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特許拒絶査定不服審判

2020-011190

シラン変性ポリブタジエンによるジエンゴムタイヤの転がり抵抗の改良

審判番号
2020-011190
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-559090外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年08月12日
審決日
2022年06月13日
公報発行日
2022年12月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-559090「シラン変性ポリブタジエンによるジエンゴムタイヤの転がり抵抗の改良」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月17日国際公開、WO2016/180649、平成30年 6月14日国内公表、特表2018-515658〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)4月29日(優先権主張 外国庁受理 2015年5月13日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和1年10月29日付け:拒絶理由通知書 令和2年 1月10日 :意見書及び手続補正書の提出 同年 4月16日付け:拒絶査定 同年 8月12日 :手続補正書及び審判請求書の提出 第2 令和2年8月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年8月12日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 令和2年8月12日にされた手続補正(以下、「本件補正」ともいう。)の前後における特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。 <本件補正前> 「 【請求項1】 天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、10重量部から150重量部の沈降シリカ、0重量部から100重量部のカーボンブラック、0.5重量部から20重量部の有機シラン、および0.5重量部から25重量部のシラン変性ポリブタジエンを含むゴム混合物におけるシラン変性ポリブタジエンの使用であって、該ポリブタジエンが、下記の1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット: 【化1】 [図:0001391223000001.jpg] 【化2】 [図:0001391223000002.jpg] 【化3】 [図:0001391223000003.jpg] を含み、この場合、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるAの割合が10mol%から60mol%であり、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるBおよびCの割合の合計が40mol%から90mol%である、使用。 【請求項2】 前記シラン変性ポリブタジエンが、フリーラジカル重合によって製造されたヒドロキシル末端ポリブタジエンを1種または複数種の有機シラン化合物と反応させることによって得ることができることを特徴とする、請求項1に記載の使用。 【請求項3】 前記ポリブタジエン中に存在する前記1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるA)の割合が15mol%から30mol%であり、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるB)の割合が50mol%から70mol%であり、ならびに該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるC)の割合が15mol%から30mol%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。 【請求項4】 前記有機シラン化合物が、下記の式I: OCN-R-Si(OR1)x(R2)3-x I [式中、Rは、1個から4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキレン鎖を表し、R1およびR2は、同時にまたは互いに独立して、1個から5個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル鎖を表す]の化合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項2または3に記載の使用。 【請求項5】 天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、10重量部から150重量部の沈降シリカ、0重量部から100重量部のカーボンブラック、0.5重量部から20重量部の有機シラン、および0.5重量部から25重量部のシラン変性ポリブタジエンを含むゴム混合物であって、該ポリブタジエンが、下記の1,3-ブタジエン-由来のモノマーユニット: 【化4】 [図:0001391223000004.jpg] 【化5】 [図:0001391223000005.jpg] 【化6】 [図:0001391223000006.jpg] を含み、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるAの割合が10mol%から60mol%であり、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるBおよびCの割合の合計が40mol%から90mol%である、ゴム混合物。 【請求項6】 天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0.5重量部から15重量部のシラン変性ポリブタジエンを含むことを特徴とする、請求項5に記載のゴム混合物。 【請求項7】 タイヤ、プロファイル、ケーブルシース、ホース、駆動ベルト、コンベアベルト、タイヤトレッド、靴底、シールリング、およびダンピング要素を製造するための、請求項5または6に記載のゴム混合物の使用。」 <本件補正後> 「 【請求項1】 天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、10重量部から150重量部の沈降シリカ、0重量部から100重量部のカーボンブラック、0.5重量部から20重量部の有機シラン、0.5重量部から25重量部のシラン変性ポリブタジエンおよび0.1重量部から10重量部の加硫促進剤を含むゴム混合物におけるシラン変性ポリブタジエンの使用であって、 該有機シランが、アルキルシラン、ビニルシラン、エトキシシリル含有メルカプトオルガニルシラン、エトキシシリル含有チオシアナトオルガニルシラン、エトキシシリル含有ブロックトメルカプトオルガニルシランおよびエトキシシリル含有ジ/ポリスルフィドアルコキシシランから選ばれる一種以上であり、 該加硫促進剤が、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートから選ばれる一種以上であって、 該ポリブタジエンが、下記の1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット: 【化1】 [図:0001391223000007.jpg] 【化2】 [図:0001391223000008.jpg] 【化3】 [図:0001391223000009.jpg] を含み、この場合、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるAの割合が10mol%から60mol%であり、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるBおよびCの割合の合計が40mol%から90mol%である、使用。 【請求項2】 前記シラン変性ポリブタジエンが、フリーラジカル重合によって製造されたヒドロキシル末端ポリブタジエンを1種または複数種の有機シラン化合物と反応させることによって得ることができることを特徴とする、請求項1に記載の使用。 【請求項3】 前記ポリブタジエン中に存在する前記1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるA)の割合が15mol%から30mol%であり、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるB)の割合が50mol%から70mol%であり、ならびに該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるC)の割合が15mol%から30mol%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。 【請求項4】 前記有機シラン化合物が、下記の式I: OCN-R-Si(OR1)x(R2)3-x I [式中、Rは、1個から4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキレン鎖を表し、R1およびR2は、同時にまたは互いに独立して、1個から5個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル鎖を表す]の化合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項2または3に記載の使用。 【請求項5】 天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、10重量部から150重量部の沈降シリカ、0重量部から100重量部のカーボンブラック、0.5重量部から20重量部の有機シラン、0.5重量部から25重量部のシラン変性ポリブタジエンおよび0.1重量部から10重量部の加硫促進剤を含むゴム混合物であって、 該有機シランが、アルキルシラン、ビニルシラン、エトキシシリル含有メルカプトオルガニルシラン、エトキシシリル含有チオシアナトオルガニルシラン、エトキシシリル含有ブロックトメルカプトオルガニルシランおよびエトキシシリル含有ジ/ポリスルフィドアルコキシシランから選ばれる一種以上であり、 該加硫促進剤が、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートから選ばれる一種以上であって、 該ポリブタジエンが、下記の1,3-ブタジエン-由来のモノマーユニット: 【化4】 [図:0001391223000010.jpg] 【化5】 [図:0001391223000011.jpg] 【化6】 [図:0001391223000012.jpg] を含み、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるAの割合が10mol%から60mol%であり、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるBおよびCの割合の合計が40mol%から90mol%である、ゴム混合物。 【請求項6】 天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0.5重量部から15重量部のシラン変性ポリブタジエンを含むことを特徴とする、請求項5に記載のゴム混合物。 【請求項7】 タイヤ、プロファイル、ケーブルシース、ホース、駆動ベルト、コンベアベルト、タイヤトレッド、靴底、シールリング、およびダンピング要素を製造するための、請求項5または6に記載のゴム混合物の使用。」 2. 本件補正の適法性の検討 上記1のとおり、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ゴム混合物」について、「0.1重量部から10重量部の加硫促進剤」を含むとともに「該加硫促進剤が、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートから選ばれる一種以上であ」る点を限定し、「有機シラン」について「該有機シランが、アルキルシラン、ビニルシラン、エトキシシリル含有メルカプトオルガニルシラン、エトキシシリル含有チオシアナトオルガニルシラン、エトキシシリル含有ブロックトメルカプトオルガニルシランおよびエトキシシリル含有ジ/ポリスルフィドアルコキシシランから選ばれる一種以上であ」る点を限定するものであり、請求項5についても同様の限定をするものであって、いずれも、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明1」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明1 本件補正発明1は、上記1に記載したとおりのものである。 (2)引用例 3.特開2006-063209号公報 4.特開2005-350603号公報 (3)主たる刊行物等を引用例3とする新規性、進歩性についての検討 ア 引用例3に記載されている事項 特開2006-063209号公報(以下、「引用例3」といいう。)には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (i)スチレン含量20~40重量%及びビニル含量30~75重量%で、ガラス転移温度Tgが-40℃~-15℃であるスチレン-ブタジエン共重合体ゴム50~100重量部、天然ゴム及び/又はポリイソプレンゴム0~30重量部並びにポリブタジエンゴム0~30重量部のゴム成分100重量部、(ii)シリカ系充填剤30~120重量部、(iii)シリカ系充填剤配合量の0.1~30重量%のシランカップリング剤並びに(iv)少なくとも2個の末端に式(I):【化1】 [図:0001391223000013.jpg] (式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、少なくとも一種がアルコキシ、フェノキシ又はアルキルアリールオキシ基であるという条件で、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ、C6~C12フェニル、C6~C12フェノキシ又はC7~C18アリールアルキルオキシを表す)で表される有機ケイ素系官能基を有し、主鎖が直鎖又は分岐状の炭化水素からなる化合物0.1~30重量部を含んでなるタイヤ用ゴム組成物。 【請求項2】 前記直鎖又は分岐状の炭化水素が数平均分子量500~10000の液状ポリブタジエンである請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。」 「【0012】 本発明に係るゴム組成物に成分(ii)として配合されるシリカ系充填剤としては、従来よりタイヤ用などに使用されている任意のシリカ、例えば天然シリカ、合成シリカ、より具体的には乾式シリカ、湿式シリカとすることができる。シリカ系充填剤は、ゴム成分(i)100重量部当り、30~120重量部、好ましくは40~100重量部配合する。この配合量が少な過ぎると補強効果がないので好ましくなく、逆に多過ぎると加工性が悪化するおそれがあるので好ましくない。」 「【実施例】 【0018】 以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。 【0019】 実施例1~3及び比較例1~3 サンプルの調製 表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.5リットルの密閉型ミキサーで5分間混練した後、放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を用いて以下に示す試験法で未加硫物性を評価した。結果は表Iに示す。 【0020】 次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で20分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表Iに示す。」 「【0023】 【表1】 [図:0001391223000014.jpg] 【0024】 表I脚注 *1:BAYER社製VSL5025(st:25%、Vinyl:73%、Tg:-20℃)(油展量:37.5部) *2:天然ゴム *3:日本ゼオン(株)製Nipol BR1220 *4:日本シリカ工業(株)製Nipsil AQ *5:昭和キャボット(株)製ショウワブラック N339 *6:Deggusa社製Si69 *7:出光石油化学(株)製R-45HT(数平均分子量:2800) *8:変性液状BRの合成 水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製、R-45HT、数平均分子量2800)100gとイソシアネートシラン18g(信越化学工業(株)製KBE-9007)とを容器に入れて混合し、かく判しながら、ジブチルスズラウリレート触媒(東京化成工業(株)製)0.5gを加え、10分間反応させた。IRスペクトルでイソシアネート由来の鋭く強い吸収2270cm-1ピークの消失で確認した。未反応物は認められなかった。 *9:正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種 *10:日本油脂(株)製ステアリン酸 *11:大内新興化学工業(株)製ノクラック6C *12:昭和シェル石油(株)製デゾレックス3号 *13:(株)軽井沢精錬所製油処理イオウ *14:大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ-G *15:住友化学工業(株)製ソクシールD-G」 イ 引用例3に記載された発明 引用例3には、その実施例3の記載(段落【0019】、【0023】の【表1】、及び、【0024】)に基づいて、以下の発明(以下、「引用例3発明」という。)が記載されていると認められる。 また、引用例3発明のゴム組成物を構成する成分として、「変性液状BR」が用いられていることから、以下の発明(以下、「引用例3使用発明」という。)も記載されていると認められる。 <引用例3発明> 「SBR 96.25重量部、 NR 10重量部、 BR 20重量部、 シリカ 80重量部、 カーボンブラック 5重量部、 シランカップリング剤 6.4重量部、 変性液状BR 10重量部、 亜鉛華 2.5重量部、 ステアリン酸 2重量部、 老化防止剤 2重量部、 オイル 10重量部、 硫黄 2重量部、 加硫促進剤CZ 2重量部、 加硫促進剤DPG 0.5重量部、 からなる配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.5リットルの密閉型ミキサーで5分間混練した後、放出して得たマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練して得た、ゴム組成物。 (SBRは、BAYER社製VSL5025(st:25%、Vinyl:73%、Tg:-20℃)(油展量:37.5部)であり、 NRは、天然ゴムであり、 BRは、日本ゼオン(株)製Nipol BR1220であり、 シリカは、日本シリカ工業(株)製Nipsil AQであり、 カーボンブラックは、昭和キャボット(株)製ショウワブラック N339であり、 シランカップリング剤は、Deggusa社製Si69であり、 亜鉛華は、正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種であり、 ステアリン酸は、日本油脂(株)製ステアリン酸であり、 老化防止剤は、大内新興化学工業(株)製ノクラック6Cであり、 オイルは、昭和シェル石油(株)製デゾレックス3号であり、 硫黄は、(株)軽井沢精錬所製油処理イオウであり、 加硫促進剤CZは、大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ-Gであり、 加硫促進剤DPG、住友化学工業(株)製ソクシールD-Gである。 また、変性液状BRの合成は、水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製、R-45HT、数平均分子量2800)100gとイソシアネートシラン18g(信越化学工業(株)製KBE-9007)とを容器に入れて混合し、攪拌しながら、ジブチルスズラウリレート触媒(東京化成工業(株)製)0.5gを加え、10分間反応させたものであり、IRスペクトルでイソシアネート由来の鋭く強い吸収2270cm-1ピークの消失で確認したものであり、未反応物は認められなかったものである。)」 <引用例3使用発明> 「SBR 96.25重量部、 NR 10重量部、 BR 20重量部、 シリカ 80重量部、 カーボンブラック 5重量部、 シランカップリング剤 6.4重量部、 変性液状BR 10重量部、 亜鉛華 2.5重量部、 ステアリン酸 2重量部、 老化防止剤 2重量部、 オイル 10重量部、 硫黄 2重量部、 加硫促進剤CZ 2重量部、 加硫促進剤DPG 0.5重量部、 からなる配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.5リットルの密閉型ミキサーで5分間混練した後、放出して得たマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練して得た、ゴム組成物における、変性液状BRの使用。 (SBRは、BAYER社製VSL5025(st:25%、Vinyl:73%、Tg:-20℃)(油展量:37.5部)であり、 NRは、天然ゴムであり、 BRは、日本ゼオン(株)製Nipol BR1220であり、 シリカは、日本シリカ工業(株)製Nipsil AQであり、 カーボンブラックは、昭和キャボット(株)製ショウワブラック N339であり、 シランカップリング剤は、Deggusa社製Si69であり、 亜鉛華は、正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種であり、 ステアリン酸は、日本油脂(株)製ステアリン酸であり、 老化防止剤は、大内新興化学工業(株)製ノクラック6Cであり、 オイルは、昭和シェル石油(株)製デゾレックス3号であり、 硫黄は、(株)軽井沢精錬所製油処理イオウであり、 加硫促進剤CZは、大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ-Gであり、 加硫促進剤DPG、住友化学工業(株)製ソクシールD-Gである。 また、変性液状BRの合成は、水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製、R-45HT、数平均分子量2800)100gとイソシアネートシラン18g(信越化学工業(株)製KBE-9007)とを容器に入れて混合し、攪拌しながら、ジブチルスズラウリレート触媒(東京化成工業(株)製)0.5gを加え、10分間反応させたものであり、IRスペクトルでイソシアネート由来の鋭く強い吸収2270cm-1ピークの消失で確認したものであり、未反応物は認められなかったものである。)」 ウ 本件補正発明1について (ア) 本件補正発明1と引用例3使用発明の対比 引用例3使用発明の「SBR(BAYER社製VSL5025(st:25%、Vinyl:73%、Tg:-20℃)(油展量:37.5部))」は、濃度37.5重量%のスチレン/ブタジエンコポリマーの溶液であり、「NR」は、「天然ゴム」であり、「BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)」は、ポリブタジエンである(必要であれば、日本ゼオン(株)のホームページ「https://www.zeon.eu/br-nipol-br.html」を参照。)から、引用例3使用発明の「SBR 96.25重量部、NR 10重量部、BR 20重量部」は、本件補正発明1の「天然ゴムとジエンゴム」(合計の重量部は、100(=96.25*(100/(100+37.5))+10+20))に相当する。 引用例3使用発明の「変性液状BR」は、「水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製、R-45HT、数平均分子量2800)100gとイソシアネートシラン18g(信越化学工業(株)製KBE-9007)とを容器に入れて混合し、攪拌しながら、ジブチルスズラウリレート触媒(東京化成工業(株)製)0.5gを加え、10分間反応させたものであり、IRスペクトルでイソシアネート由来の鋭く強い吸収2270cm-1ピークの消失で確認したものであり、未反応物は認められなかったもの」である。 また、「水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製、R-45HT、数平均分子量2800)」は、出光石油化学(株)から販売されている「Poly bdTM」という名称の製品のうち、「R-45HT」という型番が付けられている商品であり、出光石油化学(株)のホームページ(https://www.idemitsu.com/jp/business/ipc/products/poly/poly_bd.html)によれば、R-45HTは、1,2-ビニルを20%、1,4-シスを20%、1,4-トランスを60%含む水酸基末端ポリブタジエンである。なお、引用例2(POLYMER,英国,1998年,Vol.39, No.4,P.965-971)の965頁左欄「Introduction」の1~8行にも同旨の記載がある。 そうすると、引用例3使用発明の「変性液状BR」は、1,2-ビニルを20%、1,4-シスを20%、1,4-トランスを60%含む水酸基末端ポリブタジエンを、イソシアネートシランで変性したものといえるから、本件補正発明1の「シラン変性ポリブタジエン」、「該ポリブタジエンが、下記の1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット:(化学式の記載を省略)を含み、この場合、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるAの割合が10mol%から60mol%であり、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるBおよびCの割合の合計が40mol%から90mol%である」に相当する。また、その配合割合である「10重量部」は、SBRとNRとBRの配合割合の合計100重量部に対して、10重量部であるから、引用例3使用発明は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0.5重量部から25重量部のシラン変性ポリブタジエン」を充足する。 引用例3使用発明の「シリカ(日本シリカ工業(株)製Nipsil AQ)」は、沈降シリカである(必要であれば、日本シリカ工業(株)(現、東ソー・シリカ株式会社)のホームページ「http://www.n-silica.co.jp/products/nipsil.html」を参照。)から、本件補正発明1の「沈降シリカ」に相当する。また、その配合割合である「80重量部」は、SBRとNRとBRの配合割合の合計100重量部に対して、80重量部であるから、引用例3使用発明は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、10重量部から150重量部の沈降シリカ」を充足する。 引用例3使用発明の「カーボンブラック 5重量部」は、その配合割合である「5重量部」が、SBRとNRとBRの配合割合の合計100重量部に対して、5重量部であるから、引用例3使用発明は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0重量部から100重量部のカーボンブラック」を充足する。 引用例3使用発明の「シランカップリング剤(Deggusa社製Si69)」は、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドである(必要であれば、日本シリカ工業(株)(現、東ソー・シリカ株式会社)のホームページ「http://www.n-silica.co.jp/products/nipsil.html」を参照。)から、本件補正発明1の「有機シラン」及び「エトキシシリル含有ポリスルフィドアルコキシシラン」に相当する。また、その配合割合である「6.4重量部」が、SBRとNRとBRの配合割合の合計100重量部に対して、6.4重量部であるから、引用例3使用発明は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0.5重量部から20重量部の有機シラン」及び「該有機シランが、アルキルシラン、ビニルシラン、エトキシシリル含有メルカプトオルガニルシラン、エトキシシリル含有チオシアナトオルガニルシラン、エトキシシリル含有ブロックトメルカプトオルガニルシランおよびエトキシシリル含有ジ/ポリスルフィドアルコキシシランから選ばれる一種以上であり」を充足する。 引用例3使用発明の「加硫促進剤CZ(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ-G)は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドであり、「加硫促進剤DPG(住友化学工業(株)製ソクシールD-G)は、ジフェニルグアニジンであるから、これらは、それぞれ、本件補正発明1の「スルフェンアミド」、「グアニジン」に相当する。また、それぞれの配合割合である「2重量部」と「0.5重量部」の合計である2.5重量部が、SBRとNRとBRの配合割合の合計100重量部に対して、2.5重量部であるから、引用例3使用発明は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0.1重量部から10重量部の加硫促進剤」及び「該加硫促進剤が、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートから選ばれる一種以上であって」を充足する。 以上によれば、引用例3使用発明は、本件補正発明1を特定するための全ての事項を充足するものであって、以下の点で一致する。また、相違点はない。 <一致点> 「 天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、10重量部から150重量部の沈降シリカ、0重量部から100重量部のカーボンブラック、0.5重量部から20重量部の有機シラン、0.5重量部から25重量部のシラン変性ポリブタジエンおよび0.1重量部から10重量部の加硫促進剤を含むゴム混合物におけるシラン変性ポリブタジエンの使用であって、 該有機シランが、アルキルシラン、ビニルシラン、エトキシシリル含有メルカプトオルガニルシラン、エトキシシリル含有チオシアナトオルガニルシラン、エトキシシリル含有ブロックトメルカプトオルガニルシランおよびエトキシシリル含有ジ/ポリスルフィドアルコキシシランから選ばれる一種以上であり、 該加硫促進剤が、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートから選ばれる一種以上であって、 該ポリブタジエンが、下記の1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット: 【化1】 [図:0001391223000015.jpg] 【化2】 [図:0001391223000016.jpg] 【化3】 [図:0001391223000017.jpg] を含み、この場合、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるAの割合が10mol%から60mol%であり、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるBおよびCの割合の合計が40mol%から90mol%である、使用。」 (イ) 審判請求人の主張について 審判請求人は、「しかしながら、引用文献3は、構成要件(a)および構成要件(b)に規定する、『特定の有機シランを必須成分として所定量含む』という技術事項を開示するものでなく、また、構成要件(a)および構成要件(c)に規定する、『特定の加硫促進剤を必須成分として所定量含む』という技術事項を開示するものでもありません。」(審判請求書第7頁11~15行)と主張する。 しかしながら、上記(2)のとおり、引用例3使用発明は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0.5重量部から20重量部の有機シラン」、「該有機シランが、アルキルシラン、ビニルシラン、エトキシシリル含有メルカプトオルガニルシラン、エトキシシリル含有チオシアナトオルガニルシラン、エトキシシリル含有ブロックトメルカプトオルガニルシランおよびエトキシシリル含有ジ/ポリスルフィドアルコキシシランから選ばれる一種以上であり」、「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0.1重量部から10重量部の加硫促進剤」及び「該加硫促進剤が、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートから選ばれる一種以上であって」を充足するものである。 したがって、審判請求人の主張は採用できない。 (ウ) 小括 本件補正発明1は、引用例3に記載された発明であるから、本件補正発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、独立して特許を受けることができるものではない。 また、本件補正発明1は、引用例3使用発明とは、例えば、シリカの配合割合が異なる態様等を本件補正発明1が含んでいる点で一応相違するが、配合割合等を適宜変更する程度のことは当業者であれば、適宜なし得ると認められる。 したがって、本件補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができるものではない。 (4) 主たる刊行物等を引用例4とする新規性、進歩性についての検討 ア 引用例4に記載されている事項 特開2005-350603号公報(以下、「引用例4」ともいう。)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 (A)ジエン系ゴム100重量部、(B)シリカ系充填剤10~150重量部及び(C)主鎖が直鎖又は分岐状の炭化水素であって且つ少なくとも2つの末端にウレタン結合を介した有機ケイ素官能基を有する化合物0.1~30重量部を含んでなるゴム組成物。 【請求項2】 前記化合物(C)が式(I): 【化1】 [図:0001391223000018.jpg] (式中、R1,R2及びR3は、同一又は異なっていてもよく、少なくとも一つがアルコキシ、フェノキシ又はアルキルアリールオキシ基であるという条件で、C1~C18アルキル基、C1~C18アルコキシ基、C6~C12フェニル基又はC6~C12フェノキシ基、C1~C18アリールアルキルオキシ基を表し、X1及びX2は同一又は異なっていてもよく、必要に応じてヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素を表し、Yは直鎖又は分岐鎖を有するヘテロ原子を含んでもよい炭化水素を表す)で表わされるシラン化合物を70重量%以上含むものである請求項1に記載のゴム組成物。 ・・・ 【請求項5】 前記式(I)の化合物(C)の部分Yがブタジエン重合体である請求項2に記載のゴム組成物。 【請求項6】 前記ブタジエン重合体がシス-1,4結合50~70%及びビニル結合5~30%を含む請求項5に記載のゴム組成物。 【請求項7】 前記化合物(C)が少なくとも2つの末端水酸基を有する数平均分子量が1000~10000のポリブタジエンと、イソシアネート基及びアルコキシ基を有するシラン化合物とを反応させて得られる請求項6に記載のゴム組成物。」 「【0008】 本発明において成分(A)として使用するジエン系としては、タイヤ、その他用として使用することができる任意のジエン系ゴム、例えば各種天然ゴム(NR)、各種ポリイソプレンゴム(IR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、各種スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム、各種エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴムなどをあげることができ、これらは単独又は任意のブレンドとして使用することができる。 ・・・ 【0015】 本発明に係るゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、カーボンブラックなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練、加硫して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。」 「【実施例】 【0016】 以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。なお、本実施例で使用した変性ポリマー1~3は以下のようにして調製した。 【0017】 末端変性ポリマー1(両末端アルコキシシラン液状BRの合成) 水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学製R-45HT、数平均分子量2800)100gとイソシアネートシラン18g(信越化学製KBE-9007)とを容器に入れて混合し、混合しながら、ジブチルすずラウリレート触媒(東京化成工業)0.5gを加え、10分間反応させた。IRスペクトルでイソシアネート由来の鋭く強い吸収2270cm-1ピークの消失を確認した。未反応物は認められなかった。 ・・・ 【0020】 実施例1~2及び比較例1~5 サンプルの調製 表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.6リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、155±5℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を用いて以下に示す試験法で未加硫物性を評価した。結果は表Iに示す。 ・・・ 【0025】 【表1】 [図:0001391223000019.jpg] 【0026】 表I脚注 *1:Nipol 1502(日本ゼオン製SBR) *2:ZEOSIL 115GR(Rhodia製シリカ) *3:Si69(デグサ製シランカップリング剤) *4:R-45HT(出光石油化学製液状BR、Mw:2800) *5:酸化亜鉛3種(正同化学工業製) *6:ビーズステアリン酸 YR(日本油脂製) *7:SANTOFLEX 6PPD(フレキシス製) *8:5%油処理イオウ(軽井沢精錬所製) *9:ノクセラー CZ-G(大内新興化学製) *10:ソクシノール D-G(住友化学工業製) *11:エピオンEP303S(鐘淵化学工業製両末端シリル基ポリイソブチレン)」 イ 引用例4に記載された発明 引用例4には、その実施例1の記載(段落【0017】、【0019】、【0025】の【表1】、及び、【0026】)に基づいて、以下の発明(以下、「引用例4発明」という。)が記載されていると認められる。 また、引用例4発明のゴム組成物を構成する成分として、「末端変性ポリマー1」が用いられていることから、以下の発明(以下、「引用例4使用発明」という。)も記載されていると認められる。 <引用例4発明> 「SBR 100重量部、 シリカ 50重量部、 末端変性ポリマー1 10重量部、 亜鉛華 3重量部、 ステアリン酸 1重量部、 老化防止剤 7重量部、 硫黄 1.6重量部、 加硫促進剤A 1.6重量部、 加硫促進剤B 0.5重量部、 からなる配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.6リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、155±5℃に達したときに放出して得たマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練して得た、ゴム組成物。 (SBRは、Nipol 1502(日本ゼオン製SBR))であり、 シリカは、ZEOSIL 115GR(Rhodia製シリカ)であり、 亜鉛華は、酸化亜鉛3種(正同化学工業製)であり、 ステアリン酸は、ビーズステアリン酸 YR(日本油脂製)であり、 老化防止剤は、SANTOFLEX 6PPD(フレキシス製)であり、 硫黄は、5%油処理イオウ(軽井沢精錬所製)であり、 加硫促進剤Aはノクセラー CZ-G(大内新興化学製)であり、 加硫促進剤Bはソクシノール D-G(住友化学工業製)である。 また、末端変性ポリマー1は、水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学製R-45HT、数平均分子量2800)100gとイソシアネートシラン18g(信越化学製KBE-9007)とを容器に入れて混合し、混合しながら、ジブチルすずラウリレート触媒(東京化成工業)0.5gを加え、10分間反応させて得たものであり、IRスペクトルでイソシアネート由来の鋭く強い吸収2270cm-1ピークの消失を確認し、未反応物は認められなかったものである。)」 <引用例4使用発明> 「SBR 100重量部、 シリカ 50重量部、 末端変性ポリマー1 10重量部、 亜鉛華 3重量部、 ステアリン酸 1重量部、 老化防止剤 7重量部、 硫黄 1.6重量部、 加硫促進剤A 1.6重量部、 加硫促進剤B 0.5重量部、 からなる配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.6リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、155±5℃に達したときに放出して得たマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練して得た、ゴム組成物における、末端変性ポリマー1の使用。 (SBRは、Nipol 1502(日本ゼオン製SBR)であり、 シリカは、ZEOSIL 115GR(Rhodia製シリカ)であり、 亜鉛華は、酸化亜鉛3種(正同化学工業製)であり、 ステアリン酸は、ビーズステアリン酸 YR(日本油脂製)であり、 老化防止剤は、SANTOFLEX 6PPD(フレキシス製)であり、 硫黄は、5%油処理イオウ(軽井沢精錬所製)であり、 加硫促進剤Aはノクセラー CZ-G(大内新興化学製)であり、 加硫促進剤Bはソクシノール D-G(住友化学工業製)である。 また、末端変性ポリマー1は、水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学製R-45HT、数平均分子量2800)100gとイソシアネートシラン18g(信越化学製KBE-9007)とを容器に入れて混合し、混合しながら、ジブチルすずラウリレート触媒(東京化成工業)0.5gを加え、10分間反応させて得たものであり、IRスペクトルでイソシアネート由来の鋭く強い吸収2270cm-1ピークの消失を確認し、未反応物は認められなかったものである。)」 ウ 本件補正発明1について (ア) 本件補正発明1と引用例4使用発明の対比 引用例4使用発明の「SBR(Nipol 1502(日本ゼオン製SBR)」は、非油展スチレン・ブタジエンゴムである(必要であれば、日本ゼオン(株)のホームページ 「https://www.zeon.co.jp/business/enterprise/rubber/sbr/」を参照。)から、引用例4使用発明の「SBR」は、本件補正発明1の「ジエンゴム」に相当するものである。そうすると、引用例4使用発明の「SBR(Nipol 1502(日本ゼオン製SBR))」は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴム」と、ゴムである点で対応する。 引用例4使用発明の「末端変性ポリマー1」は、「水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学製R-45HT、数平均分子量2800)100gとイソシアネートシラン18g(信越化学製KBE-9007)とを容器に入れて混合し、混合しながら、ジブチルすずラウリレート触媒(東京化成工業)0.5gを加え、10分間反応させて得たものであり、IRスペクトルでイソシアネート由来の鋭く強い吸収2270cm-1ピークの消失を確認し、未反応物は認められなかったもの」である。 また、「水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学製R-45HT、数平均分子量2800)」は、出光石油化学(株)から販売されている「Poly bdTM」という名称の製品のうち、「R-45HT」という型番が付けられている商品であり、出光石油化学(株)のホームページ (https://www.idemitsu.com/jp/business/ipc/products/poly/poly_bd.html)によれば、R-45HTは、1,2-ビニルを20%、1,4-シスを20%、1,4-トランスを60%含む水酸基末端ポリブタジエンである。なお、引用例2(POLYMER,英国,1998年,Vol.39, No.4,P.965-971)の965頁左欄「Introduction」の1~8行にも同旨の記載がある。 そうすると、引用例4使用発明の「末端変性ポリマー1」は、1,2-ビニルを20%、1,4-シスを20%、1,4-トランスを60%含む水酸基末端ポリブタジエンを、イソシアネートシランで変性したものといえるから、本件補正発明1の「シラン変性ポリブタジエン」、「該ポリブタジエンが、下記の1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット:(化学式の記載を省略)を含み、この場合、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるAの割合が10mol%から60mol%であり、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるBおよびCの割合の合計が40mol%から90mol%である」に相当する。また、その配合割合である「10重量部」は、SBRの配合割合(100重量部)及び天然ゴムの配合割合(0重量部)の合計100重量部に対して、10重量部であるから、引用例4使用発明は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0.5重量部から25重量部のシラン変性ポリブタジエン」を充足する。 引用例4使用発明の「シリカ(ZEOSIL 115GR(Rhodia製シリカ)」は、本件補正発明1の「沈降シリカ」とシリカである点で対応する。また、その配合割合である「50重量部」は、SBRの配合割合(100重量部)及び天然ゴムの配合割合(0重量部)の合計100重量部に対して、50重量部であるから、引用例4使用発明は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、10重量部から150重量部のシリカ」を充足する。 引用例4使用発明は、カーボンブラックを含んでいないから、その配合割合である「0重量部」は、SBRの配合割合(100重量部)及び天然ゴムの配合割合(0重量部)の合計100重量部に対して、0重量部である。したがって、引用例4使用発明は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0重量部から100重量部のカーボンブラック」を充足する。 引用例4使用発明の「加硫促進剤A(ノクセラー CZ-G(大内新興化学製))」は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドであり、「加硫促進剤B(ソクシノール D-G(住友化学工業製))は、ジフェニルグアニジンであるから、これらは、それぞれ、本件補正発明1の「スルフェンアミド」、「グアニジン」に相当する。また、それぞれの配合割合である「1.6重量部」と「0.5重量部」の合計は2.1重量部である。また、その配合割合である「2.1重量部」は、SBRの配合割合(100重量部)及び天然ゴムの配合割合(0重量部)の合計100重量部に対して、2.1重量部である。したがって、引用例4使用発明は、本件補正発明1の「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0.1重量部から10重量部の加硫促進剤」及び「該加硫促進剤が、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートから選ばれる一種以上であって」を充足する。 以上によれば、引用例4使用発明と本件補正発明1の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「ゴムの100重量部に対して、10重量部から150重量部のシリカ、0重量部から100重量部のカーボンブラック、0.5重量部から25重量部のシラン変性ポリブタジエンおよび0.1重量部から10重量部の加硫促進剤を含むゴム混合物におけるシラン変性ポリブタジエンの使用であって、 該加硫促進剤が、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートから選ばれる一種以上であって、 該ポリブタジエンが、下記の1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット(化学式の記載を省略する。)を含み、この場合、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるAの割合が10mol%から60mol%であり、該ポリブタジエン中に存在する該1,3-ブタジエン由来のモノマーユニット全体におけるBおよびCの割合の合計が40mol%から90mol%である、使用」 <相違点1> 「ゴム」について、本件補正発明1は、「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴム」と特定されているのに対し、引用例4使用発明においては「SBR(Nipol 1502(日本ゼオン製SBR)」と特定されている点 <相違点2> 「シリカ」について、本件補正発明1は、「沈降シリカ」と特定されているのに対し、引用例4使用発明においては「シリカ(ZEOSIL 115GR(Rhodia製シリカ)」と特定されている点 <相違点3> 「ゴム組成物」を構成する成分について、本件補正発明1は、「有機シラン」を含有することが特定されているとともに、当該有機シランの含有割合と種類について、それぞれ、「天然ゴムまたは天然ゴムとジエンゴムの100重量部に対して、0.5重量部から20重量部」、「該有機シランが、アルキルシラン、ビニルシラン、エトキシシリル含有メルカプトオルガニルシラン、エトキシシリル含有チオシアナトオルガニルシラン、エトキシシリル含有ブロックトメルカプトオルガニルシランおよびエトキシシリル含有ジ/ポリスルフィドアルコキシシランから選ばれる一種以上であり」と特定されているのに対し、引用例4使用発明は、「有機シラン」に関する特定を備えていない点 (イ) 相違点1について 引用例4使用発明の「SBR(Nipol 1502(日本ゼオン製SBR)」について、引用例4の段落【0008】には、「本発明において成分(A)として使用するジエン系としては、タイヤ、その他用として使用することができる任意のジエン系ゴム、例えば各種天然ゴム(NR)・・・各種スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)・・・などをあげることができ、これらは単独又は任意のブレンドとして使用することができる。」と記載されている。 したがって、当業者であれば、引用例4使用発明において、相違点1に係る事項を備えるものとする程度のことは容易になし得ると認められる。 (ウ) 相違点2について 「シリカ(ZEOSIL 115GR(Rhodia製シリカ)」は、フランス国のRhodia社が「ZEOSIL」の商品名で販売している一連の沈降法で製造したシリカのうち、115GRの番号が付された製品である(必要であれば、「東ソー研究・技術報告 「ゲル法シリカの特徴と応用」、日本シリカ工業株式会社営業本部 赤崎忠行他1名、第45巻、65~69頁、2001年の表1を参照。)から、引用例4使用発明は、相違点2に係る事項を充足していると認められる。 したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。また、「シリカ(ZEOSIL 115GR(Rhodia製シリカ)」の製造方法に基づき相違点2に係る事項を備えるものとする程度のことは当業者であれば容易になし得ると認められる。 (エ) 相違点3について 引用例4の段落【0015】には、「本発明に係るゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、カーボンブラックなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練、加硫して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。」と記載されている。 また、ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤として、沈降シリカや、「Si69」などのカップリング剤(引用例4の比較例2や、引用例3の全実施例、比較例を参照。)は周知である。 そうすると、当業者であれば、引用例4使用発明において、その効果が損なわれない範囲で相違点3に係る事項を備えるものとする程度のことは容易になし得ると認められる。 (オ) 効果について 本願の明細書には、相違点1~3に係る事項を備えることにより、そうではない態様と比べて当業者に予測のできない効果が奏されることを裏付ける比較例などが記載されていない。また、比較例で裏付けるまでもなく、そのような効果が奏されているといえる説明なども見いだせない。 (カ) 審判請求人の主張について 審判請求人は、「しかしながら、引用文献4も、構成要件(a)に規定する『天然ゴムを必須成分とするゴム成分を所定量含む」ゴム混合物を開示するものでないばかりか、構成要件(a)および構成要件(b)に規定する、『特定の有機シランを必須成分として所定量含む」ゴム混合物を開示するものでもなく、また、構成要件(a)および構成要件(c)に規定する、『特定の加硫促進剤を必須成分として所定量含む」ゴム混合物を開示するものでもありません。」(審判請求書第10頁15~20行)と主張する。 しかしながら、上記(2)のとおり、引用例4には天然ゴムを含有するゴム混合物についての記載があるし、ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を一般的な配合量で配合することができることも記載されている。 したがって、審判請求人の主張は採用できない。 (キ) 小括 本件補正発明1は、引用例4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができないものである。 3 補正の却下の決定についてのむすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は,特許法第17条の2第6項の規定により準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記第2のとおり、令和2年8月12日にされた手続補正は却下されたので、本願の請求項1~7に係る発明は、令和2年1月10日にされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおり(上記第2、1を参照。)のものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、要するに「この出願については、令和 1年10月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2(特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項)によって、拒絶をすべきものです。」というものである。また、その対象とする請求項及び引用文献等を、理由1,2について、請求項1~7、特開2006-063209号公報、及び、理由2について、請求項1~7、特開2005-350603号公報とするものを含むものである。 3 判断 上記第2、2のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」ともいう。)は、要するに、本件補正発明1を特定するための事項である「ゴム混合物」について、「0.1重量部から10重量部の加硫促進剤」を含むとともに「該加硫促進剤が、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートから選ばれる一種以上であ」る旨の限定を削除し、「有機シラン」について「該有機シランが、アルキルシラン、ビニルシラン、エトキシシリル含有メルカプトオルガニルシラン、エトキシシリル含有チオシアナトオルガニルシラン、エトキシシリル含有ブロックトメルカプトオルガニルシランおよびエトキシシリル含有ジ/ポリスルフィドアルコキシシランから選ばれる一種以上であ」る旨の限定を削除したものである。 また、上記第2、2(3)のとおり本件補正発明1は、引用例3(特開2006-063209号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができるものではなく、また、引用例4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができないと認められるものである。 また、引用例3は、原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-063209号公報と同じものであり、引用例4も、原査定の拒絶の理由で引用された特開2005-350603号公報と同じものである。 そうすると、本願発明1をさらに限定した発明に該当する本件補正発明1が、引用例3に記載された発明であって特許法第29条第1項第3号に該当し、また、引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものでもなく、さらに、引用例4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであると認められるのであるから、さらに検討するまでもなく、本願発明1は、原査定の拒絶の理由により拒絶されるべきものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-011190

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