特許拒絶査定不服審判
2020-010258
雨滴除去装置
- 審判番号
- 2020-010258
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-095552外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年06月24日
- 審決日
- 2021年02月25日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】北村 健爾
- 分類
- P18 .121-Z (B60S) / P18 .575-Z (B60S)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 95552号「雨滴除去装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月23日出願公開,特開2020- 11711号〕について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,平成31年4月25日(提出日)の出願であって,令和1年6月17日(提出日)に手続補正がなされ,令和2年2月13日付けで拒絶理由が通知され,同年3月16日(提出日)に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,同年5月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,同年6月24日(提出日)に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ,同年8月18日付けで手続補正指令(方式)がされ,同年8月27日(提出日)に手続補正がなされたものである。
第2 令和2年6月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
「容器内の下側にはモータを,上側にはモニターに映像を写すことのできるカメラを容器に固定し,モータに円形の透明なガラスを取り付け,このガラスと容器は接して設け,このガラスの前面の下側の位置に,円弧の形をしているワイパーが,円の外から円の中心の方に向かっているような状態で,容器に固定されている,雨滴除去装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の令和2年3月16日にされた手続補正では特許請求の範囲の補正がなされていないので,この補正前の令和1年6月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「容器内の下側にはモータを,上側にはモニターに映像を写すことのできるカメラを容器に固定し,モータに円形の透明なガラスを取り付け,このガラスの前面の下側の位置に,円弧の形をしているワイパーが,円の外から円の中心方向に向かっているような状態で,容器に固定されている,雨滴除去装置。」
2.補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ガラス」及び「容器」について,「このガラスと容器は接して設け,」とし,「円の外から円の中心方向に向かっている」を「円の外から円の中心の方に向かっている」としたものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1.(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア.引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-110665号公報(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
・「【請求項1】
開口孔を有する前面板の裏側に設けた清浄部とその後部にカメラ装置を収納するカメラ収納部とを備えたカメラハウジング装置であって,
前記清浄部には電動機で回動する光学回転板とその前面または両面が払拭されるように設置した1または複数個の払拭子とを備え,前記カメラ収納部と清浄部との間に光学ガラス等を用いた撮影窓を有する仕切板を備え,前記カメラ装置の撮影光軸は前記それぞれ撮影窓と光学回転板の面の一部分と開口孔とを通して被写体を撮影し,
前記払拭子は前記回動にともない光学回転板表面の水滴/水濡れまたは塵埃等による汚れを払拭することを特徴とするカメラハウジング装置。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,カメラ装置を収納し撮影窓を通して被写体を撮影するカメラハウジング装置に係り,撮影画像に影響せずに撮影窓を清浄に保つ手段に関する。」
・「【背景技術】
【0002】
従来,ビデオカメラ等のカメラ装置で被写体を撮影して監視/観測/計測,さらにはこれらの記録,画像解析などを行なう装置が使用されている。
これらの屋外における撮影時には,塵埃・風雨または日照などによるカメラ装置の電気/機械的弊害の防護のため,また,撮像レンズ面に付着する水滴または汚れにともなう光学的障害の対処のため,箱状のカメラハウジングに収納して撮影する場合が多い。そしてその撮影は,その前面に設けた光学ガラス等を用いた撮影窓を通して行なわれる。
【0003】
このようなカメラハウジングは,通常,その撮影窓の塵埃等による汚れ,または雨等による水滴,水濡れなどを払拭して光学的障害を除くためのワイパー手段を設けている。
これは,例えば,車両用等のワイパー等に基づくものであって,その撮影窓面を電動で円弧状に往復移動するアームに設けた払拭子で水滴/水濡れなどを払拭する。」
・「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,上記目的を達成するため,次の課題解決手段によりこの問題を解決した。
本発明のテレビジョン画像合成装置の課題解決の手段は,開口孔を有する前面板の裏側に設けた清浄部とその後部にカメラ装置を収納するカメラ収納部とを備えたカメラハウジング装置であって,前記清浄部には電動機で回動する光学回転板とその前面または両面が払拭されるように設置した1または複数個の払拭子とを備え,前記カメラ収納部と清浄部との間に光学ガラス等を用いた撮影窓を有する仕切板を備え,前記カメラ装置の撮影光軸は前記それぞれ撮影窓と光学回転板の面の一部分と開口孔とを通して被写体を撮影し,前記払拭子は前記回動にともない光学回転板表面の水滴/水濡れまたは塵埃等による汚れを払拭することを特徴とする(請求項1)。
【0009】
これにより,光学回転板の回動にともないその表面を払拭する払拭子により水滴/水濡れまたは汚れの蓄積を防いで光学的障害を排除し,しかも,払拭子が撮影されて画面が見ずらかったり,上述の画像データ等に影響することのないカメラハウジング装置を提供できる。
【0010】
また,第2の課題解決手段としては,前記仕切板に通風孔を設け前記収納部を介し清浄部に空気を圧入して前記開口孔より排出する(請求項2)。
従って,霧状の水滴または塵埃/雪等の開口孔からの侵入を防止できる。また,前記排出によりカメラハウジング装置内の熱を放出することもできる。
【0011】
さらに,第3の課題解決手段は,光学回転板の前記回転軸よりも下の部分と払拭子とはそれぞれ前記清浄部に貯水された水等の洗浄液に浸漬されて前記回動にともない該払拭子で払拭洗浄され,前記光学回転板の面の一部分はそれが洗浄液より脱出した位置で上記払拭子とは別の払拭子により洗浄液の水滴/水濡れが払拭された面である(請求項3)。
これにより,水滴または塵埃による汚れが光学回転板に蓄積しないよう洗浄しながら撮影できる。」
・「【0016】
本実施例のカメラハウジング装置は,図1,図2に示すように,開口孔12を有する前面板11の裏側に設けた清浄部6とその後部にカメラ装置10を収納するカメラ収納部7とを備えたカメラハウジング装置1であって,清浄部6には電動機で回動する光学回転板3とその前面または両面が払拭されるように設置した1または複数個の払拭子4とを備え,カメラ収納部7と清浄部6との間に光学ガラス等を用いた撮影窓2を有する仕切板8を備え,カメラ装置10の撮影光軸はそれぞれ撮影窓2と光学回転板3の面の一部分と開口孔12とを通して被写体を撮影し,払拭子4は前記回動にともない光学回転板3表面の水滴/水濡れまたは塵埃等による汚れを払拭することを特徴とする。
【0017】
上記構成の動作を図1および図2を参照して説明する。図2に示すカメラハウジング装置1は,その前面である前面板11の上部に開口孔12が設けられ,その前面板11の裏側には,図1に示すような清浄部6が備えられる。
図1において,カメラハウジング装置1は,清浄部6と仕切板8を介してその後部にカメラ収納部7が構成され,これにはカメラ装置10が前向きに収納される。 これにより,屋外での撮影では,塵埃・風雨または日照などによるカメラ装置10の電気/機械的弊害を防護し,また,撮像レンズ面に付着する水滴または汚れにともなう光学的障害に対処しながら撮影できる。
【0018】
また,この清浄部6には,回転軸5で回動する光学回転板3が設けられ,回転軸5はカメラ収納部7側に設けた電動機に基づき連動する。この場合,光学回転板3は,これに点線の矢印で示す方向に前記回動するものとする。
そして,光学回転板3の前面がその回動にともない払拭されるように払拭子4を設置する。また,前記電動機のオン/オフ動作または速度を調整してもよい。さらに,払拭子4は一個でも複数でもよく,一組等の払拭子4で光学回転板3の両面を払拭してもよい。
【0019】
ここで,仕切板8の上部には光学ガラス等を用いた撮影窓2を設け,これに近接して光学回転板3を配設する。また,カメラ装置10の撮影レンズに基ずく撮影光軸は,それぞれ撮影窓2と,光学回転板3の上部部分と,及び図2の開口孔12とを通し,必要とする視野角で被写体を撮影する。
このようにして,屋外での撮影では,塵埃・風雨または日照などによるカメラ装置10の電気/機械的弊害を防護し,水滴/水濡れまたは塵埃等が撮影窓2に直接付着するのを防ぐ。そして,光学回転板3は,前記回動にともない光学回転板3の前面または両面の水滴/水濡れまたは塵埃等による汚れを払拭子4で払拭することにより,撮影窓2および撮像レンズ9の光学的障害に対処しながら撮影できる。
【0020】
次に,前述の第2の課題解決手段によれば,仕切板8に通風孔を設けカメラ収納部7を介し清浄部6に空気を圧入して前記開口孔より排出する。
すなわち,モーターファンその他により,カメラ収納部7に空気圧を加える手段をカメラ収納部7またはその外部に備え,仕切板8の撮影窓2の上部等に設けた通風孔を介し,前記空気圧によりカメラ収納部7から清浄部6に空気を流入させる。
これにより,図2の開口孔12より空気が排出することにより霧状の水滴または塵埃等の侵入を防止し,また,前記排出によりカメラハウジング装置内の熱を放出できる。
さらに,カメラ収納部7から清浄部6への前記空気の流入は,撮影窓2に添ってエアカーテン効果となるように流入することが望ましい。これにより,特に霧状の水滴または塵埃等に対する防御効果がある。
【0021】
また,第3の課題解決手段によれば,光学回転板3の回転軸5よりも下の部分と払拭子4とはそれぞれ清浄部6に貯水された水等の洗浄液に浸漬されて前記回動にともない該払拭子で払拭洗浄され,光学回転板3の面の一部分はそれが洗浄液より脱出した位置で上記払拭子とは別の払拭子により洗浄液の水滴/水濡れが払拭された面である。
【0022】
これは,清浄部6の下部は水等の洗浄液を貯水できるものとし,光学回転板3の回転軸5よりも下の部分と払拭子4とは前記洗浄液に浸漬される。この洗浄液は別途容器に入れて容器ごと装填するようにすれば,洗浄液の交換が容易となる。
これにより,光学回転板3は,前記回動にともない該払拭子で払拭洗浄され,光学回転板3が回動して前記洗浄液面より脱出した位置で,上記払拭子とは別の払拭子により洗浄液の水滴/水濡れを払拭するものである。また,前記払拭洗浄および別の払拭子による洗浄液の水滴/水濡れの払拭は,光学回転板3の両面についても行なうことが出来る。
【0023】
さらに,第4の課題解決手段は,撮影窓2または光学回転板3は光学フィルタの作用を有するものである。
すなわち,撮影窓2または光学回転板3は,単なる透明な光学ガラス等によるものではなく,光学フィルタを用いることができる。これにより,例えば紫外線/赤外線その他の光学フィルタとして兼用できる。
【0024】
このようにして,本発明は,ハウジングの撮影窓を直接払拭することなく水滴/水濡れまたは汚れの蓄積を防いで光学的障害に対処しながら撮影でき,しかも,円弧状に往復移動する払拭子が撮影されて撮像画面が見ずらかったり,観測データに影響することのないカメラハウジング装置を提供できる。」
・図1,図2には,以下の内容が示されている。
[図:0001384605000001.jpg]
[図:0001384605000002.jpg]
・図1からみて,カメラハウジング装置1は,仕切板8とカメラ収納部7からなる容器を有していることが理解できる。
・図1からみて,カメラ装置10は,カメラ収納部7の上側に収納されているが理解できる。
・段落【0023】の下線部の記載と図1からみて,光学回転板3が円形であり,光学回転板3は,光学フィルタを用いない場合には,透明な光学ガラス等にしてもよいことが理解できる。
・図1からみて,払拭子4は,光学回転板3の円の外から円の中心方向に向かっているような状態で,仕切板8に固定されていることが理解できる。
これらの事項からみて,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「カメラハウジング装置1は,仕切板8とカメラ収納部7からなる容器を有し,
清浄部6と仕切板8を介してその後部にカメラ収納部7が構成され,カメラ収納部7の上側にはカメラ装置10が前向きに収納され,
清浄部6には,回転軸5で回動する光学回転板3が設けられ,回転軸5はカメラ収納部7側に設けた電動機に基づき連動し,
光学回転板3の前面がその回動にともない払拭されるように払拭子4を設置し,払拭子4は前記回動にともない光学回転板3表面の水滴/水濡れまたは塵埃等による汚れを払拭し,
仕切板8の上部には光学ガラス等を用いた撮影窓2を設け,これに近接して光学回転板3を配設し,
清浄部6の下部は水等の洗浄液を貯水できるものとし,光学回転板3の回転軸5よりも下の部分と払拭子4とは前記洗浄液に浸漬され,
光学回転板3は,前記回動にともない該払拭子4で払拭洗浄され,光学回転板3が回動して前記洗浄液面より脱出した位置で,上記払拭子4とは別の払拭子4により洗浄液の水滴/水濡れを払拭し,
光学回転板3が円形であり,光学回転板3は,光学フィルタを用いない場合には透明な光学ガラス等にしてもよく,
払拭子4は,光学回転板3の円の外から円の中心方向に向かっているような状態で,仕切り板8に固定されている,
ハウジングの撮影窓を直接払拭することなく水滴/水濡れまたは汚れの蓄積を防ぐ,カメラハウジング装置1。」
イ.引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭51-58230号公報(以下「引用文献2」という。)には,次の記載がある。
・「本発明はワイパー機構を採り入れた新規な自動車用サイドミラーに関するものである。」(公報1ページ左下欄13~14行)
・「本発明になるサイドミラーは高々100RPM程度の低速回転を行なう回転ミラーの部分と,ミラー表面を掃払するワイパー機構の部分とから成る。」(公報1ページ右下欄8~11行)
・「さて1図は本発明になるサイドミラーの主要部(モーター等は省略)を表わした組立図であり,判り易くするためケース11および回転軸10の一部を切断しである。次に本体の一部を回転ミラーの部分とワイパー機構の部分とに分離して図示したものが各々2図,3図である。回転ミラー1とカム2とはいずれもモーター若しくは減速機付モーターと連結された回転軸10に固定されており40~100RPM程度の低速定回転を行なう。一方ケース11に固定された軸受20の中にはワイパー取付軸4が通つているが,この4にはワイパーブレード3.および二本のアーム5.6が取り付けられている。アーム5の先端は適宜な張力を与えるスプリング9を介してケース11へ接続されている。また先端をL字形に曲げられたアーム6にはカム面との接触を滑らかにするだめのブツシユ(又はベアリング)7がはめ込まれている。以上の機構により,カム2が低速定回転をする場合,ブツシユ7はスプリング9の力によりカムの面に滑らかに接触し続け,これに伴つてワイパーブレード3はカムの一回転につき一回の割合で首振り運動を行なう。またカムに二箇所若しくはそれ以上の切れ込みを入れてカム一回転当りのワイパーブレードの首振り回数を適宜増加させることも,あるいは又回転ミラーの二回転以上に対しカムが一回転する様にミラーとカムとを連結構成する事により,ミラーの二回転若しくはそれ以上に対して一回の割合でブレードに首振り運動をさせる事も可能である。次に4図,5図はワイパーブレード3とカム2との間の相互運動及び相対位置を示す略図であり,1図において回転ミラー1の側から本体を眺めた場合のものである。図中の二点鎖線はミラー1の外周を示す想像線である。さて4図は機構が初期位置にある場合(即ち1図の示す状態)を示す。円弧状に形成されたワイパーブレード3は,この状態にあつてはミラー1の外側に位置しており鏡面視野が3によって妨げられる事はない。次に操作スイツチ18により電源が入れられミラーが(即ちガムが)時計廻りに回転しはじめた直後,ブレード3は立ち上がりその先端は鏡面の中心に達する(5図)。ミラーは回転を続け,それとともにミラー上の雨滴等はブレード3にかき集められる。更にミラーが回転し機構が初期位置(1図,4図の示す状態)に戻る直前ブレード3は鏡面外へと滑らかに移動するが,この際ブレードでかき集められた雨滴等は鏡面周辺へ搬送排除される。以上が本機構の一行程である。6図はミラー1とワイパーブレード3との相互関係を説明するためのものであり,判り易くするためミラーを静止させて考えワイパーブレードの方を相対的に動かした場合の図となっている。図中Aが初期位置(1図,4図の示す状態)に対応し,ミラーの回転に従って(即ち6図にあってはワイパーブレードの回転に従つて)B,C,D,・・・・・と対応する。Uよりワイパーブレードは次第に鏡面外へと移動をし始めV,W,Xを経て最後にAへ戻り一行程を完了する。前述の一行程により鏡面の全面がブレードにより掃引されるのは6図より明白である。」(公報2ページ左上欄9行~右下欄7行)。
・「サイドミラー全体をコンパクトにするためには本図面で示した如き円弧状のワイパーブレードを採用するのが望ましいが,それ以外の形状をもつてしても本発明は実施され得る。」(公報3ページ左上欄9~13行)
・上記記載事項からみて,ワイパー機構が円弧状に形成されたワイパーブレード3を有することは明らかである。
これらの事項からみて,引用文献2には,以下の事項が記載されていると認められる。
「ワイパー機構を採り入れた自動車用サイドミラーに関し,サイドミラーは高々100RPM程度の低速回転を行なう回転ミラーの部分と,ミラー表面を掃払するワイパー機構の部分とから成り,ワイパー機構は,円弧状に形成されたワイパーブレード3を有する,自動車用サイドミラー。」
ウ.引用文献3
本願の出願前に頒布された刊行物である実公大14-18424号公報(以下「引用文献3」という。)には,「掃除器付硝子窓」に関し,次の記載がある。
・「實実用新案ノ性質,作用及効果ノ要領 本案ハ木框(1)ニ圓形ノ切抜孔(3)ヲ穿テル硝子板(2)ヲ施着シ圓孔(3)ニハ少シ大形ノ圓形硝子板(5)ヲ當テ硝子板(2)ト圓形硝子板(5)トノ間二適宜ノ漏水止(4)を施シ圓形硝子板(5)ハ其中心ニテ框(1)ニ固着セル丁字形ノ支ヘ金(6)(8)ニ樞栓(7)ニテ囘轉シ得ヘク支着シ支え金(6)(8)ハ兩面ニ之レヲ設ケ其下垂セル片(8)ノ内面ニハ「フエルト」又ハ「ゴム」(9)等ヲ固着シテ硝子面ヲ掃除スヘク圓形硝子板(5)ニハ框(1)ニ樞着セル車輪(10)ヨリ「ベルト」(11)ヲ掛ケ手動ニヨリ車輪(10)を囘轉セシムルコトニヨリ硝子板(5)ヲ囘轉セシムヘクス
本案ハ船車等ニテ前方を完全ニ透視シ得ル窓ニ用フルモノニシテ外方ヨリノ汚レ及内方ヨリノ曇リヲ自動的ニ掃除シテ透視ヲ完全ナラシムルモノナリ」(1ページ10行~16行)
・第1図,第2図には,以下の内容が示されている。
[図:0001384605000003.jpg]
[図:0001384605000004.jpg]
これらの事項からみて,引用文献3には,以下の事項が記載されていると認められる。
「船車等にて前方を完全に透視し得る窓に用いるものであって,木框1に圓形の切抜孔3を穿った硝子板2を施着し,圓孔3には少し大形の圓形硝子板5を当て,硝子板2と圓形硝子板5との間に漏水止4を施し,圓形硝子板5はその中心にて框1に固着した丁字形の支え金6,8に框栓7にて回転できるように支着し,支え金6,8は両面に設け,その下垂せる片8の内面には,フェルトやゴム9等を固着して,硝子面を掃除すべく,硝子板5を回転させること。」
(3)対比
ア.本件補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「仕切板8とカメラ収容部7からなる容器」は前者の「容器」に相当し,以下同様に,「電動機」は「モータ」に,「カメラ装置10」は「カメラ」に,それぞれ相当する。
イ.後者の「電動機」は「カメラ収納部7側に設け」られており,後者の「カメラ装置10」は「カメラ収納部7の上側に前向きに収納され」ているから,後者のかかる構成と,前者の「容器内の下側にはモータを,上側にはモニターに映像を写すことのできるカメラを容器に固定し」ていることとは,上記ア.の相当関係を踏まえると,「容器内にはモータを,上側にはカメラを容器内に配置し」ていることにおいて共通する。
ウ.後者は「回転軸5で回動する光学回転板3が設けられ,回転軸5はカメラ収納部7側に設けた電動機に基づき連動し」,「光学回転板3が円形であり,光学回転板3は,光学フィルタを用いない場合には透明な光学ガラス等にしてもよ」いものであるから,後者の「電動機」に「円形」の「透明な光学ガラス」である「光学回転板3」を「設け」ることは,上記ア.の相当関係を踏まえると,前者の「モータに円形の透明なガラスを取り付け」ることに相当する。
エ.後者の「仕切板8の上部には光学ガラス等を用いた撮影窓2を設け,これに近接して光学回転板3を配設」することと,前者の「このガラスと容器は接して設け」ることとは,上記ア.,ウ.の相当関係を踏まえると,「このガラスと容器は近接して設け」ることにおいて共通する。
オ.後者は「光学回転板3の前面がその回動にともない払拭されるように払拭子4を設置し,払拭子4は前記回動にともない光学回転板3表面の水滴/水濡れまたは塵埃等による汚れを払拭し,」「清浄部6の下部は水等の洗浄液を貯水できるものとし,光学回転板3の回転軸5よりも下の部分と払拭子4とは前記洗浄液に浸漬され,」「払拭子4は,光学回転板3の円の外から円の中心方向に向かっているような状態で,仕切り板8に固定されている」から,後者の「払拭子4」のかかる固定構造と,前者の「このガラスの前面の下側の位置に,円弧の形をしているワイパーが,円の外から円の中心の方に向かっているような状態で,容器に固定されている」こととは,上記ウ.の相当関係を踏まえると,「このガラスの前面の下側の位置に,水滴や汚れを拭き取る機構が,円の外から円の中心の方に向かっているような状態で,容器に固定されている」ことにおいて共通する。
カ.後者の「ハウジングの撮影窓を直接払拭することなく水滴/水濡れまたは汚れの蓄積を防ぐ,カメラハウジング装置1」の「水滴」には,段落【0003】の下線部の「雨等による水滴,水濡れなど」が含まれることが明らかであるから,後者の「カメラハウジング装置1」は前者の「雨滴除去装置」に相当する。
キ.そうすると,両者は,
「容器内にはモータを,上側にはカメラを容器内に配置し,モータに円形の透明なガラスを取り付け,このガラスと容器は近接して設け,このガラスの前面の下側の位置に,水滴や汚れを拭き取る機構が,円の外から円の中心の方に向かっているような状態で,容器に固定されている,雨滴除去装置。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
容器内にはモータを,上側にはカメラを容器内に配置していることに関して,本件補正発明では,容器内「の下側」にはモータを,上側には「モニターに映像を写すことのできる」カメラを容器に「固定」しているのに対して,引用発明では,「電動機」は「カメラ収納部7側に設け」られ,「カメラ装置10」は「カメラ収納容部7の上側に前向きに収納され」ている点。
<相違点2>
ガラスと容器は近接して設けることに関して,本件補正発明では,ガラスと容器は「接」して設けているのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点3>
水滴や汚れを拭き取る機構が,本件補正発明では,「円弧の形をしているワイパー」であるのに対して,引用発明では,「払拭子4」である点。
(4)相違点の判断
<相違点1について>
技術常識を踏まえると,引用発明の「電動機」や「カメラ装置」が,それらの機能を安定して果たすためには,当然,容器に「固定」されるものといえる。
また,引用文献1には,背景技術として段落【0002】に「従来,ビデオカメラ等のカメラ装置で被写体を撮影して監視/観測/計測,さらにはこれらの記録,画像解析などを行なう装置が使用されている。」と記載されており,引用発明のカメラ装置10を「モニターに映像を写すことのできるカメラ」とすることの示唆があるといえる。
そして,引用発明の「電動機」を容器の一部であるカメラ収納部7のどこに設けるかは,当業者が適宜なし得る程度の設計的事項にすぎないから,引用発明の「カメラ装置」に上記示唆を参考にするとともに,「電動機」と「カメラ装置」の配置に関して,バランス等を考慮して,相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が,容易に想到し得たことである。
<相違点2について>
引用文献3には,上述したように,以下の事項が記載がされている。
「船車等にて前方を完全に透視し得る窓に用いるものであって,木框1に圓形の切抜孔3を穿った硝子板2を施着し,圓孔3には少し大形の圓形硝子板5を当て,硝子板2と圓形硝子板5との間に漏水止4を施し,圓形硝子板5はその中心にて框1に固着した丁字形の支え金6,8に框栓7にて回転できるように支着し,支え金6,8は両面に設け,その下垂せる片8の内面には,フェルトやゴム9等を固着して,硝子面を掃除すべく,硝子板5を回転させること。」
引用文献3に記載されたものは「硝子板2と圓形硝子板5間に漏水止4を施」しているから,圓形硝子板5と硝子板2が接して設けられていることは明らかである。
また,第1図からみて,この圓形硝子板5の前面の下側の位置に,フェルト又はゴム9の設けた下垂せる片8が,円の外から円の中心方向に向かっているような状態で,木框1に固定されていることは明らかである。
言い換えると,引用文献3には,「回転する圓形硝子板5は,硝子板2に接して設けられ,この圓形硝子板5の前面の下側の位置に,フェルト又はゴム9を設けた下垂せる片8が,円の外から円の中心方向に向かっているような状態で,木框1に固定されており,このフェルト又はゴム9により硝子面を掃除されること」(以下,「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されているといえる。
そして,引用発明と引用文献3に記載された事項とは,「回転するガラスは,板に近接して設けられ,ガラスの前面の下側の位置に,払拭子が円の外から円の中心方向に向かっているような状態で固定されている」という機能・作用において共通するから,引用発明の容器を構成する「仕切板8」に引用文献3に記載された事項の「硝子板2」を対応させて適用させることにより,「ガラスと容器は接して設け」ることとして,相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
<相違点3について>
引用文献2には,上述したように以下の事項が記載されている。
「ワイパー機構を採り入れた自動車用サイドミラーに関し,サイドミラーは高々100RPM程度の低速回転を行なう回転ミラーの部分と,ミラー表面を掃払するワイパー機構の部分とから成り,ワイパー機構は,円弧状に形成されたワイパーブレード3を有する,自動車用サイドミラー。」
引用発明と引用文献2に記載された事項とは,回転する部材の水滴や汚れを拭き取る機構において共通するから,引用発明の「払拭子4」に引用文献2に記載された事項を適用することにより,「円弧の形をしているワイパー」として相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が,容易に想到し得たことである。
そして,本件補正発明の効果について検討しても,引用発明,引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて予期される以上の格別のものがあるとはいえない。
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)請求人の主張の検討
請求人は,審判請求書(3ページ14行~4ページ3行)において,
「次に,進歩性についてですが,止まっては動くことの繰り返しで,左右に動く従来のワイパーは,動力の無駄が多く,そのために速く動かすことができません。本願発明の「円形の透明なガラス」は,一方向に動くので,従来のワイパーの約20倍の速さで動きます。しかし,この速さに伴い,ワイパーに約20倍の負荷が掛ります。でも,雨滴が遠心力により外側に動く事と,ワイパーが円弧の形をしていることにより,雨滴を外側へも押し出す作用がある事,この相乗効果により,ワイパーへの負荷を少なくすることになり,大雨の時でも対処できる新しい機能を有することになります。このことは,公知の従来技術には無いもので,進歩性があることを主張致します。
(4)引用文献1は,10種類の部品によって構成されており,引用文献2は,21種類の部品によって構成されています。これに比べて,本願発明は,5種類の部品によって構成されています。このことは,低コストにも繋がりますので「改良されている」とのご見解をお願い申し上げます。
4.本願発明が特許されるべき理由
本願発明は,従来のワイパーとフロントガラスの動きを逆にした独創的な考え方が基本になっています。
特許されるべき理由は,“従来のワイパーの問題点は,誰もが永い間思っていた事であり,それを解消することの出来る具体的な手段を,示すことが出来た発明”だと,今でも思っているからです。」
しかしながら,上述したように,円形の透明なガラスを払拭子に対して一方向に動かすことは,引用発明に開示されており,また,雨滴等を払拭するために,回転する部材に対して円弧状に形成されたワイパーブレードを設けることは引用文献2に記載されているから,これらを組み合わせることにより本件補正発明とすることは容易である。
また,部品点数に関する主張は,特許請求の範囲の記載に基づく主張ではない。
さらに,従来のワイパーとフロントガラスの動きを逆にした独創的な考え方が基本になっている旨主張するが,そのような考え方は,従来から周知である(必要があれば,令和2年2月13日付け拒絶理由通知において先行技術文献等として示された実願昭62-125916号(実開昭64-30766号のマイクロフィルムの第3図,第4図,特開昭53-57629号公報の特許請求の範囲の記載,第2図を参照のこと。)。
したがって,請求人の上記主張は,採用することはできない。
(6)まとめ
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,本件補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件補正前の本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,「第2 1.(2)」に示したとおりのものと認められる。
2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は,以下のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項 1
・引用文献等 1,2
<引用文献等一覧>
1.特開2007-110665号公報(上記第2 2.(2)ア.の引用文献1と同じ)
2.特開昭51-58230号公報(上記第2 2.(2)ア.の引用文献2と同じ)
3.引用文献とその記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献,その記載事項及び引用発明は,上記「第2 2.(2)ア.とイ.」に記載したとおりである。
4.対比・判断
「第2 2.(3)対比」を参照して,本願発明と引用発明とを対比すると,後者は「光学回転板3の前面がその回動にともない払拭されるように払拭子4を設置し,払拭子4は前記回動にともない光学回転板3表面の水滴/水濡れまたは塵埃等による汚れを払拭し,」「清浄部6の下部は水等の洗浄液を貯水できるものとし,光学回転板3の回転軸5よりも下の部分と払拭子4とは前記洗浄液に浸漬され,」「払拭子4は,光学回転板3の円の外から円の中心方向に向かっているような状態で,仕切り板8に固定されている」から,後者の「払拭子4」のかかる固定構造と,前者の「このガラスの前面の下側の位置に,円弧の形をしているワイパーが,円の外から円の中心方向に向かっているような状態で,容器に固定されている」こととは,上記ウ.の相当関係を踏まえると,「このガラスの前面の下側の位置に,水滴や汚れを拭き取る機構が,円の外から円の中心方向に向かっているような状態で,容器に固定されている」ことにおいて共通する。
そうすると,両者は,
「容器内にはモータを,上側にはカメラを容器内に配置し,モータに円形の透明なガラスを取り付け,このガラスの前面の下側の位置に,水滴や汚れを拭き取る機構が,円の外から円の中心方向に向かっているような状態で,容器に固定されている,雨滴除去装置。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1’>
容器内にはモータを,上側にはカメラを容器内に配置していることに関して,本願発明では,容器内「の下側」にはモータを,上側には「モニターに映像を写すことのできる」カメラを容器に「固定」しているのに対して,引用発明では,「電動機」は「カメラ収納部7側に設け」られ,「カメラ装置10」は「カメラ収納容部7の上側に前向きに収納され」ている点。
<相違点3’>
水滴や汚れを拭き取る機構が,本願発明では,「円弧の形をしているワイパー」であるのに対して,引用発明では,「払拭子4」である点。
以下,相違点を検討すると,<相違点1’><相違点3’>は,それぞれ,本件補正発明と引用発明との<相違点1><相違点3>と同様であるから,上記第2 2.(4)<相違点1について>,<相違点3について>の理由と同様の理由により,当業者が容易に相当することができたものである。
そうすると,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-010258