特許拒絶査定不服審判
2020-012645
タッチパネル用積層体、及び、折り畳み式画像表示装置
- 審判番号
- 2020-012645
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-143497外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月09日
- 審決日
- 2022年01月05日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2015-143497「タッチパネル用積層体,及び,折り畳み式画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開,特開2017- 33035,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,平成27年7月17日の出願であって,令和元年7月25日付けで拒絶理由通知がされ,同年11月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ,令和2年6月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年9月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,同年11月20日付けで前置報告がされ,令和3年7月30日に審判請求人から前置報告に対する上申がされ,同年9月22日付けで当審より拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)がされ,同年10月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願請求項1~9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」~「本願発明9」という。)は,令和3年10月11日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
タッチパネルの表面材として用いられ,基材フィルムと少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体であって,
前記基材フィルムの前記樹脂硬化層側界面から前記基材フィルムの厚み方向に300nmまでの範囲で溶出性層が形成されており,
前記樹脂硬化層中に,前記溶出性層から溶出した前記基材フィルムを構成する材料成分が含有されており,
前記基材フィルムは,ポリイミドフィルム,又は,アラミドフィルムであり,
前記樹脂硬化層は,前記基材フィルム側に設けられた第一ハードコート層と,前記第一ハードコート層の前記基材フィルム側と反対側面上に設けられた第二ハードコート層とを有し,
前記第一ハードコート層の厚みが2.0μm以上5.0μm以下であり,前記第二ハードコート層の厚みが0.5μm以上4.0μm以下であり,
前記第一ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが500MPa以上1000MPa未満であり,前記第二ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが350MPa以上600MPa以下であり,
前記樹脂硬化層のJIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(750g荷重)の値が5H以上であり,
前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有さない場合には,全光線透過率が85%以上であり,前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有する場合には,全光線透過率が80%以上であり,
3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を,前記タッチパネル用積層体の両面でそれぞれ10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないことを特徴とするタッチパネル用積層体。」
なお,本願発明2~8は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明9は,本願発明1のタッチパネル用積層体を用いてなる折り畳み式画像表示装置の発明である。
第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014-240955号公報)には,次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下,同様である。)。
「【発明を実施するための形態】
【0018】
[1.ハードコートフィルムの概要]
本発明のハードコートフィルムは,透明フィルムと,該透明フィルム上に設けられたハードコート層と,を有する。また,ハードコート層の表面自由エネルギーは30mN/m以上である。さらに,ハードコートフィルムは,透明フィルムの成分とハードコート層の成分が混在している混在領域を有する。混在領域の屈折率はハードコートフィルムの厚み方向に連続的に変化し,式(1)に規定する屈折率変化傾斜a(μm-1)が0.003≦a≦0.018を満たす。
a=|nA-nB|/L・・・(1)
式(1)中,nAは上記ハードコート層固有の屈折率,nBは上記透明フィルム固有の屈折率,Lは上記混在領域の厚み(μm)を表す。
【0019】
上記混在領域は,ハードコート層と透明フィルムとの境界又はその近傍からハードコート層の厚み方向中途部にわたって形成されている。
【0020】
上記混在領域の一方の端部は,ハードコート層の厚み方向中途部に存在し得る。上記一方の端部は,例えば,ハードコート層と透明フィルムとの境界から,ハードコート層の厚みに対して少なくとも40%以上ハードコート層の厚み方向に上記境界から離れており,好ましくは60%以上であり,より好ましくは80%以上である。このような範囲内であると,本願発明の効果はより確実に奏される。
【0021】
上記混在領域の他方の端部は,
(1)ハードコート層と透明フィルムとの境界(すなわち,ハードコート層形成材料を塗布した時点における透明フィルム表面),
(2)上記境界より透明フィルム側,又は
(3)上記境界よりハードコート層側,の何れにあってもよい。
上記他方の端部は,界面を形成していてもよい。
・・・
【0024】
図2は,別の実施形態に係るハードコートフィルムを示す。本実施形態においては,混在領域は,透明フィルム2のハードコート層3に近接する部分からハードコート層3の厚み方向中途部にわたって形成されている。すなわち,混在領域は,混在領域31と図中に符号21で示す領域とを含む。界面が存在する場合,当該界面5は,透明フィルム2のハードコート層3に近接する部分に存在し得る。以下,混在領域31を第1領域と称する場合があり,図中に符号21で示す領域を第2領域と称する場合がある。なお,本明細書において用語「第1領域」および「第2領域」は,図2に係る実施形態を説明する場合にのみ用いることとする。
・・・
【0060】
ハードコート層は,例えば,溶媒と硬化型化合物とを含むハードコート層形成材料を上記透明フィルム上に塗工し且つ硬化させることによって得られた薄い膜から形成される。
・・・
【0066】
上記硬化型化合物は,十分な強度及び透明性を有する膜を形成できるものであれば良い。硬化型化合物としては,例えば,熱により硬化する樹脂モノマー又はオリゴマー,電離放射線により硬化する樹脂モノマー又はオリゴマーなどが挙げられる。電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーを用いることができる。この場合,加工性の良さ及び透明フィルムに熱損傷を与え難いなどの有利な効果を奏する。
・・・
【0074】
[4.透明フィルム]
透明フィルムは,少なくとも可視光の光線透過率に優れ,透明性に優れるものであれば良い。透明フィルムの可視光に於ける光線透過率は,好ましくは80%以上,より好ましくは90%以上である。ただし,光線透過率は,フィルム厚100μmで,分光光度計(日立製作所製,製品名「U-4100型」)で測定されたスペクトルデータを基に視感度補正を行ったY値をいう。透明フィルムのヘイズ値は,好ましくは3%以下,より好ましくは1%以下である。ただし,ヘイズ値は,JIS-K7105に準じて測定された値をいう。
【0075】
上記透明フィルムとしては,透明ポリマーを製膜したプラスチックフィルムなどが挙げられる。透明ポリマーとしては,例えば,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース,トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;カーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー,芳香族環を有するアクリル樹脂,ラクトン変性アクリル樹脂などのアクリル系樹脂;ポリスチレン,アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン,ポリプロピレン,環状構造又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン,エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;これらを混合したブレンドポリマー;などが挙げられる。好ましくは,透明フィルムとして,トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーを含む形成材料を製膜したフィルム,又は,アクリル系樹脂フィルムが用いられ,より好ましくは,セルロース系ポリマーフィルムが用いられる。
・・・
【0095】
[8.ハードコートフィルムの用途]
ハードコートフィルムは,擦傷を防止したい部分に設けるための部材として使用できる。代表的には,ハードコートフィルムは,液晶表示装置などの画像表示装置の画面の保護部材,タッチパネルの表面保護部材,計器類のカバー部材,光学レンズ等として使用できる。ハードコートフィルムを画像表示装置に使用する場合,ハードコートフィルムは,それ単独で画像表示装置の画面に貼付されるか,或いは,画面に組み込まれた光学フィルムに貼付される。また,ハードコートフィルムは,各種光学フィルムに積層することにより,ハードコート積層体の態様で画像表示装置に組み込まれる。本発明のハードコートフィルムは,特に液晶表示装置などのディスプレイの前面に用いられるクリアハードコートフィルムとして有用である。」
「【図2】
[図:0001381345000001.jpg]
」
以上によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「タッチパネルの表面保護部材として用いられ,透明フィルムと,ハードコート層とを有するハードコートフィルムであって,
ハードコート層と透明フィルムとの境界近傍からハードコート層の厚み方向中途部にわたって,透明フィルムの成分とハードコート層の成分が混在している混在領域が形成されており,
上記混在領域の一方の端部は,ハードコート層の厚み方向中途部に存在し,
上記混在領域の他方の端部は,ハードコート層と透明フィルムとの境界より透明フィルム側にあり,
前記ハードコート層は,熱により硬化する樹脂モノマーからなる硬化型化合物を含み,
前記透明フィルムは,イミド系ポリマーからなるハードコートフィルム。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献2(特開2013-234383号公報)には,次の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが,摺動屈曲試験(IPC)においておよそ現実的にはあり得ないような屈曲回数(例えば10万回)に耐えるフレキシブルプリント配線板を使用した小型電子機器,例えば折りたたみ型携帯電話やスライド式携帯電話であっても,現実の製品においては,フレキシブルプリント配線板が破断するという故障が,なくなってはいない。膨大な屈曲回数に耐えられるFPCを使用してもなお,現実の製品でこのような故障が生じる原因として,高密度化による部品の接触,他の部品によるFPCの挟み込み,尖った部品の先端による亀裂,設計外の発熱や化学反応による絶縁材の劣化,など,無数の原因が検討され,対策がなされてきた。」
「【0059】
屈曲試験は摺動速度毎分120回とし,室温環境で行った。屈曲時に銅箔にかかる歪を揃えるため,曲げ半径は,銅箔厚みが18μmの場合は1.5mm,12μmの場合は1.0mm,9μmの場合は0.75mmとし,それぞれ破断までの回数で評価した。試料に通電し,導通遮断によって破断を検出した。連続屈曲では,破断回数が10万回未満であれば×,10万回以上30万回未満であれば○,30万回以上であるものを◎とした。また間歇屈曲では,5時間間隔で連続1000回の屈曲を行い,破断回数が5万回未満であれば×,5万回以上10万回未満であれば○,10万回以上であれば◎とした。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特表2015-508345号公報)には,次の事項が記載されている。
「【請求項1】
ジアンヒドリド類とジアミン類との重合,またはジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み,黄色度が5以下であり,UV分光計で透過度を測定したときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルムと;
前記ポリイミド系フィルムの一面上に形成されたハードコート層と;
前記ポリイミドフィルムの残りの一面上に形成された透明電極層と;を含んでなることを特徴とする,プラスチック基板。
・・・
【請求項14】
前記ポリイミド系フィルムは,
2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(FDA),4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(TDA),9,9-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,6,7-キサンテンテトラカルボキシルジアンヒドリド(6FCDA)および4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(HBDA)の中から選ばれた少なくとも1種,並びにピロメリト酸二無水物(PMDA),ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびオキシジフタル酸二無水物(ODPA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアンヒドリドに由来する単位構造と,2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]プロパン(6HMDA),2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2-TFDB),3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(3,3’-TFDB),4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA),ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3DDS),ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4DDS),1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133),1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-134),2,2’-ビス[3(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3-BDAF),2,2’-ビス[4(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4-BDAF),2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3,3’-6F),2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4,4’-6F)およびオキシジアニリン(ODA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアミンに由来する単位構造とを含むポリイミド系樹脂,または,
前記芳香族ジアンヒドリド由来の単位構造とテレフタロイルクロリド(p-Terephthaloyl chloride,TPC),テレフタル酸(Terephthalic acid),イソフタロイルジクロリド(Iso-phthaloyl dichloride)および4,4’-ベンゾイルクロリド(4,4’-benzoyl chloride)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボニル化合物に由来する単位構造と前記芳香族ジアミン由来の単位構造とを含むポリイミド系樹脂を含むものであることを特徴とする,請求項1に記載のプラスチック基板。
・・・
【請求項18】
請求項1のプラスチック基板を含むタッチスクリーンパネル。」
「【発明の効果】
【0036】
本発明は,透明性を確保し,ITO工程中にも黄変などの変形がなく,薄い厚さでも高硬度特性を有し,低い面抵抗の実現が可能であって,例えばタッチスクリーンパネルへの適用の際に構造の簡素化を実現することが可能なプラスチック基板を提供する。」
4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2015-69197号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0018】
ここで,従来のハードコートフィルムは,その表面硬度を高めるべく,基材の少なくとも片面に,相対的に表面硬度の低いハードコート層を設け,そのハードコート層の表面に,相対的に高硬度のハードコート層を設けたものが多い。本発明では,相対的に高硬度のハードコート層(A1)の表面に,相対的に低硬度のハードコート層(A2)を設けることによって,高硬度で優れた屈曲性を備えたハードコートフィルムを見出したものである。」
「【0039】
前記第一のハードコート層(A1)及び第二のハードコート層(A2)のマルテンス硬度を調整する方法としては,前記ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等とともに,前記ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート,ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート,アクリルアクリレート,ウレタン(メタ)アクリレート等を組み合わせ使用する方法が挙げられる。」
5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開2015-127124号公報)には,次の事項が記載されている。
「【背景技術】
【0002】
電子デバイス(device)用のフレキシブル基板として,ガスバリアフィルムが用いられている。ガスバリアフィルムは,基板上に金属酸化物等からなるガスバリア層と有機層(バインダ層)とを交互に積層したものである。ガスバリアフィルムの用途は,従来,食品等の包装であったが,近年,電子デバイスに用いられるようになってきている。このため,水分や酸素等のガス分子に対するガスバリア性能及び耐熱性の飛躍的な向上が求められていた。
【0003】
ガスバリアフィルムとしては,例えば特許文献1に開示されるように,ポリイミド(PI)を有機層(バインダ(binder)層)として用いたガスバリアフィルムが知られている。ポリイミドは,水分や酸素等のガス分子に対するガスバリア性能及び耐熱性に優れているので,ガスバリアフィルムの有機層として好適な材料の1つである。」
「【0035】
(1.ガスバリアフィルムの構成)
まず,図1に基づいて,本実施形態に係るガスバリアフィルム10の構成について説明する。ガスバリアフィルム10は,基板100上に有機層11及びガスバリア層12を交互に積層したものである。積層数(有機層11及びガスバリア層12からなるユニット10aの数)は特に制限はない。なお,図1では,基板100上に有機層11,ガスバリア層12をこの順番で形成しているが,図2に示すように,積層の順番は逆でも構わない。」
「【0141】
(屈曲性測定)
自動マンドレル試験機を用いて,半径1,3,5,10,20mmのそれぞれの心棒を支えに10万回屈曲した後,屈曲付近でガスバリア層の破壊がないか光学顕微鏡で観察した。破壊がなかった心棒の半径を破壊限界とした。評価結果を表1にまとめて示す。」
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「表面保護部材」,「透明フィルム」は,それぞれ,本願発明1の「表面材」,「基材フィルム」に相当する。
また,引用発明1の「ハードコート層」は,「熱により硬化する樹脂モノマーからなる硬化型化合物を含」んでいるから,本願発明1の「少なくとも1層の樹脂硬化層」に相当する。
以上から,引用発明1の「タッチパネルの表面保護部材として用いられ,透明フィルムと,ハードコート層とを有するハードコートフィルム」は,本願発明1の「タッチパネルの表面材として用いられ,基材フィルムと少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体」に相当する。
イ 引用発明1の「ハードコート層と透明フィルムとの境界近傍からハードコート層の厚み方向中途部にわたって,透明フィルムの成分とハードコート層の成分が混在している混在領域」は,透明性フィルムのハードコート層側界面から,ハードコート層の成分が透明フィルムの厚み方向に溶出している層であるといえるから,引用発明1と本願発明1とは,「前記基材フィルムの前記樹脂硬化層側界面から前記基材フィルムの厚み方向に」「溶出性層が形成されて」いる点で共通する。
また,引用発明1において,「上記混在領域の一方の端部は,ハードコート層の厚み方向中途部に存在し」ており,ハードコート層中に,混在領域から溶出した透明フィルムを構成する材料成分が含有されているといえるから,引用発明1と本願発明1とは,「前記樹脂硬化層中に,前記溶出性層から溶出した前記基材フィルムを構成する材料成分が含有されて」いる点で共通する。
ウ 引用発明1の「前記透明フィルムは,イミド系ポリマーからなる」ものであるから,ポリイミドフィルムである。
そうすると,引用発明1の「透明フィルム」と,本願発明1の「基材フィルム」とは,「ポリイミドフィルム」である点で共通する。
エ 以上から,本願発明1と引用発明1の一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「タッチパネルの表面材として用いられ,基材フィルムと少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体であって,
前記基材フィルムの前記樹脂硬化層側界面から前記基材フィルムの厚み方向に溶出性層が形成されており,
前記樹脂硬化層中に,前記溶出性層から溶出した前記基材フィルムを構成する材料成分が含有されており,
前記基材フィルムは,ポリイミドフィルムであるタッチパネル用積層体。」
<相違点>
相違点1:「樹脂硬化層」について,本願発明1は,「前記基材フィルム側に設けられた第一ハードコート層と,前記第一ハードコート層の前記基材フィルム側と反対側面上に設けられた第二ハードコート層とを有し,前記第一ハードコート層の厚みが2.0μm以上5.0μm以下であり,前記第二ハードコート層の厚みが0.5μm以上4.0μm以下であ」るのに対し,引用発明1は,そのような構成を有していない点。
相違点2:「溶出性層」について,本願発明1は,「前記基材フィルムの前記樹脂硬化層側界面から前記基材フィルムの厚み方向に300nmまでの範囲で」形成されているのに対し,引用発明1は,そのような構成を有しているか不明である点。
相違点3:本願発明1は,「前記第一ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが500MPa以上1000MPa未満であり,前記第二ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが350MPa以上600MPa以下であ」るのに対し,引用発明1は,そのような構成を有しているか不明である点。
相違点4:本願発明1は,「前記樹脂硬化層のJIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(750g荷重)の値が5H以上であ」るのに対し,引用発明1は,そのような構成を備えているか不明である点。
相違点5:本願発明1は,「前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有さない場合には,全光線透過率が85%以上であり,前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有する場合には,全光線透過率が80%以上であ」るのに対し,引用発明1は,そのような構成を有しているか不明である点。
相違点6:本願発明1は,「3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を,前記タッチパネル用積層体の両面でそれぞれ10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」のに対し,引用発明1は,そのような構成を有しているか不明である点。
(2)判断
事案に鑑み相違点6から検討する。
本願発明1の「3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を,前記タッチパネル用積層体の両面でそれぞれ10万回繰り返し行」うテスト(以下,「本願屈曲テスト」という。)は,引用文献2~5のいずれにも記載も示唆もされていない。また,本願屈曲テストが,本願出願前において,周知であったともいえない。
そうすると,引用発明1において,本願屈曲テストを採用し,相違点6に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
また,仮に,引用発明1において,本願屈曲テストを採用したとしても,「ハードコートフィルム」に割れ又は破断が生じないとはいえない。
したがって,その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明1,引用文献3,4に記載された事項及び周知技術(引用文献2,5)に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2~9について
本願発明2~8は,本願発明1を減縮した発明であり,また,本願発明9は,本願発明1のタッチパネル用積層体を用いてなる折り畳み式画像表示装置の発明であり,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記1で検討したのと同様の理由により,引用発明1,引用文献3,4に記載された事項及び周知技術(引用文献2,5)に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定(令和2年6月4日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。
(1)理由1(進歩性)
本願の請求項1~11係る発明は,引用発明1,引用文献3,4に記載された事項及び周知技術(引用文献2,5)に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 しかしながら,令和3年10月11日の手続補正により補正された請求項1~9は,前記相違点6に係る本願発明1の構成を有するものであるから,前記第4で検討したのと同様の理由により,引用発明1,引用文献3,4に記載された事項及び周知技術(引用文献2,5)に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第1号)について
当審では,
「1 本願明細書の発明の詳細な説明の【0008】によれば,本願発明が解決すべき課題は,「優れた硬度,透明性及び耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用積層体,該タッチパネル用積層体を用いてなる折り畳み式タッチパネルを提供すること」である。
ここで,請求項1~3に係る発明は,参考例5のタッチパネル用積層体を含んでいるから,必ずしも上記課題を解決できるとはいえない。
また,請求項1~10に係る発明は,「3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験」を「タッチパネル用積層体」の一方の面のみに行った場合に,「割れ又は破断が生じない」もの(参考例1~4)を含んでいるから,必ずしも上記課題を解決できるとはいえない。
さらに,請求項1~10に係る発明は,任意の硬度及び透明性を有するタッチパネル用積層体を含んでいるから,必ずしも上記課題を解決できるとはいえない。
2 請求項1~10には,樹脂硬化層の具体的な層構造,膜厚及び特性(第一及び第二ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さ)が特定されておらず,出願時の技術常識に照らしても,請求項1~10に係る発明の範囲にまで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
3 したがって,請求項1~10に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものではない。」
との拒絶の理由を通知したが,令和3年10月11日付けの手続補正によって,請求項1には,「前記樹脂硬化層は,前記基材フィルム側に設けられた第一ハードコート層と,前記第一ハードコート層の前記基材フィルム側と反対側面上に設けられた第二ハードコート層とを有し,前記第一ハードコート層の厚みが2.0μm以上5.0μm以下であり,前記第二ハードコート層の厚みが0.5μm以上4.0μm以下であり,前記第一ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが500MPa以上1000MPa未満であり,前記第二ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが350MPa以上600MPa以下であり,前記樹脂硬化層のJIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(750g荷重)の値が5H以上であり,前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有さない場合には,全光線透過率が85%以上であり,前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有する場合には,全光線透過率が80%以上であり」との事項が特定されるとともに,「3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」との事項は,「3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を,前記タッチパネル用積層体の両面でそれぞれ10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」と補正されたから(当審注:下線は補正箇所を示すため合議体が付与した。),この拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおりであるから,原査定の理由及び当審拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-012645