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特許拒絶査定不服審判

2020-017428

非免許帯域を支援する無線接続システムにおいて競争ウィンドウサイズを調整する方法及びこれを支援する装置

審判番号
2020-017428
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-085516外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年12月21日
審決日
2022年04月19日
公報発行日
2022年05月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .161-WY (H04W)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第184条の4第3項、特許法第29条の2
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 85516「非免許帯域を支援する無線接続システムにおいて競争ウィンドウサイズを調整する方法及びこれを支援する装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月18日出願公開,特開2019-118153,請求項の数(10)〕について,次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は,2016年(平成28年)5月12日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年5月12日 アメリカ合衆国(US),2015年5月21日 アメリカ合衆国(US),2015年8月12日 アメリカ合衆国(US),2015年8月20日 アメリカ合衆国(US),2015年9月2日 アメリカ合衆国(US),2015年9月10日 アメリカ合衆国(US),2015年9月15日 アメリカ合衆国(US),2015年10月6日 アメリカ合衆国(US),2015年10月8日 アメリカ合衆国(US),2015年11月17日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特願2017-556873号の一部を平成31年4月26日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年 5月10日 上申書の提出

令和2年 3月 4日付け 拒絶理由通知書

令和2年 6月 3日 意見書及び手続補正書の提出

令和2年10月28日付け 拒絶査定

令和2年12月21日 審判請求書及び手続補正書の提出

令和3年12月23日付け 拒絶理由通知書(当審)

令和4年 2月21日 意見書及び手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和2年10月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1ないし3,5ないし10,12ないし14に対して,先願1

<引用文献等一覧>

1.PCT/SE2016/050038号(国際公開第2016/148622号、特表2018-512795号公報)(以下,「先願1」という。)

第3 当審拒絶理由の概要

当審における令和3年12月23日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1ないし3,5,7ないし9,11に対して,先願1並びに引用例2及び3

<引用文献等一覧>

1.PCT/SE2016/050038号(国際公開第2016/148622号,特表2018-512795号公報)(原査定の「先願1」と同じ。)

2.特開2007-28210号公報(周知技術を示す文献)(以下,「引用例2」という。)

3.特表2010-516092号公報(周知技術を示す文献)(以下,「引用例3」という。)

第4 本願発明

本願の請求項1ないし10に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は,令和4年2月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
無線通信システムにおいて競争ウィンドウサイズ(CWS)を調整する方法であって、前記方法は、
チャネル接続過程を行うことと、
複数の時間区間で、前記チャネル接続過程に基づいて、送信バーストを送信することと、
続きを表示(全50行)
前記送信バーストに対する基準時間区間に含まれるPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)と関連したHARQ-ACK(Hybrid Automatic Repeat and reQuest Acknowledgment)情報を取得することと、
HARQ-ACK情報に基づいて前記CWSを調整することと
を含み、
前記CWSは、優先順位クラスによってそれぞれ調整され、
前記基準時間区間は、複数のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルを含み、
前記基準時間区間は、前記複数の時間区間の中の初期時間区間であり、
前記CWSを調整することは、前記HARQ-ACK情報の少なくとも一つの値をカウントすることに基づいて前記CWSを調整することを含み、
前記HARQ-ACK情報の前記少なくとも一つの値は、前記PDSCHがセルフキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかクロスキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかに基づいてカウントされる、方法。
【請求項2】
前記PDSCHは、二つのコードワードに基づいて送信され、
前記CWSを調整することは、それぞれ、前記二つのコードワードのHARQ-ACK情報を処理することによって前記CWSを調整することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CWSの前記調整は、次の送信バーストのためのチャネル接続過程の前に実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記CWSは、所定値以上である確率に基づいて増加させられ、
前記確率は、前記HARQ-ACK情報がNACK(negative ACK)と決定される確率を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の時間区間に含まれる時間区間は、それぞれ、サブフレームであり、
前記基準時間区間は、前記複数の時間区間の中の初期サブフレームを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
無線通信システムにおいて競争ウィンドウサイズ(CWS)を調整するための装置であって、前記装置は、
メモリと、
前記メモリと結合された少なくとも一つのプロセッサと
を備え、
前記少なくとも一つのプロセッサは、
チャネル接続過程を行うことと、
複数の時間区間で、前記チャネル接続過程に基づいて、送信バーストを送信することと、
前記送信バーストに対する基準時間区間に含まれるPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)と関連したHARQ-ACK(Hybrid Automatic Repeat and reQuest Acknowledgment)情報を取得することと、
HARQ-ACK情報に基づいて前記CWSを調整することと
を実行するように構成され、
前記CWSは、優先順位クラスによってそれぞれ調整され、
前記基準時間区間は、複数のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルを含み、
前記基準時間区間は、前記複数の時間区間の中の初期時間区間であり、
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記HARQ-ACK情報の少なくとも一つの値をカウントすることに基づいて前記CWSを調整するようにさらに構成され、
前記HARQ-ACK情報の前記少なくとも一つの値は、前記PDSCHがセルフキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかクロスキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかに基づいてカウントされる、装置。
【請求項7】
前記PDSCHは、二つのコードワードに基づいて送信され、
前記CWSを調整することは、それぞれ、前記二つのコードワードのHARQ-ACK情報を処理することによって前記CWSを調整することを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記CWSの前記調整は、次の送信バーストのためのチャネル接続過程の前に実行される、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記CWSは、所定値以上である確率に基づいて増加させられ、
前記確率は、前記HARQ-ACK情報がNACK(negative ACK)と決定される確率を示す、請求項6~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の時間区間に含まれる時間区間は、それぞれ、サブフレームであり、
前記基準時間区間は、前記複数の時間区間の中の初期サブフレームを示す、請求項6~9のいずれか一項に記載の装置。」

第5 引用文献,引用発明及び技術的事項

1 先願1について

原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由で引用された先願1(PCT/SE2016/050038号(国際公開第2016/148622号,特表2018-512795号公報)の国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面(以下,「先願1の明細書等」という。)には,図面とともに以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)

(1)「In the time domain, LTE downlink transmissions are organized into radio frames of 10ms, each radio frame consisting of ten equally-sized subframes of length Tsubframe =1 ms as shown in Figure2. For normal CP, one subframe consists of 14 OFDM symbols. The duration of each symbol is approximately 71.4 μs.」(第2ページ第19行ないし第22行)

(当審仮訳:時間領域において,LTE下りリンク伝送が10msの無線フレームに編成され,各無線フレームは,図2に示すように,10個の等しいサイズの長さTsubframe=1msのサブフレームからなる。通常のCPに対し,1つのサブフレームは14OFDMシンボルからなる。各シンボルの区間は約71.4μsである。)

(2)「With LAA to unlicensed spectrum, as shown in Figure 8, a UE is connected to a PCell operating in the licensed spectrum and one or more SCells operating in the unlicensed spectrum. In this application we denote a SCell in unlicensed spectrum as LAA secondary cell (LAA SCell). The LAA SCell may operate in DL-only mode or operate with both UL and DL traffic. Furthermore, in future scenarios the LTE nodes may operate in standalone mode in license-exempt channels without assistance from a licensed cell. Unlicensed spectrum may, by definition, be simultaneously used by multiple different technologies. Therefore, LAA as described above may coexists with other systems such as IEEE 802.11 (Wi-Fi or WLAN).」(第9ページ第16行ないし第25行)

(当審仮訳:図8に示すように,非ライセンススペクトルに対するLAAを用いて,UEは,ライセンススペクトルで動作するPCellと,非ライセンススペクトルで動作する1つ以上のSCellとに接続される。この用途において,非ライセンススペクトルにおけるSCellをLAAセカンダリセル(LAA SCell)と表記する。LAA SCellは,DLオンリーモードで動作してもよいし,UL及びDLの両方のトラフィックで動作してもよい。さらに,将来のシナリオにおいて,LTEノードは,ライセンスドセルからの補助なしに,ライセンス免除チャネルにおけるスタンドアローンモードで動作しうる。非ライセンススペクトルは,本質的に,複数の異なる技術によって同時に使用されうる。したがって,上述のLAAは,IEEE802.11(Wi-Fi又はWLAN)などの他のシステムと共存しうる。)

(3)「The embodiments address LBT for data (burst) transmissions that are carried for example on the PDSCH or PUSCH. The receiver(s) of a data transmissions in configured to provide HARQ feedback to the transmitter to indicate whether the data has been received successfully (ACK) or not (NACK) according to the LTE specs. The random backoff contention window size, CW, is modified by the transmitter (first communication device) based on the HARQ feedback(s). The modifications are based on all the previously unused HARQ feedback received that is available at the time the LBT operation is performed to access the channel. By the receiver(s) is meant one or more second communication devices that provide HARQ feedback to the transmitter device i.e. the first communication device that transmitted the burst. 」(第14ページ第10行ないし第20行)

(当審仮訳:実施形態は,例えばPDSCH又はPUSCHで運ばれるデータ(バースト)送信のためのLBTを検討する。データ送信の受信機は,LTE規格に従って,データの受信に成功した(ACK)か否(NACK)かを示すために,送信機へHARQフィードバックを提供するように構成される。ランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズ(CW)は,HARQフィードバックに基づいて,送信機(第1の通信機器)によって修正される。修正は,チャネルにアクセスするためにLBT動作が実行される際に利用可能である,以前に使用されていない受信されたHARQフィードバックの全てに基づく。受信機は,送信機機器,すなわち,バーストを送信した第1の通信機器へHARQフィードバックを提供する1つ以上の第2の通信機器を意味する。)

(4)「As previously described a transmission burst refers to a transmission by a first communication device (UE or eNB) performed after a successful channel contention. The transmission burst may include one or more subframes with each subframe having transmissions to one or more second communication devices (UEs or eNBs). The transmissions of the subframe include one or more codewords based on which one or more HARQ feedbacks are transmitted to the first communication device. Each transmission burst is preceded by a successful LBT procedure where the first communication device determines the channel to be free to transmit. 」(第14ページ第22行ないし第30行)

(当審仮訳:上述のように,送信バーストは,チャネルコンテンションの成功の後に実行される第1の通信機器(UE又はeNB)による送信を示す。送信バーストは,1つ以上の第2の通信機器(UE又はeNB)への送信を有する各サブフレームを伴う1つ以上のサブフレームを含みうる。サブフレームの送信は,1つ以上の符号語を含み,これに基づいて,1つ以上のHARQフィードバックが第1の通信機器へ送信される。各送信バーストの前に,第1の通信機器が、チャネルで自由に送信することができると判定するLBT手順が成功する。)

(5)「Figure 10 shows the contention window for the LBT procedure (dashed) occurring for a transmission burst starting at subframe number 6, using HARQ feedback values from subframe 0. Within subframe 0, a single HARQ feedback is received for User1 (U1) whereas multiple HARQ feedback values are received for the multiple codewords transmitted to User2(U2). The HARQ feedback values for subframe 1 are, in this example, not available, and therefore are not used even though they belong to the same transmission burst. As shown, the HARQ feedback values are used as input to block 1001 which is configured to determine a random backoff contention window size (Out 1) for the next LBT procedure.」(第15ページ第13行ないし第21行)

(当審仮訳:図10は,サブフレーム0からのHARQフィードバック値を用いた,サブフレーム番号6で開始する送信バーストに対して生じる(ダッシュを引いた)LBT手順に対するコンテンションウィンドウを示している。サブフレーム0の範囲内で,単逸のHARQフィードバックがユーザ1(U1)に対して受信される一方で,複数のHARQフィードバック値がユーザ2(U2)に送信される複数の符号語に対して受信される。サブフレーム1に対するHARQフィードバック値は,この例においては,利用可能ではなく,したがって,同一の送信バーストに属しているが,使用されない。図のように,HARQフィードバック値は,次のLBT手順のためのランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズ(Out1)を決定するように構成されたブロック1001への入力として使用される。)

(6)図8

「
[図:0001383657000001.jpg]
」

(当審仮訳:

[図:0001383657000002.jpg]

)

(7)図10

「
[図:0001383657000003.jpg]
」

(当審仮訳:

[図:0001383657000004.jpg]

)

先願1の明細書等の上記記載,及び移動通信分野における技術常識を考慮すると,次のことがいえる。

ア 上記「(2)」の「図8に示すように,非ライセンススペクトルに対するLAAを用いて,UEは,ライセンススペクトルで動作するPCellと,非ライセンススペクトルで動作する1つ以上のSCellとに接続される。」との記載,及び上記「(6)」の図8によれば,先願1の明細書等には,プライマリセルとUE,セカンダリセルとUEが接続された無線通信システムが記載されているといる。

また,上記「(3)」の「ランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズ(CW)は,HARQフィードバックに基づいて,送信機(第1の通信機器)によって修正される。」との記載によれば,先願1の明細書等には,「ランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズを修正する方法」が記載されているといえる。

以上のことから,先願1の明細書等には,無線通信システムにおいてランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズを修正する方法が記載されているといえる。

イ 上記「(7)」の図10からは,サブフレーム0の前,サブフレーム3の前,サブフレーム6の前,及びサブフレーム10の前にLBTを行うことが見て取れる。したがって,先願1の明細書等には,LBTを行うことが記載されているといえる。

ウ 上記「(5)」の「図10は、サブフレーム0からのHARQフィードバック値を用いた、サブフレーム番号6で開始する送信バーストに対して生じる(ダッシュを引いた)LBT手順に対するコンテンションウィンドウを示している。」との記載によれば,サブフレーム6で送信バーストを送信するといえる。そして,当該事項に基づき,上記「(7)」の図10を参酌すると,サブフレーム6と同様に,サブフレーム0,1,3,4,10,11でも送信バーストを送信することが見て取れる。

また,上記「(4)」の「各送信バーストの前に,第1の通信機器が、チャネルで自由に送信することができると判定するLBT手順が成功する。」との記載によれば,各送信バーストをする際は,その前にLBT手順を実施し,チャネルで自由に送信することができるという判定が成功する必要があるといえる。つまり,送信バーストは,LBTに基づいて送信するといえる。

したがって,先願1の明細書等には,サブフレーム0,1,3,4,6,10,11で,LBTに基づいて,送信バーストを送信することが記載されているといえる。

エ 上記「(3)」の「PDSCH又はPUSCHで運ばれるデータ(バースト)送信のためのLBTを検討する。データ送信の受信機は,LTE規格に従って,データの受信に成功した(ACK)か否(NACK)かを示すために,送信機へHARQフィードバックを提供するように構成される。」との記載によれば,データ(バースト)送信がPDSCHで運ばれること,当該PDSCHに関連したHARQフィードバックを送信機へ提供する,すなわち送信機は,当該PDSCHに関連したHARQフィードバックが提供されることが記載されているといえる。さらに,上記「(5)」の「サブフレーム0の範囲内で,単一のHARQフィードバックがユーザ1(U1)に対して受信される」との記載,及び上記「(7)」の図10によれば,サブフレーム0のデータ(バースト)送信に対して,HARQフィードバックが行われるといえる。また,上記「(3)」における「データ(バースト)送信」が,上記「ウ」の「送信バースト」と同じものを表していることは自明である。

してみれば,先願1の明細書等には,サブフレーム0の送信バーストがPDSCHで運ばれ,当該PDSCHに関連したHARQフィードバックが提供されることが記載されているといえる。

オ 上記「(3)」の「ランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズ(CW)は,HARQフィードバックに基づいて,送信機(第1の通信機器)によって修正される。修正は,チャネルにアクセスするためにLBT動作が実行される際に利用可能である,以前に使用されていない受信されたHARQフィードバックの全てに基づく。」との記載,及び上記「(5)」の「図10は、サブフレーム0からのHARQフィードバック値を用いた、サブフレーム番号6で開始する送信バーストに対して生じる(ダッシュを引いた)LBT手順に対するコンテンションウィンドウを示している。・・・(中略)・・・HARQフィードバック値は,次のLBT手順のためのランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズ(Out1)を決定する」との記載によれば,先願1の明細書等には,サブフレーム0からのHARQフィードバック値に基づいて,サブフレーム6の送信バーストのLBT手順に対するランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズを修正するといえる。

カ 上記「(1)」の「1つのサブフレームは14OFDMシンボルからなる。」との記載によれば,サブフレーム0もOFDMシンボルを含むことが明らかである。そうすると,先願1の明細書等には,サブフレーム0は,複数のOFDMシンボルを含むことが記載されているといえる。

そして,上記「ア」ないし「カ」で説示した事項を総合すると,先願1の明細書等には,以下の発明(以下,「先願1発明」という。)が記載されていると認める。

「 無線通信システムにおいてランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズを修正する方法であって,前記方法は,
LBTを行うことと,
サブフレーム0,1,3,4,6,10,11で,前記LBTに基づいて,送信バーストを送信することと,
前記サブフレーム0の送信バーストがPDSCHで運ばれ,当該PDSCHに関連したHARQフィードバックが提供され,
前記サブフレーム0からの前記HARQフィードバック値に基づいて,前記サブフレーム6の送信バーストのLBT手順に対するランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズを修正し,
前記サブフレーム0は,複数のOFDMシンボルを含む方法。」

2 周知技術

(1)当審拒絶理由で引用された引用例2(特開2007-28210号公報)には,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審で付与した。)。

ア 「【0020】
CWパラメータ決定部(トラフィック制御手段)12は、CW(コンテンションウィンドウ)パラメータであるCWmin値、CWmax値及びこれらの双方を決定する。下りデータ送信部13は、下りデータ受信部2で受信されたデータのペイロード、ヘッダ変換部3により変換されたヘッダ、CWパラメータ決定部12により決定されたCWパラメータ及び下りデュレーション算出部9が算出したデュレーション値に基づいて、下りデータを端末局側へ送信する。」(第5ページ第38行ないし第44行)
イ 「【0117】
実施の形態8では、上記実施の形態1から3までに示したようにQOSクラス(優先クラス)に応じて独立したSSID又はマルチキャストグループを使用するAPにおいて、非優先クラス(例えば一般データ用SSID)に対するAPからの送信フレームのデュレーション設定でNAV制御するにあたり、端末局のCWパラメータ決定部(不図示)が、NAV制御が行われていない衝突区間においてVoIPデータの優先クラスに応じてそのCWパラメータ(CWmin値、CWmax値又はその両方)をデフォルト値より小さい値に設定する。若しくは、APのCWパラメータ決定部12が、NAV制御が行われていない衝突区間においてVoIPデータを送信する端末局のCWパラメータ(CWmin値、CWmax値又はその両方)をデフォルト値より小さい値に設定する。」(第17ページ第38行ないし第46行)

上記「ア」の「CW(コンテンションウィンドウ)」との記載によれば「CW」は,コンテンションウィンドウの略語であることは明らかである。そして,上記「イ」の「優先クラスに応じてそのCWパラメータ(CWmin値,CWmax値又はその両方)をデフォルト値より小さい値に設定する」という記載によれば,引用例2には,優先クラスに応じてそのコンテンションウィンドウパラメータを設定することが記載されているといえる。

(2)当審拒絶理由で引用された引用例3(特表2010-516092号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審で付与した。)。

「【0052】
PBS120は、競合回避型搬送波検知多重アクセス(CSMA/CA:carrier sense multiple access with collision avoidance)、エンハンスト分散チャネルアクセス(EDCA:enhanced distributed channel access)、スロット化アロハ(slotted Aloha)等のような種々のアクセス方式をサポートすることができる。CSMA/CA及びEDCAにおいて、無線装置は、システムアクセスに指定された時間周期中に、例えば競合アクセス期間720及び/又は管理タイムスロット732中に、クリアな無線チャネルをリッスンする(listen)。無線チャネルが特定のコンテンションウィンドウ(contention window)に関してクリアであることを検知される場合、無線装置は、バックオフ時間を待ち、無線チャネルが依然としてクリアである場合に伝送する。CSMA/CAは、無線装置に対して共通のコンテンションウィンドウ及び任意に選択されたバックオフタイムを使用するのに対して、EDCAは、異なる優先順位クラスの無線装置に関して無線チャネルへのアクセスを得る異なる確率を達成するために、異なるコンテンションウィンドウ及びバックオフ時間を使用する。スロット化アロハにおいては、無線装置は、タイムスロットの初めにフレームスターティング(frame starting)を伝送することができ、衝突が生じる、或いは肯定応答がフレームに関して受信されない場合にフレームを再送信することができる。これら種々のアクセス方式は、技術的に公知である。」

上記記載によれば,引用例3には「異なる優先順位クラスの無線装置に関して無線チャネルへのアクセスを得る異なる確率を達成するために、異なるコンテンションウィンドウ及びバックオフ時間を使用する。」ことが記載されている。

(3)上記「(1)」における引用例2の「コンテンションウィンドウ(CW)パラメータ」,及び上記「(2)」における引用例3の「コンテンションウィンドウ及びバックオフ時間」は,いずれもコンテンションウィンドウのパラメータを表しているといえる。そうすると,引用例2及び3には,次の周知技術が記載されていると認められる。

「優先クラスに応じて、異なるコンテンションウィンドウのパラメータを使用する。」

第6 対比及び判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と先願1発明を対比する。

ア 先願1発明の「無線通信システム」は,本願発明1の「無線通信システム」に相当する。

イ 先願1発明の「ランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズ」は,当該記載における「コンテンション」が競争を意味することは明らかであることを考慮すれば,本願発明1の「競争ウィンドウサイズ」に含まれる。

ウ 先願1発明の「ランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズを修正する方法」は,当該記載における「修正」が調整の一種といえることを考慮すれば,本願発明1の「競争ウィンドウサイズ(CWS)を調整する方法」に含まれる。

エ 先願1発明の「LBT」は,通信接続を行う際に,通信に使用するチャネルがアイドル状態かビジー状態かを判定する処理であることが技術常識であり,チャネル接続の過程の1つといえる。そうすると,先願1発明の「LBTを行う」ことは、本願発明1「チャネル接続過程を行う」ことに含まれる。

オ 先願1発明の「サブフレーム」は,通常1msの時間区間を表すことが技術常識であることを考慮すれば,先願1発明の「サブフレーム0,1,3,4,6,10,11」は,本願発明1の「複数の時間区間」に含まれる。

カ 先願1発明の「送信バースト」は本願発明1の「送信バースト」に相当し,先願1発明の「送信バーストを送信する」ことは,本願発明1の「送信バーストを送信する」ことに相当する。

キ 本願発明1の「基準時間区間」は「複数の時間区間の中の初期時間区間」である。そうすると,先願1発明の「サブフレーム0」は「送信バースト」が送信される「サブフレーム0,1,3,4,6,10,11」の中の1番最初のサブフレームであるから,先願1発明の「送信バースト」が送信される「サブフレーム0」は,本願発明1の「送信バーストに対する基準時間区間」に含まれ,「前記基準時間区間は、複数の時間区間の中の初期時間区間である」点で本願発明1と共通する。

ク 先願1発明の「PDSCHに関連したHARQフィードバックが提供され」ることについて,「HARQフィードバック」は、HARQにおけるACK,NACKに関する情報,すなわちHARQのACK情報を意味することが技術常識であり,また「提供され」ることは取得することに他ならない。そうすると,先願1発明の「PDSCHに関連したHARQフィードバックが提供され」ることは,本願発明1の「PDSCH(Physical Downlink Shared Channel)と関連したHARQ-ACK(Hybrid Automatic Repeat and reQuest Acknowedgment)情報を取得する」ことに相当する。

ケ 上記「キ」及び「ク」を総合すれば,先願1発明の「サブフレーム0の送信バーストがPDSCHで運ばれ,当該PDSCHに関連したHARQフィードバックが提供され」ることは,本願発明1の「送信バーストに対する基準時間区間に含まれるPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)と関連したHARQ-ACK(Hybrid Automatic Repeat and reQuest Acknowedgment)情報を取得する」ことに含まれる。

コ 上記「ウ」で説示したように,先願1発明の「修正」が調整の一種であるといえること,及び上記「ク」で説示したように,先願1発明の「HARQフィードバック」がHARQのACK情報を意味することを踏まえると,先願1発明の「サブフレーム0からのHARQフィードバック値に基づいて,サブフレーム6の送信バーストのLBT手順に対するランダムバックオフ・コンテンションウィンドウ・サイズを修正」することは、本願発明1の「HARQ-ACK情報に基づいてCWSを調整する」ことに含まれる。

サ 上記「キ」で説示したようにん,先願1発明の「サブフレーム0」が本願発明1の「基準時間区間」に含まれることを踏まえると、先願1発明の「サブフレーム0は,複数のOFDMシンボルを含む」ことは,本願発明1の「基準時間区間は、複数のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルを含」むことに含まれる。

したがって,上記「ア」ないし「サ」を総合すれば,本願発明1と先願1発明は,以下の点で一致し,また相違する。

<一致点>

「無線通信システムにおいて競争ウィンドウサイズ(CWS)を調整する方法であって、前記方法は、
チャネル接続過程を行うことと、
複数の時間区間で、前記チャネル接続過程に基づいて、送信バーストを送信することと、
前記送信バーストに対する基準時間区間に含まれるPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)と関連したHARQ-ACK(Hybrid Automatic Repeat and reQuest Acknowedgment)情報を取得することと、
HARQ-ACK情報に基づいて前記CWSを調整することと
を含み、
前記基準時間区間は、複数のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルを含み、
前記基準時間区間は、前記複数の時間区間の中の初期時間区間である、方法。」

<相違点1>

本願発明1において「前記CWSは、優先順位クラスによってそれぞれ調整され」るのに対して,先願1発明では,当該発明特定事項について特定されていない点。

<相違点2>

本願発明1において「前記CWSを調整することは、前記HARQ-ACK情報の少なくとも一つの値をカウントすることに基づいて前記CWSを調整することを含み」,「前記HARQ-ACK情報の前記少なくとも一つの値は、前記PDSCHがセルフキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかクロスキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかに基づいてカウントされる」のに対し,先願1発明では,当該発明特定事項について特定されていない点。

(2)相違点についての判断

上記相違点について検討するにあたり,事案に鑑みて,上記相違点2について先に検討する。

上記相違点2に係る「CWSを調整することは、HARQ-ACK情報の少なくとも一つの値をカウントすることに基づいて前記CWSを調整することを含み」,「前記HARQ-ACK情報の前記少なくとも一つの値は、PDSCHがセルフキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかクロスキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかに基づいてカウントされる」という発明特定事項は,当該技術分野における周知技術であるとも,慣用技術であるともいえない。

したがって,先願1発明において,上記相違点2に係る「CWSを調整することは、HARQ-ACK情報の少なくとも一つの値をカウントすることに基づいて前記CWSを調整することを含み」,「前記HARQ-ACK情報の前記少なくとも一つの値は、PDSCHがセルフキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかクロスキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかに基づいてカウントされる」ものとすることは,先願1発明に対する周知技術,慣用技術の付加,削除,又は転換等とはいえないから,上記相違点2に係る発明特定事項は,課題解決のための具体化手段における微差ではない。

よって,上記相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,先願1発明と同一であるとはいえない。

2 本願発明2ないし5について

本願発明2ないし5は,本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから,り,本願発明1と同じ理由により,先願1発明と同一であるとはいえない。

3 本願発明6ないし10について

本願発明6は,「方法」の発明である本願発明1を「物」の発明としたものであって,上記「1」の相違点2に対応する「HARQ-ACK情報の少なくとも一つの値をカウントすることに基づいてCWSを調整するようにさらに構成され」,「前記HARQ-ACK情報の前記少なくとも一つの値は、前記PDSCHがセルフキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかクロスキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかに基づいてカウントされる」という発明特定事項を有するものであるから,本願発明1と同様の理由により,先願1発明と同一であるとはいえない。

また,本願発明7ないし10は,本願発明6の発明特定事項を全て備えるものであるから,り,本願発明6と同じ理由により,先願1発明と同一であるとはいえない。

第7 原査定についての判断

令和4年2月21日にされた手続補正により,本願発明1ないし5は,いずれも「CWSを調整することは、HARQ-ACK情報の少なくとも一つの値をカウントすることに基づいて前記CWSを調整することを含み」,「前記HARQ-ACK情報の前記少なくとも一つの値は、PDSCHがセルフキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかクロスキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかに基づいてカウントされる」という発明特定事項を備え,また本願発明6ないし10は,いずれも「HARQ-ACK情報の少なくとも一つの値をカウントすることに基づいてCWSを調整するようにさらに構成され」,「前記HARQ-ACK情報の前記少なくとも一つの値は、前記PDSCHがセルフキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかクロスキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかに基づいてカウントされる」という発明特定事項を備えるものとなっている。

してみれば,上記「第6」の「1」ないし「3」で説示したとおり,本願発明1ないし10は,原査定で引用された上記先願1の明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由についての判断

令和4年2月21日にされた手続補正により,本願発明1ないし5は,いずれも「CWSを調整することは、HARQ-ACK情報の少なくとも一つの値をカウントすることに基づいて前記CWSを調整することを含み」,「前記HARQ-ACK情報の前記少なくとも一つの値は、PDSCHがセルフキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかクロスキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかに基づいてカウントされる」という発明特定事項を備え,また本願発明6ないし10は,いずれも「HARQ-ACK情報の少なくとも一つの値をカウントすることに基づいてCWSを調整するようにさらに構成され」,「前記HARQ-ACK情報の前記少なくとも一つの値は、前記PDSCHがセルフキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかクロスキャリアスケジューリングによってスケジュールされるかに基づいてカウントされる」という発明特定事項を備えるものとなっている。

してみれば,上記「第6」の「1」ないし「3」で説示したとおり,引用例2及び3に記載された周知技術を考慮しても,本願発明1ないし10は,当審拒絶理由で引用された上記先願1の明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。したがって,当審拒絶理由は解消した。

第9 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

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2020-017428

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