外周端とを導通させることを特徴とする非接触情報媒体。【請求項3】フレキシブルプリント基板からなり、積層状態で構成される3層以上の複数の基板と、 前記複数の基板のそれぞれに一体的に設けられ、予め導電パターンが形成された導電体と、積層方向の最上部に位置する前記基板に設けられたICチップと、を有し、前記導電パターンは、外周端から内周端にかけて螺旋状に形成した複数の螺旋パターンと、前記螺旋パターンの外周端に接続された導通連絡パターンとを含み、前記基板は、前記螺旋パターンの内周端を異なる層の前記基板に導通させる導通孔部を有し、前記螺旋パターンは、前記複数の基板の積層方向から見て、互いに重複しない位置に配置されており、前記導通連絡パターンは、前記導通孔部と前記螺旋パターンの外周端とを導通させ、積層方向の最下部に位置する前記基板に設けられた前記螺旋パターンの内周端と、積層方向の最上部に位置する前記基板に設けられた前記導通連絡パターンとは、積層方向の最下部に位置する前記基板よりも上層にある前記基板それぞれの前記導通孔部を介して導通しており、前記複数の基板を内部に収容し、非接触情報媒体の外形をなす収容体を有することを特徴とする非接触情報媒体。【請求項4】前記収容体は、前記複数の基板を樹脂で封止することにより形成される一方、前記ICチップのメモリ領域には、カジノチップの価値データが外部のサーバとの間で送信可能に記憶されるとともに、前記収容体は、前記価値データを示すデザインが、異なる価値データを記憶した他の非接触情報媒体と識別可能に施してなることを特徴とする請求項3に記載の非接触情報媒体。【請求項5】積層状態で構成される複数の基板と、前記複数の基板のそれぞれに一体的に設けられ、予め導電パターンが形成された導電体と、積層方向の最上部に位置する前記基板に設けられたICチップと、を有し、前記導電パターンは、外周端から内周端にかけて螺旋状に形成した複数の螺旋パターンと、前記螺旋パターンの外周端に接続された導通連絡パターンとを含み、前記基板は、前記螺旋パターンの内周端を異なる層の前記基板に導通させる導通孔部を有し、前記螺旋パターンは、前記複数の基板の積層方向から見て、互いに重複しない位置に配置されており、前記導通連絡パターンは、前記導通孔部と前記螺旋パターンの外周端とを導通させる非接触情報媒体の製造方法であって、前記複数の基板が折り曲げ部を介して一連に連なり、且つ、この折り曲げ部で折り畳むことで前記積層状態を構成する際に、上下方向に互いに前記螺旋パターンが重ならないように、前記螺旋パターンを含む複数の前記導電パターンがレイアウト形成された長尺状のフレキシブルプリント基板を印刷形成する工程と、前記フレキシブルプリント基板を前記非接触情報媒体の積層状態となるように前記折り曲げ部を介して折り曲げ、前記積層状態での各層を電気的に接続する工程と、前記ICチップを実装する工程と、を有することを特徴とする非接触情報媒体の製造方法。」
第5 引用例,引用発明等
1 引用例1に記載された事項及び引用発明
(1)当審拒絶理由通知で引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2014-93017号公報(平成26年5月19日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)
A 「【0001】本発明は、通信用アンテナを内蔵する非接触ICカード及びこれらに使用するインレットに係わり、詳しくは、複数の巻き線アンテナを備えるインレットを折り畳んで断裁してもアンテナ線が破断されないインレット構造及びその製造方法に関する。…中略…【0017】本発明は、従来はカードサイズの面積内に複数の巻き線アンテナを描画していたのと比較して、概ねカードサイズの2倍もしくはそれ以上の面積を有するベース基材上にそれぞれ巻き線アンテナを描画してから、該基材を折り曲げてカードサイズに戻したもので、その際に折り目の両側に配置された第一の巻き線アンテナと第二の巻き線アンテナとをつなぐアンテナ線が、通常であれば折り目を跨いで引き回されるところ、本発明では折り目から所定の距離より内側に配設されるようにしたものである。」
B 「【0022】先ず、本発明の要点を図面を参照して説明する。図4(a)は、スパイラル径が異なる二つの巻き線アンテナ5,6が、紙もしくはプラスチックからなるベース基材1の同一面上に敷設された様子を模式的に示す上面視の図である。二つの巻き線アンテナ5,6は大径のコイル(第一の巻き線アンテナ5の一部であり単にコイルともアンテナとも記す。以下、同様。)を描画してから小径のコイル(第二の巻き線アンテナ6)を描画し、その後再び大径のコイル(第一のアンテナの一部)を描画するアンテナの敷設形態で、このような複雑なアンテナ配置は、例えば電磁結合用デュアルICカードの場合に必要とされるものである(例えば、特許3800765号参照)。【0023】巻き線アンテナは、前記第一、第二に限らず第三、第四のアンテナが目的ごとに配置される場合がある。図3に3個の巻き線アンテナ5,6A、6Bが敷設された場合を示した。その他、ベース基材1上のコイル内には、アンテナと接続されるICチップが搭載されたフィルム基板2が嵌め込まれ、外側には配線基板7あるいは抵抗、コンデンサ等の受動素子8が配置される場合がある。」
C 「【0036】本実施形態に係るインレットは、図1(a)、図3(a)に示すように少なくとも、ベース基材1とベース基材1上に描画された第一、第二、第三の巻き線アンテナ5、6A、6BとICチップ12が搭載されたフィルム基板2とを有している。インレットはこの他に、抵抗、コンデンサ、インダクタ等の受動部品あるいは配線基板部分を備えることができるが、詳細は全て省略されている。最終的にインレットは、ホットメルト樹脂を用いてオーバーコート材で表裏から被覆され、非接触ICカードあるいは通帳等の冊子となるものである。」
(2)上記記載事項A~Cの下線部より,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「通信用アンテナを内蔵する非接触ICカードに使用するインレットであって,ベース基材上にそれぞれ巻き線アンテナを描画してから,該基材を折り曲げてカードサイズに戻したものであり,スパイラル径が異なる二つの巻き線アンテナが,紙もしくはプラスチックからなるベース基材の同一面上に敷設され,二つの巻き線アンテナは大径のコイルを描画してから小径のコイルを描画し,その後再び大径のコイルを描画し,ベース基材上のコイル内には,アンテナと接続されるICチップが搭載されたフィルム基板が嵌め込まれ,ベース基材とベース基材上に描画された二つの巻き線アンテナとICチップが搭載されたフィルム基板とを有するインレット。」
2 引用例2に記載された事項
当審拒絶理由通知で引用した,本願の出願前に既に公知である,国際公開第2013/099546号(2013年7月4日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
A 「[0031] (実施の形態1)図1は、本発明の実施の形態1に係る非接触情報媒体の外観を示す模式図である。また、図2は、図1のA-A断面図である。図1に示すように、実施の形態1に係る非接触情報媒体10は円形のコイン形状をなし、非接触情報媒体10の本体の一部をなす本体部材下部11と、非接触情報媒体10の本体の一部をなし、本体部材下部11と共に非接触情報媒体10の内蔵物を封止する本体部材上部12とを備える。また、非接触情報媒体10の表面及び裏面(図示せず)には、コインの額面等が表示されたラベル10aが貼付されている。なお、図1においては、色の異なる部分に網掛けを施している。」
B 「[0036] 図4Aは、ボビン部材13を示す上面図である。図4Bは、図4AのB-B断面図である。図5Aは、ボビン部材13にICチップ14及び導線15を配置した状態を示す上面図である。図5Bは、図5Aに示すボビン部材13及び導線15を示す側面図である。[0037] ボビン部材13は、導線15を巻回させることにより所定のパターンのコイルアンテナを形成して保持するための部材である。本実施の形態1においては、コイルアンテナのパターンとして、閉曲線をなす主配索パターンと、該閉曲線に沿って配置され、各々の巻回形状の径が該閉曲線の径よりも小さい複数の副配索パターンとを含むパターンを形成する。実施の形態1においては、主配索パターンの閉曲線を円周状としている。」
C 「[図:0001383892000001.jpg]図4A」
D 「[図:0001383892000002.jpg]図5A」
3 引用例3に記載された事項
当審拒絶理由通知で引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2009-147560号公報(平成21年7月2日公開。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
A 「【0029】以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態であるコイルアンテナおよび非接触情報媒体について説明する。なお、各実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。…中略…【0035】(変形例1)分散させて形成する巻線パターン14の数は、6個に限らず、例えば主配索パターン12の四隅四箇所に分散させてもよい。さらには、主配索パターン12に沿って連続的に分散させて形成してもよい。図2は、変形例1のコイルアンテナ10Aの概要構成を模式的に示す図である。変形例1のコイルアンテナ10Aは、主配索パターン12の内周全体に沿って連続的に分散させて多数の巻線パターン14を形成したものである。これにより、薄型構造にして、自己インダクタンスと相互インダクタンスとの比率を、より一層大きくすることができる。【0036】(変形例2)図3は、変形例2のコイルアンテナ10Bの概要構成を模式的に示す図である。変形例2のコイルアンテナ10Bは、主配索パターン12の内周全体に沿って連続的に分散させて多数の巻線パターンを形成する上で、隣接する巻線パターン14a,14b間で渦巻き方向を左巻きと右巻きとで逆方向としたものである。これによれば、隣接する巻線パターン14a,14b間では、電流が流れた場合に発生する磁束の向きが逆となり、打ち消し合うため、巻線パターン14a,14bの作る磁場の影響が遠くまで及ばなくなり、その分、相互インダクタンスを小さくすることが可能となる。」
B 「[図:0001383892000003.jpg]図2」
C 「[図:0001383892000004.jpg]図3」
4 引用例4に記載された事項
当審拒絶理由通知で引用した,本願の出願前に既に公知である,特開昭58-151006号公報(昭和58年9月8日公開。以下,これを「引用例4」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
A 「複合リボンの長手中心線上には、第1b図に示すスルーホールパンチ工程Aで所定パターンでスルーホール41,42,……を開ける。スルーホール41,42,……の分布を第1c図に示す。次いで無電解メッキ工程Bでスルーホール41,42のスルーホール内面に導電層を形成し、更に電解メッキ工程Cで銅箔2a、2b表面およびスルーホール導電層の表面に金属メッキ層を更に形成し、次いでスルーホール部にハンダを埋めてハンダ表面を研磨して複合リボン30表裏面を平滑にする(穴埋めD)。次いで、複合リボン3の表裏面に、スルーホール41,42,……を基準にして、ホトエツチングにより渦巻4状の金属層パターンを形成する(コイルパターン形成E)。このホトエツチングにおいては、まず複合リボン3の全表面にホトレジスト層を塗布し、次いで表裏面に金属層パターンを投影してレジスト層を露光し、次に現像し、そしてエツチング液に浸した後レジスト層を除去する。これにより、複合リボン3の表面(2a)には、第1e図に示すように、所定ピッチ1で、時計方向と反時計方向の金属層(銅箔)パターンが交互に形成され、また裏面には第1d図に示すように、所定ピッチlで、時計方向と反時計方向の金属層パターンが交互に形成され、表面のパターン(2a)の裏側に裏面のパターン(2b)が位置し、奇数番のスルーホール43,47,……の導体が表面(第1e図)のコイルパターン(2a)の始端5as1,5as2,……を裏面(第1d図)のコイルパターン(2b)の終端5be1,5be2,……に、偶数番のスルーホール42,44,46,……の導体が表面のコイルパターンの終端5ae1,5ae2,……を裏面のコイルパターンの始端5bs1,5bs2,……に接続している。」
B 「[図:0001383892000005.jpg]第1d図,第1e図」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「インレット」は,「非接触ICカードに使用する」ものであるから,本願発明1と“非接触情報媒体”である点で一致するといえる。
イ 引用発明の「ベース基材」は,「巻き線アンテナ」が「描画」されたうえ,「折り曲げてカードサイズに戻したもの」であるから,本願発明1の「フレキシブルプリント基板からなり、積層状態で構成される複数の基板」とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“積層状態で構成される複数の基板”である点で一致する。
ウ 引用発明の「ベース基材」は,上記イの認定のとおり,「巻き線アンテナ」が「描画」されるものであり,当該「巻き線アンテナ」はまた,「スパイラル径が異なる二つの巻き線アンテナが,紙もしくはプラスチックからなるベース基材の同一面上に敷設され」るものでもあることから,引用発明の「巻き線アンテナ」は,本願発明1の「予め導電パターンが形成された導電体」に相当するといえ,上記イの認定も踏まえると,引用発明と本願発明1とは,“前記複数の基板のそれぞれに一体的に設けられ,予め導電パターンが形成された導電体”を有する点で一致する。
エ 引用発明の「インレット」は,「ベース基材とベース基材上に描画された二つの巻き線アンテナとICチップが搭載されたフィルム基板とを有」し,当該「ICチップ」は,本願発明1の「ICチップ」に相当するといえるから,上記イ及びウの認定を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,“前記複数の基板の何れか1つに設けられ,前記導電体と接続されるICチップ”を有する点で一致する。
オ 引用発明の「二つの巻き線アンテナ」は,「スパイラル径が異なる」ものであって,「大径のコイルを描画してから小径のコイルを描画し,その後再び大径のコイルを描画」するものであるから,上記ウの認定を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,“前記導電パターンは,その一部が螺旋状に形成された螺旋パターンを含む”点で一致する。
カ 以上,ア~オの検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
積層状態で構成される複数の基板と,
前記複数の基板のそれぞれに一体的に設けられ,予め導電パターンが形成された導電体と,
前記複数の基板の何れか1つに設けられ,前記導電体と接続されるICチップと,を有し,
前記導電パターンは,その一部が螺旋状に形成された螺旋パターンを含む
ことを特徴とする非接触情報媒体。
〈相違点1〉
本願発明1の「基板」が,「フレキシブルプリント基板からな」ると共に,「前記導電パターンを、異なる層の前記基板の前記導電パターンに導通させる導通孔部を有」するのに対し,引用発明の「ベース基材」は,「紙もしくはプラスチックからなる」ものであり,フレキシブルプリント基板からなることが特定されておらず,異なる層の基板の導電パターンに導通させる導通孔部を有するものではない点。
〈相違点2〉
本願発明1の「螺旋パターン」が,「前記複数の基板の積層方向から見て、互いに重複しない位置に配置される」のに対し,引用発明の「スパイラル径が異なる二つの巻き線アンテナ」は,「大径のコイルを描画してから小径のコイルを描画し,その後再び大径のコイルを描画」することによって,積層されたベース基材の積層方向から見て重複する位置に配置されたものである点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に相違点1について検討する。
本願発明1は,非接触情報媒体及びその製造方法に関するものであり(本願明細書段落【0001】),近年,流通,交通,金融,エンターテインメント,アミューズメント等の各種分野において,ICチップ及びアンテナを内蔵した非接触情報媒体が広く利用されていて,例えば,従来の非接触情報媒体は,非接触情報媒体の外形をなす本体と,本体内に収納されたICチップと,両端がICチップに接続された一連の導線からなり,閉曲線に沿って設けられた主配索パターンと,各々の径が主配索パターンの径よりも小さい複数の副配索パターンとを含むコイルアンテナとを備え,さらに,上記本体内に設けられ,閉曲線に沿って配置された複数のボビンであって,一連の導線を閉曲線に沿って巻回させることにより主配索パターンを形成させると共に,一連の導線を各々に巻回させることにより副配索パターンを形成させる複数のボビン部を備えた構成にされたものが知られており,これにより,非接触情報媒体は,複数個重ねたままで各々が通信装置と通信可能になっていたことを背景とし(同【0002】),このような従来の非接触情報媒体は,ボビンにコイルを巻き付ける際に,コイル巻線機を用いるが,この工程においてコイルの巻回不足,巻回不良が生じる可能性があり,完成品の品質が不安定になる可能性があることを課題とするものであって(同【0004】),製造時の初期不良を低減し,安定した品質を確保可能な非接触情報媒体及びその製造方法を提供することを目的とした発明と認められる(同【0005】)。
一方,引用発明は,通信用アンテナを内蔵する非接触ICカードに使用するインレットに係るものであって(引用例1の段落【0001】),金属ワイヤーからなる巻き線アンテナを複数内蔵させたインレットを折り畳んでから型抜きして所定のサイズのインレットもしくは非接触ICカードに仕上げるに当たり,型抜き工程でアンテナ線が断裁されないインレットを提供することを目的とするものと認められる(同【0009】)。
ここで,引用発明において,折り曲げられるベース基材に描画される,すでに接続関係にある二つの巻き線アンテナ同士を,導通孔を通じて接続するように構成する動機付けを見いだすことはできず,導通孔(スルーホール)を設けて導電パターン(銅箔)同士を接続すること自体は,上記第5の4に示した引用例4に開示されているように,周知技術ではあるものの,相違点1に係る構成,すなわち,「フレキシブルプリント基板からな」る「基板」が,「前記導電パターンを、異なる層の前記基板の前記導電パターンに導通させる導通孔部を有」するものとすることまでは,周知技術とはいえず,このことは,その他上記引用例2及び3にも記載されていない。
したがって,当業者といえども,引用発明において上記相違点1に係る構成を導き出すことは容易とまではいえず,また,相違点1に係る構成は,本願の出願前に周知な構成ともいえないから,本願発明1は,上記相違点2について判断するまでもなく,引用発明及び引用例2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は,本願発明1と同様の,上記相違点1に係る構成を有しており,上記1(2)において判断したとおり,当該構成については,引用例1~4のいずれにも記載が無く,したがって,本願発明1と同様,当業者であっても,引用例1~4に記載された発明に基づいて容易になし得たものとはいえない。
3 本願発明4について
本願発明4は,本願発明3をさらに限定するものであり,本願発明3と同様,当業者であっても,引用例1~4に記載された発明に基づいて容易になし得たものとはいえない。
4 本願発明5について
本願発明5は,本願発明1とカテゴリーの異なる発明であるところ,本願発明1と引用発明との上記相違点1に係る構成と同様の構成を有するものであり,当該構成については,引用例1~4のいずれにも記載が無く,したがって,本願発明1と同様,当業者であっても,引用例1~4に記載された発明に基づいて容易になし得たものとはいえない。
第7 原査定についての判断
令和4年3月9日付けの手続補正書による手続補正により,本願発明1~5は,上記第5に示したとおりのものとなり,このうち,上記第6において示した相違点1に係る構成は,原査定における引用文献1(上記第5の引用例1)には記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願発明1~5は,当業者であっても,原査定における引用文献1に基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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