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特許拒絶査定不服審判

2021-002758

個々のカーボンフットプリントの算定

審判番号
2021-002758
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-511409外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年03月02日
審決日
2022年04月05日
公報発行日
2022年05月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G06Q) / P18 .537-WY (G06Q)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-511409「個々のカーボンフットプリントの算定」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 1日国際公開、WO2018/039445、令和 1年10月10日国内公表、特表2019-528540、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 17項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2017年(平成29年)8月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年8月23日 米国、2016年8月24日 中国)を国際出願日とする出願であって、その後の経緯は以下のとおりである。

平成31年 4月17日:手続補正書の提出
令和 2年 2月12日:拒絶理由通知(起案日)
令和 2年 5月18日:意見書、手続補正書の提出
令和 2年10月22日:拒絶査定(起案日)
令和 3年 3月 2日:審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年12月15日:拒絶理由通知(起案日)
令和 4年 2月10日:意見書、手続補正書の提出

第2 原査定及び当審の拒絶理由

1 原査定の拒絶理由

原査定(令和2年10月22日付け拒絶査定)の拒絶理由は、この出願の請求項1~24に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2011-145903号公報

2 当審からの拒絶理由

当審が令和3年12月15日付けで通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

記

(1)請求項1~8について

ア 請求項1には、以下の記載がある。

A 「第1のユーザが複数のオンラインサービスの中から特定のオンラインサービスを利用する際に生成される、細分化された行動データを取得し、集約された行動データを生成するために前記細分化された行動データを集約するステップ」

B 「前記集約された行動データを利用して前記特定のオンラインサービスに事前に関連付けられている前記特定の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムの実行に少なくとも基づいて」

上記A、Bに記載された「細分化された行動データ」及び「集約された行動データ」は明確でない。

イ 請求項1には、「(ii)前記第1のユーザが利用する前記特定のオンラインサービスを識別する識別情報」と記載されているところ、「特定のオンラインサービスを識別する識別情報」は明確でない。

ウ 請求項1には、「前記複数のオンラインサービスのそれぞれのオンラインサービスに事前に関連付けられ、且つユーザが前記それぞれのオンラインサービスを利用する際に回避されるそれぞれの炭素を排出する活動に固有である、複数の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムの中から、少なくとも前記第1のユーザが利用した前記特定のオンラインサービスを識別する前記識別情報に基づいて、前記特定のオンラインサービスに事前に関連付けられている特定の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムを選択するステップ」(下線は当審で付与。)と記載されているところ、下線部の「少なくとも」は、「前記第1のユーザ」に係るのか、「前記識別情報」に係るのかが特定できず、そのため上記記載の意味が不明瞭である。

よって、請求項1を引用する請求項を含めて、請求項1~8に係る発明は明確でない。

(2)請求項9~24について

請求項9及び請求項17は、上記(1)のア、イ及びウと同様の点で不備がある。

よって、請求項9又は請求項17を引用する請求項を含めて、請求項9~24に係る発明は明確でない。

(3)請求項8、16及び24について

請求項8、16及び24に記載された「仮想ツリー」がいかなるものであるかが不明瞭である。

よって、請求項8、16及び24に係る発明は明確でない。

第3 本願発明

本願の請求項1~21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明21」という。)は、令和4年2月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~21に記載した事項により特定される発明であるところ、そのうち本願発明1は次のとおりである。(下線は、補正箇所を示す。)

「【請求項1】
コンピュータにより実施される方法であって、
第1のユーザが複数のオンラインサービスの中から特定のオンラインサービスを利用する際に生成される細分化された行動データを取得し、集約された行動データを生成するために、前記複数のオンラインサービスで生成された前記細分化された行動データを集約するステップであって、前記取得した行動データは、(i)前記第1のユーザに関連付けられているユーザIDと、(ii)前記第1のユーザが利用する前記特定のオンラインサービスを識別する識別情報とを備える、ステップと、
前記複数のオンラインサービスのそれぞれのオンラインサービスに事前に関連付けられ、且つユーザが前記それぞれのオンラインサービスを利用する際に回避されるそれぞれの炭素を排出する活動に固有である、複数の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムの中から、前記第1のユーザが利用した前記特定のオンラインサービスを識別する前記識別情報に少なくとも基づいて、前記特定のオンラインサービスに事前に関連付けられている特定の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムを選択するステップと、
前記第1のユーザが、前記集約された行動データを利用して前記特定のオンラインサービスに事前に関連付けられている前記特定の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムの実行に少なくとも基づいて、前記特定のオンラインサービスを利用した際に回避された特定の前記炭素を排出する活動によって排出されたであろう炭素の量を表す炭素節約量を特定するステップと、
前記特定のオンラインサービスを利用することを通じて前記第1のユーザによって回避された特定の前記炭素を排出する活動によって排出されたであろう炭素の量を表す前記特定された炭素節約量に基づいて、前記特定された炭素節約量に関連付けられているポイント数を特定するステップと
を備える、方法。」

なお、本願発明2~21の概要は次のとおり。

本願発明2~7は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明8は、本願発明1の「方法」の発明を、コンピュータ読取可能記憶媒体の発明として表現したものであり、本願発明9~14は、本願発明8を減縮した発明である。

本願発明15は、本願発明1の「方法」の発明のカテゴリを変更して「システム」の発明として表現したものであり、本願発明16~21は、本願発明15を減縮した発明である。

第4 引用文献1の記載事項と引用発明

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1 引用文献1の記載事項

引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0035】
図1に示すように、環境ポイントサービスシステム10では、電力用情報端末11、算出サーバ12、ポイントサーバ13、POS(Point of Sales)端末14、通信販売サーバ18、および公共サービス用通信装置19が、通信ネットワーク15を介して通信可能に接続されている。さらに、携帯型情報端末16が基地局17を介して通信ネットワーク15に通信可能に接続されている。」
「【0077】
図12は、通信販売サーバ18と算出サーバ12との関係を示すブロック図である。通信販売サーバ18は、商品を通信販売するためのものである。図示のように、通信販売サーバ18は、制御部90、記憶部91、および通信部92を備えている。なお、制御部90、記憶部91、および通信部92は、算出サーバ12の制御部30、記憶部31、および通信部32と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
制御部90は、商品購入受付部100および排出抑制量算出部(排出抑制量取得手段)101を備えており、記憶部91は、カーボンフットプリント記憶部110を備えている。
続きを表示(全32行)
【0079】
カーボンフットプリント記憶部110は、或る商品を通信販売する場合のカーボンフットプリントを、基準のカーボンフットプリント、すなわち、当該商品に対応する商品を店頭販売する場合のカーボンフットプリントに対応付けて記憶している。通信販売は、店舗における運搬、展示などが不要であるため、店頭販売よりも、カーボンフットプリントが少なくなり、CO2の排出が抑制される。なお、通信販売における商品が電子データである場合、店頭販売における商品は、当該電子データが記録媒体に記録され、包装されたものとなる。従って、この場合、通信販売は、店頭販売よりもカーボンフットプリントが著しく少なくなり、CO2の排出が著しく抑制される。
【0080】
商品購入受付部100は、別の通信端末(図示せず)からの商品の購入を受け付けるものである。商品購入受付部100は、受け付けた商品が有体物である場合、受け付けた商品を発送するための指示を行う。また、商品購入受付部100は、受け付けた商品が電子データである場合、該電子データを通信部92および通信ネットワーク15を介して、上記別の通信端末に送信する。
【0081】
本実施形態では、商品購入受付部100は、購入を受け付けた商品の情報と、購入者を識別する購入者IDとを排出抑制量算出部101に送信する。なお、購入者IDは、通信販売サーバ18にて割り当てられた識別情報でもよいし、商品の購入を要求する端末の識別情報でもよい。
【0082】
排出抑制量算出部101は、上記商品の購入によるCO2排出抑制量を算出するものである。具体的には、排出抑制量算出部101は、商品購入受付部100からの商品の情報に対応する、通信販売および店頭販売のカーボンフットプリントをカーボンフットプリント記憶部110から読み出して、それらの差分を求めることにより、CO2排出抑制量を算出する。排出抑制量算出部101は、算出したCO2排出抑制量と上記購入者IDとを通信部92および通信ネットワーク15を介して算出サーバ12に送信する。
【0083】
次に、算出サーバ12における制御部30の詳細について説明する。制御部30は、図3に示す構成40~44と、図6に示す構成45~47とに追加して、排出抑制量取得部(排出抑制量取得手段)48を備えている。
【0084】
排出抑制量取得部48は、通信販売サーバ18からのCO2排出抑制量および購入者IDを、通信ネットワーク15および通信部32を介して取得するものである。排出抑制量取得部48は、取得した取得したCO2排出抑制量を、排出抑制量合計履歴記憶部54における購入者IDに対応するCO2排出抑制量の合計値に加算して更新する。
【0085】
このように、CO2排出抑制量は、算出サーバ12以外の装置で算出することもできる。この場合、算出サーバ12は、CO2排出抑制量を算出する必要は無く、当該装置からCO2排出抑制量を取得して記憶すればよい。
【0086】
図13は、公共サービス用通信装置19と算出サーバ12との関係を示すブロック図である。公共サービス用通信装置19は、公共サービスのための通信装置であり、例えば、図書館での本の貸し借りを受け付ける受付端末、官公庁への電子届出・申請等の手続を処理する手続サーバなどが挙げられる。図書館で本を借りた場合、1つの本を複数の人数で利用するから、当該本を購入する場合に比べて、CO2の排出が抑制される。また、官公庁へ電子届出・申請等の手続を行う場合、官公庁の窓口での手続を行う場合に比べて、手続用書類の印刷が不要となり、CO2の排出が抑制される。
【0087】
図13に示すように、公共サービス用通信装置19は、制御部120、記憶部121、および通信部122を備えている。なお、制御部120、記憶部121、および通信部122は、算出サーバ12の制御部30、記憶部31、および通信部32と同様であるので、その説明を省略する。
【0088】
制御部120は、公共サービス受付部130および排出抑制量算出部(排出抑制量取得手段)131を備えており、記憶部121は、カーボンフットプリント記憶部140を備えている。
【0089】
カーボンフットプリント記憶部140は、提供する公共サービスのカーボンフットプリントを、基準のカーボンフットプリント、すなわち当該公共サービスを利用しない場合のカーボンフットプリントと対応付けて記憶している。また、官公庁への電子届出・申請等の手続を行う公共サービスのカーボンフットプリントは、官公庁の窓口での手続を行う公共サービスのカーボンフットプリントに対応付けられる。
【0090】
公共サービス受付部130は、公共サービスを受け付けるものである。公共サービス受付部130は、受け付けた公共サービスの内容と、サービス利用者を識別する利用者IDとを排出抑制量算出部131に送信する。なお、利用者IDは、公共サービス用通信装置19にて割り当てられた識別情報が好ましいが、その他の識別情報でもよい。
【0091】
排出抑制量算出部131は、上記公共サービスを利用することによるCO2排出抑制量を算出するものである。具体的には、排出抑制量算出部131は、公共サービス受付部130からの公共サービスの内容に対応するカーボンフットプリントと、該カーボンフットプリントに対応する基準のカーボンフットプリントとをカーボンフットプリント記憶部140から読み出して、それらの差分を求めることにより、CO2排出抑制量を算出する。排出抑制量算出部131は、算出したCO2排出抑制量と上記利用者IDとを通信部122および通信ネットワーク15を介して算出サーバ12に送信する。
【0092】
なお、算出サーバ12における処理は、図12に示す処理と同様であるので、その説明を省略する。」
「【0100】
変換レート記憶部171は、CO2排出抑制量に対する環境ポイントの変換レートを記憶している。上記変換レートを上昇させると、同じCO2排出抑制量であっても、貨幣的価値を有する環境ポイントが増えるので、ユーザがCO2の削減をさらに行う動機付けとなる。従って、CO2排出抑制量に対する環境ポイントの変換レートが可変である方が、産業政策上好ましい。なお、上記変換レートは、ユーザの行動別に記憶されてもよい。この場合、CO2の削減を進めるべきユーザの行動に対して、上記変換レートを上昇させることができるので、産業政策上さらに好ましい。」
「【0105】
図14に示すように、排出抑制情報取得部161は、算出サーバ12から通信ネットワーク15および通信部152を介して、CO2排出抑制量の合計値(図6・図10を参照)と識別情報とを含む排出抑制情報を取得するものである。排出抑制情報取得部161は、取得した排出抑制情報を、統合ID特定部162およびポイント変換部163に送信する。なお、排出抑制情報取得部161は、排出抑制情報を算出サーバ12から定期的取得することが好ましいが、ランダムに取得してもよい。」
「【0110】
図18は、図2のステップS3に対応するものであり、ポイントサーバ13が、各ユーザのCO2排出抑制量から環境ポイントを算出する処理の流れを示している。図示のように、排出抑制情報取得部161が、算出サーバ12からCO2排出抑制量の合計値と識別情報とを含む排出抑制情報を取得すると(S40)、統合ID特定部162が、ID対応情報記憶部170のID対応情報を参照して、上記排出抑制情報の識別情報に対応する統合IDを特定すると共に(S41)、ポイント変換部163が、変換レート記憶部171の変換レートに基づき、上記排出抑制情報のCO2排出抑制量を環境ポイントに変換する(S42)。
【0111】
そして、ポイント更新部164は、ポイント情報記憶部172のポイント情報を参照して、統合ID特定部162が特定した統合IDに対応する環境ポイントに対し、ポイント変換部163が変換した環境ポイントを加算することにより、ポイント情報記憶部172のポイント情報を更新する(S43)。その後、上記環境ポイントを算出する処理を終了する。」

2 引用発明

上記1の記載より、引用文献1には、算出サーバ12とポイントサーバ13とにより実施される方法について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(引用発明)

算出サーバ12と、ポイントサーバ13と、

別の通信端末からの商品の購入を受け付け、購入を受け付けた商品の情報に対応する、通信販売および店頭販売のカーボンフットプリントの差分を求めることにより、CO2排出抑制量を算出し、算出したCO2排出抑制量と購入者IDとを算出サーバ12に送信する通信販売サーバ18と(【0080】、【0082】)、

官公庁への電子届出・申請等の手続を処理する手続サーバであって、受け付けた公共サービスの内容に対応するカーボンフットプリントと、該カーボンフットプリントに対応する基準のカーボンフットプリントの差分を求めることにより、CO2排出抑制量を算出し、算出したCO2排出抑制量と利用者IDとを算出サーバ12に送信する公共サービス用通信装置19と(【0086】、【0091】)、

が通信ネットワーク15を介して通信可能に接続されている環境ポイントサービスシステム10における(【0035】)、前記算出サーバ12と前記ポイントサーバ13とにより実施される方法であって、

算出サーバ12は、

通信販売サーバ18からのCO2排出抑制量および購入者IDを、通信ネットワーク15および通信部32を介して取得し、取得した取得したCO2排出抑制量を、排出抑制量合計履歴記憶部54における購入者IDに対応するCO2排出抑制量の合計値に加算して更新し(【0084】)、

公共サービス用通信装置19からのCO2排出抑制量および利用者IDを、通信ネットワーク15および通信部32を介して取得し、取得した取得したCO2排出抑制量を、排出抑制量合計履歴記憶部54における利用者IDに対応するCO2排出抑制量の合計値に加算して更新し(【0084】、【0092】)、

ポイントサーバ13は、

算出サーバ12からCO2排出抑制量の合計値と識別情報とを含む排出抑制情報を取得し、上記排出抑制情報の識別情報に対応する統合IDを特定し、ユーザの行動別に記憶された変換レートに基づき、上記排出抑制情報のCO2排出抑制量を環境ポイントに変換し(【0100】、【0105】、【0110】)、特定した統合IDに対応する環境ポイントに対し、変換した環境ポイントを加算することにより、ポイント情報記憶部172のポイント情報を更新する(【0111】)

方法。

第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「算出サーバ12」と「ポイントサーバ13」は、いずれもコンピュータといえるから、引用発明の「前記算出サーバ12と前記ポイントサーバ13とにより実施される方法」は、本願発明1の「コンピュータにより実施される方法」に相当する。

イ 引用発明の「通信販売サーバ18」による通信販売と、「公共サービス用通信装置19」による官公庁への電子届出・申請等の手続は、いずれも本願発明1の「特定のオンラインサービス」に相当する。

また、引用発明の通信販売サーバ18から取得する「CO2排出抑制量および購入者ID」及び公共サービス用通信装置19から取得する「CO2排出抑制量および利用者ID」と、本願発明1の「(i)前記第1のユーザに関連付けられているユーザIDと、(ii)前記第1のユーザが利用する前記特定のオンラインサービスを識別する識別情報とを備える」「行動データ」とを対比すると、引用発明の「識別情報」である「購入者ID」及び「利用者ID」は、いずれも本願発明1の「(i)前記第1のユーザに関連付けられているユーザID」に相当するから、引用発明の「CO2排出抑制量および購入者ID」及び「CO2排出抑制量および利用者ID」は、いずれも「(ii)前記第1のユーザが利用する前記特定のオンラインサービスを識別する識別情報」を含んでいないものの、それぞれ「購入者ID」及び「利用者ID」を含む点において本願発明1の「行動データ」に相当する。さらに、引用発明の「CO2排出抑制量および購入者ID」及び「CO2排出抑制量および購入者ID」は、オンラインサービス毎のデータであるから本願発明1の「細分化された行動データ」といえる。

また、本願発明1の「集約された行動データ」は、本願明細書【0027】の記載より、実行のために、サーバやアプリケーション内に格納されており、特にデータ形式を特定しているものではないから、引用発明において、通信販売サーバ18から取得された「CO2排出抑制量および購入者ID」及び公共サービス用通信装置19から取得された「CO2排出抑制量および利用者ID」は、あわせて本願発明1の「集約された行動データ」といえる。

以上より、引用発明の「通信販売サーバ18からのCO2排出抑制量および購入者IDを、通信ネットワーク15および通信部32を介して取得し」という処理と、「公共サービス用通信装置19からのCO2排出抑制量および利用者IDを、通信ネットワーク15および通信部32を介して取得し」という処理を合わせたものは、本願発明1の「第1のユーザが複数のオンラインサービスの中から特定のオンラインサービスを利用する際に生成される細分化された行動データを取得し、集約された行動データを生成するために、前記複数のオンラインサービスで生成された前記細分化された行動データを集約するステップであって、前記取得した行動データは、(i)前記第1のユーザに関連付けられているユーザID」「を備える、ステップ」に相当する。

ウ 引用発明には、本願発明1の

「前記複数のオンラインサービスのそれぞれのオンラインサービスに事前に関連付けられ、且つユーザが前記それぞれのオンラインサービスを利用する際に回避されるそれぞれの炭素を排出する活動に固有である、複数の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムの中から、前記第1のユーザが利用した前記特定のオンラインサービスを識別する前記識別情報に少なくとも基づいて、前記特定のオンラインサービスに事前に関連付けられている特定の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムを選択するステップと、
前記第1のユーザが、前記集約された行動データを利用して前記特定のオンラインサービスに事前に関連付けられている前記特定の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムの実行に少なくとも基づいて、前記特定のオンラインサービスを利用した際に回避された特定の前記炭素を排出する活動によって排出されたであろう炭素の量を表す炭素節約量を特定するステップ」

は、特定されていない。

エ 本願明細書の「本願は、個々のカーボンフットプリント((二酸化)炭素排出量)を算定するためのコンピュータにより実施される方法、ソフトウェア、及びシステムに関する。」(【0002】)との記載より、「カーボンフットプリント」は、二酸化炭素排出量又は炭素排出量を意味するところ、本願明細書では「二酸化炭素排出量」と「炭素排出量」を区別していないといえるから、引用発明の、「購入を受け付けた商品の情報に対応する、通信販売および店頭販売のカーボンフットプリントの差分を求めることにより」算出した「CO2排出抑制量」と、「受け付けた公共サービスの内容に対応するカーボンフットプリントと、該カーボンフットプリントに対応する基準のカーボンフットプリントの差分を求めることにより」算出した「CO2排出抑制量」は、いずれも本願発明1の「前記特定のオンラインサービスを利用することを通じて前記第1のユーザによって回避された特定の前記炭素を排出する活動によって排出されたであろう炭素の量を表す」「炭素節約量」に相当するといえる。

また、引用発明の「環境ポイント」は、本願発明1の「ポイント数」に相当するところ、引用発明は変換レートをユーザの行動別に記憶しているから、引用発明は、通信販売サーバ18から取得したCO2排出抑制量に基づく環境ポイントと公共サービス用通信装置から取得した環境ポイントを個別に算出するものを含む。そうすると、引用発明の「ユーザの行動別に記憶された 変換レートに基づき、上記排出抑制情報のCO2排出抑制量を環境ポイントに変換」することは、本願発明1の「炭素節約量に関連付けられているポイント数を特定するステップ」に相当する。

以上より、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。

<一致点>

コンピュータにより実施される方法であって、

第1のユーザが複数のオンラインサービスの中から特定のオンラインサービスを利用する際に生成される細分化された行動データを取得し、集約された行動データを生成するために、前記複数のオンラインサービスで生成された前記細分化された行動データを集約するステップであって、前記取得した行動データは、(i)前記第1のユーザに関連付けられているユーザIDを備える、ステップと、

前記特定のオンラインサービスを利用することを通じて前記第1のユーザによって回避された特定の前記炭素を排出する活動によって排出されたであろう炭素の量を表す炭素節約量に基づいて、炭素節約量に関連付けられているポイント数を特定するステップと

を備える、方法。

<相違点1>

「行動データ」について、本願発明1では「(ii)前記第1のユーザが利用する前記特定のオンラインサービスを識別する識別情報」を備えるのに対し、引用発明ではこの点が特定されていない点。

<相違点2>

本願発明1では、「前記複数のオンラインサービスのそれぞれのオンラインサービスに事前に関連付けられ、且つユーザが前記それぞれのオンラインサービスを利用する際に回避されるそれぞれの炭素を排出する活動に固有である、複数の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムの中から、前記第1のユーザが利用した前記特定のオンラインサービスを識別する前記識別情報に少なくとも基づいて、前記特定のオンラインサービスに事前に関連付けられている特定の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムを選択するステップ」と、「前記第1のユーザが、前記集約された行動データを利用して前記特定のオンラインサービスに事前に関連付けられている前記特定の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムの実行に少なくとも基づいて、前記特定のオンラインサービスを利用した際に回避された特定の前記炭素を排出する活動によって排出されたであろう炭素の量を表す炭素節約量を特定するステップ」を備えるのに対し、引用発明では、算出されたCO2排出抑制量を取得するものである点。

<相違点3>

特定するポイント数について、本願発明1では、相違点2についての炭素節約量を特定するステップによって特定された炭素節約量に基づくのに対し、引用発明では、この点が特定されていない点。

(2)判断

識別情報について関連する相違点1及び相違点2について、まとめて検討する。

相違点1及び相違点2に係る本願発明1の構成は、要するに、第1のユーザが利用する特定のオンラインサービスを識別する識別情報を取得し、前記識別情報に少なくとも基づいて、前記特定のオンラインサービスに事前に関連付けられている特定の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムを選択し、炭素節約量量子化アルゴリズムの実行に少なくとも基づいて、前記特定のオンラインサービスを利用した際に回避された特定の前記炭素を排出する活動によって排出されたであろう炭素の量を表す炭素節約量を特定するものである。

一方、引用発明では、通信販売サーバ18は、購入を受け付けた商品の情報に対応する、通信販売および店頭販売のカーボンフットプリントの差分を求めることにより、CO2排出抑制量を算出するものであり、公共サービス用通信装置19は、受け付けた公共サービスの内容に対応するカーボンフットプリントと、該カーボンフットプリントに対応する基準のカーボンフットプリントの差分を求めることにより、CO2排出抑制量を算出するものであるから、異なるオンラインサービスに対して同じアルゴリズムを用いてCO2排出抑制量を算出するものといえる。

ここで、引用文献1には、オンラインサービスに関するものではないが、算出サーバ12において、住宅Rの電力用情報端末11から売買電力量、計測機関情報及び契約者IDを取得してCO2排出抑制量を算出する例(【0042】~【0059】)、及び、携帯型情報端末16から移動情報と端末IDとを取得してCO2排出抑制量を算出する例(【0060】~【0076】)が記載されているから、引用発明において、上記2つの例と同様に算出サーバ12にてCO2排出抑制量を算出することまでは当業者が容易に想到し得るものといえるが、この場合、引用発明の2つのオンラインサービスは、いずれもCO2排出抑制量を算出するためのアルゴリズムが同じであるから、前記アルゴリズムを選択する必要がない。したがって、当業者であっても、引用発明から、第1のユーザが利用する特定のオンラインサービスを識別する識別情報を取得し、前記識別情報に少なくとも基づいて、前記特定のオンラインサービスに事前に関連付けられている特定の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムを選択する点を想起することまでは、容易に想到できたものとはいえない。

したがって、本願発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2~21について

本願発明2~7は、本願発明1を減縮した発明であって、上記1で検討した相違点1~3についての構成を備えるものであるから、本願発明1についての理由と同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

本願発明8は、本願発明1の「方法」の発明を、コンピュータ読取可能記憶媒体の発明として表現したものであり、本願発明9~14は、本願発明8を減縮した発明である。そうすると、本願発明8~14は、上記1で検討した相違点1~3についての構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1についての理由と同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

本願発明15は、本願発明1の「方法」の発明のカテゴリを変更して「システム」の発明として表現したものであり、本願発明16~21は、本願発明15を減縮した発明である。そうすると、本願発明15~21は、上記1で検討した相違点1~3についての構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1についての理由と同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 小括

上記1、2のとおり、本願発明1~21は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、原査定の拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第6 当審の拒絶理由について

1 当審拒絶理由の(1)の理由について

アの理由について

「細分化された行動データ」については、令和4年2月10日にされた手続補正により、請求項1の該当箇所を、「第1のユーザが複数のオンラインサービスの中から特定のオンラインサービスを利用する際に生成される細分化された行動データを取得し、集約された行動データを生成するために、前記複数のオンラインサービスで生成された前記細分化された行動データを集約するステップ」と補正することで明確となった。

「集約された行動データ」については、令和4年2月10日に提出した意見書(以下「意見書」という。)における、

「本願明細書の段落0027には、「実施によっては、行動データはサードパーティアプリケーション又はサードパーティサーバによって共通データ形式で生成される。例えば、行動データを、二次元テーブル形式、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)形式、又は拡張マークアップ言語(XML)形式で生成できる。行動データを取得した後、方法100を実行するアプリケーション又はサーバは、対応するデータ形式に基づいて行動データを読み取る、又は、分析する、あるいは、読み取り且つ分析することができる。」と記載されています。
上記の記載を考慮すると、行動データは、実行のために、サーバやアプリケーション内に格納されており、特にデータ形式を特定しているものではなく、複数の事前定義された炭素節約量量子化アルゴリズムによって利用可能なものです。」

との釈明により明確となった。

イの理由について

意見書における、「「識別情報」は、「オンラインサービス」ごとに異なるもの」との釈明により明確となった。

ウの理由について

令和4年2月10日にされた手続補正により、請求項1の該当箇所を「前記第1のユーザが利用した前記特定のオンラインサービスを識別する前記識別情報に少なくとも基づいて」と補正することで明確となった。

2 当審拒絶理由の(2)の理由について

上記当審拒絶理由の(1)の理由と同様の理由で、拒絶理由は解消した。

3 当審拒絶理由の(3)の理由について

令和4年2月10日にされた手続補正により補正前の請求項8、16、24が削除されたため、拒絶理由は解消した。

第7 むすび

以上のとおり、本願は、原査定及び当審の拒絶理由によって拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-002758

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