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特許拒絶査定不服審判

2018-013324

共役複素芳香環重合体を含む電気活性重合体溶液または塗膜を形成する組成物および方法、電気活性重合体溶液、電気活性塗膜を含むコンデンサ(キャパシタ)および帯電防止体、および固体電解質コンデンサとその製造方法

審判番号
2018-013324
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-564365外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年10月04日
審決日
2020年01月07日
公報発行日
2020年07月31日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (C09D) / P18 .121-Z (C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016-564365「共役複素芳香環重合体を含む電気活性重合体溶液または塗膜を形成する組成物および方法、電気活性重合体溶液、電気活性塗膜を含むコンデンサ(キャパシタ)および帯電防止体、および固体電解質コンデンサとその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月23日国際公開、WO2015/192596、平成29年 3月30日国内公表、特表2017-508857〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2014年11月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年6月17日 (US)米国 2014年10月8日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年7月14日に手続補正書及び上申書が提出され、平成29年9月5日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年12月19日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年5月29日付けで拒絶査定され、これに対し、同年10月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和元年5月8日に上申書が提出され、同年8月2日付けで当審から拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年12月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。なお、上記当審からの拒絶理由の通知においては、原査定の理由1、2についての判断を留保した。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし15に係る発明は、令和元年12月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「  【請求項1】 モノマーとしての少なくとも1つの式(1)の化合物と、 【化1】 式中、Xが、S、O、Se、Te、PR2およびNR2からなる群より選択され、R2が、水素、置換および無置換のアルキル基、置換および無置換のアリール基、置換および無置換の複素アリール基、置換および無置換のアルカノイル基、および置換および無置換のアリーロイル基からなる群より選択され、 Yが、水素(H)、または共役酸(HY)のpKaが30よりも少ない良い脱離基Y-の前駆体であり、 Zが、水素(H)、シリル、または共役酸(HZ)のpKaが30よりも少ない良い脱離基Z-の前駆体であり、 bが、0、1または2であり、 各R1が、置換基であり、b=2の時、2つのR1が、同じか、または異なり、結合して環を形成することができ、 前記少なくとも1つの式(1)の化合物が、少なくとも1つのZ=HおよびY≠Hの式(1)の化合物を含み、 プロトン酸、ポリマー酸、および非遷移金属ルイス酸からなる群より選択される重合触媒としての酸と、 溶媒、重合遅延剤、高分子バインダ、ドーパント、誘電体層保護剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、架橋剤、界面活性剤、および分散安定剤からなる群より選択される少なくとも1つの機能性成分と、 を含み、 前記少なくとも1つの機能性成分が、前記モノマーよりも強い塩基性を有する少なくとも1つのルイス塩基を含む重合遅延剤を少なくとも含有し、 前記少なくとも1つのルイス塩基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびリン原子からなる群より選択される、孤立電子対を有する少なくとも1つの原子を含有し、 前記少なくとも1つのルイス塩基がカルボネートであるとき、前記カルボネートは、ジメチルカルボネート、エチレンカルボネート、およびプロピレンカルボネートからなる群より選択される、 電気活性塗膜を形成するための組成物。」 第3 原査定の理由の概要 原査定の理由は、平成29年9月5日付け拒絶理由通知書に記載された理由1及び2であって、要するに、上記本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないし、また、本願発明は、当該刊行物1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 刊行物1:.米国特許出願公開第2014/0121326号明細書(原査定の引用文献1。) 第4 当審の判断 当審は、平成30年10月4日付けの審判請求書、令和元年5月8日付けの上申書及び令和元年12月6日付けの意見書を斟酌しても、上記した原査定の拒絶の理由が依然として妥当すると判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 刊行物及びその記載事項 (1)刊行物1:米国特許出願公開第2014/0121326号明細書(原査定の引用文献1) 原査定で引用された本願優先日前に頒布された刊行物1には次の記載がある。 なお、摘記事項の後ろに当審の仮訳を掲載した。 (1a)「[0016] In a method for forming a conjugated heteroaromatic polymer of this invention, at least one compound of formula (1) is polymerized using an acid as a catalyst, wherein X is selected from the group consisting of S, O, Se, Te, PR2 and NR2, wherein R2 is selected from the group consisting of hydrogen, and substituted or unsubstituted alkyl, aryl, heteroaryl, alkanoyl, and aryloyl groups. Y is hydrogen (H), or a precursor of a good leaving group Y− whose conjugate acid (HY) has a pKa of less than 30. Z is hydrogen (H), silyl, or a precursor of good leaving group Z- whose conjugate acid (HZ) has a pKa of less than 30. The value b is 0, 1 or 2. Each R1 is a substituent. When b=2, the two R1 are the same or different and may joint together to form a substituted or unsubstituted aliphatic, aromatic, or heteroaromatic ring. The at least one compound of formula (1) being polymerized comprises at least one compound of formula (1) with Z=H and Y≠H. [0017] The inventors also found that an oligomer or polymer formed by polymerizing a compound of formula (1) with Z=H and Y≠H as above also has polymerization reactivity. Accordingly, a derivative method for forming a conjugated heteroaromatic polymer of this invention is provided, wherein at least one compound of formula (2) is polymerized using an acid as a catalyst, wherein X, Y and Z are defined as above. Ar is a substituted or unsubstituted, mono- or poly-nuclear, aryl or heteroaryl ring. The values m, o and p are each independently an integer equal to or greater than 0, with a proviso that m+p≧1. Each k is independently 0, 1 or 2. Each R5 is a substituent, wherein any two R5 on the same ring or on two neighboring rings, or R5 and a substituent group on a neighboring Ar ring, may join together to form a substituted or unsubstituted aliphatic, aromatic, or heteroaromatic ring. The at least one compound of formula (2) being polymerized comprises at least one compound of formula (2) with Z=H and Y≠H.」 [0016] 本発明の共役複素芳香環重合体の形成方法において、少なくとも1つの式(1)の化合物は、酸を触媒として使用することにより重合される。 式中、Xは、S、O、Se、Te、PR2およびNR2からなる群より選択され、R2は、水素、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素アリール基、置換または無置換のアルカノイル基、および置換または無置換のアリーロイル基からなる群より選択される。Yは、水素(H)、または共役酸(HY)のpKaが30よりも少ない良い脱離基Y-の前駆体である。Zは、水素(H)、シリル、または共役酸(HZ)のpKaが30よりも少ない良い脱離基Z-の前駆体である。値bは、0、1または2である。各R1は、置換基である。b=2の時、2つのR1は、同じか、または異なり、結合して置換または無置換の脂肪環、芳香環、または複素芳香環を形成することができ、これらの環は窒素、硫黄、スルフィニル、スルホニル、リン、セレン、エステル、カルボニル、酸素等から選択される1つ以上の複素原子および/または2価基を含んでもよい。重合される少なくとも1つの式(1)の化合物は、少なくとも1つのZ=HおよびY≠Hの式(1)の化合物を含む。 [0017] 発明者は、上述したZ=HおよびY≠Hの式(1)の化合物を重合することによって形成されたオリゴマーまたは重合体が重合反応性を有することも発見した。したがって、本発明は共役複素芳香環重合体を形成する派生的な方法を提供し、少なくとも1つの式(2)の化合物は、酸を触媒として使用することにより重合される。 式中、X、YおよびZは、上記で定義した通りである。Arは、置換または無置換の単核または多核のアリール環または複素アリール環である。値m、oおよびpは、それぞれ独立して、0またはそれ以上の整数であるが、m+p≧1である。各kは、独立して、0、1または2である。各R5は、置換基であり、同じ環または2つの隣接する環上の任意の2つのR5、あるいはR5と隣接するAr環上の置換基は、結合して置換または無置換の脂肪環、芳香環、または複素芳香環を形成することができ、これらの環は窒素、硫黄、スルフィニル、スルホニル、リン、セレン、エステル、カルボニル、酸素等から選択される1つ以上の複素原子および/または2価基を含んでもよい。重合される少なくとも1つの式(2)の化合物は、少なくとも1つのZ=HおよびY≠Hの式(2)の化合物を含む。 (1b)「[0032] The group Y in the above formulae (1)-(2) is hydrogen (H), or a precursor of a good leaving group Y- whose conjugate acid (HY) has a pKa of less than 30, preferably less than about 20, more preferably less than about 12, most preferably less than about 6. The preferred leaving group Y is selected from the group consisting of iodide, bromide, chloride, fluoride, sulfonates, phosphonates, carboxylates, and carbonates. The more preferred leaving group Y is selected from the group consisting of iodide, bromide, chloride, and fluoride. [0033] The group Z in the above formulae (1) and (2) is hydrogen (H), silyl, or a precursor of good leaving group Z- whose conjugate acid (HZ) has a pKa of less than 30. The preferred Z group is selected from the group consisting of hydrogen, silyl, iodide, bromide, chloride, fluoride, sulfonates, phosphonates, carboxylates, and carbonates. The most preferred Z group is selected from the group consisting of hydrogen, silyl, iodide, bromide, chloride, and fluoride.」 [0032]  上述した式(1)~(2)中のYは、水素(H)、または共役酸(HY)のpKaが30よりも少なく、好ましくは、20より少なく、より好ましくは、12より少なく、最も好ましくは、6よりも少ない良い脱離基Y-の前駆体である。好ましい脱離基Yは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、スルホン酸陰イオン、ホスホン酸陰イオン、カルボン酸陰イオン、シアノ、ニトロ、炭酸陰イオン、アルコキシ、およびアリールオキシからなる群より選択される。より好ましい脱離基Yは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、およびアリールオキシからなる群より選択される。 [0033]  上述した式(1)および(2)中のZは、水素(H)、シリル、または共役酸(HZ)のpKaが30よりも少ない良い脱離基Z-の前駆体である。好ましいZは、水素、シリル、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、スルホン酸陰イオン、ホスホン酸陰イオン、カルボン酸陰イオン、シアノ、ニトロ、炭酸陰イオン、アルコキシ、およびアリールオキシからなる群より選択される。最も好ましいZは、水素、シリル、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、およびアリールオキシからなる群より選択される。 (1c)「[0124] ・・・ Example Using Polymeric Acid Example 27 Preparation of PEDOT Film or Coating by In-Situ Polymerization of BEDOT Using Polymeric Acid, PSS, as the Sole Catalyst [0125] To a 25 mL cosolvent of acetone/H2O (v/v=1:1), a 5 mL 18 wt % aqueous solution of poly(styrenesulfonic acid) (PSS; d=1.11; Mw=75000) and a 1 mL THF solution containing 0.1 g of 2-bromo-3,4-ethylenedioxythiophene (BEDOT; 0.45 mmol) were added sequentially. After stirring for 5 minutes, the resultant colorless and transparent homogeneous solution was pour to a petri dish and cast into a free standing film in a vacuum oven. During the casting process, the colorless monomer solution turned into yellowish oligomer solution in ca. 2 h, and eventually resulting in a bluish-grey polymer film. The obtained film has a thickness of ca. 2 mm thick and a conductivity of ca. 0.07 S/cm, and can be readily dissolved into some polar solvents like water, methanol, and ethanol. Thin PEDOT coatings with great adhesion to the glass substrate and having much lighter bluish-grey coloring have also been successfully prepared, using a much smaller fraction of the above reaction solution.」 [0124] ・・・ ポリマー酸を使用する実施例 実施例27 ポリマー酸であるPSSを単一触媒として使用し、BEDOTのその場(in-situ)重合による、PEDOT膜または塗膜(coating)の作製 [0125] 25mlのアセトン/H2O(v/v=1:1)の共溶媒に、順番に5ml、18wt%のポリ(スチレンスルホン酸)(PSS;d=1.11;Mw=75000)の水溶液、および0.1gの2-ブロモ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(BEDOT;0.45mmol)を含有する1mlのTHFを添加した。5分間攪拌した後、得られた無色透明の均一溶液をペトリ皿(petri dish)に流し入れ、真空オーブン内で自立膜に鋳造した。鋳造プロセスの間、無色のモノマー溶液は、約2時間で黄色がかったオリゴマー溶液に変わり、最後に青色がかった灰色の重合体膜になった。得られた膜は、厚さが約2mm、導電率が約0.07S/cmであり、水、メタノール、およびエタノール等のいくつかの極性溶媒中に溶解しやすい。上述した反応液のごく小さな部分を使用して、ガラス基板に対し優れた粘着性を有し、かなり明るい青色がかった灰色の薄いPEDOT塗膜の作製にも成功した。 2 刊行物に記載された発明について 刊行物1の実施例27には、アセトン/H2O(v/v=1:1)の共溶媒に、順番に触媒であるポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)の水溶液、および2-ブロモ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(BEDOT)を含有するTHFを添加し、重合して得た重合体膜は、導電率が約0.07S/cmであったことが、記載されていることから(摘記1c参照)、「モノマーとしてのBEDOTを含み、 ポリマー酸である重合触媒としてのPSSと、 アセトン、H2O及びTHFを含む、 導電率が約0.07S/cmの重合体膜を形成するための組成物。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 3 対比・判断 (1)引用発明との対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「BEDOT」は「2-ブロモ-3,4-エチレンジオキシチオフェン」であるから、本願発明の「式(1)の化合物」において、XがSであり、YがBrであり、ZがHであり、bが2であり、R1が結合して環を形成したものである。また、引用発明の「BEDOT」の「Br」は、共役酸(HY)のpKaが30よりも少ない良い脱離基Y-の前駆体である(摘記1b参照)。したがって、引用発明の「BEDOT」は、本願発明の「モノマーとしての少なくとも1つの式(1)の化合物と、 【化1】 式中、Xが、S、O、Se、Te、PR2およびNR2からなる群より選択され、R2が、水素、置換および無置換のアルキル基、置換および無置換のアリール基、置換および無置換の複素アリール基、置換および無置換のアルカノイル基、および置換および無置換のアリーロイル基からなる群より選択され、 Yが、水素(H)、または共役酸(HY)のpKaが30よりも少ない良い脱離基Y-の前駆体であり、 Zが、水素(H)、シリル、または共役酸(HZ)のpKaが30よりも少ない良い脱離基Z-の前駆体であり、 bが、0、1または2であり、 各R1が、置換基であり、b=2の時、2つのR1が、同じか、または異なり、結合して環を形成することができ、 前記少なくとも1つの式(1)の化合物が、少なくとも1つのZ=HおよびY≠Hの式(1)の化合物」に相当する。 引用発明の「ポリマー酸である重合触媒としてのPSS」は、本願発明の「プロトン酸、ポリマー酸、および非遷移金属ルイス酸からなる群より選択される重合触媒としての酸」に相当する。 引用発明の「導電率が約0.07S/cmの重合体膜」は、本願発明の「電気活性塗膜」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明は、「モノマーとしての少なくとも1つの式(1)の化合物と、 【化1】 式中、Xが、S、O、Se、Te、PR2およびNR2からなる群より選択され、R2が、水素、置換および無置換のアルキル基、置換および無置換のアリール基、置換および無置換の複素アリール基、置換および無置換のアルカノイル基、および置換および無置換のアリーロイル基からなる群より選択され、 Yが、水素(H)、または共役酸(HY)のpKaが30よりも少ない良い脱離基Y-の前駆体であり、 Zが、水素(H)、シリル、または共役酸(HZ)のpKaが30よりも少ない良い脱離基Z-の前駆体であり、 bが、0、1または2であり、 各R1が、置換基であり、b=2の時、2つのR1が、同じか、または異なり、結合して環を形成することができ、 前記少なくとも1つの式(1)の化合物が、少なくとも1つのZ=HおよびY≠Hの式(1)の化合物を含み、 プロトン酸、ポリマー酸、および非遷移金属ルイス酸からなる群より選択される重合触媒としての酸とを含む、 電気活性塗膜を形成するための組成物。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点> 本願発明は、「溶媒、重合遅延剤、高分子バインダ、ドーパント、誘電体層保護剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、架橋剤、界面活性剤、および分散安定剤からなる群より選択される少なくとも1つの機能性成分と、 を含み、 前記少なくとも1つの機能性成分が、前記モノマーよりも強い塩基性を有する少なくとも1つのルイス塩基を含む重合遅延剤を少なくとも含有し、 前記少なくとも1つのルイス塩基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびリン原子からなる群より選択される、孤立電子対を有する少なくとも1つの原子を含有し、 前記少なくとも1つのルイス塩基がカルボネートであるとき、前記カルボネートは、ジメチルカルボネート、エチレンカルボネート、およびプロピレンカルボネートからなる群より選択される」と特定されているのに対し、引用発明は、このような特定を備えていない点。 (2)相違点についての検討 相違点について検討する。 本願明細書の【0117】には、「重合遅延剤は、モノマーよりも強い塩基性を有するルイス塩基を含む。好ましい実施形態において、ルイス塩基は、孤立電子対を有する少なくとも1つの原子を含有する化合物であり、孤立電子対を有する少なくとも1つの原子は、好ましくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびリン原子からなる群より選択される。有効な酸素含有ルイス塩基の例は、H2O;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール 、イソブタノール、t-ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール等のアルコール;アセトン、エチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘキサフルオロアセトン、アセチルアセトン等のケトン;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル 、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル;メチルアセテート、エチルアセテート、メチルベンゾエート、フェニルベンゾエート等のエステル;ジメチルカルボネート、エチレンカルボネート、プロピレンカルボネート等のカルボネート;ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン等のシロキサン;およびポリエーテル、ポリアセタール、ポリエステル、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等の酸素含有重合体が挙げられる。」と記載され、重合遅延剤として、モノマーよりも強い塩基性を有し、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびリン原子からなる群より選択される、孤立電子対を有する少なくとも1つの原子を含有するルイス塩基が記載され、そのようなルイス塩基としてアセトン、H2O及びTHFが、記載されている。 そうすると、引用発明の「アセトン、H2O及びTHF」は、本願発明の「重合遅延剤」に相当するから、上記の相違点は実質的なものではない。 なお、引用発明は、本願明細書の実施例27と同じである。 また、仮にこの相違点が実質的なものであるとしても、引用発明の「アセトン、H2O及びTHF」を本願発明のように「重合遅延剤」と言い換える程度は容易想到の範疇の事項にすぎない。 4 審判請求人の主張 (1)審判請求人は、上記審判請求書において、次の点を主張している。 引用文献1の実施例27は、水、アセトンまたはTHFによる重合遅延効果を教示しておらず、重合遅延効果に関連する利点も示していない。 (2)審判請求人は、上記上申書において、次の点を主張している。 引用文献1の実施例27で使用される水、THFまたはアセトンの化学的役割は、重合遅延剤として考慮されるべきではなく、引用文献1の実施例27も重合遅延剤として水、THFまたはアセトンを使用することを教示していない。 (3)審判請求人は、令和元年12月6日付け意見書において、次の点を主張している。 引用文献1は、本出願の筆頭発明者であるChien-Chung Han氏によるものであるが、引用文献1の実施例27は、アセトン、THFおよびH2Oを「重合遅延剤」として使用することを開示または教示するものではない。 すなわち、Chien-Chung Han氏は、引用文献1の出願時においては、アセトン、THFおよびH2Oの重合遅延効果の存在は全く認識していなかった。つまり、引用文献1の酸触媒を使用した重合系において、重合遅延効果を得ようとする概念は、本出願がなされるまでは提供されなかった。 (4)しかし、上記のとおり、引用文献1(刊行物1)に記載された引用発明のアセトン、H2O及びTHFは、本願発明の「重合遅延剤」と区別できないものであるから、当該引用発明と本願発明は差異はなく、当該引用発明と本願発明との間に実質的な相違点は見当たらない、 (5)したがって、審判請求人のこれらの主張を採用することはできない。 5 小括 以上検討のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるか、当該刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明であるか、当該刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

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2018-013324

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