2020-006043
電気絶縁ケーブル
- 審判番号
- 2020-006043
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-166439外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年05月01日
- 審決日
- 2022年07月26日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】住友電気工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 信栄特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 25項目
第1 手続の経緯
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本願(特願2019-166439号)は、平成25年5月1日(以下「本件原出願日」という。)に出願された特許出願(特願2013-96607号)の一部を平成27年4月21日に新たな特許出願(特願2015-86737号)とし、更にその一部を平成29年4月21日に新たな特許出願(特願2017-84707号)とし、更にその一部を平成30年11月26日に新たな特許出願(特願2018-220011号)とし、さらに、その一部を令和元年9月12日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
1 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明は、令和3年2月3日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、本願請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線であって、電動パーキングブレーキ用の2本の第1のコア材と、アンチロックブレーキシステム用の2本の第2のコア材と、によって形成されたコア電線と、前記コア電線のみを巻くテープ部材と、前記テープ部材上に形成された被覆層と、続きを表示(全14行)を備え、2本の前記第1のコア材の各々の導体の断面積は、1.5~3.0mm2の範囲に含まれ、2本の前記第2のコア材の各々の導体の断面積は、0.18~0.40mm2の範囲に含まれ、2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成され、2本の前記第1のコア材と前記サブユニットとがそれぞれ接しているとともに、2本の前記第1のコア材及び前記サブユニットは前記テープ部材と接している、電気絶縁ケーブル。【請求項2】前記被覆層は、前記テープ部材を覆うように形成された第1の被覆層と、前記第1の被覆層上に形成された難燃性の架橋ポリウレタンの第2の被覆層と、を含み、前記第1の被覆層は、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、またはこれらの少なくとも2種を混合して形成される化合物のいずれかである、請求項1に記載の電気絶縁ケーブル。【請求項3】前記テープ部材は、紙テープである、請求項1または請求項2に記載の電気絶縁ケーブル。」
2 本願明細書の記載
本願明細書には、次のとおりの記載がある。
(1) 技術分野
「本発明は、テープ部材を含む電気絶縁ケーブルに関するものである。」(段落【0001】)
(2) 背景技術
「導体及びこれを覆う絶縁層からなるコア材と、このコア材を覆う被覆層と、この被覆層を覆うシースとを備えるケーブルが知られている。このケーブルを製造する際に、コア材の外周面にケーブルの長さ方向に沿って間欠的に粉体を塗布しておき、ケーブルの被覆層を簡単に剥がしてコア材を容易に取り出すことを可能とする技術が知られている・・・。」(段落【0002】)
(3) 発明が解決しようとする課題
「しかしながら、上記の・・・ケーブルの構成では、コア材を取り出すためにシースと被覆層に刃を入れて除去する際、コア材の外周面に塗布された粉体が周囲に飛散してしまう場合がある。粉体が作業者の周囲に飛散してしまうと、コア材を取り出す作業の作業性が低下してしまうことがあった。」(段落【0004】)
「本発明は、コア材を取り出す作業の作業性が良い電気絶縁ケーブルを提供することを目的とする。」(段落【0005】)
(4) 課題を解決するための手段
「上記の目的を達成するために、本発明の電気絶縁ケーブルは、導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線と、前記コア電線を覆うように形成された第1の被覆層と、前記第1の被覆層を覆うように形成された第2の被覆層と、前記コア電線と前記第1の被覆層との間に、前記コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ部材と、を備え、前記第2の被覆層は、難燃性のポリウレタン系樹脂で形成され、各々の前記導体の断面積は、0.18~3.0mm2の範囲に含まれる、ものである。」(段落【0006】)
(5) 発明の効果
「本発明によれば、コア材を取り出す作業の作業性が良い電気絶縁ケーブルを提供することができる。」(段落【0007】)
(6) 発明を実施するための形態
「(第1の実施形態)図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気絶縁ケーブル10の構成を示す断面図である。電気絶縁ケーブル10は、例えば、車両に搭載された電動パーキングブレーキ(Electro Mechanical Parking Brake:EPB)に用いられるものであり、ブレーキキャリパーを駆動するモータに電気信号を送信するためのケーブルとして用いることができる。」(段落【0020】)
「図1に示すように、電気絶縁ケーブル10は、コア電線1と、コア電線1に巻き付けられた紙テープ2(テープ部材の一例)と、コア電線1に巻き付けられた紙テープ2の外周を覆うシース3とを有している。・・・」(段落【0021】)
「コア電線1は、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材4(コア材の一例)が互いに撚り合されて形成される。2本の第1のコア材4の各々は、導体5と導体5の外周を覆うように形成された絶縁層6とから構成されている。」(段落【0022】)
「導体5は、例えば、銅合金からなる銅合金線であり、外径0.08m(審決注:「0.08mm」の誤記と認める。)の素線を複数本撚り合されて形成された撚線である。導体5を構成する素線の本数としては、360~610本程度である。このように構成された導体5の断面積(複数本の素線の合計断面積)は、1.5~3.0mm2の範囲、好ましくは、1.8~2.5mm2の範囲に含まれるように設定される。・・・」(段落【0023】)
「紙テープ2は、コア電線1の外周に螺旋状に巻き付けられ、コア電線1と後述する内部シース7との間に配置される。紙テープ2は、その厚さが0.02~0.06mmの範囲、好ましくは、0.03~0.05mmの範囲に含まれるものが用いられる。なお、材料としては紙テープに限られず、ポリエステルなど樹脂材料で形成された人工繊維のテープを用いても良い。・・・」(段落【0025】)
「シース3は、内部シース7(第1の被覆層の一例)と、外部シース8(第2の被覆層の一例)とからなる二層構造を有しており、紙テープ2が巻き付けられた状態のコア電線1(以下、テープ付きコア電線100とも称する)を覆うように形成される。」(段落【0026】)
「次に、電気絶縁ケーブル10を製造する方法について説明する。図2は、電気絶縁ケーブル10を製造する製造装置11の概略構成を示している。図2に示すように、製造装置11は、2つのコア材サプライリール12と、撚り合せ部13と、紙テープサプライリール14と、紙テープ巻付部15と、内部シース被覆部16と、外部シース被覆部17と、冷却部18と、ケーブル巻付リール19と、を備えている。」(段落【0029】)
「2つのコア材サプライリール12の各々には、第1のコア材4が巻き付けられており、2本の第1コア材4が撚り合せ部13に供給される。撚り合せ部13では、供給されてきた2本の第1コア材4が互いに撚り合わされてコア電線1が形成される。このコア電線1は紙テープ巻付部15に送られる。」(段落【0030】)
「紙テープ巻付部15では、撚り合せ部13から送られてきたコア電線1と紙テープサプライリール14から供給されてきた紙テープ2とが合流し、コア電線1の外周に紙テープ2が螺旋状に巻き付けられて、テープ付きコア電線100が形成される。このテープ付きコア電線100は、内部シース被覆部16に送られる。」(段落【0031】)
「内部シース被覆部16は、架橋ポリエチレン等の樹脂材料が貯留された貯留部16aと連結されている。内部シース被覆部16では、この貯留部16aから供給されてきた樹脂材料がテープ付きコア電線100の外周に押し出されて被覆される。このようにして、内部シース7がテープ付きコア電線100の外周を覆うように形成される。内部シース7が被覆されたテープ付きコア電線100は、外部シース被覆部17に送られる。」(段落【0032】)
「外部シース被覆部17は、難燃性の架橋ポリエチレン等の樹脂材料が貯留された貯留部17aと連結されている。外部シース被覆部17では、この貯留部17aから供給されてきた樹脂材料が、内部シース被覆部16により形成された内部シース7の外周に押し出されて被覆される。このようにして、外部シース8が内部シース7の外周を覆うように形成されて、内部シース7と外部シース8とからなる二層構造のシース3が被覆された電気絶縁ケーブル10が形成される。この電気絶縁ケーブル10は、冷却部18に送られてシース3が冷却されて硬化された後、ケーブル巻付リール19に送られて巻き付けられる。」(段落【0033】)
「以上説明したように、電気絶縁ケーブル10は、コア電線1を構成する第1のコア材4の導体5の断面積が1.5~3.0mm2の範囲に含まれる比較的に細径のケーブルである。また、外部シース8が難燃性のポリウレタン系樹脂で形成されている。このように、電気絶縁ケーブル10は、車両用途の細径のケーブルとして要求される性能である難燃性や絶縁性を満たすのに適しており、車両に搭載される電動パーキングブレーキに用いることができる。また、電気絶縁ケーブル10は、コア電線1と内部シース7との間に紙テープ2が配置され、コア電線1と内部シース7とが分離して配置されている。このため、電気絶縁ケーブル10の端末をコネクタや基板に接続するためにシース3を除去してコア電線1を露出させる際に、紙テープ2を除去することによって容易にコア電線1と内部シース7とを分離して露出した状態にすることができる。また、コア電線1に粉体等が付着されていないため、シース3を除去する際に粉体等が飛散することが無い。このため、例えば、作業者の手や着衣が飛散した粉体で汚れてしまうことを防いだり、飛散した粉体が作業者の視界を妨げてしまうことを防ぐことができる。このように、上記の構成の電気絶縁ケーブル10によれば、コア電線1(各コア材4)を取り出す作業の作業性を向上させることができる。」(段落【0034】)
「(第2の実施形態)次に、本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一構成の部分には同一符号を付すことで説明を省略する。図3は、第2の実施形態に係る電気絶縁ケーブル30の断面を示している。本例の電気絶縁ケーブル30は、電動パーキングブレーキの電気信号を送信する用途に加えて、アンチロックブレーキシステム(Antilock Brake System:ABS)の動作を制御する電気信号を送信するのに用いることができる。」(段落【0036】)
「図3に示すように、本例の電気絶縁ケーブル30は、コア電線1Aが、2本の第1のコア材4に加えて、ABS用の信号を送信するためのサブユニット31を有する点で第1の実施形態と異なっている。」(段落【0037】)
「サブユニット31は、第1のコア材4の直径より小さく互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材32(コア材の一例)が互いに撚り合されて形成されている。2本の第2のコア材32の各々は、導体33と導体33の外周を覆うように形成された絶縁層34とから構成されている。」(段落【0038】)
「導体33は、例えば、銅合金からなる銅合金線であり、外径0.08m(審決注:「0.08mm」の誤記と認める。)の素線を複数本撚り合されて形成された撚線である。導体33を構成する素線の本数は、50~70本、好ましくは、60本程度である。このように構成された導体33の断面積は、0.18~0.40mm2の範囲に含まれるように、好ましくは、0.3mm2程度に設定される。・・・」(段落【0039】)
「上記のように構成されたサブユニット31と2本の第1のコア材4とが一括して撚り合されてコア電線1Aが形成される。このコア電線1Aに対して、外周に紙テープ2が巻き付けられ、さらにその外周に内部シース7と外部シース8が押出被覆で形成されて電気絶縁ケーブル30が形成される。」(段落【0041】)
「以上説明したように、電気絶縁ケーブル30はABS用の信号を送信するためのサブユニット31を有し、このサブユニット31は、その導体33の断面積が0.18~0.40mm2の範囲に含まれる第2のコア材32が2本撚り合わせて形成されている。そして、このサブユニット31が2本の第1のコア材4と撚り合されてコア電線1Aが形成されている。このコア電線1Aを有する電気絶縁ケーブル30は、車両に搭載される電動パーキングブレーキのための電気信号だけでなく、アンチロックブレーキシステムのための電気信号を送信することができる。このように1つのケーブルで2種類のシステムを動作させる電気信号を送信できるため、ケーブルの利便性が向上する。」(段落【0042】)
3 本願発明の技術的意義
上記1及び2によれば、本願発明の技術的意義は、次のとおりであると認められる。
(1) 本願発明は、テープ部材を含む電気絶縁ケーブルに関する発明である。(段落【0001】)
(2) 従来、導体及びこれを覆う絶縁層からなるコア材と、このコア材を覆う被覆層と、この被覆層を覆うシースとを備えるケーブルを製造する際に、コア材の外周面にケーブルの長さ方向に沿って間欠的に粉体を塗布しておき、ケーブルの被覆層を簡単に剥がしてコア材を容易に取り出すことを可能とする技術が知られていた。(段落【0002】)
(3) しかしながら、上記のケーブルの構成では、コア材を取り出すためにシース及び被覆層に刃を入れて除去する際に、コア材の外周面に塗布された粉体が周囲に飛散してしまう場合があり、コア材を取り出す作業の作業性が低下してしまうという課題があった。(段落【0004】)
(4) そこで、本願発明の電気絶縁ケーブルは、導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むコア材が複数本撚り合わされて形成されたコア電線と、前記コア電線を覆うように形成された被覆層と、前記コア電線と前記被覆層との間に、前記コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ部材とを備えることにより、上記の課題を解決しようとするものである。(段落【0005】及び【0006】)
(5) 本願発明の電気絶縁ケーブルは、被覆層を除去してコア電線を露出させる作業をする際に、テープ部材を除去することによって容易にコア電線と被覆層とを分離することができ、また、粉体等が飛散することがないことから、上記作業の作業性を向上させることができるという効果を奏する。(段落【0034】)
第3 原査定の理由及び、原審決の理由(当審拒絶理由)
1 原査定の理由
令和2年2月5日付け拒絶査定の理由の要旨は、次のとおりのものである。
この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
請求項1、3については下記引用文献A、B、請求項2について下記引用文献A~Cが引用された。
A 特開昭62-122012号公報(下記原審決の理由の引用文献1と同じ。)
B 実願昭52-059637号(実開昭53-153489号)のマイクロフィルム
C 特開2012-238438号公報(下記原判決の理由の引用文献6と同じ。)
2 原審決の理由(当審拒絶理由)
原審決の理由となった、令和2年12月7日付け当審が通知した拒絶理由の要旨は、次のとおりのものである。
この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
請求項1については下記引用文献1~6、請求項2及び3については下記引用文献1~7が引用された。
1 特開昭62-122012号公報
2 実願平4-32782号(実開平5-83940号)のCD-ROM
3 特開2010-27423号公報
4 特開2002-352629号公報
5 特開2002-216549号公報
6 特開2012-238438号公報
7 国際公開第2005/013291号
第4 原審決の理由(当審拒絶理由)について
まず、原審決の理由(当審拒絶理由)について検討する。
1 引用文献1の記載と引用発明
(1) 引用文献1の記載
引用文献1には、発明の名称を「ケーブル」とする発明に関し、次のとおりの記載がある。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
ア 特許請求の範囲
「導電体の外周に絶縁体を被覆して形成される電源用線心及び信号用線心を備えたケーブルにおいて、前記電源用線心の導電体径を前記信号用線心の導電体径よりも大きく形成させ、かつ、信号用線心を複数本単位で撚り合わせた撚線とし、電源用線心と信号用線心とを束ねてその外周をシースで覆ったことを特徴とするケーブル。」
イ 発明の詳細な説明
産業上の利用分野
「本発明は、電源に接続される電源用線心と、電気機械あるいは電子機器等に接線される信号用線心と、を備えたケーブルに関する。」(1頁左下欄14行ないし16行)
従来の技術
「従来ケーブルは、接続箇所に応じてそれぞれの接続箇所に適した線心を構成するという配慮が成されておらず、同径の導電体を有する線心が複数本束ねられて構成されたものであった。一般的には、複数の線心が同一面上に並列に配列され、紙テープ等により束ねられたものが知られているが、このようなケーブルは曲げ方向が規制されて配線作業が行ない難いし、梱包も不便であった。そこで、線心を丸く束ねることが行なわれたが、紙テープをところどころ巻きつけて束ねただけのものはまとまりが悪く扱い難いために、第4図に示されているようなものが考案された。この従来のケーブルは、線心01を束ねてその線心束の外周に樹脂による外皮02を線心埋め込み状態で被覆させたものである。」(1頁左下欄18行ないし右下欄13行)
発明が解決しようとする問題点
「しかしながら、このような従来のケーブルにあっては、複数の同径の線心が外皮内に平行に埋め込まれていたために、信号用に用いた場合には外部からノイズを拾い易く、また、外皮を切除する際に線心を傷つけ易いという問題点があった。」(1頁右下欄15行ないし20行)
問題点を解決するための手段
「本発明は上述のような問題点を解決することを目的としてなされたもので、この目的達成のために本発明では、導電体の外周に絶縁体を被覆して形成される電源用線心及び信号用線心を備えたケーブルにおいて、前記電源用線心の導電体径を前記信号用線心の導電体径よりも大きく形成させ、かつ、信号用線心を複数本単位で撚り合わせた撚線とし、電源用線心と信号用線心とを束ねてその外周をシースで覆った。」(2頁左上欄2行ないし10行)
作用
「従って、本発明のケーブルでは、上述のように、電源用線心の導電体径を信号用線心の導電体径よりも大きく形成させたことにより、電源用線心を電源に接続した場合には電圧降下を小さくすることができるし、信号用線心を複数本単位で撚り合わせた撚線としたことにより、信号用線心を電気機械あるいは電子機器に接続した場合には外部からのノイズの影響を少なくすることもできる。また、電源用線心と信号用線心とはその外周がシースで覆われているのみであるため、配線工事の時、線心を傷つけることなくシースが切除でき、両線心の取り出しが容易に行なえる。」(2頁左上欄12行ないし右上欄4行)
実施例
(ア) 「以下、本発明の実施例を図面により詳述する。尚、この実施例を述べるにあたって、家庭内の配線に用いられるバスケーブルを例にとって説明する。まず、第1図~第3図に示す実施例についてその構成を説明する。・・・このバスケーブルAは、2本の電源用線心10と4本の信号用線心20とシース30とを備えている。・・・前記電源用線心10は、電圧降下を小さくするために導電体径が信号用線心20の導電体径(直径0.9mm前後)よりも大きな径(直径1.5mm前後)で形成されており、前記信号用線心20は外部の強電電線等からのノイズの影響を小さくするために2本単位で撚り合わされており、2束の撚線を構成している。」(2頁右上欄6行ないし左下欄20行)
(イ) 「前記両線心10、20は、第2図に示すように、信号用線心20の2束の撚線が互いに接すると共に、2本の電源用線心10がそれぞれ信号用線心20による2束の撚線に接するように配置された状態で一体に撚り合わされ、その外周は円筒状のシース30によって覆われており、これらの大きさは、電源用線心10がシース30の内面に内接し、かつ、信号用線心20とシース30の内面との間に僅かな間隙23が形成される大きさに形成されている。」(2頁右下欄13行ないし3頁左上欄2行)
(ウ) 「従って、本発明実施例のケーブルにあっては、電源用線心10と信号用線心20とがシース10(審決注:「シース30」の誤記と認める。)内に丸く納まり、曲げ方向が規制されず扱い易い。また、信号用線心20とシース30の内面との間には間隙23が設けられているために、シース30を切除し易い。以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、実施例では、家庭内の配線に用いられるバスケーブルを示したが、用途は限られず、工業用としてもよい。また、実施例では、電源用線心を2本とし、信号用線心を2本単位で撚り合わせた2束の撚線で構成したが、それぞれの線心数は実施例に限られないし、また、その配置も実施例に限られない。」(3頁左上欄8行ないし右上欄6行)
発明の効果
「以上説明してきたように本発明のケーブルにあっては、線心がそれぞれの接続箇所に適した構成になるように配慮し、電源用線心の導電体径を信号用線心の導電体径よりも大きく形成させ、かつ、信号用線心を複数本単位で撚り合わせた撚線としたために、電圧降下を小さくでき、かつ、外部からのノイズの影響を少なくすることができるという効果が得られる。また、電源用線心と信号用線心とを束ねてその外周をシースで覆ったために、扱い易く、しかも線心を傷つけることなく容易に線心を取り出すことができるという効果が得られる。また、実施例にあっては、上述の効果に加えて、電源用線心及び信号用線心を、両線心が円筒状のシース内に丸く納まり、しかも信号用線心とシース内面との間には僅かな間隙が設けられる大きさ及び配置としたために、ケーブルの曲げ方向が規制されず、配線作業が行い易いと共に梱包も行ない易い。」(3頁右上欄12行ないし左下欄10行)
(2) 引用発明
上記(1)の記載から、引用文献1には、原審決が認定したものと同じ、次の引用発明が記載されているといえる。
「導電体の外周に絶縁体を被覆して形成される電源用線心10及び信号用線心20を備えたケーブルにおいて、前記電源用線心10の導電体径を前記信号用線心20の導電体径よりも大きく形成させ、かつ、信号用線心20を複数本単位で撚り合わせた撚線とし、電源用線心10と信号用線心20とを束ねてその外周をシース30で覆ったことを特徴とするケーブルであって、2本の電源用線心10と4本の信号用線心20とシース30とを備え、前記電源用線心10は、電圧降下を小さくするために導電体径が信号用線心20の導電体径(直径0.9mm前後)よりも大きな径(直径1.5mm前後)で形成されており、前記信号用線心20は外部の強電電線等からのノイズの影響を小さくするために2本単位で撚り合わされており、2束の撚線を構成し、前記両線心10、20は、信号用線心20の2束の撚線が互いに接すると共に、2本の電源用線心10がそれぞれ信号用線心20による2束の撚線に接するように配置された状態で一体に撚り合わされ、その外周は円筒状のシース30によって覆われている、ケーブル。」
(3) 引用発明の技術的意義
上記(1)によれば、引用発明の技術的意義は、次のとおりであると認められる。
ア 引用発明は、導電体の外周に絶縁体を被覆して形成される電源用線心及び信号用線心を備えた工業用の電気絶縁ケーブルに関する発明である。
イ 従来のケーブルは、複数の同径の線心を束ねた線心束を、樹脂で構成された外皮内に平行に埋め込む形で被覆していたが、外部からノイズを拾いやすく、また、外皮を切除する際に線心を傷つけやすいという課題があった。
ウ 上記の課題を解決するために、引用発明は、上記アのケーブルにつき、(ア)電源用線心の導電体径を信号用線心の導電体径よりも大きく形成し、かつ、(イ)信号用線心を複数本単位で撚り合わせた撚線とするとともに、(ウ)両線心の外周をシースで覆うのみの形で被覆する構成としたものである。
エ 上記ウの各構成は、それぞれ、(ア)電圧降下を小さくすることができる、(イ)外部からのノイズの影響を少なくすることができる、(ウ)配線工事の際に線心を傷つけることなくシースを切除することができ、線心の取り出しを容易に行うことができるという効果を奏する。
2 引用文献2~5の記載及び周知技術
(1) 引用文献2の記載
引用文献2には、考案の名称を「カールケーブル」とする考案に関し、考案の詳細な説明として、次のとおりの記載がある。
ア 産業上の利用分野
「本考案はカールケーブルに関し、更に詳しくは電子機器等の装置内、機器間伝送または移動体通信機器等に用いられ、同軸ケーブルを構成要素とするカールケーブルに関する。」(段落【0001】)
イ 従来の技術
「電子機器、例えば移動体通信機器に用いられるカールケーブルとしては、・・・同軸ケーブルと信号ケーブル或は必要に応じ電源ケーブルを加えて構成される複合ケーブル(以下複合ケーブルと略記する)を螺旋状に形成し、携帯用電話機と車載通信機器との接続、或は携帯用電話機と車載通信機器とバッテリーとの接続に用いるもの等がある。」(段落【0002】)
ウ 実施例
「実施例2.複合カールケーブルの製造複合カールケーブルの製造について図2を用いて説明する。複合カールケーブルを構成するケーブル心として、前記実施例1で得られた同軸ケーブル心5を2本、導体6(19本/0.08mm錫めっき軟銅線)上に絶縁体7(FEP樹脂0.12mm厚)を設けた信号ケーブル心8を8本、及び導体9(37本/0.08mm錫めっき軟銅線)上に絶縁体10(FEP樹脂0.11mm厚)を設けた電源ケーブル心11を2本、図2に示す如くの配置に撚り合わせ、次にその外周に絶縁紙テープのセパレータ12をテープ巻きし、更にこの外周にPVCシース13を0.8mm厚さに押出被覆して外径約5.4mmの複合ケーブル14を得た。これを実施例1と同様にしてカール加工し、複合カールケーブル14cを製造した。」(段落【0013】)
(2) 引用文献3の記載
引用文献3には、発明の名称を「高速伝送用耐熱ケーブル」とする発明に関し、発明の詳細な説明として、次のとおりの記載がある。
ア 技術分野
「本発明は、高速伝送用耐熱ケーブル、特に、消防用設備や防火用設備等の小勢力回路に用いられる高速伝送用耐熱ケーブルに関するものである。」(段落【0001】)
イ 背景技術
「このような耐熱ケーブルとしては、例えば、図2に示すように、導体1上に絶縁体2を被覆して絶縁心線3を形成し、この絶縁心線3を2本撚り合わせて対撚線4とし、これを複数本(図2では4対)撚り合わせた集合撚線上に、耐熱性を有するテープを縦添え、或いは螺旋状に巻回した熱遮蔽層11、及びこの熱遮蔽層11の上にポリ塩化ビニルなどからなる一括シース12を形成したものがある。また、この耐熱ケーブルを構成する絶縁体2には、架橋ポリエチレンなどが用いられ、熱遮蔽層11としては紙テープなどが用いられる。」(段落【0004】)
(3) 引用文献4の記載
引用文献4には、発明の名称を「ポリ塩化ビニル系樹脂組成物被覆電線・ケーブル」とする発明に関し、発明の詳細な説明として、次のとおりの記載がある。
ア 発明の属する技術分野
「本発明はクリーンルーム内で使用されるポリ塩化ビニル系樹脂組成物被覆電線・ケーブル、特に、分子状汚染物質の発生を抑止できるポリ塩化ビニル系樹脂組成物被覆電線・ケーブルに関するものである。」(段落【0001】)
イ 実施例
「このコンパウンドをスズめっき軟銅線(導体サイズ:24AWG)の上に、170℃の押出機で厚さ0.45mmに押出被覆して絶縁被覆を形成し、絶縁電線を製造した。この絶縁電線を綿糸介在紐上に6本撚り合わせ、抑え巻紙テープを施した上から前記コンパウンドを170℃の押出機で厚さ0.85mmに押出被覆して保護被覆を形成し、ケーブルを製造した。」(段落【0015】)
(4) 引用文献5の記載
引用文献5には、発明の名称を「インターフェースケーブル及びその製造方法」とする発明に関し、発明の詳細な説明において、従来の技術として、次のとおりの記載がある。
ア 「機器間連絡用ケーブルであるインターフェースケーブルは、コンピュータ、パソコン、ワークステーションなどのコンピュータ本体と付随する装置間(例えば、入出力装置-演算装置-記憶装置間)、またはコンピュータ本体と各種端末機器間(例えば、CRT、プリンタなど)の信号伝送に用いられている。」(段落【0002】)
イ 「インターフェースケーブルは、伝送する信号の性能上、静電容量、特性インピーダンスなどの電気特性が問題となる場合があり、その場合、例えば、図2に示すように、導体21をPEなどの絶縁体22で被覆した線心23を対撚りしてなる対撚り線心24を複数本(図2中では4本)撚り合わせた多心のものが使用される。」(段落【0003】)
ウ 「複数本の対撚り線心24を撚り合わせた際、撚り合わせ外周に、紙テープ、プラスチックテープ、又は金属箔を貼り合わせたプラスチックテープなどの押え巻きテープ25をテ-ピングする。その後、押え巻きテープ25の外周を、編組シールド26およびシース27で被覆してインフェースケーブル20が得られる。また、複数本の対撚り線心24の撚り合わせ外周と押え巻きテープ25の間の隙間には、ケーブル20の横断面を円状に保持すべく、綿糸などの介在28が配置される。」(段落【0004】)
(5) 周知技術
上記(1)ないし(4)によれば、本件原出願日の時点における工業用の電気絶縁ケーブルの技術分野においては、撚り合わせたコア電線を押さえたり、耐熱性を持たせたりすることなどを目的として、コア電線にテープ部材を巻くことは周知技術であり、その結果としてコア電線とシースとの間にテープ部材が配置されることも周知技術であったと認められる。
3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1) 本願発明の「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線であって、電動パーキングブレーキ用の2本の第1のコア材と、アンチロックブレーキシステム用の2本の第2のコア材と、によって形成されたコア電線」であって、「2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成されている」との構成と、引用発明の「電源用線心10」と「信号用線心20」とを含む構成とを対比する。
引用発明の「導電体」、「絶縁体」は、それぞれ本願発明の「導体」、「絶縁層」に相当する。
引用発明の「電源用線心10」及び「信号用線心20」は、シールド層を有していないことから、本願発明の「コア材」と「シールドされていないコア材」である点で一致している。
また、引用発明では、「前記電源用線心10の導電体径を前記信号用線心20の導電体径よりも大きく形成させ、かつ、信号用線心20を複数本単位で撚り合わせた撚線と」することから、引用発明の「電源用線心10」、「信号用線心20」は、それぞれ本願発明の「第1のコア材」、「第2のコア材」に相当するといえる。
そして、引用発明において「2本の電源用線心10と4本の信号用線心20」を有していることから、本願発明と引用発明とは、少なくとも「2本の第1のコア材と、2本の第2のコア材」を有している点で一致する。
引用発明における「2束の撚線」について、「撚線」は、「信号用線心20」が「2本単位で撚り合わされ」ることにより形成されることから、引用発明の「撚線」は、本願発明の「サブユニット」に相当する。
また、引用発明において「前記両線心10、20は、信号用線心20の2束の撚線が互いに接すると共に、2本の電源用線心10がそれぞれ信号用線心20による2束の撚線に接するように配置された状態で一体に撚り合わされ」ることから、本願発明と引用発明とは、「コア材が複数本撚り合されて形成された」点、及び「前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成されている」点で一致する。
したがって、本願発明と引用発明とは「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線であって、2本の第1のコア材と、2本の第2のコア材と、によって形成されたコア電線」を有し、「2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成されている」点で一致する。
(2) 本願発明の「前記テープ部材上に形成された被覆層」と引用発明の「シース30」を含む構成を対比する。
引用発明の「シース30」は、テープ部材上に形成されたものではないものの、コア電線の外周を被覆するものであることから、本願発明と引用発明とは「被覆層」を有する点で一致する。
(3) 本願発明の「2本の前記第1のコア材の各々の導体の断面積は、1.5~3.0mm2の範囲に含まれ」ているとの事項と、引用発明の「電源用線心10」を含む構成とを対比する。
引用発明の「電源用線心10」は、本願発明の「第1のコア材」に相当し、その導体径の直径が1.5mm程度であることから、断面積は1.8mm2程度であると計算されることから、本願発明と引用発明とは「2本の前記第1のコア材の各々の導体の断面積は、1.5~3.0mm2の範囲に含まれ」る点で一致する。
(4) 引用発明の「ケーブル」は、本願発明の「電気絶縁ケーブル」に対応する。
4 一致点及び相違点
以上のとおり、本願発明と引用発明とは原審決のとおり次の点で一致し、相違する。
(1) 一致点
「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされていないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線であって、少なくとも、2本の第1のコア材と、2本の第2のコア材と、によって形成されたコア電線と、被覆層と、を備え、2本の前記第1のコア材の各々の導体の断面積は、1.5~3.0mm2の範囲に含まれ、2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成されている、電気絶縁ケーブル。」
(2) 相違点
ア 相違点1
「第1のコア材について、本願発明では『電動パーキングブレーキ用』であるのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。」
イ 相違点2
「第2のコア材について、本願発明では『アンチロックブレーキシステム用』であるのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。」
ウ 相違点3
「本願発明は『前記コア電線のみを巻くテープ部材』を有するのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。」
エ 相違点4
「被覆層について、本願発明では『前記テープ部材上に形成された』ものであるのに対し、引用発明にはそのような特定がなされていない点。」
オ 相違点5
「2本の前記第2のコア材について、本願発明では『各々の導体の断面積は、0.18~0.40mm2の範囲に含まれ』ているのに対し、引用発明では、『第2のコア材』に相当する『信号用線心』の導電体径の直径が0.9mm前後であり、断面積は0.6mm2程度である点。」
カ 相違点6
「本願発明では『2本の前記第1のコア材と前記サブユニットとがそれぞれ接しているとともに、2本の前記第1のコア材及び前記サブユニットは前記テープ部材と接している』のに対し、引用発明は、『両線心10、20は、信号用線心20の2束の撚線が互いに接すると共に、2本の電源用線心10がそれぞれ信号用線心20による2束の撚線に接するように配置された状態で一体に撚り合わされ』ているものの、そのような特定はなされていない点。」
5 相違点の判断
事案に鑑み、先に相違点3,4,6について検討する。
(1) 相違点3に係る容易想到性
上記2(5)のとおり、本件原出願日の時点における工業用の電気絶縁ケーブルの技術分野においては、撚り合わせたコア電線を押さえたり、耐熱性を持たせたりすることなどを目的として、コア電線にテープ部材を巻くことは周知技術であり、その結果としてコア電線とシースとの間にテープ部材が配置されることも周知技術であったと認められる。
そして、引用発明は、工業用の電気絶縁ケーブルに関する発明であり、上記周知技術と技術分野を共通にすることからすれば、引用文献1に接した当業者は、複数の線心をシースで覆う構造である引用発明に対して上記の周知技術を適用し、撚り合わせた複数の線心をテープ部材で巻き、その結果、コア電線とシースとの間にテープ部材が配置される構成とすることを動機付けられるものといえる。
しかしながら、上記第2の3で検討したとおり、本願発明は、被覆層を除去してコア電線を露出させる作業の作業性に関し、コア材の外周面に粉体が塗布された従来のケーブルには、コア材を取り出す作業の際に粉体が周囲に飛散し、作業性が低下してしまうという課題があったことから、コア電線と被覆層との間に、コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ部材を備える構成とすることにより、テープ部材を除去することによって容易にコア電線と被覆層とを分離することができるようにして、上記課題を解決しようとする点に技術的意義を有するものである。
他方で、上記1(3)のとおり、引用発明は、線心の取り出しを容易に行うことができるようにすることを課題の一つとする発明であり、この点で本願発明と課題を共通にするものといえるが、電源用線心及び信号用線心の外周をシースで覆うのみの形で被覆する構成とすることによって上記課題を解決しようとするものであり、本願発明とは課題を解決する手段を異にするものといえる。
このように、引用発明においては、本願発明と共通する課題が本願発明とは異なる別の手段によって既に解決されているのであるから、当該課題解決手段に加えて、両線心をテープ部材で巻き、その結果、両線心とシースとの間にテープ部材が配置される構成とする必要はないというべきである。そして、引用発明に上記のような構成を加えると、線心を取り出そうとする際に、シースを除去する作業のみでは足りず、更にテープ部材を除去する作業が必要となることから、かえって作業性が損なわれ、引用発明が奏する効果を損なう結果となってしまうものといえる。
加えて、引用文献1をみても、引用発明の効果を犠牲にしてまで両線心をテープ部材で巻くことに何らかの技術的意義があることを示唆するような記載は存しない。
以上によれば、引用発明に上記周知技術を適用することには阻害要因があるというべきであるから、相違点3に係る「前記コア電線のみを巻くテープ部材」という構成の意義について検討するまでもなく、本件原出願日当時の当業者が、引用発明及び上記周知技術に基づいて、相違点3に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものとはいえない。
(2) 相違点4に係る容易想到性
相違点4に係る本願発明の構成は、相違点3に係る本願発明の構成である「テープ部材」を含むものであるところ、上記(1)で検討したところによれば、相違点4に係る「前記テープ部材上に形成された被覆層」という構成の意義について検討するまでもなく、本件原出願日当時の当業者が、引用発明及び上記周知技術に基づいて、相違点4に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものとはいえない。
(3) 相違点6に係る容易想到性
相違点6に係る本願発明の構成は、相違点3に係る本願発明の構成である「テープ部材」を含むものであるところ、上記(1)で検討したところによれば、本件原出願日当時の当業者が、引用発明及び上記周知技術に基づいて、相違点6に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものとはいえない。
(4) 小括
以上検討したところによれば、本件原出願日当時の当業者は、相違点3、4及び6に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものとは認められない。
また、本願発明を引用する請求項2及び3に係る発明も、相違点3、4、及び6に対応する構成を備えるから、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、原審決の理由(当審拒絶理由)は理由がない。
第5 原査定の理由について
1 主引用発明及び一致点、相違点
原査定で主引用例として引用された引用文献Aは、上記第4で検討した原審決の理由で主引用例とした引用された引用文献1と同じである。
そうすると、主引用発明となる引用文献Aに記載された発明は、上記第4の1(2)の引用発明と同じであり、また、本願発明と引用文献Aとを対比した場合の一致点及び相違点も、上記第4の4(1)及び(2)と同じである。
2 相違点の判断
(1) 引用文献B
引用文献Bには次の記載がある。
「本考案は、このような点に鑑み、接続時等の口出し性の改善を図るべく考案されたもので、その特徴はシースの内側に保護層を有するコンクリート直埋ケーブルにおいて、線芯と保護層の間に紙、プラスチツク、繊維質等のセパレータ層を設けて、特に線芯が引き出し易くすることによつて口出し性を向上させたものである。上記セパレータ層は、保護層を形成する材料が押出成形の際、線芯間や線芯と座床との間に落ち込むことを防止しまた線芯、座床、保護層と密着することを防止するものであるから線芯や座床或いは保護層の少なくともいずれか一方に対して、例えば補強層の押出時おいても、接着性のないものであることが必要で、さらに、保護層等の押出温度では溶解、破損、消失しないが、ケーブル完成後の口出し作業時には容易に引き裂ける材料から成るものである。このような、要求を満たすものとしては、例えば、紙、セロフアン、ポリエチレン、照射ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル等のテープ或いは繊維質からなるテープ類が考えられる。」(3ページ14行ないし4ページ17行)
(2) 相違点3,4,6
上記第4の5で検討したとおり、線心の取り出しを容易に行うことができるようにすることを課題の一つとする「引用文献Aに記載された発明」(引用発明)には、口出し性を向上させるための「引用文献Bに記載された発明」についても、適用することを阻害する要因があるというべきであるから、上記第4の4(2)の相違点3、4、6は容易想到とはいえず、原査定の理由は理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び、原審決の理由(当審拒絶理由)によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-006043