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特許無効審判

2020-800080

マッサージ機

審判番号
2020-800080
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2012-061490
登録番号
5009445
請求日
2020年09月15日
審決日
2021年12月07日
公報発行日
2022年10月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 フジ医療器
  • 【請求人代理人】堀籠 佳典
  • 【請求人代理人】牧野 知彦
  • 【被請求人】ファミリーイナダ 株式会社
  • 【被請求人代理人】特許業務法人R&C
審判長/審判官
  • 審判長 内藤 真徳
  • 審判官 倉橋 紀夫
  • 審判官 木村 立人
分類
P1113.121-Y (A61H) / P1113.113-Y (A61H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5009445号発明「マッサージ機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨 特許第5009445号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された発明についての特許を無効とする。 第2 手続の経緯 1 本件特許出願 特許第5009445号(以下、「本件特許」という。)に係る特許出願(特願2012-61490号)は、平成14年4月19日(以下、「原出願日」という。)に出願した特願2002-118191号の一部を平成19年6月21日に新たな出願とした特願2007-163906号の一部を平成20年3月12日に新たな出願とした特願2008-61992号の一部を平成21年12月4日に新たな出願とした特願2009-275966号の一部を平成24年3月19日に新たな出願としたものであって、平成24年3月21日に明細書及び特許請求の範囲についての補正がされ、さらに、同年4月27日に明細書及び特許請求の範囲についての補正がされた後、同年5月22日付けで特許査定がされた。そして、同年6月8日に本件特許の特許権の設定の登録がされたものである。 2 特許権の設定登録後の手続 平成30年4月18日に、本件特許の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、無効審判が請求された(無効2018-800041号)。 当該無効審判の手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 平成31年 3月 5日付け 一次審決(請求不成立) 同年 3月14日 審決謄本の送達 同年 3月28日 一次審決の取消訴訟の提起(知的財産高等 裁判所 平成31年(行ケ)第10042 号) 令和 2年 1月21日 判決言渡し(一次審決取消し) 同年 7月31日付け 二次審決(請求不成立) 同年 9月15日 二次審決の取消訴訟の提起(知的財産高等 裁判所 令和2年(行ケ)第10109号 ) 令和 3年 5月26日 判決言渡し(請求棄却) 同年 6月 5日 上告受理申立(最高裁判所 令和3年(行 ヒ)第240号) 同年10月14日 上告受理申立不受理の決定 3 本件無効審判の主な手続 請求人は、令和2年9月15日に、本件特許の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書を提出して本件無効審判を請求した。 その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 2年11月27日 手続補正書(方式)の提出(請求人より) 令和 3年 2月12日 答弁書の提出(被請求人より) 同年 6月 1日付け 審理事項通知 同年 7月 7日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より) 同年 7月 7日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人より ) 同年 7月12日 上申書の提出(被請求人より) 同年 7月21日 上申書の提出(請求人より) 同年 7月28日 口頭審理の実施 同年 8月23日 上申書の提出(被請求人より) 同年 9月 6日 上申書の提出(請求人より) 第3 本件特許に係る発明 本件特許の請求項1ないし請求項6に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明6」などという。また、これらをあわせて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである(便宜上、請求人が審判請求書24頁~26頁に示した分説に従って示す。以下付された符号に従って「構成要件A」のようにいう。)。 「【請求項1】 A 被施療者が着座可能な座部と、 B 被施療者の上半身を支持する背凭れ部と C を備える椅子型のマッサージ機において、 D 前記座部の両側に夫々配設され、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部と、 E 前記保持部の内面に設けられる膨張及び収縮可能な空気袋と、を有し、 F 前記保持部は、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し、 G 前記空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ、 H 前記一対の保持部は、各々の前記開口が横を向き、且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されている I ことを特徴とするマッサージ機。 【請求項2】 J 前記一対の保持部は、各々の前記開口が真横を向いていること K を特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。 【請求項3】 L 前記保持部は、被施療者の前腕と手首又は掌を保持可能であること M を特徴とする請求項1又は2に記載のマッサージ機。 【請求項4】 N 前記空気袋は、前記開口側の部分の方が奥側の部分よりも立ち上るように構成されていること O を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマッサージ機。 【請求項5】 P 前記背凭れ部は、被施療者の胴体を支持するクッション部と、 Q 前記クッション部より前方へ延設され被施療者の上腕及び肩の側部を覆う部分を有するカバー部と、を有し、 R 前記カバー部には、膨張及び収縮することにより被施療者の肩に刺激を与えることができる空気袋が設けられている S ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のマッサージ機。 【請求項6】 T 左腕用の前記保持部に設けられた空気袋と、右腕用の前記保持部に設けられた空気袋と、は、夫々独立に駆動されるよう構成されている U ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のマッサージ機。」 第4 当事者が提出した証拠方法 1 請求人 甲第1号証:特許第5009445号公報(本件特許の特許公報) 甲第2号証:中国実用新案2032873号公報及びその日本語訳文 甲第3号証:特開平10-263029号公報 甲第4号証:特開平10-295750号公報 甲第5号証:特開平10-243981号公報 甲第6号証:特開平10-295753号公報 甲第7号証:特開2001-258971号公報 甲第8号証:特開2001-327565号公報 甲第9号証:特開平10-118141号公報 甲第10号証:特開2000-102577号公報 甲第11号証:特開2000-325416号公報 甲第12号証:特開2001-333949号公報 甲第13号証:特開2001-161766号公報 甲第14号証:特開平11-9633号公報 甲第15号証:特開平8-336565号公報 甲第16号証:特開2001-204776号公報 甲第17号証:特開平8-252292号公報 甲第18号証:米国特許第5086769号明細書及びその日本語抄訳 甲第19号証:米国特許第1458182号明細書及びその日本語抄訳 甲第20号証:国際公開第00/07665号及びその日本語抄訳 甲第21号証:米国特許第5613252号明細書及びその日本語抄訳 甲第22号証:審決取消請求事件(知的財産高等裁判所 平成31年(行ケ)第10042号)における判決 甲第23号証の1:無効審判事件(無効2018-800041号)における平成30年7月9日提出の答弁書 甲第23号証の2:同平成30年8月28日付け審理事項通知書 甲第23号証の3:同平成30年10月11日付けの口頭審理陳述要領書(被請求人より) 甲第24号証:「セルフケア健康機器市場に関する調査を実施(2019年)」と題する記事 株式会社矢野経済研究所(ウェブページ(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2322)の印刷物) 甲第25号証:「セルフケア健康機器の市場実態と将来展望」(2017年版)表紙、11頁、13~15頁、19~30頁、奥付 株式会社矢野経済研究所 甲第26号証:「物理療法マニュアル」第1版第15刷 表紙、序、目次、199~209頁、奥付 医歯薬出版株式会社 甲第27号証:取扱説明書(Panasonic マッサージチェア EP-MA101)表紙、目次、28~29頁、奥付 パナソニック株式会社 ビューティ・パーソナルケア事業部 甲第28号証:取扱説明書(家庭用医療機器 FMC-LPN10000)表紙、10頁、34頁、奥付 ファミリーイナダ株式会社 甲第29号証の1:取扱説明書(マッサージチェア AS-1000)表紙、20~25頁、仕様、奥付 株式会社フジ医療器 甲第29号証の2:取扱説明書(マッサージチェア AS-001)表紙、20~21頁、奥付 株式会社フジ医療器 甲第29号証の3:ウェブページ(https://www.fujiiryoki.co.jp/support/closed.html)の印刷物 1/22頁 株式会社フジ医療器 甲第30号証:中日辞典(第2版)表紙、578~579頁、1888~1889頁、奥付 株式会社小学館 甲第31号証:特開平11-276537号公報 甲第32号証:特開平10-295752号公報 甲第33号証:特開2001-37829号公報 甲第34号証:特開2001-157701号公報 甲第35号証:動画(https://haokan.baidu.com/v?pd=wisenatural&vid=12341377879830473787) 甲第36号証:陳述書(陳述者:中科専利商標代理有限責任公司 弁理士&法律職業資格 劉建) 甲第37号証:陳述書(陳述者:中科専利商標代理有限責任公司 翻訳者 法律職業資格 張芳) 以下、甲第1号証ないし甲第37号証を、「甲1」ないし「甲37」などという。 2 被請求人 乙第1号証:請求人が製造販売する「マッサージチェア」(ウェブページ(https://www.fujiiryoki.co.jp/product/massagechair/)の印刷物) 株式会社フジ医療器 乙第2号証:被請求人が製造販売する「メディカルチェア」(ウェブページ(https://www.family-chair.co.jp/lineup/)の印刷物) ファミリーイナダ株式会社 乙第3号証:特開2003-310683号公報 乙第4号証:特開2005-177279号公報 乙第5号証:特開2005-287831号公報 乙第6号証:特開2003-153970号公報 乙第7号証:コトバンクの「精選版日本国語大辞典」(ウェブページ(https://kotobank.jp/word/%E4%BF%9D%E6%8C%81-114124)の印刷物)(精選版日本国語大辞典は株式会社小学館が発行、コトバンクは株式会社VOYAGE MARKETINGが運営) 乙第8号証:コトバンクの「デジタル大辞泉」(ウェブページhttps://kotobank.jp/word/%E8%A6%86%E3%81%86-449573)の印刷物)(デジタル大辞泉は株式会社小学館が発行、コトバンクは株式会社VOYAGE MARKETINGが運営) 乙第9号証:大辞林(第19刷)表紙、1735頁、2077頁、奥付 株式会社三省堂 乙第10号証: [図:0001388689000001.jpg] (ウェブページ(http://tran.httpcn.com/Html/ChinesetoJapanese/25/CQCQILAZTBAZPWILILXVME.html)の印刷物) Httpcn Inc. 乙第11号証:中日辞書の「北辞郎」(ウェブページ(http://www.ctrans.org/search.php?word=%E5%BC%A0&opts=&optext=%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E5%89%8D%E6%96%B9%E4%B8%80%E8%87%B4)の印刷物) 辞典幇 乙第12号証:クラウン中日辞典(第11刷)表紙、425頁、奥付 株式会社三省堂 乙第13号証:商品サイズ(ウェブページ(https://www.uniqlo.com/jp/ja/size/425057_size.html)の印刷物) UNIQLO オンラインストア 乙第14号証:商品サイズ(ウェブページ(https://www.uniqlo.com/jp/ja/size/416982_size.html)の印刷物) UNIQLO オンラインストア 乙第15号証:ポロシャツ きれいめ メンズ Labo Spec(ラボスペック)(ウェブページ(https://aeonretail.com/item/2327960135022/)の印刷物) イオンの公式通販「イオンスタイルオンライン」 乙第16号証:ポロシャツ 半袖 鹿の子 UVケア機能付き レディース(ウェブページ(https://aeonretail.com/item/2309348135114/)の印刷物) イオンの公式通販「イオンスタイルオンライン」 乙第17号証:【選べる10種類】綿100%天竺プリント半袖クルーネックTシャツ(ウェブページ(https://www.nissen.co.jp/item/BLD0121B0007?areaid=spmen&cat_id=MA01)の印刷物) 通販【ニッセン】-メンズファッション 乙第18号証:【綿100%】プリントTシャツ(選べる柄)(ウェブページ(https://www.nissen.co.jp/item/AKR0121B0002?areaid=spladies&cat_id=LA01)の印刷物) ファッション通販ニッセン 乙第19号証:5.6オンス ハイクオリティーTシャツ|メンズ|1枚|5001-01|ホワイト(ウェブページ(https://www.tshirt.st/collections/men-01/products/ua-01t-01-5001-01-001)の印刷物) Tshirt.stビジネス 乙第20号証:5.6オンス ハイクオリティーTシャツ|レディース|1枚|5001-03|ホワイト(ウェブページ(https://www.tshirt.st/collections/women-14/products/ua-01t-02-5001-03-001)の印刷物) Tshirt.stビジネス 以下、乙第1号証ないし乙第20号証を、「乙1」ないし「乙20」などという。 第5 請求人が主張する無効理由 1 無効理由1(甲2に記載された発明に基く新規性又は進歩性欠如) 本件発明1ないし6は、甲2に記載された発明(以下、「甲2発明」という。)であるか、甲2発明及び周知の事項(ないしは甲10~甲11に示される周知の事項に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて本件原出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 具体的には、次のような主張をしている。 (1)本件発明1 本件発明1は、(ア)甲2発明であるか、(イ)甲2発明及び甲3~5、甲16にみられる周知の事項(周知技術A)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (2)本件発明2 本件発明2は、(ア)甲2発明であるか、(イ)甲2発明及び甲3~5、甲16にみられる周知の事項(周知技術A)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明2は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (3)本件発明3 本件発明3は、(ア)甲2発明であるか、(イ)甲2発明、甲3~5、甲16にみられる周知の事項(周知技術A)及び甲3~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明3は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (4)本件発明4 本件発明4は、甲2発明、甲3~5、甲16にみられる周知の事項(周知技術A)、甲3~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B)及び甲6~9にみられる周知・慣用の事項(周知技術C)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (5)本件発明5 本件発明5は、甲2発明、甲3~5、甲16にみられる周知の事項(周知技術A)、甲3~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B)、甲6~9にみられる周知・慣用の事項(周知技術C)及び甲10~11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (6)本件発明6 本件発明6は、甲2発明、甲3~5、甲16にみられる周知の事項(周知技術A)、甲3~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B)、甲6~9にみられる周知・慣用の事項(周知技術C)、甲10~11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)及び甲12~15にみられる周知・慣用の事項(周知技術E)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 2 無効理由2(甲3に記載された発明に基く新規性又は進歩性欠如) 本件発明1ないし6は、甲3に記載された発明(以下、「甲3発明」という。)、甲2記載事項及び周知の事項に基いて本件原出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 具体的には、次のような主張をしている。 (1)本件発明1 本件発明1は、甲3発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (2)本件発明2 本件発明2は、甲3発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (3)本件発明3 本件発明3は、甲3発明、甲2記載事項及び甲2、4~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B’)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (4)本件発明4 本件発明4は、甲3発明、甲2記載事項、甲2、4~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B’)及び甲6~9にみられる周知・慣用の事項(周知技術C)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (5)本件発明5 本件発明5は、甲3発明、甲2記載事項、甲2、4~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B’)、甲6~9にみられる周知・慣用の事項(周知技術C)及び甲10~11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (6)本件発明6 本件発明6は、甲3発明、甲2記載事項、甲2、4~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B’)、甲6~9にみられる周知・慣用の事項(周知技術C)、甲10~11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)及び甲12~15にみられる周知の事項(周知技術E)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 3 無効理由3(甲5に記載された発明に基く進歩性欠如) 本件発明1ないし6は、甲5に記載された発明(以下、「甲5発明」という。)、甲2記載事項及び周知の事項(ないしは甲10~甲11に示される周知の事項に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて本件原出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 具体的には、次のような主張をしている。 (1)本件発明1 本件発明1は、甲5発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (2)本件発明2 本件発明2は、甲5発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (3)本件発明3 本件発明3は、甲5発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (4)本件発明4 本件発明4は、甲5発明、甲2記載事項及び甲6~9にみられる周知・慣用の事項(周知技術C)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (5)本件発明5 本件発明5は、甲5発明、甲2記載事項、甲6~9にみられる周知・慣用の事項(周知技術C)及び甲10~11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (6)本件発明6 本件発明6は、甲5発明、甲2記載事項、甲6~9にみられる周知・慣用の事項(周知技術C)、甲10~11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)及び甲12~15にみられる周知の事項(周知技術E)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 4 無効理由4(甲16に記載された発明に基く進歩性欠如) 本件発明1ないし6は、甲16に記載された発明(以下、「甲16発明」という。)、甲2記載事項及び周知の事項(ないしは甲10~甲11に示される周知の事項に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて本件原出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 具体的には、次のような主張をしている。 (1)本件発明1 本件発明1は、甲16発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (2)本件発明2 本件発明2は、甲16発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (3)本件発明3 本件発明3は、甲16発明、甲2記載事項及び甲3~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (4)本件発明4 本件発明4は、甲16発明、甲2記載事項、甲3~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B)及び甲6~9にみられる周知の事項(周知技術C)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (5)本件発明5 本件発明5は、甲16発明、甲2記載事項、甲3~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B)及び甲6~9にみられる周知の事項(周知技術C)及び甲10~11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 (6)本件発明6 本件発明6は、甲16発明、甲2記載事項、甲3~5にみられる周知・慣用の事項(周知技術B)及び甲6~9にみられる周知の事項(周知技術C)、甲10~11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)及び甲12~15にみられる周知・慣用の事項(周知技術E)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 第6 各無効理由についての請求人の主張 1 無効理由1(甲2発明に基く新規性又は進歩性欠如) (1)本件発明1について(審判請求書36頁15行~40頁6行参照。) ア 一致点及び相違点 (ア)一致点 本件発明1は、甲2発明と本件発明1の構成要件A~Iで一致する。 (イ)予備的主張としての相違点1 甲2発明は、構成要件Hの「開口同士が互いに対向するように配設されている」という構成を備えない点で本件発明1と相違する。 イ 予備的主張としての相違点1の容易想到性 甲2には、「(十字状の両アームを広げたり閉じたりすることができるようにしたほうが好ましい)」として十字状のアームが回転可能であることを示唆する記載があるところ、空気圧マッサージ機の分野において、腕用の空気圧マッサージ装置の軸が施療者の前後方向を向くように配置することは、甲3~5、16にみられるように周知の事項(周知技術A)である。よって、甲2発明の構造を通常のマッサージ機の構造とすることは容易であり、その結果自ずと「開口同士が互いに対向するように配設されている」ことになる。 したがって、甲2発明及び上記周知技術(周知技術A)から(仮の)相違点1を想到することは容易である。 ウ 甲2発明について (ア)牽引について 健康機器は、健康管理機器、健康回復機器等に分類でき(甲24~25)、牽引もマッサージも同じ健康回復機器に分類され、牽引にはマッサージ効果があり(甲26)、マッサージ機にストレッチ機能も採用されているところ(甲27~29)、牽引機能を備えるマッサージ機もマッサージ機である。 (陳述要領書4頁13行~6頁9行参照。) (イ)空気充填腕摩擦器(37a,b,c,d)のエアバッグについて 甲2の図1及び2で短い線が描かれている箇所は、甲2において、多数の小突起が設けられていると記載されている箇所と完全に一致・対応しており、甲2の図1及び2に描かれた複数の短い線が多数の小突起であることは明らかである。したがって、甲2では、ジャケット18の内面(上側及び下側)に、空気充填腕摩擦器(37a,b,c,d)のエアバッグを備えている、すなわち、空気袋が、保持部の「内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ」ている。 (陳述要領書6頁10行~9頁11行参照。) (ウ)十字状の両アームについて 「十字状の両アーム」を「閉じ」ることは、支持用クロス杆1ab、2abを前方に向けた状態とすることを意味することは明らかである。 甲2に収納時についての言及はなく、「(十字状の両アームを広げたり閉じたりすることができるようにしたほうが好ましい)」の記載に続いて使用に関する構造・機能が説明されているから、当該記載は使用に関する記載である。 仮に収納時の記載であったとしても、使用時に両アームを閉じることが禁じられている理由にはならない。 両アームを広げたり閉じたりすることにより、腰等へのエアバッグの小突起のあたり具合に変化をつけることもできる。 支持用クロス杆1、2の一端が「ねじによって上部スリーブ柱(40)に固定され」という記載及び先端スリーブ柱31が上部スリーブ柱40に対して昇降可能となっていることから、下図のような固定と考えるのが論理的である。 [図:0001388689000002.jpg] (陳述要領書19頁の<イメージ図>) 甲2の機器において、円柱状のスリーブ柱に1点のみで接続するクロス杆をわざわざ回転不能とする理由はない。 「老弱、不自由、障碍者等」等にとって、両腕を180度開いた状態は無理な姿勢になり得る。両腕を前方に向けた方が、よりリラックスできる姿勢をとり得る。 マッサージ機能だけを利用するとき、両腕をそれぞれ斜め前方又は前方に向けたら、胸と肩の力が抜けて腕もゆったりする。 よって、甲2には、支持用クロス杆1ab、2abを前方に向けた状態で使用してよいことは明らかである。 (陳述要領書14頁7行~24頁27行参照。) エ 答弁書について (ア)構成要件C、Iについて 甲2発明がマッサージ機能に加えて牽引の機能を有することは「マッサージ機」であることを何ら否定するものではない。 本件発明1の「椅子型のマッサージ機」は、立位と座位の両方で使用可能であることを排除しておらず、甲2発明が「立位と座位の両方の体位で使用可能な健康機器であること」も「椅子型のマッサージ機」であることを否定する理由にならない。 (イ)構成要件Bについて 甲2の「背部に対応する部位」には、背摩擦用のエアバッグが配置され、使用者が寄りかかるものであるから、本件発明1の「背凭れ部」に相当する。 (ウ)構成要件Dについて 本件発明1の保持部の配置は、シートの距離や腕を伸ばす方向、腕の曲げ方については何ら規定しておらず、被請求人の主張は、失当である。 (エ)構成要件Gについて 甲2の図1及び図2に描かれた複数の短い線は、「小突起」であることは上述(第6 1(1)ウ(イ)参照。)したとおりであり、甲2発明は、「空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ、」の構成を備える。 (オ)構成要件Hについて 支持用クロス杆1ab、2abを前方に向けた状態で使用してよいことは、上述(第6 1(1)ウ(ウ)参照。)したとおりである。 甲2には、ジャケットの高さ調節をした後腕をジャケットに入れることが示されているといえ、クロス杆を前方に向けた状態で使用しても、高さ調整を困難にするものではない。 また、下記のイメージ図によれば、シートに座っている被施療者の両腕が無理なく両側のジャケットに入れたり出したりすることができることは明らかである。 [図:0001388689000003.jpg] (陳述要領書16頁の<イメージ図>【図2】) (カ)仮の相違点1について 空気圧マッサージ機において、椅子型マッサージ機とそうでないものを区別する理由はないが、仮に甲4を措いたとしても甲3、5、16により周知技術である。 施療者の体格に違いがあっても、左右の管状ジャケットを前後方向に向けても、腕を管状ジャケットに収納できなくなることはない。また、本件発明1も肩幅が所定より大きい人を収納できない。 (陳述要領書25頁18行~35頁16行参照。) オ 甲2の「(十字状の両アームを広げたり閉じたりすることができるようにした方が好ましい)」という記載について (ア)当該記載の解釈について 甲2の「十字状の両アームを広げたり閉じたりすることができるようにした方が好ましい」(甲2訳文4頁6行~7行)の記載において、「広げたり閉じたりする」のは「十字状の両アーム」あって、「右のジャケットと左のジャケット」でない。 当該記載を素直に解釈すれば、十字状の両アーム、すなわち、「開いた形状のアーム」を前後に閉じたり開いたりできる構造にしたほうが好ましい、という意味であることが明らかであって、「十字状の両アームを伸縮する構造とすることが好ましい」という意味を表現するのであれば、例えば「十字状の両アームを伸ばしたり縮めたりすることができるようにしたほうが好ましい。」というような文章となる。 また、当該記載は、「ほぼ十字状」を補足する記載(かっこ書き)となっているところ、本件記載が、「ほぼ十字状」、すなわち、「開いた状態にある両アーム」を開閉自在に構成する方が好ましい、という趣旨の文章であることが明らかである。 さらに、請求人の解釈は、中国語の通常の意味に照らしても、中国語原文の文脈からしても、妥当であるから(甲30、甲35~37)、これに反する解釈は成り立たない。 被請求人は本件実施例には、クロス杆を摺動可能にする構成の開示しかないと主張する。しかしながら、これは実施例として説明している記載に過ぎず、むしろ、当該記載が述べているのは、楽に使用できる健康器具において、十字状という一つの形態に固定するという不自然な構造ではなく、アームを自由に動かすことができる構造にすることが妥当であるというごく当たり前のことを示した記載に過ぎないために、その詳細な構造の説明まではしていないというに過ぎない。 (令和3年8月23日提出の上申書全文及び令和3年9月6日提出の上申書3頁17行~11頁2行参照。) (イ)当該記載を「揺動して閉じる」と仮定した場合の問題点(保持部)について 仮に、甲2の健康器具が1台では被施療者の肩幅に対応できないというのであれば、複数のサイズを用意すれば足りるだけのことである。 甲2発明は、「使用者が必要なマッサージ・・・を「楽に」得ることができる」(訳文4頁2~3行)ことを考えると、両アームの向きを不動の状態にせず、腕の向き(アームの向き)を使用者にとって楽な向きになるように適宜調整しながら健康機器を使用することも当然に予定されている。被請求人の主張は、甲2の健康機器は、使用者の腕(ないしはアーム)をまっすぐ前方に向けた不動な状態で使用しなければならないと理解したうえで縷々主張しているに過ぎないところ、そのような前提自体が成り立たないのであるから、これ以上の反論をするまでもなく被請求人の主張は失当である。 (令和3年9月6日提出の上申書14頁2行~15頁11行参照。) (ウ)当該記載を「揺動して閉じる」と仮定した場合の問題点(牽引)について 甲2発明は身体的弱者が楽に使用できるマッサージ器でもあり、牽引機でもあるということであり、それぞれの機能は別個独立した機能である。仮に、ある体勢において牽引を行うことが困難であると仮定しても、そのような体勢でマッサージを行うことができるのであればなんの問題もない。 なお、使用者は立った状態では脚で、座った状態であれば座椅子によって体を支え、さらに、腕をアームで支えているのであるから、脇窩が腋下摩擦器38,57から多少ずれたとしても、そのことによって牽引ができなくなるというものでもない。仮に、腕を前に向けた状態では、使用者の脇窩が腋下摩擦器38,57とずれて牽引機能がフルに活用できないということがあったとしても、その程度のことで、あえて文理に反した甲2発明の認定を行う理由にはならない。 (令和3年9月6日提出の上申書15頁12行~16頁22行参照。) (2)本件発明2について(審判請求書40頁7行~40頁13行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 本件発明2は、甲2発明と本件発明2の構成要件Kで一致する。 よって、新たな相違点はない。 (3)本件発明3について(審判請求書41頁1行~19行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 本件発明3は、甲2発明と本件発明3の構成要件Lで一致する。 (イ)予備的主張としての相違点2 甲2発明は、構成要件Lを備えない点で本件発明3と相違する。 イ 予備的主張としての相違点2の容易想到性 構成要件Lは甲3~5にみられるように周知・慣用の事項(周知技術B)である。したがって、本件発明3は、甲2発明に上記周知・慣用の事項(周知技術A及びB)を適用することにより容易に発明をすることができたものである。 ウ 甲2発明が構成要件Lを備えることについて 手動式エアシリンダを握った状態であっても、手首や掌の一部をジャケット18内に位置させることは可能である。また、エアシリンダから手を離し、腕を縮めて、手首や掌の一部をジャケット18内に位置させて、小突起により掻かれる等することは可能である。 よって、ジャケット18(a,d)は被施療者の手首又は掌を保持可能である。 (陳述要領書24頁25行~25頁12行参照。) エ 答弁書について 甲2発明の保持部が前腕とともに手首又は掌を保持可能であることは、上述ウのとおりであり、この点は新たな相違点を構成するものではない。 前腕とともに手首又は掌に対して空気圧マッサージを行うことは、甲3~5の他、甲16、甲31~34から周知の事項であることに争いようがない。 (陳述要領書35頁23行~38頁1行参照。) (4)本件発明4について(審判請求書41頁20行~45頁20行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点3 甲2発明は、構成要件Nを備えない点で本件発明4と相違する。 イ 相違点3の容易想到性 構成要件Nは甲6~9にみられるように周知・慣用の事項(周知技術C)である。したがって、本件発明4は、甲2発明及び上記周知・慣用の事項(周知技術A~C)に基いて容易に発明できたものである。 ウ 答弁書について 腕部にマッサージをする場合でも、脚部にマッサージをする場合であっても、人体の部位(肢体)を空気袋で押圧する点では同じであり、マッサージ(押圧)の方法等にとくに違いがあるわけではない。 したがって、甲6~9から、空気圧マッサージ装置において、空気袋を「開口側の部分の方が奥側の部分よりも立ち上るように構成されている」ことは周知・慣用の事項である。 (陳述要領書38頁2行~39頁25行参照。) (5)本件発明5について(審判請求書45頁21行~48頁14行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点4 甲2発明は、構成要件P~Rを備えない点で本件発明5と相違する。 イ 相違点4の容易想到性 構成要件P~Rは甲10~11にみられるように周知・慣用の事項(周知技術D)である。したがって、本件発明5は、甲2発明及び上記周知・慣用の事項(周知技術A~D)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて容易に発明できたものである。 ウ 答弁書について 甲10の【0018】には、「脇部を挟み込む位置に突出部35,36が形成され」との記載において、脇部を外側からマッサージするということは、あばら骨をマッサージすることに他ならないが、あばら骨をマッサージするということは通常行われていないのであって、「脇部を挟み込む位置」は突出部35、36全体(の中心)が「脇部の高さ」に位置することを意味するに過ぎず、使用時に使用者の両腕が突出部35、36の外側に位置することは意味しないというべきである。 以上のとおり、甲10の健康機器は、使用時に、使用者の両腕は突出部35,36の内側に位置するのであって、構成要件P~Rを備えている。 (陳述要領書40頁1行~42頁11行参照。) (6)本件発明6について(審判請求書48頁15行~53頁10行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点5 甲2発明は、構成要件Tを備えない点で本件発明6と相違する。 イ 相違点5の容易想到性 構成要件Tは甲12~15にみられるように周知・慣用の事項(周知技術E)である。したがって、本件発明6は、甲2発明及び上記周知・慣用の事項(周知技術A~E)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて容易に発明できたものである。 ウ 答弁書について 甲12段落【0006】は、「四肢のうち少なくとも2つ以上の肢体に個別にもみマッサージを施す」と記載しているのであって、上肢と下肢とを交互にマッサージすることは記載されていない。 甲13の「一の施療部が他の施療部と独立して動作可能であるのが好適である。この場合、マッサージしたい部位を個別に押圧でき、マッサージのバリエーションが多様になり、従来のマッサージ機では実現できない多様なマッサージ手法を行うことが可能となる。」(【0008】)等の記載から、甲13記載のエアセル(A,B,C,D)が独立して膨張及び収縮可能であることは明らかである。 複数設けられた空気袋を独立に駆動させる程度のことが、椅子側マッサージ機ないしは腕へのマッサージに特有の技術であると言えるはずはなく、甲14及び甲15にも、「左腕用の前記保持部に設けられた空気袋と、右腕用の前記保持部に設けられた空気袋と、は、夫々独立に駆動されるよう構成されている」ことが周知・慣用の事項であることが示されているというべきである。 よって、被請求人の主張には理由がない。 (陳述要領書42頁12行~43頁25行参照。) (7)まとめ 以上のように、本件発明は、新規性又は進歩性が欠如したものであるから、本件特許は無効とすべきである。 2 無効理由2(甲3発明に基く進歩性欠如) (1)本件発明1について(審判請求書58頁10行~67頁24行参照。) ア 一致点及び相違点 (ア)一致点 本件発明1と甲3発明とは、以下の点で一致する。 a 被施療者が着座可能な座部と、 b 被施療者の上半身を支持する背凭れ部と c を備える椅子型のマッサージ機において、 d 前記座部の両側に夫々配設され(た)一対の保持部と、 e 膨張及び収縮可能な空気袋と、を有し、 i ことを特徴とするマッサージ機。 (イ)相違点6 本件発明1は、保持部が「被施療者の腕部を部分的に覆って保持する」ものであり、「前記保持部の内面に設けられる空気袋と、を有し、前記保持部は、開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し、前記空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ、前記一対の保持部は、各々の前記開口が横を向き、且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されている」のに対し、甲3発明は、空気袋を有する保持部(固定板11)を有しているものの、両者が本件発明1に係る構成を備えていない点で相違する。 イ 相違点6の容易想到性 (ア)甲2に記載された事項 甲2には、 被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部、 保持部の内面に、膨張及び収縮可能な空気袋を設けること(構成要件E)、 保持部が、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有すること(構成要件F)、 空気袋を、保持部の内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けること(構成要件G)、 一対の保持部の各々の開口が横を向いていること(構成要件H前段)、 が記載されている。 (イ)相違点6の容易想到性 甲3発明も甲2技術も、椅子型マッサージ機であり、腕部に圧迫感のあるマッサージを実施するという課題が共通するから動機付けがある。 また、甲17に示されるとおり、椅子の腕部を載せるところにマッサージ機を乗せる構成は公知である。 さらに、腕を保持部に挿入する動作を行う場合には、腕を横方向に移動させる方が便宜であり、腕を保持する開口同士が互いに対向するように配置されていることは、甲18~21に現れている。 さらに、本件特許明細書には、上記相違点6に係る構成の効果等は一切記載されておらず、せいぜい図面から理解できる程度の効果である(甲22(別件判決))。よって、同様に横方向の開口を有する甲2技術が同様の効果を奏することを理解できる。 この点について、無効2018-800041号の平成30年7月9日付け審判事件答弁書(甲23の1)において、被請求人は、構成要件Hにかかる効果を主張したところ、平成30年8月28日審理事項通知書(甲23の2)において、「被請求人が主張する効果は、ある特定の機械的構造を採用したことによって当然の結果として備わることとなったもの(当業者が当然推論し得る程度の効果)に過ぎないと考えられます。」との指摘がなされ、これに対し被請求人は、平成30年10月11日付け口頭審理陳述要領書(甲23の3)において、構成要件H(開口が横を向き、且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されていること)の技術的意義、作用効果についての主張は、審査基準の「引用発明と比較した有利な効果」を主張するものではない、としている。したがって、当該相違点に係る効果が図面から当然に導かれる効果に過ぎないこと、及び、引用例に比較した有利な効果を奏するものではないと被請求人自身が認めている。 さらに、甲23の3(上記陳述要領書)によると、上方向の開口には問題があることを甲16(別件無効事件の甲9)の図から理解できることを認めている。そうすると、甲3発明に甲2技術を採用する際に、その開口を甲16のような上方向とするのではなく、甲2に示されたとおり横方向とすることは当然である。 以上のとおり、椅子の腕部を乗せるところにマッサージ機を乗せる構成が公知であり(甲17)、腕を保持部に挿入する動作を行う場合には、腕を横方向に移動させる方が便宜であり、腕を保持する開口同士が互いに対向するように配置されていることが周知であり(甲18~21)、甲2に接した当業者は甲2に記載された横方向の開口のメリットを理解できることを踏まえると、甲3発明に甲2記載事項を適用する動機付けが認められる。 そうすると、これらの動機付けに基いて甲3発明に甲2記載事項を適用することは容易に想到できたことである。 また、甲3発明の肘掛部上の固定板11及び空気袋として甲2記載事項を適用すれば、「開口部同士が互いに対向するように配設され」たものとなる。 したがって、甲3発明に甲2記載事項を適用することにより相違点6に係る本件発明の構成とすることは容易に想到できたことである。 (ウ)まとめ したがって、本件発明1は、甲3発明及び甲2記載事項に基いて容易に発明できたものである。 ウ 答弁書について 甲18~21から、着座ないし仰臥した使用者が腕を保持部に挿入する場合には、腕を横方向に移動させる方が便宜である。甲20において、パッド35を上向き開口ではなく、横向き開口にしたのは、腕を横方向に移動させる方が使用者にとって便宜だからである。 被請求人は、甲3発明と甲2発明とは、技術分野の関連性、課題の共通性、作用機能の共通性のいずれも充足しないと主張するが、両者はともに「マッサージ機」である。 甲3発明は甲2発明と比べて、腕への押圧力が小さく、マッサージ効果に劣ることは明らかである。したがって、より効果的なマッサージを行うために甲3発明に甲2発明を採用する動機付けが存在する。 (陳述要領書44頁12行~46頁19行参照。) (2)本件発明2について(審判請求書68頁1行~68頁7行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点7 甲3発明は、構成要件Jを備えない点で本件発明2と相違する。 イ 相違点7の容易想到性 構成要件Jは甲2に記載されている。したがって、本件発明2は、甲3発明及び甲2記載事項に基いて容易に発明できたものである。 (3)本件発明3について(審判請求書68頁8行~69頁1行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 本件発明3は、甲3発明と本件発明3の構成要件Lで一致する。 (イ)予備的主張としての相違点8 甲3発明は、構成要件Lを備えない点で本件発明3と相違する。 イ 予備的主張としての相違点8の容易想到性 構成要件Lは甲2、4~5にみられるように周知・慣用の事項(周知技術B’)である。したがって、本件発明3は、甲3発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術B’)に基いて容易に発明できたものである。 (4)本件発明4について(審判請求書69頁2行~10行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点9 甲3発明は、構成要件Nを備えない点で本件発明4と相違する。 イ 相違点9の容易想到性 構成要件Nは甲6~9にみられるように周知・慣用の事項(周知技術C)である。したがって、本件発明4は、甲3発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術B’及びC)に基いて容易に発明できたものである。 (5)本件発明5について(審判請求書69頁11行~70頁4行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点10 甲3発明は、構成要件P~Rを備えない点で本件発明5と相違する。 イ 相違点10の容易想到性 構成要件P~Rは甲10~11にみられるように周知・慣用の事項(周知技術D)である。したがって、本件発明5は、甲3発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術B’~D)に基いて容易に発明できたものである。 (6)本件発明6について(審判請求書70頁5行~70頁15行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点11 甲3発明は、構成要件Tを備えない点で本件発明6と相違する。 イ 相違点11の容易想到性 構成要件Tは甲12~15にみられるように周知・慣用の事項(周知技術E)である。したがって、本件発明6は、甲3発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術B’~E)に基いて容易に発明できたものである。 (7)まとめ 以上のように、本件発明は、進歩性が欠如したものであるから、本件特許は無効とすべきである。 3 無効理由3(甲5発明に基く進歩性欠如) (1)本件発明1について(審判請求書74頁16行~78頁15行参照。) ア 一致点及び相違点 (ア)一致点 本件発明1と甲5発明とは、以下の点で一致する。 a 被施療者が着座可能な座部と、 b 被施療者の上半身を支持する背凭れ部と c を備える椅子型のマッサージ機において、 d 前記座部の両側に夫々配設され、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部と、 e 前記保持部の内面に設けられる膨張及び収縮可能な空気袋と、を有し、 f 前記保持部は、被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し、 g 前記空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ、 i ことを特徴とするマッサージ機。 (イ)相違点12 本件発明1は、「保持部は、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されて」おり、「各々の前記開口が横を向き、且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されている」のに対し、甲5発明では、保持部(収納体12)は、長手方向の一端に使用者の腕を挿入する開口が形成されている点で相違する。 イ 相違点12の容易想到性 (ア)相違点12前段について 保持部が、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有すること(構成要件F)は、甲2に記載されている。 椅子の腕部を乗せるところにマッサージ機を乗せる構成が公知であり(甲17)、腕を保持部に挿入する動作を行う場合には、腕を横方向に移動させる方が便宜であることもよく知られている(甲18~21)。 さらに、別件判決(甲22)からすれば、甲2技術から開口を横向きとする効果を当然に理解でき、当該効果が引用例に比較した有利な効果を奏するものではないことは、被請求人が認めるところである(甲23の3)。 この点、甲5発明は、腕の自由が完全に害されてしまうことから、甲2技術から理解できる効果を踏まえて甲2技術を採用することは、強い動機付けがある。 したがって、甲5発明に甲2技術を適用して、「保持部が、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されている」構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 (イ)相違点12後段について 甲2には、一対の保持部の各々の開口が横を向いていること(構成要件H前段)が記載されている。そして、一対の保持部の各々の開口が横を向いていることの効果は、その構造から容易に理解でき、甲5発明の保持部を甲2技術の保持部に代える動機付けが存在する。 したがって、甲5発明に甲2記載事項を適用する(必然的に開口同士が互いに対向するように配設されたものとなる)ことは当業者が容易に想到できたことである。 (ウ)まとめ したがって、本件発明1は、甲5発明及び甲2記載事項に基いて容易に発明できたものである。 ウ 答弁書について 被請求人は、甲5発明と甲2発明とは、技術分野の関連性、課題の共通性、作用機能の共通性のいずれも充足しないと主張するが、両者はともに「マッサージ機」である。 甲5発明の保持部は、挿入動作が不便である。そこで、甲5及び甲2に接した当業者は、腕を挿入する動作の不便さを解消するために、甲5の収納体12に代えて、甲2に記載されたC字状の管状ジャケットの内面に設けられたエアバッグで腕を押圧する機構を採用する動機付けがある。 (陳述要領書49頁6行~50頁17行参照。) (2)本件発明2について(審判請求書78頁16行~22行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点13 甲5発明は、構成要件Jを備えない点で本件発明2と相違する。 イ 相違点13の容易想到性 構成要件Jは甲2に記載されている。したがって、本件発明2は、甲5発明及び甲2記載事項に基いて容易に発明できたものである。 (3)本件発明3について(審判請求書79頁1行~9行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 本件発明3は、甲5発明と本件発明3の構成要件Lで一致する。 よって、新たな相違点は、ない。 したがって、本件発明3は、甲5発明及び甲2記載事項に基いて容易に発明できたものである。 (4)本件発明4について(審判請求書79頁10行~18行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点14 甲5発明は、構成要件Nを備えない点で本件発明4と相違する。 イ 相違点14の容易想到性 構成要件Nは甲6~9にみられるように周知・慣用の事項(周知技術C)である。したがって、本件発明4は、甲5発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術C)に基いて容易に発明できたものである。 (5)本件発明5について(審判請求書79頁19行~80頁12行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点15 甲5発明は、構成要件P~Rを備えない点で本件発明5と相違する。 イ 相違点15の容易想到性 構成要件P~Rは甲10~11にみられるように周知・慣用の事項(周知技術D)である。したがって、本件発明5は、甲5発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術C及びD)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて容易に発明できたものである。 (6)本件発明6について(審判請求書80頁13行~24行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点16 甲5発明は、構成要件Tを備えない点で本件発明6と相違する。 イ 相違点16の容易想到性 構成要件Tは甲12~15にみられるように周知・慣用の事項(周知技術E)である。したがって、本件発明6は、甲5発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術C~E)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて容易に発明できたものである。 (7)まとめ 以上のように、本件発明は、進歩性が欠如したものであるから、本件特許は無効とすべきである。 4 無効理由4(甲16発明に基く進歩性欠如) (1)本件発明1について(審判請求書84頁16行~88頁7行参照。) ア 一致点及び相違点 (ア)一致点 本件発明1と甲16発明とは、以下の点で一致する。 a 被施療者が着座可能な座部と、 b 被施療者の上半身を支持する背凭れ部と c を備える椅子型のマッサージ機において、 d 前記座部の両側に夫々配設され、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部と、 e 前記保持部の内面に設けられる膨張及び収縮可能な空気袋と、を有し、 f 前記保持部は、その幅方向に切断して見た方向において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し、 g 前記空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ、 i ことを特徴とするマッサージ機。 (イ)相違点17 空気袋について、本件発明1は、内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられている(構成要件G)のに対し、甲16発明は、内面の互いに対向する部分のそれぞれに設けられている点。 (ウ)相違点18 一対の保持部について、本件発明1は、各々の開口が横を向き、且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されている(構成要件H)のに対し、甲16発明は、各々の開口が上を向くように配置されている点。 イ 相違点17及び18の容易想到性 (ア)相違点17について 実質的な相違点ではないことは明らかである(別件判決(甲22))。 (イ)相違点18について 甲2には、一対の保持部の各々の開口が横を向いていること(甲2技術)が記載されている。 甲16発明も甲2技術も、腕部に圧迫を利用したマッサージを実施するという課題が共通するから動機付けがある。 また、甲17に示されるとおり、椅子の腕部を載せるところにマッサージ機を乗せる構成は公知である。 また、当該相違点に係る構成が図面から導き出せる効果に過ぎないこと、及び、引用例に比較した有利な効果を奏するものではないことについては、被請求人が認めるところである(甲23の3)。 そうすると、甲16発明に甲2技術を適用することは当業者が容易に想到できたことであり、その結果必然的に開口同士が互いに対向するように配設されたものとなる。 なお、別件判決(甲22)において、甲16(別件における「甲9」)を主引例とし、上記相違点2は設計的事項と主張したところ、同判決は、 「・・・引用発明の椅子式マッサージ機の腕保持部について、その構造を積極的に変更しようとすべき点は見当たらない。そうだとすると、引用発明の椅子式マッサージ機に接した当業者は、特に動機付けがなければ・・・保持部の構造を積極的に変更しようとはしない。」 と認定した。 そうすると、本件においても、この点を開示した甲2が存在する以上、開口を横向きとした効果を理解できるから、そのような効果に着目して相違点2に係る構成を甲16に適用することは容易である。 したがって、甲16発明に甲2記載事項を適用することにより容易に想到できたものである。 (ウ)まとめ したがって、本件発明1は、甲16発明及び甲2記載事項に基いて容易に発明できたものである。 ウ 答弁書について (ア)はじめに 別件判決(甲22)は、構成要件Hにつき、「腕部を横方向に移動させることで,保持部内に腕部を挿入し,引き出すことが可能であり,保持部内に腕部を位置させた状態で内側に曲げることができ,肘掛け部の上面に一対の保持壁を備える引用発明とは異なり,保持壁に拘束されずに,腕部(肘など)を載せることができる,といった作用効果を奏すると認められる」として、本件明細書に記載のない構成要件Hの作用効果を導き出した上で、これを「単なる設計事項とはいえない」と判断して、本件発明1の特許を有効とした。 そうすると、本件発明1の進歩性を検討するにあたっては、文献に「横向き開口」の記載があれば、その作用効果(技術的意義)を理解できるものとして検討する必要がある。 そして、甲2には、(対向する)「横向き開口」の開示があるから、甲2に「上向き開口」と対比した場合の具体的な説明が無くても、「上向き開口」に比べ、(対向する)「横向き開口」とすることにより、「腕部を横方向に移動させることで,保持部内に腕部を挿入し,引き出すことが可能」、「保持部内に腕部を位置させた状態で内側に曲げることができ(る)」、「保持壁に拘束されずに,腕部(肘など)を載せることができる」といった利点があることを理解できる。 (イ)被請求人の主張に対して 被請求人は、甲16発明と甲2発明とは、技術分野の関連性、課題の共通性、作用機能の共通性のいずれも充足しないと主張するが、両者はともに「マッサージ機」である。 甲2には(対向する)「横向き開口」の開示があるから、「上向き開口」に比べ、「腕部を横方向に移動させることで,保持部内に腕部を挿入し,引き出すことが可能」、「保持部内に腕部を位置させた状態で内側に曲げることができ(る)」、「保持壁に拘束されずに,腕部(肘など)を載せることができる」といった利点があることを理解でき、甲16発明に甲2の「横向き開口」を採用することは、容易に想到できたことである。 甲2の機器は、ジャケット18a-dと連結されたクロス杆1ab、2abを前方に向けた状態で使用してよく、クロス杆を前方に向けた状態で最適なアーム角度に設定することにより、リラックスした状態で使用できる。 よって、甲2発明は、リラックスした体勢をとれないことを前提とする被請求人の主張は誤りである。 (陳述要領書53頁1行~57頁17行参照。) (2)本件発明2について(審判請求書88頁8行~14行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点19 甲16発明は、構成要件Jを備えない点で本件発明2と相違する。 イ 相違点19の容易想到性 構成要件Jは甲2に記載されている。したがって、本件発明2は、甲16発明及び甲2記載事項に基いて容易に発明できたものである。 (3)本件発明3について(審判請求書88頁15行~89頁8行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 本件発明3は、甲16発明と本件発明3の構成要件Lで一致する。 (イ)予備的主張としての相違点20 甲16発明は、構成要件Lを備えない点で本件発明3と相違する。 イ 予備的主張としての相違点20の容易想到性 構成要件Lは甲3~5にみられるように周知・慣用の事項(周知技術B)である。したがって、本件発明3は、甲16発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術B)を適用することにより容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明4について(審判請求書89頁10行~18行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点21 甲16発明は、構成要件Nを備えない点で本件発明4と相違する。 イ 相違点21の容易想到性 構成要件Nは甲6~9にみられるように周知・慣用の事項(周知技術C)である。したがって、本件発明4は、甲16発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術B及びC)に基いて容易に発明できたものである。 (5)本件発明5について(審判請求書89頁19行~90頁12行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点22 甲16発明は、構成要件P~Rを備えない点で本件発明5と相違する。 イ 相違点22の容易想到性 構成要件P~Rは甲10~11にみられるように周知・慣用の事項(周知技術D)である。したがって、本件発明5は、甲16発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術B~D)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて容易に発明できたものである。 (6)本件発明6について(審判請求書90頁13行~24行参照。) ア 新たな一致点及び相違点 (ア)新たな一致点 新たな一致点は、ない。 (イ)相違点23 甲16発明は、構成要件Tを備えない点で本件発明6と相違する。 イ 相違点23の容易想到性 構成要件Tは甲12~15にみられるように周知・慣用の事項(周知技術E)である。したがって、本件発明6は、甲16発明、甲2記載事項及び上記周知・慣用の事項(周知技術B~E)(ないしは甲10~甲11にみられる周知・慣用の事項(周知技術D)に代えて、甲10又は甲11に記載された事項)に基いて容易に発明できたものである。 (7)まとめ 以上のように、本件発明は、進歩性が欠如したものであるから、本件特許は無効とすべきである。 第7 被請求人の主張 1 無効理由1(甲2発明に基く新規性又は進歩性欠如)に対する反論 (1)本件発明1の新規性欠如について ア 甲2発明は、本件発明1の椅子型のマッサージ機に相当しない(構成要件C、I)。 (ア)甲2発明は、エアー式マッサージと牽引が行える健康機器である。 (イ)甲2発明は、構造上、牽引の機能が主でマッサージが従である。これは、甲2の図1、2が椅子型のマッサージ機とは全く異なる形状を有していることからも明らかである。 (ウ)甲2発明は、立位と座位の両方で使用可能な健康機器である。一方、本件発明1は「椅子型のマッサージ機」であり、座位でのみ使用できる。被請求人においても、過去から現在まで製造販売している椅子型マッサージ機は、いずれも座位でのみ使用可能であり(乙1、2)、立位と座位の両方で使用可能である製品はない。 (エ)本件発明1と甲2発明とは、腕を保持部に挿入したときの腕を伸ばす方向、腕の曲げ方が異なる。 (オ)本件発明1と甲2発明とは、技術分野、課題、効果のいずれも一致しておらず、何ら関連していない。 (カ)本件発明1と甲2発明とは、以上のとおり発明(技術分野)、主な機能、使用体位、保持部に載置したときの腕の状態、課題、及び、効果が全く異なっており、甲2発明は、本件発明1の椅子型のマッサージ機に相当しない。 (答弁書6頁14行~18頁11行) イ 甲2発明の「上部スリーブ柱40」は本件発明1の「背凭れ部」に相当しない(構成要件B)。 本件発明1は椅子型のマッサージ機であり、通常被施療者は背凭れ部に上半身を預けるように寄りかかる。椅子型のマッサージ機の背凭れ部は、腰から肩に向かうに従ってより後方に位置するように傾斜しており、上半身の重さによって背中をマッサージする手段のマッサージ作用を逃がさないように構成されている。 一方、甲2発明は、効果的に脊椎を牽引するために立柱48、中部スリーブ柱42、上部スリーブ柱40は水平面(接地床面)に対して鉛直方向に立ち上がっている(図2)。使用者の腰、背部に対応する位置に使用者が寄りかかる点が甲2の訳文に記載があったとしても、本件発明1のように「被施療者の上半身を支持する」という程度に寄りかかることはない。 よって、請求人が主張する甲2発明の「上部スリーブ柱40」は本件発明1の「背凭れ部」に相当しない。 (答弁書19頁1行~20頁21行) ウ 甲2発明は、本件発明1の「座部の両側に夫々配設され、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部」を有していない(構成要件D)。 甲2発明のジャケット18が本件発明1の保持部に対応するが、図1、2から、ジャケット18は、請求人が座部と主張する底板24からかなり上方に位置しており、具体的には使用者の肩の位置である。 甲2発明は、牽引のため、ジャケット18と上部スリーブ柱40とが一体となって、底板又はシートに対してスリーブ柱の長手方向に沿って上下動する。 本件発明1においては、「保持部」は「座部の両側に夫々配設され」ており、背凭れ部との位置関係は特定されていない。上部スリーブ柱40と一体的に上下動するジャケット18は、「座部の両側に夫々配設され」ではなく、「上部スリーブ柱の両側に夫々配設され」と特定されるべきである。 本件発明1の実施形態に示されているように、本件発明1が椅子型のマッサージ機である以上、構成要件Dとは、一対の保持部が座部の近傍における両側に配設されていると解するのが自然である。しかし、甲2発明は、「エアー式マッサージ、牽引両用の健康機器」であり、ジャケット18が座部(底板24)のかなり上方に配置され、腕を保持部に挿入したときの腕を伸ばす方向、曲げ方が異なっているので、甲2発明のジャケット18は、「座部の両側に配設され」た「保持部」ではない。 (答弁書20頁22行~24頁5行) エ 甲2発明は、本件発明1の「空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ」るという構成要件を有していない(構成要件G)。 甲2には、腕エアバッグである空気充填腕摩擦器37a-dの外面は、多数の小突起が形成された組面にされていることは記載されているが、その小突起が図1、2に描かれていることは何ら記載されていない。請求人が図1、2で小突起であると主張する箇所には、複数の短い線が描かれているが、それが何を指すのかは明細書等から看取できない。 甲2の図1の引き出し線で示される位置及び図2より、空気充填腕摩擦器37a、dは、C字状の管状ジャケット18b、dの開口とは反対側(奥側)の中央部付近に配置されていることが理解される。 したがって、甲2には、本件発明1の「空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ」が開示も示唆もされていない。 (答弁書24頁6行~29頁4行) オ 甲2発明は、本件発明1の「一対の保持部は、各々の開口が横を向き、且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されている」構成要件を有していない(構成要件H)。 甲2には、十字状のアームを広げたり閉じたりすることが可能である旨が記載されているが、その構造の詳細については記載も図示もない。 請求人は、前記アームが閉じた状態を、ジャケット18を前に向けて開口同士を互いに対向させる方向であって、かつ、健康機器の使用状態であることを前提とした主張をしている。 ジャケット18を前に向けて開口同士を互いに対向させる方向で使用すると仮定すると、ジャケット18の高さ位置があっていない状態では、使用者の両肩の位置は、ジャケット18の内側になければならない(使用者の左右の肩関節間の長さよりも左右のジャケット18間の長さが長くなければならない)。使用者の両肩の位置がジャケット18と干渉していると高さ調節ができないからである。 また、使用者の両肩の位置がジャケット18の開口に対して内側にあるのならば、左右のジャケット18に使用者の肩関節を合わせることはできず、その結果、使用者の上腕、前腕をジャケット18に嵌め込むことはできない。 使用者の両腕がジャケット18に嵌め込まれた状態を仮定しても、使用者の背中はスリーブ柱等に当接し、体を後退できるクリアランスが制限されるので、ジャケット18から上腕を抜くのは難しい。 以上より、甲2の記載では、アームが閉じた状態を、ジャケット18を前に向けて開口同士を互いに対向させる方向であって、かつ、健康機器の使用状態であることを前提としているとはいえない。 アームが閉じた状態は、せいぜい、使用しない状態では折りたためたほうが収納容積を小さくできるという程度しか読み取れない。 請求人は、「マッサージ機器として考えれば、腰掛けた状態において腕が前に出てリラックスできる構造にしてあることは必須の条件とさえいえる。」(請求書34頁12-14行)と主張しているが、腕を肩の高さまで上げて上腕と前腕とを前方に伸ばした姿勢となることは、リラックスできる構造とはいえない。 (答弁書29頁5行~34頁17行) カ 小括 以上のように、甲2発明は、本件発明1の構成要件B、C、D、G、H、Iを具備していないので、本件発明1は甲2に記載された発明ではなく、新規性を有している。 キ 甲2の「(十字状の両アームを広げたり閉じたりすることができるようにした方が好ましい)」という記載について (ア)保持部について 甲2のジャケット18a-dの開口が横を向き且つ開口同士が対向する状態で、被施療者の腕がジャケット18a-dに挿入されたと仮定すると、下の平面図のようになる。 [図:0001388689000004.jpg] (陳述要領書7頁の「被施療者の腕がジャケットに挿入された状態を表す図」) 上図から直感的に理解されるように、被施療者の胴体を前方からジャケット18a、18cと背凭れ部との間に挿入できない。 被施療者の肩幅が上部スリーブ柱40、40間の距離より短ければ、上腕の肩関節に近い部分はジャケット18a、18cに挿入されない。被施療者の肩幅が上部スリーブ柱40、40間の距離より長ければ、胴体をスリーブ柱40、40間に挿入できない。 したがって、ジャケット18a-dが「開口が横を向き、且つ開口同士が互いに対向するように配設され」たときには、被施療者の腕部を挿入することができないので、「保持部」に当てはめることができない。 よって、構成要件D、Hの両方を充足する「保持部」を有していない さらに、乙13~20より、肩幅の広い人(大柄な成人男性)と肩幅の狭い人(小柄な成人女性)とでは,少なくとも2割以上の肩幅の差があることが分かる。甲2発明は,上クロス杆30の長さが450mm(甲2訳文6頁1行)であり、これは、肩幅の広い人が使用できるように設計されていると考えられるので、肩幅の個体差を吸収する機構を備えない状態で、肩幅の狭い人であっても適用できるということは現実的でない。 また、上図より、下側の支持用クロス杆2a、2bが存在するため、被施療者は、ジャケット18a-18dから仮に腕が抜けたとしても、下側の支持用クロス杆2a,2bが腕と干渉するから、腕を肩から下に垂らした状態の姿勢(いわゆる「気を付け」の姿勢)をとることもできない。 したがって、甲2発明は、アームが揺動して閉じた状態で使用されることは想定されていない。 (陳述要領書5頁2行~9頁17行及び令和3年8月23日提出の上申書8頁1行~10頁3行参照。) (イ)当該記載の解釈について 甲30や乙9~12より、甲2の「(十字状の両アームを広げたり閉じたりすることができるようにした方が好ましい)」という記載は、ジャケット18a-18dが開いて左右方向に延び、ジャケット18a-18dの開口が被施療者の前を向いた状態のまま、ジャケット18a-18dを上部スリーブ柱40に対して遠ざけたり近づけたりすることができる構造を言っている、と解釈すべきである。 甲2訳文6頁16行~17行には、「空気充填腕摩擦器のジャケット(18a,b,c,d)は、支持用クロス杆(1a,b)(2a,b)に接続され、そのフック(35a,b,c,d)は、異なる腕の長さに対応してクロス杆に摺動可能に設置される。」と記載されており、支持用クロス杆1a、1b、2a、2bは、上部スリーブ柱40に対してジャケット18a-18dを近接離隔した位置に配置させるためのガイドの役割を果たすものである。これより、上記解釈が自然である。 また、「十字状の両アーム」を「揺動して閉じる」と,もはや「十字状」ではない したがって、甲2に本件発明1の構成要件Hが記載されているとは言えない。 (令和3年7月12日付け上申書全文及び令和3年8月23日付け上申書4頁6行~7頁23行参照。) (ウ)アームが揺動して閉じた状態での牽引について 甲2訳文4頁22行~23行、6頁16行~7頁3行の記載から、甲2発明は、被施療者の腋窩を腋下摩擦器38、57で保持した状態で被施療者を牽引して、脊椎を引っ張るものである。甲2の図1、図2に示される構造で、被施療者を牽引する場合、下図のハッチング付き楕円で示す領域に腋下摩擦器38、57が配置されていると考えられる。 [図:0001388689000005.jpg] (令和3年8月23日付け上申書11頁の上図) 一方、請求人の言う「閉じた状態」で被施療者を持ち上げる場合、腋窩で押し上げ力が作用する領域は、背中側が広く胸側が狭い「ハの字」形の領域(下図のハッチング付き楕円)となり、領域全体の位置も腋下摩擦器38、57(下図の破線の楕円)の配置位置よりも前側となる。 [図:0001388689000006.jpg] (令和3年8月23日付け上申書11頁の下図) 上図から理解されるように、甲2記載の腋下摩擦器38、57では、請求人の言う「閉じた状態」では、押し上げ力が作用する領域全体に腋下摩擦器38、57がないので、被施療者の腋窩を保持して牽引することができない。また、上図のように腋下摩擦器38、57により被施療者を保持する位置がずれる際に、被施療者の腋窩をどのように保持するかについては、甲2に何ら開示されていない。 甲2の健康機器は、牽引を主たる機能とし、それにマッサージ機能を付加した構造である。牽引機能を損ねてまで変形させて使用することが甲2に当然記載されているに等しいということはできない。 (令和3年8月23日提出の上申書10頁4行~12頁24行参照。) (2)本件発明1の進歩性欠如について 請求人が周知例として列挙する甲3~5、16の内、甲4は局部専用の空気圧マッサージ機であって、椅子型のマッサージ機ではない。 したがって、甲3~5、16に基いては、「椅子型のマッサージ機の分野において、腕用の空気圧マッサージ装置の軸が施療者の前後方向を向くように配置する」という周知技術は導出されない。 仮に、甲3~5、16に基いて上記周知技術が導出されたとしても、この周知技術は、甲2発明と技術分野が異なる。 甲3、5、16は、椅子型のマッサージ機に関する発明であり、座部の両側に肘掛部があり、その肘掛部に前腕を載置する。この場合、施療者の肩幅に広狭があっても、前後方向に延びる肘掛部に沿って前腕を載置することができる。 一方、甲2発明では、ジャケット18に腕を挿入した使用者の肩関節、上腕、肘、前腕は一直線状に延びる。ジャケットを前後方向に向くようにすると、両肩関節の位置が固定され、体格差に起因する両肩関節間の距離のばらつきにも対応し得ない。 「空気圧マッサージ装置の軸」という抽象的な「軸」の概念を甲3、5、16から抽出すること自体が後付けの理由である。 以上より、甲3~5、16に基く周知技術は存在しなく、仮に存在したとしても、技術分野が異なるため動機付けがない。 仮に、甲2発明に周知技術を適用したとしても、構成要件B、C、D、G、H、Iを具備していない。 したがって、甲2発明と周知技術に基いて本件発明1に容易に想到することはできず、本件発明1は甲2発明と周知技術に対して進歩性を有している。 (答弁書35頁1行~39頁10行) (3)本件発明2の新規性欠如、進歩性欠如に関して 本件発明2は本件発明1に従属しており、本件発明1は、甲2発明に対して新規性を、甲2発明と周知技術に対して進歩性を有しているので、本件発明2も新規性及び進歩性を有している。 (答弁書39頁11行~24行) (4)本件発明3の新規性欠如、進歩性欠如に関して 甲2発明は、手で握る手動式エアシリンダ19a、bと外側のジャケット18b、dとが離間しており、構成要件Lを具備していない。 また、甲3~5の夫々に構成要件Lが開示されていることは認めるが、甲4は、椅子型のマッサージ機の技術分野ではなく、甲3、5の2件だけでは構成要件Lが周知技術であるとは認められない。 本件発明3は本件発明1に従属しており、本件発明1は、甲2発明に対して新規性を、甲2発明と周知技術に対して進歩性を有しているので、本件発明3も新規性及び進歩性を有している。 (答弁書40頁1行~42頁2行) (5)本件発明4の進歩性欠如に関して 甲6、9は脚部のマッサージであって、腕部のマッサージについて開示がなく、周知・慣用技術を主張する公知文献となり得ない。甲7、8の2件だけでは構成要件Nが周知技術であるとは認められない。 本件発明4は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲2発明と周知技術に対して進歩性を有しているので、本件発明4も進歩性を有している。 (答弁書42頁3行~44頁22行) (6)本件発明5の進歩性欠如に関して 甲10の「突出部35、36」は脇部を挟み込む位置にあり、上腕及び肩の側部を覆う部分に適用可能である旨の記載も示唆もない。したがって、甲10発明の「突出部35、36」は本件発明5の「カバー部」ではなく、それを前提とした「空気袋」も甲10発明には開示されていない。 本件発明5は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲2発明と周知技術に対して進歩性を有しているので、本件発明5も進歩性を有している。 (答弁書45頁1行~46頁12行) (7)本件発明6の進歩性欠如に関して 甲12は上肢と下肢とを交互にマッサージするものであり、左右の同一箇所を独立して駆動させることは開示していない。 甲13は左右の足首、左右のふくらはぎを順に押圧するものであり、左右の同一箇所を独立して駆動させることは開示していない。 甲14は椅子型のマッサージ機ではない。 甲15は下腿部のマッサージであって、腕部のマッサージは開示も示唆もない。 本件発明6は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲2発明と周知技術に対して進歩性を有しているので、本件発明6も進歩性を有している。 (答弁書46頁13行~49頁7行) (8)無効理由1のまとめ 以上のように、本件発明1は甲2に対して新規性を有しており、本件発明1は甲2と周知技術に対して進歩性を有している。本件発明2~6は本件発明1に従属しているので、本件発明2~6も新規性及び進歩性を有している。 (答弁書49頁8行~14行) 2 無効理由2(甲3発明に基く進歩性欠如)に対する反論 (1)本件発明1の進歩性欠如に関して ア 一致点、相違点に関する請求人の主張について 甲3の「固定板11」は板状であり、本件発明1の「被施療者の腕部を部分的に覆って保持する」保持部に相当しない。よって、甲3は構成要件Dを有しておらず、それに伴い構成要件E~Hを有していない。 相違点6については認める。ただし、保持部の形態の違いだけではなく、空気袋の配置も相違する。 (答弁書53頁22行~54頁8行) イ 甲2記載事項に関する請求人の主張について 被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部、及び構成要件E、F、Hの前段が記載されていることは認める。ただし、甲2と甲3の技術分野が共通することを認めるものではない。甲2には、構成要件Gは記載されていない。 (答弁書54頁9行~14行) ウ 甲18~21に関する請求人の主張について 請求人は、甲18~21を示して「着座ないしは仰臥した使用者が腕を保持部に挿入する動作を行う場合には、腕を横方向に移動させる方が使用者にとって便宜であり、腕を保持する開口同士が互いに対向するように配置されていることが周知である」と主張するが主張の意図が理解できない。 甲18~21は椅子型のマッサージ機ではなく、技術分野が異なる。 甲18、19には、請求人が主張する「腕の保持部の開口」も「腕を保持部に挿入して保持する」という構成も記載されていない。 甲20は、たまたま図1Cにおいてパッド31の開口が内側を向くように椅子20の上に載置されている状態が描かれているにすぎない(甲22判決参照)。 甲21は、手の保護クッション88に凭れかけた病人は、その胴体が邪魔になって胴体に近接する方向に向けて腕を縦長溝881から引き出すことはできない。また、縦長溝881へ腕を出し入れするに際して開口の向く方向も、保護クッション88の弾力により融通が利くものであるから、腕の縦長溝881への出し入れをバックプレート32の面に沿った方向で行う必要もない。 以上のように、甲18~甲21は、椅子型マッサージ機に関して「腕を保持する開口同士が互いに対向するように配置されている」ことを示す周知技術の根拠とはなり得ない。 (答弁書54頁15行~58頁8行) エ 甲3発明に甲2記載事項を適用することについて 甲3発明と甲2発明とは、技術分野、課題、効果いずれも一致しておらず、関連もしていない。 請求人は、甲2に接した当業者は、甲2に記載された横方向の開口のメリットとして「腕部を横方向に移動させることで,保持部内に腕部を挿入し,引き出すことが可能であり,保持部内に腕部を位置させた状態で内側に曲げることができ,肘掛け部の上面に一対の保持壁を備える引用発明とは異なり,保持壁に拘束されずに,腕部(肘など)を載せることができる,といった作用効果を奏する」ことを理解できると主張している。しかし、甲3発明では、固定板11の上の収縮した膨張袋12の上には、載置した腕を拘束する構造がないので、請求人の主張するような課題自体が存在しない。 したがって、当業者が甲3と甲2とに接したとしても、甲3発明に対して甲2発明を適用する動機付けがなく、当業者は、甲3発明と甲2発明とに基いて、本件発明1を容易に想到することはできない。 仮に、甲3発明に甲2発明を適用したとしても、両者のいずれにも構成要件D、Gが開示されていない。 (答弁書58頁9行~63頁11行) オ 小括 したがって、当業者が甲3と甲2に接したとしても、甲3発明と甲2発明とに基いて本件発明1を容易に想到することはできず、本件発明1は甲3発明と甲2発明に対して進歩性を有している。 (答弁書63頁12行~16行) (2)本件発明2の進歩性欠如に関して 本件発明2は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲3発明と甲2発明に対して進歩性を有しているので、本件発明2も進歩性を有している。 (答弁書63頁17行~64頁5行) (3)本件発明3の進歩性欠如に関して 上記第7 1(4)で述べたとおり、甲2発明は、構成要件Lを具備していない。 また、甲4発明は、椅子型のマッサージ機ではなく、椅子型のマッサージ機の技術分野において構成要件Lが開示されているのは甲5のみであり、構成要件Lは周知・慣用の事項とは認められない。 本件発明3は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲3発明と甲2発明に対して進歩性を有しているので、本件発明3も進歩性を有している。 (答弁書64頁6行~65頁5行) (4)本件発明4の進歩性欠如に関して 上記第7 1(5)で述べたとおり、甲6、9は周知・慣用技術を主張する公知文献となり得ない。甲7、8の2件だけでは構成要件Nが周知技術であるとは認められない。 本件発明4は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲3発明と甲2発明に対して進歩性を有しているので、本件発明4も進歩性を有している。 (答弁書65頁6行~66頁5行) (5)本件発明5の進歩性欠如に関して 上記第7 1(6)で述べたとおり、甲10発明には、本件発明5の構成要件Q、Rが開示されていない。 本件発明5は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲3発明と甲2発明に対して進歩性を有しているので、本件発明5も進歩性を有している。 (答弁書66頁6行~67頁2行) (6)本件発明6の進歩性欠如に関して 上記第7 1(7)で述べたとおり、甲12、甲13には左右の同一箇所を独立して駆動させることについては開示がなく、甲14には椅子型マッサージ機とは異なる技術が開示されているに過ぎない。甲15は、下腿部のマッサージに関する発明である。 本件発明6は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲3発明と甲2発明に対して進歩性を有しているので、本件発明6も進歩性を有している。 (答弁書67頁3行~23行) (7)無効理由2のまとめ 以上のように、本件発明1は甲3発明と甲2発明に対して進歩性を有している。本件発明2~6は本件発明1に従属しているので、本件発明2~6も進歩性を有している。 (答弁書68頁1行~5行) 3 無効理由3(甲5発明に基く進歩性欠如)に対する反論 (1)本件発明1の進歩性欠如に関して ア 一致点、相違点に関する請求人の主張について 本件発明1の「保持部」は、「被施療者の腕部を部分的に覆って保持する」ものであり、「その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されている」ものであるから、甲5発明の「収納体12」は本件発明1の「保持部」に相当しない。よって、甲5発明は構成要件Dを有しておらず、それに伴い構成要件E~Hを有していない。 相違点12については認める。 (答弁書72頁14行~73頁4行) イ 甲2記載に関する請求人の主張について 甲2に構成要件Fが記載されていることは認める。ただし、甲2と甲5の技術分野が共通することを認めるものではない。 (答弁書73頁5行~8行) ウ 甲18~21に関する請求人の主張について 上記第7 2(1)ウで述べたとおり、甲18~甲21は、椅子型マッサージ機に関して「腕を保持する開口同士が互いに対向するように配置されている」ことを示す周知技術の根拠とはなり得ない。 (答弁書73頁9行~13行) エ 甲5発明に甲2記載事項を適用することについて 甲5発明と甲2発明とは、技術分野、課題、効果いずれも一致しておらず、関連もしていない。 甲5発明の手部マッサージにおける技術思想は、手部の周囲全体を収容体で覆ってマッサージをすることである。甲5は請求項1で「袋状形成された収納体」と特定している。袋状形成された収納体に対して、本件発明1の構成要件Fを適用すると、「袋状形成された収納体」の概念から外れることとなる。したがって、甲5発明に甲2発明を適用する動機付けがない。 仮に、甲5発明に甲2発明を適用したとしても、両者のいずれにも構成要件D、Gが開示されていない。 (答弁書73頁14行~78頁14行) オ 小括 したがって、当業者が甲5と甲2に接したとしても、甲5発明と甲2発明とに基いて本件発明1を容易に想到することはできず、本件発明1は甲5発明と甲2発明に対して進歩性を有している。 (答弁書78頁15行~19行) カ 保持部の配設について 甲5の図1には、片方の肘掛け部5のみが描かれており、収納体12が「肘掛け部5の上面適所」に配設されていることは記載されているが、甲5には、「座部の両側に夫々配設され」ていることは何ら記載されていない。 甲5の【0015】の記載より収納体12は任意に着脱できるので、1つでも左右の肘掛けに付け替えて両方の手部の施療を行うことができる。 さらに、甲5の【0026】、【0027】及び図4に示す実施形態では、係止部材14を止着して収納体12を構成しており、他方の手で係止部材を留めることにより、一方の手を収納した場合、他方の手は収納できない。 以上より、甲5には、収納部12を座部の両側、すなわち左右の肘掛け部5に夫々配設することは記載されていない。 (陳述要領書12頁24行~15頁4行参照。) (2)本件発明2の進歩性欠如に関して 本件発明2は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲5発明と甲2発明に対して進歩性を有しているので、本件発明2も進歩性を有している。 (答弁書78頁20行~79頁8行) (3)本件発明3の進歩性欠如に関して 本件発明3は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲5発明と甲2発明に対して進歩性を有しているので、本件発明3も進歩性を有している。 (答弁書79頁9行~80頁2行) (4)本件発明4の進歩性欠如に関して 上記第7 1(5)で述べたとおり、甲6、9は周知・慣用技術を主張する公知文献となり得ない。甲7、8の2件だけでは構成要件Nが周知技術であるとは認められない。 本件発明4は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲5発明と甲2発明に対して進歩性を有しているので、本件発明4も進歩性を有している。 (答弁書80頁3行~81頁2行) (5)本件発明5の進歩性欠如に関して 上記第7 1(6)で述べたとおり、甲10発明には、本件発明5の構成要件Q、Rが開示されていない。 本件発明5は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲5発明と甲2発明に対して進歩性を有しているので、本件発明5も進歩性を有している。 (答弁書81頁3行~23行) (6)本件発明6の進歩性欠如に関して 上記第7 1(7)で述べたとおり、甲12、甲13には左右の同一箇所を独立して駆動させることについては開示がなく、甲14には椅子型マッサージ機とは異なる技術が開示されているに過ぎない。甲15は、下腿部のマッサージに関する発明である。 本件発明6は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲5発明と甲2発明に対して進歩性を有しているので、本件発明6も進歩性を有している。 (答弁書82頁1行~22行) (7)無効理由3のまとめ 以上のように、本件発明1は甲5発明と甲2発明に対して進歩性を有している。本件発明2~6は本件発明1に従属しているので、本件発明2~6も進歩性を有している。 (答弁書83頁1行~5行) 4 無効理由4(甲16発明に基く進歩性欠如)に対する反論 (1)本件発明1の進歩性欠如に関して ア 一致点、相違点に関する請求人の主張について 請求人が主張する一致点、相違点17、18、及び、相違点17が実質的な相違点ではないことについては認める。 (答弁書86頁12行~15行) イ 甲2記載に関する請求人の主張について 甲2に、請求人が主張する記載事項が記載されていることは認める。ただし、甲2と甲16の技術分野が共通することを認めるものではない。 (答弁書86頁16行~19行) ウ 甲16発明に甲2記載事項を適用することについて 甲16発明と甲2記載事項とは、技術分野、課題、効果いずれも一致しておらず、関連もしていない。 甲16に開示された腕保持部24のような構造は、着座時に腕の移動方向と身体の移動方向がいずれも下向きで同じになる。したがって、甲16発明は、極めて合理的な構成である。 本件特許(分割)の原出願(乙3)の公開後の出願(乙4、5)には、甲16と同様の技術が開示された乙6が従来技術として挙げられ、マッサージしないときに前腕両側に立ち上がっている壁によって前腕が拘束され不快感を与える課題が記載されている。このような課題は、本件特許の原出願日より前に甲2記載事項に接した当業者であっても認識し得ない。また、甲16発明に対する解決手段も甲2記載事項から認識し得ない。 甲2記載事項において、ジャケット18に腕が嵌め込まれた状態で、前腕に対応するジャケット18b、dから前腕のみを肘を曲げることによって前方に突き出しても不自然な姿勢を強いられることになる。背中が腰・背部摩擦器20やスリーブ柱に接している状態で上腕に対応するジャケット18a、cから上腕を抜いても、ジャケット18a、cが肩、上腕に干渉するため上腕を下ろすことができない。 また、ジャケット18から腕を完全に前方に引き出した姿勢では、肩の位置も前方にずらすことになるから、スリーブ柱に背中が全く接触しない、ただシート(又は底板)に腰をかけている姿勢になる。 したがって、甲16の保持部の開口を横向きに変更するような示唆が甲2に記載されているとはいえず、甲16発明に甲2記載事項を適用する動機づけは起こらない。 (答弁書86頁20行~93頁7行) エ 小括 したがって、当業者が甲16と甲2に接したとしても、甲16発明と甲2記載事項とに基いて本件発明1に容易に想到することはできず、本件発明1は甲16発明と甲2発明に対して進歩性を有している。 (答弁書93頁8行~12行) (2)本件発明2の進歩性欠如に関して 本件発明2は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲16発明と甲2記載事項に対して進歩性を有しているので、本件発明2も進歩性を有している。 (答弁書93頁13行~94頁2行) (3)本件発明3の進歩性欠如に関して 上記第7 1(4)で述べたとおり、甲4は、椅子型のマッサージ機の技術分野ではなく、甲3、5の2件だけでは構成要件Lが周知技術であるとは認められない。 本件発明3は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲16発明と甲2記載事項に対して進歩性を有しているので、本件発明3も進歩性を有している。 (答弁書94頁3行~95頁9行) (4)本件発明4の進歩性欠如に関して 上記第7 1(5)で述べたとおり、甲6、9は周知・慣用技術を主張する公知文献となり得ない。甲7、8の2件だけでは構成要件Nが周知技術であるとは認められない。 本件発明4は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲16発明と甲2記載事項に対して進歩性を有しているので、本件発明4も進歩性を有している。 (答弁書95頁10行~96頁9行) (5)本件発明5の進歩性欠如に関して 上記第7 1(6)で述べたとおり、甲10発明には、本件発明5の構成要件Q、Rが開示されていない。 本件発明5は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲16発明と甲2記載事項に対して進歩性を有しているので、本件発明5も進歩性を有している。 (答弁書96頁10行~97頁8行) (6)本件発明6の進歩性欠如に関して 上記第7 1(7)で述べたとおり、甲12、甲13には左右の同一箇所を独立して駆動させることについては開示がなく、甲14には椅子型マッサージ機とは異なる技術が開示されているに過ぎない。甲15は、下腿部のマッサージに関する発明である。 本件発明6は本件発明1に従属しており、本件発明1は甲16発明と甲2記載事項に対して進歩性を有しているので、本件発明6も進歩性を有している。 (答弁書97頁9行~98頁7行) (7)無効理由4のまとめ 以上のように、本件発明1は甲16発明と甲2記載事項に対して進歩性を有している。本件発明2~6は本件発明1に従属しているので、本件発明2~6も進歩性を有している。 (答弁書98頁7行~11行) 第8 当合議体の判断 1 甲各号証に記載された発明等 (1)甲2 ア 甲2の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2には、図面とともに、次の記載がある。(日本語訳は、甲2訳文を基に合議体が付した。) 「 [図:0001388689000007.jpg] 」(3頁10行~15行) (しかしながら、高齢者、肢体不自由者、障碍者、弱者に対しては、前記の「マン・マシン対決型」の健康機器は、強度及び使用方法などの方面でのニーズに適応できないことが多い。このような老弱、不自由、障碍者等には、優しくて操作が簡単で、気軽に使用でき、かつ、多少不自由な関節、多少に痙攣や凝りがあった筋肉、靱帯、また多少に捻れ、腫脹、充血や増殖があった筋脈、骨格、椎間板等の組織に対して緩和、引張り、調整、展張、疎通ないしは治療する健康機器が期待される。) 「 [図:0001388689000008.jpg] [図:0001388689000009.jpg] [図:0001388689000010.jpg] [図:0001388689000011.jpg] [図:0001388689000012.jpg] 」(3頁21行~5頁14行) (本実用考案は、マッサージと牽引の二つの機能を健康機器に導入して、老弱、不自由、障碍者等に好適に使用できる新規健康機器を提供することを目的としている。この機器は、使用者が自ら空気を充填し、マッサージ器具及び牽引器具を空気圧で駆動し、ガスによる圧力調整が十分に緩やかで、簡単かつ気軽に操作できる特徴を利用して、使用者が必要なマッサージ、牽引の力を「楽に」得ることができるとともに、マッサージ及び牽引の動作強度を十分に優しくすることができる。また、本考案は、このマッサージ器具及び牽引器具に新規な設計を与え、使用者がこの健康器具を使用する際に、消極的な肢体に多くの良性反応を生じさせることができるようにする。 本実用考案は、次のように設計される。ほぼ十字状(十字状の両アームを広げたり閉じたりすることができるようにした方が好ましい)の健康機器主体には、四つのエアシリンダ(空気入れ)を配置する。そのうち二つが手動式で、他の二つが足踏み式である。2つの手動式エアシリンダは、手で押すことで空気を充填するように、卵形(血圧計に用いられるバルーンのような)形状にされる。足踏み式エアシリンダは、足で踏んで空気を充填するように、ステップが設置されている。左右の手動式エアシリンダからの空気は、それぞれ両アームに対応する腕、肩、脇エアバッグに注入される。エアバッグの外面及び卵形の手動式エアシリンダの外面は、ともに多数の小突起が形成された粗面にされている。小突起内には、磁石粒が内蔵している。腕と腕エアバッグとは、断面がほぼC字状の管状ジャケット内に並列して置かれる。エアバッグは、空気を充填されてから膨張して腕を押圧する。空気充填中において、腕が回動、伸縮することができる。このように、腕が小突起によって掻かれ、揉まれ、刺激される。 足踏み式エアシリンダは、左右にそれぞれ1つ設置され、その空気排出管は、上、下シリンダにそれぞれ接続される。上、下シリンダは、リレーの原則で配置され、即ち、上シリンダのシリンダと下シリンダのピストンロッドとが一体に接続される。これによって、上シリンダは、下シリンダのピストンロッドと同期に上下動することができるとともに、個別に自体のピストンロッドを伸縮することができる。下シリンダのピストンの押し上げ力は、一連の伝達動作を介して脇部位に作用し、即ち、使用者を持ち上げ(腋高を持ってぶら下げ)、使用者の身体を自然に垂れて、脊椎が引っ張られる。上シリンダのピストンの押し上げ力は、首ジャケットを介して顎、後頭部に作用する。胴体は、頭部に対して動かないため、顎と後頭部に作用される力によって頸椎を引っ張りすることができる。 使用者の腰、背部に対応する部位には、腰、背摩擦エアバッグが配置される。その外面も、多数の小突起が形成された粗面にされている。小突起内にも、磁石粒が内蔵されている。使用者がそれに寄りかかって身体を少し動ければ、腰、背部は、小突起にマッサージされ、掻かれ、揉まれ、刺激される。 支柱には、上げる又は倒すことが可能なシートが取付けられ、健康機器を着座して使用する場合、シートを上げればよい。 健康機器を立って又は座って使用できるように、底板は、伸縮可能にされている。シート、底板及び足踏み式エアシリンダのステップの表面も、小突起が形成された粗面に形成される(同様に小突起内に磁石粒が内蔵される)。これによって、使用者が立っても座っても、身体が健康機器表面の小突起に掻かれ、揉まれ、刺激される。 次に、本実用考案の好ましい実施例をもって本実用考案の構造特徴、実施要点、使用方法及びその積極的な効果を説明する。 図1は、本実用考案の正面図であり、図2は、その側面図である。 図面に示すように、健康機器は、全体として、十字状の中軸を対称軸として左右対称に配置され、左右構造が同じである。) 「 [図:0001388689000013.jpg] [図:0001388689000014.jpg] 」(6頁7行~7頁5行) (空気充填肩甲摩擦器(17a,b)と、空気充填腋下摩擦器(38,57)と、空気充填腕摩擦器(37a,b,c,d)は、連通されているため、手動式エアシリンダ(19a,b)からの空気が、空気充填管(36a,b)を介して充填されると、臀、肩、腋下摩擦器を同時に膨張させることができる。 空気充填腕摩擦器(37a,b,c,d)は、空気充填腕摩擦器のジャケット(18a,b,c,d)の中に配置される。このジャケットは、断面がC字状となっている。腕をこのジャケットに入れた後、両手で卵形の手動式エアシリンダ(19a,b)を握ると、空気が充填されることにつれて、空気充填腕摩擦器(37a,b,c,d)、空気充填肩甲摩擦器(17a,b)、空気充填腋下摩擦器(38,57)は、徐々に腕、肩甲骨、腋下等の箇所に加圧する。この過程において、使用者が身体を適当に動ければ、前記摩擦器の表面の小突起に摩擦され、掻かれ、揉まれ、刺激される。 空気充填腕摩擦器のジャケット(18a,b,c,d)は、支持用クロス杆(1a,b)(2a,b)に接続され、そのフック(35a,b,c,d)は、異なる腕の長さに対応してクロス杆に摺動可能に設置される。クロス杆(1a,b)(2a,b)の寸法がφ15×495mmで、計四本が設置され、ねじによって上部スリーブ柱(40)に固定される。 下シリンダロッド(59)は、右足でエアシリンダのステップ(27a)を踏んで足踏み式エアシリンダ(28a)に空気充填されることによって駆動される。 空気充填腋下摩擦器(38,57)は、上部スリーブ柱(40)にねじ(39)(58)によって固定される。これによって、上部スリーブ柱(40)は、下シリンダピストンロッド(59)によって昇降するときに、腋下摩擦器(38,57)を動かせる。腋下摩擦器は、使用者の腋窩を持って使用者を上げ又は下げる。人が持ち上げられると、頸椎以下の骨賂が自重によって自然に引っ張られる。それによって、脊椎の間隙を大きくして、神経根が圧迫されることが緩和され、神経根とその周辺の組織との間の接着が緩み、血液が流通され、脊柱の水腫や充血が解消される。) 「 [図:0001388689000015.jpg] 」(8頁7行~12行) (要するに、本実用考案は、マッサージと牽引の機能を有する健康機器であって、手・足で空気を充填し、空気駆動によって使用者が楽に所要のマッサージと牽引の力を得ることができる。また、その強度が十分に優しい。健康機器に設置された磁気性を有するゴム突起摩擦器で使用者の腕、肩甲骨、脇下、腰、背、臀、股、手の平、足裏を揉み、マッサージし、掻き、刺激することができることで、筋脈が疎通し、血行が流暢になり、病気を予防し、身体を鍛錬することができる。特に老弱、不自由、障碍者等に好適に使用される。) 「 [図:0001388689000016.jpg] 」(9頁図1) 「 [図:0001388689000017.jpg] 」(10頁図2) 図1、2には、ジャケットが、十字状のアームに取り付けられてシートの両側に夫々配設されている点、ジャケットにおいて、腕を挿入する開口が前方に設けられている点、がそれぞれ開示されている。 上記記載事項及び図2によれば、ジャケットは、断面がC字状となっており、腕を中に入れる構成となっているから、使用者の腕部を部分的に覆って保持するものと認められる。 また、上記「左右の手動式エアシリンダからの空気は、それぞれ両アームに対応する腕、肩、脇エアバッグに注入される。・・・腕と腕エアバッグとは、断面がほぼC字状の管状ジャケット内に並列して置かれる。エアバッグは、空気を充填されてから膨張して腕を押圧する。」という記載及び「空気充填腕摩擦器(37a,b,c,d)は、空気充填腕摩擦器のジャケット(18a,b,c,d)の中に配置される。このジャケットは、断面がC字状となっている。腕をこのジャケットに入れた後、両手で卵形の手動式エアシリンダ(19a,b)を握ると、空気が充填されることにつれて、空気充填腕摩擦器(37a,b,c,d)、空気充填肩甲摩擦器(17a,b)、空気充填腋下摩擦器(38,57)は、徐々に腕、肩甲骨、腋下等の箇所に加圧する。」という記載によれば、空気充填腕摩擦器と腕エアバッグとは、同じものであると認められるから、空気充填腕摩擦器は、ジャケット内に腕と並列して配置される膨張可能なものであると認められる。 イ 甲2発明 上記アの記載事項、図示事項及び認定事項を踏まえると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 「着座できるシートと、使用者が寄りかかれる腰、背部に対応する部位とを備える、座って使用できるエアー式マッサージ、牽引両用の健康機器において、 十字状のアームに取り付けられてシートの両側に夫々配設され、使用者の腕部を部分的に覆って保持するジャケットと、 前記ジャケット内に腕と並列して配置される膨張可能な空気充填腕摩擦器と、を有し、 前記ジャケットは、断面がC字状となっており、腕を挿入する開口が前方に設けられ、かつ前記十字状のアームを広げたり閉じたりできるエアー式マッサージ、牽引両用の健康機器。」 ウ 甲2に記載の技術的事項 上記アの記載事項、図示事項及び認定事項を踏まえると、甲2には、次の技術的事項(以下、「甲2技術事項」という。)が記載されているといえる。 「エアー式マッサージ、牽引両用の健康機器において、十字状のアームに取り付けられてシートの両側に夫々配設され、使用者の腕部を部分的に覆って保持するジャケットを有し、前記ジャケットは、断面がC字状となっており、腕を挿入する開口が前方に設けられ、かつ前記十字状のアームを広げたり閉じたりできるエアー式マッサージ、牽引両用の健康機器。」 (2)甲3 ア 甲3の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、合議体が付した。以下同様。) 「【0015】 【発明の実施の態様】以下、本発明の手用空気圧マッサージ機を、図面に示す一実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の手用空気圧マッサージ機1の一実施例を示す説明図であり、該手用空気圧マッサージ機1は、椅子本体2の肘掛部21の上面適所に固定板11の上部左右に一定間隔を存して対設される膨縮袋12・12と、各膨縮袋12・12に各々ホース13・13を介して連通される圧縮空気給排装置14とで構成し、図2に示すように、人体手部3を載脱自在で該手部3に膨縮マッサージを付与し得る圧縮空気吸排気手段を配設して構成している。」 「【0017】また、椅子本体2の両肘掛部21の上面適所に配設される膨縮袋12は、図3及び図4に示したように、固定板11の上部左右に一定間隔を存して重合状に膨縮袋12・12・12・12をそれぞれ対設させることで、これらを圧縮空気吸排気装置で順次膨縮するよう吸排気させ、使用者の人体手部3及び下腕部を両側から順次挟持して、圧迫感のあるマッサージを実施することができる。 【0018】よって、使用者は、椅子本体2の座部に着座して、人体手部3をこれら一対の膨縮袋12・12間に載設し、圧縮空気給排装置14に接続される外部電源(図示せず)を入力するだけで該電源からの電力供給により、人体手部3及び下腕部を各膨縮袋12・12が両側から挟持し、適度な加圧マッサージすることができるのである。」 「【0025】 【発明の効果】よって本発明の手用空気圧マッサージ機は、椅子本体の肘掛部の上面適所に人体手部を載脱自在で該手部に膨縮マッサージを付与し得る圧縮空気吸排気手段を配設して構成しているため、使用者は着座状態で人体手部を肘掛部に載設して電源を入力するだけで、従来のマッサージ機では行い得ない人体手部及び下腕部のマッサージを適度且つ快適に行うことができる。 【0026】また、本発明の手用空気圧マッサージ機は、前記圧縮空気吸排気手段を、固定板の上部左右に膨縮袋を一定間隔を存して対設してこれを圧縮空気吸排気装置で互いに膨縮するよう吸排気させる構成にしているため、使用者の手部及び下腕部を両側から挟持してマッサージすることができ、指圧効果を付与させることができる。」 「【図1】 [図:0001388689000018.jpg] 」 図1には、手用空気圧マッサージ機が座部と背凭れ部とを備える点が開示されている。 イ 甲3発明 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。 「座部と背凭れ部とを備える手用空気圧マッサージ機において、 両肘掛部の上面に夫々配設され、人体手部が載脱される一対の圧縮吸排気手段を有し、 該圧縮吸排気手段は、固定板と前記固定板の上部左右に一定間隔を存して対設され、圧縮空気吸排装置で膨縮する膨縮袋と、を有する手用空気圧マッサージ機。」 ウ 甲3に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲3には、次の技術的事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されているといえる。 「手用空気マッサージ機において、椅子本体の両肘掛部の上面に配設された固定板の上部左右に膨張袋を一定間隔を存して対設して、使用者の手部及び下腕部を両側から挟持してマッサージするマッサージ機。」 (3)甲4 ア 甲4の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4には、図面とともに、次の記載がある。 「【0013】(略)図3及び図4に示すように、人体手部Aを載脱自在で各膨縮袋12・13・14・15で該手部Aを両側から同時或いは、交互または順次に圧迫感のある膨縮マッサージを行い得るように構成している。」 「【図4】 [図:0001388689000019.jpg] 」 図4には、掌、手首、前腕を含む手部を膨縮袋12・13によって挟持する点が開示されている。 イ 甲4に記載の技術的事項 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲4には、次の技術的事項(以下、「甲4技術事項」という。)が記載されているといえる。 「膨縮袋により掌、手首、前腕を含む手部をマッサージするマッサージ構造。」 (4)甲5 ア 甲5の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5には、図面とともに、次の記載がある。 「【0008】本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、手部及び下腕部を容易に収納して、手部や下腕部に対する効果的な空気圧マッサージを行える手用空気圧マッサージ機を提供することを目的としてなされたものである。 【0009】 【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の手用空気圧マッサージ機は、椅子本体の肘掛部の上面適所に人体の手部を出入自在に収納し得るよう袋状形成された収納体を設け、該収納体にホースを介して圧縮空気給排装置に連通する膨縮機構を設けて構成することを特徴とするものである。」 「【0011】更に本発明の手用空気圧マッサージ機は、前記収納体を、人体の指先から肘までの手部を被覆収納し得るよう帯状形成すると共に、該帯状部材端に係止部材を止着して構成することを特徴とする請求項1乃至請求項2記載の手用空気圧マッサージ機。」 「【0018】 【発明の実施の態様】以下、本発明の手用空気圧マッサージ機を、図面に示す一実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の手用空気圧マッサージ機1の一実施例を示す説明図であり、該手用空気圧マッサージ機1は、圧縮空気給排装置3にホース13を介して連通する膨縮機構11を収納体12の周腹部に設けて構成している。 【0019】前記膨縮機構11は、ホース13を介して圧縮空気給排装置3に連通されて、該圧縮空気給排装置3から吸排される圧縮空気によって、前記収納体12を膨脹及び収縮させるようにしたものであり、例えば、図1に示したように、収納体12の周復部に袋体111を内装し、該袋体111にホース13の至部を連通状に接続すると共に、該ホース13の基部を圧縮空気吸排気装置3に連通状に接続することで、圧縮空気吸排気装置3から吸排気される圧縮空気をホース13を介して袋体111に連繋させ、該袋体111を内装した収納体12内部に膨縮を行わせるようにしているのである。」 「【0024】前記収納体12は、手先から肘までの手部を出入自在に収納し得るよう袋状形成されており、該収納体12は、図1及び図2に示したように、合成繊維等で袋状に形成された外面部の非弾性カバー部材121と、合成ゴム等の弾性材で前記非弾性カバー部材121と略同形の袋状に形成した内面部の弾性カバー部材122とからなり、これら両カバー部材121・122間に前記膨縮機構11を介設し、膨縮機構11を挟持させるよう構成している。」 「【0026】前記収納体12は、椅子本体の肘掛け部5の上面適所に配設されるのであるが、この配設は、椅子本体に固定してもよいが、例えば、図1及び図4に示したように、ベルベット式ファスナー等の係止部材14を張設することで任意の位置で着脱自在に構成することができ、収納体12の位置を使用者に合わせて調節できるようにすることができる。」 「【図1】 [図:0001388689000020.jpg] 」 図1には、椅子本体が座部と背凭れ部とを備える点が開示されている。 イ 甲5発明 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲5には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。 「座部と背凭れ部とを備える椅子本体及び手用空気圧マッサージ機において、 前記椅子本体の肘掛部の上面に配設され、手先から肘までの手部を出し入れ自在に収納し得るように袋状に形成された収納体と、 前記収納体の周腹部に内装され、圧縮空気給排装置に連通させた袋体と、を有する椅子本体及び手用空気圧マッサージ機。」 ウ 甲5に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲5には、次の技術的事項(以下、「甲5技術事項」という。)が記載されているといえる。 「手用空気圧マッサージ機において、椅子本体の肘掛部の上面適所に収納体を配設し、当該収納体を人体の指先から肘までの手部を被覆収納し得るよう袋状形成したマッサージ機。」 (5)甲6 ア 甲6の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲6には、図面とともに、次の記載がある。 「【0007】 【課題を解決するための手段】本発明では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。即ち、本発明に係る椅子型マッサージ機は、座面部の前部に起伏自在にフットレストを備えたものであって、フットレストは、脚載せ部を有する本体部と、この本体部にマッサージ動作可能として設けられたマッサージ駆動部とを備えている。」 「【0018】このフットレスト1に設けられるマッサージ駆動部13として、本実施形態では、足首あたりを左右両側から指圧する第1指圧部26と、ふくらはぎあたりを左右両側から指圧する第2指圧部27とを有したものとしてある。第1指圧部26は、図3に示すように脚載せ部12における一方の内側面16と分離丘17の側面とに対して対向状に設けられた一対のエアセル29を有している。」 「【0020】各エアセル29は、その外周まわりにおいて、上向きとなる約半周領域に形成されている蛇腹の形成数が、下向きとなる約半周領域に形成されている蛇腹の形成数よりも多くなっており、中心軸まわりの回転対称形とはなっていない。すなわち、上向き配置の蛇腹のなかには、その凹側及び凸側の周方向稜線においてセル外周を1周しないものが含まれていることになる。 【0021】従って、上記のように各エアセル29に空気を供給して伸長動作させた場合、エアセル29はその伸長度合が進むにつれて次第に凹部内底面15側を指向するようなカーブ伸長を行うことになる。従って、脚11は、指圧と同時に凹部内底面15側へ押え込まれるような作用を受けることになる。そのため、指圧中、脚11は安定した状態とされ、脚載せ部12から脚11が追い出されるといったことも、当然に生じない。」 イ 甲6に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲6には、次の技術的事項(以下、「甲6技術事項」という。)が記載されているといえる。 「椅子型マッサージ機において、フットレスト1にマッサージ駆動部として、脚載せ部12における一方の内側面16と分離丘17の側面とに対して対向状に設けられた一対のエアセル29を有している椅子型マッサージ機。」 (6)甲7 ア 甲7の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7には、図面とともに、次の記載がある。 「【0013】(前略)なお、本発明のマッサージ機は、腕(特に、前腕)を対の揺動体の間において脚を左右両側からマッサージする腕用マッサージ機とすることもできる。この場合、以上及び以下の説明で「脚」として説明した点は「腕」又は「前腕」と、「足首」として説明した点は「手首」と、「ふくらはぎ」として説明した点は「前腕の肘近傍部分」と読み替えることができ、脚の場合と同様の作用を奏する。なお、前腕用の場合は、揺動体は、肘の下から手首の間を押圧できる幅に形成しておくのが好適である。」 「【0023】(前略)図5は、ふくらはぎL1を押圧する部分の脚収納体8断面図を示しており、左右の第1エアセル21が膨張すると、対の揺動体12が互いに近接するように揺動し、さらに揺動体12は、脚の形状に沿って湾曲して揺動体12が脚を包み込むように押圧が行われる。(後略)」 「【0024】(前略)図6は、足首L2を押圧する部分の脚収納体8断面図を示している。足首L2に対しては、第1エアセル21の他、第2エアセル22も膨張して、膨張度が大きくなり、揺動体12がより大きく揺動・湾曲させられている。このため、ふくらはぎL1より細い足首L2に対しても十分な押圧力が加わる。なお、このとき、揺動体12は、ふくらはぎ付近より足首付近の方が湾曲度が大きい。」 「 [図:0001388689000021.jpg] 」 図5及び図6には、第1エアセル21及び第2エアセル22が、収納体8の両側壁10の奥側の部分よりも開口側の部分の方において立ち上がる点が開示されている。 イ 甲7に記載の技術的事項 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲7には、次の技術的事項(以下、「甲7技術事項」という。)が記載されているといえる。 「肘の下から手首の間を押圧できる前腕用のマッサージ機において、収納体の両側壁に設けられた一対のエアセルが、当該収納体の両側壁の奥側の部分よりも開口側の部分の方において立ち上がる前腕用のマッサージ機。」 (7)甲8 ア 甲8の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲8には、図面とともに、次の記載がある。 「【0015】(前略)なお、本発明のマッサージ機は、腕(特に、前腕)を対の揺動体の間において脚を左右両側からマッサージする腕用マッサージ機とすることもできる。この場合、以上及び以下の説明で「脚」として説明した点は「腕」又は「前腕」と、「足首」として説明した点は「手首」と、「ふくらはぎ」として説明した点は「前腕の肘近傍部分」と読み替えることができ、脚の場合と同様の作用を奏する。なお、前腕用の場合は、揺動体は、肘の下から手首の間を押圧できる幅に形成しておくのが好適である。」 「【0025】(前略)図5は、ふくらはぎL1を押圧する部分の脚収納体8断面図を示しており、左右の第1エアセル21が膨張すると、対の揺動体12が互いに近接するように揺動し、さらに揺動体12は、脚の形状に沿って湾曲して揺動体12が脚を包み込むように押圧が行われる。(後略)」 「【0026】(前略)図6は、足首L2を押圧する部分の脚収納体8断面図を示している。足首L2に対しては、第1エアセル21の他、第2エアセル22も膨張して、膨張度が大きくなり、揺動体12がより大きく揺動・湾曲させられている。このため、ふくらはぎL1より細い足首L2に対しても十分な押圧力が加わる。なお、このとき、揺動体12は、ふくらはぎ付近より足首付近の方が湾曲度が大きい。」 「 [図:0001388689000022.jpg] 」 図5及び図6には、第1エアセル21及び第2エアセル22が、収納体8の両側壁10の奥側の部分よりも開口側の部分の方において立ち上がる点が開示されている。 イ 甲8に記載の技術的事項 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲8には、次の技術的事項(以下、「甲8技術事項」という。)が記載されているといえる。 「肘の下から手首の間を押圧できる腕用マッサージ機において、収納体の両側壁に設けられた一対のエアセルが、当該収納体の両側壁の奥側の部分よりも開口側の部分の方において立ち上がる腕用マッサージ機。」 (8)甲9 ア 甲9の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲9には、図面とともに、次の記載がある。 「【0049】この下腿部のマッサージに際しては、下腿マッサージ用の空気袋32の左右の凹部35に左右の下腿を入れ、左の空気袋33および中央空気袋34aと、右の空気袋33および中央空気袋34aに同時に、または交互に圧縮空気を給排気して左右のふくらはぎに圧迫、圧迫解放を加える。」 「【図7】 [図:0001388689000023.jpg] 」 図7には、左右の空気袋33が、凹部35の開口側の部分よりも奥側の部分の方が被施療者側に盛り上がっている点が開示されている。 イ 甲9に記載の技術的事項 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲9には、次の技術的事項(以下、「甲9技術事項」という。)が記載されているといえる。 「下腿部のマッサージ機において、下腿を挿入する凹部に設けられた左右の空気袋が、当該凹部の開口側の部分よりも奥側の部分の方が被施療者側に盛り上がっている下腿部のマッサージ機。」 (9)甲10 ア 甲10の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲10には、図面とともに、次の記載がある。 「【0013】図1および図2に示すマッサージ機10は、座部11と背部12とからなるマット本体20と、マット本体20に設けられたエアバック(マッサージ部材)40~48と、座部11の前端側に設けられたエア給排気装置(マッサージ部材駆動手段)70とを備えている。 【0014】マット本体20は、フレーム21と、このフレーム21に取り付けた例えばウレタンホームからなるマット体22と、このマット体22を覆ったクッション材23と、このクッション材23を覆った表皮24とから構成されている。」 「【0018】背部マット体31には、脇部を挟み込む位置に突出部35、36が形成され、この突出部35、36の内側側面35A、36Aにはエアバック44、44が取り付けられている。また、背部マット体31には、突出部35、36の間にエアバック45と、このエアバック45の右側には首を挟む一対のエアバック46、46と、頭部を固定するための一対のエアバック47とが取り付けられている。」 イ 甲10に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲10には、次の技術的事項(以下、「甲10技術事項」という。)が記載されているといえる。 「マッサージ機において、座部と背部とからなるマット本体からなり、背部マット体の脇部を挟み込む位置に一対の突出部が形成され、これら突出部の内側側面にエアバックがそれぞれ取り付けられたマッサージ機。」 (10)甲11 ア 甲11の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲11には、図面とともに、次の記載がある。 「【0026】図11は他の実施の形態を示し、背凭れ部4の両側部に、前方突出した左右一対の突起体91を設け、この突起体91間に使用者の人体Mをはめ込めるようにしている。また、前記実施の形態の場合と同様に、マッサージ器8が、マッサージ機の背凭れ部4の左右中央部に昇降自在に設けられ、前記空気式のマッサージ具41が、マッサージ器8の両側方に位置するように、左右一対の突起体91の内側面側に対向するように設けられている。この空気式のマッサージ具41は、前記実施の形態の場合と同様に人体の背中の両側部を広範囲にマッサージできるように、上下に長く配置されている。 【0027】その他の点は前記図1~図6の実施の形態の場合と同様の構成であり、前記実施の形態の場合と同様に、マッサージ器8を昇降させながら、施療子9による叩き動作や揉み動作によって人体の背中の中央部を比較的強くマッサージできる。また、マッサージ具41を左右方向内方に膨張させて、マッサージ具41によって、人体Mの背中の両側部(両脇乃至両腕)を左右に挟むように押圧しながらソフトにマッサージすることができ、この場合、左右一対のマッサージ具41によって人体が左右に動かないように固定することができ、これによって、マッサージ器8によるマッサージ効果を高めることもできる。」 イ 甲11に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲11には、次の技術的事項(以下、「甲11技術事項」という。)が記載されているといえる。 「マッサージ機において、背凭れ部の両側部に前方突出した左右一対の突起体が設けられ、これら突起体の内側面側に対向するように空気式のマッサージ具が設けられたマッサージ機。」 (11)甲12 ア 甲12の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲12には、図面とともに、次の記載がある。 「【0006】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明のもみマッサージ器は、四肢のうち少なくとも2つ以上の肢体に個別にもみマッサージを施す複数の施療手段と、この施療手段を駆動する駆動手段とを備えるものにおいて、前記施療手段で各肢体を順次施療するように構成したことを特徴とする。 【0007】このもみマッサージ器では、各肢体が施療手段により順次施療されるので、即ち例えば下肢を施療する場合、片脚ずつ施療が行われるので、前記従来のマッサージ機に比べて、刺激感の強弱差を無くすこと、血液の心臓への還流量の変動を少なくすること、マッサージ師による刺激と同等のマッサージ感を得ること、機構部への負荷を軽くすることを実現できる。 【0008】このマッサージ器は、四肢のうち少なくとも2つ以上の肢体を対象とするものであるが、通常は上肢及び下肢のうち、上肢と下肢は別々にマッサージするのが一般的であり、それに対応する構成として、左右の下肢又は上肢に個別にもみマッサージを施す二対の施療手段と、この施療手段を駆動する駆動手段とを備えるものにおいて、前記施療手段で左右の下肢又は上肢を交互に施療するように構成したもみマッサージ器であってもよい。 【0009】施療手段の具体例としては、膨張・収縮可能なエアバッグが示され、それに伴ってエアバッグにエアを送るポンプと、エアバッグへのエアの出入を制御するバルブと、エアバッグとポンプを連結する配管とで駆動手段を構成し、エアバッグの膨張・収縮によりもみマッサージを行うようにしても構わない。ここで、バルブとしては好適な手段に電磁弁がある。」 イ 甲12に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲12には、次の技術的事項(以下、「甲12技術事項」という。)が記載されているといえる。 「エアバッグにより左右の上肢を順次マッサージするもみマッサージ器において、左右の上肢に個別にもみマッサージを施す、もみマッサージ器。」 (12)甲13 ア 甲13の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲13には、図面とともに、次の記載がある。 「【0008】また、一つの施療部を構成する底面エアセルと側壁エアセルとがそれぞれ独立して動作可能であるのが好適であり、さらに、一の施療部が他の施療部と独立して動作可能であるのが好適である。この場合、マッサージしたい部位を個別に押圧でき、マッサージのバリエーションが多様になり、従来のマッサージ機では実現できない多様なマッサージ手法を行うことが可能となる。そして、一の施療部を構成するエアセルと他の施療部を構成するエアセルとが異なるタイミングで動作するのが好ましく、具体的には、次のような動作が挙げられる。」 「【0013】また、他の動作の例としては、一の施療部と他の施療部とが交互に動作することもできる。また、他の動作の例としては、AC1、AC4、AC3、AC2の順で膨張を開始することもできる。この場合、例えば、一の施療部側が足先側となるように、溝に脚を入れた場合、まず、足首の左右両側を押圧した後、ふくらはぎの裏側を押圧し、次にふくらはぎの左右両側を押圧し、最後に足首の裏側を押圧するというような複雑な動作が行える。」 イ 甲13に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲13には、次の技術的事項(以下、「甲13技術事項」という。)が記載されているといえる。 「エアセルにより脚をマッサージするマッサージ機において、複数のエアセルが独立して動作可能であるマッサージ機。」 (13)甲14 ア 甲14の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆 に利用可能となった甲14には、図面とともに、次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、腕に装着されるエアバックと、このエアバックに対して空気を給排気する給排気装置とを備えた流体マッサージ装置に関する。」 「【0018】エアバック13に圧縮空気が供給されることによりエアバック13が膨張して一方の腕を圧迫していく。この圧迫により一方の腕は曲がらず、自由がきかなくなってしまうが、エアバック14は電磁切換弁21により大気に開放されているので、エアバック14は膨張していかない。このため、他方の腕は自由に動かすことができ、例えば電話が鳴っても受話器をとることができ、とっさの対応ができる。」 「【0020】他方、エアバック14がコンプレッサ22に連通されて圧縮空気がエアバック14に供給され、エアバック14が膨張して他方の腕を圧迫していく。この圧迫により他方の腕は曲がらず、自由がきかなくなってしまうが、エアバック13は大気に開放されて収縮しているので、一方の腕は自由に動かすことができる。」 イ 甲14に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲14には、次の技術的事項(以下、「甲14技術事項」という。)が記載されているといえる。 「腕に装着されるエアバックにより腕をマッサージするマッサージ装置において、一方の腕及び他方の腕にそれぞれ対応する二つのエアバックが独立して膨張及び収縮するマッサージ装置。」 (14)甲15 ア 甲15の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲15には、図面とともに、次の記載がある。 「【0039】この下腿部のマッサージに際しては、下腿マッサージ用の空気袋32の左右の凹部35に左右の下腿を入れ、左の空気袋33および中央空気袋34aと、右の空気袋33および中央空気袋34aに同時に、または交互に圧縮空気を給排気して左右のふくらはぎに圧迫、圧迫解放を加える。」 イ 甲15に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲15には、次の技術的事項(以下、「甲15技術事項」という。)が記載されているといえる。 「下腿部のマッサージ機において、左右の空気袋に対して交互に圧縮空気を給排気することにより、左右のふくらはぎに圧迫、圧迫開放を加えるマッサージ機。」 (15)甲16 ア 甲16の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲16には、図面とともに、次の記載がある。 「【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明のマッサージ機を図に示される実施形態について更に詳細に説明する。図1には本発明の一実施形態に係るマッサージ機10がで示されている。この実施形態のマッサージ機10は、大別して椅子20と、脚保持部30と、足乗せ台40とから構成されている。 【0014】この椅子20の基本的な構成としては、座部21と、この座部21の両側に設けられた肘掛け部22と、座部21の後端に設けられた傾斜可能な背凭れ部23とを備えている。座部21と背凭れ部23のそれぞれ内部適所には、複数の空気袋(図示せず)が配置されている。」 「【0017】このような空気式マッサージ機構部の構造は、前述した特開平10-118141号公報に開示されていて公知であると共に基本的な点では実質的に同じであるので詳細な説明は省略する。本実施形態のマッサージ機10では、更に肘掛け部22の上部に設けられた腕保持部24を備えている。腕保持部24は、使用者の腕を両側から挟むようにU字状の凹部25を形成する保持壁部24a、24bを備え、各保持壁部内にも前述したと同様な空気袋(図示せず)が配置されている。 【0018】この腕保持部24でも、これを構成している各保持壁部24a、24b内の空気袋に圧縮空気を供給排気することにより膨張と収縮を起こさせて保持壁部間の凹部25に入れられた使用者の腕を保持壁部24a、24bの外装布を介して挟み込むようにして圧迫し、またこの圧迫を解放することによりマッサージを行うようにされている。」 「【図1】 [図:0001388689000024.jpg] 」 【図1】には、使用者が椅子20の座部21に着座する点、使用者の上半身が背凭れ部に凭れる点、椅子20の両側に設けられた一対の肘掛け部22の上部に一対の腕保持部24が設けられる点、及び、U字状に凹部25が形成された上記腕保持部24は使用者の腕を部分的に覆って保持する点が、それぞれ開示されている。 上記【0017】の「使用者の腕を両側から挟むようにU字状の凹部25を形成する保持壁部24a、24bを備え、各保持壁部内にも前述したと同様な空気袋(図示せず)が配置されている。」という記載事項を踏まえると、【図1】には、腕保持部は、内面が互いに対向する二つの保持壁部からなる点、その幅方向に切断して見た断面において使用者の腕を挿入する開口が形成されているとともに、及び、上記開口は上を向くように配設されている点が、それぞれ開示されているといえる。 上記【0018】の「各保持壁部24a、24b内の空気袋に圧縮空気を供給排気することにより膨張と収縮を起こさせて保持壁部間の凹部25に入れられた使用者の腕を保持壁部24a、24bの外装布を介して挟み込むようにして圧迫し、またこの圧迫を解放することによりマッサージを行う」との記載から、使用者の腕を挟み込むことができるよう、保持壁部24a、24bの内面の互いに対向する部分のそれぞれに空気袋が配置されていることは明らかである。 【図1】には、腕保持部が使用者の前腕を手首近傍まで保持する点が開示されている。 イ 甲16発明 上記アの記載事項、図示事項及び認定事項を踏まえると、甲16には、次の発明(以下、「甲16発明」という。)が記載されていると認める。 「使用者が着座可能な座部と、使用者の上半身が凭れる背凭れ部とを備える椅子型のマッサージ機において、 前記座部の両側にそれぞれ設けられ、使用者の腕を部分的に覆って保持する一対の腕保持部と、 前記腕保持部の内面に配置される膨張及び収縮可能な空気袋と、を有し、 前記腕保持部は、その幅方向に切断して見た断面において使用者の腕を挿入する開口が形成されており、その内面に互いに対向する部分を有し、 前記空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のそれぞれに配置され、 前記一対の腕保持部は、各々の前記開口が上を向くように配設されているマッサージ機。」 ウ 甲16に記載の技術的事項 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲16には、次の技術的事項(以下、「甲16技術事項」という。)が記載されているといえる。 「使用者が着座可能な座部と、使用者の上半身が凭れる背凭れ部とを備える椅子型のマッサージ機において、両肘掛け部にそれぞれ設けられ、使用者の腕を部分的に覆って保持する一対の腕保持部と、前記腕保持部の内面に配置される膨張及び収縮可能な空気袋と、を有し、前記一対の腕保持部は、使用者の腕を挿入する開口が各々上を向くように配設され、使用者の前腕を手首近傍まで保持しているマッサージ機。」 (16)甲17 ア 甲17の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲17には、図面とともに、次の記載がある。 「【0005】 【実施例】以下実施例と共に詳細に説明する。図1は、本発明の基本的構成を示す説明図で、軽擦マッサージ装置(1)は、本体(2)の外方に横方向に移動可能に軽擦体(3)を有し、該軽擦体(3)を該本体内に設けた往復動手段により所定振幅で往復動させ、身体(4)の上膊部(5)等を軽く擦るようにしてある。 【0006】上記本体(2)は、手でもって使用するようにしてもよいが、図1に示すように適宜のスタンド(6)に該本体(2)を取付け、該スタンド(6)を身体に近接させて使用するとよい。この際、該本体(2)は、上記スタンド(6)に、取付高さを調整可能に設けてある。 【0007】また、上記軽擦マッサージ装置(1)を使用する際、従来のように電磁力による振動や偏心荷重による振動作用で短時間に、短い振幅で上下に微振動する振動体(7)を有するバイブレーター装置(8)を身体のふくらはぎ(9)等に下部から当てがって併用すると、さらに効果的である。」 「【0017】上記軽擦マッサージ装置(1)は、単体で使用してもよいが、上述したようにバイブレーター装置(8)と併用すると、さらに効果的であり、したがって、これらの装置(1),(8)を組み合せて具備する治療台が好適に使用される。これらの治療台としては、ベッドや椅子の形態が好ましい。」 「【0021】図15、図16には治療台として椅子(57)を用いた実施例を示している。図において、着席した際に背部、臀部、ふくらはぎ、足裏が当接する部位には凹部(44)…を設けてパイブレーター装置(8)…を設けてあり、また側方にはフレーム(58a),(58b),(58c)を設けて軽擦マッサージ装置(1)を設けてある。この実施例によれば、着席して治療を行うことができる。軽擦マッサージ装置(1)は少数の装置を適当に移動可能に設けてもよい。」 「【図16】 [図:0001388689000025.jpg] 」 上記【0021】の記載事項を踏まえて、図16をみれば、「座部と、背凭れ部とを備える椅子」が記載されていることが理解できる。 イ 甲17に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲17には、次の技術的事項(以下、「甲17技術事項」という。)が記載されているといえる。 「座部と、背凭れ部とを備える椅子の側方にフレームを設けて軽擦マッサージ装置を設けた治療台。」 (17)甲18 ア 甲18の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲18には、図面とともに、次の記載がある。(日本語訳は、甲18号証の抄訳を参考に合議体が付した。以下同様。) 「The chair according to the invention, further comprises mechanical massage means (22) which are incorporated into its back (2), and means for a passive gymnastic exercise.」(1頁右欄「Abstract」15行~18行) (本発明による椅子は、その背もたれ(2)に組み込まれる機械的マッサージ手段(22)、および受動的な運動のための手段をさらに備える。) 「TANNING CHAIR」(1欄1行) (日焼け椅子) 「In a further embodiment of the appartus for tanning the hands and may be the arms of a user according to FIG. 18, each separate unit 36 is pivotally connected with the external side of an arm 37, 38 of the chair. Each unit 36 is provided with two parallel arms 236 which are connected to the external side of the associated arm 37, 38 so as to pivot around a common axis parallel to the associated arm 37, 38 of the chair. The arms 236 are perpendicular to the radiating surface of the units 36. Thus the units 36 are swingable from a inactive position in which the units 36 are suspended outside the associated arm 37, 38, with their radiating surface directed upwardly to an active position in which the units 36 are placed above the associated arms 37, 38 of the chair whith their radiating surface directed downwardly to said arms 37, 38 of the chair.」(5欄22~37行) (図18によるユーザの手および腕を日焼けさせるための装置のさらなる実施形態では、それぞれの別個のユニット36は、椅子の関連するアーム37、38の外側に枢動可能に接続されている。各ユニット36は、椅子の関連するアーム37、38に平行な共通軸の周りを旋回するように、アーム37、38の外側に接続された2つの平行なアーム236を備えている。アーム236は、ユニット36の放射面に垂直である。したがって、ユニット36は、非アクティブ位置からアクティブ位置にスイング可能である。非アクティブ位置では、ユニット36は、それらの放射面が上向きになるように、関連するアーム37、38の外側に吊り下げられる。アクティブ位置では、ユニット36は、それらの放射面が下向きである状態で、椅子の関連するアーム37、38の上に配置される。) イ 甲18に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲18には、次の技術的事項(以下、「甲18技術事項」という。)が記載されているといえる。 「機械的マッサージ手段を組み込んだ背もたれを備える日焼け椅子において、椅子の関連するアームと、該アームに平行な共通軸の周りを旋回するように該アームの外側に接続された2つの平行なアームを備えたユニットと、ユニットの放射面が下向きとなるアクティブ位置において、ユニットは椅子の関連するアームの上に配置される日焼け椅子。」 (18)甲19 ア 甲19の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲19には、図面とともに、次の記載がある。 「ELECTROTHERMAL BATH CABINET」(1頁上欄4行) (電熱バスキャビネット) 「On each side of the cabinet 1 adjacent the entrance end X are provided auxiliary chamber members 14 and 15 which communicate with the chamber m of the main cabinet 1 through the elongated openings 16 in the side wall c and arranged immediately above the table 5.」(2頁42行~47行) (入口端部Xに隣接するキャビネット1の各側には、側壁cの細長い開口部16を介してメインキャビネット1のチャンバmと連通する補助チャンバ部材14および15が設けられており、テーブル5の真上に配置されている。) 「If the arms of the patient are to receive intense treatment, his arms are inserted into the cabinets 14 and 15 through the openings 16(後略)」(2頁110行~113行) (患者の腕が強い施療を受けることになっている場合、彼の腕は、開口部16を通してキャビネット14および15に挿入される。) 「 [図:0001388689000026.jpg] 」 図4には、側壁に設けられた開口部16同士が互いに対向するように配設されている点が開示されている。 イ 甲19に記載の技術的事項 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲19には、次の技術的事項(以下、「甲19技術事項」という。)が記載されているといえる。 「電熱バスキャビネットにおいて、開口部を通して腕を挿入できる一対のキャビネットを有し、前記一対のキャビネットは、各々の前記開口部が側壁に設けられ、且つ前記開口部同士が互いに対向するように配設されている電熱バスキャビネット。」 (19)甲20 ア 甲20の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲20には、図面とともに、次の記載がある。 「The present invention relates generally to a PEMF stimulator for treating osteoporosis and other medical conditions by promoting an increased bone mineral content and density.」(1頁2行~5行) (本発明は一般に、骨無機質含量および骨密度の増大を促すことによって骨粗鬆症およびその他の医学的状態を治療するPEMF刺激装置に関する。) 「In this embodiment, bone mineral density stimulator 30 includes pads 31 and 35, in addition to the elements as shown and discussed in conjunction with FIGURE 1A. Bone mineral density stimulator 30 is preferably designed to treat the upper and lower extremities of a patient, in addition to the proximal femur, hip joint, lumbar and thoracic spine areas. In this embodiment, pad 31 is shown resting on chair 20, and pad 35 is shown resting on the floor. Pad 31 is preferably designed to treat upper extremities of a patient, such as wrists or arms.」(13頁29行~14頁5行) (この実施の形態では、骨密度刺激装置30が、図1Aにおいて示されて論じられた部品群の他にパッド31および35を含む。骨密度刺激装置30は、大腿骨近位部分、股関節、腰椎および胸椎領域に加えて患者の上肢および下肢を治療するように設計されることが好ましい。この実施形態ではパッド31が椅子20の上に載せられて示されており、パッド35が床に置かれて示されている。パッド31は、手首、腕などの患者の上肢を治療するように設計されることが好ましい。) 「Pads 31 and 35 in this embodiment are generally c-shaped, in order to generally conform to a patient's upper or lower extremity, respectively. 」(15頁28行~30行) (この実施の形態のパッド31および35は、それぞれ患者の上肢又は下肢に概ね合致するよう全体にc字形である。) 「 [図:0001388689000027.jpg] 」 図1Cには、パッド31の開口が真横を向いている態様及び当該開口同士が互いに対向している態様が図示されている。 イ 甲20に記載の技術的事項 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲20には、次の技術的事項(以下、「甲20技術事項」という。)が記載されているといえる。 「骨粗鬆症治療などに用いられるPEMF刺激装置であって、椅子の両側に載置され、手首や腕などの上肢をあてがうパッドが、c字形をしており、患者に向かって真横に開口しており、そして、その開口同士が互いに対向しているPEMF刺激装置。」 (20)甲21 ア 甲21の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲21には、図面とともに、次の記載がある。 「The present invention relates to sickbeds, and relates more particularly to a multipurpose sickbed which can be conveniently operated to turn over the body of the sick person leftward or rightward, to help the sick person sit up, and to massage the back of the sick person. Taking care a sick person who lies on the bed and cannot move the body by himself, is not an easy job.」(1欄5行~9行) (本発明は、病床に関し、特に病人の体を左側又は右側に返したり病人が座る手助けをしたり病人の背中をマッサージするために簡便に操作し得る多目的病床に関する。 ベッドに平臥し、自身で身体を移動させることができない病人の世話をすることは、容易ではない。) 「However, when the folding bed plate is driven to help the sick person sit up, the sick person tends to slip downwards along the lifted longitudinal plate of the folding bed plate.」 (しかしながら、病人を起床させるのを助けるために折畳み式のベッドプレートが駆動されると、病人は、折畳み式のベッドプレートの持ち上げられた縦プレートにそって下方に摺動しがちである。)(1欄21行~24行) 「Hand guard cushions 88 are mounted on the sheet-like bearing element 12, each defining a longitudinal groove 881 for supporting the hands of the sick person. 」 (手の保護クッション88は、シート状の支持部12に備え付けらえており、病人の手を保持する縦長溝881が両方に設けられている。)(4欄30行~33行) 「 [図:0001388689000028.jpg] 」 図6には、病人の手を保持する縦長溝881が病人に向かって横に開口しており、そしてその開口同士が互いに対向している点が開示されている。 イ 甲21に記載の技術的事項 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲21には、次の技術的事項(以下、「甲21技術事項」という。)が記載されているといえる。 「自身で身体を移動させることができない病人の世話をするための多目的な病床であって、手の保護クッションに病人の手を保持する縦長溝が設けられ、その縦長溝が病人に向かって横に開口しており、そしてその開口同士が互いに対向している手の保護クッションを備えた病床。」 (21)甲31 ア 甲31の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲31には、図面とともに、次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、マットあるいは布団に配設されたエアーバッグからなるマッサージ手段をエアー供給手段からなる駆動手段によって駆動して被施療部のマッサージをするマッサージ機に関する。」 「【0058】図5、図6に示すように、マット部1のマット部材2の内部には両側には長手方向に沿うとともに後方に向かうにつれて厚み方向の下方に向かうように傾斜させて形成した横穴状の一対の収納凹部58が形成されており、この収納凹部58には、部分マッサージ器としての腕用マッサージ器50が収納されている。」 「【0060】そして、前記腕用マッサージ器50は開口51aを有する細長状の袋体51とこの袋体51の外側に周方向に沿って設けられた部分マッサージ手段としての環状エアーバッグ52、53および54とから構成されている。 【0061】また、前記袋体51の長さつまり深さは、図6に二点鎖線で示すように前記開口51aからを挿入した腕の付根部を前記開口51aの口縁に位置させて真っ直ぐに延ばすことができる寸法に設定されおり、また、前記環状エアーバッグ52は上椀部を、環状エアーバッグ53は肘部の下方つまり二の腕部を、また、環状エアーバッグ54は手の掌部に位置するように配置されるとともに、環状の径も膨脹した際に上椀部ないし手の掌部に所定の押圧力が生じるように設定されているものである。」 イ 甲31に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲31には、次の技術的事項(以下、「甲31技術事項」という。)が記載されているといえる。 「マットに配設されるエアーバッグを備えたマッサージ機であって、前記エアーバッグが、上椀部が配置される環状エアーバッグと、二の腕部が配置される環状エアーバッグと、手の掌部が配置される環状エアーバッグと、からなるマッサージ機。」 (22)甲32 ア 甲32の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲32には、図面とともに、次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、圧縮空気の給排によって膨張・収縮させる袋体の複数を備えた空圧マッサージ機に係り、詳しくは、キルティング加工してウェア状に形成された身体収納体の腕部や脚部等の身体適所に圧縮空気の給排によって複数の袋体を膨張や収縮をさせる袋体を内装し、各袋体の膨縮により使用者に圧迫マッサージを付与し得る空圧美容マッサージ機に関する。」 「【0023】さらに、前記群袋体は、例えば、上記上半身用ウェア状部材の両手部対応位置から両肩部対応位置にかけて左右一対に、第一群袋体、第二群袋体、第三群袋体及び第四群袋体として設けた四対・八個の袋体と、上記下半身用ウェア状部材の両足部対応位置から腰対応位置にかけて左右一対に、第一群袋体、第二群袋体、第三群袋体及び第四群袋体として設けた四対で八個の袋体との、上下四対ずつ計十六個の袋体より成る四群の群袋体から構成することで、両手部から両肩部に亘って及び両足部から腰部に亘って、細分化された同調圧迫マッサージを施すことができる。」 「【0034】前記上半身用ウェア状部材11の両手部対応位置から両肩部対応位置にかけては、図3に示したように、膨縮可能な上半身用第一群袋体111・上半身用第二群袋体112・上半身用第三群袋体113・上半身用第四群袋体114が、それぞれ左右に対をなすよう設けられている。」 イ 甲32に記載の技術的事項 上記アの記載事項を踏まえると、甲32には、次の技術的事項(以下、「甲32技術事項」という。)が記載されているといえる。 「ウェア状の空圧美容マッサージ機であって、両手部対応位置から両肩部対応位置にかけて設けられた群袋体を有する空圧美容マッサージ機。」 (23)甲33 ア 甲33の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲33には、図面とともに、次の記載がある。 「【0008】この実施の形態のエアーマッサージ機は、凹部1の内壁に、人体の肢体を挿入するための空間2を設けるように空気袋5を夫々取着して施療部7を形成し、前記空気袋5に空気を給排気して空気袋5を膨張及び収縮させる給排気装置6を連通して設けてなるエアーマッサージ機において、柔軟性を有し、伸縮しない成形シート材10を空気袋5の上面に近接して設けてなる。また、給排気装置6は、図1に図示していないが、従来のもの(図3)と同様に空気袋5に連通した構成となっている。」 「【0012】なお、単独で使用する場合以外に、図2に示すように、上記構成のエアーマッサージ機3を、椅子20の肘掛けの上部や、座部前側に配置し、椅子20の一部として構成して使用してもよい。」 「【図2】 [図:0001388689000029.jpg] 」 図2には、椅子の肘掛けの上部の前後方向全体に、エアーマッサージ機の凹部が形成されている点が開示されている。 イ 甲33に記載の技術的事項 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲33には、次の技術的事項(以下、「甲33技術事項」という。)が記載されているといえる。 「椅子の一部として構成されたエアーマッサージ機において、肘掛けの上部の前後方向全体に、人体の肢体を挿入するための空間が設けられた凹部が形成されているエアーマッサージ機。」 (24)甲34 ア 甲34の記載 本件特許の原出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲34には、図面とともに、次の記載がある。 「【0014】エアマッサージ器を構成しているこれらの部分は、互いに分離した状態でも各々別々に空気供給源からエアホースを介して加圧空気の供給が行えるようになっていて、第2の部分と分離した第1の部分を前腕や上腕に装着して腕のマッサージを行うことができる。」 「【0026】次に、図3は、前述したエアマッサージ器1の使用形態を示す図であって、同図(a)は、分離した第1の部分1Aを前腕に装着して腕のマッサージを行うと同時に、第2の部分1Bを足に装着して足首から足先までの部分をマッサージしている状態を示すものである。」 「【図3】 [図:0001388689000030.jpg] 」 図3には、エアマッサージ器の第1の部分が前腕と手首部分とに装着されている点が開示されている。 イ 甲34に記載の技術的事項 上記アの記載事項及び図示事項を踏まえると、甲34には、次の技術的事項(以下、「甲34技術事項」という。)が記載されているといえる。 「エアマッサージ器であって、前腕と手首部分とに装着可能な第1の部分を有するエアマッサージ器。」 2 無効理由1(甲2発明に基く進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明を対比するに、甲2発明の「着座できるシート」は、その作用・機能からみて、本件発明1の「被施療者が着座可能な座部」に相当し、以下同様に、「使用者」は「被施療者」に、「使用者が寄りかかれる腰、背部に対応する部位」は「被施療者の上半身を支持する背凭れ部」に、「十字状のアームに取り付けられてシートの両側に夫々配設され」は「座部の両側に夫々配設され」に、「ジャケット」は「保持部」に、「ジャケット内に腕と並列して配置される膨張可能な空気充填腕摩擦器」は「保持部の内面に設けられる膨張及び収縮可能な空気袋」に、「ジャケットは、断面がC字状となっており」は「保持部は、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し」に、それぞれ相当する。 そして、甲2発明の「座って使用できるエアー式マッサージ、牽引両用の健康機器」と本件発明1の「椅子型のマッサージ機」とは、「椅子型の健康器具」という点で共通し、同様に、「腕を挿入する開口が前方に設けられ、かつ前記十字状のアームを広げたり閉じたりできる」と「一対の保持部は、各々の前記開口が横を向き、且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されている」とは、「一対の保持部は、各々の前記開口が横を向いている」点で共通する。 イ 一致点及び相違点 してみれば、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 [一致点] 「被施療者が着座可能な座部と、被施療者の上半身を支持する背凭れ部とを備える椅子型の健康器具において、 前記座部の両側に夫々配設され、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部と、 前記保持部の内面に設けられる膨張及び収縮可能な空気袋と、を有し、 前記保持部は、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し、 前記一対の保持部は、各々の前記開口が横を向いている健康器具。」 [相違点1] 健康器具について、本件発明1は、マッサージ機であるのに対し、甲2発明は、エアー式マッサージ、牽引両用の健康機器である点。 [相違点2] 空気袋について、本件発明1は、保持部の「内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ」ているのに対し、甲2発明は、そのように設けられているか不明な点。 [相違点3] 一対の保持部について、本件発明1は、その「開口同士が互いに対向するように配設されている」のに対し、甲2発明は、そのように配設されているか不明な点。 ウ 判断 (ア)相違点3についての判断 事案に鑑み、まず相違点3について検討する。 A 甲2発明について a 甲2発明は、断面がC字状となっているジャケットが取り付けられた十字状のアームを広げたり閉じたりできるものである。しかしながら、当該態様は、甲2に「十字状の両アームを広げたり閉じたりすることができるようにした方が好ましい」と記載されているのみであり、十字状の両アームが、具体的に、どのような場合に、どのように広げたり閉じたりするのか、その目的やタイミングを含めて一切記載されていない。また、前方に閉じるのか後方に閉じるのかさえも不明である。 したがって、甲2の「十字状の両アームを広げたり閉じたりすることができるようにした方が好ましい」という記載から、十字状の両アームを上部スリーブ柱に対して前方に回動させて閉じるもの、すなわち、その結果としてジャケットの開口同士が互いに対向するものと一義的に解釈できず、また、その状態で施療を行うものと一義的に解釈できるものではない。 b-1 甲2発明は、「エアー式マッサージ、牽引両用の健康器具」である。 そして、甲2には、「下シリンダのピストンの押し上げ力は、一連の伝達動作を介して脇部位に作用し、即ち、使用者を持ち上げ(腋高を持ってぶら下げ)、使用者の身体を自然に垂れて、脊椎が引っ張られる。」、「両手で卵形の手動式エアシリンダ(19a,b)を握ると、空気が充填されることにつれて、空気充填腕摩擦器(37a,b,c,d)、空気充填肩甲摩擦器(17a,b)、空気充填腋下摩擦器(38,57)は、徐々に腕、肩甲骨、腋下等の箇所に加圧する。」、「空気充填腋下摩擦器(38,57)は、上部スリーブ柱(40)にねじ(39)(58)によって固定される。これによって、上部スリーブ柱(40)は、下シリンダピストンロッド(59)によって昇降するときに、腋下摩擦器(38,57)を動かせる。腋下摩擦器は、使用者の腋窩を持って使用者を上げ又は下げる。人が持ち上げられると、頸椎以下の骨賂が自重によって自然に引っ張られる。それによって、脊椎の間隙を大きくして、神経根が圧迫されることが緩和され、神経根とその周辺の組織との間の接着が緩み、血液が流通され、脊柱の水腫や充血が解消される。」と記載されている。よって、甲2発明の「牽引」とは、空気充填腋下摩擦器を膨張させ、押し上げることにより、当該空気充填腋下摩擦器が使用者の腋窩を持って使用者を持ち上げる機能を少なくとも含むものであることが理解できる。 ここで、「十字状の両アームを広げたり閉じたりする」態様が十字状の両アームを上部スリーブ柱に対して前方に回動させて閉じるものであるとすると、下図にハッチングで示すように、十字状の両アームを閉じることにより腋窩の位置が異なるものとなる。上記甲2の記載のとおり、空気充填腋下摩擦器は、上部スリーブ柱に固定されるものであるから、使用者の背面から延びるものと認められ、また、十字状の両アームの開閉に伴って空気充填腋下摩擦器の配置や形状を変更することは、記載も示唆もされていない。 したがって、十字状の両アームを広げた際の腋窩の位置に対応する空気充填腋下摩擦器が、十字状の両アームを閉じた際の腋窩の位置に適切に対応するとはいえず、十字状の両アームを閉じた場合、「エアー式マッサージ、牽引両用の健康器具」において、適切な牽引が受けられなくなってしまう可能性が高い。 [図:0001388689000031.jpg] [図:0001388689000032.jpg] b-2 さらに、甲2には、「左右の手動式エアシリンダからの空気は、それぞれ両アームに対応する腕、肩、脇エアバッグに注入される。エアバッグの外面及び卵形の手動式エアシリンダの外面は、ともに多数の小突起が形成された粗面にされている。小突起内には、磁石粒が内蔵している。」、「手動式エアシリンダ(19a,b)からの空気が、空気充填管(36a,b)を介して充填されると、臀、肩、腋下摩擦器を同時に膨張させることができる。」、「両手で卵形の手動式エアシリンダ(19a,b)を握ると、空気が充填されることにつれて、空気充填腕摩擦器(37a,b,c,d)、空気充填肩甲摩擦器(17a,b)、空気充填腋下摩擦器(38,57)は、徐々に腕、肩甲骨、腋下等の箇所に加圧する。この過程において、使用者が身体を適当に動ければ、前記摩擦器の表面の小突起に摩擦され、掻かれ、揉まれ、刺激される。」と記載されている。よって、甲2発明のエアー式マッサージとは、空気充填腋下摩擦器による腋下のマッサージも少なくとも含むものといえる。 しかしながら、上記b-1で説示したとおり、「十字状の両アームを広げたり閉じたりする」態様が十字状の両アームを上部スリーブ柱に対して前方に回動させて閉じるものであるとすると、空気充填腋下摩擦器が、十字状の両アームを閉じた際の腋窩の位置に適切に対応するとはいえず、十字状の両アームを閉じた場合、「エアー式マッサージ、牽引両用の健康器具」において、牽引だけでなく適切なマッサージも受けられない可能性が高い。 c 甲2には、「老弱、不自由、障碍者等には、優しくて操作が簡単で、気軽に使用でき、かつ、多少不自由な関節、多少に痙攣や凝りがあった筋肉、靱帯、また多少に捻れ、腫脹、充血や増殖があった筋脈、骨格、椎間板等の組織に対して緩和、引張り、調整、展張、疎通ないしは治療する健康機器が期待される。」、「本実用考案は、マッサージと牽引の二つの機能を健康機器に導入して、老弱、不自由、障碍者等に好適に使用できる新規健康機器を提供することを目的としている。この機器は、使用者が自ら空気を充填し、マッサージ器具及び牽引器具を空気圧で駆動し、ガスによる圧力調整が十分に緩やかで、簡単かつ気軽に操作できる特徴を利用して、使用者が必要なマッサージ、牽引の力を「楽に」得ることができるとともに、マッサージ及び牽引の動作強度を十分に優しくすることができる。」、「要するに、本実用考案は、マッサージと牽引の機能を有する健康機器であって、手・足で空気を充填し、空気駆動によって使用者が楽に所要のマッサージと牽引の力を得ることができる。また、その強度が十分に優しい。健康機器に設置された磁気性を有するゴム突起摩擦器で使用者の腕、肩甲骨、脇下、腰、背、臀、股、手の平、足裏を揉み、マッサージし、掻き、刺激することができることで、筋脈が疎通し、血行が流暢になり、病気を予防し、身体を鍛錬することができる。特に老弱、不自由、障碍者等に好適に使用される。」と記載されている。すなわち、甲2発明は、使用者にとって、優しくて操作が簡単で、必要なマッサージ、牽引の力を「楽に」得ることができる新規健康機器を提供することを課題としており、当該新規健康機器は、特に老弱、不自由、障碍者等に好適に使用される点が甲2に記載されているにすぎず、請求人が主張するような、十字状に手を広げにくい者のために十字状の両アームを広げたり閉じたりする新規健康機器を提供する、という課題は記載も示唆もされていない。 また、老弱、不自由、障碍者等にとって、十字状に手を広げる姿勢よりも肩と同じ高さで手を前方に延ばす姿勢の方が楽であることの根拠もない。 よって、甲2発明が、老弱、不自由、障碍者等に好適に使用されるとしても、アームを閉じて施療を行うべき特段の理由は見い出せない。 d さらに、甲2発明においてアームを広げたり閉じたりすることの意味は、例えば収納性の向上等も十分想定される。 e 上記b-1、b-2より、甲2発明は、十字状の両アームを上部スリーブ柱に対して前方に回動させて閉じた状態で使用することにより、その機能が制限されることが明らかであり、また、上記c、dより、甲2発明において、十字状の両アームを上部スリーブ柱に対して前方に回動させて閉じた状態で使用することの理由がない。 以上を考えあわせると、甲2発明は、十字状の両アームを上部スリーブ柱に対して前方に回動させて閉じた状態で施療を行うものと解することはできず、十字状の両アームを上部スリーブ柱に対して前方に回動させて閉じる構成、すなわち、その結果としてジャケットの開口同士が互いに対向するものとはいえない。 f さらに、甲2発明において、上記c、dより、十字状の両アームを上部スリーブ柱に対して前方に回動させて閉じた状態で使用することの理由がなく、また、上記b-1、b-2より、そのような閉じた状態で使用することにより、その機能が制限されるのであるから、甲2発明を十字状の両アームを上部スリーブ柱に対して前方に回動させて閉じる構成、すなわち、その結果としてジャケットの開口同士が互いに対向する構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 B 甲3~5、16技術事項について a 上記1(2)ウ、1(3)イ、1(4)ウ、1(15)ウのとおり甲3~5、16技術事項は、以下のとおりである。 [甲3技術事項] 「手用空気マッサージ機において、椅子本体の両肘掛部の上面に配設された固定板の上部左右に膨張袋を一定間隔を存して対設して、使用者の手部及び下腕部を両側から挟持してマッサージするマッサージ機。」 [甲4技術事項] 「膨縮袋により掌、手首、前腕を含む手部をマッサージするマッサージ構造。」 [甲5技術事項] 「手用空気圧マッサージ機において、椅子本体の肘掛部の上面適所に収納体を配設し、当該収納体を人体の指先から肘までの手部を被覆収納し得るよう袋状形成したマッサージ機。」 [甲16技術事項] 「使用者が着座可能な座部と、使用者の上半身が凭れる背凭れ部とを備える椅子型のマッサージ機において、両肘掛け部にそれぞれ設けられ、使用者の腕を部分的に覆って保持する一対の腕保持部と、前記腕保持部の内面に配置される膨張及び収縮可能な空気袋と、を有し、前記一対の腕保持部は、使用者の腕を挿入する開口が各々上を向くように配設され、使用者の前腕を手首近傍まで保持しているマッサージ機。」 b ここで、甲3~5、16技術事項は、いずれも椅子型のマッサージ機において、腕部を保持する保持部の開口同士が互いに対向するように配設されているものではない。 c 一方で、椅子型のマッサージ機において、肘掛け部の上に腕部を保持する保持部を配設することは、甲3、5、16技術事項にみられるように、周知技術(以下、「周知技術a」という。)であるといえる。 しかしながら、甲2発明の十字状のアームに取り付けられたジャケットに代えて、上記周知技術aを適用すると、使用者の前腕を肘掛け部上の保持部に配置することにより、使用者の脇が締まり、空気充填腋下摩擦器が腋窩に当接するための空間が大きく減少し、牽引が困難となる(上記(ア)b参照。)。よって、甲2発明に上記周知技術aを適用することには、阻害要因があるといえる。 また、甲2発明の十字状のアームに取り付けられたジャケットをそのままとし、さらに上記周知技術aを適用することは、腕部を保持する保持部を2対設けることに意味があるとはいえず、適用するための積極的な動機付けがあるとはいえない。仮に、上記周知技術aを適用したとしても、上記周知技術aの「保持部」とは、甲3、5、16技術事項にみられる保持部であり、上記bのとおり、甲3、5、16技術事項にみられる保持部は、開口同士が互いに対向するように配設されているものではない。 d したがって、本件発明1の上記相違点3に係る構成は、甲2発明と上記周知技術aとに基いて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 C まとめ 以上より、本件発明1の上記相違点3に係る構成は、甲2発明が実質的に備えているものではなく、甲2発明に基いて、又は、甲2発明と上記周知技術aとに基いて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 (イ)相違点1、2についての判断 上記(ア)Cのとおり、本件発明1の上記相違点3に係る構成は、甲2発明が実質的に備えているものではなく、甲2発明に基いて、又は、甲2発明と上記周知技術aとに基いて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないから、相違点1、2についての判断に関わらず、本件発明1は、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて、又は、甲2発明と上記周知技術aとに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、相違点1、2についての判断を以下に簡潔に記す。 A 相違点1について 甲2発明は、エアー式マッサージ、牽引両用の健康機器であるが、エアー式マッサージのみを行うことができるものであり、実質的にマッサージ機といえる。 よって、この点は、実質的な相違点ではない。 B 相違点2 甲2発明の「空気充填腕摩擦器」は、断面がC字状のジャケット内のどこの部分に設けられているのか不明であるが、ジャケットの開口と対向する内面にのみに設けると、空気充填腕摩擦器は、使用者の腕部を前記開口から押し出すように膨張し、適切なマッサージ効果を得にくいことは自明である。 よって、空気充填腕摩擦器を、ジャケットの内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設け、空気充填腕摩擦器の膨張により腕部をジャケットの内面の互いに対向する部分のうち他方の部分に押しつけて、適切なマッサージ効果を得ようとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (ウ)本件発明1についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1は、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて、又は、甲2発明と上記周知技術aとに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。 (2)本件発明2ないし6について 本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、少なくとも上記相違点3において、本件発明2ないし6と甲2発明とは相違する。そして、本件発明1は、上記(1)ウのとおり、当業者であっても、甲2発明において、本件発明1の上記相違点3に係る構成とすることを容易に想到できるものではないから、本件発明2ないし6もまた、当業者であっても、甲2発明において、本件発明2ないし6の上記相違点3に係る構成とすることを容易に想到できるものではない。 したがって、本件発明2ないし6は、いずれも特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできず、本件発明にかかる特許は、特許法第123条第1項第2号に該当しない。 よって、請求人が主張する無効理由1により、本件発明に係る特許を無効とすることはできない。 3 無効理由2(甲3発明に基く進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明を対比するに、甲3発明の「座部」は、その作用・機能からみて、本件発明1の「被施療者が着座可能な座部」に相当し、以下同様に、「背凭れ部」は「被施療者の上半身を支持する背凭れ部」に、「手用空気圧マッサージ機」は「椅子型のマッサージ機」に、「両肘掛部の上面に夫々配設され」は「座部の両側に夫々配設され」に、「圧縮吸排気手段」は「保持部」に、それぞれ相当する。 そして、本件発明1の「被施療者の腕部を部分的に覆って」と甲3発明の「人体手部が載脱される」とは、「被施療者の腕部を部分的に保持する」という点で共通し、同様に、「保持部は、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し、前記空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ」と「圧縮吸排気手段は、固定板と前記固定板の上部左右に一定間隔を存して対設され、圧縮空気吸排装置で膨縮する膨縮袋と、を有する」とは、「保持部に設けられる膨張及び収縮可能な空気の袋」という点で共通する。 イ 一致点及び相違点 してみれば、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 [一致点] 「被施療者が着座可能な座部と、被施療者の上半身を支持する背凭れ部とを備える椅子型のマッサージ機において、 前記座部の両側に夫々配設され、被施療者の腕部を部分的に保持する一対の保持部と、 前記保持部に設けられる膨張及び収縮可能な空気の袋と、を有するマッサージ機。」 [相違点4] 一対の保持部について、本件発明1は、「被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部」であって、「その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し」、「各々の前記開口が横を向き、且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されている」のに対し、甲3発明は、そのような構成ではない点。 [相違点5] 空気の袋について、本件発明1は、「保持部の内面に設けられる膨張及び収縮可能な空気袋」であって、保持部の「内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ」ているのに対し、甲3発明は、そのような構成ではない点。 ウ 相違点4についての判断 (ア)甲2技術事項について a 上記1(1)ウのとおり、甲2技術事項は、以下のとおりである。 「エアー式マッサージ、牽引両用の健康機器において、十字状のアームに取り付けられてシートの両側に夫々配設され、使用者の腕部を部分的に覆って保持するジャケットを有し、前記ジャケットは、断面がC字状となっており、腕を挿入する開口が前方に設けられ、かつ前記十字状のアームを広げたり閉じたりできるエアー式マッサージ、牽引両用の健康機器。」 b 甲2技術事項の「使用者の腕部を部分的に覆って保持するジャケット」及び「前記ジャケットは、断面がC字状となっており」は、それぞれ本件発明1の「被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部」及び「前記保持部は、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し」に相当する。 したがって、甲2技術事項は、一対の保持部について、「被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部」であって、「その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し」ているといえる。 しかしながら、上記2(1)ウ(ア)にて説示したとおり、甲2技術事項は、ジャケットの「開口同士が互いに対向するように配設されている」ものではない。 c また、甲3発明の「圧縮吸排気手段」は、椅子の肘掛け部上に設けられ、使用者の前腕を保持し、当該前腕をマッサージするものであるのに対し、甲2技術事項の「ジャケット」は、十字状のアームに取り付けられ、使用者の前腕及び上腕を保持し、当該前腕及び上腕をマッサージするものである。 よって、両者は、その配置が異なり、その保持する対象も異なるものであるから、単純に置換できるものとはいえない。 d さらに、甲3発明の「圧縮吸排気手段」に代えて甲2技術事項の「ジャケット」を採用する動機付けもない。例えば、甲2技術事項のジャケットの開口が前方に設けられていることにより、使用者はジャケットに腕部を挿入しやすい、という効果が得られたとしても、あくまでもジャケットが十字状のアームに取り付けられている場合の効果であり、当該ジャケットを甲3発明の椅子の肘掛け部上に設けても、開口が前方を向いていることから、かえってジャケットに腕部を挿入しにくくなり、腕部を挿入しやすくするという動機付けも成立しない。 そうすると、甲2技術事項のジャケットを甲3発明の椅子の肘掛け部上に設け、さらにその前方を向いている開口を、腕部の挿入を容易とするために開口同士が互いに対向するように向けることは、そもそも甲2技術事項のジャケットを甲3発明の椅子の肘掛け部上に設けることの動機付けがなく、本件発明1を知っているからなし得ることであり、いわゆる後知恵といわざるを得ない。 (イ)甲17~21技術事項について a 上記1(16)イ、1(17)イ、1(18)イ、1(19)イ、1(20)イのとおり、甲17~21技術事項は、以下のとおりである。 [甲17技術事項] 「座部と、背凭れ部とを備える椅子の側方にフレームを設けて軽擦マッサージ装置を設けた治療台。」 [甲18技術事項] 「機械的マッサージ手段を組み込んだ背もたれを備える日焼け椅子において、椅子の関連するアームと、該アームに平行な共通軸の周りを旋回するように該アームの外側に接続された2つの平行なアームを備えたユニットと、ユニットの放射面が下向きとなるアクティブ位置において、ユニットは椅子の関連するアームの上に配置される日焼け椅子。」 [甲19技術事項] 「電熱バスキャビネットにおいて、開口部を通して腕を挿入できる一対のキャビネットを有し、前記一対のキャビネットは、各々の前記開口部が側壁に設けられ、且つ前記開口部同士が互いに対向するように配設されている電熱バスキャビネット。」 [甲20技術事項] 「骨粗鬆症治療などに用いられるPEMF刺激装置であって、椅子の両側に載置され、手首や腕などの上肢をあてがうパッドが、c字形をしており、患者に向かって真横に開口しており、そして、その開口同士が互いに対向しているPEMF刺激装置。」 [甲21技術事項] 「自身で身体を移動させることができない病人の世話をするための多目的な病床であって、手の保護クッションに病人の手を保持する縦長溝が設けられ、その縦長溝が病人に向かって横に開口しており、そしてその開口同士が互いに対向している手の保護クッションを備えた病床。」 b ここで、甲17技術事項は、椅子型のマッサージ機ではあるものの、あくまでも軽擦マッサージ装置であり、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものではない。また、甲17技術事項は、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部を備えるものではなく、保持部の開口同士が互いに対向するように配設されているものでもない。 してみれば、甲3発明に甲17技術事項を適用しても、本件発明1の上記相違点4に係る構成となり得ないことは明らかである。また、甲17技術事項を参酌しても、甲3発明に甲2技術事項を適用する動機付けは見いだせず、仮に、甲3発明に甲2技術事項を適用しても本件発明1の上記相違点4に係る構成とはなり得ないことは、上記(ア)bにて説示したとおりである。 c 甲18技術事項は、腕などを日焼けさせるための日焼け椅子であって、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものではない。 甲19技術事項は、電熱バスキャビネットであって、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものではない。 甲20技術事項は、骨粗鬆症治療などに用いられるパルス電磁場刺激装置における手首や腕などの上肢をあてがうパッドであり、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものではない。 甲21技術事項は、自らでは身体を移動することができない病人を、ベッドプレートの縦プレートが持ち上げられたときに病人が摺動して身体がずれないようにするために、縦長溝が身体全体をしっかり保持するものであり、被施療者の腕部を施療するための構成を何ら有していない。つまり、甲21技術事項は、病人の世話をするための多目的な病床における手の保護クッションであり、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものでない。 してみれば、甲18~21技術事項に共通な技術事項が、たとえ、使用者の腕を保持するための手段の開口が人体の方向に向かっており、当該開口が互いに対向するということであったとしても、そもそも、甲18~21技術事項は、それぞれの属する技術分野が互いに異なるばかりか本件発明1、甲3発明及び甲2技術事項の属する技術分野とも異なり、それぞれの技術的課題も作用効果も互いに異なるばかりか本件発明1、甲3発明及び甲2技術事項とも共通性を有しないものとなっている。 そうすると、甲3発明に甲18~21技術事項を適用する動機付けがあったとはいえず、甲18~21技術事項を参酌しても、甲3発明に甲2技術事項を適用する動機付けは見いだせない。 (ウ)請求人の主張について a 上記第6 2(1)イ(イ)に記載したとおり、請求人は、 「本件特許明細書には、上記相違点6に係る構成の効果等は一切記載されておらず、せいぜい図面から理解できる程度の効果である(甲22(別件判決))。よって、同様に横方向の開口を有する甲2技術が同様の効果を奏することを理解できる。」と主張し(当審注:ここでいう「相違点6」とは、「第8 当合議体の判断」における上記相違点4と相違点5とを実質的に併せたものである。)、さらに、 「甲23の3(上記陳述要領書)によると、上方向の開口には問題があることを甲16(別件無効事件の甲9)の図から理解できることを認めている。そうすると、甲3発明に甲2技術を採用する際に、その開口を甲16のような上方向とするのではなく、甲2に示されたとおり横方向とすることは当然である。」と主張する。 b 甲22の48頁18行~23行には、以下のように記載されている。 「本件発明1のマッサージ機は,一対の保持部について,開口を横向きとし,互いに対向するように配設したものであるから,腕部を横方向に移動させることで,保持部内に腕部を挿入し,引き出すことが可能であり,保持部内に腕部を位置させた状態で内側に曲げることができ,肘掛け部の上面に一対の保持壁を備える引用発明とは異なり,保持壁に拘束されずに,腕部(肘など)を載せることができる,といった作用効果を奏すると認められる。」 また、甲23の3の6頁11行~16行には、以下のように記載されている。 「腕を対向する二面の間に保持して保持部の内面に設けられた空気袋でマッサージする椅子型のマッサージ機の場合, 甲9発明のような「腕を両側から挟むようにU字状の凹部を形成する保持壁部」を備えているとすると, 当業者は「U字状の凹部を形成する保持壁部に収まった前腕はその位置にしか安定的に保持できず,腕のマッサージをしていないときに腕の位置が拘束されてしまう」ことを課題として認識する。」 c ここで、甲22や甲23の3に記載された課題や効果とは、甲16発明のような「腕を両側から挟むようにU字状の凹部を形成する保持壁部」を備えているものと比較した場合の課題や効果であり、甲3発明は、「腕を両側から挟むようにU字状の凹部を形成する保持壁部」を備えておらず、同様の課題を内在するものではない。 d また、当該課題や効果は、椅子型のマッサージ機であって、肘掛け部上に保持部を備えたものに特有のものといえる。上記甲23の3に「腕のマッサージをしていないときに腕の位置が拘束されてしまう」と記載されているように、本件発明1は、マッサージをしていないときに肘掛け部上に載置した腕の自由度を向上し、くつろいだ姿勢を取り得るような椅子型のマッサージ機を提供することを課題とし、また、そのような効果を奏するものであるといえる。 一方で、甲2技術事項は、肘掛け部を備えておらず、十字状のアームに、保持部に相当するジャケットを取り付けたものであるから、マッサージをしていないときに肘掛け部上に載置した腕の自由度を向上しようという課題を内在するものではない。 e したがって、請求人の主張は、当を得たものではない。 (エ)まとめ 以上より、本件発明1の上記相違点4に係る構成は、甲3発明及び甲2技術事項に基いて、又は、甲3発明、甲2技術事項及び甲17~21技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 エ 本件発明1についてのまとめ したがって、上記相違点5についての判断に関わらず、本件発明1は、甲3発明及び甲2技術事項に基いて、又は、甲3発明、甲2技術事項及び甲17~21技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。 (2)本件発明2ないし6について 本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、少なくとも上記相違点4において、本件発明2ないし6と甲2発明とは相違する。そして、本件発明1は、上記(1)ウのとおり、当業者であっても、甲3発明において、本件発明1の上記相違点4に係る構成とすることを容易に想到できるものではないから、本件発明2ないし6もまた、当業者であっても、甲3発明において、本件発明2ないし6の上記相違点4に係る構成とすることを容易に想到できるものではない。 したがって、本件発明2ないし6は、いずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできず、本件発明にかかる特許は、特許法第123条第1項第2号に該当しない。 よって、請求人が主張する無効理由2により、本件発明に係る特許を無効とすることはできない。 4 無効理由3(甲5発明に基く進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5発明を対比するに、甲5発明の「座部」は、その作用・機能からみて、本件発明1の「被施療者が着座可能な座部」に相当し、以下同様に、「背凭れ部」は「被施療者の上半身を支持する背凭れ部」に、「椅子本体及び手用空気圧マッサージ機」は「椅子型のマッサージ機」に、「収納体」は「保持部」に、「収納体の周腹部に内装され」は「保持部の内面に設けられる」及び「内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ」に、「圧縮空気給排装置に連通させた袋体」は「膨張及び収縮可能な空気袋」に、それぞれ相当する。 そして、本件発明1の「座部の両側に夫々配設され、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部」と甲5発明の「椅子本体の肘掛部の上面に配設され、手先から肘までの手部を出し入れ自在に収納し得るように袋状に形成された収納体」とは、「座部の少なくとも一側に配設され、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する保持部」という点で共通する。 イ 一致点及び相違点 してみれば、本件発明1と甲5発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 [一致点] 「被施療者が着座可能な座部と、被施療者の上半身を支持する背凭れ部とを備える椅子型のマッサージ機において、 前記座部の少なくとも一側に配設され、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する保持部と、 前記保持部の内面に設けられる膨張及び収縮可能な空気袋と、を有し、 前記空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられるマッサージ機。」 [相違点6] 保持部について、本件発明1は、「座部の両側に夫々配設され」た「一対の保持部」であるのに対し、甲5発明は、そのように構成されているか不明な点。 [相違点7] 保持部について、本件発明1は「その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し」、「各々の前記開口が横を向き、且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されている」のに対し、甲5発明は、そのような構成ではない点。 ウ 相違点7についての判断 (ア)甲2技術事項について a 上記1(1)ウのとおり、甲2技術事項は、以下のとおりである。 「エアー式マッサージ、牽引両用の健康機器において、十字状のアームに取り付けられてシートの両側に夫々配設され、使用者の腕部を部分的に覆って保持するジャケットを有し、前記ジャケットは、断面がC字状となっており、腕を挿入する開口が前方に設けられ、かつ前記十字状のアームを広げたり閉じたりできるエアー式マッサージ、牽引両用の健康機器。」 b 甲2技術事項の「ジャケットは、断面がC字状となっており」は、本件発明1の「保持部は、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し」に相当する。 したがって、甲2技術事項は、保持部について、「その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し」ているといえる。 しかしながら、上記2(1)ウ(ア)にて説示したとおり、甲2技術事項は、ジャケットの「開口同士が互いに対向するように配設されている」ものではない。 c また、甲5発明の「収納体」は、椅子の肘掛け部上に設けられ、使用者の前腕を保持し、当該前腕をマッサージするものであるのに対し、甲2技術事項の「ジャケット」は、十字状のアームに取り付けられ、使用者の前腕及び上腕を保持し、当該前腕及び上腕をマッサージするものである。 よって、両者は、その配置が異なり、その保持する対象も異なるものであるから、容易に置換できるものとはいえない。 d さらに、甲5発明の「収納体」に代えて甲2技術事項の「ジャケット」を採用する動機付けもない。例えば、甲2技術事項のジャケットの開口が前方に設けられていることにより、使用者はジャケットに腕部を挿入しやすい、という効果が得られたとしても、あくまでもジャケットが十字状のアームに取り付けられている場合の効果であり、当該ジャケットを甲5発明の椅子の肘掛け部上に設けても、開口が前方を向いていることから、かえってジャケットに腕部を挿入しにくくなり、腕部を挿入しやすくするという動機付けも成立しない。 そうすると、甲2技術事項のジャケットを甲5発明の椅子の肘掛け部上に設け、さらにその前方を向いている開口を、腕部の挿入を容易とするために開口同士が互いに対向するように向けることは、そもそも甲2技術事項のジャケットを甲5発明の椅子の肘掛け部上に設けることの動機付けがなく、本件発明1を知っているからなし得ることであり、いわゆる後知恵といわざるを得ない。 (イ)甲17~21技術事項について a 甲17~21技術事項は、前記3(1)ウ(イ)のとおりである。 b ここで、甲17技術事項は、椅子型のマッサージ機ではあるものの、あくまでも軽擦マッサージ装置であり、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものではない。また、甲17技術事項は、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部を備えるものではなく、保持部の開口同士が互いに対向するように配設されているものでもない。 してみれば、甲5発明に甲17技術事項を適用しても、本件発明1の上記相違点7に係る構成となり得ないことは明らかである。また、甲17技術事項を参酌しても、甲5発明に甲2技術事項を適用する動機付けは見いだせず、仮に、甲5発明に甲2技術事項を適用しても本件発明1の上記相違点7に係る構成とはなり得ないことは、上記(ア)bにて説示したとおりである。 c 甲18技術事項は、腕などを日焼けさせるための日焼け椅子であって、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものではない。 甲19技術事項は、電熱バスキャビネットであって、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものではない。 甲20技術事項は、骨粗鬆症治療などに用いられるパルス電磁場刺激装置における手首や腕などの上肢をあてがうパッドであり、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものではない。 甲21技術事項は、自らでは身体を移動することができない病人を、ベッドプレートの縦プレートが持ち上げられたときに病人が摺動して身体がずれないようにするために、縦長溝が身体全体をしっかり保持するものであり、被施療者の腕部を施療するための構成を何ら有していない。つまり、甲21技術事項は、病人の世話をするための多目的な病床における手の保護クッションであり、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものでない。 してみれば、甲18~21技術事項に共通な技術事項が、たとえ、使用者の腕を保持するための手段の開口が人体の方向に向かっており、当該開口が互いに対向するということであったとしても、そもそも、甲18~21技術事項は、それぞれの属する技術分野が互いに異なるばかりか本件発明1、甲5発明及び甲2技術事項の属する技術分野とも異なり、それぞれの技術的課題も作用効果も互いに異なるばかりか本件発明1、甲5発明及び甲2技術事項とも共通性を有しないものとなっている。 そうすると、甲5発明に甲18~21技術事項を適用する動機付けがあったとはいえず、甲18~21技術事項を参酌しても、甲5発明に甲2技術事項を適用する動機付けは見いだせない。 (ウ)請求人の主張について a 上記第6 3(1)イ(ア)に記載したとおり、請求人は、 「椅子の腕部を乗せるところにマッサージ機を乗せる構成が公知であり(甲17)、腕を保持部に挿入する動作を行う場合には、腕を横方向に移動させる方が便宜であることもよく知られている(甲18~21)。 さらに、別件判決(甲22)からすれば、甲2技術事項から開口を横向きとする効果を当然に理解でき、当該効果が引用例に比較した有利な効果を奏するものではないことは、被請求人が認めるところである(甲23の3)。」 と主張する。 b 甲22及び甲23の3には、上記3(1)ウ(ウ)bに記載された事項が記載されている。 c 上記(イ)cにて説示したとおり、甲18~21技術事項は、それぞれの属する技術分野が互いに異なるばかりか本件発明1、甲5発明及び甲2技術事項の属する技術分野とも異なり、それぞれの技術的課題も作用効果も互いに異なるばかりか本件発明1、甲5発明及び甲2技術事項とも共通性を有しない。 d また、上記3(1)ウ(ウ)dと同様に、甲22や甲23の3に記載された課題や効果は、椅子型のマッサージ機であって、肘掛け部上に保持部を備えたものに特有のものといえる。上記甲23の3に「腕のマッサージをしていないときに腕の位置が拘束されてしまう」と記載されているように、本件発明1は、マッサージをしていないときに肘掛け部上に載置した腕の自由度を向上し、くつろいだ姿勢を取り得るような椅子型のマッサージ機を提供することを課題とし、また、そのような効果を奏するものであるといえる。 一方で、甲2技術事項は、肘掛け部を備えておらず、十字状のアームに、保持部に相当するジャケットを取り付けたものであるから、マッサージをしていないときに肘掛け部上に載置した腕の自由度を向上しようという課題を内在するものではない。さらにいえば、甲18~21技術事項も当該課題を内在するものではない。 e したがって、請求人の主張は、当を得たものではない。 (エ)まとめ 以上より、本件発明1の上記相違点7に係る構成は、甲5発明及び甲2技術事項に基いて、又は、甲5発明、甲2技術事項及び甲17~21技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 エ 本件発明1についてのまとめ したがって、上記相違点6についての判断に関わらず、本件発明1は、甲5発明及び甲2技術事項に基いて、又は、甲5発明、甲2技術事項及び甲17~21技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。 (2)本件発明2ないし6について 本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、少なくとも上記相違点7において、本件発明2ないし6と甲5発明とは相違する。そして、本件発明1は、上記(1)ウのとおり、当業者であっても、甲5発明において、本件発明1の上記相違点7に係る構成とすることを容易に想到できるものではないから、本件発明2ないし6もまた、当業者であっても、甲5発明において、本件発明2ないし6の上記相違点7に係る構成とすることを容易に想到できるものではない。 したがって、本件発明2ないし6は、いずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定の規定により特許を受けることができないものとすることはできず、本件発明にかかる特許は、特許法第123条第1項第2号に該当しない。 よって、請求人が主張する無効理由3により、本件発明に係る特許を無効とすることはできない。 4 無効理由4(甲16発明に基く進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲16発明を対比するに、甲16発明の「使用者」は、その作用・機能からみて、本件発明1の「被施療者」に相当し、以下同様に、「上半身が凭れる」は「上半身を支持する」に、「座部の両側にそれぞれ設けられ」は「座部の両側に夫々配設され」に、「腕」は「腕部」に、「腕保持部」は「保持部」に、「配置される」は「設けられる」に、それぞれ相当する。 そして、本件発明1の「空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられ」と甲16発明の「前記空気袋は、前記内面の互いに対向する部分のそれぞれに配置され」とは、「空気袋は、前記内面の互いに対向する部分に設けられている」点で共通する。 イ 一致点及び相違点 してみれば、本件発明1と甲16発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 [一致点] 「被施療者が着座可能な座部と、被施療者の上半身を支持する背凭れ部とを備える椅子型のマッサージ機において、 前記座部の両側に夫々配設され、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部と、 前記保持部の内面に設けられる膨張及び収縮可能な空気袋と、を有し、 前記保持部は、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し、 前記空気袋は、前記内面の互いに対向する部分に設けられているマッサージ機。」 [相違点8] 空気袋について、本件発明1においては、前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられている(構成要件G)のに対して、甲16発明においては、前記内面の互いに対向する部分のそれぞれに設けられている点。 [相違点9] 一対の保持部について、本件発明1においては、各々の前記開口が横を向き、且つ前記開口同士が互いに対向するように配設されている(構成要件H)のに対して、甲16発明においては、各々の開口が上を向くように配置されている点。 ウ 相違点8についての判断 本件発明1の空気袋が、「前記内面の互いに対向する部分のうち少なくとも一方の部分に設けられている」という構成は、前記内面の互いに対向する部分のそれぞれに設けられている構成を含むことは明らかである。 そうすると、上記相違点8は、実質的な相違点とはならない。 エ 相違点9についての判断 (ア)甲2技術事項について a 上記1(1)ウのとおり、甲2技術事項は、以下のとおりである。 「エアー式マッサージ、牽引両用の健康機器において、十字状のアームに取り付けられてシートの両側に夫々配設され、使用者の腕部を部分的に覆って保持するジャケットを有し、前記ジャケットは、断面がC字状となっており、腕を挿入する開口が前方に設けられ、かつ前記十字状のアームを広げたり閉じたりできるエアー式マッサージ、牽引両用の健康機器。」 b 甲2技術事項の「ジャケットは、断面がC字状となっており」は、本件発明1の「保持部は、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し」に相当する。 したがって、甲2技術事項は、保持部について、「その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有し」ているといえる。 しかしながら、上記2(1)ウ(ア)にて説示したとおり、甲2技術事項は、ジャケットの「開口同士が互いに対向するように配設されている」ものではない。 c また、甲16発明の「腕保持部」は、椅子の肘掛け部上に設けられ、使用者の前腕を保持し、当該前腕をマッサージするものであるのに対し、甲2技術事項の「ジャケット」は、十字状のアームに取り付けられ、使用者の前腕及び上腕を保持し、当該前腕及び上腕をマッサージするものである。 よって、両者は、その配置が異なり、その保持する対象も異なるものであるから、容易に置換できるものとはいえない。 d さらに、甲16発明の「腕保持部」に代えて甲2技術事項の「ジャケット」を採用する動機付けもない。例えば、甲2技術事項のジャケットの開口が前方に設けられていることにより、使用者はジャケットに腕部を挿入しやすい、という効果が得られたとしても、あくまでもジャケットが十字状のアームに取り付けられている場合の効果であり、当該ジャケットを甲16発明の椅子の肘掛け部上に設けても、開口が前方を向いていることから、かえってジャケットに腕部を挿入しにくくなり、腕部を挿入しやすくするという動機付けも成立しない。 そうすると、甲2技術事項のジャケットを甲16発明の椅子の肘掛け部上に設け、さらにその前方を向いている開口を、腕部の挿入を容易とするために開口同士が互いに対向するように向けることについて、そもそも甲2技術事項のジャケットを甲16発明の椅子の肘掛け部上に設けることの動機がない。 (イ)甲17技術事項について a 上記1(16)イのとおり、甲17技術事項は、以下のとおりである。 [甲17技術事項] 「座部と、背凭れ部とを備える椅子の側方にフレームを設けて軽擦マッサージ装置を設けた治療台。」 b ここで、甲17技術事項は、椅子型のマッサージ機ではあるものの、あくまでも軽擦マッサージ装置であり、被施療者の腕部を空気袋によりマッサージするものではない。また、甲17技術事項は、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部を備えるものではなく、保持部の開口同士が互いに対向するように配設されているものでもない。 してみれば、甲16発明に甲17技術事項を適用しても、本件発明1の上記相違点9に係る構成となり得ないことは明らかである。また、甲17技術事項を参酌しても、甲16発明に甲2技術事項を適用する動機付けは見いだせず、仮に、甲16発明に甲2技術事項を適用しても本件発明1の上記相違点9に係る構成とはなり得ないことは、上記(ア)bにて説示したとおりである。 (ウ)請求人の主張について a 上記第6 4(1)イ(イ)に記載したとおり、請求人は、 「なお、別件判決(甲22)において、甲16(別件における「甲9」)を主引例とし、上記相違点2は設計的事項と主張したところ、同判決は、 「・・・引用発明の椅子式マッサージ機の腕保持部について、その構造を積極的に変更しようとすべき点は見当たらない。そうだとすると、引用発明の椅子式マッサージ機に接した当業者は、特に動機付けがなければ・・・保持部の構造を積極的に変更しようとはしない。」 と認定した。 そうすると、本件においても、この点を開示した甲2が存在する以上、開口を横向きとした効果を理解できるから、そのような効果に着目して相違点2に係る構成を甲16に適用することは容易である。」と主張する。 b 甲22及び甲23の3には、上記3(1)ウ(ウ)bに記載された課題や効果は、上記3(1)ウ(ウ)dで指摘したように椅子型のマッサージ機であって、肘掛け部上に保持部を備えたものに特有のものといえる。上記甲23の3に「腕のマッサージをしていないときに腕の位置が拘束されてしまう」と記載されているように、本件発明1は、マッサージをしていないときに肘掛け部上に載置した腕の自由度を向上し、くつろいだ姿勢を取り得るような椅子型のマッサージ機を提供することを課題とし、また、そのような効果を奏するものであるといえる。 一方で、甲2技術事項は、肘掛け部を備えておらず、十字状のアームに、保持部に相当するジャケットを取り付けたものであるから、マッサージをしていないときに肘掛け部上に載置した腕の自由度を向上しようという課題を内在するものではない。 e したがって、請求人の主張は、当を得たものではない。 (エ)まとめ 以上より、本件発明1の上記相違点9に係る構成は、甲16発明及び甲2技術事項に基いて、又は、甲16発明、甲2技術事項及び甲17技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 オ 本件発明1についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1は、甲16発明及び甲2技術事項に基いて、又は、甲16発明、甲2技術事項及び甲17技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。 (2)本件発明2ないし6について 本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、少なくとも上記相違点9において、本件発明2ないし6と甲16発明とは相違する。そして、本件発明1は、上記(1)エのとおり、当業者であっても、甲16発明において、本件発明1の上記相違点9に係る構成とすることを容易に想到できるものではないから、本件発明2ないし6もまた、当業者であっても、甲16発明において、本件発明2ないし6の上記相違点9に係る構成とすることを容易に想到できるものではない。 したがって、本件発明2ないし6は、いずれも特許法第29条第2項の規定ににより特許を受けることができないものとすることはできない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできず、本件発明にかかる特許は、特許法第123条第1項第2号に該当しない。 よって、請求人が主張する無効理由4により、本件発明に係る特許を無効とすることはできない。 第9 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明に係る特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担するべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-800080

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