2021-005768
真マイケル付加架橋性組成物のための接着促進剤
- 審判番号
- 2021-005768
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-554367外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年05月06日
- 審決日
- 2022年03月09日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、2016年(平成28年)4月18日(優先権主張 2015年4月17日 (US)米国、及び、2015年5月28日 (US)米国)を国際出願日とするものであって、平成31年4月18日に手続補正書が提出され、令和2年4月14日付けで拒絶理由が通知され、同年7月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月24日付けで拒絶査定がされた。これに対して令和3年5月6日に手続補正書が提出されると同時に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由は、「この出願については、令和2年4月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由2-4によって、拒絶をすべきものです。」というものである。
これらの理由のうち、理由2、3は、特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項の規定に基づくものであり、主たる引用文献等として、引用文献1(特表2007-533829号公報)、または、引用文献3(特表2014-529001号公報)を引用するものであり、そのうち、主たる引用文献等として、引用文献3を引用する場合について、以下の備考が示されている。
1 請求項1-5、7、10-12、14、19-22に対する備考
「引用文献3には、真マイケル付加反応により架橋可能な架橋性組成物であって、a.活性メチレン又はメチン中に少なくとも2つの酸性C-Hドナー基を有する成分Aと、b.少なくとも2つの活性不飽和アクセプター基を有する成分Bと、c.酸性X-H基含有化合物(XはN、P、O、S又はC)に由来の塩基性アニオンX-の塩である塩基性成分Cと、d.酸性X’-H基(X’はN、P、O、S又はC)を含む成分Dとを含む架橋性組成物が記載されている。また、当該架橋性組成物は、コーティング組成物として使用できることが記載されている。例えば、マロナートポリエステル樹脂と、Sartmer SR355と、エチルアセトアセテートと、ベンゾトリアゾールと、強塩基の溶液とを含有する架橋性組成物(例5等)が記載されている(特に特許請求の範囲,段落〔0017〕,〔0020〕,〔0022〕,〔0038〕-〔0049〕,実施例を参照されたい。)。ここで、引用文献3に記載のマロナートポリエステル樹脂は本願発明の反応性成分Aに相当し、Sartmer SR355(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)は本願発明の反応性成分Bに相当し、強塩基は本願発明の触媒Cに相当し、ベンゾトリアゾールは本願発明の接着促進剤Pに相当するものと認められる。してみれば、令和2年7月21日付け手続補正書による補正後の請求項1-5,7,10-12,14,19-22に係る発明の発明特定事項と、引用文献1,3に記載された発明の発明特定事項との間に差異はない。出願人は、令和2年7月21日付け意見書において、「・・・引用文献3に記載された架橋性組成物に含まれる成分Dは、架橋反応の反応性を調節するものであり、架橋性組成物の基材表面との接着性とは関係がない。」旨、主張している。出願人の主張について検討すると、・・・引用文献3に記載のベンゾトリアゾールは、本願発明で基材表面に吸着するか反応する官能基Yとして特定している窒素含有複素環を有し、また、マロナートポリエステル樹脂とも反応するので本願発明で規定した官能基Xも有するため、本願発明と同様に、少なからず、樹脂と基板の接着性を改善する蓋然性が高い。したがって、出願人の主張は採用できない。」
2 請求項6、8-9、13、15-18に対する備考
「引用文献3では、ベンゾトリアゾールを用いている。」
第3 本願発明
本願発明は、令和3年5月6日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載されたとおりのものである。そのうち、令和3年5月6日付けの手続補正では補正されなかった請求項1及び13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明13」ともいう。)は、令和2年7月21日に補正された以下のとおりのものである。
「【請求項1】活性化されたメチレン基またはメチン基中の酸性プロトンC-Hを少なくとも2つ有する反応性成分Aと、活性化された不飽和C=C基を少なくとも2つ有する反応性成分Bと、成分Aと成分Bとの間での架橋反応を触媒するための触媒Cと、任意選択で反応性緩和剤Dと、任意選択で有機溶媒Tと、を含む架橋性コーティング組成物の基材表面への接着を改善するための接着促進剤Pの使用であって、前記接着促進剤Pは、成分Aまたは成分Bと反応できる1つ以上の官能基Xまたはその前駆体を含む部分と、アルコキシシラン基ではない前記基材表面に吸着するか、それと反応する、1つ以上の官能基Yまたはその前駆体を含む部分と、を含み、反応性成分Aはマロネートまたはアセトアセテートであり、かつ、反応性成分Bはアクリロイルであり、前記接着促進剤Pの1つ以上の官能基Xは、前記反応性成分Aのマロネートもしくはアセトアセテート、および/または前記反応性成分Bのアクリロイルと反応でき、前記1つ以上の官能基Yは、窒素含有複素環基、またはアルコール、ジオール、トリオール、アミドおよび尿素もしくは置換された尿素から選択される極性官能基である、接着促進剤Pの使用。」
「【請求項13】官能基XおよびYが前記窒素含有複素環基中の部分であり、前記接着促進剤Pがトリアゾール、ベンゾトリアゾールまたはイミダゾールの群から選択される、請求項1の接着促進剤の使用。」
第4 当審の判断
当審は、理由2(引用文献3に基づく新規性欠如)は、依然として解消していないと判断する。その理由は、以下のとおりである。
1 引用文献3に記載されている事項
(1) 引用文献3(特表2014-529001号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 30頁以下に掲載された平成25年11月26日付けの補正書の特許請求の範囲
「【請求項1】以下a.活性メチレンまたは活性メチン基(RMA供与基)中に少なくとも2つの酸性プロトンC-Hを持つ成分A、およびb.少なくとも2つの活性不飽和基(RMA受容基)を持つ成分B、および続きを表示(全18行)c.成分Aと成分Bの間の該RMA反応を活性化できる塩基性触媒を含有するか発生させ得る触媒系C、を含み、d.以下の特徴該架橋性組成物はさらに、同じく触媒Cの該作用で成分Bと反応可能なマイケル付加供与体であるX?H基含有成分Dを含み、式中、Xは、N、P、O、Sであるか、またはXは、酸性メチル(CH3)基の一部分としてのCである、を有する、架橋性組成物。・・・【請求項9】成分Dは、酸性アザ化合物(XがNである)であり、好ましくはAr-NH-(C=O)-基、-(C=O)-NH-(C=O)-基の一部分として、または-NH-(O=S=O)-基の一部分として、またはN-H基の窒素が複素環に含まれている複素環の一部分として該N-Hを含有する分子を含む酸性アザ化合物である、請求項1から7のいずれか1項に記載の架橋性組成物。・・・【請求項13】成分Dは、N-H基含有複素環、好ましくは置換または無置換の、トリアゾール、ピラゾール、またはイミダゾール、好ましくは1,2,4-トリアゾール、 ベンゾトリアゾール 、または 2-メチル-4-ニトロイミダゾールである、請求項9のいずれかに記載の架橋性組成物。・・・【請求項23】RMA架橋性組成物のオープンタイムを改善するための、該得られる硬化組成物、特に塗装の外観および硬度を改善するための、該架橋性組成物への添加剤としての、随意に成分A2と組み合わせての、請求項1から22のいずれか1項に記載の成分Dの使用。」
イ 発明の詳細な説明の項
「【0054】本発明はまた、上記のとおり、RMA架橋性組成物のオープンタイムを改善するための、および得られる硬化組成物、特に塗装の外観および硬度を改善するための、架橋性組成物への添加剤としての、随意に成分A2と組み合わせての、成分Dの使用に関する。【0055】本発明はまた、塗料組成物、膜、またはインクの製造方法における本発明による架橋組成物の使用、および本発明による架橋組成物を含む塗料組成物、インク、または膜、ならびにさらに特定用途向き添加剤、例えば、1種以上の塗装添加剤(顔料、共結合剤、溶媒など)にも関する。【0056】本発明は、塗料を調製するための、本明細書中記載されるとおりの架橋性組成物の使用にも関し、本使用において、好ましくは成分Dは、この塗料において、成分Dを含まない同一塗料と比較した場合に、変換レベルが30%に達するのにかかる時間を、少なくとも3分、好ましくは5分、より好ましくは10分、好ましくは60分未満、より好ましくは30分未満長くするものである。【0057】上記の本発明のより全般的な説明は、以下の具体的な実施例によりさらに説明されるが、これらは例示にすぎない。」
「【0064】噴射した着色塗料の光学評価:塗料を、デビルビススプレーガンにノズルFF-1.4を付け、気圧3.5barで噴射した。塗料は、噴射されて55×10cmのスチールパネルの表面全体を覆う連続層を形成した。次の層は、右端から10cm空けて噴射して形成させた。右に動きながら複数の層を重ねていったことで、左から右へと層の厚みの勾配が構築された。各塗膜は、23℃、45%RHで水平なまま乾燥させた。層の厚みは、フィッシャー・インストルメンツ社のPermascopeMP40E?Sで測定した。層の厚みが100μのところで、デジタルカメラを取り付けたオリンパスSZX10顕微鏡(倍率1倍)で画像を撮影した。」
「【0066】実験で使用した化学物質について以下の略称を用いた:DiTMPTAはジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリラート(Aldrichから入手(MW=466g/mol))であるか、またはSartomerSR355(Sartomerから購入)を用いた;Disperbyk163は、Bykが市販している分散剤である;Byk310および315は、Bykが市販している添加剤である;Kronos2310は、Kronosが市販しているTiO2顔料であり、TBAHは、水酸化テトラブチルアンモニウムであり、BuAcは酢酸ブチルであり、MEKはメチルエチルケトン(2-ブタノン)であり;EtAcAcはアセト酢酸エチルであり;DECは炭酸ジエチルであり;IPAはイソプロパノールであり;RTは室温である。【0067】マロン酸ポリエステルAの調製ラシヒリングを詰めた蒸留塔を取り付けた反応器に、ネオペンチルグリコール17.31mol、ヘキサヒドロフタル酸無水物8.03mol、およびブチルスズ酸0.0047molを入れた。窒素下240℃で、混合物を重合させて0.2mgKOH/gの酸価にした。混合物を130℃に冷却し、マロン酸ジエチル10.44molを加えた。反応混合物を170℃に加熱し、エタノールを減圧除去した。ほぼ無色の物質を冷却し、酢酸ブチル420gで希釈して、固形分90%とした。最終的に得られる樹脂は、酸価が0.3mgKOH/g固形分、OH価が20mgKOH/g固形分、重量平均分子量が3400Daであった。【0068】触媒溶液CTBAH溶液(40%水溶液)59.4gをDEC13.5g(RTで一晩反応させる)、共溶媒としてのイソプロパノール14.5gと反応させ、続いて対応するエトカーボネート(ethocarbonate)化学種を発現させることにより、触媒溶液を調製した。滴定から、触媒のブロック化が完了したこと、およびブロックされた塩基の濃度が0.83meq/g溶液であることが示された。」
「【0071】比較例配合物1、実施例配合物1~4マロン酸基供与体樹脂A、アクリロイル供与体樹脂としてのDiTMPTA、および提示する量のスクシンイミドを基に配合物を調製し、MEK/BuAcの体積比率1:1混合物で希釈して、粘度を160mPasにした。希釈物を、一定量の触媒溶液C1と混合した。表Aに、組成全体の詳細を示す。触媒量は、50μeq/g固形分であり、水のレベルは1.8重量%であり、イソプロパノールは0.7重量%であり、エタノールのレベルは0.2重量%と見積もられる。【0072】表A【0073】【表1】[図:0001386910000001.jpg]」
「【0084】実施例8は、上記(例えば、5~7)と同様に調製および評価を行なった。組成および結果を以下の表D(量はグラム単位)に示す。1,2,4-トリアゾールがさらに存在すると(実施例6と比較した場合)、他の利点はそのままに、可使時間が顕著に改善されることが見てとれる。【0085】表D【0086】【表4】[図:0001386910000002.jpg]」
2 引用発明
引用文献3には、「RMA架橋性組成物のオープンタイムを改善するための、該得られる硬化組成物、特に塗装の外観および硬度を改善するための、該架橋性組成物への添加剤としての、随意に成分A2と組み合わせての、請求項1から22のいずれか1項に記載の成分Dの使用。」(【請求項23】)の発明が記載されており、その「請求項1から22のいずれか1項に記載の成分D」として、「トリアゾール、ピラゾール、またはイミダゾール、好ましくは1,2,4-トリアゾール、 ベンゾトリアゾール 、または 2-メチル-4-ニトロイミダゾール」(【請求項13】)が記載されている。
また、その「RMA架橋性組成物」とは、例えば【請求項1】に記載されている、「a.活性メチレンまたは活性メチン基(RMA供与基)中に少なくとも2つの酸性プロトンC-Hを持つ成分A」、および「b.少なくとも2つの活性不飽和基(RMA受容基)を持つ成分B」、および「c.成分Aと成分Bの間の該RMA反応を活性化できる塩基性触媒を含有するか発生させ得る触媒系C」、を含み、さらに、同じく触媒Cの該作用で成分Bと反応可能なマイケル付加供与体であるX-H基含有成分Dを含み、式中、Xは、N、P、O、Sであるか、またはXは、酸性メチル(CH3)基の一部分としてのCである、架橋性組成物。」であると認められる。
そうすると、引用文献3には以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「RMA架橋性組成物のオープンタイムを改善するための、該得られる硬化組成物、特に塗装の外観および硬度を改善するための、該架橋性組成物への添加剤としての、随意に成分A2と組み合わせての、成分Dの使用であって、該架橋性組成物が、a.活性メチレンまたは活性メチン基(RMA供与基)中に少なくとも2つの酸性プロトンC-Hを持つ成分A、b.少なくとも2つの活性不飽和基(RMA受容基)を持つ成分B、c.成分Aと成分Bの間の該RMA反応を活性化できる塩基性触媒を含有するか発生させ得る触媒系C、を含み、さらに、同じく触媒Cの該作用で成分Bと反応可能なマイケル付加供与体であるX-H基含有成分Dを含み、式中、Xは、N、P、O、Sであるか、またはXは、酸性メチル(CH3)基の一部分としてのCである、架橋性組成物であり、該成分Dが、トリアゾール、 ピラゾール 、または イミダゾール、好ましくは 1,2,4-トリアゾール、 ベンゾトリアゾール 、または 2-メチル-4-ニトロイミダゾールである、使用。」
3 検討
引用発明3は、「成分D」について選択肢(トリアゾール、 ピラゾール 、または イミダゾール、好ましくは 1,2,4-トリアゾール、 ベンゾトリアゾール 、または 2-メチル-4-ニトロイミダゾールである)を備える発明であるから、引用発明3において、「成分D」の選択肢として「トリアゾール」を選択した場合の発明と、本願発明1を対比する。
引用発明3の「活性メチレンまたは活性メチン基(RMA供与基)中に少なくとも2つの酸性プロトンC-Hを持つ成分A」は、本願発明1の「活性化されたメチレン基またはメチン基中の酸性プロトンC-Hを少なくとも2つ有する反応性成分A」に相当する。
引用発明3の「少なくとも2つの活性不飽和基(RMA受容基)を持つ成分B」は、本願発明1の「活性化された不飽和C=C基を少なくとも2つ有する反応性成分B」に相当する。
引用発明3の「成分Aと成分Bの間の該RMA反応を活性化できる塩基性触媒を含有するか発生させ得る触媒系C」は、本願発明1の「成分Aと成分Bとの間での架橋反応を触媒するための触媒C」に相当する。
本願発明1の「接着促進剤P」について、「接着促進剤Pは、成分Aまたは成分Bと反応できる1つ以上の官能基Xまたはその前駆体を含む部分と、アルコキシシラン基ではない前記基材表面に吸着するか、それと反応する、1つ以上の官能基Yまたはその前駆体を含む部分と、を含み、反応性成分Aはマロネートまたはアセトアセテートであり、かつ、反応性成分Bはアクリロイルであり、前記接着促進剤Pの1つ以上の官能基Xは、前記反応性成分Aのマロネートもしくはアセトアセテート、および/または前記反応性成分Bのアクリロイルと反応でき、前記1つ以上の官能基Yは、窒素含有複素環基、またはアルコール、ジオール、トリオール、アミドおよび尿素もしくは置換された尿素から選択される極性官能基である」と特定されているものであるが、本願発明13が本願発明1を引用する発明であることを勘案すると、その具体的な態様として、「接着促進剤P」が、トリアゾール、ベンゾトリアゾールまたはイミダゾールの群から選択されたものである態様を含むものである。
また、引用発明3の「触媒Cの該作用で成分Bと反応可能なマイケル付加供与体であるX-H基含有成分D」であって、「式中、Xは、N、P、O、Sであるか、またはXは、酸性メチル(CH3)基の一部分としてのCである成分D」は、「トリアゾール」である。
そうすると、引用発明3の「触媒Cの該作用で成分Bと反応可能なマイケル付加供与体であるX-H基含有成分D」であって、「式中、Xは、N、P、O、Sであるか、またはXは、酸性メチル(CH3)基の一部分としてのCである」、及び、「該成分Dが、トリアゾールである」は、その具体的な物質が「トリアゾール」である点で、本願発明1の接着促進剤Pにおける「成分Aまたは成分Bと反応できる1つ以上の官能基Xまたはその前駆体を含む部分と、アルコキシシラン基ではない前記基材表面に吸着するか、それと反応する、1つ以上の官能基Yまたはその前駆体を含む部分と、を含み、反応性成分Aはマロネートまたはアセトアセテートであり、かつ、反応性成分Bはアクリロイルであり」、「1つ以上の官能基Xは、前記反応性成分Aのマロネートもしくはアセトアセテート、および/または前記反応性成分Bのアクリロイルと反応でき、前記1つ以上の官能基Yは、窒素含有複素環基、またはアルコール、ジオール、トリオール、アミドおよび尿素もしくは置換された尿素から選択される極性官能基である」に相当する。
さらに、本願発明1の「接着促進剤Pの使用」は、「架橋性コーティング組成物の基材表面への接着を改善するため」のものであるから、「架橋性コーティング組成物」あるいは「基材表面」に対して使用するものであると解されるが、本願発明1は、当該「使用」の際、本願発明1の「接着促進剤P」をどのような方法(例えば、架橋性コーティング組成物に添加する方法)や手段(例えば、噴霧器で基材表面に噴霧するなど)で使用するのかを特定するための事項を一切備えていないから、手段や方法はいかようであってもよいものであり、架橋性コーティング組成物に添加剤として添加する態様を含むと認められ、かつ、発明の詳細な説明には、架橋性コーティング組成物にトリアゾールを添加している実施例が記載されている。
そうすると、本願発明1の「接着促進剤P」は、架橋性コーティング組成物に含まれる成分Aまたは成分Bと反応するものであって、架橋性コーティング組成物に添加される添加剤といえることから、添加される具体的な物質として「トリアゾール」を使用するものである限りにおいて、引用発明3の「該架橋性組成物への添加剤としての成分Dの使用」と、本願発明1の「接着促進剤Pの使用」とは、「添加剤の使用」という事項において共通する。
本願発明1の「任意選択で反応性緩和剤Dと、任意選択で有機溶媒Tと、を含む」は、引用発明3との対比において相違点とならない。
そうすると、本願発明1と引用発明3の一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「活性化されたメチレン基またはメチン基中の酸性プロトンC-Hを少なくとも2つ有する反応性成分Aと、活性化された不飽和C=C基を少なくとも2つ有する反応性成分Bと、成分Aと成分Bとの間での架橋反応を触媒するための触媒Cと、任意選択で反応性緩和剤Dと、任意選択で有機溶媒Tと、を含む架橋性コーティング組成物のための添加剤の使用であって、前記添加剤は、成分Aまたは成分Bと反応できる1つ以上の官能基Xまたはその前駆体を含む部分と、アルコキシシラン基ではない前記基材表面に吸着するか、それと反応する、1つ以上の官能基Yまたはその前駆体を含む部分と、を含み、反応性成分Aはマロネートまたはアセトアセテートであり、かつ、反応性成分Bはアクリロイルであり、前記添加剤の1つ以上の官能基Xは、前記反応性成分Aのマロネートもしくはアセトアセテート、および/または前記反応性成分Bのアクリロイルと反応でき、前記1つ以上の官能基Yは、窒素含有複素環基、またはアルコール、ジオール、トリオール、アミドおよび尿素もしくは置換された尿素から選択される極性官能基である、添加剤の使用。」
<相違点>
添加剤の使用について、本願発明1は、「接着促進剤Pの使用」により「架橋性コーティング組成物の基材表面への接着を改善する」ものであるのに対し、引用発明3は、「成分Dの使用」により「RMA架橋性組成物のオープンタイムを改善するための、該得られる硬化組成物、特に塗装の外観および硬度を改善する」ものである点
上記相違点について検討する。
上述のとおり、本願発明1の「接着促進剤P」と引用発明3の「成分D」は、いずれも、その具体的な物質が「トリアゾール」である点で一致しており、また、本願発明1の「接着促進剤P」の使用対象である「架橋性コーティング組成物」と引用発明3の「成分D」の使用対象である「RMA架橋性組成物」とにも組成物として差異がない。
また、本願発明1の「接着促進剤P」と引用発明3の「成分D」の具体的な使用形態について検討すると、本願発明1の「接着促進剤P」は、架橋性コーティング組成物に添加するものであり、引用発明3の「成分Dの使用」は、「硬化組成物」としての「塗装」を得るための「架橋性組成物」に添加するものあって、いずれも架橋性コーティング組成物(塗装を得るための架橋性組成物)に用いるものであるから、その具体的な使用形態においても両者を区別することができない。
そして、引用発明3の「成分Dの使用」は、「特に塗装の外観および硬度を改善するため」のものであり、当然、塗装が基材に十分に接着することを前提とするものであると解されるところ、塗装を形成する基材として「スチールパネル」(引用文献3の【0064】)が想定されていることは明らかであって、「トリアゾール」などの複素環を有する化合物が金属表面に吸着することは周知である。そうすると、引用発明3の「成分D」(トリアゾール)が接着を促進する機能を備えることは、当業者であればその旨の明記がなくても理解できる事項であるから、「接着促進剤」という用途限定が、本願発明1を特定するための意味を有しているものとは認められない。
以上のとおりであるから、本願発明1の「架橋性コーティング組成物の基材表面への接着を改善するための」という限定、及び、引用発明3の「RMA架橋性組成物のオープンタイムを改善するための、該得られる硬化組成物、特に塗装の外観および硬度を改善するための、該架橋性組成物への添加剤としての、随意に成分A2と組み合わせての」という限定は、その限定の内容(具体的な物質や使用形態や使用する対象)が一致していると認められる。また、引用発明3の「成分D」(トリアゾール)が接着促進剤としての機能を備えることは、当業者であればその旨の明記がなくても理解できる事項であるともいえる。
したがって、上記相違点は実質的なものではないと認められる。
そうすると、引用発明3は、本願発明1を特定するための全ての事項を備えていて実質的な相違点がないから、本願発明1は、引用文献3に記載された発明である。
4 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、「しかし、引用文献3には、そこに記載されたベンゾトリアゾールが接着促進という作用効果を有していることは記載も示唆もされていません。」(審判請求書8頁下から4~3行)」と主張している。
しかしながら、ベンゾトリアゾールが接着促進という作用効果を有していること自体は、ベンゾトリアゾールが有している固有の性質であって、特許請求の範囲に明記しているか否かに左右されるものではない。また、「使用」の発明として検討しても、これを特定する事項である、使用する対象となる「組成物」、使用する物質、使用形態のいずれにおいてもなんら相違点が見いだせないことは上記3に説示したとおりである。
そうすると、「ベンゾトリアゾールが接着促進という作用効果を有している」という審判請求人の発見は、引用発明3が有していたが引用文献3には記載されていなかった作用効果に基づいて、その記載(表現)を単に変更しただけのものに該当するのであって、当該変更に基づく相違点は実質的なものではないと認められる。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項、及び、その余の理由についてさらに検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-005768