2021-003365
自動運転制御装置
- 審判番号
- 2021-003365
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-027233外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月15日
- 審決日
- 2021年11月17日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (F02D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 6項目
第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月16日の出願であって、令和2年12月18日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和3年3月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1~12に係る発明(以下「本願発明1~12」という。)は、令和3年3月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。
「【請求項1】車両の自動運転制御を実行すべく、前記車両の自動運転機器を制御する自動運転制御部(472)と、前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、登坂路を走行中の車両が後方に向かって進むことなく前記自動運転機器が正常な状態に戻るだけの時間的な余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、前記車両が走行する道路の勾配を検出する道路勾配検出部(470)と、を備え、続きを表示(全61行)前記余裕度判定部は、前記道路の勾配の絶対値が所定の勾配判定値以下であると判断することにより、前記時間的な余裕が存在する状況であると判定し、前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する自動運転制御装置。【請求項2】車両の自動運転制御を実行すべく、前記車両の自動運転機器を制御する自動運転制御部(472)と、前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、降坂路を走行中の車両が前方に加速することなく前記自動運転機器が正常な状態に戻るだけの時間的な余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、前記車両が走行する道路の勾配を検出する道路勾配検出部(470)と、を備え、前記余裕度判定部は、前記道路の勾配の絶対値が所定の勾配判定値以下であると判断することにより、前記時間的な余裕が存在する状況であると判定し、前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する自動運転制御装置。【請求項3】前記自動運転制御部は、前記余裕度判定部の判定結果により前記時間的な余裕が存在する状況でないと判定した場合には、前記車両が現在地から所定距離だけ走行するまでの区間に、前記道路の勾配の絶対値が前記所定の勾配判定値以下になる勾配減少地点が存在するか否かを判定し、前記勾配減少地点が存在する場合には、前記エンジンの始動を一旦保留した後、前記車両が前記勾配減少地点に到達した時点で前記エンジンの始動を許可し、前記勾配減少地点が存在しない場合には、前記自動運転制御の機能を制限した状態で前記エンジンの始動を許可する請求項1又は2に記載の自動運転制御装置。【請求項4】車両の自動運転制御を実行すべく、前記車両の自動運転機器を制御する自動運転制御部(472)と、前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、障害物に接触することなく前記自動運転機器が正常な状態に戻るだけの時間的な余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、前記車両の周囲の障害物の有無を検出する障害物検出部(475)と、を備え、前記余裕度判定部は、前記車両の周辺に障害物が存在しないと判断することにより、前記時間的な余裕が存在する状況であると判定し、前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する自動運転制御装置。【請求項5】前記自動運転制御部は、前記余裕度判定部の判定結果により前記時間的な余裕が存在する状況でないと判定した場合には、前記車両のバッテリのSOC値が所定のSOC判定値以上であるか否かを判定し、前記バッテリのSOC値が前記SOC判定値以上である場合には、前記エンジンの始動を一旦保留した後、前記車両の周辺に障害物が存在しなくなった時点で前記エンジンの始動を許可し、前記バッテリのSOC値が前記SOC判定値未満である場合には、前記自動運転制御の機能を制限した状態で前記エンジンの始動を許可する請求項4に記載の自動運転制御装置。【請求項6】車両の自動運転制御を実行すべく、前記車両の自動運転機器を制御する自動運転制御部(472)と、前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、前記車両の運転状態を自動運転から運転者の手動運転に引き継ぐだけの余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、運転者が前記車両を手動操作できる状態であるか否かを判定する運転者判定部(476)と、を備え、前記余裕度判定部は、前記運転者判定部の判定結果において運転者が前記車両を手動操作できる状態であると判定されることに基づいて、前記余裕が存在する状況であると判定し、前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する自動運転制御装置。【請求項7】前記自動運転制御部は、前記余裕度判定部の判定結果により前記余裕が存在する状況でないと判定した場合には、前記車両のバッテリのSOC値が所定のSOC判定値以上であるか否かを判定し、前記バッテリのSOC値が前記SOC判定値以上である場合には、前記エンジンの始動を一旦保留した後、運転者が前記車両を運転できる状態になった時点で前記エンジンの始動を許可し、前記バッテリのSOC値が前記SOC判定値未満である場合には、前記自動運転制御の機能を制限した状態で前記エンジンの始動を許可する請求項6に記載の自動運転制御装置。【請求項8】前記自動運転制御部は、前記自動運転制御の機能の制限として、前記始動機を除く一乃至複数の電気負荷への電力供給を制限する請求項3,5,7のいずれか一項に記載の自動運転制御装置。【請求項9】電力供給の制限対象となる前記電気負荷は、前記エンジンの始動期間に電力供給を一時的に制限した場合でも前記自動運転制御に支障のない電気負荷である請求項8に記載の自動運転制御装置。【請求項10】前記自動運転制御部は、前記エンジンの始動を許可した後に前記電気負荷への電力供給の制限を解除する請求項8又は9に記載の自動運転制御装置。【請求項11】前記自動運転制御部は、前記自動運転制御の機能の制限として、前記車両の速度を所定の制限速度以下に制限する請求項3,5,7のいずれか一項に記載の自動運転制御装置。【請求項12】前記自動運転制御部は、前記自動運転制御の機能の制限として、前記自動運転機器の少なくとも一部の機能を制限する請求項3,5,7のいずれか一項に記載の自動運転制御装置。」
2 拒絶査定の理由
拒絶査定の理由は、概略以下のとおりである。
本願発明1、2、4、6、8は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1~4、7~9に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2015/118570号
2.特開2017-19466号公報
3.特開2016-128694号公報
4.特開2014-202158号公報
5.特開2016-133985号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2016-159781号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2016-38768号公報
8.特開2017-8738号公報
9.特開2006-112386号公報
3 当審の判断
(1)引用文献1を主引用発明とする本願発明1について
ア 引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「技術分野[0001] 本発明は、車両の制御装置および車両の制御方法に関し、特に、所定条件で内燃機関を停止、再始動させる機能を有する車両の制御装置および車両の制御方法に関する。背景技術[0002] 車両の燃費を改善するために、信号待ちなどでエンジンを自動停止させ、その後自動再始動させる、いわゆるアイドルストップ機能を有する車両がある。アイドルストップをさせるためには種々の条件があり、路面勾配はそのうちの一つの条件である。ところで、傾斜地でアイドルストップをさせたあと、再始動するときに、各種故障により車両が予期しない移動をすることがある。従来、アイドルストップの故障判定が完了するまで、アイドルストップを許可する路面勾配を変更するアイドルストップ車両が知られている(特許文献1参照)。しかし、車両の制御として、アイドルストップ以外にも様々な機能があり、それらの機能と関連してアイドルストップ機能を制御する必要がある。」
(イ)「[0031] LSF制御部240は、低速追従機能(Low Speed Following)を制御する。低速追従機能(以下「LSF」と呼ぶ。)は、アダプティブ・クルーズ・コントロール(Adaptive Cruise Control)機能の一種である。アダプティブ・クルーズ・コントロール機能(以下「ACC」と呼ぶ。)は、所定の追従制御条件の成立により自車両の前方を走行している他の車両に追従する走行制御を行う機能である。在来のクルーズコントロールが、自車の速度を設定した速度に一定に保つ事を目的としたシステムであるのに対し、ACCは、先行車との車間距離一定に保つ機能を併せ持っているため、車速維持システムであると同時に、ある種の車両追随システムとしての側面も併せ持つ。LSF制御部240は、約30km/h以下の渋滞走行時などでも,先行車との車間距離を保つようにアクセルとブレーキを自動制御するLSF制御をする。」
(ウ)「[0033] アイドルストップ制御部260は、エンジン120の自動停止始動手段である。アイドルストップ制御部260は、所定の停止条件の成立によりエンジン120を停止し、所定の再始動条件の成立によりエンジン120を再始動させる、アイドルストップ制御を行う。所定の停止条件、再始動条件としては、路面勾配、車速、車間距離、エンジン水温、潤滑油温度、ブレーキ液圧などがある。アイドルストップ制御部260は、たとえば信号待ちの停車中のときなどにエンジン120を自動停止、再始動させる制御を行う。なおアイドルストップは、アイドリングストップ、ノーアイドリング(no idling)、またはアイドル・リダクション(idle reduction)とも呼ばれている。」
(エ)「[0037] ≪第1実施形態≫本発明の第1の実施形態に係る車両の制御装置について説明する。LSFは、運転者がブレーキペダルを踏まなくてもVSA制御部250のブレーキ制御により車両が停車する機能を有しているため、ブレーキペダルを踏むことなくアイドルストップをすることがあった。そのときに昇圧装置130が故障していた場合は、アイドルストップからのエンジン再始動でクランキング時の電圧低下が発生し、VSAがリセットする可能性があった。[0038] VSAがリセットしてしまうと車両に制動力が加わらない状態となり、しかも運転者はブレーキ関係の操作をしていないので、駆動力や制動力が共に無いために坂道では移動量が増す可能性があった。続きを表示(全14行)アイドルストップには種々の停止条件、再始動条件が設定されており、その中のひとつとして路面勾配が勾配閾値以下という路面勾配条件がある。アイドルストップ制御部260は、LSF作動中は、その勾配条件を緩やかな勾配に変更する。アイドルストップ制御部260は、現在の勾配が、緩やかな勾配に設定した勾配条件の範囲外であれば、アイドルストップを許可しないようにエンジン停止条件を変更することで、坂道での運転者が予期しない車両の移動を防止することができる。[0039] 図2は、本発明の第1の実施形態に係る車両の制御装置の動作手順を示すフロー図である。なお、図2以下の図面の表記では、アイドルストップを単に「IS」と略す。[0040] ステップS110で、アイドルストップ制御部260は、LSF作動中か判定する。LSF作動中か否かは、記憶ユニット170にLSF制御部240が書き込んだ設定内容から判別される。そのLSF作動中でなければステップS120へ移行する。LSF作動中であればステップS130へ移行する。ステップS120で、アイドルストップ制御部260は、勾配閾値として通常の勾配である勾配閾値1を設定する。勾配閾値1は、たとえば上り勾配14%、下り勾配10%とする。なお、勾配閾値は記憶ユニット170に格納されている。ステップS140へ移行する。[0041] ステップS130で、アイドルストップ制御部260は、勾配閾値に勾配閾値1より小さい勾配である勾配閾値2を設定する。勾配閾値2は、ほぼ平坦とみなせる範囲を基準に設定される。たとえば上り勾配3%、下り勾配3%とする。ステップS140へ移行する。ステップS140で、アイドルストップ制御部260は、勾配算出部220で算出された路面の勾配が、勾配閾値以内か判定する。勾配閾値以内であればステップS150へ移行する。勾配閾値以内でなければステップS160へ移行する。[0042] ステップS150で、アイドルストップ制御部260は、アイドルストップを作動させる処理を実行する。その後終了する。ステップS160で、アイドルストップ制御部260は、アイドルストップを作動させない非作動処理を実行する。その後終了する。[0043] 以上の手順により、LSFが作動中であれば、現在の路面勾配が、通常の勾配閾値より小さな勾配閾値以下でなければアイドルストップを作動させないようにエンジン停止条件を変更する。これにより、アイドルストップを許可する路面勾配を狭めるようにエンジン停止条件を変更することで、昇圧装置130が故障していた場合であっても車両が移動することを防止することができる。」
(オ)「【図2】[図:0001380794000001.jpg]」
イ 引用発明1
上記記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「低速追従機能(LSF)を行うLSF制御部240と、現在の勾配が、緩やかな勾配に設定した勾配条件の範囲外であれば、アイドルストップを許可しないようにエンジン停止条件を変更することで、坂道での運転者が予期しない車両の移動を防止するアイドルストップ制御部260とを有し、所定の再始動条件の成立によりエンジン120を再始動させる車両の制御装置。」
ウ 本願発明1と引用発明1の対比・判断
(ア)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
・引用発明1の「低速追従機能(LSF)」は、自動運転であるから、本願発明1の「自動運転制御」に相当し、引用発明1の「低速追従機能(LSF)」を有する「車両の制御装置」は、本願発明1の「自動運転制御装置」に相当する。
・引用発明1の「低速追従機能(LSF)を行うLSF制御部240」は、本願発明1の「車両の自動運転制御を実行すべく、前記車両の自動運転機器を制御する自動運転制御部(472)」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、
<一致点>
「車両の自動運転制御を実行すべく、前記車両の自動運転機器を制御する自動運転制御部(472)とを有する、自動運転制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1は、「前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、登坂路を走行中の車両が後方に向かって進むことなく前記自動運転機器が正常な状態に戻るだけの時間的な余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、 前記車両が走行する道路の勾配を検出する道路勾配検出部(470)と、を備え、 前記余裕度判定部は、前記道路の勾配の絶対値が所定の勾配判定値以下であると判断することにより、前記時間的な余裕が存在する状況であると判定し、 前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する」のに対して、引用発明1は、そのように特定されていない点。
(イ)当審の判断
上記相違点1について検討する。
本願発明1の「前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する」について、請求項1を引用する請求項3の「前記余裕度判定部の判定結果により前記時間的な余裕が存在する状況でないと判定した場合には、前記車両が現在地から所定距離だけ走行するまでの区間に、前記道路の勾配の絶対値が前記所定の勾配判定値以下になる勾配減少地点が存在するか否かを判定し、」「前記勾配減少地点が存在しない場合には、前記自動運転制御の機能を制限した状態で前記エンジンの始動を許可する」との記載を参照すると、請求項1の「前記エンジンの始動を許可する」は、自動運転制御の機能の制限等が行われない通常のエンジン始動を行うことを意味していると理解される。
そして、本願発明1は、「前記時間的な余裕が存在する状況であると判定され」た場合について特定されているが、「前記余裕度判定部の判定結果により前記時間的な余裕が存在する状況でないと判定した場合」について、何ら特定されていないから、請求項1の当該記載と、請求項3の「前記余裕度判定部の判定結果により前記時間的な余裕が存在する状況でないと判定した場合には、前記車両が現在地から所定距離だけ走行するまでの区間に、前記道路の勾配の絶対値が前記所定の勾配判定値以下になる勾配減少地点が存在するか否かを判定し、」「前記勾配減少地点が存在しない場合には、前記自動運転制御の機能を制限した状態で前記エンジンの始動を許可する」との記載が不整合であるともいえない。
したがって、本願発明1の当該記載は明確である。
一方、引用文献1~9には、上記相違点1に係る本願発明1の事項について、何ら記載も示唆もなく、周知であるとする証拠もない。
ゆえに、引用発明1において、上記相違点1に係る本願発明1の事項とすることを、当業者が容易に想到することができたとは、いえない。
(2)引用文献2を主引用発明とする本願発明1について
ア 引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、自動車等の車両の運転支援のための制御装置に係り、より詳細には、車両の走行中に、所定の条件下にて駆動用原動機の作動を停止して車両をその慣性により走行させる惰性走行制御と、自動的に車両の操舵を実行する自動操舵制御とが実行される構成に於ける車両の運転支援装置に係る。」
(イ)「【0032】同図を参照して、まず、惰性走行制御部からの制御状態を表す信号Pfを参照して、惰性走行中か否か(エンジンが停止しているか否か)が判定され(ステップ10)、惰性走行中であるときには、自動操舵制御部からの制御状態を表す信号Psを参照して、自動操舵制御の実行中か否かが判定される(ステップ12)。自動操舵制御の実行中であるときには、始動要求の有無の判定として、アクセルペダルの踏込み操作の有無の判定-即座に実行する必要性の高いエンジンの始動要求の有無の判定(ステップ14)と、その他のシステムによる始動要求の有無の判定-即座に実行する必要性の低いエンジンの始動要求の有無の判定(ステップ20)が為される。また、自動操舵制御の実行中ではないが(ステップ12)、運転者によるウィンカー又はLC制御若しくはLTC制御開始のスイッチ(ウィンカー等)の操作が在った場合(ステップ28)には、これから、自動操舵制御が実行され、その場合、本実施形態に於いては、惰性走行中であるときには、惰性走行制御部は、ウィンカー等の操作に応答してエンジンの始動を実行するようになっていてよい。従って、自動操舵制御の実行中ではないが、ウィンカー等の操作があったときには、図2(A)に示されている如く、以降の処理に於いて、即座に実行する必要性の低いエンジンの始動要求があった場合と同様の処理が実行されてよい。【0033】上記の始動要求についての判定に於いて、即座に実行する必要性の高いアクセルペダルの踏込み操作が有ったと判定されたときには、操舵トルク変動発生通知を実行し(MID表示)(ステップ16)、そのまま、エンジンの始動が実行される(ステップ18)。MID表示としては、例えば、図2(B)に描かれている如き表示が表示器46に表示されてよい。【0034】一方、エンジンの始動要求が、その他のシステムによる始動要求であった場合、具体的には、バッテリ電圧の低下、車速の低下、エコドライブモードスイッチのOFFへの切り替え、ウィンカー等のON操作等であったときには、道路の曲率Rが所定曲率Roより大きいか否かが判定される。ここで、所定曲率Roは、その値よりも道路の曲率Rが大きいときには、操舵トルクの低減を実行すると、車両運動に対する影響が大きくなる値であり、実験的又は理論的に任意の手法にて決定される。そして、道路の曲率Rが所定曲率Roより大きいときには、操舵トルクの低減処理を実行せずに、即座に実行する必要性の高いアクセルペダルの踏込み操作が有ったときと同様に、操舵トルク変動発生通知を実行し(MID表示)(ステップ16)、そのまま、エンジンの始動が実行される(ステップ18)。【0035】他方、道路の曲率Rが所定曲率Roより小さいときには、現に作用している実操舵トルクが所定の微小トルク値Stより小さいか否かが判定される(ステップ24)。ここで、所定の微小トルク値Stは、この値よりも実操舵トルクが小さい場合には、エンジンの始動を実行しても、上記の運転者に違和感を与える操舵トルクの過渡的な変動が生じない値である。かくして、実操舵トルクが所定の微小トルク値Stより小さいときには、操舵トルクの低減処理は不要となるので、そのまま、エンジンの始動が実行される(ステップ18)(MID表示も不要である。)。」
(ウ)「【図2】[図:0001380794000002.jpg]」
イ 引用発明2
上記記載を総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「自動操舵制御の実行中であるときに、アクセルペダルの踏込み操作の有無の判定-即座に実行する必要性の高いエンジンの始動要求の有無の判定(ステップ14)と、その他のシステムによる始動要求の有無の判定-即座に実行する必要性の低いエンジンの始動要求の有無の判定(ステップ20)が為され、アクセルペダルの踏込み操作が有ったと判定されたときには、操舵トルク変動発生通知を実行し(MID表示)(ステップ16)、エンジンの始動が実行され(ステップ18)、その他のシステムによる始動要求であった場合には、道路の曲率Rが所定曲率Roより大きいか否かが判定され、道路の曲率Rが所定曲率Roより大きいときには、操舵トルク変動発生通知を実行し(MID表示)(ステップ16)、エンジンの始動が実行し(ステップ18)、他方、道路の曲率Rが所定曲率Roより小さいときには、現に作用している実操舵トルクが所定の微小トルク値Stより小さいか否かが判定され(ステップ24)、実操舵トルクが所定の微小トルク値Stより小さいときには、エンジンの始動が実行される車両の運転支援装置。」
ウ 本願発明1と引用発明2の対比・判断
(ア)対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
・引用発明2の「自動操舵制御」は、自動運転であるから、本願発明1の「自動運転制御」に相当し、引用発明2の「自動操舵制御」を実行する「車両の運転支援装置」は、本願発明1の「自動運転制御装置」に相当する。
・引用発明2の「自動操舵制御」を実行する態様は、当然に自動運転制御を行う制御部を有することが明らかであるから、本願発明1の「車両の自動運転制御を実行すべく、前記車両の自動運転機器を制御する自動運転制御部(472)」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、
<一致点>
「車両の自動運転制御を実行すべく、前記車両の自動運転機器を制御する自動運転制御部(472)を有する、 自動運転制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
本願発明1は、「前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、登坂路を走行中の車両が後方に向かって進むことなく前記自動運転機器が正常な状態に戻るだけの時間的な余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、
前記車両が走行する道路の勾配を検出する道路勾配検出部(470)と、を備え、
前記余裕度判定部は、前記道路の勾配の絶対値が所定の勾配判定値以下であると判断することにより、前記時間的な余裕が存在する状況であると判定し、
前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する」のに対して、引用発明2は、そのように特定されていない点。
(イ)当審の判断
上記相違点2について検討する。
引用文献1~9には、上記相違点1に係る本願発明1の事項について、何ら記載も示唆もなく、周知であるとする証拠もない。
ゆえに、引用発明2において、上記相違点2に係る本願発明1の事項とすることを、当業者が容易に想到することができたとは、いえない。
(3)引用文献3を主引用発明とする本願発明1について
ア 引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【技術分野】【0001】この発明は、車両の衝突被害軽減制御装置に係り、車両が衝突するおそれがある場合に、車輪に制動力を付加して、その衝撃を低減する車両の衝突被害軽減制御装置であって、特に所定の車速よりも低い車速で走行している場合に、エンジンを自動停止するアイドルストップシステムを備えた車両の衝突被害軽減制御装置に関する。」
(イ)「【0012】また、車両1には、図2に示すように、アイドルストップシステム3の制御手段7を用いた衝突被害軽減制御装置(プリクラッシュセーフティシステム:PCS装置)10が設けられる。従って、制御手段7は、PCSコントローラとしても機能するものである。この衝突被害軽減制御装置10では、車両1の衝突の可能性を検出する衝突可能性検出手段(レーダ等の機器)11と、乗員のブレーキ操作を補助する制動力助勢手段(ブレーキ倍力装置)12と、車両1を自動制動させる自動制動手段(自動ブレーキ手段)13とを設けている。また、この衝突被害軽減制御装置10において、図2に示すように、制御手段7には、衝突可能性検出手段11により車両1の衝突の可能性を検出した時には制動力助勢手段12の作動と自動制動手段13の作動との少なくともどちらか一方を行う衝突被害軽減制御実行手段14と、エンジン2の自動停止の実施中に衝突被害軽減制御実行手段14を実施した場合には、エンジン2の自動停止を継続するとともに、制動力助勢手段12の制動力を増加させる制動力増加手段15とを備えている。これにより、図1に示すように、エンジン2の自動停止が行われているときに衝突被害軽減制御が実行(作動)した場合は、エンジン2の再始動を実施しないので、バッテリ5の電圧降下によって衝突被害軽減制御装置10の作動不良の発生を抑制でき、衝突被害軽減制御をより確実に作動させることができる。また、エンジン2の自動停止が行われて、吸気負圧が得られない状況下にあり、ブレーキシステム4の制動力助勢手段(ブレーキ倍力装置)12の機能が低下しているおそれのある場合であっても、制動力を付加させることができる。」
(ウ)「【0016】即ち、アイドルストップ中に衝突被害軽減制御装置10が作動し、その最中に、エンジン再起動した場合に、エンジン2のクランキングでの電圧降下により、衝突可能性検出手段(レーダ)11、制御手段7、シートベルトコントローラ、ブレーキコントローラが制御不能になり、衝突被害軽減制御装置10が途中で作動できなくなることも考えられる。そこで、衝突被害軽減制御装置10の作動中は、エンジン2のクランキングを禁止とする。 また、衝突被害軽減制御装置10が作動中である場合には、乗員のフットブレーキ操作を補助してブレーキ圧を増圧する衝突被害軽減制御装置10でのブレーキアシスト制御を行うことができる。しかし、アイドルストップ実施中は、エンジン2が停止しており、乗員のフットブレーキ操作に用いるエンジン2の吸気負圧が得られず、アイドルストップを実施する前に得られた負圧で制動力助勢手段(ブレーキ倍力装置)12を駆動することになるため、乗員のフットブレーキ操作を補助する制動力助勢手段12の機能が低下するおそれがある。しかし、その制動力助勢手段12の機能が低下している状態で衝突被害軽減制御装置10でのブレーキアシスト制御を行っても、そのアシスト効果が十分に発揮できない。 そのため、車両の制動力を補助する構成を備える。具体的には、ESP等の横滑り防止装置等が備えるブレーキアクチュエータ9により、車両1の制動力を補助する。なお、この制動力の補助は、乗員のフットブレーキ操作によって発生する制動力をさらに大きくするように制動力を付加するものであるが、乗員のフットブレーキ操作が行われていない場合に、自動で所定量の制動力を発生させるものであっても良い。」
(エ)「【図1】[図:0001380794000003.jpg]」
イ 引用発明3
上記記載を総合すると、引用文献3には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
「衝突被害軽減制御装置(プリクラッシュセーフティシステム:PCS装置)10として機能するアイドルストップシステム3の制御手段7であって、制御手段7は、衝突可能性検出手段11により車両1の衝突の可能性を検出した時に、制動力助勢手段12の作動と自動制動手段13の作動との少なくともどちらか一方を行う衝突被害軽減制御実行手段14と、エンジン2の自動停止の実施中に衝突被害軽減制御実行手段14を実施した場合に、エンジン2の自動停止を継続するとともに、制動力助勢手段12の制動力を増加させる制動力増加手段15とを備えている車両の衝突被害軽減制御装置。」
ウ 本願発明1と引用発明3の対比・判断
(ア)対比
本願発明1と引用発明3とを対比する。
・引用発明3の「衝突被害軽減制御」は、自動運転であるから、本願発明1の「自動運転制御」に相当し、引用発明3の「衝突被害軽減制御装置」は、本願発明1の「自動運転制御装置」に相当する。
・引用発明3の「衝突被害軽減制御装置(プリクラッシュセーフティシステム:PCS装置)10として機能するアイドルストップシステム3の制御手段7」は、本願発明1の「車両の自動運転制御を実行すべく、前記車両の自動運転機器を制御する自動運転制御部(472)」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明3とは、
<一致点>
「車両の自動運転制御を実行すべく、前記車両の自動運転機器を制御する自動運転制御部(472)を有する、自動運転制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
本願発明1は、「前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、登坂路を走行中の車両が後方に向かって進むことなく前記自動運転機器が正常な状態に戻るだけの時間的な余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、
前記車両が走行する道路の勾配を検出する道路勾配検出部(470)と、を備え、
前記余裕度判定部は、前記道路の勾配の絶対値が所定の勾配判定値以下であると判断することにより、前記時間的な余裕が存在する状況であると判定し、
前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する」のに対して、引用発明3は、そのように特定されていない点。
(イ)当審の判断
上記相違点3について検討する。
引用文献1~9には、上記相違点3に係る本願発明1の事項について、何ら記載も示唆もなく、周知であるとする証拠もない。
ゆえに、引用発明3において、上記相違点3に係る本願発明1の事項とすることを、当業者が容易に想到することができたとは、いえない。
(4)引用文献4を主引用発明とする本願発明1について
ア 引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、予め設定される停止条件を充足すると、車両に搭載されたエンジンを停止させる一方、該エンジンの停止中に予め設定される再始動条件を充足すると、該エンジンを再始動させる制御を行う制御部を備える車両用エンジン制御装置に関する。」
(イ)「【0034】次に、EPS制御装置31の制御部36で判断されるエンジンの再始動条件について説明する。自車両の車速が極低速度域である際にエンジンの自動停止制御が行われた場合、EPS制御装置31の制御部36は、第3の操舵角閾値及び第3の操舵トルク閾値を操舵閾値として用いて、エンジンの再始動を許可するか否かを判断する。【0035】具体的には、自車両の車速が極低速度域である際にエンジンの自動停止制御が行われた場合、走行情報取得部34により取得した走行情報のうち操舵情報に含まれる操舵角又は操舵トルクのいずれかが、第3の操舵角閾値又は第3の操舵トルク閾値を超えているときに、EPS制御装置31の制御部36は、エンジンの再始動を許可する旨の判断を下す。エンジンの再始動を許可する旨のエンジン自動再始動制御信号は、通信媒体4を介して、エンジン制御装置33へ送られる。【0036】一方、自車両の車速が徐行速度域である際にエンジンの自動停止制御が行われた場合、EPS制御装置31の制御部36は、走行情報取得部34により取得した走行情報のうち操舵情報とは無関係に、エンジンの再始動を許可するか否かを判断する。具体的には、自車両の車速が徐行速度域である際にエンジンの自動停止制御が行われた場合、EPS制御装置31の制御部36は、走行情報取得部34により取得した走行情報のうち操舵情報に含まれる操舵角又は操舵トルクの大きさの如何にかかわらず、エンジンの再始動を禁止する旨の判断を下す。エンジンの再始動を禁止する旨のエンジン自動再始動制御信号は、通信媒体4を介して、エンジン制御装置33へ送られる。」
イ 引用発明4
上記記載を総合すると、引用文献4には、以下の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されている。
「車両の車速が極低速度域である際にエンジンの自動停止制御が行われた場合、走行情報取得部34により取得した走行情報のうち操舵情報に含まれる操舵角又は操舵トルクのいずれかが、第3の操舵角閾値又は第3の操舵トルク閾値を超えているときに、EPS制御装置31の制御部36は、エンジンの再始動を許可する自車両の車速が徐行速度域である際にエンジンの自動停止制御が行われた場合、EPS制御装置31の制御部36は、走行情報取得部34により取得した走行情報のうち操舵情報に含まれる操舵角又は操舵トルクの大きさの如何にかかわらず、エンジンの再始動を禁止する車両用エンジン制御装置」
ウ 本願発明1と引用発明4の対比・判断
(ア)対比
本願発明1と引用発明4とを対比すると、本願発明1と引用発明4とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点4>
本願発明1は、「前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、登坂路を走行中の車両が後方に向かって進むことなく前記自動運転機器が正常な状態に戻るだけの時間的な余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、
前記車両が走行する道路の勾配を検出する道路勾配検出部(470)と、を備え、
前記余裕度判定部は、前記道路の勾配の絶対値が所定の勾配判定値以下であると判断することにより、前記時間的な余裕が存在する状況であると判定し、
前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する」のに対して、引用発明4は、そのように特定されていない点。
(イ)当審の判断
上記相違点4について検討する。
引用文献1~9には、上記相違点4に係る本願発明1の事項について、何ら記載も示唆もなく、周知であるとする証拠もない。
ゆえに、引用発明4において、上記相違点4に係る本願発明1の事項とすることを、当業者が容易に想到することができたとは、いえない。
(5)本願発明2について
ア 対比
本願発明2と引用発明1~4とを対比すると、本願発明1と引用発明1~4とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点5>
本願発明2は、「前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、降坂路を走行中の車両が前方に加速することなく前記自動運転機器が正常な状態に戻るだけの時間的な余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、
前記車両が走行する道路の勾配を検出する道路勾配検出部(470)と、を備え、
前記余裕度判定部は、前記道路の勾配の絶対値が所定の勾配判定値以下であると判断することにより、前記時間的な余裕が存在する状況であると判定し、
前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する」のに対して、引用発明1~4は、そのように特定されていない点。
イ 判断
上記相違点5について検討する。
引用文献1~9には、上記相違点5に係る本願発明2の事項について、何ら記載も示唆もなく、周知であるとする証拠もない。
ゆえに、引用発明1~4において、上記相違点5に係る本願発明2の事項とすることを、当業者が容易に想到することができたとは、いえない。
(6)引用文献3を主引用発明とする本願発明4について
ア 対比
本願発明4と引用発明3とを対比すると、本願発明4と引用発明3とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点6>
本願発明4は、「前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、障害物に接触することなく前記自動運転機器が正常な状態に戻るだけの時間的な余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、
前記車両の周囲の障害物の有無を検出する障害物検出部(475)と、を備え、
前記余裕度判定部は、前記車両の周辺に障害物が存在しないと判断することにより、前記時間的な余裕が存在する状況であると判定し、
前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する」のに対して、引用発明3では、制御手段7が、衝突可能性検出手段11により車両1の衝突の可能性を検出した時に、制動力助勢手段12の作動と自動制動手段13の作動との少なくともどちらか一方を行う衝突被害軽減制御実行手段14と、エンジン2の自動停止の実施中に衝突被害軽減制御実行手段14を実施した場合に、エンジン2の自動停止を継続する点。
イ 判断
上記相違点6について検討する。
引用発明3の制御手段7が、衝突可能性検出手段11により車両1の衝突の可能性を検出した時に、制動力助勢手段12の作動と自動制動手段13の作動との少なくともどちらか一方を行う衝突被害軽減制御実行手段14と、エンジン2の自動停止の実施中に衝突被害軽減制御実行手段14を実施した場合に、エンジン2の自動停止を継続することは、車両1の衝突の可能性を検出する衝突可能性検出手段11を備え、衝突可能性検出手段11により車両1の衝突の可能性を検出した時にエンジン2の自動停止の実施中に衝突被害軽減制御実行手段14を実施した場合にエンジンを自動停止を継続することであるから、エンジンの始動要求が行われた後に、衝突可能性検出手段11により車両1の衝突の可能性を検出するものではない。
そして、引用発明3は、衝突被害軽減制御装置であって、衝突可能性検出手段11により車両1の衝突の可能性を検出した時に、制動力助勢手段12の作動と自動制動手段13の作動との少なくともどちらか一方を行った際のエンジンの自動停止に係るものであるから、エンジンの始動要求が行われた後に、衝突可能性検出手段11により車両1の衝突の可能性を検出するようにする動機はない。
また、引用文献1、2、4~9には、上記相違点6に係る本願発明4の事項について、何ら記載も示唆もなく、周知であるとする証拠もない。
ゆえに、引用発明3において、上記相違点6に係る本願発明4の事項とすることを、当業者が容易に想到することができたとは、いえない。
(7)引用文献1、2、4を主引用発明とする本願発明4について
ア 対比
本願発明4と引用発明1、2、4とを対比すると、本願発明4と引用発明1、2、4とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点7>
本願発明4は、「前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、障害物に接触することなく前記自動運転機器が正常な状態に戻るだけの時間的な余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、
前記車両の周囲の障害物の有無を検出する障害物検出部(475)と、を備え、
前記余裕度判定部は、前記車両の周辺に障害物が存在しないと判断することにより、前記時間的な余裕が存在する状況であると判定し、
前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記時間的な余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する」のに対して、引用発明1、2、4は、そのように特定されていない点。
イ 判断
上記相違点7について検討する。
引用文献1~9には、上記相違点7に係る本願発明4の事項について、何ら記載も示唆もなく、周知であるとする証拠もない。
ゆえに、引用発明1、2、4において、上記相違点7に係る本願発明4の事項とすることを、当業者が容易に想到することができたとは、いえない。
(8)本願発明6について(補正前の請求項8に対応する。)
ア 対比
本願発明6と引用発明1~4とを対比すると、本願発明6と引用発明1~4とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点8>
本願発明6は、「前記車両のエンジンを始動させる始動機を駆動させることにより前記自動運転機器の動作に一時的な支障が生じた場合でも、前記車両の運転状態を自動運転から運転者の手動運転に引き継ぐだけの余裕が存在する状況であるか否かを判定する余裕度判定部(473)と、
運転者が前記車両を手動操作できる状態であるか否かを判定する運転者判定部(476)と、を備え、
前記余裕度判定部は、前記運転者判定部の判定結果において運転者が前記車両を手動操作できる状態であると判定されることに基づいて、前記余裕が存在する状況であると判定し、
前記自動運転制御部は、前記自動運転制御において前記エンジンの始動要求が行われた後に、前記余裕度判定部の判定結果において前記余裕が存在する状況であると判定されることに基づいて、前記エンジンの始動を許可する」のに対して、引用発明1~4は、そのように特定されていない点。
イ 判断
上記相違点8について検討する。
引用文献1~9には、上記相違点8に係る本願発明6の事項について、何ら記載も示唆もなく、周知であるとする証拠もない。
ゆえに、引用発明1~4において、上記相違点8に係る本願発明6の事項とすることを、当業者が容易に想到することができたとは、いえない。
(9)小括
したがって、本願発明1、2、4、6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
第3 まとめ
以上のとおり、拒絶査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また他に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-003365