特許拒絶査定不服審判
2020-011405
平面アンテナ及びアンテナ装置
- 審判番号
- 2020-011405
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-185816
- 請求日
- 2020年08月18日
- 審決日
- 2021年04月13日
- 公報発行日
- 2021年06月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日本ピラー工業株式会社
- 【請求人代理人】立花 顕治
- 審判長/審判官
- 審判長 北岡 浩
- 審判官 吉田 隆之
- 審判官 衣鳩 文彦
- 分類
- P18 .121-WY (H01Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-185816「平面アンテナ及びアンテナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月29日出願公開,特開2018- 50240,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成28年9月23日の出願であって,令和2年2月14日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年4月14日に手続補正がされ,令和2年5月8日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和2年8月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和2年9月25日に前置報告がされ,令和2年11月12日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和2年5月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1-9に係る発明は,引用文献2に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献2.特開2006-197188号公報
第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は,令和2年8月18日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
電磁波を送受信し,前記電磁波の反射壁を構成する少なくとも1つのアンテナ導体と,
前記アンテナ導体に対向し,前記電磁波の反射壁を構成する対向導体と,
前記少なくとも1つの前記アンテナ導体と前記対向導体との間に隙間を形成する少なくとも1つの支持部と,を備え,
平面視において,前記アンテナ導体の中央近傍を通り,前記電磁波の共振方向と直交する直交方向に延びる直線上に,前記少なくとも1つの支持部が設けられ,
平面視において,前記アンテナ導体は,前記共振方向に沿って延びて互いに対向する一組の第1辺を含み,
前記支持部は,前記一組の第1辺にそれぞれに接続されており,
前記支持部のそれぞれは,前記第1辺の中央近傍を始端として,前記アンテナ導体の平面方向に沿って前記アンテナ導体から離れた終端に向かって延びる水平部と,前記水平部の終端から前記対向導体に向かって延びる垂直部と,を含み,
前記水平部の水平方向の長さは,前記一組の第1辺の間隔,および,前記垂直部の上下方向の長さよりも長い,
平面アンテナ。
【請求項2】
平面視において,前記一組の第1辺それぞれと各支持部の接続部分とは,前記アンテナ導体の中心を通り,前記電磁波の共振方向に沿う直線に対して対称である,請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】
平面視において,前記アンテナ導体は,前記電磁波の前記共振方向と直交する互いに平行な少なくとも一組の第2辺を含む,請求項1または2に記載の平面アンテナ。
【請求項4】
前記アンテナ導体における電磁波の管内波長をλgとすると,
前記一組の第2辺の間隔はλg/2である,請求項3に記載の平面アンテナ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの支持部は,前記アンテナ導体の中央近傍で,且つ前記一組の第2辺からλg/4の近傍に接続されている,請求項4に記載の平面アンテナ。
【請求項6】
前記アンテナ導体の平面形状は矩形状である,請求項3から5のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項7】
複数のアンテナ導体が設けられており,
隣接するアンテナ導体を接続する接続導体をさらに備える,請求項1から6のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の平面アンテナと,
前記平面アンテナにおいて送受信される電磁波の電力変換を行う電力変換器と,
を備えるアンテナ装置。
【請求項9】
前記電力変換器に接続される高周波回路をさらに備える,請求項8に記載のアンテナ装置。」
第4 引用文献,引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-197188号公報(以下,「引用文献」という。下線は当審が付与。)には,
「【0020】
(第1実施形態)
図1は,第1実施形態のアンテナの斜視図である。
【0021】
第1実施形態のアンテナは,誘電体基板10及び放射素子20によって構成されている。
【0022】
誘電体基板10の表面には地導体板11が設けられる。地導体板11は誘電体基板10の略全面に設けられた導体パターンによって構成する。なお,誘電体基板10の代わりにプリント配線板を用い,該プリント配線板の表面に設けた金属パターンによって地導体板11を構成してもよい。
【0023】
また,地導体板11にはスロット12が設けられる。スロット12は,その箇所だけ地導体板11の導体パターンを除去して構成する。
【0024】
また,誘電体基板10の裏面には,スロット12の中央部において,スロット12と直交するストリップ線路13が設けられる。ストリップ線路13は,地導体板11の端部から地導体板11の中央部(地導体板11の中央上部に設けられた放射素子20の略中央部,すなわち,スロット12を超えた位置)に延伸して設けられる。また,ストリップ線路13は,誘電体基板10の裏面の導体パターンによって構成されており,放射素子20を励振する高周波信号が供給されるマイクロストリップラインを構成している。
【0025】
放射素子20は,平板状の導電体(例えば,金属板)によって構成されており,スロット12の上部に,地導体板11と略並行に設けられる。これによって,スロット12と放射素子20とが電磁結合する。なお,本実施の形態では放射素子20は四角形であるが,丸形,三角形等の多様な形状にすることができる。本実施形態では,放射素子20を板状の導体によって構成するので,アンテナに誘電体を用いる必要がなく,アンテナを安価に構成することができる。
【0026】
放射素子20の外周部には取付部21が設けられる。また,取付部21は,スロット12が延伸する方向に,放射素子20から突出している。放射素子20は,この取付部21において,地導体板11と電気的に接続される。なお,図1に示すように放射素子20が四角形の場合,取付部21は放射素子20の対向する辺の中央部に設けることが望ましい。
【0027】
すなわち,ストリップ線路13に供給された高周波信号は,放射素子20を励振する。励振された放射素子20では,スロット12と直交する方向にダイポールアンテナが形成されたように高周波電圧が分布する。
【0028】
よって,ダイポールアンテナの中央部(放射素子20のスロット12と直交する辺の中央部)に励起される高周波電圧はほぼ0になる。従って,放射素子20の辺のうちスロット12と直交する辺の中央部において,放射素子20と地導体板11とを短絡しても,放射素子20上の電圧分布は変化しない。
【0029】
ここで,本発明の実施形態のアンテナの動作原理について説明する。
【0030】
本実施形態のアンテナは方形パッチアンテナであって,放射素子20には高周波電圧が励起され,約1/2波長で動作する。一般に,方形パッチアンテナでは,放射素子の一端に給電点が設けられ,放射素子に直接給電される。この場合,放射素子上の電界は,給電点から該給電点に対向する辺の方向に向かうものとなる。
【0031】
一方,本実施形態のように,放射素子20とスロット12が電磁的に結合して放射素子20に給電するアンテナでは,放射素子20上の電界はスロットと直交する向きとなる。このとき,放射素子20には約1/2波長の高周波電圧が励起されるので,放射素子20の外周辺の内,電界と平行な辺の中央部の電圧はゼロに近くなる。よって,この点で放射素子20と地導体板11とを短絡してもアンテナ特性に及ぼす影響は極めて少ない。
【0032】
すなわち,放射素子20上の電界と直交する仮想的な面を考えると,該電界と直交する面と放射素子の外周との交点付近では,高周波電圧はほぼゼロになり,この点で放射素子20と接地することができる。
【0033】
なお,本発明に係る方形パッチアンテナと異なる種類の平面アンテナとして,逆Fアンテナがある。逆Fアンテナでは,放射素子に励起される高周波電圧は約1/4波長である。すなわち,逆Fアンテナでは,1/4波長の放射導体を備え,その一端に給電点を,他端を接地したものである。
【0034】
以上説明したように,本発明のアンテナは,公知技術のアンテナとは動作原理が異なる。
【0035】
図2は,第1実施形態のアンテナの分解斜視図である。
【0036】
地導体板11には,取付穴14が設けられる。本実施形態では,取付穴14はスロット12の延長線上に設けられる。なお,取付穴14はこの位置に限らず,放射素子20の取付部21に対応する位置に設ければよい。例えば,スロット12が,放射素子20の中心からずれた位置に設けられている場合は,取付穴14は,スロット12の延長線上からずれた位置に設けられる。
【0037】
放射素子20の取付部21には,ビス42が貫通する取付穴22が設けられる。
【0038】
放射素子20と地導体板11との間には短絡棒41が設けられる。短絡棒41は導電体(例えば,金属)で円筒形が形成されている。すなわち,短絡棒41は並行な底面を有し,中心軸に貫通穴が設けられる。
【0039】
そして,ビス42が,放射素子20(取付穴22),短絡棒41及び誘電体基板10をを貫通し,誘電体基板10の裏面側(ストリップ線路13が設けられた側)からナットで止められる。これによって,放射素子20が地導体板11に略平行に固定される。短絡棒41は導電体で形成されているので,放射素子20の外周部(取付部21)と地導体板11とは,電気的(直流的)に接続される。
【0040】
なお,短絡棒41は,導電体に限らず絶縁体で構成してもよい。この場合,ビス42によって放射素子20と地導体板11とを電気的に接続する。
【0041】
なお,放射素子20の誘電体基板10への固定方法は,前述した方法に限らず多様な方法を採用することができる。例えば,取付穴14に雌ネジを設け,取付穴14を貫通したビス42を,取付穴14の雌ネジと係合させる方法がある。また,短絡棒41に雌ネジを設け,放射素子20と地導体板11との双方からビスによって固定する方法がある。
【0042】
このように第1実施形態では,放射素子20の外周部(放射素子20の辺の中央部)において,短絡棒41を用いて地導体板11と放射素子20とを短絡させる。よって,短絡棒41の高さを調整することにより,放射素子20の高さ位置の設計自由度を高くすることができる。従って,アンテナを所望のインピーダンスに容易に整合させることができ,アンテナ設計の自由度が向上する。」
【図2】
の記載があるから,
「誘電体基板10及び放射素子20によって構成されるアンテナであって,方形パッチアンテナであり,
誘電体基板10の表面には,誘電体基板10の略全面に設けられた導体パターンによって構成される地導体板11が設けられ,
地導体板11にはスロット12が設けられ,スロット12は,その箇所だけ地導体板11の導体パターンを除去して構成し,
誘電体基板10の裏面には,スロット12の中央部において,スロット12と直交するストリップ線路13が設けられ,ストリップ線路13は,地導体板11の端部から地導体板11の中央部(地導体板11の中央上部に設けられた放射素子20の略中央部,すなわち,スロット12を超えた位置)に延伸して設けられ,ストリップ線路13は,誘電体基板10の裏面の導体パターンによって構成されており,放射素子20を励振する高周波信号が供給されるマイクロストリップラインを構成し,
放射素子20は,平板状の導電体によって構成され,スロット12の上部に,地導体板11と略並行に設けられ,
放射素子20の外周部には取付部21が設けられ,取付部21は,スロット12が延伸する方向に,放射素子20から突出し,放射素子20は,この取付部21において,地導体板11と電気的に接続され,放射素子20が四角形の場合,取付部21は放射素子20の対向する辺の中央部に設け,
ストリップ線路13に供給された高周波信号は,放射素子20を励振し,励振された放射素子20では,スロット12と直交する方向にダイポールアンテナが形成されたように高周波電圧が分布し,
ダイポールアンテナの中央部(放射素子20のスロット12と直交する辺の中央部)に励起される高周波電圧はほぼ0になるから,放射素子20の辺のうちスロット12と直交する辺の中央部において,放射素子20と地導体板11とを短絡しても,放射素子20上の電圧分布は変化せず,
放射素子20の取付部21には,ビス42が貫通する取付穴22が設けられ,
放射素子20と地導体板11との間には短絡棒41が設けられ,短絡棒41は導電体で円筒形が形成され,
ビス42が,放射素子20(取付穴22),短絡棒41及び誘電体基板10を貫通し,誘電体基板10の裏面側からナットで止められることによって,放射素子20が地導体板11に略平行に固定され,短絡棒41は導電体で形成されているので,放射素子20の外周部(取付部21)と地導体板11とは,電気的に接続される,
アンテナ。」
の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明のアンテナは「誘電体基板10」と「放射素子20」によって構成され,放射素子20と誘電体基板の略全面に設けられた地導体板11と短絡棒41が設けられている。
引用発明は,高周波信号が供給されると「放射素子20」が励振されるから,引用発明の「放射素子20」は,「電磁波を送信するアンテナ導体」であるといえる。
引用発明は,「放射素子20」が「地導体板11と略並行に設けられ」ているから,「放射素子20」と「地導体板11」とは対向しているといえ,引用発明の「地導体板11」は,本願発明1の「アンテナ導体に対向する対向導体」に対応するといえる。
引用発明は,「放射素子20と地導体板11との間には短絡棒41が設けられ」,「放射素子20が地導体板11に略平行に固定され」ているから,「取付部21」と「短絡棒41」により「前記放射素子20と前記地導体板11との間に隙間を形成」しているといえる。よって,引用発明の「取付部21」と「短絡棒41」は「前記少なくとも1つの前記アンテナ導体と前記対向導体との間に隙間を形成する少なくとも1つの支持部」であるといえる。
引用発明の「取付部21」は,放射素子のストリップ線路に直交するスロット12が延伸する方向,すなわち共振方向に対して直交する直交方向に,放射素子20から突出しており,取付部21は放射素子20の対向する辺の中央部に設けられているから,「取付部21」は「平面視において,放射素子20の中央近傍を通り,前記電磁波の共振方向と直交する直交方向に延びる直線上に」設けられており,「平面視において,前記放射素子20は,前記共振方向に沿って延びる互いに対向する一組の第1辺を含み,前記取付部は,前記一組の第1辺にそれぞれ接続されて」いるといえる。
引用発明は「方形パッチアンテナ」であるから,「平面アンテナ」に含まれる。
したがって,本願発明1と引用発明は
(一致点)
「電磁波を送信する少なくとも1つのアンテナ導体と,
前記アンテナ導体に対向する対向導体と,
前記少なくとも1つの前記アンテナ導体と前記対向導体との間に隙間を形成する少なくとも1つの支持部と,を備え,
平面視において,前記アンテナ導体の中央近傍を通り,前記電磁波の共振方向と直交する直交方向に延びる直線上に,前記少なくとも1つの支持部が設けられ,
平面視において,前記アンテナ導体は,前記共振方向に沿って延びて互いに対向する一組の第1辺を含み,
前記支持部は,前記一組の第1辺にそれぞれに接続されている,
平面アンテナ。」
で一致し,下記の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は,アンテナ導体が「送受信」を行い,「アンテナ導体」と「対向導体」が「電磁波の反射壁を構成する」のに対し,引用発明は,「送信」は行うものの「受信」を行うかどうか特定がなく,「放射素子20」と「地導体板11」が電磁波の反射壁を構成するかどうか特定がない点。
(相違点2)
本願発明1は,「前記支持部のそれぞれは,前記第1辺の中央近傍を始端として,前記アンテナ導体の平面方向に沿って前記アンテナ導体から離れた終端に向かって延びる水平部と,前記水平部の終端から前記対向導体に向かって延びる垂直部と,を含」んでいて,「前記水平部の水平方向の長さは,前記一組の第1辺の間隔,および,前記垂直部の上下方向の長さよりも長い,」のに対し,引用発明の「取付部21」は,「前記第1辺の中央近傍を始端として」いるものの,「ビス42が貫通する取付穴22」が設けられていて,「ビス42が,放射素子20(取付穴22),短絡棒41及び誘電体基板10を貫通し,誘電体基板10の裏面側からナットで止められること」によって,略並行に固定されるものである点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み,まず相違点2について検討する。
引用発明の「短絡棒41」は,ビス42を用いて放射素子20の外周部(「取付部21」)と地導体板11とを電気的に接続しているから,「取付部21」の終端から「延び」ていない。
また,引用発明の「取付部21」の,「放射素子20」の平面方向に沿って前記放射素子20から離れた終端に向かって延びる水平部の長さは,「取付穴22」を設けるだけの長さがあれば十分であり,引用文献に記載される他の実施例を参照しても,放射素子20から水平方向に離れた場所で誘電体基板と固定する実施例はないから,「前記水平部の水平方向の長さ」を「前記一組の第1辺の間隔」および「前記垂直部の上下方向の長さ」よりも長くするようにすることは,当業者といえども容易に想到できるとはいえない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明することができたとはいえない。
2.本願発明2~9について
本願発明2~9も,本願発明1の上記相違点2に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 原査定について
第5に記載したとおり,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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