2021-006643
電解コンデンサ
- 審判番号
- 2021-006643
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-515365外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年05月24日
- 審決日
- 2022年02月01日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
本願は、2016年3月10日(優先権主張 2015年4月28日)を国際出願日とする出願であって、令和2年2月7日付で拒絶理由が通知され、令和2年6月9日に手続補正がされ、令和2年7月31日付で拒絶理由が通知され、令和2年12月2日に手続補正がされたが、令和3年2月18日付で拒絶査定がされ、これに対し、令和3年5月24日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年2月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。記 (引用文献については引用文献一覧参照)・請求項 1-5、7・引用文献1、3-6または2-6続きを表示(全14行)・請求項 6・引用文献1、3-7または2-7<引用文献一覧>1.特開2013-26536号公報2.国際公開第2011/099261号3.特開2006-190878号公報4.特開平10-270291号公報5.特開昭61-180420号公報(周知技術を示す文献)6.特開昭61-214420号公報(周知技術を示す文献)7.特開2014-130854号公報(周知技術を示す文献)」
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)は、陰極箔の表面の拡面率について、本件補正前の請求項1に「10~500cm2/cm2であり」とあったところを「10~120cm2/cm2であり」と数値範囲を減縮するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件補正は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和3年5月24日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】コンデンサ素子と電解液とを備え、前記コンデンサ素子は、誘電体層が形成された陽極箔と、続きを表示(全27行)前記陽極箔と対向し、かつ無機系導電層が形成された陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に介在し、かつ導電性高分子を含む導電性高分子層と、を備え、前記陰極箔は、粗面化された表面を有しており、前記無機系導電層は、前記陰極箔の前記粗面化された表面に形成されており、前記陰極箔の前記表面の拡面率は、10~120cm2/cm2であり、前記無機系導電層の厚さは、1nm~100nmであり、前記電解液は、前記コンデンサ素子に含浸されており、前記無機系導電層の表面は、凹凸を有し、前記無機系導電層の前記表面の凸部では、前記無機系導電層と前記導電性高分子層とが接触している第1領域が形成され、前記無機系導電層の前記表面の凹部では、前記無機系導電層と前記導電性高分子層とが接触していない第2領域が形成され、前記第2領域において、前記無機系導電層と前記導電性高分子層との間に前記電解液が入り込んでおり、前記導電性高分子層は、前記導電性高分子を含む分散体または溶液を用いて形成されている、電解コンデンサ。【請求項2】前記陰極箔の前記粗面化された表面は、エッチングにより粗面化されている、請求項1に記載の電解コンデンサ。【請求項3】前記無機系導電層は、カーボン、ニッケル、ニッケル化合物、チタン、およびチタン化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。【請求項4】前記電解液は、第1溶媒を含み、前記第1溶媒は、沸点を有さないか、または沸点が180℃以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。【請求項5】前記第1溶媒はポリオールを含む、請求項4に記載の電解コンデンサ。【請求項6】前記ポリオールは、グリセリン類を含む、請求項5に記載の電解コンデンサ。【請求項7】前記電解液中に含まれる前記第1溶媒の量は、3~90質量%である、請求項4~6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車用機器等に使用される電解コンデンサ及びその製造方法に関するものである。」
「【0020】そこで本発明は、このような従来の課題を解決し、小型、大容量、低ESR、低漏れ電流、高耐圧であると共に、生産性を向上させた電解コンデンサを提供することを目的とするものである。」
「【0027】図1に示すように、本発明のハイブリッド型電解コンデンサは、機能素子であるコンデンサ素子12と、このコンデンサ素子12にそれぞれ一方の端部を接続した一対のリード線11a、11bと、これらリード線11a、11bの他方の端部を外部に導出するようにして、コンデンサ素子12を駆動用電解液(図示せず)と共に封じた外装体15とからなっている。【0028】また、前記外装体15は、駆動用電解液を含浸したコンデンサ素子12を収納した有底筒状の外装ケース13と、前記リード線11a、11bをそれぞれ挿通させる貫通孔14a、14bを備えると共に外装ケース13の開口部に配置され、外装ケース13の外周面に設けた絞り加工部13aで絞ることによって外装ケース13の開口部を封止した封口体14とで構成されている。続きを表示(全12行)【0029】また、封口体14は、EPTやIIR等のゴム材料のほか、エポキシ樹脂などの樹脂材料を用いることができる。【0030】また、図2、3に示すように、前記コンデンサ素子12は、アルミニウム等の弁金属からなる箔をエッチング処理により粗面化しさらにその表面に陽極酸化皮膜の誘電体層12eを化成処理によって形成した陽極箔12aと、アルミニウム等の弁金属からなる陰極箔12bとを、セパレータ12cを介して巻回して形成されている。そして、前記リード線11a、11bは、それらの一方の端部が陽極箔12aと陰極箔12bにそれぞれ接続されており、それらの他方の端部はコンデンサ素子12の同一端面より引出されている。【0031】なお、コンデンサ素子12を構成する電極は、電極箔を巻回する以外に複数枚の電極箔を積層する構成であってもよい。【0032】また、図3に示すように、コンデンサ素子12を構成する前記陽極箔12aと陰極箔12bとの間には、ポリチオフェンやその誘導体等の導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16が形成されている。この導電性ポリマー微粒子の一例として、電導度及び耐電圧が高いポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(PEDOT・PSS)が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、この導電性ポリマー微粒子は、溶媒中に分散させることにより、分散体溶液として取り扱うことができる。」
[図:0001386939000001.jpg]
[図:0001386939000002.jpg]
「【0046】次に、以上のように構成した実施の形態における電解コンデンサの一例であるハイブリッド型電解コンデンサ(巻回形コンデンサ素子タイプ)の製造方法について図1、2、3を用いて説明する。【0047】まず、図2、3に示すように、陽極酸化皮膜の誘電体層12eを表面に有するアルミニウム等の弁金属からなる陽極箔12aと、陰極箔12bと、セパレータ12cとを一定の幅と長さに切断し、一対のリード線11a、11bの一方の端部をそれぞれ陽極箔12aと陰極箔12bにカシメ、超音波などの方法によって接続した後、その陽極箔12aと陰極箔12bとの間にセパレータ12cを介在させてロール状に巻回して略円筒形とし、その外周側面を絶縁テープ12dで巻き止めて固定し、コンデンサ素子12を形成する。【0048】なお、陽極箔12aの表面は、エッチングや金属粒子の蒸着等によって表面積を適宜拡大する。また、誘電体層12eは、電極材であるアルミニウム等の弁金属を陽極酸化することにより陽極体酸化皮膜として得られる他、電極材に蒸着や塗布によって形成してもよい。【0049】なお、陰極箔12bの表面は、導電性ポリマー層16との接触状態をよくするため、必要に応じて、エッチング、酸化皮膜、金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行う。」
「【0084】(実施例1)・・・(中略)・・・【0087】また、陰極箔12bとしては、純度99.99%以上のアルミニウム箔を用い、このアルミニウム箔にエッチング処理を施してその表面積を拡大し、さらに、化成処理(化成電圧2V)を施し、図3に示すような酸化アルミニウム層12fを形成した。そしてこの陰極箔12bを方形状に裁断し、その投影面積が陽極箔に対向する所定の面積となるように調整した。」
「【0094】まず、導電性ポリマー微粒子を溶媒中に分散させた分散体溶液を準備した。・・・(以下、略)」
「【0095】その後、前記分散体溶液28.8μlを前記コンデンサ素子12に含浸させ、コンデンサ素子12内部全体へ分散体溶液を浸透させた。含浸方法としては、コンデンサ素子12を、前記一対のリード線11a、11bが引出されていない巻回端面を上面として水平に配置した後、この巻回端面に前記分散体溶液を滴下するようにして行った。」
「【0097】その後、前記分散体溶液を含浸させたコンデンサ素子12に100~150℃の温度で60分間程度の加熱処理を施し、溶媒を減少させることにより、導電性ポリマー微粒子を凝集させて、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、セパレータ12cの繊維表面に膜状に付着させた。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.3mg/cm2となった。」
イ 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)段落【0027】より、引用文献1は「ハイブリッド型電解コンデンサ」に関するものであることが分かる。
また、同段落及び段落【0028】より、「ハイブリッド型電解コンデンサは」、「コンデンサ素子12」と「外装体15とからな」り、「前記外装体15は、駆動用電解液を含浸したコンデンサ素子12を収納し」ているとの技術的事項を読み取ることができる。
(イ)段落【0030】、【0032】より、「前記コンデンサ素子12は、」「その表面に」「誘電体層12eを」「形成した陽極箔12aと、」「陰極箔12bとを、セパレータ12cを介して巻回して形成され」、「前記陽極箔12aと陰極箔12bとの間には、」「導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16が形成されている。」との技術的事項を読み取ることができる。
(ウ)段落【0049】より、「陰極箔12bの表面は、導電性ポリマー層16との接触状態をよくするため、必要に応じて、エッチング、」「金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行う。」との技術的事項を読み取ることができる。
(エ)段落【0087】より、「陰極箔12bとしては、」「アルミニウム箔を用い、このアルミニウム箔にエッチング処理を施してその表面積を拡大し、さらに、化成処理」「を施し、」「酸化アルミニウム層12fを形成」するとの技術的事項を読み取ることができる。
(オ)段落【0094】、【0095】及び【0097】より、「導電性ポリマー微粒子を溶媒中に分散させた分散体溶液を準備し」、「その後、前記分散体溶液」「を前記コンデンサ素子12に含浸させ、コンデンサ素子12内部全体へ分散体溶液を浸透させ」、「前記分散体溶液を含浸させたコンデンサ素子12に」「加熱処理を施し、溶媒を減少させることにより、導電性ポリマー微粒子を凝集させて、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、セパレータ12cの繊維表面に膜状に付着させ」るとの技術的事項を読み取ることができる。
ウ したがって、上記イ(ア)ないし(オ)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ハイブリッド型電解コンデンサであって、ハイブリッド型電解コンデンサは、コンデンサ素子12と外装体15とからなり、前記外装体15は、駆動用電解液を含浸したコンデンサ素子12を収納し、前記コンデンサ素子12は、その表面に誘電体層12eを形成した陽極箔12aと、陰極箔12bとを、セパレータ12cを介して巻回して形成され、前記陽極箔12aと陰極箔12bとの間には、導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16が形成され、陰極箔12bの表面は、導電性ポリマー層16との接触状態をよくするため、必要に応じて、エッチング、金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行ない、陰極箔12bとしては、アルミニウム箔を用い、このアルミニウム箔にエッチング処理を施してその表面積を拡大し、さらに、化成処理を施し、酸化アルミニウム層12fを形成し、導電性ポリマー微粒子を溶媒中に分散させた分散体溶液を準備し、その後、前記分散体溶液を前記コンデンサ素子12に含浸させ、コンデンサ素子12内部全体へ分散体溶液を浸透させ、前記分散体溶液を含浸させたコンデンサ素子12に加熱処理を施し、溶媒を減少させることにより、導電性ポリマー微粒子を凝集させて、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、セパレータ12cの繊維表面に膜状に付着させる、ハイブリッド型電解コンデンサ。」
2.引用文献2について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「[0001] 本発明は、各種電子機器に使用される電解コンデンサに関する。」
「[0020] まず、本実施の形態における電解コンデンサの構成について図1、図2を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態における電解コンデンサの一例であるハイブリッド型電解コンデンサ(巻回型コンデンサ素子タイプ)の構成を示す断面図、図2は、このハイブリッド型電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図である。[0021] 図1に示すように、この電解コンデンサは、コンデンサ素子12と、第1リード線11Aと第2リード線11B(以下、リード線11A、11B)と、外装体15とを有する。コンデンサ素子12は、図2に示すように、陽極箔12Aと、陰極箔12Bと、陽極箔12Aと陰極箔12Bとの間に介在したセパレータ12Cとを有する。リード線11Aは陽極箔12Aに接続され、リード線11Bは陰極箔12Bに接続されている。すなわち、リード線11Aの端部は陽極箔12Aに接続され、リード線11Bの端部は陰極箔12Bに接続されている。それらの他方の端部はコンデンサ素子12の同一端面より引出されている。外装体15はリード線11A、11Bのそれぞれの端部を外部に導出するようにしてコンデンサ素子12を封じている。[0022] 外装体15は、有底筒状のケース13と、封口体14とで構成されている。ケース13は後述する電解液を含浸したコンデンサ素子12を収納している。封口体14には、リード線11A、11Bをそれぞれ挿通させる貫通孔14A、14Bが設けられている。封口体14はケース13の開口部に配置され、ケース13の外周面を絞り加工部13Aで絞ることによって圧縮されることで、ケース13の開口部を封止している。[0023] 次に、図3を参照しながらコンデンサ素子の構成について説明する。図3は図2に示すコンデンサ素子の要部拡大概念図である。コンデンサ素子12は、上述の陽極箔12Aと陰極箔12Bとセパレータ12C以外に、固体電解質層122を有する。またコンデンサ素子12には電解液16が含浸している。[0024] 陽極箔12Aは、アルミニウム等の弁金属からなる箔をエッチング処理により粗面化しさらにその表面に誘電体酸化皮膜を化成処理によって形成されている。すなわち、陽極箔12Aは表面に誘電体層121を有する。陰極箔12Bはアルミニウム等の弁金属で形成されている。陽極箔12Aと陰極箔12Bはセパレータ12Cを介して積層され巻回され、さらに陽極箔12Aと陰極箔12Bとの間に、ポリチオフェンやその誘導体等の導電性ポリマーからなる固体電解質層122が形成されている。すなわち、固体電解質層122は誘電体層121と陰極箔12Bとに接触している。固体電解質層122は緻密な状態ではなく、内部に空隙を有する多孔質であり、その空隙に電解液16が入り込んでいる。」
[図:0001386939000003.jpg]
[図:0001386939000004.jpg]
「[0041] 次に、以上のように構成した実施の形態における電解コンデンサの製造方法について図1、図2を用いて説明する。まず、酸化皮膜の誘電体層121を表面に有するアルミニウム等の弁金属からなる陽極箔12Aと、陰極箔12Bと、セパレータ12Cとを一定の幅と長さに切断する。そして、リード線11A、11Bの一方の端部をそれぞれ陽極箔12Aと陰極箔12Bにカシメ、超音波などの方法によって接続する。その後、図2に示すように、陽極箔12Aと陰極箔12Bとの間にセパレータ12Cを介在させてロール状に巻回して略円筒形にし、その外周側面を絶縁テープ等(図示せず)で巻き止めて固定する。このようにしてコンデンサ素子12を形成する。」
「[0043] なお、陰極箔12Bの表面は、固体電解質層122との接触状態をよくするため、必要に応じて、エッチング、酸化皮膜、金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行うことが好ましい。」
「[0046] その後、コンデンサ素子12の陽極箔12Aと陰極箔12Bの間に、固体電解質層122を形成する。固体電解質層122として例えば、導電性高分子であるポリ3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等を用いる。この場合、例えば、PEDOTを分散させた分散体溶液にコンデンサ素子12を含浸した後、引き上げ、乾燥させることによって形成する。あるいは、3,4エチレンジオキシチオフェン等のモノマー溶液、p-トルエンスルホン酸第二鉄塩等を含む酸化剤溶液、および溶媒としてエタノール等を用い、これらの溶液にコンデンサ素子12を含浸し、コンデンサ素子12内での化学重合反応でPEDOTを形成してもよい。」
イ 上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)段落[0020]より、引用文献2は「ハイブリッド型電解コンデンサ」に関するものであることがわかる。
また、同段落、及び段落[0021]、[0022]、[0023]より「ハイブリッド型電解コンデンサ」は、「コンデンサ素子12と、」「外装体15とを有」し、「外装体15は、」「電解液を含浸したコンデンサ素子12を収納し」、「コンデンサ素子12は」、「陽極箔12Aと陰極箔12Bとセパレータ12C以外に、固体電解質層122を有」する、との技術的事項を読み取ることができる。
(イ)段落[0024]より、「陽極箔12Aは表面に誘電体層121を有」し、「陽極箔12Aと陰極箔12Bはセパレータ12Cを介して積層され巻回され、さらに陽極箔12Aと陰極箔12Bとの間に」、「導電性ポリマーからなる固体電解質層122が形成され」、「固体電解質層122は誘電体層121と陰極箔12Bとに接触し」、「固体電解質層122は緻密な状態ではなく、内部に空隙を有する多孔質であり、その空隙に電解液16が入り込んでいる。」との技術的事項を読み取ることができる。
(ウ)段落[0043]より、「陰極箔12Bの表面は、固体電解質層122との接触状態をよくするため、必要に応じて、エッチング」、「金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行うことが好ましい。」との技術的事項を読み取ることができる。
(エ)段落[0046]より、「コンデンサ素子12の陽極箔12Aと陰極箔12Bの間に、固体電解質層122を形成する」が、「固体電解質層122として」、「導電性高分子」「を分散させた分散体溶液にコンデンサ素子12を含浸した後、引き上げ、乾燥させることによって形成する。」との技術的事項を読み取ることができる。
ウ 上記イ(ア)ないし(エ)から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ハイブリッド型電解コンデンサであって、ハイブリッド型電解コンデンサは、コンデンサ素子12と、外装体15とを有し、外装体15は、電解液16を含浸したコンデンサ素子12を収納し、コンデンサ素子12は、陽極箔12Aと陰極箔12Bとセパレータ12C以外に、固体電解質層122を有し、陽極箔12Aは表面に誘電体層121を有し、陽極箔12Aと陰極箔12Bはセパレータ12Cを介して積層され巻回され、さらに陽極箔12Aと陰極箔12Bとの間に、導電性ポリマーからなる固体電解質層122が形成され、固体電解質層122は誘電体層121と陰極箔12Bとに接触し、固体電解質層122は緻密な状態ではなく、内部に空隙を有する多孔質であり、その空隙に電解液16が入り込んでおり、陰極箔12Bの表面は、固体電解質層122との接触状態をよくするため、必要に応じて、エッチング、金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行うことが好ましく、コンデンサ素子12の陽極箔12Aと陰極箔12Bの間に、固体電解質層122を形成するが、固体電解質層122として、導電性高分子を分散させた分散体溶液にコンデンサ素子12を含浸した後、引き上げ、乾燥させることによって形成する、ハイブリッド型電解コンデンサ。」
3.引用文献3について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】本発明は、弁作用を有する金属の表面に酸化被膜が形成された陽極と、陰極と、これら両極間に設けられたセパレータとを巻回してなるコンデンサ素子を備え、上記両極間には電解質が介在する電解コンデンサ及びその製造方法に関する。」
「【0010】上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、弁作用を有する金属の表面に酸化被膜が形成された陽極と、弁作用を有する金属を備えた陰極と、これら両極間に設けられたセパレータとを巻回してなるコンデンサ素子を備え、上記両極間には電解質が介在する電解コンデンサにおいて、上記陰極における弁作用を有する金属の表面には、カーボン被膜が形成されていることを特徴とする。 まず、電解コンデンサの合成容量は等価直列回路であるということから、下記数1の如く表される。【0011】【数1】(省略)【0012】上記数1から明らかなように、Ccが値を持つ(陰極が容量を持つ)限り、コンデンサの容量Cは陽極側の静電容量Caより小さくなる。 そこで、上記構成の如く、弁作用を有する金属の表面に導電性に優れるカーボン被膜が形成されていれば、カーボン被膜が弁作用を有する金属(アルミニウム等)の表面に固着されて、当該金属上には弁作用を有する金属の酸化被膜が形成されないので、陰極の静電容量がほぼ無限大に漸近する。この結果、下記数2から明らかなように、本発明の電解コンデンサの静電容量は陽極のみの静電容量となり、従来の電解コンデンサと比較して、静電容量が飛躍的に増大する。【0013】【数2】(省略)」
イ 上記アから、引用文献3には、次の技術(以下、「引用文献3に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「弁作用を有する金属の表面に酸化被膜が形成された陽極と、弁作用を有する金属を備えた陰極と、これら両極間に設けられたセパレータとを巻回してなるコンデンサ素子を備え、上記両極間には電解質が介在する電解コンデンサにおいて(【0010】)、弁作用を有する金属の表面に導電性に優れるカーボン被膜が形成され、カーボン被膜が弁作用を有する金属(アルミニウム等)の表面に固着されて、当該金属上には弁作用を有する金属の酸化被膜が形成されないので、陰極の静電容量がほぼ無限大に漸近し、この結果、電解コンデンサの静電容量が増大する(【0012】)」技術。
4.引用文献4について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0009】【発明が解決しようとする課題】本発明は、化成皮膜を形成した陽極箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に固体電解質を含浸した固体電解コンデンサにおいて、陰極箔の材料や構成に起因するコンデンサ完成品としての静電容量の低下や等価直列抵抗の増大化を抑制するものである。【0010】【課題を解決するための手段】本発明による固体電解コンデンサにおいては、陰極箔として、エッチング処理を施したアルミニウム箔等、エッチング処理により表面を粗面化した金属箔の表面に、ニッケルのめっき膜、蒸着膜等の非弁作用金属膜を被着形成したものを用いる。【0011】斯かる構成の陰極箔を用いた固体電解コンデンサにおいては、陰極箔の表面が非弁作用金属膜に覆われているために自然酸化皮膜が形成され難くて陰極静電容量は実質的に無限大となり、前記非弁作用金属膜の表面も下地の金属箔の被エッチング面の凹凸をそのまま反映した凹凸面を有するために固体電解質との実効的な接触面積が増大する。」
イ 上記アから、引用文献4には、次の技術(以下、「引用文献4に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「化成皮膜を形成した陽極箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に固体電解質を含浸した固体電解コンデンサにおいて(【0009】)、陰極箔としてエッチング処理により表面を粗面化した金属箔の表面に、ニッケルのめっき膜、蒸着膜等の非弁作用金属膜を被着形成したものを用い(【0010】)、陰極箔の表面が非弁作用金属膜に覆われているために自然酸化皮膜が形成され難くて陰極静電容量は実質的に無限大となり、前記非弁作用金属膜の表面も下地の金属箔の被エッチング面の凹凸をそのまま反映した凹凸面を有するために固体電解質との実効的な接触面積が増大し(【0011】)、静電容量の低下や等価直列抵抗の増大化を抑制する(【0009】)」技術。
5.引用文献5について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)
(ア)「産業上の利用分野この発明は、電解コンデンサ用陰極材料に関する。」(第1頁左下欄第15-17行)
(イ)「発明の効果この発明に係る電解コンデンサ用陰極材料は、上述の次第で、粗面化された基材の表面に所定粒径の導電性金属微粒子からなる所定厚さの導電性金属皮膜を被覆形成したものであることにより、金属皮膜表面を微細な凹凸状態即ち著しく粗な状態となしえて拡面率の向上を図りうるため、後述の実施例の参酌によっても明らかなように、エッチング技術により拡面率の向上を図った従来のアルミニウム陰極材に較べて格段に大きな静電容量を有するものとなしうる。その結果、電解コンデンサの小型化、高性能化に極めて有効なものとなしうる。さらに、基材としてアルミニウム箔の金属箔のみならず、樹脂フィルムや紙を使用でき、かつまた、従来のようなエッチング操作が不要ないしは軽度なもので済むため、電解コンデンサ全体のコスト低減に寄与しうるものとなる。」(第3頁左上欄第3-19行)
(ウ)「実施例1化学的エッチングで表面積を50倍に拡大した厚さ0.1mmのアルミニウム箔の両面に、5×10-3Torrのアルゴンガス雰囲気中でチタンを蒸発させることにより、平均粒子径0.3μmのチタン微粒子からなる厚さ0.5μmのチタン蒸着皮膜を形成し、本発明に係る陰極材料を作製した。実施例2基材として実施例1と同じアルミニウム箔を用い、かつ実施例1と同一圧力のアルゴンガス雰囲気中でクロムを蒸発させて、アルミニウム箔基材の両面に平均粒子径0.1μmのクロム微粒子からなる厚さ0.3μmのクロム蒸着皮膜を形成し、本発明に係る陰極材料を作製した。実施例3サンドブラスト処理にて表面積を1.5倍に拡大した厚さ0.11mmの銅箔基材の両面に、1×10-3Torrのアルゴンガス雰囲気中でチタンを蒸発させることにより、平均粒子径0.7μmのチタン微粒子からなる厚さ1.0μmのチタン蒸着皮膜を形成し、本発明に係る陰極材料を作製した。実施例4化学的エッチングで表面積を40倍に拡大した厚さ0.1mmのアルミニウム箔基材の両面に、5×10-3Torrのアルゴンガス雰囲気中でチタンを蒸発させることにより、平均粒子径0.5μmのチタン微粒子からなる厚さ0.8μmのチタン蒸着皮膜を形成し、本発明に係る陰極材料を作製した。」(第3頁右上欄第2行-同頁左下欄第12行)
イ 上記ア(ア)ないし(ウ)から、引用文献5には、次の技術(以下、「引用文献5に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「電解コンデンサ用陰極材料に関して、電解コンデンサ用陰極材料は、表面積を例えば1.5倍、40倍、50倍に拡大し粗面化された基材の表面に所定粒径の導電性金属微粒子からなる所定厚さの導電性金属皮膜を被覆形成したものであることにより、金属皮膜表面を微細な凹凸状態即ち著しく粗な状態となしえて拡面率の向上を図りうるため、エッチング技術により拡面率の向上を図った従来のアルミニウム陰極材に較べて格段に大きな静電容量を有するものとなしうる」技術。
6.引用文献6について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献6には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
(ア)「産業上の利用分野この発明は、電解コンデンサ用陰極材料に関する。」(第1頁左下欄第13-15行)
(イ)「発明の効果この発明に係る電解コンデンザ用陰極材料は、上述の次第で、基材表面を所定範囲の凹凸を形成して粗面化することにより、その凹凸効果を金属皮膜の表面に現出させる一方、その結果高低差をもって金属皮膜表面に形成された球頭状突出部の該高低差、外径、皮膜厚さを一定範囲内のものとしたことにより、従来の平滑状アルミニウム基材表面に不活性ガス中蒸着法等により金属皮膜を形成してなる陰極材料と較べて、皮膜の表面積を拡大でき、ひいては静電容量を増大することができ、また静電容量の値をバラツキの少ないものとすることができる。その結果、電解コンデンサの小型化、高性能化に極めて有効なものとなしうる。」(第3頁左上欄第14行-同頁右上欄第8行)
(ウ)「実施例1厚さ0.05mmの99.8%アルミニウム箔を、液温60℃、2.5wt%塩酸溶液中に浸漬し、20A/50cm2の電流密度で300秒間電解エッチングした。エッチング後のアルミニウム箔基材の表面には、平均0.5μm以下の微視的凹凸が形成されるとともに、板厚方向に10μm程度の深さのエッチングボアが形成されていた。また基材の表面拡大率は30倍であった。次いで、上記エッチング箔基材表面に、5×10-3Torrのアルゴンガス中でチタンを蒸発させ、最大厚さ1.0μmのチタン蒸着皮膜を形成した。この皮膜の表面には高低差を有する平均外径0.3μmの多数の球頭状突出部が形成されており、また隣り合う球頭状突出部の高低差は平均0.7μm以下であった。なお、エッチングボアの深部内面には皮膜が形成されていなかった。」(第3頁右上欄第11行-同頁左下欄第8行)
イ 上記ア(ア)ないし(ウ)から、引用文献6には、次の技術(以下、「引用文6に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「電解コンデンサ用陰極材料に関して、電解コンデンサ用陰極材料は、基材表面を所定範囲の凹凸を形成して粗面化することにより、基材の表面拡大率を30倍とし、その凹凸効果を金属皮膜の表面に現出させる一方、その結果高低差をもって金属皮膜表面に形成された球頭状突出部の該高低差、外径、皮膜厚さを一定範囲内のものとしたことにより、皮膜の表面積を拡大でき、ひいては静電容量を増大することができる」技術。
7.引用文献7について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献7には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】本発明は、高い火花電圧を有し、火花電圧と電導度における耐熱性に優れた電解コンデンサ用電解液とそれを用いた電解コンデンサに関する。」
「【0037】<有機溶媒>電解コンデンサ用電解液に用いる有機溶媒は、プロトン性極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒を用いることができ、単独で用いても2種類以上混合して用いてもよい。【0038】プロトン性極性溶媒としては、一価アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等)等が挙げられる。」
イ 上記アから、引用文献7には、次の技術(以下、「引用文献7に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「電解コンデンサに関し、電解コンデンサ用電解液に用いる有機溶媒として、グリセリンを用いる」技術。
第6 対比・判断
1 引用文献1を主引用例とした場合
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明1における「ハイブリッド型電解コンデンサ」が「駆動用電解液を含浸したコンデンサ素子12」を収納していることは、本願発明1における「コンデンサ素子と電解液とを備え」ることに相当する。
(イ)引用発明1における「金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等」の「表面処理」によって形成される層、及び「導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16」が、それぞれ本願発明1における「無機系導電層」、及び「導電性高分子を含む導電性高分子層」に相当する。
したがって、引用発明1における「コンデンサ素子12」が「その表面に誘電体層12eを形成した陽極箔12aと、陰極箔12bとを、セパレータ12cを介して巻回して形成され、前記陽極箔12aと陰極箔12bとの間には、導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16が形成され」、「陰極箔12bの表面は、導電性ポリマー層16との接触状態をよくするため」、「金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行な」っていることが、本願発明1における「前記コンデンサ素子は、誘電体層が形成された陽極箔と、前記陽極箔と対向し、かつ無機系導電層が形成された陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に介在し、かつ導電性高分子を含む導電性高分子層と、を備え」ることに相当する。
(ウ)引用発明1における「陰極箔12bとしては、アルミニウム箔を用い、このアルミニウム箔にエッチング処理を施してその表面積を拡大し」ていることは、本願発明1における「前記陰極箔は、粗面化された表面を有して」いることに相当する。
(エ)引用発明1における「陰極箔12bの表面は、導電性ポリマー層16との接触状態をよくするため、必要に応じて、エッチング、金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行な」うことは、これらの表面処理により「エッチング」により粗面化された表面に「カーボン等の導電粒子」が「付着」することは明らかであって、本願発明1における「前記無機系導電層は、前記陰極箔の前記粗面化された表面に形成されて」いることに相当する。
(オ)本願発明1では「前記陰極箔の前記表面の拡面率は、10~120cm2/cm2であり、前記無機系導電層の厚さは、1nm~100nmであ」るのに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点で相違する。
(カ)引用発明1における「コンデンサ素子12」が「駆動用電解液を含浸した」ものであることは、本願発明1における「前記電解液は、前記コンデンサ素子に含浸されて」いることに相当する。
(キ)本願発明1における「前記無機系導電層の表面は、凹凸を有し、前記無機系導電層の前記表面の凸部では、前記無機系導電層と前記導電性高分子層とが接触している第1領域が形成され、前記無機系導電層の前記表面の凹部では、前記無機系導電層と前記導電性高分子層とが接触していない第2領域が形成され、前記第2領域において、前記無機系導電層と前記導電性高分子層との間に前記電解液が入り込んで」ているのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点で相違する。
(ク)引用発明1における「導電性ポリマー微粒子を溶媒中に分散させた分散体溶液を準備し、その後、前記分散体溶液を前記コンデンサ素子12に含浸させ、コンデンサ素子12内部全体へ分散体溶液を浸透させ、前記分散体溶液を含浸させたコンデンサ素子12に加熱処理を施し、溶媒を減少させることにより、導電性ポリマー微粒子を凝集させて、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、セパレータ12cの繊維表面に膜状に付着させる」ことが、本願発明1における「前記導電性高分子層は、前記導電性高分子を含む分散体または溶液を用いて形成されている」ことに相当する。
(ケ)引用発明1における「ハイブリッド型電解コンデンサ」が、本願発明1における「電解コンデンサ」に相当する。
したがって、上記(ア)ないし(ケ)より、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「コンデンサ素子と電解液とを備え、前記コンデンサ素子は、誘電体層が形成された陽極箔と、前記陽極箔と対向し、かつ無機系導電層が形成された陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に介在し、かつ導電性高分子を含む導電性高分子層と、を備え、前記陰極箔は、粗面化された表面を有しており、前記無機系導電層は、前記陰極箔の前記粗面化された表面に形成されており、前記電解液は、前記コンデンサ素子に含浸されており、前記導電性高分子層は、前記導電性高分子を含む分散体または溶液を用いて形成されている、電解コンデンサ。」
(相違点1)
本願発明1では「前記陰極箔の前記表面の拡面率は、10~120cm2/cm2であり、前記無機系導電層の厚さは、1nm~100nmであ」るのに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。
(相違点2)
本願発明1における「前記無機系導電層の表面は、凹凸を有し、前記無機系導電層の前記表面の凸部では、前記無機系導電層と前記導電性高分子層とが接触している第1領域が形成され、前記無機系導電層の前記表面の凹部では、前記無機系導電層と前記導電性高分子層とが接触していない第2領域が形成され、前記第2領域において、前記無機系導電層と前記導電性高分子層との間に前記電解液が入り込んで」いるのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、先ず上記相違点2について検討する。
(ア)引用文献3に記載された技術には「弁作用を有する金属の表面に導電性に優れるカーボン被膜」を「形成」する点が示され、引用文献4に記載された技術には「陰極箔としてエッチング処理により表面を粗面化した金属箔の表面に、ニッケルのめっき膜、蒸着膜等の非弁作用金属膜を被着形成したものを用い」ることが示されている。
また、引用文献5に記載された技術には、上記相違点1に関して、「電解コンデンサ用陰極材料に関して、表面積を例えば1.5倍、40倍、50倍に拡大粗面化された基材の表面に所定粒径の導電性金属微粒子からなる所定厚さの導電性金属皮膜を被覆形成」する点が示され、引用文献6に記載された技術には「電解コンデンサ用陰極材料に関して、基材表面を所定範囲の凹凸を形成して粗面化することにより、基材の表面拡大率を30倍とし、その凹凸効果を金属皮膜の表面に現出させる一方」、「金属皮膜表面に」「球頭状突出部」を「形成」して「皮膜の表面積を拡大」する点が示されている。
さらに、引用文献7に記載された技術には、本願発明7に関して、「電解コンデンサ用電解液に用いる有機溶媒として、グリセリンを用いる」点が示されている。
(イ)しかしながら、引用文献3、4に記載された技術は「電解液」または「固体電解質」の一方のみを用いた「電解コンデンサ」に係る技術であって、引用発明1のような「ハイブリッド型電解コンデンサ」(固体電解質層と電解液とを含む電解コンデンサ)に関する技術ではないから、引用文献3、4に記載された技術における構成の一部のみを、引用文献3、4とは種類の異なる引用発明1の「ハイブリッド型電解コンデンサ」に適用しようとすることは当業者にとって動機付けられないことである。
(ウ)また、上記相違点2に係る構成は、引用文献5ないし7に記載された技術に示されておらず、また周知の技術事項でもない。
(エ)したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1に記載された発明、及び引用文献3ないし引用文献7に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2)本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7に係る請求項2ないし7は、いずれも請求項1を引用する請求項である。
よって、本願発明2ないし7も、上記相違点2に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明、及び引用文献3ないし引用文献7に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 引用文献2を主引用例とした場合
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明2における「ハイブリッド型電解コンデンサ」が「駆動用電解液を含浸したコンデンサ素子12」を収納していることが、本願発明1における「コンデンサ素子と電解液とを備え」ることに相当する。
(イ)引用発明2における「金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等」の「表面処理」によって形成される層、及び「導電性ポリマーからなる固体電解質層122」が、それぞれ本願発明1における「無機系導電層」、及び「導電性高分子を含む導電性高分子層」に相当する。
したがって、引用発明2における「コンデンサ素子12」が「陽極箔12Aと陰極箔12Bとセパレータ12C以外に、固体電解質層122を有し」、「陰極箔12Bの表面は、固体電解質層122との接触状態をよくするため」「金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行」ない、「陽極箔12Aは表面に誘電体層121を有し、陽極箔12Aと陰極箔12Bはセパレータ12Cを介して積層され巻回され、さらに陽極箔12Aと陰極箔12Bとの間に、導電性ポリマーからなる固体電解質層122が形成され」ていることが、本願発明1における「前記コンデンサ素子は、誘電体層が形成された陽極箔と、前記陽極箔と対向し、かつ無機系導電層が形成された陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に介在し、かつ導電性高分子を含む導電性高分子層と、を備え」ることに相当する。
(ウ)引用発明2における「陰極箔12Bの表面は、固体電解質層122との接触状態をよくするため」「エッチング」「を行う」ことは、これにより陰極箔12Bの表面が粗面化された表面となることは明らかであって、本願発明1における「前記陰極箔は、粗面化された表面を有して」いることに相当する。
(エ)引用発明2における「陰極箔12Bの表面は、固体電解質層122との接触状態をよくするため」「エッチング、金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行う」ことは、これらの表面処理により、「エッチング」により粗面化された表面に「カーボン等の導電粒子」が「付着」することは明らかであって、本願発明1における「前記無機系導電層は、前記陰極箔の前記粗面化された表面に形成されて」いることに相当する。
(オ)本願発明1では「前記陰極箔の前記表面の拡面率は、10~120cm2/cm2であり、前記無機系導電層の厚さは、1nm~100nmであ」るのに対し、引用発明2では、そのような特定はなされていない点で相違する。
(カ)引用発明2における「コンデンサ素子12」が「駆動用電解液を含浸した」ものであることは、本願発明1における「前記電解液は、前記コンデンサ素子に含浸されて」いることに相当する。
(キ)本願発明1における「前記無機系導電層の表面は、凹凸を有し、前記無機系導電層の前記表面の凸部では、前記無機系導電層と前記導電性高分子層とが接触している第1領域が形成され、前記無機系導電層の前記表面の凹部では、前記無機系導電層と前記導電性高分子層とが接触していない第2領域が形成され、前記第2領域において、前記無機系導電層と前記導電性高分子層との間に前記電解液が入り込んで」いるのに対し、引用発明2ではそのような特定がない点で相違する。
(ク)引用発明2における「コンデンサ素子12の陽極箔12Aと陰極箔12Bの間に、固体電解質層122を形成するが、固体電解質層122として、導電性高分子を分散させた分散体溶液にコンデンサ素子12を含浸した後、引き上げ、乾燥させることによって形成する」ことが、本願発明1における「前記導電性高分子層は、前記導電性高分子を含む分散体または溶液を用いて形成されている」ことに相当する。
(ケ)引用発明2における「ハイブリッド型電解コンデンサ」が、本願発明1における「電解コンデンサ」に相当する。
したがって、上記(ア)ないし(ケ)より、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「コンデンサ素子と電解液とを備え、前記コンデンサ素子は、誘電体層が形成された陽極箔と、前記陽極箔と対向し、かつ無機系導電層が形成された陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に介在し、かつ導電性高分子を含む導電性高分子層と、を備え、前記陰極箔は、粗面化された表面を有しており、前記無機系導電層は、前記陰極箔の前記粗面化された表面に形成されており、前記電解液は、前記コンデンサ素子に含浸されており、前記導電性高分子層は、前記導電性高分子を含む分散体または溶液を用いて形成されている、電解コンデンサ。」
(相違点3)
本願発明1では「前記陰極箔の前記表面の拡面率は、10~120cm2/cm2であり、前記無機系導電層の厚さは、1nm~100nmであ」るのに対し、引用発明2では、そのような特定はなされていない点。
(相違点4)
本願発明1における「前記無機系導電層の表面は、凹凸を有し、前記無機系導電層の前記表面の凸部では、前記無機系導電層と前記導電性高分子層とが接触している第1領域が形成され、前記無機系導電層の前記表面の凹部では、前記無機系導電層と前記導電性高分子層とが接触していない第2領域が形成され、前記第2領域において、前記無機系導電層と前記導電性高分子層との間に前記電解液が入り込んで」いるのに対し、引用発明2ではそのような特定がない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、先ず上記相違点4について検討する。
(ア)上記相違点4は前記1(1)アで述べた相違点2と同じであるところ、前記1(1)イで述べたとおり、引用文献3、4に記載された技術は「電解液」または「固体電解質」の一方のみを用いた「電解コンデンサ」に係る技術であって、引用発明2のような「ハイブリッド型電解コンデンサ」(固体電解質層と電解液とを含む電解コンデンサ)に関する技術ではないから、引用文献3、4に記載された技術における構成の一部のみを、引用文献3、4とは種類の異なる引用発明2の「ハイブリッド型電解コンデンサ」に適用しようとすることは当業者にとって動機付けられないことである。
(イ)また、上記相違点4に係る構成は、引用文献5ないし7に記載された技術に示されておらず、また周知の技術事項でもない。
(ウ)したがって、上記相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献2に記載された発明、及び引用文献3ないし引用文献7に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2)本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7に係る請求項2ないし7は、いずれも請求項1を引用する請求項である。
よって、本願発明2ないし7も、上記相違点4に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献2に記載された発明、及び引用文献3ないし引用文献7に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第7 原査定について
本願発明1ないし7が、当業者であっても引用文献1または引用文献2に記載された発明、及び引用文献3ないし引用文献7に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえないことは、上記第6で述べたとおりである。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-006643