特許拒絶査定不服審判
2020-012783
遮熱材、遮熱組成物、遮熱膜および遮熱建材
- 審判番号
- 2020-012783
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-213489外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月11日
- 審決日
- 2021年01月26日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】コスモ石油株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人あしたば国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (A62C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-213489「遮熱材、遮熱組成物、遮熱膜および遮熱建材」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月10日出願公開、特開2018-68753、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月31日の出願であって、その手続は以下のとおりである。
令和2年4月15日付け(発送日:同年4月21日) :拒絶理由通知書
令和2年6月12日 :意見書
令和2年7月8日付け(発送日:同年7月14日) :拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年9月11日 :審判請求書
第2 原査定の拒絶の理由の概要
本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1~8
・引用文献等 1、2
<引用文献等一覧>
1.特開2016-124917号公報
2.特表2012-512917号公報
第3 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成28年10月31日の出願時の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】 揮発分が4~20質量%である石油コークス粉砕物からなることを特徴とする遮熱材。
【請求項2】 前記石油コークス粉砕物の硫黄分が0.1~12質量%である請求項1に記載の遮熱材。
【請求項3】 前記石油コークス粉砕物の真密度が1.2~2.0g/cm3である請求項1または請求項2に記載の遮熱材。
【請求項4】 前記石油コークス粉砕物が、明度が25以下、波長2000nmにおける反射率が10%以上のものである請求項1~請求項3のいずれかに記載の遮熱材。
【請求項5】 前記石油コークス粉砕物が、熱分解原料油の熱分解処理残渣の50~500℃乾燥処理物からなる請求項1~請求項4のいずれかに記載の遮熱材。
【請求項6】 請求項1~請求項5のいずれかに記載の遮熱材と、溶剤および樹脂から選ばれる少なくとも一種とを含むことを特徴とする遮熱組成物。
【請求項7】 請求項1~請求項5のいずれかに記載の遮熱材を含むことを特徴とする遮熱膜。
【請求項8】 請求項1~請求項5のいずれかに記載の遮熱材を含むことを特徴とする遮熱建材。」
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電機通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2016-124917号公報(以下「引用文献1」という。)には、「石油コークス微粉砕物」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0029】 本発明の石油コークス微粉砕物が、ゴム組成物のフィラーとして用いられる実施形態について説明する(以下、該実施形態を第一実施形態とも記載する。)。第一実施形態は、ゴムと、フィラーとして本発明の石油コークス微粉砕物と、を含有するゴム組成物である。」
イ 「【0047】 また、他には、本発明の石油コークス微粉砕物が、塗料、インク等の顔料として用いられる実施形態が挙げられ、このような実施形態は、顔料として、本発明の石油コークス微粉砕物を含有する塗料組成物又はインク組成物である。」
ウ 「【0052】
エ 上記ウ記載の【表2】には、実施例1として揮発分が12.54質量%の石油コークス微粉砕物が示されている。
上記アないしエの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
「揮発分が12.54質量%の石油コークス微粉砕物。」
2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2012-512917号公報(以下「引用文献2」という。)の段落【0006】、【0013】、【0016】ないし【0020】、【0066】ないし【0099】及び【0107】ないし【0113】には、「改善された断熱能力を備えた発泡性ビニル芳香族ポリマーの組成物、それを製造するプロセス、及びそれから得られる発泡品」に関して、以下の事項(引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
[引用文献2記載事項]
「発泡材に、砕粉として利用可能な石油由来の1000乃至1600℃の範囲の温度でか焼されたか焼コークス、または1800~2200℃でか焼後に結晶性針状構造を備えて製造される針状コークスを遮熱添加剤として使用し、断熱を増加すること。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、その機能、構成及び技術的意義からみて、引用発明の
「石油コークス微粉砕物」は本願発明1の「石油コークス粉砕物」に相当する。
また、引用発明の「揮発分が12.54質量%」と本願発明1の「揮発分が4~20質量%」とは、「揮発分が所定質量%」の限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。
[一致点]
「揮発分が所定質量%である石油コークス粉砕物。」
[相違点1]
「揮発分」について、本願発明が「揮発分が4~20質量%」であるのに対して、引用発明は「揮発分が12.54質量%」である点。
[相違点2]
本願発明1は、石油コークス粉砕物からなる遮熱材であるのに対して、引用発明は、石油コークス粉砕物そのものである点。
相違点について検討する。
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献2記載事項は「発泡材に、砕粉として利用可能な石油由来の1000乃至1600℃の範囲の温度でか焼されたか焼コークス、または1800~2200℃でか焼後に結晶性針状構造を備えて製造される針状コークスを遮熱添加剤として使用し、断熱を増加すること。」というものであるから、引用文献2記載事項が示唆するのは、石油コークス微粉砕物を断熱材において遮熱添加剤として使用することといえ、石油コークス微粉砕物を遮熱材に用いることで、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
そして、引用文献2記載事項に示されている「か焼コークス」は、石油コークスを1000乃至1600℃の範囲の温度でか焼して得られるものであり、「針状コークス」は、石油コークスを1800℃から2200℃でか焼後に結晶性針状構造を備えて製造されるものであることから、このような焼成処理を施すことなく得られる本願発明1に用いるコークスとは異なることは明らかである。
また、石油コークス微粉砕物を遮熱材に用いることが、本願の出願前の周知技術であったというべき証拠はなく、当業者が適宜なし得た設計的事項であるともいえない。
そうすると、引用発明において、引用文献2記載事項を参酌しても、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本願発明1は、揮発分を4~20%であることによって、近赤外線等を含む照射光を容易に反射して所望の遮熱効果を容易に発揮することができるという特有の作用効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本願発明2ないし8について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし8は、請求項1の記載を置換することなく直接又は間接的に引用するものであるから、本願発明2ないし8は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし8は、本願発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明1及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 小括
本願発明1ないし8は、原査定で引用された引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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