2021-004589
燦光発現を減じる防眩層を有するディスプレイデバイス
- 審判番号
- 2021-004589
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-244989外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年04月08日
- 審決日
- 2022年09月29日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニング インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】柳田 征史
- 分類
- P18 .121-WZ (G09F) / P18 .537-WZ (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成25年10月3日を国際出願日とする外国語特許出願(特願2015-536809号)の一部を平成30年12月27日に新たな特許出願(特願2018ー244989号)としたものであって(パリ条約による優先権主張 2012年10月10日 米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
同年 8月19日 :意見書の提出
同年12月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月 9日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月26日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明について
本願の請求項1~10に係る発明は、令和4年7月26日に提出された手続補正書により補正された請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「 【請求項1】ディスプレイデバイスにおいて、赤色、緑色ならびに青色のサブピクセルを含むピクセルアレイを有する、ピクセル基板、及び前記ピクセル基板に対して配置された防眩層であって、該防眩層の特性焦点距離が前記ピクセル基板の防眩側の面と前記防眩層との間の光学距離の大きくとも1/3であるような空間周波数をもつ表面粗さを有する防眩層、続きを表示(全26行)を有し、前記防眩層の前記特性焦点距離は、以下の手順1)から4):1) 前記防眩層の二次偏微分:B(x,y)=d2A(x,y)/dx2を計算する、ここで、A(x,y)は前記防眩層の前記表面粗さ、B(x,y)は二次偏微分、xは、ディスプレイパネルにおける、前記赤色、緑色ならびに青色のサブピクセルが配置された方向、である、2) 特定の場所における局所曲率半径:R(x,y)=1/B(x,y)を計算する、ここで、R(x,y)は局所曲率半径である、3) 局所焦点距離:F(x,y)=R(x,y)/(n2-n1)を計算する、ここで、F(x,y)は局所焦点距離、n1ならびにn2は前記防眩層を定める材料の屈折率であり、n2は該防眩層を形成する材料の屈折率、n1は該防眩層の粗面化された面と接している材料の屈折率である(前記防眩層が空気と接している場合には、n1=1)、及び4) 前記特性焦点距離f0を決定するため、前記防眩層にわたる前記F(x,y)分布のヒストグラムを計算する、ここで、前記特性焦点距離f0は、前記防眩層上で発生度合いが最も大きい焦点距離である、にしたがって計算され、前記防眩層のパワースペクトル密度が環形を有し、ここで該パワースペクトル密度は、前記表面粗さのフーリエ変換である、ことを特徴とするディスプレイデバイス。」
第3 当審において通知した拒絶の理由
当審において令和4年1月20日付けで通知した請求項1についての拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、本審決における結論の理由とする理由1及び理由3の概要は、次のとおりである。
1 理由1(進歩性)
本願の請求項1に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
2 理由3(明確性要件)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
記
(1) 「A(x,y)」の意味について
請求項1には、「A(x,y)は前記防眩層の前記表面粗さ」であると規定されているが、「表面粗さ」はどのように定義されたものであるのか、明細書及び図面の記載を参酌しても不明である。
(段落【0097】には「A(x,y)は防眩層のトポロジー」と記載されているが、「トポロジー」という表現で「表面粗さ」の定義が明らかであるとはいえない。)
(2) 「環形」の「パワースペクトル密度」について
請求項1には、「前記防眩層のパワースペクトル密度が環形を有し」と記載されているが、「環形」はどのようにして定義されるのか不明である。
(パワースペクトル密度は、本願明細書にいうところの「環の部分」で高い値になっているとしても、ステップ関数のように変化する部分が存在するものではなく、なだらかに変化していると考えられるところ、「環」の外側の境界部分及び内側の境界部分がどのように定義されるのか不明である。(半値幅のように定義されるのか、1/e(eは自然対数の底)や1/10の値で定義されるのか、不明である。)
第4 進歩性要件についての当審の判断
1 引用文献等
(1) 引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
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当審拒絶理由において引用した引用文献1(特開2003-5662号公報)には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。以下同様である。)。
(ア) 【0013】、【0016】~【0018】、【図1】
「【0013】本発明に係る表示装置の一形態につき、表示画面として液晶ディスプレイを採用する場合を例にして、図1に概略縦断面図で示す。この表示装置は、液晶セル1、その両面に配置された上偏光板2及び下偏光板3、液晶セル1を衝撃などから保護する保護板5、並びに液晶セル1を背面側から照明するバックライト7を備えており、これらが枠体10内にそれぞれ所定の位置関係で配置されている。保護板5は、液晶セル1の画像出射側(図の上側)に配置され、かつ枠体10に取り付けられた間隙部材により、液晶セル1の表示面から所定距離を保って配置されている。」
「【0016】本発明では、図1に示すような表示装置又は図2に示すようなタッチパネル式表示装置において、その保護板5又はタッチパネル6の少なくとも画像出射側、すなわち観察者側(図の上側)に、防眩処理層が設けられる。防眩処理層とは、表面に微細な凹凸が形成され、これによって眩しさを防止するための層である。このような防眩処理層は、エンボス加工等によって直接設けることもできるし、所定の防眩処理が施されたフィルム等を貼り付けることによって設けることもできる。防眩処理層を保護板5又はタッチパネル6の両面に設ける場合は、画像出射側防眩処理層のヘイズ値が画像入射側防眩処理層のヘイズ値と同じか又はそれよりも大きくなるようにする。【0017】防眩処理の問題点として、凹凸のレンズ効果による画素のギラツキがある。すなわち、画面上に光学的な輝度ムラが観察される現象である。これは、画素サイズに対して十分に小さな凹凸の防眩処理面とすることで、低減できることが知られている。さらに研究を重ねた結果、ギラツキはレンズ効果であるため、防眩処理面と画素との距離に依存していることがわかり、防眩処理面のレンズとしての焦点距離付近に画素がくるときに、ギラツキが大きくなることがわかった。例えば、ヘイズ値が4%で、中心線平均表面粗さRaが0.37μmの、ある防眩処理が施されたフィルムを液晶表示画面に貼り合わせた場合には、ギラツキがなく、良好な表示品位が得られるのに対し、同じ防眩処理が施されたフィルムを液晶表示画面から1mm離した位置に配置するとギラツキが目立つようになり、3mm以上離すとギラツキがなくなる。ここで、ヘイズ値は、 JIS K 7105 に従って測定され、(拡散光線透過率/全光線透過率)×100(%)で表される値であり、また中心線平均表面粗さRaは、 JIS B 0601 に従って測定される値である。【0018】防眩処理面のレンズ効果によるギラツキを解消する方法としては、防眩処理面が配置される位置の画素からの距離を制御する他に、複数の防眩処理層を組み合わせる方法が考えられる。例えば、画素から3mmの距離を置いて配置するとギラついてしまう、ヘイズ値が4%で、Raが0.37μmの防眩処理層について、それと画素の間で画素から1mmの位置(最初の防眩処理層からは2mmの位置)に、同じ防眩処理層を配置すると、レンズの焦点距離が崩れるため、ギラツキが低減される。」
「【図1】[図:0001394380000001.jpg]」
(イ) 【0033】、【図5】
「【0033】実施例2実施例1で用いたのと同じ防眩処理が施されたトリアセチルセルロースフィルム“TAC-AG8”を、1mm厚の強化ガラスの片面に防眩処理層が外側となるように貼り合わせて、ヘイズ値12%の防眩処理保護板を作製した。この保護板を、防眩処理層が外側、無処理面が液晶ディスプレイ側となるように、3mmの空間をあけて液晶ディスプレイ上に配置し、図5に示す層構成の液晶表示装置とした。液晶ディスプレイの表面には、クリアハードコート2bが施されている。図5において、他の符号は図3と同様である。この表示装置は、防眩性、文字ボケ及びギラツキに関して、良好な表示品位を与えるものであった。」
「【図5】[図:0001394380000002.jpg]」
(ウ) 【0035】、【図6】
「【0035】比較例1実施例1で用いたのと同じ防眩処理が施されたトリアセチルセルロースフィルム“TAC-AG8”を、1mm厚の強化ガラスの片面に防眩処理層が外側となるように貼り合わせて、ヘイズ値12%の防眩処理保護板を作製した。この保護板を、防眩処理層が外側、無処理面が液晶ディスプレイ側となるように、1mmの空間をあけて液晶ディスプレイ上に配置し、図6に示す層構成の液晶表示装置とした。液晶ディスプレイの表面には、クリアハードコート2bが施されている。図6において、他の符号は図3と同様である。この表示装置は、防眩性及び文字ボケに関しては良好であったものの、画面がギラついて、良好な表示品位が得られなかった。」
「【図6】[図:0001394380000003.jpg]」
イ 引用文献1の記載から認定した事項
引用文献1の【0033】、【図5】から、実施例2の表示装置の液晶セル1は、ガラス基板1a、画素(カラーフィルタ)層1b、配向膜1c、透明電極1d及び液晶層1eを含むことが読み取れる。
ウ 引用発明の認定
前記アにおいて摘記した事項及び前記イにおいて認定した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「 表示画面が液晶ディスプレイである表示装置であって、(【0013】)液晶セル1、その両面に配置された上偏光板2及び下偏光板3、液晶セル1を衝撃などから保護する保護板5、並びに液晶セル1を背面側から照明するバックライト7を備えており、これらが枠体10内にそれぞれ所定の位置関係で配置されており、(【0013】)保護板5は、液晶セル1の画像出射側に配置され、かつ枠体10に取り付けられた間隙部材により、液晶セル1の表示面から所定距離を保って配置されており、(【0013】)保護板5の少なくとも画像出射側、すなわち観察者側に、表面に微細な凹凸が形成され、これによって眩しさを防止するための層である防眩処理層が設けられており、(【0016】)画素サイズに対して十分に小さな凹凸の防眩処理面とすることで、凹凸のレンズ効果による画素のギラツキが低減でき、(【0017】)防眩処理面のレンズとしての焦点距離付近に画素がくるときに、ギラツキが大きくなり、同じ防眩処理が施されたフィルムを液晶表示画面から1mm離した位置に配置するとギラツキが目立つようになり、3mm以上離すとギラツキがなくなり、(【0017】)液晶セル1は、ガラス基板1a、画素(カラーフィルタ)層1b、配向膜1c、透明電極1d及び液晶層1eを含み、(【0033】、【図5】)1mm厚の強化ガラスの片面に防眩処理層5aが外側となるように貼り合わせた、ヘイズ値12%の防眩処理保護板5を、防眩処理層5aが外側、無処理面が液晶ディスプレイ側となるように、3mmの空間をあけて液晶ディスプレイ上に配置する層構成としたとき、防眩性、文字ボケ及びギラツキに関して、良好な表示品位を与える、(【0033】)表示装置。」
(2) 引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
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当審拒絶理由において引用した引用文献2(特開2011-107297号公報)には、以下の記載がある。
「【0020】1.第1の実施形態[液晶表示装置の構成]図1は、この発明の第1の実施形態による液晶表示装置の構成の一例を示す。この液晶表示装置は、図1に示すように、光を出射するバックライト3と、バックライト3から出射された光を時間的空間的に変調して画像を表示する液晶パネル2とを備える。液晶パネル2の両面にはそれぞれ、偏光子2a、2bが設けられている。液晶パネル2の表示面側に設けられた偏光子2bには、光学フィルムとしての防眩性フィルム1が設けられている。ここでは、フィルムには、従来、フィルムと称されるもののみならず、シートと称されるものも含むものと定義する。また、防眩性フィルム1またはハードコート層12が一主面に形成された偏光子2bを防眩性偏光子4と称する。」
「【0025】[防眩性フィルムの構成]図2は、この発明の第1の実施形態による防眩性フィルム1の構成の一例を示す断面図である。防眩性フィルム1は、図2に示すように、凹凸面を有する基材11と、この基材11の凹凸面上に形成されたハードコート層12とを備える。【0026】続きを表示(全13行)防眩性フィルム1は、表面に凹凸を有し、この凹凸により反射光を散乱させる防眩性フィルムである。この表面の凹凸形状は、3次元的にある程度不規則(ランダム)な凹凸形状であるため、モアレの発生を抑制することができる。ここで、3次元的に不規則とは、防眩性フィルム1の面内方向に凹凸が不規則に形成されているとともに、防眩性フィルム1の厚さ方向(凹凸の高さ方向)にも凹凸が不規則に形成されていることをいう。【0027】また、防眩性フィルム1の凹凸形状は、ぎらつきを抑制するのに最適な形状となっている。ここで、ぎらつきとは、シンチレーションやスペックルのような、表示装置の投影画面中にランダムに存在する輝点の集まりを表し、その輝点の周辺の像が輝度ばらつきで微小に歪む光学特性を表している。この輝点が面内に分布した場合、頻度が高いとぎらぎら感のある画像が目に見える。このぎらつきは、表面に凹凸形状が形成された防眩性フィルム1では、必ず発生するものである。【0028】このぎらつきを抑制するために、防眩性フィルム1の凹凸形状は、以下の方法によって得られたパワースペクトルの波数10(1/mm)付近に存在するピークの値を指標にして、規定されている。【0029】すなわち、まず、防眩性フィルム1の表面を、表面粗さ計によって測定し、この測定によって得られる断面曲線のデータを、フーリエ変換し、1mm当たりの波数(空間周波数)と、空間周波数に対するパワースペクトルを求める。そして、この求められたパワースペクトルの波数10(1/mm)付近に存在するピークの値を、防眩性フィルム1の凹凸形状を規定する指標とする。【0030】防眩性を発揮する防眩性フィルム1では、経験的に、上記のパワースペクトルにおいて、波数10(1/mm)付近にピークが存在することがわかっている。換言すると防眩性を発揮する防眩性フィルム1では、上記のパワースペクトルの波数10(1/mm)付近に存在するピークが特徴的なピークであるといえる。したがって、防眩性フィルム1では、防眩性を発揮する防眩性フィルムの特徴的なピークである、上記のパワースペクトルの波数10(1/mm)付近に存在するピークの値を、表面の凹凸形状を規定する指標とする。」
「【0121】[断面曲線データのフーリエ変換]以下のようにして、表面粗さを測定し、得られた断面曲線データをフーリエ変換した。【0122】続きを表示(全17行)(表面粗さの測定)触針式表面粗さ計(小阪研究所製 製品名:サーフコーダーET-4000)によって、実施例1の防眩性フィルム(ハードコード層)の表面形状を測定した。測定条件触針:先端R=0.5μmR測定長:4mm送り速さ:0.1mm/s【0123】以上の測定条件で測定した表面形状の実空間凹凸分布(断面曲線)を図7に示す。Z方向は膜厚方向の凹凸形状の高さを表す。さらに水平方向は触針の送り距離を表す。【0124】(フーリエ変換)図7に示す触診送り方向と凹凸振幅方向の断面曲線のデータから凹凸形状の波数(1/mm)成分をフーリエ変換で抽出した。その結果を図8Aに示す。【0125】実施例2~実施例5および比較例1~比較例5の防眩性フィルムについても同様に、表面形状を測定し、測定結果の断面曲線のデータを、フーリエ変換し、凹凸形状の波数(1/mm)成分を抽出した。実施例2~実施例5および比較例1~比較例5の各断面曲線のデータをフーリエ変換して得た各パワースペクトルを、図8Bおよび図8Cおよび図9~図11に示す。」
「【0142】また、上述の実施形態では、本発明を表示装置に対して適用する場合を例として説明したが、本発明はタッチパネルなどに対しても適用することも可能である。」
「【図1】[図:0001394380000004.jpg]」
「【図7】[図:0001394380000005.jpg]」
「【図8】[図:0001394380000006.jpg]」
イ 引用文献2技術事項の認定
上記アに摘記された事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2技術事項]
「液晶表示装置の液晶パネル2の表示面側に設けられた偏光子2bに、光学フィルムとしての防眩性フィルム1が設けられており、(【0020】)防眩性フィルム1は、表面に凹凸を有し、この凹凸により反射光を散乱させ、この表面の凹凸形状は、3次元的にある程度不規則(ランダム)な凹凸形状であり、3次元的に不規則とは、その面内方向に凹凸が不規則に形成されているとともに、その厚さ方向(凹凸の高さ方向)にも凹凸が不規則に形成されていることをいい、(【0026】)防眩性フィルム1の凹凸形状は、ぎらつきを抑制するのに最適な形状となっており、(【0027】)防眩性フィルム1の表面を表面粗さ計によって測定し、この測定によって得られる断面曲線のデータをフーリエ変換し、1mm当たりの波数(空間周波数)と、空間周波数に対するパワースペクトルを求めると、(【0029】)防眩性を発揮する防眩性フィルム1では、経験的に、上記のパワースペクトルにおいて、波数10(1/mm)付近にピークが存在することがわかっており、(【0030】)図7に示す触診送り方向と凹凸振幅方向の断面曲線のデータから凹凸形状の波数(1/mm)成分をフーリエ変換で抽出すると、図8Aに示す結果となり、(【0124】)タッチパネルなどに対しても適用することも可能であること。(【0142】)」
(3) 技術常識について
次のアの「曲率半径の公式」及びイの「レンズメーカーの公式」は、いずれも技術常識である。
ア 曲率半径の公式
曲線y=f(x)の曲率半径R(x)は、次の公式で与えられること。
[図:0001394380000007.jpg]
[図:0001394380000008.jpg]
上記曲率半径の公式の導出については、2010年5月15日にインターネットアーカイブ社のWayback Machineにより収集された、次のURLにおいて閲覧できる。
https://web.archive.org/web/20100515044610/http://hooktail.sub.jp/vectoranalysis/Curvature/
イ レンズメーカーの公式
球面レンズの焦点距離fは、レンズの素材の屈折率nとレンズの球面の曲率半径から求めることができ、空気中にある単レンズの焦点距離fは、次のレンズメーカーの公式から計算できること。
[図:0001394380000009.jpg]
ここで、nはレンズの屈折率、R1はレンズ第1面の曲率半径、R2はレンズ第2面の曲率半径を表し、レンズの厚さdはR1、R2に比べて無視できる程度に小さいとする。
[図:0001394380000010.jpg]
上記図は、次のURLに掲載された記事から引用した。
https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-ba0d.html
上記記事は、2010年5月16日にインターネットアーカイブ社のWayback Machineにより収集され、次のURLで閲覧できる。
https://web.archive.org/web/20100516110251/https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-ba0d.html
2 対比・判断
(1) 対比
以下、請求項1の記載に沿って、本願発明と引用発明を対比する。
ア(ア) 引用発明の「表示画面が液晶ディスプレイである表示装置」は、本願発明の「ディスプレイデバイス」に相当する。
(イ) 引用発明の「液晶セル1」は、「ガラス基板1a、画素(カラーフィルタ)層1b、配向膜1c、透明電極1d及び液晶層1e」を含むところ、「画素(カラーフィルタ)層1b」により、RGBの副画素が形成されていることは自明であるから、引用発明の「液晶セル1」は、本願発明の「赤色、緑色ならびに青色のサブピクセルを含むピクセルアレイを有する、ピクセル基板」に相当する。
(ウ) 引用発明の「1mm厚の強化ガラスの片面に防眩処理層5aが外側となるように貼り合わせた、ヘイズ値12%の防眩処理保護板5」の「防眩処理層5a」は、本願発明1の「前記ピクセル基板に対して配置された防眩層」に相当する。
(エ) 前記(ア)~(ウ)の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、「ディスプレイデバイスにおいて、赤色、緑色ならびに青色のサブピクセルを含むピクセルアレイを有する、ピクセル基板、及び、前記ピクセル基板に対して配置された防眩層を有する、ディスプレイデバイス」である点で一致する。
イ(ア) 引用発明では、「画素のギラツキ」は「凹凸のレンズ効果による」ものであり、「防眩処理面のレンズとしての焦点距離付近に画素がくるときに、ギラツキが大きくなり、同じ防眩処理が施されたフィルムを液晶表示画面から1mm離した位置に配置するとギラツキが目立つようになり、3mm以上離すとギラツキがなくな[る]」から、引用発明の防眩処理層5aの表面の微細な凹凸のほとんどについて、その凸部の焦点距離は1mm程度であり、凸部の焦点距離の統計上の代表値の代表例である最頻値も1mm程度であるといえる。
(イ) ここで、本願発明の「特性焦点距離」が「防眩層上で発生度合いが最も大きい焦点距離である」(本願明細書の段落【0102】)ことを踏まえると、引用発明の防眩処理層5aの凸部の焦点距離の最頻値(1mm程度)は、本願発明の「特性焦点距離」に相当する。
(ウ) 引用発明では、「1mm厚の強化ガラスの片面に防眩処理層5aが外側となるように貼り合わせた、ヘイズ値12%の防眩処理保護板5を、防眩処理層5aが外側、無処理面が液晶ディスプレイ側となるように、3mmの空間をあけて液晶ディスプレイ上に配置する層構成」としており、引用発明の液晶セル1のガラス基板1aの防眩側の面と防眩処理層5aとの間の光学距離(以下「層間距離」という。)は、強化ガラスの厚み1mmに空間3mmを加えた4mm程度に少なくとも設定されているといえる。
(強化ガラスの屈折率や、ガラス基板上にある上偏光板2、クリアハードコート層2bの厚みを考慮すれば、実際の層間距離は4mmよりも大きいといえる)。
(エ) 上記(イ)及び(ウ)の検討結果を踏まえると、引用発明の「防眩処理層5a」の凸部の焦点距離の最頻値(1mm程度)は、層間距離(4mm程度)の1/3を越えることはないから、このことは、本願発明の「該防眩層の特性焦点距離が前記ピクセル基板の防眩側の面と前記防眩層との間の光学距離の大きくとも1/3である」ことに相当する。
(オ) 引用発明の「防眩処理層5a」は、「画素サイズに対して十分に小さな凹凸の防眩処理面」であり、凹凸の空間周波数が定義できることは明らかであるから、何らかの値の空間周波数をもつ表面粗さを有しているといえる。
(カ) 以上を踏まえると、本願発明と引用発明は、「該防眩層の特性焦点距離が前記ピクセル基板の防眩側の面と前記防眩層との間の光学距離の大きくとも1/3であるような空間周波数をもつ表面粗さを有する防眩層」を有する点で一致する。
(2) 一致点及び相違点の認定
前記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、以下のイに示す相違点1及び相違点2において相違する。
ア 一致点
「ディスプレイデバイスにおいて、赤色、緑色ならびに青色のサブピクセルを含むピクセルアレイを有する、ピクセル基板、及び前記ピクセル基板に対して配置された防眩層であって、該防眩層の特性焦点距離が前記ピクセル基板の防眩側の面と前記防眩層との間の光学距離の大きくとも1/3であるような空間周波数をもつ表面粗さを有する防眩層、を有する、ディスプレイデバイス」である点。
イ 相違点
[相違点1]
本願発明においては、「防眩層の特性焦点距離」が、以下の手順1)から4)に従って計算されることが特定されているのに対して、
引用発明では、そのような手順により焦点距離が計算されることが特定されていない点。
「 1)前記防眩層の二次偏微分:B(x,y)=d2A(x,y)/dx2を計算する。ここで、続きを表示(全21行)A(x,y)は前記防眩層の前記表面粗さ、B(x,y)は二次偏微分、xは、ディスプレイパネルにおける、前記赤色、緑色ならびに青色のサブピクセルが配置された方向、である。2)特定の場所における局所曲率半径:R(x,y)=1/B(x,y)を計算する。ここで、R(x,y)は局所曲率半径である。3)局所焦点距離:F(x,y)=R(x,y)/(n2-n1)を計算する。ここで、F(x,y)は局所焦点距離、n1ならびにn2は前記防眩層を定める材料の屈折率であり、n2は該防眩層を形成する材料の屈折率、n1は該防眩層の粗面化された面と接している材料の屈折率である(前記防眩層が空気と接している場合には、n1=1)。及び4)前記特性焦点距離f0を決定するため、前記防眩層にわたる前記F(x,y)分布のヒストグラムを計算する。ここで、前記特性焦点距離f0は、前記防眩層上で発生度合いが最も大きい焦点距離である。」
[相違点2]
本願発明においては、「前記防眩層のパワースペクトル密度が環形を有し、ここで該パワースペクトル密度は、前記表面粗さのフーリエ変換である」としているのに対して、
引用発明においては、画素サイズに対して十分に小さな凹凸の防眩処理面とすることを特定するのみであり、防眩処理層5aのパワースペクトル密度がどのようなものであるか明らかではない点。
(3) 判断
ア 相違点1について
(ア) 手順1)及び手順2)について
a ディスプレイデバイスの防眩層の光学特性については、その通常の使用形態を考慮すると当該ディスプレイからの正面光に着目して防眩効果の評価を行うのが適切であり、防眩層の凹凸を表す曲線の最前部は極大値の部分の位置に相当することから、この位置において防眩層の凹凸を表す曲線の1階微分(dy/dx)はほぼ0(ゼロ)になることは自明である。
b ここで、一般にxy平面上にある曲線y=f(x)の曲率半径R(x)は、以下の公式により計算できることは技術常識である(前記1(3)アを参照)。
[図:0001394380000011.jpg]
c この公式の最右辺において、分子の(dy/dx)を0とすると分子は1になり、分母には2階微分の項があるから、本願発明の局所曲率半径R(x,y)を求めるための以下の計算式に実質的に等しくなることは明らかである。
R(x,y)=1/B(x,y)
ただし、B(x,y)=d2A(x,y)/dx2
d すなわち、本願発明の手順1)及び手順2)は、「局所曲率半径」を計算すべき「特定の場所」を、防眩層の凹凸を表す曲線の最前部(1階微分(dy/dx)が0になる位置)に設定して、通常の曲率半径の公式に従って計算することを特定したものにすぎない。
したがって、手順1)及び手順2)を特定した点は、初等数学を用いて表現した表現の差にすぎず、実質的な相違点ではない。
(イ) 手順3)について
局所焦点距離F(x,y)の計算式:
F(x,y)=R(x,y)/(n2-n1)
は、以下の技術常識であるレンズメーカーの公式(前記1(3)イを参照)において、レンズの屈折率のn及び空気の屈折率1の代わりに、それぞれ、防眩層を形成する材料の屈折率n2、該防眩層の粗面化された面と接している材料の屈折率n1(防眩層が空気と接している場合には、n1=1)とし、かつ、R2の値が無限大である(防眩層の片面が平面状である)と近似したものに実質的に等しいから、本願発明の手順3)は、レンズメーカーの公式に従って、局所的な焦点距離を計算することを特定したものにすぎない。
[図:0001394380000012.jpg]
すなわち、手順3)を特定した点は、技術常識であるレンズメーカーの公式を用いて焦点距離を表現したという、表現の差にすぎず、実質的な相違点ではない。
(ウ) 手順4)について
a 「特性焦点距離f0」については、「防眩層によって与えられる山及び谷が個々のマイクロレンズとして作用する」と考えると(本願明細書段落【0083】の記載を参照。)、防眩層全体を個々のマイクロレンズの集合体とみなすことができるところ、個々のレンズの焦点距離にはばらつきがあるため、それらを代表する目安としての焦点距離を設定したものである。
b そして、このような代表値としての焦点距離を定義するにあたって、個々のマイクロレンズの焦点距離(局所焦点距離)の分布のヒストグラムを計算し、その発生度合いが最も大きいものとすることは、統計学上の典型的な手法を利用したことにすぎない。
すなわち、手順4)を特定した点は、統計学上の典型的な手法を用いて最頻値を計算することを表現したにすぎず、実質的な相違点ではない。
(エ) 相違点1についてのまとめ
前記(ア)~(ウ)における各手順についての検討結果をまとめると、上記相違点1に係る構成は、防眩層の焦点距離がどの程度の値になるかを評価する際に、防眩層全体を個々のマイクロレンズの集合体とみなすことにより、曲率半径の公式やレンズメーカーの公式などの技術常識に基づいて特性焦点距離を数学的に表現したものであるから、相違点1は、技術的思想の創作を特定する際の表現上の相違にすぎず、物の発明の構成における実質的な相違点であるとは認められない。
また、相違点1に係る構成は、当業者が当然なし得た計算手順を規定したものにすぎないものでもある。
イ 相違点2について
(ア) 引用文献2技術事項には、「液晶表示装置の液晶パネル2の表示面側に設けられた偏光子2bに」設けられた「防眩性フィルム1」であって、「表面に凹凸を有し、この凹凸により反射光を散乱させ」、「凹凸形状は、ぎらつきを抑制するのに最適な形状となって」いるものが開示されている。
(イ) そして、「防眩性フィルム1」の「断面曲線のデータをフーリエ変換し、1mm当たりの波数(空間周波数)と、空間周波数に対するパワースペクトルを求めると、防眩性を発揮する防眩性フィルム1では、経験的に、上記のパワースペクトルにおいて、波数10(1/mm)付近にピークが存在することがわかっており」、具体的には、図8Aに示された結果から、パワースペクトルの概形は、空間周波数がk0から0に近づくにつれてパワースペクトルは減少するとともに、k0よりも大きくなるにつれてパワースペクトルは減少するような形を示すことが読み取れる。
<図8A>
[図:0001394380000013.jpg]
(ウ) ここで、「防眩性フィルム1」の「表面の凹凸形状は、3次元的にある程度不規則(ランダム)な凹凸形状であり、3次元的に不規則とは、その面内方向に凹凸が不規則に形成されているとともに、その厚さ方向(凹凸の高さ方向)にも凹凸が不規則に形成されていることをい[う]」から、凹凸の高さzは、防眩性フィルム1の面内方向に設定したxy平面上の座標(x,y)の二変数関数であり、z=f(x,y)と表すことができる。
(エ) そして、上記図8Aに示されたパワースペクトルは、防眩性フィルム1の表面の特定方向(触診送り方向)についての断面曲線のデータからフーリエ変換により抽出したものであるから、一次元パワースペクトルであるところ、防眩性フィルム1の表面凹凸形状を表す二変数関数z=f(x,y)について、二次元フーリエ変換を行うと、二次元空間周波数(u,v)の二次元パワースペクトルが得られることになり、この二次元パワースペクトルは、uv平面上において上記空間周波数k0の値を半径とする円周上(u2+v2=k02)にパワースペクトル密度の中央部分が存在するような円環形状を示すことは明らかである。
(オ) そして、引用文献2技術事項は、「タッチパネルなどに対しても適用することも可能である」としているから、引用文献2技術事項は、ピクセル基板(液晶パネル)と防眩性フィルムの間に所定の間隔が設けられた表示装置にも適用可能である。
(カ) したがって、ぎらつきを抑制するために、引用文献2技術事項を引用発明に適用して好適化することは当業者が容易に想到し得たことであるから、上記相違点2に係る構成は格別のものではない。
ウ 総合評価
相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献2技術事項から、当業者が容易に予測し得たことである。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 請求人の主張について
ア 請求人の主張の概要
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請求人は、令和4年7月26日に提出された意見書において次の主張をしている。
本願発明は、引用文献1、2のいずれにも開示も示唆もされていない「防眩層の特性焦点距離が前記ピクセル基板の防眩側の面と前記防眩層との間の光学距離の大きくとも1/3であるような空間周波数をもつ表面粗さを有する防眩層」及び「防眩層のパワースペクトル密度が環形を有する」という構成を備え、これにより、眩光も燦光も最小限に抑える防眩層を有するディスプレイデバイスが得られるといった格別な効果を奏するから、本願発明は、引用文献1、2に基づいて容易に想到できるものではない。
イ 請求人の主張の検討
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請求人の上記主張は、以下の理由(ア)~(ウ)により採用することはできない。
(ア) 「防眩層の特性焦点距離が前記ピクセル基板の防眩側の面と前記防眩層との間の光学距離の大きくとも1/3であるような空間周波数をもつ表面粗さを有する防眩層」という構成については、前記(1)イにおいて検討したとおり、本願発明と引用発明の一致点である。
(イ) 「防眩層のパワースペクトル密度が環形を有する」という構成については、前記(3)イにおいて検討したとおり、引用文献2技術事項を引用発明に適用して当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ) 眩光も燦光も最小限に抑える防眩層を有するディスプレイデバイスが得られるといった効果については、前記(3)ウにおいて検討したとおり、引用発明及び引用文献2技術事項から、当業者が容易に予測し得たことである。
第5 明確性要件についての当審の判断
1 「A(x,y)」の意味について
(1) 「A(x,y)」の意味についての当審の判断
請求項1には、「A(x,y)は前記防眩層の前記表面粗さ」であると規定されているところ、「表面粗さ」はどのように定義されたものであるのか、明細書及び図面の記載を参酌しても不明である。
本願明細書の段落【0097】には「A(x,y)は防眩層のトポロジー」と記載されているが、「トポロジー」という表現で「表面粗さ」の定義が明らかであるとはいえない。
したがって、請求項1に係る発明は明確ではない。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人の主張内容
請求人は、令和4年7月26日に提出された意見書において次の主張をしている。
表面粗さについては、国際出願時における明細書の翻訳文の段落0081に「本明細書に用いられるように、二乗平均平方根(RMS)粗さのような、術語『粗さ』又は『表面粗さ』は、微視的レベル又は更に微細なレベルにおいて、平坦ではないか又は不規則な表面状態を指す。」と定義されている。
イ 請求人の主張についての検討
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請求人は、「表面粗さ」の例として二乗平均平方根(RMS)粗さを挙げているが、二乗平均平方根(RMS)粗さとは、ある表面に対して、所定範囲において高さ偏差の二乗を平均して平方根を取ったもの、すなわち、マクロな物理量である。一方、請求項1における「A(x,y)」は、位置(x,y)を変数とするミクロな関数であるから、マクロな物理量である二乗平均平方根(RMS)粗さを、どのようにしてミクロな関数として定義するのか不明である。
また、「A(x,y)」を「二乗平均平方根(RMS)粗さ」とした場合に、どうして、防眩層の特性焦点距離が請求項1において特定された手順1)から4)によって求められるのか、不明である。
よって、請求人の主張を検討しても、請求項1の「A(x,y)は前記防眩層の前記表面粗さ」における「表面粗さ」がどのように定義されたものであるのか、明細書及び図面の記載を参酌しても不明であることに変わりない。
したがって、請求項1に係る発明は明確ではない。
2 「環形」の「パワースペクトル密度」について
(1) 「環形」の「パワースペクトル密度」についての当審の判断
請求項1には、「前記防眩層のパワースペクトル密度が環形を有し」と記載されているところ、「環形」はどのようにして定義されるのか、明細書及び図面の記載を参酌しても不明である。
すなわち、パワースペクトル密度は、本願明細書にいうところの「環の部分」で高い値になっているとしても、ステップ関数のように変化する部分が存在するものではなく、なだらかに変化していると考えられるところ、「環」の外側の境界部分及び内側の境界部分がどのように定義されるのか不明である。
例えば、境界部分は、半値幅のように定義されるのか、1/e(eは自然対数の底)や1/10の値で定義されるのか、不明である。
そして、当該基準の取り方によっては、ドーナツ状という意味での環状になるか、中央に小さい穴が開いているような円状になるのか変わるから、当該境界部分の定義は重要であるというべきである。
したがって、請求項1に係る発明は明確ではない。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人の主張内容
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請求人は、令和4年7月26日に提出された意見書において次の主張をしている。
「環形」については、国際出願時における明細書の翻訳文の段落0115に「上述したように、いくつかの実施形態において、防眩層は、燦光を生じさせる原因である低空間周波数がヘイズを生じさせる原因である高空間周波数と同時に排除される、環形(すなわち、ドーナツ形)PSDを有することができる。図25を次に参照すれば、一例の防眩面の環形PSDがグラフで示されている。図25に示されるように、環形PSDの中心は1/20μm-1にある。したがって、望ましくない低空間周波数及び高空間周波数は存在せず、よって有意なヘイズを発現させずに、燦光を減じることができる。」と記載され、図25に示されているように、環形の内外の境界は極めて明確である。
イ 請求人の主張の検討
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請求人は、環形の内外の境界は図25に示されているように明確である旨主張しているが、パワースペクトル密度(PSD)がステップ関数のように急激に変化する部分を有しているとは考えられないから、図25に示されたものは、元々はなだらかな変化をするPSDを所定の閾値により抽出することにより、その境界を明確にしたものであることは明らかである。
請求人の主張によっても、この所定の閾値をどのように設定したのか不明なままであるから、請求人の上記主張により合議体の判断が左右されることはない。
「【図25】[図:0001394380000014.jpg]」
したがって、請求項1に係る発明は明確ではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-004589