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特許拒絶査定不服審判

2021-002368

電力変換装置および高調波抑制装置

審判番号
2021-002368
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-547038外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年02月24日
審決日
2021年11月02日
公報発行日
2022年07月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H02M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-547038「電力変換装置および高調波抑制装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月 3日国際公開,WO2018/078807〕について,次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は,成り立たない。

理由

目次 ▾ 15項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は,2016年10月28日を国際出願日とする出願であって,令和2年3月31日付けで拒絶理由が通知され,これに対して令和2年6月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,令和2年11月18日付けで拒絶査定がなされた(以下,「原査定」という。)。これに対して,令和3年2月24日に審判請求がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし6に係る発明は,平成2年6月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されたものであるところ,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
第1の電源配線と第1の接地配線との間に接続される直流電源と、
前記第1の電源配線および前記第1の接地配線の間の第1の電源電圧を交流電圧に変換するように構成された電力変換器と、
前記第1の電源電圧よりも低い第2の電源電圧を供給するための第2の電源配線と第2の接地配線との間に接続され、前記電力変換器を制御するように構成された制御装置と、
前記第1の接地配線と前記第2の接地配線とを互いに分離するように構成された分離部とを備え、
前記第1の接地配線と前記第2の接地配線とは単一のノードにおいて電気的に接続され、
前記単一のノードは、前記第1の接地配線上に設けられる、電力変換装置。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし6に係る発明は,本願の国際出願日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし4に記載された事項に基づいて,その国際出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

1.特開平11-275761号公報

2.特開2004-304926号公報

3.特開2008-042126号公報

4.特開2015-049104号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

(1)本願の国際出願日前に頒布され,原査定の理由において引用された,特開平11-275761号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は,当審において付加した。以下,同じ。)

A 「【0002】
【従来の技術】産業用インバータ装置やサイリスタ装置等から発生する高調波が、変圧器、コンデンサ等の電力用機器や位相制御機器等に種々の影響を与え、これらの機器に種々の障害を及ぼし得ることが知られている。そのため上記サイリスタ装置等を負荷として電力を供給する交流電力系統においては、電圧形インバータを用いて高調波電流を補償するアクティブフィルタ装置が従来用いられている(例えば特開昭60-213226号公報)。
【0003】図3は、従来のアクティブフィルタ装置を示す構成図である。このアクティブフィルタ装置は、スイッチング素子15、16を備えたインバータ部20とコンデンサ17とから成る主回路と、負荷電流波形に含まれる高調波成分を出力する高調波検出部25と、上記インバータ部20を制御するPWM変調器13、14とを備えて構成され、上記インバータ部20の出力側は、リアクトル19を介して電力系統ライン1に接続されている。また、この電力系統ライン1には負荷電流検出器(以下「CT」という。)2が設けられ、その出力が上記高調波検出部25に入力される。一方、電流検出器18によってインバータ部20の出力電流、即ち高調波補償電流ICが検出され、検出された高調波補償電流ICは減算器12に入力されるようになっている。
【0004】また、スイッチング素子15、16の両端に、高調波を補償するための電源としてコンデンサ17が接続されている。高調波検出部25は、負荷電流から基本波成分を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)3及び負荷電流から基本波成分を減算して高調波成分を出力する減算器4で構成される。制御部11は、コンデンサ17の電圧変動に応じて充放電指令信号を減算器10に出力する。減算器10は、高調波検出部25から出力される高調波成分信号から制御部11から出力される充放電指令信号を減算して高調波制御信号IHを減算器12に出力する。
【0005】上記のようなアクティブフィルタ装置においては、電流検出器18で検出された高調波補償電流ICの波形と高調波検出部25から出力される高調波制御信号IHの波形とが等しくなるように、つまり減算器12の出力がゼロとなるように、PWM変調器13、14が動作する。そして高調波検出部25は、CT2で検出した負荷電流波形に基づいてその高調波成分を出力するため、結局上記インバータ部20からは、負荷電流波形に含まれる高調波成分と逆位相の電流が、高調波補償電流ICとしてリアクトル19を介して電力系統ライン1に流れることになる。これによって電力系統ライン1の高調波成分が相殺され、電源電流波形が補償されて正弦波となる。
【0006】制御部11は、高調波補償電流ICを流す電源を確保するため、コンデンサ17の両端電圧VCを一定とすべく充放電指令信号を減算器10に供給する。即ち、絶縁増幅器21から出力されるコンデンサ17の両端電圧VCに対応した電圧と基準電圧発生器22からの基準電圧Vrとの差に比例した信号を減算器23から出力し、掛算器24で、減算器23からの出力信号と相電圧検出器(PT)5の出力電圧とを掛算する。掛算器24は、コンデンサ17の両端電圧VC が基準電圧Vrより大のときはPT5の出力電圧位相を反転して出力し、VC<Vrのときは同相で出力する。図3の回路では、コンデンサ17の両端電圧VC が変動すると減算器23の出力が現れ、掛算器24から充放電指令信号が出力され、これに対応してIH=ICとなるようPWM変調器13、14が動作し、コンデンサ17の両端電圧VCが定に保持される。」
B 「【図3】
[図:0001385722000001.jpg]
」

C 上記Aの段落【0002】には,「サイリスタ装置等を負荷として電力を供給する交流電力系統においては、電圧形インバータを用いて高調波電流を補償するアクティブフィルタ装置」が記載され,さらに,段落【0003】には,「このアクティブフィルタ装置は、スイッチング素子15、16を備えたインバータ部20とコンデンサ17とから成る主回路と、負荷電流波形に含まれる高調波成分を出力する高調波検出部25と、上記インバータ部20を制御するPWM変調器13、14とを備えて構成され」ることが記載され,さらに,図3(上記B)から,“アクティブフィルタ装置は,制御部11を備えている”ことが看取できる。

してみると,引用文献1には,“サイリスタ装置等を負荷として電力を供給する交流電力系統において,電圧形インバータを用いて高調波電流を補償する,スイッチング素子15,16を備えたインバータ部20とコンデンサ17とから成る主回路と,負荷電流波形に含まれる高調波成分を出力する高調波検出部25と,上記インバータ部20を制御するPWM変調器13,14と,制御部11を備えて構成されるアクティブフィルタ装置”が記載されている。

D 上記Aの段落【0004】には,「スイッチング素子15、16の両端に、高調波を補償するための電源としてコンデンサ17が接続されている」ことが記載されている。

E 上記Aの段落【0006】には,“制御部11は,高調波補償電流ICを流す電源を確保するため,コンデンサ17の両端電圧VCを一定とすべく充放電指令信号を減算器10に供給するものであって,絶縁増幅器21から出力されるコンデンサ17の両端電圧VCに対応した電圧と基準電圧発生器22からの基準電圧Vrとの差に比例した信号を減算器23から出力し,掛算器24で,減算器23からの出力信号と相電圧検出器(PT)5の出力電圧とを掛算した充放電指令信号を出力”することが記載され,また,段落【0004】には,「制御部11は、コンデンサ17の電圧変動に応じて充放電指令信号を減算器10に出力する」ことが記載され,さらに,図3(上記B)から,“コンデンサ17の両端に絶縁増幅器21が接続され”ていることが看取できる。

してみると,引用文献1には,“制御部11は,高調波補償電流ICを流す電源を確保するため,コンデンサ17の両端電圧VCを一定とすべく充放電指令信号を減算器10に供給するものであって,コンデンサ17の両端に絶縁増幅器21が接続され,絶縁増幅器21から出力されるコンデンサ17の両端電圧VCに対応した電圧と基準電圧発生器22からの基準電圧Vrとの差に比例した信号を減算器23から出力し,掛算器24で,減算器23からの出力信号と相電圧検出器(PT)5の出力電圧とを掛算した充放電指令信号を減算器10に出力”することが記載されているといえる。

F 上記Aの段落【0004】には,「減算器10は、高調波検出部25から出力される高調波成分信号から制御部11から出力される充放電指令信号を減算して高調波制御信号IHを減算器12に出力する」ことが記載されている。

G 上記Aの段落【0003】には,“電流検出器18によってインバータ部20の出力電流,即ち高調波補償電流ICを検出し,検出した高調波補償電流ICを減算器12に入力”することが記載され,さらに,上記Aの段落【0005】には,“電流検出器18で検出された高調波補償電流ICの波形と高調波検出部25から出力される高調波制御信号IHの波形とが等しくなるように,つまり減算器12の出力がゼロとなるように,PWM変調器13,14を動作させる”ことが記載されている。

(2)上記AないしGの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「サイリスタ装置等を負荷として電力を供給する交流電力系統において,電圧形インバータを用いて高調波電流を補償する,スイッチング素子15,16を備えたインバータ部20とコンデンサ17とから成る主回路と,負荷電流波形に含まれる高調波成分を出力する高調波検出部25と,上記インバータ部20を制御するPWM変調器13,14と,制御部11を備えて構成されるアクティブフィルタ装置において,
スイッチング素子15,16の両端に,高調波を補償するための電源としてコンデンサ17が接続されており,
制御部11は,高調波補償電流ICを流す電源を確保するため,コンデンサ17の両端電圧VC を一定とすべく充放電指令信号を減算器10に供給するものであって,コンデンサ17の両端に絶縁増幅器21が接続され,絶縁増幅器21から出力されるコンデンサ17の両端電圧VCに対応した電圧と基準電圧発生器22からの基準電圧Vrとの差に比例した信号を減算器23から出力し,掛算器24で,減算器23からの出力信号と相電圧検出器(PT)5の出力電圧とを掛算した充放電指令信号を減算器10に出力し,
減算器10は,高調波検出部25から出力される高調波成分信号から制御部11から出力される充放電指令信号を減算して高調波制御信号IHを減算器12に出力し,
電流検出器18によってインバータ部20の出力電流,即ち高調波補償電流ICを検出し,検出した高調波補償電流ICを減算器12に入力し,電流検出器18で検出された高調波補償電流ICの波形と高調波検出部25から出力される高調波制御信号IHの波形とが等しくなるように,つまり減算器12の出力がゼロとなるように,PWM変調器13,14を動作させる,
アクティブフィルタ装置。」

2 引用文献2

本願の国際出願日前に頒布され,原査定の理由において引用された,特開2004-304926号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

A 「【0022】IPM(IC)12は、インバータ回路1,シャント抵抗4u,4v,4w,駆動回路13及び高圧ドライバ回路14を1枚の基板上に搭載することでハイブリッドICとして構成されている。尚、洗濯機としての構成や制御回路6が行うベクトル制御については、特願2002-27691に記載されている内容と同様である。
【0023】第1電源回路15は、インバータ回路1に供給される約280Vの駆動用電源を降圧して15Vの制御用電源VDDを生成し、制御回路6及び駆動回路13に供給するようになっている。また、第2電源回路16は、第1電源回路15によって生成された15V電源に基づいて5V電源を生成し、制御回路6に供給する三端子レギュレータである。【0024】ここで、第1電源回路15のグランドはVSS1であり、第2電源回路16のグランドはVSS2として区別されている(夫々異なるシンボルで示す)。そして、これら2つのグランドVSS1,VSS2は、シャント抵抗4u~4wのグランド接続点に対して異なる配線パターンで接続されている。」
B 「【0029】
図3は、IPM12内部の配線パターンの一部を示すものである。VRU端子(3ピン),VRV端子(2ピン),VRW端子(1ピン)は、シャント抵抗4u,4v,4wの端子電圧検出(相電流検出)用の出力ピンであり、それらの各ピンと対応するグランドパターン22u,22v,22wとの間にシャント抵抗4u,4v,4wが接続されている(夫々複数本の抵抗で構成されている)。
【0030】
シャント抵抗4u,4v,4wのグランドパターン22u,22v,22wは、接続点23において1点で共通に接続されている。尚、図3に示す状態は厳密には1点ではないが、実際の配線パターンをレイアウトする上では実質的に1点とみなされる程度に近接した状態である。
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【0031】
そして、接続点23には、グランド端子(-)が接続されていると共に、VSS2端子が配線パターン24を介して直接接続されている。また、その配線パターン24をジャンパ線25で跨いでVRW端子の配線パターン22wa,22wbが接続されており、図3中左方へと延びている。更に、配線パターン22wbを例えばアルミワイヤよりなるジャンパ線27で跨いで、VSS1端子の配線パターン28が接続されている。
【0032】
即ち、シャント抵抗4には、電流値が大きい相電流が流れるため、グランド配線パターンのインピーダンスが高い場合には電位変動が発生する。そして、
VSS2端子は電流検出を行う制御回路6のグランドに接続されるため、そのグランド電位が変動すると、正確な検出ができなくなるおそれがある。そこで、VSS2端子は、接続点23に対して配線パターン24で直接接続することで、インピーダンスを極力低下させるようにしている。
・・・中略・・・
【0040】また、第2電源回路16を、モータ11をベクトル制御するための演算処理を行なう制御回路6用の電源として、IPM12において、制御回路6用の電源グランドVSS2が接続されるグランド接続端子と接続点23とが最も低インピーダンスで接続されるように、ジャンパ線を用いることなく配線パターン24を形成した。即ち、一般に、制御回路6用の電源電圧は低いレベルに設定されるため、グランド電位が変動した場合に受ける影響は大きくなる。そこで、斯様に構成すれば、電源グランドVSS2に与える電位変動の影響を最低にすることができる。」

C「【0042】

(第2実施例)

図6及び図7は本発明の第2実施例を示す図1及び図4相当図であり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。第2実施例では、IPM(IC)40に電源グランドVSS1,VSS2を夫々別個に接続するためのグランド端子は設けられておらず、電源グランドVSS1,VSS2は、駆動電源入力用のグランド端子(-)に共通に接続されている。但し、このグランド端子(-)に対しては、IPM40の外部に形成される、夫々異なる配線パターン41,42によって1点で接続されるようになっている。その他の構成は第1実施例と同様である。

【0043】

以上のように構成された第2実施例によれば、第1実施例の構成に比較して、IPM40内部において接続点23-グランド端子(-)間の配線パターンが有しているインピーダンスに応じて電源グランドVSS1,VSS2は電位変動の影響を僅かに受けるが、IPM40のピン数を削減してパッケージを小型化することができる。従って、コストをより削減することが可能となる。」

D「図2

[図:0001385722000002.jpg]

」

E「図3

[図:0001385722000003.jpg]

」

F「図6

[図:0001385722000004.jpg]

」

G 上記B及び図3(上記E)によれば,引用文献2には,“インバータ回路1のIPM(IC)12のグランドパターン22u,22v,22wは,接続点23において1点で共通に接続されており,さらに,接続点23には,制御回路6用の電源である第2電源回路16用の電源グランドVSS2が配線パターン24を介して直接接続されている”ことが記載されているといえる。

3 引用文献3

本願の国際出願日前に頒布され,原査定の理由において引用された,特開2008-042126号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

A 「【0003】
この図10に示すように、モータ31などを制御する半導体素子(パワー素子)をICまたはモジュールに含めて用いる場合においては、たとえば制御・ロジック系の低電圧電源32で駆動する低電圧半導体回路からなる制御回路33と、高電圧電源34から供給される高電圧HVの大電流を扱うパワースイッチング素子35H、35Lとをワンチップに一体化する技術または同じパッケージに実装する技術が難しく、工業的に広く用いられるICおよびモジュールは数少ない。すなわち、現状のSi半導体技術で形成されているパワーICおよびモジュールは、低電圧素子と高電圧素子を電気的に素子分離する絶縁分離技術を駆使して、かなり複雑なプロセスによって形成される。」
B 「図10
[図:0001385722000005.jpg]
」

C 上記A及びBによれば,引用文献3において,“制御回路33の低電圧電源32の接地を,モータ31の制御するパワースイッチング素子35H,35Lの高電圧電源34の接地線上のノードに接続している”ことが看取できる。

4 引用文献4

本願の国際出願日前に頒布され,原査定の理由において引用された,特開2015-049104号公報(以下,「引用文献4」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0014】
第1インバータ10及び第2インバータ20と、高圧バッテリ60との間には、直流電圧を平滑化する平滑コンデンサ7が備えられている。平滑コンデンサ7は、第1回転電機11及び第2回転電機21の消費電力の変動に応じて変動する直流電圧を安定化させる。平滑コンデンサ7と高圧バッテリ60との間には、平滑コンデンサ7から回転電機(11,21)までの回路と、高圧バッテリ60との電気的な接続を切り離すことが可能なコンタクタ9が備えられている。本実施形態において、このコンタクタ9は、車両の最も上位の制御装置の1つである車両ECU(electronic control unit)200からの指令に基づいて開閉するメカニカルリレーであり、例えばシステムメインリレー(SMR:system main relay)と称される。
【0015】
車両には、高圧バッテリ60の他に、高圧バッテリ60よりも低電圧の電源である低圧バッテリ61(低圧直流電源)も搭載されている。低圧バッテリ61の電源電圧(B)は、例えば12~24[V]である。低圧バッテリ61は、オーディオシステムや灯火装置、室内照明、計器類のイルミネーション、パワーウィンドウなどの電装品や、これらを制御する制御装置に電力を供給する。尚、低圧バッテリ61と高圧バッテリ60とは、互いに絶縁されており、互いにフローティングの関係にある。
【0016】
第1制御部1は、高圧バッテリ60よりも低電圧の電源であり、高圧バッテリ60とは絶縁された低圧バッテリ61から供給される電力により動作する。そして、第1制御部1は、第1インバータ10を介して第1回転電機11を制御する。第1制御部1は、マイクロコンピュータなどの論理演算プロセッサを中核として構成されている。第1制御部1は、当該プロセッサや周辺ICなどのハードウェアと、プログラムなどのソフトウェアとの協働によって実現される種々の機能部を有して構成されている。」

第5 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

1 引用発明の「コンデンサ17」は,「高調波を補償するための電源」であるから,本願発明の「直流電源」に相当する。

そして,通常,電源となるコンデンサは,電源配線と接地配線との間に接続されるものであるから,引用発明においても,本願発明の「第1の電源配線」及び「第1の接地配線」に相当する配線を有するものと認められ,引用発明の「コンデンサ17」は,本願発明の「第1の電源配線と第1の接地配線との間に接続される直流電源」に相当する。

2 引用発明の「スイッチング素子15,16を備えたインバータ部20」は,「スイッチング素子15,16の両端に,高調波を補償するための電源としてコンデンサ17が接続され」るものであって,「インバータ部20」が,「コンデンサ17」の電源電圧を交流電圧に変換していることは明らかであるから,引用発明の「スイッチング素子15,16を備えたインバータ部20」は,本願発明の「前記第1の電源配線および前記第1の接地配線の間の第1の電源電圧を交流電圧に変換するように構成された電力変換器」に相当する。

3 引用発明の「インバータ部20」は,「PWM変調器13,14」によって制御されるものであって,さらに,「PWM変調器13,14」は,「制御部11」からの「充放電指令信号」,「高調波検出部25から出力される高調波成分信号」,「電流検出器18で検出された高調波補償電流IC」を「減算器10」及び「減算器12」を介して入力し動作するものである。してみると,「制御部11」は,「インバータ部20」の制御をするように構成されているといえる。また,通常,インバータの制御部は,電源電圧を供給するための電源配線と接地配線との間に接続されるものであるから,引用発明の「インバータ部20」においても,電源配線と接地配線との間に接続されているものと認められる。

したがって,引用発明の「制御部11」と,本願発明の「前記第1の電源電圧よりも低い第2の電源電圧を供給するための第2の電源配線と第2の接地配線との間に接続され、前記電力変換器を制御するように構成された制御装置」とは,後記の相違点1で相違するものの,“第2の電源電圧を供給するための第2の電源配線と第2の接地配線との間に接続され,前記電力変換器を制御するように構成された制御装置”である点では共通する。

4 引用発明の「制御部11」では,「絶縁増幅器21」によって「コンデンサ17の両端電圧VCに対応した電圧」が入力されるものであって,絶縁増幅器であるから,「絶縁増幅器21」の入力側と出力側では絶縁されているものと認められる。してみると,引用発明の「絶縁増幅器21」は,「コンデンサ17」の接地配線と,「制御部11」の接地配線を分離するように構成しているものと認められる。

したがって,引用発明の「絶縁増幅器21」は,本願発明の「前記第1の接地配線と前記第2の接地配線とを互いに分離するように構成された分離部」に相当する。

5 引用発明の「アクティブフィルタ装置」は,「コンデンサ17」,「インバータ部20」,「制御部11」,「絶縁増幅器21」を備えるものであるから,引用発明と本願発明とは,後記の相違点2で相違するものの,“電力変換装置”である点では共通する。

上記の検討から,本願発明と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)

「第1の電源配線と第1の接地配線との間に接続される直流電源と,
前記第1の電源配線および前記第1の接地配線の間の第1の電源電圧を交流電圧に変換するように構成された電力変換器と,
第2の電源電圧を供給するための第2の電源配線と第2の接地配線との間に接続され,前記電力変換器を制御するように構成された制御装置と,
前記第1の接地配線と前記第2の接地配線とを互いに分離するように構成された分離部とを備える,
電力変換装置。」

(相違点1)

「第2の電源電圧」が,本願発明では「第1の電源電圧よりも低い」のに対して,引用発明では,その旨の特定がされていない点。

(相違点2)

本願発明では,「前記第1の接地配線と前記第2の接地配線とは単一のノードにおいて電気的に接続され、前記単一のノードは、前記第1の接地配線上に設けられる」ものであるのに対して,引用発明では,その旨の特定がされていない点。

第6 判断

上記相違点について検討する。

(相違点1)について

上記「第4 2~4」の引用例2~4等に記載されるように,電力変換装置において,電力変換器(インバータ部)の制御部の電源電圧を電力変換器の電源電圧よりも低くすることは周知の技術に過ぎないことから,引用発明における「インバータ部20」の「制御部11」の電源電圧に関して,該周知の技術を適用することで,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2)について

通常であれば,接地は基準電位を定めるものであり,複数の箇所で接地を行う際には複数の箇所で基準電位が同じであることが望ましいことは技術常識であって,また,上記「第4 2~3」の引用文献2,3に記載されるように,複数の接地で基準電位を同じにするための構成として,電力変換器(インバータ部)の電源の接地配線と,制御部の接地配線を電力変換器側の接地配線の単一のノードに接続することは周知の技術である。

そして,引用発明の「制御部11」は,「制御部11」の「基準電圧Vr」と,「コンデンサ17の両端電圧VC」との差から「インバータ部」を制御し「コンデンサ17」の電圧を制御するものであるから,「制御部11」と「コンデンサ17」で接地電位が同じ0であることが望ましいことは明らかであって,「制御部11」の接地電位と,「インバータ部」の電源である「コンデンサ17」の接地電位を同じとすべきことは当業者であれば当然に予想されることである。また,接地電位を同じにするための具体的な構成として上記周知の技術のものが知られており,このようなものを選択することは設計事項に過ぎない。

してみれば,引用発明の「制御部11」の接地電位と,「インバータ部」の電源である「コンデンサ17」の接地電位を同じにするために,引用文献2,3の技術を適用して,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

なお,審判請求人は,審判請求書で,「引用文献1と引用文献2-3とは「課題の共通性」および「作用、機能の共通性」の何れの観点においても共通性を有しておらず、したがって、引用文献1に記載される発明に引用文献2-3に記載される発明を適用する動機付けは存在しないものと思料致します。」と主張している。

確かに,引用文献1には,明示的に,「制御部11」と「インバータ部」の「コンデンサ17」で接地電位を同じにするという課題は記載されていないが,上記相違点2について検討したように,複数の箇所で接地を行う際には複数の箇所で基準電位が同じであることが望ましいものであって,さらに,引用文献1においては,当然に予想されることである。そして,引用文献2,3にも記載されるように,接地電位を同じにする構成として,インバータ側の一点で接続することは,周知の構成であるから,引用文献1に記載される発明に引用文献2-3に記載される発明を適用する動機付けは存在しないとまではいえず,上記主張を採用することはできない。

第7 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用文献2,3,4に記載された周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

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2021-002368

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