2020-005471
調光フィルム
- 審判番号
- 2020-005471
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-136790外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年04月22日
- 審決日
- 2020年11月30日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成27年7月8日の出願であって、その後の主な手続経緯は、以下のとおりである。
同年 3月 4日 :刊行物等提出書の提出
同年 3月20日付け:刊行物等提出による通知
(同年3月26日発送)
同年 4月22日 :手続補正書・意見書の提出
令和元年 7月 4日付け;拒絶理由通知(同年7月9日発送)
同年 9月 6日 :手続補正書・意見書の提出
令和2年 1月24日付け;拒絶査定(同年1月28日送達)
同年 4月22日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和元年9月6日付けの手続補正により補正された請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】液晶セルと偏光子とが積層され、前記液晶セルは、透明フィルム材による基材に少なくとも配向層を設けてなる第1及び第2の積層体により、ゲストホスト液晶組成物と二色性色素組成物とによる液晶層を挟持し、続きを表示(全14行)前記液晶セルの第1及び又は第2の積層体に設けられた透明電極の駆動により、前記ゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が水平配向した水平配向状態と、前記ゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が垂直配向した垂直配向状態とで、前記液晶層の状態が切り替わり可能であり、前記偏光子は、透明フィルム材による基材に少なくとも配向層を設けてなる第1及び第2の積層体により、ゲストホスト液晶組成物と二色性色素組成物とによる液晶層を挟持し、前記偏光子の第1及び又は第2の積層体に設けられた透明電極の駆動により、前記偏光子のゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が水平配向した水平配向状態と、前記偏光子のゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が垂直配向した垂直配向状態とで、前記偏光子の液晶層の状態が切り替わり可能であり、前記液晶セルの配向層及び前記液晶セルの透明電極が前記液晶セルの基材の端部まで設けられており、前記偏光子の配向層及び前記偏光子の透明電極が前記偏光子の基材の端部まで設けられており、前記液晶セルの基材、前記液晶セルの透明電極、前記液晶セルの配向層、前記液晶セルのシール材、及び、前記偏光子の基材、前記偏光子の透明電極、前記偏光子の配向層と、前記偏光子のシール材の全ての層の外側端部が断面視で一致している調光フィルム。」(なお、下線は、請求人が手続補正書において付したものである。)
第3 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である、令和元年7月4日付け拒絶理由通知の理由は、概略、次のとおりのものである。
(進歩性)請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1 特開2004-333567号公報
2 特表2013-541727号公報
3 特表2015-501950号公報
4 特開2008-102341号公報(周知技術を示す文献)
5 特開平04-124615号公報(周知技術を示す文献)
6 特開2003-050398号公報
7 特開2013-130746号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由において、引用文献1として引用された、特開2004-333567号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。
(1)「【特許請求の範囲】【請求項1 】複数の液晶光学素子が光路に沿って順次配置され、前記複数の液晶光学素子がそれぞれ、ホスト材料とゲスト材料との混合物からなる液晶層を有する調光装置であって、前記複数の液晶光学素子の少なくとも2つにおける、遮光動作時の液晶配向方位が互いに交差している、調光装置。【請求項2 】前記ホスト材料がポジ型又はネガ型の液晶分子であり、前記ゲスト材料がポジ型の二色性染料分子である、請求項1に記載した調光装置。」
(2)「【0029】【課題を解決するための手段】【0030】……【0031】しかも、前記複数の液晶光学素子の少なくとも2つの液晶配向方位が互いに交差しているので、前記2つの液晶配向方位が異なる液晶光学素子のうちの一方の液晶光学素子で吸収を受けなかった偏光は、他方の液晶光学素子による吸収を必ず受けることになり、この結果、遮光時の遮光性能が著しく向上し、光学濃度比が大きく改善される。【0032】また、前記2つの液晶配向方位が異なる液晶光学素子のうちの一方を偏光板の代わりとして用い、遮光性能を低下させずに、偏光板を用いない調光装置を構成することができる。この調光装置は、偏光板による損失がないため、透明時の光透過量が大きく改善される。【0033】従って、本発明は、液晶光学素子を用いた調光装置及び撮像装置の性能、画質、信頼性の向上を図るために極めて有効である。」
(3)「【0034】【発明の実施の形態】本発明において、前記複数の液晶光学素子の少なくとも2つの液晶配向方位が互いに交差、特に直交しているのが望ましい。これにより、前記2つの液晶配向方位が異なる液晶光学素子のうちの一方の液晶光学素子で吸収を受けなかった偏光が、他方の液晶光学素子による吸収を受ける割合が最大になり、これら2つの液晶光学素子による遮光性能が最大限に発揮される。【0035】続きを表示(全21行)また、前記ホスト材料がポジ型又はネガ型の液晶分子、とりわけネガ型の液晶分子であり、前記ゲスト材料がポジ型の二色性染料分子であるのがよい。前記ゲスト材料がネガ型の二色性染料分子であってもよいが、本発明の効果は、前記ホスト材料がネガ型の液晶分子であり、前記ゲスト材料がポジ型の二色性染料分子であるとき、最も効果的に発揮される。【0036】……【0043】前記複数の液晶光学素子の個数は、3つ以上であってもよい。例えば、遮光動作時において光学濃度の大きい2つの液晶光学素子と、遮光動作時において光学濃度の小さい1つの液晶光学素子とを光入射側からこの順で配置するのがよい。この際、1段目と3段目の液晶光学素子で吸収される光の振動方向を一致させ、この方向と2段目の液晶光学素子で吸収される光の振動方向とを直交させるのがよい。このようにすると、1段目の液晶光学素子を偏光板の代わりとして用いて、調光動作において高いコントラスト比を実現しながら、透明時の光透過量が大きく、コンパクトな調光装置を実現することができる。【0044】或いは、上記3つの液晶光学素子で吸収される光の振動方向を、1段目と2段目の液晶光学素子は直交させ、1段目と2段目の液晶光学素子で主要な光の吸収を行い、これらを透過してくる光を3段目の液晶光学素子で補助的に吸収することにより、偏光板が不要で、調光動作において高いコントラスト比を実現しながら、透明時の光透過量が大きく、コンパクトな調光装置を実現することができる。【0045】……【0047】この際、製造工程の容易さを考慮すれば、前記複数の液晶光学素子を構成する各基板のうち、外側に位置する基板に液晶分子の配向処理(ラビング等)が施されているのがよい(片側ラビング)。前記中間基板に液晶分子の配向処理を行うのも不可能ではないが、この場合も片側の面にだけ、配向処理を行うのが望ましい。【0048】また、前記複数の液晶光学素子の実装形態をコンパクトにして、調光装置の小型化を図るためには、複数の基板のうちの中間基板の周辺部の両面に、液晶光学素子を駆動するための動作電圧を印加する電極の引き出し部を設けることが好ましい。【0049】……【0051】ここでは、前記中間基板が共用されている例を挙げたが、単にセルギャップの小さい単独の液晶光学素子を複数組重ねただけの構造であってもよい。この場合、遮光時の光透過率はより一層低下するが、各セルの間に空気層が存在すると、前述したように空気層と基板との界面での光反射等による光の損失が生じるので、このような損失を極力抑える工夫があるのが望ましい。」
(4)「【0054】図1は、本実施の形態に基づく調光装置を構成するGH多重セルの動作原理を示す概略断面図であり、図2(a)は、そのGH多重セルの部分拡大概略断面図である。【0055】図2(a)に示すように、GH多重セル10では、等間隔に対向して設けられたガラス等の透明基板1a、1b及び1cによる2組の対向基板、即ち、基板1aと1b、及び1bと1cの間に液晶混合物2が封入され、第1GHセル10a及び第2GHセル10bが形成されている。基板1aと1cとの中間に位置する基板1bは、2つのGHセル10a及び10bで共用される。液晶混合物2は、ネガ型液晶分子3をホスト材料とし、ポジ型染料分子4をゲスト材料とする、ゲスト-ホスト型液晶であり、基板1aと1bとの間、及び基板1bと1cとの間はシール材8で封止されている。続きを表示(全12行)【0056】基板1a 、1b及び1cの厚さは、ガラス基板を用いる場合、ガラスによる光吸収量を抑え、且つ装置の小型軽量化を図るために、できるだけ薄いもの、特に0 .5 mm以下のものを用いることが好ましい。【0057】また、基板1aと1bの対向面、及び基板1bと1cの対向面には、それぞれ、透明電極6aと6b 、及び6cと6dが形成され、更にその上に液晶分子の配向方向を制御するための配向膜7aと7b、及び7cと7dが、それぞれ積層されている。【0058】……【0060】また、図1に示すように、2つのGHセル10a及び10bの対向電極、即ち透明電極6aと6bとの間、及び6cと6dとの間にそれぞれ、液晶セルを駆動する交流駆動電源34a及び34bが接続されている。GH多重セル10の実装形態をコンパクトにして、調光装置の小型化を図るために、3枚の基板1a ~ 1cのうち、中間の基板1bの両面の周辺部にのみ、交流駆動電圧を印加するための電極引き出し部31b及び31cを設けることが好ましい。また、2つのG Hセル10a及び10bを同一の交流駆動電源に並列に接続し、電源を共用し、調光装置の小型化及び低コスト化をはかることもできる。」
(5)図1は、以下のものである。
2 引用文献に記載された発明
(1)上記1(1)及び(2)の記載からして、引用文献には、
「複数の液晶光学素子が光路に沿って順次配置され、前記複数の液晶光学素子がそれぞれ、ポジ型又はネガ型の液晶分子であるホスト材料とポジ型の二色性染料分子であるゲスト材料との混合物からなる液晶層を有する調光装置であって、前記複数の液晶光学素子の少なくとも2つにおける、遮光動作時の液晶配向方位が互いに交差し、遮光時の遮光性能が著しく向上した、調光装置」が記載されているものと認められる。
(2)上記1(3)及び(4)の記載を踏まえて、図1を見ると、以下のことが理解できる。
ア ホスト材料がネガ型液晶分子、ゲスト材料がポジ型二色性染料分子であってもよいこと。
イ 複数の液晶光学素子は、光入射側から二つ順次積層されていること。
以下「入射側液晶光学素子」及び「出射側液晶光学素子」という。
ウ 二つの液晶光学素子を構成する各基板は、例えば、厚さ0 .5 mm以下のガラス等の透明基板であること。
エ 二つの液晶光学素子を構成する各基板には、透明電極と配向膜が形成されていること。
オ 二つの液晶光学素子を構成する各基板のうち、外側に位置する基板に配向処理が施されていること(片側ラビング)。
カ 二つの液晶光学素子は、単にセルギャップの小さい単独の液晶光学素子を重ねただけの構造であってもよいこと。
キ 各液晶光学素子は、二枚の基板の間に「ネガ型液晶分子とポジ型二色性染料分子との混合物からなる液晶層」がシール材8で封止されたものであること。
ク 各基板に設けられた透明電極の駆動により、ネガ型液晶分子とポジ型二色性染料分子が水平配向した水平配向状態と、ネガ型液晶分子とポジ型二色性染料分子が垂直配向した垂直配向状態とで、液晶層の状態が切り替わり可能であること。
(3)上記(1)及び(2)の検討からして、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「入射側液晶光学素子と出射側液晶光学素子が光路に沿って順次積層され、前記各液晶光学素子は、二枚の基板の間にネガ型液晶分子(ホスト材料)とポジ型二色性染料分子(ゲスト材料)との混合物をシール材で封止した液晶層を有する調光装置であって、前記各液晶光学素子を構成する各基板は、例えば、厚さ0 .5 mm以下のガラス等の透明基板であり、各基板には、透明電極と配向膜が形成され、各基板に設けられた透明電極の駆動により、ネガ型液晶分子とポジ型二色性染料分子が水平配向した水平配向状態と、ネガ型液晶分子とポジ型二色性染料分子が垂直配向した垂直配向状態とで、液晶層の状態が切り替わり可能であり、前記二つの液晶光学素子の、遮光動作時の液晶配向方位が互いに交差することで、遮光時の遮光性能が著しく向上した、調光装置。」
第5 当審の判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比すると以下のことがいえる。
ア(ア)引用発明の「ネガ型液晶分子(ホスト材料)」及び「ポジ型二色性染料分子(ゲスト材料)」は、それぞれ本願発明の「ゲストホスト液晶組成物」及び「二色性色素組成物」に相当する。
(イ)引用発明の「入射側液晶光学素子と出射側液晶光学素子」は、「『二枚の基板の間に』『液晶層』」を有し、「各基板は、例えば、厚さ0 .5 mm以下のガラス等の透明基板であり、各基板には、透明電極と配向膜が形成され」たものであって、「各基板に設けられた透明電極の駆動により、ネガ型液晶分子とポジ型二色性染料分子が水平配向した水平配向状態と、ネガ型液晶分子とポジ型二色性染料分子が垂直配向した垂直配向状態とで、液晶層の状態が切り替わり可能で」ある。
(ウ)してみると、引用発明の「出射側液晶光学素子」と本願発明の「液晶セル」とは、
「液晶セルは、透明基材に少なくとも配向層を設けてなる第1及び第2の積層体により、ゲストホスト液晶組成物と二色性色素組成物とによる液晶層を挟持し、前記液晶セルの第1及び又は第2の積層体に設けられた透明電極の駆動により、前記ゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が水平配向した水平配向状態と、前記ゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が垂直配向した垂直配向状態とで、前記液晶層の状態が切り替わり可能であ」る点で一致する。
(エ)また、引用文献の記載(図1等を参照)からして、引用発明の「入射側液晶光学素子」は、「偏光子」として機能することは、明らかであるから、引用発明の「入射側液晶光学素子」と本願発明の「偏光子」とは、
「偏光子は、透明基材に少なくとも配向層を設けてなる第1及び第2の積層体により、ゲストホスト液晶組成物と二色性色素組成物とによる液晶層を挟持し、前記偏光子の第1及び又は第2の積層体に設けられた透明電極の駆動により、前記偏光子のゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が水平配向した水平配向状態と、前記偏光子のゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が垂直配向した垂直配向状態とで、前記偏光子の液晶層の状態が切り替わり可能であ」る点で一致する。
イ 引用発明の「入射側液晶光学素子と出射側液晶光学素子」は、それぞれ、基材、透明電極、配向層及びシール材を有し、それらの層の端部が、それぞれ所定位置にあることは明らかであるから、本願発明と引用発明とは、
「液晶セルの配向層及び液晶セルの透明電極が前記液晶セルの基材に設けられており、偏光子の配向層及び前記偏光子の透明電極が前記偏光子の基材に設けられており、前記液晶セルの基材、前記液晶セルの透明電極、前記液晶セルの配向層、前記液晶セルのシール材、及び、前記偏光子の基材、前記偏光子の透明電極、前記偏光子の配向層と、前記偏光子のシール材の、それらの層の端部が、それぞれ所定位置にある」点で一致する。
ウ 引用発明の「調光装置」と本願発明の「調光フィルム」とは、「調光装置」である点で一致する。
エ 以上の検討からして、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
〈一致点〉
「液晶セルと偏光子とが積層され、前記液晶セルは、透明基材に少なくとも配向層を設けてなる第1及び第2の積層体により、ゲストホスト液晶組成物と二色性色素組成物とによる液晶層を挟持し、前記液晶セルの第1及び又は第2の積層体に設けられた透明電極の駆動により、続きを表示(全12行)前記ゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が水平配向した水平配向状態と、前記ゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が垂直配向した垂直配向状態とで、前記液晶層の状態が切り替わり可能であり、前記偏光子は、透明基材に少なくとも配向層を設けてなる第1及び第2の積層体により、ゲストホスト液晶組成物と二色性色素組成物とによる液晶層を挟持し、前記偏光子の第1及び又は第2の積層体に設けられた透明電極の駆動により、前記偏光子のゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が水平配向した水平配向状態と、前記偏光子のゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が垂直配向した垂直配向状態とで、前記偏光子の液晶層の状態が切り替わり可能であり、前記液晶セルの配向層及び前記液晶セルの透明電極が前記液晶セルの基材に設けられており、前記偏光子の配向層及び前記偏光子の透明電極が前記偏光子の基材に設けられており、前記液晶セルの基材、前記液晶セルの透明電極、前記液晶セルの配向層、前記液晶セルのシール材、及び、前記偏光子の基材、前記偏光子の透明電極、前記偏光子の配向層と、前記偏光子のシール材の、それらの層の端部が、それぞれ所定位置にある、調光装置。」
オ 一方、両者は、以下の点で相違する。
〈相違点1〉
透明基材に関して、
本願発明は、「透明フィルム材による基材」であるのに対して、
引用発明は、「例えば、厚さ0 .5 mm以下のガラス等の透明基板」ではあるものの、フィルム材であるか否か不明である点。
〈相違点2〉
液晶セル(及び偏光子)の配向層及び透明電極に関して、
本願発明は、「液晶セル(及び偏光子)の基材の端部まで」設けられているのに対して、
引用発明は、端部まで設けられているか否か不明である点。
〈相違点3〉
各層の端部の位置に関して、
本願発明は、「全ての層の外側端部が断面視で一致している」のに対して、
引用発明は、そのような配置であるか否か不明である点。
〈相違点4〉
調光装置に関して、
本願発明は、「調光フィルム」であるのに対して、
引用発明は、調光フィルムと呼べるものであるか否か不明である点。
2 判断
(1)上記〈相違点1〉及び〈相違点4〉について検討する。
ア 基材として、透明ガラス以外に透明フィルム材を用いた調光装置は、本願明細書の【0007】における特許文献3(特開2014-146051号公報の【0137】及び【0138】)、原査定の拒絶理由で引用された引用文献2(特表2013-541727号公報の【0034】)、引用文献3(特表2015-501950号公報の【0078】)、及び引用文献4(特開2008-102341号公報の【0143】)以外に、下記の文献にも記載されているように、本願出願時点で周知である(以下「周知技術」という。)。
特開2010-134350号公報(【0014】)
特開2014-89361号公報(【0017】、【0018】及び【0087】)
イ してみると、引用発明の「ガラス等の透明基板」として、「透明フィルム」を選択することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得ることである。
ウ そして、上記イのようにした引用発明は、本願発明と同様、「調光フィルム」と呼べるものである
エ よって、引用発明において、上記〈相違点1〉及び〈相違点4〉に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得ることである。
(2)上記〈相違点2〉及び上記〈相違点3〉について検討する。
ア 引用発明において、液晶光学素子の「配向層」及び「透明電極」を基材の端部まで設けることは、本願明細書の【0007】における特許文献4(特開2013-130746号公報の図1)、原査定の拒絶理由で引用された引用文献4(特開2008-102341号公報の図3)、引用文献5(特開平04-124615号公報の第2図)及び引用文献6(特開2003-050398号公報の図1)等に記載されているように、通常行われていることにすぎず、当業者が適宜なし得る設計事項である。
ちなみに、引用文献4(特開2008-102341号公報)の図3は、以下のものである。
310、312…電極基板(透明電極層が形成されている)
32…配向膜
34…シール剤
42…粘着層
イ してみると、引用発明において、液晶光学素子の「配向層」及び「透明電極」を基材の端部まで設けることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
その際、シール材を含む、全ての層の外側端部を断面視で一致するようになすことは格別のことではなく何ら困難性は認められない。
ウ よって、引用発明において、上記〈相違点2〉及び上記〈相違点3〉に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
(3)以上のことから、本願発明は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
(4)効果
本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果及び上記周知技術から予測し得る範囲内のものである。
3 審判請求書における主張について
(1)請求人は、引用文献1の調光装置は、引用文献1の図12に示されるように撮像装置に内蔵される装置であって、本願請求項1の発明とは、その具体的な用途や使用形態も大きく異なる旨主張する(「[4-2]引用文献との対比」を参照)。
当審注 引用文献1は、審決で引用する引用文献である。
しかしながら、引用文献1の「調光装置」は、引用文献1の【0138】及び【0139】等の記載からして、「撮像装置に内蔵される装置」に限定されるものではない。
一方、「調光フィルム」の用途は、本願明細書の【0007】における特許文献3(特開2014-146051号公報の【0137】及び【0138】)等に記載されているように、多岐にわたるものであるから、引用発明を、引用文献1の上記実施例以外の用途に用いることは格別なこととはいえないし、本願請求項1の記載において、本願発明の「調光フィルム」も、特定の用途に特定されているわけではない。
よって、請求人の上記主張は、採用できない。
(2)また、請求人は、本願では、全ての図で一貫して「前記液晶セルの基材、前記液晶セルの透明電極、前記液晶セルの配向層、前記液晶セルのシール材、及び、前記偏光子の基材、前記偏光子の透明電極、前記偏光子の配向層、前記偏光子のシール材の全ての層の外側端部が断面視で一致している」構成を図示している旨主張する(「[4-2]引用文献との対比」を参照)。
ア しかしながら、本願の図5ないし図7には、本願発明の「前記液晶セルの第1及び又は第2の積層体に設けられた透明電極の駆動により、前記ゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が水平配向した水平配向状態と、前記ゲストホスト液晶組成物及び前記二色性色素組成物が垂直配向した垂直配向状態とで、前記液晶層の状態が切り替わり可能であり、」における「透明電極を駆動」させるための具体的な構成は示されていないことや各部材のサイズの比等が現実的なものとなっていないことから、これらの図は、すべての部材やサイズが正確に記載された精緻な図というものではなく、配線等を省略した模式図と解することが自然である。
イ また、本願明細書には、全ての層の外側端部を断面視で一致させることの技術的意義についても特段明記されていない。
ウ してみると、「全ての層の外側端部を断面視で一致させる」という構成は、結局、模式図のみに基づくものであって、その技術的意義について明らかでないものであり、さらに、上記2(2)で説示したように、当該構成は、通常行われているにすぎない程度のものであるから、格別なものとはいえない。
エ よって、請求人の上記主張は、上記「2 判断」の判断を左右するものではない。
4 まとめ
本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-005471