2021-003122
ショベル及びショベルの周囲画像生成装置
- 審判番号
- 2021-003122
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-165777外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月08日
- 審決日
- 2022年02月22日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友重機械工業株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 分類
- P18 .121-Z (E02F) / P18 .575-Z (H04N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成22年11月16日に出願した特願2010-256295号の一部を平成26年1月17日に新たな特許出願(特願2014-6965号)とし、その一部を平成27年12月28日に新たな特許出願(特願2015-257041号)とし、その一部を平成29年11月14日に新たな特許出願(特願2017-218958号)とし、その一部を令和元年9月11日に新たな特許出願としたものであって、令和2年7月31日付け拒絶理由通知に対して同年10月5日に手続補正がなされたが、同年12月2日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、令和3年3月8日に拒絶査定不服審判の請求が請求されるとともに手続補正がなされたものである。
第2 令和3年3月8日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年3月8日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正のうち請求項1に係る補正について
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含むものであり、本件補正前の請求項1(令和2年10月5日の手続補正により補正された請求項1)が、下記(1)であったところ、下記(2)へと補正することを含むものである。
なお、(2)において、下線は、補正箇所を示す。
また、各請求項に記載された構成について、当審にて(A)~(F)に分説している。これらの構成を、以下「構成A」~「構成F」という。
(1)本件補正前の請求項1
「【請求項1】(A)走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、続きを表示(全13行)前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、前記上部旋回体の三方向を撮像するように前記上部旋回体の左部、右部、及び後部の三箇所に搭載される撮像装置と、前記上部旋回体に搭載される運転室と、前記運転室内に設置される表示部と、(B)前記下部走行体の向きとは無関係に少なくともショベルの左方、右方、及び後方の領域に対して、ショベルを上空から見下ろした画像を出力画像として生成するとともに、(C)前記表示部に表示される前記出力画像において、前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を、前記物体の下部が表示される位置よりも、ショベルから遠い位置に表示させる制御部と、を有し、(D)前記制御部は、隣り合う前記撮像装置のそれぞれの撮像画像を合成して重複領域に対応する出力画像部分を生成するとともに、(E)前記表示部に表示される前記出力画像部分においても前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を前記物体の下部が表示される位置よりもショベルから遠い位置に表示させる、(F)ショベル。」
(2)本件補正後の請求項1(以下、「本件補正発明1」という。)
「【請求項1】(A)走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、続きを表示(全13行)前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、前記上部旋回体の三方向を撮像するように前記上部旋回体の左部、右部、及び後部の三箇所に搭載される撮像装置と、前記上部旋回体に搭載される運転室と、前記運転室内に設置される表示部と、(B)前記下部走行体の向きとは無関係に少なくともショベルの左方、右方、及び後方の領域に対して、ショベルを上空から見下ろした画像を出力画像として生成するとともに、(C)前記表示部に表示される前記出力画像において、前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を、前記物体の下部が表示される位置よりも、ショベルから遠い位置に表示させる制御部と、を有し、(D’)前記制御部は、隣り合う前記撮像装置のそれぞれの撮像画像を合成して前記上部旋回体の左後方及び右後方の重複領域に対応する出力画像部分を生成するとともに、(E)前記表示部に表示される前記出力画像部分においても前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を前記物体の下部が表示される位置よりもショベルから遠い位置に表示させる、(F)ショベル。」
2 本件補正のうち請求項1に係る補正事項
本件補正のうち、本件補正発明1に関する補正は、本件補正前の請求項1に対して、以下の補正事項1の補正をしたものである。
3 本件補正のうち請求項1に係る補正の適否
上記2で述べた補正事項に関して、上記補正事項1に係る構成については、当初明細書の段落【0006】及び【0133】に以下の記載があることから、「重複領域」が、「上部旋回体の左後方及び右後方の重複領域」であることは、本願の当初明細書に記載されていると言える。なお、下線は、当審で付した。
・「【0006】
本発明の実施例に係るショベルは、走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、前記上部旋回体の三方向を撮像するように前記上部旋回体の左部、右部、及び後部の三箇所に搭載される撮像装置と、前記上部旋回体に搭載される運転室と、前記運転室内に設置される表示部と、前記表示部に、前記下部走行体の向きとは無関係に少なくともショベルの左方、右方、及び後方の領域を映し出し、ショベルを上空から見下ろした画像を出力画像として生成するとともに、前記出力画像に、囲まれた領域を示す制御部と、を有する。」
・「【0133】
図14は、図13で示される格子模様を出力画像平面(平面領域R1)上に配置した状態を示し、ショベル60のCG画像60Gの右後方(図の右下方向)にある、右側方カメラ2Rの撮像範囲と後方カメラ2Bの撮像範囲との重複領域に配置される格子模様と、ショベル60のCG画像60Gの左後方(図の左下方向)にある、左側方カメラ2Lの撮像範囲と後方カメラ2Bの撮像範囲との重複領域に配置される格子模様とを示す。」
よって、上記補正事項1に関する補正は、当初明細書に記載された事項の範囲内においてするものであって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
また、上記補正事項1に関する補正は、特別な技術的特徴を変更(シフト補正)しようとするものではなく、同条4項の規定に適合している。
そして、上記補正事項1に関する補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「重複領域」について限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正発明1とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、同条5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
この場合、本件補正後の請求項1は、同条6項において準用する同法126条7項に規定する要件(独立特許要件)を満たすものでなければならない。
以下、本件補正発明1の独立特許要件について検討する。
(1)本件補正発明1の進歩性について
ア 引用文献の記載事項
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(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開2010-204821号公報には、「周囲監視装置を備えた作業機械」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。
a.「【0010】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたもので、作業機械の上方に視点を持つ俯瞰画像と周囲を撮影するカメラからのカメラ画像を最適位置で結合して違和感のない結合画像を生成するものである。」
b.「【0015】
以下、最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、作業機械の例としての油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは、それぞれが垂直方向に回動するブーム1a、アーム1b及びバケット1cを備えた多関節型のフロント作業機1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eからなる車体1Bとで構成される。
【0016】
上部旋回体1dには、運転室1fが備えられている。フロント作業機1Aのブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に支持されている。ブーム1a、アーム1b、バケット1c、上部旋回体1d及び下部走行体1eはそれぞれブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3c、旋回モータ3d(図1には図示しない)及び左右の走行モータ3e,3f(図示しない)の各アクチュエータによりそれぞれ駆動される。また、ブーム1a、アーム1b、バケット1c、上部旋回体1dは、それぞれの回動角を検出する角度検出器8a,8b,8c,8dを備える。また、油圧ショベルの後方には、たとえば作業員20が存在することがある。
【0017】
図2は、油圧ショベルを上方視点から見た外観(俯瞰画像)図である。上部旋回体1dの上部の車体1Bには、右側方監視用のカメラ13a、後方監視用のカメラ13b、左側方監視用のカメラ13cが備えられ、これらの監視範囲は12a,12b、12cである。また、油圧ショベルは下部走行体1e、1e’を備え、前記監視範囲には、フロント作業機1Aの作業範囲14が含まれる。
【0018】
図3は、本実施形態にかかる周囲監視装置を説明する図である。図3において31はカメラ13aの映像信号、32はカメラ13bの映像信号、33はカメラ13cの映像信号、50は画像処理装置、900はカメラ13a及び13b及び13cにより周囲シーン撮影して作業機械周囲の映像等を表示するモニタテレビ、1000は表示装置900の表示内容を監視する運転室1fの運転員である。
【0019】
画像処理装置50は、画像入力部200、俯瞰画像作成部300、結合位置算出部400、結合画像作成部450、結合画像合成部500、合成画像障害物検知部600、作業機械の姿勢データ取込み部700、作業機械の動作データ取込み部750、表示画像生成部800を備える。なお、画像処理装置50はこれらの画像処理が実現できるPC又は画像処理専用装置で構成することができる。
【0020】
処理に際しては、まず、カメラ13aにより撮影対象シーン12aを撮影して、撮影した映像信号31を画像処理装置50へ伝送する。画像処理装置50は、前記映像信号31を入力して画像入力部200に格納する。また、カメラ13bにより撮影対象シーン12bを撮影して、撮影した映像信号32を画像処理装置50へ伝送する。画像処理装置50は、前記映像信号32を入力して画像入力部200に格納する。カメラ13cは、撮影対象シーン12cを撮影して、撮影した映像信号33を画像処理装置50へ伝送する。画像処理装置50は、映像信号33を入力し画像入力部200に格納する。格納した映像信号31及び映像信号32及び映像信号33は俯瞰変換して俯瞰画像300を作成する。なお、俯瞰画像300の作成は、公知の技術(例えば特開2006-48451号公報参照)により実現できる。
【0021】
次に、作業機械のフロント作業機1Aの姿勢データ700を取り込み、更に、上部旋回体1d及び下部走行体1eの動作データ750を取り込み、これらの姿勢データ700と動作データ750から、カメラ13aが撮影したシーン12aに対して、動作データ750及び動作データ750の変動に連動させて俯瞰画像300における結合位置を算出400し、入力した画像200における結合位置も算出400し、俯瞰画像300と入力画像200と算出した結合位置400を用いて、結合画像450を作成する。
【0022】
同様に、カメラ13bが撮影したシーン12bに対して、俯瞰画像300における結合位置を算出400し、入力した画像200における結合位置も算出400し、俯瞰画像300と入力画像200と算出した結合位置400を用いて、結合画像450を作成する。また、カメラ13cが撮影したシーン12cに対して、俯瞰画像300における結合位置を算出400し、入力した画像200における結合位置も算出400し、俯瞰画像300と入力画像200と算出した結合位置400を用いて、結合画像450を作成する。シーン12aに対する結合画像450及びシーン12bに対する結合画像450及びシーン12cに対する結合画像450を用いて、上方視点の模擬作業機械を中心にし周囲に結合画像を配置して結合画像を合成500する。
【0023】
更に、合成した結合画像500に対して、画像処理手法を用いて障害物検知600を行い、障害物検知600の検知結果を重畳し、フロント作業機1Aの姿勢データ700から取り込んだフロント作業機の先端位置のデータを用いて危険範囲も重畳し、フロント作業機1Aの動作データ750から取り込んだ旋回範囲及び/又は走行予想軌跡及び/又は走行ガイドラインも重畳する表示画像の生成800を行い、モニタ等の表示装置900に表示する。」
c.「【0036】
このように合成すると、後方カメラ13bの周囲に存在する人物20は、俯瞰画像作成部300で作成した俯瞰画像451では上方視点の変形した人物になり、画像入力部200で取り込んだカメラ画像452では垂直な視点の人物になる。これらを結合位置453で結合すると、人物20は見た目に近くなり、違和感が少なくなる。」
d.「【0048】
図14は、結合画像合成部500の詳細を説明する図である。まず、501において、上方視点における模擬作業機械の中心位置(OC)を設定する。502において、右側方カメラ13aの右側方結合画像格納メモリを読み込み、503において、後方カメラ13bの後方結合画像格納メモリを読み込み、504において、左側方カメラ13cの左側方結合画像格納メモリを読み込む。505において、右側方結合画像502を右側方へ配置するための右側90°回転を行い、506において、後方結合画像503を後方へ配置するための上下反転を行い、507において、左側方結合画像504を左側方へ配置するための左側90°回転を行う。次に、508において、右側方結合画像の中心位置と上方視点における模擬作業機械の中心位置OCをあわせて配置し、509において、後方結合画像の中心位置と上方視点における模擬作業機械の中心位置OCをあわせて配置し、510において、左側方結合画像の中心位置と上方視点における模擬作業機械の中心位置OCをあわせて配置する。最後に、511において、上方視点における模擬作業機械の右側に右側方結合画像508を配置し、後方に後方結合画像509を配置し、左側に左側方結合画像510を配置して、表示用画像を作成する。
【0049】
図15は、右側方結合画像の中心位置523を示す例である。右側方結合画像の上部端の延長線521と、下部端の延長線522の交点が中心位置523である。
【0050】
図16は、結合画像合成部500で作成した合成画像における結合位置がカメラから遠方の例である。まず、右側方入力画像に対し、結合位置算出部400で算出した結合位置532において結合した結合画像533の交点523を、上方視点から見た模擬作業機械1の中心531にあわせて配置する。次に、後方入力画像に対し、結合位置算出部400で算出した結合位置534において結合した結合画像535の交点523を、上方視点から見た模擬作業機械1の中心531にあわせて配置する。更に、左側方入力画像に対し、結合位置算出部400で算出した結合位置536において結合した結合画像537の交点523を、上方視点から見た模擬作業機械1の中心531にあわせて配置する。ここで、後方カメラの視野内に存在する人物20の頭部が入力画像で結合されるため、違和感の少ない人物538になる。また、模擬作業機械1の後部における死角発生有無が確認でき、黒部539の死角が発生していることがわかる。これにより、運転員が操作している模擬作業機械1の運転席から、作業機械の周囲の作業員の存在方向や位置、カメラ設置の死角有無を確認できる。また、作業機械周囲の狭い範囲が詳細に把握でき、近くの作業員を鮮明に表示することができる。」
e.「【図1】
[図:0001383762000001.jpg]
」
f.「【図2】
[図:0001383762000002.jpg]
」
g.「【図16】
[図:0001383762000003.jpg]
」
(イ)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2である特開2006-48451号公報には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。
a.「【0001】
この発明は、車両等の移動体周辺を当該移動体に搭載した魚眼カメラにより監視する移動体の周辺監視技術に係り、特に魚眼カメラにより撮像した画像に基いた俯瞰画像が得られるようして、運転者にとってより安全に運転し得る移動体周辺監視装置および俯瞰画像表示方法に関する。」
b.「【0070】
画像統合手段62では必要に応じて、画像データ信号Sdをそのまま一枚に統合する過程において、重なり合った領域を処理する機能を有する。すなわちそれぞれの重なった領域の一方のみ描画するのでなく、同一の領域を描画している複数の画像データ信号Sdの中から適当にブレンディングして描画する。すると、例えば図8に示すように、サイドミラー35の各々に設置された各1台の魚眼カメラ36であって、それぞれの魚眼カメラ36の有効視野α1およびα2により撮影された画像(人物)x1およびx2は重複した画像の重なり領域67にて、その足元が、共通の一点に交わった1枚の俯瞰画像として得られるのが特徴である。
【0071】
このように、複数の魚眼カメラ36で撮影した画像を統合して1つの俯瞰画像が、図2に示すように、カーナビゲーション用表示装置42に表示されることにより、運転者側にとって見やすく、また、画像が強調されて表示されるので一層見やすいものとなる。」
イ 引用文献に記載された発明及び技術
(ア)引用文献1に記載された発明について
a. 引用文献1は、発明の名称が「周囲監視装置を備えた作業機械」であり、段落【0015】には、「最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、作業機械の例としての油圧ショベルの外観を示す図である。」と記載されていることから、引用文献1には「油圧ショベル」に係る発明が記載されている。(下記e.の「引用発明」における構成(f))
b. 引用文献1の段落【0015】には、「油圧ショベルは、…と、上部旋回体1d及び下部走行体1eからなる車体1Bとで構成される。」と記載されており、
段落【0016】には、「上部旋回体1d及び下部走行体1eはそれぞれ…、旋回モータ3d…及び左右の走行モータ3e,3f…の各アクチュエータによりそれぞれ駆動される。」と記載されているから、
引用文献1の「油圧ショベル」は、上部旋回体1d及び下部走行体1eから構成されており、「下部走行体1e」が「左右の走行モータ3e,3f」により「駆動され」、「上部旋回体1d」が「旋回モータ3d」により「駆動され」る構成である。
引用文献1の段落【0016】には、「フロント作業機1Aのブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に支持されている。」と記載されているから、
引用文献1の「油圧ショベル」は、「フロント作業機1Aのブーム1aの基端」が、「上部旋回体1dの前部に支持され」る構成である。
引用文献1の段落【0015】には、「油圧ショベルは、それぞれが垂直方向に回動するブーム1a、アーム1b及び…を備えた多関節型のフロント作業機1Aと、…とで構成される。」と記載されているから、
引用文献1の「油圧ショベル」は、「多関節型のフロント作業機1A」に、「ブーム1a」及び「アーム1b」を備える構成である。
引用文献1の段落【0017】には、「上部旋回体1dの上部の車体1Bには、右側方監視用のカメラ13a、後方監視用のカメラ13b、左側方監視用のカメラ13cが備えられ」と記載されているから、
引用文献1の「油圧ショベル」は、「上部旋回体1d」に、「右側方監視用のカメラ13a」,「後方監視用のカメラ13b」及び「左側方監視用のカメラ13c」を備える構成である。
引用文献1の段落【0016】には、「上部旋回体1dには、運転室1fが備えられている。」と記載されているから、
引用文献1の「油圧ショベル」は、「上部旋回体1dには、運転室1fが備えられている」構成である。
引用文献1の段落【0018】には、「1000は表示装置900の表示内容を監視する運転室1fの運転員である。」と記載されているから、
引用文献1の「油圧ショベル」は、「運転室1f」に、運転員が監視する表示内容が表示される「表示装置900」を備える構成である。
よって、引用文献1の「油圧ショベル」は、
「下部走行体1eが左右の走行モータ3e,3fにより駆動され、上部旋回体1dが旋回モータ3dにより駆動され、フロント作業機1Aのブーム1aの基端が上部旋回体1dの前部に支持され、多関節型のフロント作業機1Aに、ブーム1a及びアーム1bを備え、上部旋回体1dに、右側方監視用のカメラ13a,後方監視用のカメラ13b及び左側方監視用のカメラ13cを備え、上部旋回体1dに、運転室1fを備え、運転室1fに、表示装置900を備え」た構成である。(下記e.の「引用発明」における構成(a))
c. 引用文献1の段落【0010】には、「作業機械の上方に視点を持つ俯瞰画像と周囲を撮影するカメラからのカメラ画像を最適位置で結合して違和感のない結合画像を生成する」と記載されており、
段落【0020】には、「カメラ13aにより撮影対象シーン12aを撮影して、撮影した映像信号31を画像処理装置50へ伝送する。画像処理装置50は、前記映像信号31を入力して画像入力部200に格納する。また、カメラ13bにより撮影対象シーン12bを撮影して、撮影した映像信号32を画像処理装置50へ伝送する。画像処理装置50は、前記映像信号32を入力して画像入力部200に格納する。カメラ13cは、撮影対象シーン12cを撮影して、撮影した映像信号33を画像処理装置50へ伝送する。画像処理装置50は、映像信号33を入力し画像入力部200に格納する。格納した映像信号31及び映像信号32及び映像信号33は俯瞰変換して俯瞰画像300を作成する。」と記載されており、
段落【0017】には、「上部旋回体1dの上部の車体1Bには、右側方監視用のカメラ13a、後方監視用のカメラ13b、左側方監視用のカメラ13cが備えられ、」と記載されているから、
引用文献1の「油圧ショベル」における「画像処理装置50」は、「作業機械の上方に視点を持つ俯瞰画像と周囲を撮影するカメラからのカメラ画像を最適位置で結合して違和感のない結合画像を生成する」ものであり、「右側方監視用のカメラ13a」,「後方監視用のカメラ13b」及び「左側方監視用のカメラ13c」により撮影した映像信号を、「俯瞰変換して俯瞰画像300を作成」する構成を備えている。(下記e.の「引用発明」における構成(b))
d. 引用文献1の段落【0021】には、「俯瞰画像300」「を用いて、結合画像450を作成する」と記載されており、
段落【0023】には、「合成した結合画像500」を「表示装置900に表示する」ことが記載されており、
引用文献1の段落【0048】には、「右側方結合画像502を右側方へ配置するための右側90°回転を行い、506において、後方結合画像503を後方へ配置するための上下反転を行い、507において、左側方結合画像504を左側方へ配置するための左側90°回転を行う。」及び「上方視点における模擬作業機械の右側に右側方結合画像508を配置し、後方に後方結合画像509を配置し、左側に左側方結合画像510を配置して、表示用画像を作成する。」と記載されており、
段落【0050】には、「右側方入力画像に対し、結合位置算出部400で算出した結合位置532において結合した結合画像533の交点523を、上方視点から見た模擬作業機械1の中心531にあわせて配置する。次に、後方入力画像に対し、結合位置算出部400で算出した結合位置534において結合した結合画像535の交点523を、上方視点から見た模擬作業機械1の中心531にあわせて配置する。更に、左側方入力画像に対し、結合位置算出部400で算出した結合位置536において結合した結合画像537の交点523を、上方視点から見た模擬作業機械1の中心531にあわせて配置する。ここで、後方カメラの視野内に存在する人物20の頭部が入力画像で結合されるため、違和感の少ない人物538になる。」と記載されており、
【図16】の図面は、段落【0050】に記載されているとおり、「結合画像合成部500で作成した合成画像」を図にて示すものであり、この図面からは、上部旋回体の周囲に存在する人物20の頭部が表示される位置は、人物20の胴体などの頭より下にある部位が表示される位置よりも、油圧ショベルから遠い位置である様子が読み取れる。
よって、引用文献1の「油圧ショベル」における「画像処理装置50」は、俯瞰画像300において、「上方視点における模擬作業機械の右側に右側方結合画像508を配置し、後方に後方結合画像509を配置し、左側に左側方結合画像510を配置して、表示用画像を作成」し、「前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を、前記物体の下部が表示される位置よりも、ショベルから遠い位置に表示させる画像を作成する」ものであり、
引用文献1の「油圧ショベル」は、「俯瞰画像300から作成した結合画像500を表示装置900に表示する」構成を備えるものである。(下記e.の「引用発明」における構成(c))
e. 上記a.~d.によると、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「(a)下部走行体1eが左右の走行モータ3e,3fにより駆動され、上部旋回体1dが旋回モータ3dにより駆動され、フロント作業機1Aのブーム1aの基端が上部旋回体1dの前部に支持され、多関節型のフロント作業機1Aに、ブーム1a及びアーム1bを備え、続きを表示(全11行)上部旋回体1dに、右側方監視用のカメラ13a,後方監視用のカメラ13b及び左側方監視用のカメラ13cを備え、上部旋回体1dに、運転室1fを備え、運転室1fに、表示装置900を備えた構成であり、(b)画像処理装置50は、作業機械の上方に視点を持つ俯瞰画像と周囲を撮影するカメラからのカメラ画像を最適位置で結合して違和感のない結合画像を生成するものであり、右側方監視用のカメラ13a,後方監視用のカメラ13b及び左側方監視用のカメラ13cにより撮影した映像信号を、俯瞰変換して俯瞰画像300を作成し、(c)画像処理装置50は、上方視点における模擬作業機械の右側に右側方結合画像508を配置し、後方に後方結合画像509を配置し、左側に左側方結合画像510を配置して、表示用画像を作成し、俯瞰画像300において、前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を、前記物体の下部が表示される位置よりも、ショベルから遠い位置に表示させる画像を作成し、油圧ショベルは、俯瞰画像300から作成した結合画像500を表示装置900に表示する(f)油圧ショベル。」
(イ)引用文献2に記載された技術について
引用文献2には、以下の技術(以下、「引用文献2技術」という。)が記載されている。
・「車両等の移動体周辺を当該移動体に搭載した魚眼カメラにより監視する移動体の周辺監視技術に係り、魚眼カメラにより撮像した画像に基いた俯瞰画像が得られるようして、運転者にとってより安全に運転し得る移動体周辺監視装置および俯瞰画像表示方法」において、「運転者にとって見やすく」なるように、
「画像統合手段62」は、「画像データ信号をそのまま一枚に統合する過程において、重なり合った領域を処理する機能を有」し、「それぞれの重なった領域の一方のみ描画するのでなく、同一の領域を描画している複数の画像データ信号のSd中から適当にブレンディングして描画」され、
「複数の魚眼カメラ36で撮影した画像を統合して1つの俯瞰画像が、」「カーナビゲーション用表示装置42に表示される」技術。
ウ 対比
(ア)本件補正発明1の構成(A)及び(F)と引用発明の構成(a)及び(f)との対比
引用発明の「下部走行体」,「上部旋回体」,「フロント作業機」,「ブーム」,「アーム」,「カメラ」,「運転室」,「表示装置」及び「油圧ショベル」は、それぞれ、本件補正発明1の「下部走行体」,「上部旋回体」,「アタッチメント」,「ブーム」,「アーム」,「撮像装置」,「運転室」,「表示部」及び「ショベル」に相当する。
そうすると、引用発明の構成(a)及び(f)は、本件補正発明1の構成(A)及び(F)と一致する。
(イ)本件補正発明1の構成(B)及び(C)と引用発明の構成(b)及び(c)との対比
引用発明の構成(b)及び(c)によれば、「画像処理装置50」は、「作業機械の上方に視点を持つ俯瞰画像と周囲を撮影するカメラからのカメラ画像を最適位置で結合して違和感のない結合画像を生成するものであり、右側方監視用のカメラ13a,後方監視用のカメラ13b及び左側方監視用のカメラ13cにより撮影した映像信号を、俯瞰変換して俯瞰画像300を作成し、」「上方視点における模擬作業機械の右側に右側方結合画像508を配置し、後方に後方結合画像509を配置し、左側に左側方結合画像510を配置して、表示用画像を作成」するものであるから、
引用発明の「画像処理装置50」は、本件補正発明1の「制御部」に備えられた構成(B)の「少なくともショベルの左方、右方、及び後方の領域に対して、ショベルを上空から見下ろした画像を出力画像として生成する」との構成に相当する。
また、引用発明は、「下部走行体1eが左右の走行モータ3e,3fにより駆動され、上部旋回体1dが旋回モータ3dにより駆動され」るものであるから、下部走行体に対して上部旋回体が旋回自在なものである。よって、表示用画像は、本件補正発明1の出力画像の「前記下部走行体の向きとは無関係」との構成を備えるものと言える。
よって、引用発明の「画像処理装置50」は、本件補正発明1の「制御部」に備えられた構成(B)の「前記下部走行体の向きとは無関係に少なくともショベルの左方、右方、及び後方の領域に対して、ショベルを上空から見下ろした画像を出力画像として生成する」との動作を行う構成を備えるものである。
また、引用発明の構成(c)によれば、「画像処理装置50」は、「前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を、前記物体の下部が表示される位置よりも、ショベルから遠い位置に表示させる画像を作成」する構成を備えており、また、「油圧ショベル」は、「表示装置900」に「俯瞰画像300から作成した結合画像500」を表示する構成を備えるものであるから、
引用発明のこれらの構成は、本件補正発明1の構成(C)の「制御部」が、「前記表示部に表示される前記出力画像において、前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を、前記物体の下部が表示される位置よりも、ショベルから遠い位置に表示させる」構成に相当する。
したがって、引用発明の構成(b)及び(c)は、本件補正発明1の構成(B)及び(C)に相当する。
(ウ)まとめ
上記(ア)~(イ)における対比の結果を踏まえると、本件補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
(A)走行動作を行う下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、
前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、
前記上部旋回体の三方向を撮像するように前記上部旋回体の左部、右部、及び後部の三箇所に搭載される撮像装置と、
前記上部旋回体に搭載される運転室と、
前記運転室内に設置される表示部と、
(B)前記下部走行体の向きとは無関係に少なくともショベルの左方、右方、及び後方の領域に対して、ショベルを上空から見下ろした画像を出力画像として生成するとともに、
(C)前記表示部に表示される前記出力画像において、前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を、前記物体の下部が表示される位置よりも、ショベルから遠い位置に表示させる制御部
と、を有した、
(F)ショベル。
[相違点1]
制御部の動作に関し、本件補正発明1は、構成(D’)、すなわち、「隣り合う前記撮像装置のそれぞれの撮像画像を合成して前記上部旋回体の左後方及び右後方の重複領域に対応する出力画像部分を生成する」構成を備えているのに対し、引用発明は、そのように出力画像を生成することは記載されていない点。
[相違点2]
制御部の動作に関し、本件補正発明1は、構成(E)、すなわち、重複領域に表示される出力画像についても、「前記表示部に表示される前記出力画像部分においても前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を前記物体の下部が表示される位置よりもショベルから遠い位置に表示させる」構成を備えているのに対し、引用発明は、重複領域に表示される出力画像について、表示装置にそのように表示されることは特定されていない点。
エ 判断
相違点1及び相違点2は、どちらも撮像装置の撮像範囲が重複する重複領域における、制御部による画像の処理に関するものであるので、併せて検討する。
<相違点1>
引用発明において、カメラは、右側方と後方、後方と左側方の隣り合うカメラの監視範囲には重複する領域が存在するように配置されており、複数のカメラの撮像領域は、右側後方、及び、左側後方において重複する領域があるものである。
そして、引用文献2には、上記イ(イ)で検討したとおり、「画像統合手段」により、「画像データ信号をそのまま一枚に統合する過程において、重なり合った領域を処理する機能を有する」ものであり、「複数の画像データ信号の中から適当にブレンディング」して表示する技術が記載されている。
ここで、引用文献1の段落【0020】には「俯瞰画像300の作成は,公知の技術(例えば特開2006-48451号公報参照)により実現できる。」と記載されているように、引用文献1記載の発明と、例示された特開2006-48451号公報は、同じ技術分野に属しており、当該公報である引用文献2に記載された画像の作成方法である複数の撮像装置からのブレンディング(画像の合成)を行う技術、すなわち、引用文献2技術を引用発明に適用することは、当業者が容易に想到するものである。
したがって、引用発明に、引用文献2技術を適用することで、本件補正発明1の構成(D’)に係る「前記制御部は、隣り合う前記撮像装置のそれぞれの撮像画像を合成して前記上部旋回体の左後方及び右後方の重複領域に対応する出力画像部分を生成する」構成を備え、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に為し得たものである。
<相違点2>
そして、引用文献1は、段落【0036】に記載されているとおり、違和感が少なくなるように表示することを目的としているから、引用発明に引用文献2技術を適用したものにおける重複領域においても、他の領域で行われているように、構成(c)の「画像処理装置は、俯瞰画像において、前記上部旋回体の周囲に存在する物体の上部を、前記物体の下部が表示される位置よりも、ショベルから遠い位置に表示させる画像を作成し」との処理と同様の処理を行うようにして、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。
<まとめ>
以上のことから、引用発明に引用文献2技術を適用することにより、相違点1~2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できることである。
オ 効果等について
本件補正発明1の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本件補正発明1が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。
カ まとめ
以上のとおりであるから、本件補正発明1は、引用発明及び引用文献2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)むすび
以上のように、本件補正発明1は、引用発明及び引用文献2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、独立して特許を受けることができないものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり、令和3年3月8日の手続補正を却下する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年3月8日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和2年10月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたものであり、上記「第2」の[理由]の1において(1)として記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明1について上記引用文献1~2に基づいて、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものを含むものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2に記載された事項並びに引用発明及び引用文献2技術は、上記「第2」の[理由]の3(1)ア及びイで述べたとおりである。
4 対比・判断
本願発明1は、本件補正発明1から上記「第2」の[理由]の2で示した補正事項1の限定を省いたものである。また、本願発明1と引用発明の相違点は、いずれも、上記「第2」の[理由]の3(1)ウ(ウ)において相違点としたものに含まれるものであり、上記「第2」の[理由]の3(1)エにおいて判断したとおり、本件補正発明1の当該相違点に係る構成は、引用発明及び引用文献2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明における引用発明との相違点に係る構成についても、引用発明及び引用文献2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び引用文献2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-003122