特許拒絶査定不服審判
2020-007771
ウォーターサーバーおよび炭酸水生成プログラム
- 審判番号
- 2020-007771
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-013354
- 請求日
- 2020年06月05日
- 審決日
- 2022年02月28日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パーパス株式会社
- 【請求人代理人】畝本 正一
- 【請求人代理人】畝本 継立
- 【請求人代理人】畝本 卓弥
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 芳枝
- 審判官 田合 弘幸
- 審判官 柿崎 拓
- 分類
- P18 .121-WZ (B67D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016- 13354「ウォーターサーバーおよび炭酸水生成プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年8月3日出願公開、特開2017-132496〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年11月20日 :手続補正書
令和 元年10月 9日付け:拒絶理由通知
令和 元年12月23日 :意見書、手続補正書
令和 2年 2月28日付け:拒絶査定
令和 2年 6月 5日 :審判請求、手続補正書
令和 3年 4月20日付け:拒絶理由通知
令和 3年 6月25日 :意見書、手続補正書
令和 3年 9月 1日付け:拒絶理由通知
令和 3年11月 4日 :意見書
第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和3年6月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「水に炭酸ガスを溶解させ炭酸水を生成し、生成した該炭酸水が貯められる炭酸水貯留部と、該炭酸水貯留部よりも大きな容積が設定され、前記炭酸ガスが供給される炭酸ガス貯留部とを有するタンクと、
前記タンク内における前記炭酸水が基準水位以上の時に前記炭酸水の水位を検出する水位センサと、
前記タンクに接続され、前記タンク内に所定圧の炭酸ガスを常時供給する炭酸ガス供給源と、
前記タンクに補水する補水手段と、
前記タンクから消費される前記炭酸水の水位を前記水位センサの検出水位により監視し、前記炭酸水が出水部から取り出されて消費され、前記タンク内における前記炭酸水の水位が前記基準水位を下回り前記水位センサにより水位が検出されなくなると、前記補水手段から前記タンクに対して前記出水部からの前記炭酸水の消費量よりも多い量での補水を開始させ、前記炭酸水が前記基準水位に到達したことを検出してから所定時間が経過した後、前記補水手段による補水を停止させることで、前記タンクへの補水を開始してから補水を停止するまでの前記補水手段の補水量を前記タンクの前記炭酸水の消費量より大きく設定するとともに、前記タンク内の前記炭酸水を前記基準水位付近に制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするウォーターサーバー。」
第3 拒絶理由の概要
当審にて令和3年9月1日付けで通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献)
1 特開2015-193396号公報
2 特開昭61-152594号公報
第4 引用文献に記載された事項
1 引用文献1
(1)引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審において付した。)。
ア 「【請求項1】
炭酸水を供給する炭酸水回路と、冷水を供給する冷水回路とを有し、
前記炭酸水回路は、水と炭酸ガスとが導入されるカーボネーションタンクと、前記カーボネーションタンクで作られた炭酸水を取り出す炭酸水供給弁とを備え、
前記カーボネーションタンクの少なくとも底部は冷却水槽内の冷却用水に浸漬されており、
前記冷水回路が、前記冷却水槽内の前記冷却用水を取り出し、前記冷水として供給する飲料供給装置。」
イ 「【0017】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
(飲料供給装置の構成)
本発明に係る飲料供給装置10は、図1に例示するように、冷却水を収納可能な冷却水槽1を備えており、冷却水槽1の内部には炭酸ガスを吹き込み可能なカーボネーションタンク2が配置されている。図1は飲料供給装置10に飲料水などを導入する前の状態を示している。
・・・(中略)・・・
【0024】
カーボネーションタンク2には、その内部に炭酸ガスを吹き込むための炭酸ガスボンベ6が第4導管C4を介して接続されており、第4導管C4の途中には炭酸ガスの供給をON/OFF(入り切り)する開閉弁V4が介装されている。なお、開閉弁V4は減圧弁としても良い。
【0025】
飲料供給装置10は、冷却水槽1の冷水をカーボネーションタンク2に供給するための第5導管C5を備えている。第5導管C5の一端は冷却水槽1の天板部材1Aを貫通して底面付近まで延びており、第5導管C5の他端は天板部材1Aを別の位置で貫通してカーボネーションタンク2の内部まで延びている。
【0026】
カーボネーションタンク2内に供給された冷水による炭酸ガスの吸収率を高めるために、第5導管C5の他端側の先端には、冷水を細かな霧状でカーボネーションタンク2内に噴霧するためのノズル(不図示)が設けられている。また、ポンプPの上流側には、水の逆流を防ぐ逆止弁VCが介装されている。逆止弁VCはポンプPの下流側に設置されていても良い。
【0027】
カーボネーションタンク2の一端には、カーボネーションタンク2の底面付近まで延びた第6導管C6が挿通されており、外部に位置する第6導管C6の他端には、炭酸水を供給する炭酸水コックV2(炭酸水供給弁の一例)が設けられている。冷却水槽1と第5導管C5とポンプPとカーボネーションタンク2と第6導管C6と炭酸水コックV2とは、ユーザに炭酸水を供給する炭酸水回路を構成している。
【0028】
また、カーボネーションタンク2には、カーボネーションタンク2内の水位を検出するための水位センサSと、カーボネーションタンク2内の圧力を検出するための圧力センサGとが設けられており、これらのセンサS,Gによる検出信号は制御装置に送られる。」
ウ 「【0030】
(使用前の準備工程)
飲料供給装置10を使用開始する際に制御装置によって実施される工程について以下に説明する。なお、これらの工程は使用者の手動操作で行われても良い。
・・・(中略)・・・
【0033】
この冷却コイル3のON操作とほぼ同時に、図3に例示するように、開閉弁V4が開放され、炭酸ガスボンベ6からカーボネーションタンク2への炭酸ガスの供給が行われる。制御装置は、以後基本的に、圧力センサGによるカーボネーションタンク2内の炭酸ガス圧の検出結果が所定の範囲に保持されるように、開閉弁V4を開閉制御する。
【0034】
冷却水槽1内の水温が所定の値に達し、且つ、圧力センサGによるカーボネーションタンク2内の炭酸ガス圧の検出結果が所定の値に達すると、図4に例示するように、第5導管C5に介装されたポンプPがON操作され、冷却水槽1の冷水が、カーボネーションタンク2の内部に供給される。制御装置は、カーボネーションタンク2内の水面が水位センサSによって検出されてから一定時間後にポンプPをOFF操作する。
【0035】
ポンプPによってカーボネーションタンク2に供給される冷水は、第5導管C5の他端側に設けられたノズル(不図示)を介して噴霧状に供給されることで、カーボネーションタンク2の内部の炭酸ガスとよく接触し、炭酸ガスを十分な比率で吸収した炭酸水となり、カーボネーションタンク2の底部に蓄積される。
【0036】
制御装置は、以後基本的に、カーボネーションタンク2内の水面が水位センサSによって不検出となると、ポンプPをON操作し、同水面が水位センサSによって検出されてから一定時間後にポンプPをOFF操作するという、ON/OFF操作を繰り返す。
【0037】
なお、上述したように、ポンプPによって冷却水槽1の冷水がカーボネーションタンク2内に供給されると、その供給量に匹敵する量の飲料水が自重によって飲料水タンクWTから第1導管C1を介して冷却水槽1に補充されることで、冷却水槽1は基本的に常に満水状態に保持される。」
エ 「【0038】
(使用開始後の工程)
・・・
【0039】
図5に例示するように、ユーザが炭酸水コックV2を開放操作すると、主にカーボネーションタンク2内の炭酸ガスの圧力の作用で、カーボネーションタンク2の炭酸水が、炭酸水コックV2を介して提供される。この排出に基づいて、カーボネーションタンク2内の水位が水位センサSよりも下がると、制御装置がポンプPをON制御することで、冷却水槽1からカーボネーションタンク2へ冷水の補充が開始され、カーボネーションタンク2内の水位が水位センサSに達すると、一定時間(数秒間など)後に制御装置はポンプPをOFF制御する。
【0040】
また、圧力センサGにおいてカーボネーションタンク2内の炭酸ガス圧が所定の値以下になると、開閉弁V4を開き、炭酸ガスを送り込む構成になっている。
なお、ここでは、圧力センサGと電磁弁の開閉弁V4とを組み合わせているが、これらを減圧弁のみに代えてもかまわない。」
(2)上記ア-エから、引用文献1には、以下の事項が記載されていることが理解できる。
オ 上記イの段落【0024】-【0026】の下線部の記載、及び上記ウの段落【0034】-【0036】の下線部の記載から、引用文献1に記載された飲料供給装置のカーボネーションタンク2は、炭酸水が貯められる炭酸水貯留部と、炭酸ガスが供給される炭酸ガス貯留部とを有することが理解できる。
カ 上記イの段落【0028】の記載、上記エの段落【0039】の記載から、引用文献1に記載された飲料供給装置の水位センサSは、カーボネーションタンク2内における炭酸水が基準水位以上の時に炭酸水の水位を検出し、カーボネーションタンク2内における炭酸水の水位が基準水位を下回ると水位を検出しなくなることが理解できる。
キ 上記ウの段落【0034】の下線部の記載及び段落【0036】の記載、並びに上記エの段落【0039】の記載から、引用文献1に記載された飲料供給装置の制御手段は、カーボネーションタンク2から排出される炭酸水の水位を水位センサSの検出水位により監視し、カーボネーションタンク2内の炭酸水を基準水位付近に制御するといえる。
(3)上記ア-エ、及び上記オ-キによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「冷水に炭酸ガスを吸収させ炭酸水を作り、作った該炭酸水が貯められる炭酸水貯留部と、前記炭酸ガスが供給される炭酸ガス貯留部とを有するカーボネーションタンク2と、
前記カーボネーションタンク2内における前記炭酸水が基準水位以上の時に前記炭酸水の水位を検出する水位センサSと、
前記カーボネーションタンク2に接続され、前記カーボネーションタンク2内に前記カーボネーションタンク2内の炭酸ガス圧が所定の範囲に保持されるように炭酸ガスを供給する炭酸ガスボンベ6と、
前記カーボネーションタンク2に冷水を補充する冷却水槽1及びポンプPと、
前記カーボネーションタンク2から排出される前記炭酸水の水位を前記水位センサSの検出水位により監視し、前記炭酸水が炭酸水コックV2から取り出されて排出され、前記カーボネーションタンク2内における前記炭酸水の水位が前記基準水位を下回り前記水位センサSにより水位が検出されなくなると、前記冷却水槽1及びポンプPから前記カーボネーションタンク2に対して冷水の補充を開始させ、前記炭酸水が前記基準水位に到達したことを検出してから一定時間後、前記冷却水槽1及びポンプPによる冷水の補充を停止させ、前記カーボネーションタンク2内の前記炭酸水を前記基準水位付近に制御する制御装置と、
を備える飲料供給装置。」
2 引用文献2
(1)引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「ポンプによる加圧水を炭酸ガスで加圧されたカーボネータヘ導入して炭酸水を生成する装置に於いては導入される加圧水の温度により炭酸水の質が異なることが知られている。従来のこの種の飲料供給装置としては第4図に示すものがある。」(第1ページ左下欄第18行-右下欄第2行)
イ 「 実施例の説明
以下に本発明の一実施例について説明する。
尚、従来例と同一構成部品については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
10は流量調整器で加圧水のカーボネータ3ヘの流量を調整するものである。11は飲料供給弁、12は炭酸水を一定流量の下に供給弁11へ導くための自動調整器である。」(第2ページ右上欄第15行-左下欄第2行)
ウ 「従って、炭酸水の取出時の単位時間流量は2.25l/minであるが、停止時間6秒があるため0.9l/min相当の取出流量となっている。
一方、カーボネータ3への導入流量は前記の取出流量より多く設定し、連続して供給弁11から取出しても炭酸水量の減少に伴なう飲料の質の不良を生じさせない必要があるため、約1.2l/minの導入流量となるよう流量調整器10にて調整している。」(第2ページ右下欄第12-20行)
(2)上記ア-ウによれば、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「ポンプによる加圧水と炭酸ガスとをカーボネータへ導入して炭酸水を生成する飲料供給装置において、連続して供給弁から取り出しても炭酸水量の減少に伴なう飲料の質の不良を生じさせないようにするために、カーボネータへの加圧水の導入流量を炭酸水の取出流量より多く設定する技術」
第5 対比、判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「冷水」は、その機能もしくは文言の意味に照らして、本願発明の「水」に相当し、以下同様に、「炭酸ガス」は「炭酸ガス」に、「吸収させ」は「溶解させ」に、「炭酸水」は「炭酸水」に、「作り」は「生成し」に、「カーボネーションタンク2」は「タンク」に、「水位センサS」は「水位センサ」に、「炭酸ガスボンベ6」は「炭酸ガス供給源」に、「冷水を補充する」は「補水する」に、「冷却水槽1」及び「ポンプP」は「補水手段」に、「排出される」は「消費される」に、「炭酸水コックV2」は「出水部」に、「冷水の補充」は「補水」に、「一定時間後」は「所定時間が経過した後」に、「制御装置」は「制御手段」に、「飲料供給装置」は「ウォーターサーバー」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「炭酸ガスが供給される炭酸ガス貯留部」と本願発明の「炭酸水貯留部よりも大きな容積が設定され、前記炭酸ガスが供給される炭酸ガス貯留部」とは、「炭酸ガスが供給される炭酸ガス貯留部」という限りにおいて一致する。
さらに、引用発明1の「カーボネーションタンク2に接続され、前記カーボネーションタンク2内に前記カーボネーションタンク2内の炭酸ガス圧が所定の範囲に保持されるように炭酸ガスを供給する炭酸ガスボンベ6」と本願発明の「タンクに接続され、前記タンク内に所定圧の炭酸ガスを常時供給する炭酸ガス供給源」とは、「タンクに接続され、前記タンク内に炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給源」という限りにおいて一致する。
(2)以上の対比を総合すると、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「水に炭酸ガスを溶解させ炭酸水を生成し、生成した該炭酸水が貯められる炭酸水貯留部と、前記炭酸ガスが供給される炭酸ガス貯留部とを有するタンクと、
前記タンク内における前記炭酸水が基準水位以上の時に前記炭酸水の水位を検出する水位センサと、
前記タンクに接続され、前記タンク内に炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給源と、
前記タンクに補水する補水手段と、
前記タンクから消費される前記炭酸水の水位を前記水位センサの検出水位により監視し、前記炭酸水が出水部から取り出されて消費され、前記タンク内における前記炭酸水の水位が前記基準水位を下回り前記水位センサにより水位が検出されなくなると、前記補水手段から前記タンクに対して補水を開始させ、前記炭酸水が前記基準水位に到達したことを検出してから所定時間が経過した後、前記補水手段による補水を停止させ、前記タンク内の前記炭酸水を前記基準水位付近に制御する制御手段と、
を備えるウォーターサーバー。」
(相違点1)
炭酸ガス貯留部に関して、本願発明は、「炭酸水貯留部よりも大きな容積が設定され」ているのに対して、引用発明1は、炭酸水貯留部との関係でどの程度の容積であるのかが不明である点。
(相違点2)
炭酸ガス供給源に関して、本願発明は、「所定圧」の炭酸ガスを「常時」供給するのに対して、引用発明1は、カーボネーションタンク2内の炭酸ガス圧が所定の範囲に保持されるように供給するものであるものの、所定圧の炭酸ガスを常時供給するとまではいえない点。
(相違点3)
炭酸水が出水部から取り出されて消費され、タンク内における炭酸水の水位が基準水位を下回り水位センサにより水位が検出されなくなると、本願発明は、「前記出水部からの前記炭酸水の消費量よりも多い量での」補水を開始させ、「前記タンクへの補水を開始してから補水を停止するまでの前記補水手段の補水量を前記タンクの前記炭酸水の消費量より大きく設定する」のに対して、引用発明1は、そのような構成を備えていない点。
2 判断
以下、相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明1において、炭酸ガス貯留部と炭酸水貯留部との容積比率は、炭酸水の消費量、炭酸水の濃度、炭酸ガスの圧力、タンク全体の容積等に基いて、当業者が適宜決定すべき設計上の事項にすぎない。
また、前記炭酸ガス貯留部が前記炭酸水貯留部より大きな容積を備えるという設定は、当業者がなし得た設計範囲から逸脱するものではない(引用文献1の図5-6にも示唆されている。)。
(2)相違点2について
引用文献1の段落【0040】(上記「第4」1(1)エ)には、炭酸ガスボンベ6からカーボネーションタンク2への炭酸ガスの供給手段として、圧力センサGと電磁弁の開閉弁V4とを組み合せて用いることに代えて、減圧弁のみを用いることが示唆されている。ここで、減圧弁は、一次側(上流側)の圧力を減圧して二次側(下流側)に一定圧力を与える機能を有する弁であることは、この出願の出願時の技術常識である。してみると、引用発明1において、引用文献1の上記示唆に基づき、減圧弁を介してカーボネーションタンク2内に所定圧の炭酸ガスを常時供給するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
(3)相違点3について
引用文献2には、上記「第4」2のとおり、「ポンプによる加圧水と炭酸ガスとをカーボネータへ導入して炭酸水を生成する飲料供給装置において、連続して供給弁から取り出しても炭酸水量の減少に伴なう飲料の質の不良を生じさせないようにするために、カーボネータへの加圧水の導入流量を炭酸水の取出流量より多く設定する技術」(引用文献2に記載された技術)が記載されている。
そして、引用発明1においても、連続して炭酸水コックV2から取り出しても炭酸水量の減少に伴なうカーボネータタンク2から取り出される炭酸水の質の不良を生じさせないようにすることは、当業者であれば当然考慮する課題といえるから、当該課題を解決するために、引用発明1に引用文献2に記載された技術を適用して、炭酸水が炭酸水コックV2から取り出されて排出され、カーボネーションタンク2内における炭酸水の水位が基準水位を下回り水位センサSにより水位が検出されなくなると、冷却水槽1及びポンプPからカーボネーションタンク2に対して『炭酸水コックV2からの炭酸水の排出量よりも多い量での』冷水の補充を開始させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そうすると、引用発明1に引用文献2に記載された技術を適用したものは、本願発明と同様に、「炭酸水が出水部から取り出されて消費され、タンク内における炭酸水の水位が基準水位を下回り水位センサにより水位が検出されなくなると、前記補水手段から前記タンクに対して前記出水部からの前記炭酸水の消費量よりも多い量での補水を開始させ、前記炭酸水が前記基準水位に到達したことを検出してから所定時間が経過した後、前記補水手段による補水を停止させる」との事項を備えることとなり、当該事項を備えることの結果として、タンクへの補水の開始から保水を停止するまでの期間においては、常に『単位時間当たりの補水手段の補水量>単位時間当たりのタンクの炭酸水の消費量』という関係を満たすよう補水と炭酸水の消費が行われることから、「前記タンクへの補水を開始してから補水を停止するまでの前記補水手段の補水量を前記タンクの前記炭酸水の消費量より大きく設定する」こととなることは当業者にとって明らかであり、相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明1に引用文献2に記載された技術を適用して必然的に得られる構成にすぎない。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は、令和3年11月4日提出の意見書において、「・・・引用文献1ではタンク内の水位が水位センサSに達してから一定時間後にポンプを停止することを記載するものの、飲料水の排出開始時点におけるカーボネーションタンク内の水の残量が不明であることから、水位が水位センサSに達してから一定時間後にポンプをOFFにしたからといって、排出量よりも多い量を供給することにはならない。」、「また、引用文献1では冷却水槽から冷水の補充をすることを記載するに過ぎず、補水量と消費量の関係については何ら記載が無く、本願のように、補水手段からタンクに対して出水部からの炭酸水の消費量よりも多い量での補水を開始させることの開示はなく、これを示唆する記載も無い。」、「・・・引用文献2は、・・・(中略)・・・、本願のように、炭酸水が前記基準水位に到達したことを検出してから所定時間が経過するまで補水を行うことはない。また、上限水位に到達した後に補水を行うことについて示唆する記載も無い。斯かる内容の引用文献2は、本願における上記相違点を開示するものではなく、これを示唆してもいない。」と主張している。
かかる主張について検討するに、引用文献1には、補水手段からタンクに対して出水部からの炭酸水の消費量よりも多い量での補水を開始させることの開示や示唆がないものの、引用文献2には、上記「第4」2(2)のとおり、「ポンプによる加圧水と炭酸ガスとをカーボネータへ導入して炭酸水を生成する飲料供給装置において、連続して供給弁から取り出しても炭酸水量の減少に伴なう飲料の質の不良を生じさせないようにするために、カーボネータへの加圧水の導入流量を炭酸水の取出流量より多く設定する技術」(引用文献2に記載された技術)が記載されている。
引用文献2に記載された飲料供給装置は、カーボネータ3内の水位が下限水位に達すると加圧水の導入を開始し、水位が上限水位に達すると加圧水の導入を停止することから、基準水位が一つしかない本願発明や引用発明1とは、補水を停止する具体的な方法は異なるものの、引用文献2に記載された飲料供給装置は、本願発明や引用発明1と、補水の開始時点の水位より高い水位で補水を停止するように制御を行うという点で技術思想が共通している。
そして、上記(3)のとおり、引用発明1に引用文献2に記載された技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たことであり、請求人が主張する相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明1に引用文献2に記載された技術を適用した結果として必然的に得られる構成にすぎないから、請求人の上記主張は当たらない。
イ 請求人は、上記意見書において、「引用文献1では、シンプル且つコンパクトな飲料供給装置の提供を課題としていることから、当業者においても同様の課題を解決しようとする発明を組み合わせることになる。逆に、引用文献1に記載の飲料供給装置に対して新たな部材を付加する等、引用文献1よりも複雑な構造の飲料供給装置についてはあえてこれを適用する動機付けがあるとは考えられない。」、「・・・引用文献2と引用文献1とでは解決すべき課題が異なっている。その上、引用文献2は冷却水槽に冷却水管を浸漬させるだけでなく、冷却水管、冷却水槽、カーボネータに加えて新たに流量調整器を設置している。このように冷却水槽に冷却水管を浸漬し、流量調整器を新たに設けることは、表面積を小さくすること、冷却水槽内を清浄な状態に維持し、シンプル且つコンパクトな飲料供給装置を達成するという引用文献1の課題、効果とは逆行した内容である。このような引用文献1とは課題、効果が異なる上、引用文献1が避けようとする構成を採用する引用文献2の内容を、引用文献1を参照した当業者が採用することは到底考えられず、引用文献1に対して組み合わせる動機付けもない。」とも主張している。
しかしながら、引用発明と引用文献2に記載された技術はともに、ポンプによる加圧水と炭酸ガスとをカーボネータへ導入して炭酸水を生成する飲料供給装置に係るものであり、引用文献2に記載された「連続して供給弁から取り出しても炭酸水量の減少に伴なう飲料の質の不良を生じさせないようにする」という課題は、引用発明1においても、当業者であれば当然考慮する課題といえるから、引用発明1に引用文献2に記載された技術を適用する動機付けは十分に存在する。
そして、引用文献2において、「連続して供給弁から取り出しても炭酸水量の減少に伴なう飲料の質の不良を生じさせないようにする」という課題を解決するために必要となるのは、「カーボネータへの加圧水の導入流量を炭酸水の取出流量より多く設定する」との事項であり、引用文献2に接した当業者であれば、引用発明1において、上記課題を解決するために、引用文献2に記載された事項から、冷却水槽2に冷却水管6を浸漬するとの事項と切り離して、「カーボネータへの加圧水の導入流量を炭酸水の取出流量より多く設定する」との事項を抽出して引用発明1に適用することは、容易に想到し得たことである。
また、引用発明1は、従来「冷却水槽内に水冷却コイルを配置する必要があるため、どうしても装置全体が嵩張り、構造が複雑になる傾向があった」(引用文献1の段落【0004】)ところ、「冷却水槽内の冷えた冷却用水を取り出し、冷水として供給する構成」の採用により、「水源から導かれた水を冷やすための冷却手段(水冷却コイルなど)を冷却水槽内に配置する必要がなくな」り、「冷却水槽を小型のもので済ますことができ、コンパクトで且つ軽量な飲料供給装置が得られる」(引用文献1の段落【0007】)という効果を奏するものであるから、流体調整器程度のものの設置まで阻むものではない。
ウ 以上のとおりであるから、請求人の上記主張はいずれも採用することはできない。
(5)作用効果について
そして、本願発明が奏する効果は、全体としてみて、引用発明1及び引用文献2に記載された技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものではない。
(6)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明1、引用文献1に記載された事項及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-007771