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特許拒絶査定不服審判

2021-005195

着信者主導による通信方法及び通信システム及び電子決済システム

審判番号
2021-005195
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-008794外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年04月22日
審決日
2021年12月23日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G06Q)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第44条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020- 8794「着信者主導による通信方法及び通信システム及び電子決済システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月14日出願公開、特開2020- 74188〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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1 本願の分割の経緯

本願は,令和2年1月23日にされた特許法44条1項の規定による特許出願であって,平成17年6月22日に出願した特願2005-181485号を最初の原出願とする第9世代目の分割出願であり,本願の最初の原出願からの分割の経緯は,以下のとおりである。なお,括弧内はそれぞれの出願の出願日を示す。

最初の原出願:特願2005-181485号(平成17年 6月22日)
第1世代分割:特願2010- 29938号(平成22年 2月15日)
第2世代分割:特願2014- 2号(平成26年 1月 2日)
第3世代分割:特願2014-217879号(平成26年10月25日)
第4世代分割:特願2015-184536号(平成27年 9月17日)
第5世代分割:特願2016-203181号(平成28年10月15日)
第6世代分割:特願2018- 38129号(平成30年 3月 4日)
第7世代分割:特願2018-238015号(平成30年12月20日)
第8世代分割:特願2019-209204号(令和 元年11月20日)
本願 :特願2020- 8794号(令和 2年 1月23日)

2 本願の手続の経緯

本願の手続の経緯は,以下のとおりである。

令和2年12月 9日 手続補正書の提出

令和3年 2月15日付け 拒絶理由通知(起案日)

令和3年 2月21日 意見書の提出

令和3年 3月 8日付け 拒絶査定(起案日)

令和3年 4月22日 審判請求書の提出

令和3年 5月27日付け 拒絶理由通知(起案日)

令和3年 8月17日 意見書・補正書の提出

第2 本願発明

令和3年8月17日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。

「【請求項1】
コンピュータによって実行される方法であって,
サービスの要求を受けるステップと,
前記要求を処理するために指示情報を使用するステップと,を含み,
前記指示情報が認証情報に基づいて設定された情報であり,
前記認証情報が物品から取得される情報であり,
前記物品が前記認証情報を利用者に提供する物品である,
方法。」

第3 拒絶の理由

令和3年5月27日付けの当審が通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)のうちの理由1は,次のとおりのものである。

本願発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基づいて,又は,引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1.国際公開第2002/008981号

引用文献2.特開2004-303057号公報

なお,当審拒絶理由の理由1について,

「●理由1(進歩性)について
・請求項 1
・引用文献等 1
・備考」

とあるが,

「(3)小括
以上より,本件発明1は,引用発明に基づき,又は,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項1に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものである。」

と記載していること,これに対し,審判請求人は,令和3年8月17日提出の意見書で,

「 これに対して,上記意見記載の通り,引用発明と本件発明1と技術的思想が異なり,引用発明はサービス要求を受ける前に利用者が認証情報に基づいて”予め”条件を設定する開示や示唆がありませんので,上記相違点1,2の構成と関係なく,上記相違点3の構成とすることは,当業者が容易になし得るものではない。従って,本件発明1は,引用発明に基づき,又は,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項1に基づき,当業者が容易に発明をすることができないものです。
その効果について,引用発明は引用文献2に示される技術的事項1を適用しても,上記相違点を解消することはできないため,本願発明1の構成とすることはできません。すなわち,引用発明の認証情報(携帯電話製造番号,携帯電話番号)はサービスの要求をする時点の後ろである,という時間的の条件付きで使用されるものである点が変わりません。従って,本件発明1の次の引用発明は有しない異質な効果が,当業者の予測し得る範囲外の事項です。」(下線は,当審が付与した。)

と主張していることから,上記の「・引用文献等 1」は,「・引用文献等 1 又は 1~2」の誤記であることは明らかである。

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1について

(1)引用文献1の記載

当審拒絶理由で引用した,本願出願前に,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(国際公開第2002/008981号(2002年(平成14)1月31日国際公開))には,次の事項が記載されている(下線は,当審で付した。以下同じ。)。

なお,原文のまま摘記するが,「決裁」は「決済」の明らかな誤記である。

ア 「 図1は,本発明の商取引方法を実施するシステムの全体構成の実施形態を示すシステム構成図であり,商品購入者が使用するネットワーク端末としての携帯電話機1,商品提供元の店舗2,飲料水等の自動販売機3,決済承認機関4で構成され,これらが通信網5で接続されている。通信網5は,無線回線と有線回線及びインタネット網を含むものである。ここで,ネットワーク端末とは,インターネット等のネットワークに接続可能な端末を示すものであり,以下の例に示す携帯電話機1の他,PHS,PDA,パーソナルコンピュータ,デジタルテレビ等,種々のものが含まれる。」(11頁21行~12頁3行)

イ 「 本発明では,このような特殊な結晶粉末を混入した記録インクまたはトナーで機器製造番号及び携帯電話番号のバーコードを標識19,20に印刷し,これを携帯電話機1の正面あるいは側面に貼り付け,その標識19,20に記録されたバーコードを所定波長λaの照射光で読み取るようにしている。このような特殊な記録インクまたはトナーで記録した機器製造番号及び携帯電話番号の標識19,20を携帯電話機1に貼り付けておくことにより,予め定めた波長の照射光以外では機器製造番号及び携帯電話番号を読み取ることができない。よって,機器製造番号及び携帯電話番号を決済承認機関4に事前登録しておくことにより,当該携帯電話機1が本システムでの商取引を利用できる正当な機器であるか否かを識別することができる。また,側面の標識20は,携帯電話機1の改造を防止できる役目を果たしている。」(13頁22行~14頁8行)

ウ 「 標識19,20のバーコードは,図4(b)に示すような断面構成の読取装置40内に挿入され,予め定めた波長の照射光を照射することによって読み取られる。この読取装置40は,店舗2や自動販売機3に設置される。」(14頁12~同頁15行)

エ 「 図1に戻り,店舗2には標識19,20とQRコードの読取共用の読取装置21が設置され,読み取った標識19,20とQRコードをPOS端末で構成される店舖端末22に入力し,店舗端末で代金の決済を行うようになっている。自動販売機3にも標識19,20とQRコードの読取共用の読取装置33が設置されている。」(15頁14行~同頁18行)

オ 「 図7は,利用者情報DBの登録情報の一例を示す図であり,利用者ID701,利用者名702,住所703,携帯電話製造番号(機器製造番号)704,携帯電話番号705,本システムを利用する際の暗証番号706,性別707,生年月日708,デビットカード番号709,クレジットカード番号710,Webマネー口座番号711,個人特徴情報712が登録されるようになっている。
Webマネー口座番号711は,飲料水などの小額商品を自動販売機で購入する場合にWebマネーによって決裁する際に使用するものである。」(17頁20行~18頁1行)
カ 「 図10及び図11は,スーパーマーケット等の一般の店舗で携帯電話機1を利用した商品購入時の決裁方法を示すフローチャートである。
まず,利用者(商品購入者)は,自分が所持する携帯電話機1をモバイルショッピングモードに設定した後,入力手段14を使用し,商品を購入しようとしている店舗の識別情報としての店舗ID,自分の暗証番号(図7の706に登録した番号),決裁方法,商品の購入金額を入力する(ステップ1001)。ここで,店舗又は商品の識別情報を,店舗内に設置されている発信機等から外部入出力インタフェース17を介して取り込むようにしてもよい。
また,決裁方法については,クレジットカード決裁,Webマネー決裁,デビットカード決裁があるが,クレジットカード決裁を選択した場合については支払い回数とクレジットカード番号を入力する。また,Webマネー決裁を選択した場合にはWebマネー口座番号(図7の711に登録した番号)を入力する。同様に,デビットカード決裁を選択した場合にはデビットカード番号(図7の709に登録した番号)を入力する。なお,以下のフローチャートでは人間が行う操作はステップ1001のように2重枠線で囲む形式で表記している。
入力が終了したならば,送信操作を行う。すると,ステップ1001で入力した情報がQR決裁証明鍵発行要求として認証サーバ41に送信される。」(19頁5行~同頁24行)
キ 「 認証OKとなった場合には,認証サーバ41は金融機関42に対して利用限度額あるいは残高の与信照会を送信する。そして,金融機関42における与信処理(ステップ1004)によって与信OKまたは与信NGの与信結果が返信されたならば,その与信結果に応じて,取引不可メッセージまたはQR決裁証明鍵を生成する(ステップ1005)。すなわち,与信NGの与信結果が返送されてきた場合には,認証サーバ41は,残高不足等のメッセージを含む取引不可メッセージを携帯電話機1に送信する。しかし,与信OKであった場合には,図3(d)で示したような2次元コードで構成されたQR決裁証明鍵を生成し(ステップ1006),これを携帯電話機1に送信する。このQR決裁証明鍵は,少なくとも決裁番号,個人認証,氏名,決裁方法の情報を含むもので構成される。
携帯電話機1では,受信したQR決裁証明鍵を図12(a)に符号1201で示すように表示部11に表示する。同時に,例えば「この携帯電話機で決裁できます。代金決裁時に読取装置に挿入して下さい。」といったメッセージが表示される。
そこで,利用者は予め選択してあった購入希望商品を店舗端末22の店員に提示し,購入希望商品の発注を行う(ステップ1007)。店員は店舗端末によって購入希望商品の代金を入力する(ステップ1008)。
これと並行して,利用者はQR決裁証明鍵1201が表示された状態の携帯電話機1を店舗端末22に付属したQRコード読取装置21の読取部分に挿入装着する(ステップ1009)。すると,QRコード読取装置21は,携帯電話機1の表示部11に表示されたQR決裁証明鍵1201を読み取ると共に(ステップ1011),標識19,20から携帯電話製造番号と携帯電話番号を読み取り(ステップ1010),その読取結果を店舗端末22に転送する。
店舗端末22は,携帯電話機1から読み取った携帯電話製造番号,携帯電話番号及びQR決裁証明鍵1201を決裁承認要求として認証サーバ41に送信する。この場合,QR決裁証明鍵1201については,認証サーバ自身が発行したものであることが分かればよいので,決裁番号及び個人認証といった一部の情報のみを送信してもよい。図11では,決裁番号及び個人認証の情報のみを決裁承認要求の中に含ませて送信していることを示している。」(20頁19行~21頁24行)

ク 「 しかし,携帯電話製造番号及び携帯電話番号の両方が正当なものであり,しかも店舗端末22から受信したQR決裁証明鍵1201の情報(全部または一部)が自分自身で発行した正規のものであると認められた場合には,認証サーバ41は詳細決裁承認を店舗端末22に返信する。この詳細決裁承認の情報には,QR決裁証明鍵1201と同様の情報の他に,当該利用者の購入履歴の情報や利用者本人の写真などの個人特徴情報が含まれている。」(22頁13行~同頁19行)

ケ 「 詳細決裁承認を店舗端末22は,受信した詳細決裁承認の情報の全部または一部を利用者情報として表示部に表示する(ステップ1015)。図12(b)にその例を示している。店員は,その表示内容と購入希望商品の内容及び代金を見て,利用者本人に購入意思を確認する(ステップ1016)。
本人の購入意思の確定応答があったならば,決裁ボタン操作によって決裁を完了する(ステップ1017)。決裁ボタン操作が行われた場合は,店舗端末22は決裁終了メッセージを認証サーバ41に送信する。この決裁終了メッセージを受信した認証サーバ41は利用者の購入履歴情報を更新する(ステップ1018)。この後,確認用の決裁内容を携帯電話機1に送信する。また,決裁終了情報を金融機関42に送信する。これにより,携帯電話機1の表示部11には,図13に示すような確認用の決裁内容1301が表示される。この決裁内容1301は,利用者自身が消去するまで保存することができる。ただし,QR決裁証明鍵1301は1回限り有効であるので,所定時間後に自動的に消去される。
また,決裁終了情報を受信した金融機関42では利用者の指定口座から代金を引き落とす手続を行う。」(22頁20行~23頁10行)
コ 「 なお,QR決裁証明鍵は,少なくとも決裁番号,個人認証,氏名,決裁方法の情報を含むもので構成されるものとしたが,決裁番号,個人認証,氏名の一部または全部を元に生成した1回限りのパスワードであってもよい。
この場合には,例えば,認証サーバ41と携帯電話機1とに,同一ロジックによるパスワード生成プログラムを備え,2回目にアクセスするときは,1回目に送信された暗証番号等に基づき自動生成されたパスワードを携帯電話機1から自動送信し,認証サーバ41側では,当該携帯電話機1の携帯電話番号等及び自動送信されたパスワードと,前記認証サーバ41で自動生成されたパスワードとを比較することにより,認証を行う。3回目以降は,前回自動生成されたパスワードに基づき新たなパスワードを自動生成,自動送信することとしてもよい。
このような,いわゆるワンタイムパスワードと呼ばれるものを用いることにより,セキュリティ性を高めることができるとともに,2回目以降のアクセス時に,暗証番号の入力を省略することができる。」(24頁17行~25頁6行)

[図:0001399793000001.jpg]

図1

(2)引用文献1に記載された発明

上記(1)から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

なお,上記(1)の摘記事項について,上述したとおり「決裁」は「決済」の明らかな誤記であることから,上記(1)の「決裁」を引用発明では「決済」と認定する。

携帯電話機1,商品提供元の店舗2,決済承認機関4が通信網5で接続され(摘記ア,図1),

携帯電話機1の正面あるいは側面に機器製造番号及び携帯電話番号のバーコードが印刷された標識19,20を貼り付け(摘記イ),

利用者(商品購入者)は,自分が所持する携帯電話機1をモバイルショッピングモードに設定した後,入力手段14を使用し,商品を購入しようとしている店舗の識別情報としての店舗ID,自分の暗証番号(図7の706に登録した番号),決済方法,商品の購入金額を入力し,決済方法には,クレジットカード決済,Webマネー決済,デビットカード決済があり,入力した情報をQR決済証明鍵発行要求として決済承認機関4の認証サーバ41に送信し(摘記カ,図1),

認証OKとなり,与信OKである場合,認証サーバ41は,2次元コードで構成されたQR決済証明鍵を生成し,携帯電話機1に送信し,QR決済証明鍵は,少なくとも決済番号,個人認証,氏名,決済方法の情報を含み(摘記キ),

利用者は予め選択してあった購入希望商品を店舗端末22の店員に提示し,購入希望商品の発注を行うと,利用者はQR決済証明鍵1201が表示された状態の携帯電話機1を店舗端末22に付属したQRコード読取装置21の読取部分に挿入装着し,QRコード読取装置21が,携帯電話機1の表示部11に表示されたQR決済証明鍵1201を読み取ると共に,標識19,20から携帯電話製造番号と携帯電話番号を読み取り,その読取結果を店舗端末22に転送し,店舗端末22は,携帯電話機1から読み取った携帯電話製造番号,携帯電話番号及びQR決済証明鍵1201を決済承認要求として認証サーバ41に送信し(摘記キ),

認証サーバ41は,携帯電話製造番号及び携帯電話番号の両方が正当なものであり,しかも店舗端末22から受信したQR決済証明鍵1201の情報(全部または一部)が自分自身で発行した正規のものであると認められた場合には,詳細決済承認を店舗端末22に返信し(摘記ク),

店舗端末22において,店員による決済ボタン操作が行われた場合は,店舗端末22は決済終了メッセージを認証サーバ41に送信し,決済終了情報を金融機関42に送信し,決済終了情報を受信した金融機関42では利用者の指定口座から代金を引き落とす手続を行う(摘記ケ),

方法。

2 引用文献2について

(1)引用文献2に記載されている事項

当審拒絶理由で引用した,本願出願前に,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特開2004-303057号公報(平成16年10月28日出願公開))には,次の事項が記載されている。

「【0072】
この画面データを受信した携帯電話端末10の表示部101には,引出口座,引出金額を特定するための引出口座確認画面が出力される(S2-7)。本実施形態では,まず図10に示す表示画面550が出力される。この表示画面550には,引出口座選択欄551が含まれる。この引出口座選択欄551には,この利用者が保有する預金口座の一覧が表示され,この預金口座の中から引出口座を選択することができる。
【0073】
利用者が,この一覧の中から引出口座を選択した場合,携帯電話端末10の表示部101には,図10に示す表示画面560が出力される。この表示画面560には,引出金額入力欄561が含まれる。この引出金額入力欄561を用いて,この利用者が引き出しを希望する金額を入力することができる。
続きを表示(全18行)
【0074】
ここで,利用者は,引出金額入力欄561に金額を入力し,決定ボタンを選択する。この場合,携帯電話端末10は,携帯電話網Nを介して取引依頼をバンキング処理管理システム20に送信する(S2-8)。この取引依頼には,利用者が選択した預金口座識別子及び引出希望金額に関するデータが含まれる。
【0075】
この取引依頼を受信した管理コンピュータ21は,まず取引予定時間を算出する(S2-9)。具体的には,管理コンピュータ21は,所定の関数を用いて,引出希望金額に対応した取引許容時間を算出する。この取引許容時間は,引出希望金額が大きくなれば短くするように設定される。本実施形態では,例えば,3万円未満の場合には30分間,3万円~10万円の場合には20分間,10万円以上の場合には10分間を設定する。
【0076】
そして,管理コンピュータ21は,現在時刻,移動に要する時間,取引許容時間を用いて取引予定時間を算出する。本実施形態では,現在時刻として「13時20分」,移動所要時間として「5分」,取引許容時間として「30分」を用いて,取引予定時間として「13時25分~13時55分」を設定する。
【0077】
次に,管理コンピュータ21は,取引条件データを取引条件管理データ記憶部23に記録する(S2-10)。この場合,まず,管理コンピュータ21は,ワンタイムパスワードを生成する。そして,管理コンピュータ21は,選択された現金自動預払機30の端末識別子,取引依頼に含まれる預金口座識別子,引出希望金額,算出した取引予定時間,生成したパスワードに関するデータを含む取引条件管理データ230を取引条件管理データ記憶部23に記録する。
【0078】
次に,管理コンピュータ21は,携帯電話網Nを介して携帯電話端末10に取引条件データを送信する(S2-11)。この取引条件データには,取引予定時間,ワンタイムパスワードに関するデータが含まれる。
【0079】
この取引条件データを受信した携帯電話端末10は,取引条件を表示部101に出力する(S2-12)。まず,携帯電話端末10の表示部101には,図11に示す表示画面570が出力される。この表示画面570には,ワンタイムパスワード表示欄571が含まれる。このワンタイムパスワードは,利用者が現金自動預払機30を利用する場合に用いる。
【0080】
「次へ」のボタンを押した場合,携帯電話端末10の表示部101には,図11に示す表示画面580が出力される。この表示画面580には,取引予定時間表示欄581が含まれる。この取引予定時間は,利用者がワンタイムパスワードを用いて,現金自動預払機30から現金を引き出すことが可能な時間である。」
「【0082】
(現金の引出処理段階)
次に,現金の引出処理段階の処理を,図6に従って説明する。利用者は,選択した現金自動預払機30が設置された店舗に向かう。現金自動預払機30のディスプレイには,図12に示す表示画面600が出力されている。この表示画面600は,金融機関が提供するサービスに関してメニュー項目が含まれる。ここでは,この中から「カードレスバンキング」の項目ボタン601を選択する。この場合,現金自動預払機30のディスプレイには,図13に示す表示画面610が出力される。この表示画面610には,カードレスバンキングサービスを利用するためのワンタイムパスワードの入力欄611が含まれる。利用者は,この入力欄611に携帯電話端末10で受信したワンタイムパスワードを入力する。本実施形態では,図11の表示画面570に表示された「07140700」を用いる。そして,確認ボタン612を押した場合,現金自動預払機30はサービス要求をバンキング処理管理システム20に送信する。バンキング処理管理システム20は,ネットワークを介してサービス要求を受信する(S3-1)。このサービス要求には,サービスを受け付けた現金自動預払機30の端末識別子,入力欄611に入力されたワンタイムパスワード,受付時刻に関するデータが含まれる。
【0083】
まず,管理コンピュータ21は,現金自動預払機30の端末識別子に基づいて取引条件管理データ記憶部23から取引条件管理データ230を検索する(S3-2)。取引条件管理データ230を抽出できなかった場合(ステップ(S3-3)において「No」の場合),管理コンピュータ21は取引を拒否する(S3-4)。そして,その旨を現金自動預払機30に通知し,サービス提供を終了する。
【0084】
一方,取引条件管理データ230を抽出できた場合(ステップ(S3-3)において「Yes」の場合),管理コンピュータ21はサービス要求に含まれるワンタイムパスワードと,取引条件管理データ230に含まれるパスワードとを照合する(S3-5)。ワンタイムパスワードの照合ができた場合(ステップ(S3-5)において「Yes」の場合),管理コンピュータ21は取引予定時間の照合を行なう(S3-6)。具体的には,サービス要求に含まれる受付時刻が,取引条件管理データ230の取引予定時間内に含まれるかどうかを照合する。
【0085】
受付時刻が取引予定時間内である場合(ステップ(S3-6)において「Yes」の場合),管理コンピュータ21は取引条件に基づいて取引処理を実行する(S3-7)。ここでは,2万円の現金引出処理を行なう。具体的には,管理コンピュータ21は,取引条件管理データ230において指定された引出口座の残高を2万円減額する。」

(2)引用文献2に記載されている技術的事項

上記(1)から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されているといえる。

利用者が,予め引出口座及び引き出しを希望する金額を設定するものであって,管理コンピュータ21は,選択された現金自動預払機30の端末識別子,取引依頼に含まれる預金口座識別子,引出希望金額,算出した取引予定時間,生成したパスワードに関するデータを含む取引条件管理データ230を取引条件管理データ記憶部23に記録し,

現金の引出処理段階において,利用者は,この入力欄611に携帯電話端末10で受信したワンタイムパスワードを入力して,管理コンピュータ21が取引条件管理データ230を抽出し,取引条件管理データ230に含まれるパスワードとの照合ができ,サービス要求に含まれる受付時刻が,取引条件管理データ230の取引予定時間内に含まれる場合,管理コンピュータ21は取引条件に基づいて取引処理を実行すること。

第5 対比

本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。

1 引用発明の「認証サーバ41」は,後述する相違点は別にして,本願発明の「コンピュータ」に相当する。

2 引用発明は,「利用者は予め選択してあった購入希望商品を店舗端末22の店員に提示し,購入希望商品の発注を行うと」,「店舗端末22は,携帯電話機1から読み取った携帯電話製造番号,携帯電話番号及びQR決済証明鍵1201を決済承認要求として認証サーバ41に送信」することから,この「決済承認要求」は,本願発明の「サービスの要求」に相当し,このとき,引用発明の「購入希望商品の発注」は,本願発明の「サービス」に相当し,そして,引用発明において認証サーバ41が決済承認要求を受け付ける点で,本願発明の「サービスの要求を受けるステップ」に相当する。

3 引用発明の「携帯電話製造番号,携帯電話番号」は,「認証サーバ41」により,「携帯電話製造番号及び携帯電話番号の両方が正当なもの」か否かの判断に用いられる点で,認証処理に用いられているといえることから,本願発明の「認証情報」に相当し,引用発明は,「携帯電話機1の正面あるいは側面に機器製造番号及び携帯電話番号のバーコードが印刷された標識19,20を貼り付け」るものであって,機器製造番号及び携帯電話番号をバーコードとして印刷した「標識19,20」は,本願発明の「物品」に相当し,引用発明において,「標識19,20」にバーコードとして印刷された機器製造番号及び携帯電話番号は,店舗端末22が読み取る点で,本願発明の「前記認証情報が物品から取得される情報であり」に相当する。

4 引用発明の標識19,20は,「機器製造番号及び携帯電話番号のバーコードが印刷され」,「携帯電話機1の正面あるいは側面に」「貼り付け」られることから,利用者に提供されることは明らかであり,本願発明の「前記物品が前記認証情報を利用者に提供する物品である」に相当する。

5 引用発明の,通信網5で接続される携帯電話機1,商品提供元の店舗2,認証サーバ41を有する決済承認機関4が行う上記2~4に関する処理は,後述する相違点は別にして,本願発明の「方法」に相当する。

6 以上より,本願発明と引用発明とは,次の点で,一致又は相違する。

<一致点>

コンピュータによって実行される方法であって,

サービスの要求を受けるステップと,

認証情報が物品から取得される情報であり,

前記物品が前記認証情報を利用者に提供する物品である,

方法。

<相違点>

(相違点1)

本願発明は,「前記要求を処理するために指示情報を使用するステップ」を含むものであるのに対し,引用発明は,「指示情報」を含んでいるか定かではなく,このため,「前記要求を処理するために指示情報を使用するステップ」を含んでいるか定かではない点。

(相違点2)

本願発明は,「前記指示情報が認証情報に基づいて設定された情報」であるのに対し,引用発明は,「指示情報」を含んでいるか定かではないため,「指示情報」が「携帯電話製造番号,携帯電話番号」に基づいて設定されているか不明である点。

第6 判断

1 相違点の性質にかんがみ,相違点1及び2を合わせて検討する。

(1)本願発明の「指示情報」の技術的意味について検討をする。

発明の詳細な説明には,次の事項が記載されている。なお,下線は当審で付与した。

「【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために,図1に示すように,本発明は通信装置の管理者が予め通信装置とネットワークの間に介在する電子秘書に指示を出し,前記電子秘書が前記管理者の指示内容に従って,内側又は外側(通信装置又はネットワーク)から到着する通信要求に対して,複数の処置する方法を備え,前記通信要求を受けた時,前記複数の処置する方法から一つを選び出して,前記通信要求を処置する;本明細書中に前記処置する方法を「待遇」といい,管理者により決める特定の通信要求に対する特定の処置をする方法を意味する。
従来概念の通信は発信者主導が普通であり,例えば相手に電話をかけると相手が受けることが当然と考えられてきた。応答方法も単純であるため,特別な用語で記述する必要がない。本発明は応答方法が多様に成っていて,簡潔に表現する適当な技術用語が存在しない。そのため「待遇」という言葉を使い,当事者双方の関係を表現する。
受信拒否待遇は発信者を完全拒否するという意思表現であり,通信許可待遇は従来の通信ニーズであり,制御許可待遇は潜在的なニーズ,発信者に通信装置の制御をあげたいという意思表現である。
本明細書中に使用する用語「制御許可」は,通信設備は被制御状態になり,発信者の命令を実行し,又は,指定される機能やプログラムを起動できるようにするという管理者の意思を表す。例えば,発信者が遠隔から通信装置付属のカメラを起動し着信側を監視でき,電子決済の確認を求める通信要求を受けた場合,本人認証プログラムが起動される。
本発明の思想は全ての発信者の通信が事前許可を得てから始まる。未知の発信者が許可なしに発信してきた場合,まず発信者の名前を尋ね,発信者身分を判断し,通信するか否かを決定する。これを申請受理という。この流れは受付や秘書の例にたとえることができる。所定のルールを事前に秘書に指示し,秘書は指示された訪問者が来た場合,指示された扱い方で応接し,知られない訪問者が来た場合,氏名や,用件を尋ね,上司に教えられたルールに基づき,訪問者を通させるか否かを決定する。例えば上司が来訪者の用件に興味があったら通させる。上司の古い知り合いと判明したら通させる。賢い秘書なら訪問者を覚え,二回目の訪問者を親切に扱うか,門前払いするかをすぐに決められるだろう。」
「 【0010】
メール関係用語概念説明。メールの送信の流れは,一般に発信者端末(送信クライアント)から送信メールサーバ(受信サーバ),送信メールサーバ(送信クライアント)から受信サーバ,受信サーバから着信者端末(受信クライアント)までである。送信メールサーバは,受信サーバと,送信クライアントの二つ役割を持つ。
以下,本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態の概略構成例を示す図である。当事者端末101が電子秘書102を介在して網104における通信を行い,電子秘書は,当事者端末側又は通信サービスを提供するサーバ側に,電話通信の場合は,電話機側又は交換機側に組み込んでも良い。
サーバ側に組み込む場合,通信チャンネルを通して当事者端末とつなげる。指示ファイル103は電子秘書に組み込み又は電子秘書と独立しても良い。管理者が直接に指示ファイルにデータを入力しても良い(図に示さず)。指示ファイルはデータ記憶装置の中に保存される。本発明の目的を達成して得る記憶装置であれば,例えば磁気記憶装置,RAM,ROMなどの電子メモリ回路の他に,光学記憶媒体などを採用することができる。指示ファイルの望ましい実装は,マルチメディア情報を含め,相互に関連するデータを整理・統合し,検索しやすいデータベースである。以下,各図面における共通または類似の構成要素については同一の符号を用いる。
図2Bはアイテムと待遇に関する第1ルールセットを記録するデータ・データベース(以下R1DBという)の内容を示すレコードのレイアウト図である。複数のアイテムがありえる。例えば,後述「通信確認」待遇の条件部に発信番号とコマンドの二つのアイテムがある。」
「 【0062】
「確認情報」とは,決済要求の確認ために使用する情報を意味する。仮想口座の暗証番号に相当する。
表1に以上用語で示す情報と残高通知先と暗証番号は予約情報である。
「残高」とは,仮想口座の残高を意味する。
続きを表示(全11行)
「通信確認」とは,備えられる制御許可待遇の1種類の待遇を意味する。待遇IDは図70参照。
「操作情報」とは,通信確認待遇により起動される認証プログラムに入力する情報を意味する。
表1に仮想口座に使わない決済予約確認要否フラグを「-」で示す。
売り手は,利用金額の決済を要求する決済要求(図69,C)を生成し,前記決済要求を承認するために,銀行に送信する。銀行は,前記決済要求に含まれる売り手識別子等から仮想口座を特定し,残高及び銀行口座残高(以下「総残高」という)は足りる場合,銀行は,買い手に前記決済要求を確認するために,確認要求(図69,D)を買い手に提示する。買い手は,確認情報(図69,E)を銀行に提示して前記決済要求を確認する。銀行は,買い手によって確認された後にのみ,承認(図69,F)を売り手に送信し,決済を行う。
仮想口座は業種コード,売り手名,商品種類等買い手による指定の方法で特定する。銀行は売り手識別子等入手可能な情報を買い手に提供し,仮想口座との関連付けを選択させる。
本発明の決済処理に関するデータ構造等は,公知技術,例えば,特許文献27~29を参照する。
仮想口座は,従来技術の専用口座,保留預金(口座残高全体から自由に引出できない枠),及びプリペイドカードと異なり,銀行口座から総残高を自由に引出できる。図73は,口座所有者が開設している銀行口座と予約している仮想口座の残高を模式的に示している。仮想口座の残高は総残高を越える場合も有りえる。決済可能金額が残高と総残高の両方以下である。仮想口座は決済の安全性を保ちながら,資金の流動性を維持する効果が有る。複数の専用口座に入金し過ぎる場合,他の用途で資金を簡単に使えない不便がない。」
「 【0066】
好ましくは,前記暗証番号(認証情報)は使い捨てパスワード(OTP)を使用する。毎回の通信が異なるパスワードを使うので,通信傍受被害が防げる。例えば,認証プログラムにOTPを実現する機能を備える。一時的に公衆電話でも予約が可能であり,回線盗聴被害を予防するために一日あたりの利用限度額を設定しても良い。更に確認情報はOTPを使用しても良い。
好ましくは,本人認証を経て電子決済を有効(決済を承認できる状態)にする。例えば,指示ファイルにアクセスし銀行に通信確認待遇を与える。又は,指示ファイルに電子決済の有効/無効フラグを設置し,フラグが無効にセットされる場合は,通信確認待遇が通信を拒否する。
前記本人認証は,通信装置付属の本人認証手段を利用するものであり,買い手は予め装置に本人識別情報を登録して置き,本人認証手段が起動されると,装置が操作者に前記本人識別情報を入力するように促し,入力した情報と登録した本人識別情報と照合し,照合結果が一致した(認証成功)場合,次の操作を許す。前記本人識別情報は,指紋等生体情報,或いはパスワード等を含む。
好ましくは,電子決済を有効にしてから,所定の時間,例えば,4時間を経過すると電子決済を無効(決済を承認できない状態)にする。
[効果]
最大限の安全度を望む場合,買物に出かける前に,残高を予定使用額に,確認不要限度額をゼロに,通信先を携帯電話番号に予約し,指紋で確認操作する。
通信先を店側に,識別ID,確認情報を覚えるものに予約し,店で識別ID,確認情報を手入力することにより記憶だけで支払できる。」

(2)以上の記載から,本願発明の「指示情報」は,発明の詳細な説明の「指示ファイル」の情報に対応するものと解釈できる。そして,発明の詳細な説明における具体的な実施例として,(a)「買い手」が予め「銀行」に対して,買い手の口座に対応する指示ファイルに電子決済の有効/無効フラグを設置し,(b)売り手は,利用金額の決済を要求する決済要求を銀行に送信し,銀行は指示ファイルの有効/無効フラグが有効の場合(買い手によって確認された後),承認を売り手に送信し,決済を行うものである。このとき,(b)の処理が「指示情報」を「使用する」ことを意味すると解釈できる。

(3)以上を踏まえて,相違点の検討を行う。

ア 引用発明は,「利用者(商品購入者)は,自分が所持する携帯電話機1をモバイルショッピングモードに設定した後,入力手段14を使用し,商品を購入しようとしている店舗の識別情報としての店舗ID,自分の暗証番号(図7の706に登録した番号),決済方法,商品の購入金額を入力し,決済方法には,クレジットカード決済,Webマネー決済,デビットカード決済があり,入力した情報をQR決済証明鍵発行要求として認証サーバ41に送信」することから,利用者が決済方法を選択し,QR決済証明鍵発行要求として,認証サーバ41に送信するものであり,

「認証OKとなり,与信OKである場合,認証サーバ41は,2次元コードで構成されたQR決済証明鍵を生成し,携帯電話機1に送信し,QR決済証明鍵は,少なくとも決済番号,個人認証,氏名,決済方法の情報を含」むことから,利用者は,認証OKの場合,認証サーバ41から,決済方法の情報を含むQR決済証明鍵を取得し,

「利用者は予め選択してあった購入希望商品を店舗端末22の店員に提示し,購入希望商品の発注を行うと,利用者はQR決済証明鍵1201が表示された状態の携帯電話機1を店舗端末22に付属したQRコード読取装置21の読取部分に挿入装着し,QRコード読取装置21が,携帯電話機1の表示部11に表示されたQR決済証明鍵1201を読み取ると共に,標識19,20から携帯電話製造番号と携帯電話番号を読み取り,その読取結果を店舗端末22に転送し,店舗端末22は,携帯電話機1から読み取った携帯電話製造番号,携帯電話番号及びQR決済証明鍵1201を決済承認要求として認証サーバ41に送信」するとして,利用者が,店舗にて購入希望商品の発注を行うと,QR決済証明鍵,携帯電話製造番号及び携帯電話番号を決済承認要求として,店舗端末22が認証サーバ41に送信し,

「認証サーバ41は,携帯電話製造番号及び携帯電話番号の両方が正当なものであり,しかも店舗端末22から受信したQR決済証明鍵1201の情報(全部または一部)が自分自身で発行した正規のものであると認められた場合には,詳細決済承認を店舗端末22に返信」するとして,認証サーバが決済承認要求に含まれる携帯電話製造番号及び携帯電話番号が正当なものであり,QR決済証明鍵が正規のものであるとすると,

「店舗端末22において,店員による決済ボタン操作が行われた場合は,店舗端末22は決済終了メッセージを認証サーバ41に送信し,決済終了情報を金融機関42に送信し,決済終了情報を受信した金融機関42では利用者の指定口座から代金を引き落とす手続を行う」として,決済処理が行われる。

イ 上記アから,決済処理は,QR決済証明鍵に含まれる,利用者が選択した決済方法に基づいて行われることは明らかである。そして,認証サーバ41によって利用者が選択した決済方法を認めたときに,認証サーバ41はQR決済証明鍵を発行し,決済承認要求を受け付けると,QR決済証明鍵の正規性を判断する点で,認証サーバ41は,QR決済証明鍵を発行したことを管理するための情報を有していることは明らかである。すなわち,この管理するための情報は,利用者が選択した決済方法を認証サーバ41が認めたことを示す情報であって,決済承認要求を認めることで,利用者が選択した決済方法に基づき決済が行われる点で,この情報を使った決済が行われるものといえる。

そうすると,引用発明において,本願発明の「指示情報」(上記1(2)(a)の指示ファイル)に相当する構成が含まれるかは定かではないが,引用発明は,利用者が認証サーバ41に対して決済方法を選択することで,利用者が当該決済方法を有効であるとの意思表示をしており,この意思表示のされた決済方法で決済を行うことができる点で,本願発明と技術的思想が異なるものではないことから,引用発明が,利用者が選択した決済方法を認証サーバ41が認めたことを示す情報,すなわち,QR決済証明鍵を発行したことを管理するための情報を有していることは自明の事項といえるから,引用発明において,本願発明と同様の「指示情報」を有するものとすることは,当業者が適宜なし得た事項である。このとき,認証サーバ41は,利用者が選択した決済方法を認証サーバ41が認めたことを示す情報に基づき,決済をするか否かを判断している点で,この情報を「使用する」ことは,引用発明に技術的思想として含まれている(上記1(2)(b)の点)。

又は,引用発明において,本願発明の「指示情報」(上記1(2)(a)の指示ファイルの概念)が含まれないとしても,引用文献2には,上記「第4」2(2)のとおりの技術的事項が記載されており,引用発明と,引用文献2の当該技術的事項とは,利用者が予め条件を設定し,設定された条件の範囲内で,取引を行うことができるとする点で機能を共通にすることから,引用発明に,引用文献2の上記技術的事項を適用することで,本願発明の「指示情報を使用する」構成とすることは,当業者が容易になし得た事項である。

以上のことから,引用発明に基づき,上記相違点1の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項である。

ウ このとき,引用発明は,利用者が選択した決済方法を認証サーバ41が認めたことを示す情報,すなわち,QR決済証明鍵を発行したことを管理するための情報は,携帯電話製造番号及び携帯電話番号を含むQR決済証明鍵発行要求に基づいて設定されているといえることから,この技術的思想に基づき,上記相違点2の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項である。

エ そして,上記相違点1,2の構成とすることで奏する,利便性と高額被害が発生しない安全性,資金の流動性を備えた決済方法・システムを提供するとの効果も,当業者の予測し得る範囲内の事項である。

(4) 審判請求人の主張について検討をする。

審判請求人は,当審拒絶理由に対して,令和3年8月17日の意見書で,次のとおり主張する。

(主張1)

「 これに対する意見1
審判長殿は「ユーザが当該決済方法を有効であるとの意思表示をしている点で,本件発明1と技術的思想が異なるものではないこと」と認定しました。
本件発明1の特徴「サービスの要求を受けるステップと,前記要求を処理するために指示情報を使用するステップと,を含み,前記指示情報が認証情報に基づいて設定された情報であり,」から見れば,前記指示情報はサービスの要求に対する意思表示です。
本件発明1の意思表示は認証情報に基づいて行うものであり,サービスを要求する時点の時間的の条件を付けません。サービスを要求する時点の前にでも,上記意思表示は発生するものです。
続きを表示(全16行)
一方,引用発明においては,サービスを要求(決済承認要求)する前に,ユーザは認証情報(携帯電話製造番号,携帯電話番号)に基づいて,上記意思表示を発生する記載や示唆がありません。
つまり,本件発明1の意思表示はサービスを要求する時点の前にでも,上記意思表示は発生するものであるのに対し,引用発明においては,サービスの要求をする時点の後ろである,という時間的の条件付きで発生するものである点で相違することとなります。
従って,上記「本件発明1と技術的思想が異なるものではない」認定は,その相違点を看過しました。本件発明1の意思表示は時間的な条件を付けないので,ユーザは意思表示を変更しない限り継続します。つまり,上記イ(a)の指示ファイルの概念が含まれます。
更に,本件発明1は,ある決済方法に対する有効の意思表示のみではなく,当該決済方法に対する無効の意思表示もできるのに対し,引用発明においては,サービスを要求(決済承認要求)する時点しか意思表示しません。引用発明明細書に決済承認要求による決済方法に対する無効の意思表示が記載や示唆されていません。本件発明1はできる意思表示は引用発明にはできないことも引用発明と本件発明1と技術的思想が異なるものを示します。
<相違点>
(相違点3)
本件発明1は,「サービスの要求を受けるステップと,前記要求を処理するために指示情報を使用するステップと,を含み,前記指示情報が認証情報に基づいて設定された情報であり,」を含むものの,引用発明は,この「前記指示情報が認証情報に基づいて設定された情報」を含んでいない点。
上記過去形で記述する「設定された情報」はサービスの要求を受ける時点の後ろである,という時間的な条件を付けなく,サービスの要求を受ける前にも示す事が可能である意思表示です。
上記認定は,その相違点3を看過しています。上記相違点3の看過が,この審判事件に関する合議の理由1.(進歩性)の結果に影響を及ぼすことは明らかです。
「判決年月日 平成18年9月12日 知的財産高等裁判所第1部 事件番号平成17年(行ケ)第 10046号 ○特許出願に係る発明について,引用発明との対比における容易想到性を肯定して,拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決を,引用発明の認定の誤りなどを理由に,取り消した事例 (関連条文)特許法29条2項
…したがって本願発明は,固定長である『クラスタ』に対する書き込みと,次の書き込みとの間に必ず記録の『休止期間』を挿入するものであるのに対し,引用発明においては,書き込みの中断はバッファメモリのデータ蓄積量に対応して,条件付きで発生するものであり,書き込みの中断が発生した場合の中断前のデータの集群は,可変長である点で相違することとなる。」として,審決は,出願に係る発明と引用発明との対比において,それらの相違点を看過しているとして,審決を取り消した。
」参照。」

(主張2)

「 その効果について,引用発明は引用文献2に示される技術的事項1を適用しても,上記相違点を解消することはできないため,本願発明1の構成とすることはできません。すなわち,引用発明の認証情報(携帯電話製造番号,携帯電話番号)はサービスの要求をする時点の後ろである,という時間的の条件付きで使用されるものである点が変わりません。従って,本件発明1の次の引用発明は有しない異質な効果が,当業者の予測し得る範囲外の事項です。
安全性効果
例えば,キャッシュカード,暗証番号,を紛失でも,被害を防ぐ三井住友銀行等のキャッシュカードのロック。
利便性効果
サービスを提供する過程には,認証情報は必須ではなく,指示情報のみによるサービス要求を処理する認証効果。例えば,アマゾン社の通信販売や,Google社の電子メールgmail,Google社ブラウザChromeのパスワード マネージャー,等サービスは,OTP等を使う2要素認証や2ステップ認証と呼ばれる認証方法は,サービスを利用する度にOTPを要求することはなく,パスワード変更等重要な場合のみ,OTPを要求する方法。そのサービス受ける際に,認証情報であるOTPを有する利用者に設定されたパスワード等が使用されます。」

まず,審判請求人の上記主張1について検討する。

検討の便宜から,上記主張1のうち「本件発明1は,ある決済方法に対する有効の意思表示のみではなく,当該決済方法に対する無効の意思表示もできるのに対し,引用発明においては,サービスを要求(決済承認要求)する時点しか意思表示しません。」との主張から,検討をする。

上記1(3)イのとおり,引用発明の決済処理は,QR決済証明鍵に含まれる,利用者が選択した決済方法に基づいて行われることは明らかである。そして,認証サーバ41によって利用者が選択した決済方法を認めたときに,認証サーバ41はQR決済証明鍵を発行し,決済承認要求を受け付けると,QR決済証明鍵の正規性を判断する点で,認証サーバ41は,QR決済証明鍵を発行したことを管理するための情報を有していることは明らかである。すなわち,この管理するための情報は,利用者が選択した決済方法を認証サーバ41が認めたことを示す情報であって,決済承認要求を認めることで,利用者が選択した決済方法に基づき決済が行われる点で,この情報を使った決済が行われるものといえる。

そして,本願発明も「前記要求を処理するために指示情報を使用するステップ」とするのみで,「指示情報」によって「ある決済方法に対する有効の意思表示のみではなく,当該決済方法に対する無効の意思表示もできる」と限定して解釈しなければならないものではなく,むしろ,「前記指示情報が認証情報に基づいて設定された情報」と特定されていることにより,「指示情報」が認証情報を受け取ったことに基づいて設定された情報であるとも解釈できるものであるから,引用発明は,本願発明と同様に,利用者(商品購入者)が設定した決済方法に基づき決済される点で,同じ技術的思想を有している。

そして,引用発明は,QR決済証明鍵が,「利用者は予め選択してあった購入希望商品を店舗端末22の店員に提示し,購入希望商品の発注を行うと,利用者はQR決済証明鍵1201が表示された状態の携帯電話機1を店舗端末22に付属したQRコード読取装置21の読取部分に挿入装着し,QRコード読取装置21が,携帯電話機1の表示部11に表示されたQR決済証明鍵1201を読み取ると共に,標識19,20から携帯電話製造番号と携帯電話番号を読み取り,その読取結果を店舗端末22に転送し,店舗端末22は,携帯電話機1から読み取った携帯電話製造番号,携帯電話番号及びQR決済証明鍵1201を決済承認要求として認証サーバ41に送信」する前に生成されることから,サービスを要求(決済承認要求)するよりも前に,利用者(商品購入者)の意思表示がなされていることは明らかである。

よって,審判請求人の「本件発明1は,ある決済方法に対する有効の意思表示のみではなく,当該決済方法に対する無効の意思表示もできるのに対し,引用発明においては,サービスを要求(決済承認要求)する時点しか意思表示しません。」との主張を採用することはできない。

また,上記のとおりであるから,引用発明において,サービスを要求(決済承認要求)するよりも前に,QR決済証明鍵が生成されるという,利用者(商品購入者)の意思表示がなされていることは明らかであるから,「本件発明1の意思表示はサービスを要求する時点の前にでも,上記意思表示は発生するものであるのに対し,引用発明においては,サービスの要求をする時点の後ろである,という時間的の条件付きで発生するものである点で相違することとなります。」との主張も採用することはできない。

以上のとおりであるから,当審拒絶理由で示した「ユーザが当該決済方法を有効であるとの意思表示をしている点で,本件発明1と技術的思想が異なるものではないこと」との判断に誤りはない。

さらに,相違点3についての主張について,本願発明と引用発明とは技術的思想が異なることを前提とするものであって,上述したとおり,その前提となる主張を採用することはできず,相違点3は相違点1及び相違点2とは異なる相違点を含んでおらず,上記判断で検討したとおり当業者が容易になし得た事項であり,相違点を看過していないから,これを採用することはできない。

よって,審判請求人の上記主張1を採用することはできない。

次に,審判請求人の上記主張2について検討する。

当該主張2は,「引用発明の認証情報(携帯電話製造番号,携帯電話番号)はサービスの要求をする時点の後ろである,という時間的の条件付きで使用されるものである点が変わりません。」との前提になされており,上述したとおりであるから,当該主張2を採用することはできず,「安全性効果」及び「利便性効果」についても,本願発明において,「指示情報」がどこに設定され,「指示情報」の指示の内容がどのようなものであるかは,特定されておらず,引用発明の認証処理が排除されるものでもないことから,審判請求人の主張する効果は,本願発明の構成に基づく特有のものとはいえない。

よって,審判請求人の主張する上記主張2を採用することはできない。

2 小括

以上より,本願発明は,引用発明に基づき,又は,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおり,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明,又は,引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。

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2021-005195

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