審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2020-012644

タッチパネル用積層体、折り畳み式画像表示装置

審判番号
2020-012644
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-143494外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年09月09日
審決日
2022年01月05日
公報発行日
2022年02月25日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2015-143494「タッチパネル用積層体,折り畳み式画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開,特開2017- 33033,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 16項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は,平成27年7月17日の出願であって,令和元年7月25日付けで拒絶理由通知がされ,同年11月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ,令和2年6月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年9月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,同年11月20日付けで前置報告がされ,令和3年7月30日に審判請求人から前置報告に対する上申がされ,同年9月22日付けで当審より拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)がされ,同年10月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明

本願請求項1~9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」~「本願発明9」という。)は,令和3年10月11日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
タッチパネルの表面材として用いられ,基材フィルムと少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体であって,
前記基材フィルムは,ポリイミドフィルム,又は,アラミドフィルムであり,
前記樹脂硬化層は,前記基材フィルム側に設けられた第一ハードコート層と,前記第一ハードコート層の前記基材フィルム側と反対側面上に設けられた第二ハードコート層とを有し,
前記第一ハードコート層の厚みが2.0μm以上5.0μm以下であり,前記第二ハードコート層の厚みが0.5μm以上4.0μm以下であり,
前記第一ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが500MPa以上1000MPa未満であり,前記第二ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが350MPa以上600MPa以下であり,
前記樹脂硬化層のJIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(750g荷重)の値が5H以上であり,
前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有さない場合には,全光線透過率が85%以上であり,前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有する場合には,全光線透過率が80%以上であり,
3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を,前記タッチパネル用積層体の両面でそれぞれ10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないことを特徴とするタッチパネル用積層体。」

なお,本願発明2~8は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明9は,本願発明1のタッチパネル用積層体を用いてなる折り畳み式画像表示装置の発明である。

第3 引用文献,引用発明等

1 引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(米国特許出願公開第2015/0132552号明細書)には,次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下,同様である。)。なお,引用文献1の記載事項は,当審の訳文で示す。

「技術的課題
[0008] 上記の課題を解決するために,本発明は,高硬度を示しながらも,カールや撓み,又はクラックの発生がないハードコーティングフィルムを提供する。
技術的解決策
[0009] 上記の問題を解決するために,本発明は,支持基材と,前記支持基材の少なくとも一面に形成されるハードコーティング層とを含み,前記ハードコーティング層は,3~6官能性アクリレート系単量体の光硬化性架橋共重合体と,前記光硬化性架橋共重合体内に分散している無機微粒子とを含む,ハードコーティングフィルムを提供する。
続きを表示(全14行)
・・・
[0017] 本発明の一実施形態にかかるハードコーティングフィルムは,支持基材と,前記支持基材の少なくとも一面に形成されるハードコーティング層とを含み,前記ハードコーティング層は,3~6官能性アクリレート系単量体の光硬化性架橋共重合体と,前記光硬化性架橋共重合体内に分散している無機微粒子とを含む。
[0018] 本発明のハードコーティングフィルムにおいて,前記ハードコーティング層が形成される支持基材は,通常使用される透明性プラスチック樹脂であれば,延伸フィルムまたは非延伸フィルムなどの支持基材の製造方法や材料に特別な制限なく使用することができる。本発明の一実施形態によれば,支持基板は,ポリエチレンテレフタレート(PET),環状オレフィン共重合体(COC),ポリアクリレート(PAC),ポリカーボネート(PC),ポリエチレン(PE),ポリメタクリル酸メチル(PMMA),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリエーテルイミド(PEI),ポリイミド(PI),トリアセチルセルロース(TAC),又はメタクリル酸メチル(MMA)などを含むことができる。前記支持基材は,単層又は必要に応じて互いに同一または異なる物質からなる2以上の基材を含む多層構造であってよく,特に制限されない。
・・・
[0045] 完全に硬化したハードコーティング層は,約50μm以上,例えば,約50~約150μm,又は約70~約100μmの厚さを有する。本発明によれば,上述したハードコーティング層を備えているが,カールやクラックの発生しない高硬度ハードコーティングフィルムを提供することができる。
・・・
[0059] 上述のように,本発明のハードコーティングフィルムは,多様な分野において活用が可能である。例えば,本発明のハードコーティングフィルムは,移動端末,スマートフォン又はタブレットPCのタッチパネル,およびディスプレイ又はデバイスのカバーに用いられる。
・・・
[0079] 6)円筒形屈曲テスト
[0080] 各ハードコーティングフィルムを,直径3cmの円筒形マンドレルに挟んで巻いた後,クラックの発生の有無を判断した。クラックが発生しない場合をOK,クラックが発生した場合をXと評価した。」

以上によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「タッチパネルに用いられ,支持基材と,前記支持基材の少なくとも一面に形成されるハードコーティング層とを含むハードコーティングフィルムであって,
前記ハードコーティング層は,3~6官能性アクリレート系単量体の光硬化性架橋共重合体と,前記光硬化性架橋共重合体内に分散している無機微粒子とを含み,約50μm以上の厚さを有し,
前記支持基材は,ポリイミドフィルムであり,
ハードコーティングフィルムを,直径3cmの円筒形マンドレルに挟んで巻く円筒形屈曲テストでクラックが発生しない,
ハードコーティングフィルム。」

2 引用文献2について

原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献2(特開2013-234383号公報)には,次の事項が記載されている。

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが,摺動屈曲試験(IPC)においておよそ現実的にはあり得ないような屈曲回数(例えば10万回)に耐えるフレキシブルプリント配線板を使用した小型電子機器,例えば折りたたみ型携帯電話やスライド式携帯電話であっても,現実の製品においては,フレキシブルプリント配線板が破断するという故障が,なくなってはいない。膨大な屈曲回数に耐えられるFPCを使用してもなお,現実の製品でこのような故障が生じる原因として,高密度化による部品の接触,他の部品によるFPCの挟み込み,尖った部品の先端による亀裂,設計外の発熱や化学反応による絶縁材の劣化,など,無数の原因が検討され,対策がなされてきた。」
「【0059】
屈曲試験は摺動速度毎分120回とし,室温環境で行った。屈曲時に銅箔にかかる歪を揃えるため,曲げ半径は,銅箔厚みが18μmの場合は1.5mm,12μmの場合は1.0mm,9μmの場合は0.75mmとし,それぞれ破断までの回数で評価した。試料に通電し,導通遮断によって破断を検出した。連続屈曲では,破断回数が10万回未満であれば×,10万回以上30万回未満であれば○,30万回以上であるものを◎とした。また間歇屈曲では,5時間間隔で連続1000回の屈曲を行い,破断回数が5万回未満であれば×,5万回以上10万回未満であれば○,10万回以上であれば◎とした。」

3 引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特表2015-508345号公報)には,次の事項が記載されている。

「【請求項1】
ジアンヒドリド類とジアミン類との重合,またはジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み,黄色度が5以下であり,UV分光計で透過度を測定したときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルムと;
前記ポリイミド系フィルムの一面上に形成されたハードコート層と;
前記ポリイミドフィルムの残りの一面上に形成された透明電極層と;を含んでなることを特徴とする,プラスチック基板。
続きを表示(全12行)
・・・
【請求項14】
前記ポリイミド系フィルムは,
2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(FDA),4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(TDA),9,9-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,6,7-キサンテンテトラカルボキシルジアンヒドリド(6FCDA)および4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(HBDA)の中から選ばれた少なくとも1種,並びにピロメリト酸二無水物(PMDA),ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびオキシジフタル酸二無水物(ODPA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアンヒドリドに由来する単位構造と,2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]プロパン(6HMDA),2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2-TFDB),3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(3,3’-TFDB),4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA),ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3DDS),ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4DDS),1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133),1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-134),2,2’-ビス[3(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3-BDAF),2,2’-ビス[4(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4-BDAF),2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3,3’-6F),2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4,4’-6F)およびオキシジアニリン(ODA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアミンに由来する単位構造とを含むポリイミド系樹脂,または,
前記芳香族ジアンヒドリド由来の単位構造とテレフタロイルクロリド(p-Terephthaloyl chloride,TPC),テレフタル酸(Terephthalic acid),イソフタロイルジクロリド(Iso-phthaloyl dichloride)および4,4’-ベンゾイルクロリド(4,4’-benzoyl chloride)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボニル化合物に由来する単位構造と前記芳香族ジアミン由来の単位構造とを含むポリイミド系樹脂を含むものであることを特徴とする,請求項1に記載のプラスチック基板。
・・・
【請求項18】
請求項1のプラスチック基板を含むタッチスクリーンパネル。」
「【発明の効果】
【0036】
本発明は,透明性を確保し,ITO工程中にも黄変などの変形がなく,薄い厚さでも高硬度特性を有し,低い面抵抗の実現が可能であって,例えばタッチスクリーンパネルへの適用の際に構造の簡素化を実現することが可能なプラスチック基板を提供する。」

4 引用文献4について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2015-69197号公報)には,次の事項が記載されている。

「【0018】
ここで,従来のハードコートフィルムは,その表面硬度を高めるべく,基材の少なくとも片面に,相対的に表面硬度の低いハードコート層を設け,そのハードコート層の表面に,相対的に高硬度のハードコート層を設けたものが多い。本発明では,相対的に高硬度のハードコート層(A1)の表面に,相対的に低硬度のハードコート層(A2)を設けることによって,高硬度で優れた屈曲性を備えたハードコートフィルムを見出したものである。」
「【0039】
前記第一のハードコート層(A1)及び第二のハードコート層(A2)のマルテンス硬度を調整する方法としては,前記ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等とともに,前記ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート,ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート,アクリルアクリレート,ウレタン(メタ)アクリレート等を組み合わせ使用する方法が挙げられる。」

5 引用文献5について

原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開2015-127124号公報)には,次の事項が記載されている。

「【背景技術】
【0002】
電子デバイス(device)用のフレキシブル基板として,ガスバリアフィルムが用いられている。ガスバリアフィルムは,基板上に金属酸化物等からなるガスバリア層と有機層(バインダ層)とを交互に積層したものである。ガスバリアフィルムの用途は,従来,食品等の包装であったが,近年,電子デバイスに用いられるようになってきている。このため,水分や酸素等のガス分子に対するガスバリア性能及び耐熱性の飛躍的な向上が求められていた。
【0003】
ガスバリアフィルムとしては,例えば特許文献1に開示されるように,ポリイミド(PI)を有機層(バインダ(binder)層)として用いたガスバリアフィルムが知られている。ポリイミドは,水分や酸素等のガス分子に対するガスバリア性能及び耐熱性に優れているので,ガスバリアフィルムの有機層として好適な材料の1つである。」
「【0035】
(1.ガスバリアフィルムの構成)
まず,図1に基づいて,本実施形態に係るガスバリアフィルム10の構成について説明する。ガスバリアフィルム10は,基板100上に有機層11及びガスバリア層12を交互に積層したものである。積層数(有機層11及びガスバリア層12からなるユニット10aの数)は特に制限はない。なお,図1では,基板100上に有機層11,ガスバリア層12をこの順番で形成しているが,図2に示すように,積層の順番は逆でも構わない。」
「【0141】
(屈曲性測定)
自動マンドレル試験機を用いて,半径1,3,5,10,20mmのそれぞれの心棒を支えに10万回屈曲した後,屈曲付近でガスバリア層の破壊がないか光学顕微鏡で観察した。破壊がなかった心棒の半径を破壊限界とした。評価結果を表1にまとめて示す。」

6 引用文献6について

原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献6(特開2015-112799号公報)には,次の事項が記載されている。

「【請求項1】
基材フィルムの一方の面上にハードコート層を有し,前記基材フィルムの他方の面上に樹脂硬化層を有する積層体であって,
直径30mmの円柱に巻き付けたときにクラックが生じないものであり,
ナノインデンテーション法により,圧子を500nm押込んだときの硬度が0.5~1.5GPaである,及び/又は,超微小硬度計を用いた500mN荷重における硬度が0.29~1.10GPaである
ことを特徴とする積層体。」
「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は,基材フィルムの一方の面上にハードコート層を有し,上記基材フィルムの他方の面上に樹脂硬化層を有する積層体であって,直径30mmの円柱に巻き付けたときにクラックが生じないものであり,ナノインデンテーション法により,圧子を500nm押込んだときの硬度が0.5~1.5GPaである,及び/又は,超微小硬度計を用いた500mN荷重における硬度が0.29~1.10GPaであることを特徴とする積層体である。」
「【0107】
(ナノインデンテーション硬度)
HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用い,Berkovich圧子(三角錐)を,積層体のハードコート層表面から500nm押し込み,一定保持して残留応力の緩和を行った後,除荷させて,緩和後のmax荷重を計測し,該max荷重Pmax(μN)と深さ500nmのくぼみ面積A(nm2)とを用い,Pmax/Aを算出し,ナノインデンテーション硬度を測定した。なお,表1においては,「硬度1」と表記した。」

第4 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「タッチパネルに用いられ,支持基材と,前記支持基材の少なくとも一面に形成されるハードコーティング層とを含むハードコーティングフィルム」は,本願発明1と同様に,タッチパネルの表面材として用いられるタッチパネル用積層体であるといえる。

また,引用発明1の「ハードコーティングフィルム」に含まれる「支持基材」は,フィルムであるといえるから,本願発明1の「基材フィルム」に相当する。

さらに,引用発明1の「前記支持基材の少なくとも一面に形成されるハードコーティング層」は,「3~6官能性アクリレート系単量体の光硬化性架橋共重合体と,前記光硬化性架橋共重合体内に分散している無機微粒子とを含」んでいるから,樹脂硬化層であるといえる。

以上から,引用発明1の「タッチパネルに用いられ,支持基材と,前記支持基材の少なくとも一面に形成されるハードコーティング層とを含むハードコーティングフィルム」は,本願発明1の「タッチパネルの表面材として用いられ,基材フィルムと少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体」に相当する。

イ 引用発明1の「支持基材」と,本願発明1の「基材フィルム」とは,いずれも「ポリイミドフィルム」である点で共通する。

ウ 以上から,本願発明1と引用発明1の一致点と相違点は以下のとおりとなる。

<一致点>

「タッチパネルの表面材として用いられ,基材フィルムと少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体であって,
前記基材フィルムは,ポリイミドフィルムであるタッチパネル用積層体。」

<相違点>

相違点1:「樹脂硬化層」について,本願発明1は,「前記基材フィルム側に設けられた第一ハードコート層と,前記第一ハードコート層の前記基材フィルム側と反対側面上に設けられた第二ハードコート層とを有し,前記第一ハードコート層の厚みが2.0μm以上5.0μm以下であり,前記第二ハードコート層の厚みが0.5μm以上4.0μm以下であ」るのに対し,引用発明1は,そのような構成を有していない点。

相違点2:本願発明1は,「前記第一ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが500MPa以上1000MPa未満であり,前記第二ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが350MPa以上600MPa以下であ」るのに対し,引用発明1は,そのような構成を有しているか不明である点。
相違点3:本願発明1は,「前記樹脂硬化層のJIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(750g荷重)の値が5H以上であ」るのに対し,引用発明1は,そのような構成を備えているか不明である点。
相違点4:本願発明1は,「前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有さない場合には,全光線透過率が85%以上であり,前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有する場合には,全光線透過率が80%以上であ」るのに対し,引用発明1は,そのような構成を有しているか不明である点。

相違点5:本願発明1は,「3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を,前記タッチパネル用積層体の両面でそれぞれ10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」のに対し,引用発明1は,「ハードコーティングフィルムを,直径3cmの円筒形マンドレルに挟んで巻く円筒形屈曲テストでクラックが発生しない」点。

(2)判断

事案に鑑み相違点5から検討する。

本願発明1の「3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を,前記タッチパネル用積層体の両面でそれぞれ10万回繰り返し行」うテスト(以下,「本願屈曲テスト」という。)は,引用文献2~6のいずれにも記載も示唆もされていない。また,本願屈曲テストが,本願出願前において,周知であったともいえない。

そうすると,引用発明1おける「ハードコーティングフィルムを,直径3cmの円筒形マンドレルに挟んで巻く円筒形屈曲テスト」に換えて,本願屈曲テストを採用し,「ハードコーティングフィルム」を相違点5に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

また,仮に,引用発明1おける「ハードコーティングフィルムを,直径3cmの円筒形マンドレルに挟んで巻く円筒形屈曲テスト」に換えて,本願屈曲テストを採用したとしても,「ハードコーティングフィルム」に割れ又は破断が生じないとはいえない。

したがって,その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明1,引用文献3,4に記載された事項及び周知技術(引用文献2,5,6)に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2~9について

本願発明2~8は,本願発明1を減縮した発明であり,また,本願発明9は,本願発明1のタッチパネル用積層体を用いてなる折り畳み式画像表示装置の発明であり,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記1で検討したのと同様の理由により,引用発明1,引用文献3,4に記載された事項及び周知技術(引用文献2,5,6)に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断

1 原査定(令和2年6月4日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。

(1)理由1(進歩性)

本願の請求項1~11係る発明は,引用発明1,引用文献3,4に記載された事項及び周知技術(引用文献2,5,6)に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 しかしながら,令和3年10月11日の手続補正により補正された請求項1~9は,前記相違点5に係る本願発明1の構成を有するものであるから,前記第4で検討したのと同様の理由により,引用発明1,引用文献3,4に記載された事項及び周知技術(引用文献2,5,6)に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第1号)について

当審では,

「1 本願明細書の発明の詳細な説明の【0008】によれば,本願発明が解決すべき課題は,「優れた硬度,透明性及び耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用積層体,該タッチパネル用積層体を用いてなる折り畳み式タッチパネルを提供すること」である。
ここで,請求項1~3に係る発明は,参考例5のタッチパネル用積層体を含んでいるから,必ずしも上記課題を解決できるとはいえない。
また,請求項1~11に係る発明は,「3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験」を「タッチパネル用積層体」の一方の面のみに行った場合に,「割れ又は破断が生じない」もの(参考例1~4)を含んでいるから,必ずしも上記課題を解決できるとはいえない。
さらに,請求項1~11に係る発明は,任意の硬度及び透明性を有するタッチパネル用積層体を含んでいるから,必ずしも上記課題を解決できるとはいえない。
2 請求項1~11には,樹脂硬化層の具体的な層構造,膜厚及び特性(第一及び第二ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さ)が特定されておらず,出願時の技術常識に照らしても,請求項1~11に係る発明の範囲にまで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
3 したがって,請求項1~11に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものではない。」

との拒絶の理由を通知したが,令和3年10月11日付けの手続補正によって,請求項1には,「前記樹脂硬化層は,前記基材フィルム側に設けられた第一ハードコート層と,前記第一ハードコート層の前記基材フィルム側と反対側面上に設けられた第二ハードコート層とを有し,前記第一ハードコート層の厚みが2.0μm以上5.0μm以下であり,前記第二ハードコート層の厚みが0.5μm以上4.0μm以下であり,前記第一ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが500MPa以上1000MPa未満であり,前記第二ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さが350MPa以上600MPa以下であり,前記樹脂硬化層のJIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(750g荷重)の値が5H以上であり,前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有さない場合には,全光線透過率が85%以上であり,前記樹脂硬化層が前記基材フィルム側と反対側表面に凹凸形状を有する場合には,全光線透過率が80%以上であり」との事項が特定されるとともに,「3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」との事項は,「3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を,前記タッチパネル用積層体の両面でそれぞれ10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」と補正されたから(当審注:下線は補正箇所を示すため合議体が付与した。),この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび

以上のとおりであるから,原査定の理由及び当審拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2020-012644

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決1,215件(大日本印刷株式会社)
  • 2023-015794拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)積層基材、包装材料用積層体および包装材料
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2025-003481拒絶査定不服審判 / 2026-08-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)ポリエステル容器およびポリエステルプリフォーム
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2025-001600拒絶査定不服審判 / 2026-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)バイオマス由来の樹脂層を有する積層体を備える包装製品
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2024-010051拒絶査定不服審判 / 2026-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)チャック付き紙容器
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2024-015557拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)パウチ
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)2,790件(121・G06F、537・G06F)
  • 2025-005007拒絶査定不服審判 / 2026-08-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)共有レコードのクライアント更新にルールの適用によるシステム生成更新のトリガ
    共通の審決分類: 121・G06F、537・G06F
  • 2024-009005拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)モジュール式空気冷却および分配システムおよび方法
    共通の審決分類: 121・G06F、537・G06F
  • 2025-007124拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)記憶装置
    共通の審決分類: 121・G06F、537・G06F
  • 2025-005890拒絶査定不服審判 / 2026-07-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)表示制御装置
    共通の審決分類: 121・G06F、537・G06F
  • 2025-011898拒絶査定不服審判 / 2026-07-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)セッションベースの情報展示方法およびその装置、機器、並びにコンピュータプログラム
    共通の審決分類: 121・G06F、537・G06F

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存