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特許拒絶査定不服審判

2020-004997

ジルコニア焼結体、ジルコニア組成物及びジルコニア仮焼体並びにこれらの製造方法、及び歯科用補綴物

審判番号
2020-004997
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-009922外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年04月13日
審決日
2021年11月16日
公報発行日
2022年02月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B28B) / P18 .575-Z (B28B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 9922「ジルコニア焼結体、ジルコニア組成物及びジルコニア仮焼体並びにこれらの製造方法、及び歯科用補綴物」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月 6日出願公開、特開2019- 84830〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)5月8日(優先権主張 平成25年5月10日(JP)日本国)を国際出願日とする特願2015-515891号の一部を、平成31年1月24日に新たな特許出願としたものであって、令和1年9月20日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月22日付けで手続補正がされ、令和2年1月7日付けで拒絶査定がされ、同年4月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると共に、同日付けで手続補正がされたものである。 第2 令和2年4月13日付けの手続補正についての補正却下の決定 1 補正却下の決定の結論 令和2年4月13日付けの手続補正を却下する。 2 理由 (1)本件補正の内容 本件審判の請求と同時にされた令和2年4月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1についてする補正を含むものであって、本件補正前後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正前、すなわち、令和1年11月22日付けの手続補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 ジルコニア、ジルコニアの相転移を抑制する安定化剤及び顔料を含有し、前記顔料の含有率が異なる少なくとも2つの粉末を作製する工程と、 少なくとも2つの前記粉末を型内に積層する積層工程と、を含み、 前記積層工程において、前記型内の前記粉末のうちの1つの上に別の1つの前記粉末を充填した後で、前記型に振動を与えて前記粉末間の境界において上下層の前記粉末が部分的に混合した混合層を形成することを特徴とするジルコニア組成物の製造方法。」 イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 前記アの本件補正前(令和1年11月22日付け手続補正後)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件補正により、次のとおりに補正された。 「【請求項1】 ジルコニア、ジルコニアの相転移を抑制する安定化剤及び顔料を含有し、前記顔料の含有率が異なる少なくとも2つの粉末を作製する工程と、 少なくとも2つの前記粉末を型内に積層する積層工程と、を含み、 前記積層工程において、前記型内の前記粉末のうちの1つの上に別の1つの前記粉末を充填した後で、前記型に振動を与えて前記粉末間の境界において上下層の前記粉末が部分的に混合した混合層を形成することを特徴とする歯科用補綴物用のジルコニア組成物の製造方法。」 (2)本件補正の目的要件について 本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ジルコニア組成物の製造方法」を、「歯科用補綴物用のジルコニア組成物の製造方法」に限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)本件補正の独立特許要件について 前記(2)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正が適法にされたものであるというためには、さらに、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)に適合することが必要である。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討するに、当審は、本件補正発明は特許法第29条第2項所定の規定に違反するもの(進歩性が欠如するもの)、具体的には、後記引用文献1に記載された発明並びに後記引用文献10及び12の記載から認められる周知技術ないし公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許を受けることができないものである、と判断する。 以下、その理由について詳述する。 ア 引用文献とその記載事項 (ア)引用文献一覧 引用文献1:中国特許出願公開第102285795号明細書 引用文献10:特開平8-138555号公報 引用文献12:特開平1-197421号公報 (イ)引用文献1の記載事項 引用文献1には、次の事項が記載されている。 a 「 [図:0001381250000001.jpg] 」(特許請求の範囲請求項1、2) (当審仮訳:1.切削可能な歯科用複色ジルコニアセラミックであって、前記ジルコニアセラミックは、半透明の色グラデーションを有し、5種以上の同様な色調、異なる彩度のセラミック層を有し、セラミック先端部から底層まで明度が徐々に低下し、彩度が徐々に増加し、隣接した2層の間の色差はNBS1未満であり、色調は自然な遷移的な階層感を有し、歯科用ジルコニアセラミック修復物の製造に用いることができることを特徴とする。 2.請求項1記載の切削可能な歯科用複色ジルコニアセラミックの製造方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする。 (1)天然歯の色彩範囲を参考にして、主要成分が同一である生物学的ナノスケールの白色ジルコニア粉体と着色ジルコニア粉体を一定の割合で混合し、2種類の粉体色の異なる彩度の着色ジルコニア粉体を製造すること; (2)積層技術を用いて、切削可能な複色ジルコニアセラミック素地は、ドライプレス、冷間静水等方圧プレス成形を経て調製され、前記複色ジルコニアセラミック素地は、5層以上の同様な色調、異なる彩度の着色ジルコニア粉体を順次階層別に重ね合わせ;ドライプレス圧力は3~4MPaであり;冷間静水等方圧圧力は200MPaとし、1~3分保圧すること; (3)切削可能な複色ジルコニアセラミック素地は、予備焼結を経て、切削可能な複色ジルコニアセラミック多孔質体が調製され、前記予備焼結は、室温から開始し、均一速度で150分間で950℃まで昇温し、60分間保持し、室温まで自然冷却させること; (4)切削可能な複色ジルコニアセラミック多孔質体を完全焼結して、切削可能な複色ジルコニアセラミックが調製され、前記完全焼結工程は、室温から開始し、均一速度で150分間で1450℃まで昇温し、120分間保持し、室温まで自然冷却させること; (5)研磨、清浄化されること。) b 「 [図:0001381250000002.jpg] 」(明細書第2頁) (当審仮訳:[0007]本発明は、加工工程を簡素化し、ジルコニアセラミック修復体の美観性を改善し、修復成功率を向上させるための、切削可能な歯科用美容修復用の複色ジルコニアセラミック及びその製造方法の提供を主目的とする。上記目的を達成するため、歯科CAD/CAM切削成形の設計に適用することができ、類似天然歯半透明性及び色グラデーション効果を有する歯科用ジルコニアセラミック、特に異なる色特性を有する着色ジルコニア粉体及び層状に重ね合わせた複色ジルコニアセラミック素地の製造方法である。 [0008]切削な能な歯科用複色ジルコニアセラミックは、立方体、直方体又は円柱体であって、高さ14±0.2mmであり、半透明の色勾配特性、5種以上同様の色相、異なる彩度のセラミック層を含有し、その中でも、色調は主に黄色及びオレンジ色の製品であり、着色層は、重畳した隣り合う2層の間の色差がNBS1未満、すなわち国家規格局(NBS National Bureau of Standards)で規定される色差単位であって、色差が1未満である時には、人間の目によって知覚されにくいものであり、ジルコニアセラミックは、先端部から最下層まで、明度が徐々に低下し、彩度が徐々に増加し、色が自然にグラデーション感で移行している。) c 「 [図:0001381250000003.jpg] 」 (明細書第4頁) (当審仮訳:実施例 [0022]主色調が淡い黄色であり、5種類の彩度を有する切削可能な歯科用複色ジルコニアセラミックを作製し、歯科用CAD/CAMシステムを用いて上顎中切歯の歯冠修復物を作製する。 [0023]ジルコニア粉体の原料は、白色及び黄色のジルコニア粉体であり、主成分(wt%)がY2O35.2±0.5、Al2O30.1~0.4及び微量のNa2O、SiO2、Fe2O3であり、残余がZrO2であり、実際の粒子径が90nmである。 [0024]着色ジルコニア粉体の作製については、白色ジルコニア粉体及び黄色ジルコニア粉体を、それぞれ60%:40%、70%:30%、80%:20%、90%:10%、95%:5%の重量分率(wt%)の割合で秤量して混合し、各種の混合粉体の総重量を10gにし、密封管内に入れて、前記割合に従って1、2、3、4、5号と表記して、均一に混合する。 [0025]切削可能な複色ジルコニアセラミック素地の作製については、1~5の順序に従って、電子天秤で着色ジルコニア混合粉体をそれぞれ3、2、2、2、3(g)秤量して、彩度が徐々に増すように直方体金型(14mm×15mm×20mm)内に順に添加して、積層し、ドライプレス圧力を4Mpaにする。作製した切削可能な複色セラミック素地をプラスチックフィルムで緊密に包んで、冷間静水等方圧プレス機内に入れ、200MPaの成形圧力で3分間保圧して成形する。) (ウ)引用文献10の記載事項 引用文献10には、次の事項が記載されている。 a 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ブラウン管、真空管の閉塞体(キャップ)等に使用する傾斜機能材料の製造方法と、この製造方法によって得られた傾斜機能材料を用いた電子管の封止構造に関する。」 b 「【0016】 【実施例】本発明に係る傾斜機能材料の製造方法にあっては、先ずセラミック粉末と金属粉末との混合割合が異なった混合粉末体を複数種類用意する。セラミック粉末としては、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、炭化硅素、炭化チタン、窒化硅素、AlONなどの非金属化合物から選ばれた1つ以上の粉末を、また金属粉末としては、モリブデン、ニッケル、タングステン、タンタル、クロムなどの金属粒子の少なくとも1つ以上の粉末を適宜選択して使用すればよく、セラミック粉末としては例えばSiO2、金属粉末としては例えばMoを選定し、具体的な混合割合は以下の(表1)に示す。 【0017】 【表1】 [図:0001381250000004.jpg] … 【0021】そして、上記したMo粉末とSiO2粉末との混合粉末を各混合粉末毎に湿式混合して造粒する。具体的には、混合粉末100gに対して、PVB(ポリビリルブチラール)0.6g、ステアリン酸0.7g、ナフテン酸0.07g、アセトン100gをモノポット、モノボールを用いて12時間、36rpmで湿式混合し、この後、噴霧乾燥して50~100μmの球状凝集体を得る。 【0022】以上のようにして得られた球状凝集体を図1に示すように、各組成割合毎に金型1内に充填する。充填の順序は、比重の小さなSiO2粉末を多量に含む層が下に、比重の大きなMo粉末を多量に含む層が上になるようにするのが好ましい。このようにすることで、各層の境目の組成が混じり合って組成的に段差のない連続したものが得られる。特に、本方法によれば平面的に組成が変化するのではなく、三次元的(例えば、波形など)に連続したものが得られ、各層の境界が熱応力に強く、強度的に優れたものとなる。 【0023】また、各層の境目の組成が混じり合せて均一化するには、充填後に振動を与えるようにしてもよい。この操作は、上記したような比重を考慮した場合に一層効果が大きい。 【0024】このようにして、金型1内に混合粉末を組成毎に充填したならば、パンチ2によって約1.5kg/cm2の荷重で圧縮し、図2に示すような成形体3を得る。」 c 「【0035】ここで、型内に混合粉末を充填した後、振動を与えることで、充填した混合粉末の各層の境界の組成を連続的にすることができ、層境界部での剥離を更に防止することができる。」 (エ)引用文献12の記載事項 引用文献12には、次の事項が記載されている。 a 「(産業上の利用分野) この発明は、単一の容器内に色調の異なる複数の粉末化粧料を色調の境界がなく徐々に色調が変化する態様で収納してなる粉末化粧料の製造方法に関する。」(第1頁右下欄第3~7行) b 「(作用) 開放された一側面を上にして中皿を型枠内にセットし、上方から色調の異なる複数の粉末化粧料を層状に充填し、振動を付与して隣接する粉末化粧料の境界部分を混合して、徐々に色調が変化するグラデーション模様を形成する。その後、粉末化粧料をプレスして固形化する。 (発明の効果) この発明によれば、色調の異なる複数の粉末化粧料を、境界部分の色調が均一な状態で混合され、きわめて良好なグラデーション模様を形成することが出来ると共に、粉末化粧料は中皿全体に均一に充填され、全体に硬度差のないものが得られる結果、耐衝撃性を向上させることが出来る。」(第2頁右上欄第5~18行) c 「このようにして、型枠(2)内に中皿(1)をセットし、粉末押え板(3)で閉塞した後、型枠(2)の開放された上面から色調の異なる複数の粉末化粧料(4)を順次層状に充填する。この充填中に、型枠(2)に振動を与えて充填された粉末化粧料(4)の境界部分を互いに混ぜ合わせて、隣接する粉末化粧料(4)の色調の境界をなくし、色調を徐々に変化させる。」(第2頁左下欄第14行~右下欄第1行) d 「隣接する粉末化粧料(4)の境界部分を混ぜ合わせる為の振動の付与は前記粉末化粧料の充填中に限られるものではない。充填後、プレス前若しくはプレス中に型枠(2)に水平方向の振動を付与して、粉末化粧料の境界部分を混合させることも可能である。」(第3頁左上欄第2~7行) イ 引用文献1に記載された発明(引用発明)の認定 引用文献1の特許請求の範囲請求項2には、前記ア(イ)aのとおり、切削可能な歯科用複色ジルコニアセラミックの製造方法として、以下のステップ(i)及び(ii)を含むものが記載されている。 (i)天然歯の色彩範囲を参考にして、主要成分が同一である生物学的ナノスケールの白色ジルコニア粉体と着色ジルコニア粉体を一定の割合で混合し、2種類の粉体色の異なる彩度の着色ジルコニア粉体を製造すること。 (ii)積層技術を用いて、切削可能な複色ジルコニアセラミック素地は、ドライプレス、冷間静水等方圧プレス成形を経て調製され、前記複色ジルコニアセラミック素地は、5層以上の同様な色調、異なる彩度の着色ジルコニア粉体を順次階層別に重ね合わせ;ドライプレス圧力は3~4MPaであり;冷間静水等方圧圧力は200MPaとし、1~3分保圧すること。 そして、上記ステップ(ii)は、切削可能な複色ジルコニアセラミック素地を調製する方法を示すものであり、上記ステップ(i)は、そのための原料を準備する工程であるということができる。 さらに、前記ア(イ)cには、実施例として、上記のステップの具体例が示されており、上記切削可能な複色ジルコニアセラミック素地は、最終的には、歯冠修復物を作製するために使用されること([0022])、ジルコニア粉体の原料は、白色及び黄色のジルコニア粉体であり、主成分(wt%)がY2O35.2±0.5、Al2O30.1~0.4及び微量のNa2O、SiO2、Fe2O3であり、残余がZrO2であり([0023])、この白色ジルコニア粉体及び黄色ジルコニア粉体を、それぞれ60%:40%、70%:30%、80%:20%、90%:10%、95%:5%の重量分率(wt%)の割合で秤量して混合し、上記割合に従って1、2、3、4、5号という5種類の着色ジルコニア混合粉体を作製すること([0024])、及び、切削可能な複色ジルコニアセラミック素地の作製にあたっては、上記1~5号の5種類の着色ジルコニア混合粉体をこの順に、彩度が徐々に増すように直方体金型内に添加して積層し、ドライプレス及び冷間静水等方圧プレス成形を行うこと([0025])を理解することができる。 そうすると、上記実施例に記載された、最終的に歯冠修復物の用途に使用される複色セラミック素地を調製する方法に着目すると、引用文献1には、次のような歯冠修復物用の複色セラミック素地の調製方法に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「主成分がY2O35.2±0.5wt%、Al2O30.1~0.4wt%及び微量のNa2O、SiO2、Fe2O3であり、残余がZrO2である白色ジルコニア粉体及び黄色ジルコニア粉体を準備し、前記白色ジルコニア粉体及び前記黄色ジルコニア粉体を、それぞれ60wt%:40wt%、70wt%:30wt%、80wt%:20wt%、90wt%:10wt%、95wt%:5wt%の割合で秤量して混合して、5種類の着色ジルコニア混合粉末を作製し、前記5種類の着色ジルコニア混合粉末を直方体金型内に彩度が徐々に増すように順に添加して積層し、ドライプレス、冷間静水等方圧プレス成型をする、歯冠修復物用の複色セラミック素地の調製方法。」 ウ 周知技術ないし公知技術の認定 ここで、本件補正発明に関連する周知技術ないし公知技術についても整理しておくと、引用文献12には、「単一の容器内に色調の異なる複数の粉末化粧料を色調の境界がなく徐々に色調が変化する態様で収納してなる粉末化粧料の製造方法に関する」こと(前記ア(エ)a)が記載されており、その方法として、「上方から色調の異なる複数の粉末化粧料を層状に充填し、振動を付与して隣接する粉末化粧料の境界部分を混合して、徐々に色調が変化するグラデーション模様を形成する。その後、粉末化粧料をプレスして固形化する。」こと(同b)や、振動を付与するために、「充填中に、型枠(2)に振動を与え」たり(同c)、「充填後、プレス前若しくはプレス中に型枠(2)に水平方向の振動を付与」すること(同d)も記載されている。 また、引用文献10には、「傾斜機能材料の製造方法」に関すること(前記ア(ウ)a)が記載されており、「セラミック粉末と金属粉末との混合割合が異なった混合粉末体を複数種類用意」し、「各組成割合毎に金型1内に充填」し、「各層の境目の組成が混じり合せて均一化する」ために「充填後に振動を与え」て、「金型1内に混合粉末を組成毎に充填したならば、パンチ2によって」「圧縮し」「成形体3を得る」こと(同b)や、「型内に混合粉末を充填した後、振動を与えることで、充填した混合粉末の各層の境界の組成を連続的にすることができ」ること(同c)も記載されている。 そして、引用文献12に記載の「隣接する粉末化粧料の境界部分を混合して、徐々に色調が変化するグラデーション模様を形成する」こと、及び、引用文献10に記載の「充填した混合粉末の各層の境界の組成を連続的にする」ことは、いずれも、各層間の境界部分の粉末を混合させて、当該境界部分に色調や組成が連続的に変化する領域を形成することであるから、本件補正発明の「粉末間の境界において上下層の前記粉末が部分的に混合した混合層を形成」することに相当する事項といえる。 そうしてみると、色調や組成の異なる粉末を型内に順次層状に充填中あるいは充填した後に、型を振動させて、各層間の境界部分において、上下層の前記粉末が部分的に混合した混合層を形成させ、色調や組成に連続性を与えることは、本願優先日当時における周知技術ないし公知技術といえる。 エ 本件補正発明と引用発明との対比 (ア)本件補正発明と引用発明とを対比してみると、両者の対応関係は、次のとおりに解することができる。 ・引用発明の「ZrO2」は、本件補正発明の「ジルコニア」に相当する。 ・引用発明の「Y2O3」は、一般に安定化剤として認知されているものであり、本願明細書の段落【0055】の「安定化剤は、正方晶系のジルコニアが単斜晶系へ相転移することを抑制する。…安定化剤としては、例えば、…酸化イットリウム(Y2O3)…等の酸化物が挙げられる。」との記載からしても、本件補正発明の「ジルコニアの相転移を抑制する安定化剤」に相当する。 ・引用発明の「Fe2O3」は、一般に着色顔料(黄色など)として認知されているものであり、本願明細書の段落【0059】の「顔料として、例えば、…酸化鉄(Fe2O3)…等を使用することができる。」との記載からしても、本件補正発明の「顔料」に相当する。 ・引用発明の「前記白色ジルコニア粉体及び前記黄色ジルコニア粉体を、それぞれ60wt%:40wt%、70wt%:30wt%、80wt%:20wt%、90wt%:10wt%、95wt%:5wt%の割合で秤量して混合して」作製された「5種類の着色ジルコニア混合粉末」は、黄色ジルコニア粉体の割合が異なっていることからして、本件補正発明の「顔料の含有率が異なる少なくとも2つの粉末」に相当する。 ・引用発明の「5種類の着色ジルコニア混合粉末を直方体金型内に彩度が徐々に増すように順に添加して積層」することは、本件補正発明の「少なくとも2つの前記粉末を型内に積層する積層工程」において、「前記型内の前記粉末のうちの1つの上に別の1つの前記粉末を充填」することに相当する。 ・引用発明の「歯冠修復物用の複色セラミック素地」は、本件補正発明の「歯科用補綴物用のジルコニア組成物」に相当する。 (イ)以上の点に照らすと、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ、次のように認定することができる。 a 一致点 「ジルコニア、ジルコニアの相転移を抑制する安定化剤及び顔料を含有し、前記顔料の含有率が異なる少なくとも2つの粉末を作製する工程と、 少なくとも2つの前記粉末を型内に積層する積層工程と、を含み、 前記積層工程において、前記型内の前記粉末のうちの1つの上に別の1つの前記粉末を充填する歯科用補綴物用のジルコニア組成物の製造方法。」 b 相違点 本件補正発明では、型内の粉末のうちの1つの上に別の1つの粉末を充填した後で、「前記型に振動を与えて前記粉末間の境界において上下層の前記粉末が部分的に混合した混合層を形成」しているのに対して、引用発明では、5種類の着色ジルコニア混合粉末を直方体金型内に順に添加して積層した後で、直方体金型に振動を与えることについては明示がない点。 オ 相違点の検討 引用発明は、重畳した隣り合う2層の間の色差が人間の目によって知覚されにくい程度までさせ、色調が自然にグラデーション感で移行するようにし、もってジルコニアセラミック修復体の美観性の改善を図ったもの(前記ア(イ)b)であることに照らすと、上記2層間の境界での色調変化をより一層小さくして、より自然なグラデーション感とすること(この点は、色調変化の連続性、さらには粉末組成や機能の連続性のさらなる改善と捉えることもできる。)は、引用発明における自明な課題あるいは内在する課題であるというべきである。 他方、前記ウのとおり、色調や組成の異なる粉末を型内に順次層状に充填中あるいは充填した後に、型を振動させて、各層間の境界部分において、上下層の前記粉末が部分的に混合した混合層を形成させ、色調や組成に連続性を与えることは、本願優先日当時における周知技術ないし公知技術といえる。 そうすると、引用発明において、上記の自明な課題あるいは内在する課題(色調変化の連続性のさらなる改善)に対処するため、当業者が熟知する周知ないし公知の手法(色調や組成に連続性を与えるための手法)を採用することは、技術思想として自然なことであり特段困難なところは認められないから、5種類の着色ジルコニア混合粉末を直方体金型内に順に添加して積層した後に(あるいは積層中に)、直方体金型を振動させて、積層した各層間の境界において上下層が部分的に混合した混合層を形成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 そして、本件補正発明により奏される「自然なグラデーションを有するジルコニア焼結体を得ることができる」(本願明細書段落【0018】)との効果についても、引用文献1、10及び12の記載事項から当業者が容易に予測できる範囲のものにすぎず、格別顕著なものでもない。 カ 請求人の主張についての検討 (ア)請求人は、審判請求書において、引用文献10及び12の振動は、境界層を取り除き「均一化」させるための振動であり、境界における上下層の粉末を部分的に混合しているのではなく、元の粉末(状態)の部分を残すことではないから、本件補正発明の振動と一致しない旨主張する(審判請求書第10頁の「(1-3)」の項目参照)。 しかしながら、引用文献10に記載の「各層の境目の組成が混じり合せて均一化する」こと(前記ア(ウ)b)、及び、引用文献12に記載の「境界部分の色調が均一な状態で混合され」ること(前記ア(エ)b)は、前記ウで検討したとおり、いずれも、境界部分に色調や組成が連続的に変化する領域を形成するためのものであって、境界における上下層の粉末を部分的に混合しているものと解するのが相当であるから、請求人の上記主張は採用できない。 (イ)また、請求人は、令和2年10月21日付け上申書において、引用例10及び12の振動は、粉末を1層充填するごとに振動を与えるものではないから、本件補正発明の混合層を形成するための振動(1つの粉末を充填するごとに行う振動)とは全く異なるものである旨主張する(同上申書第4頁の「(3)」の項目参照)。 しかしながら、本件補正発明は、前記(1)イに示したとおり、「前記積層工程において、前記型内の前記粉末のうちの1つの上に別の1つの前記粉末を充填した後で、前記型に振動を与え」ることについて特定するにとどまり(そのため、例えば、引用発明における4層目の粉末の上に、5層目の粉末を充填した後で、金型を振動させれば、当該特定事項を満たすことになる。)、1つの粉末を充填するごとに振動を与えることまでを特定するものではないから、請求人の上記主張は、本件補正発明に係る請求項1の記載に基づくものではないため採用できない。 キ 本件補正の独立特許要件についてのまとめ 以上の検討によれば、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明並びに引用文献10及び12に記載された周知技術ないし公知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は独立特許要件に適合しない。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、本件補正(令和2年4月13日付けの手続補正)については、前記1の補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年4月13日付けの手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年11月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(前記第2の2(1)ア参照)。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、令和1年9月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由1であって、要するに、この出願の請求項1、2、4~11に係る発明は、本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~12に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 <引用文献等一覧> 1 中国特許出願公開第102285795号明細書 ・・・ 10 特開平8-138555号公報 ・・・ 12 特開平1-197421号公報 3 引用文献の記載事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、10、12は、前記第2の2(3)ア(ア)に列記したものであり、その記載事項は、前記第2の2(3)ア(イ)~(エ)に記載したとおりである。また、引用文献1に記載された発明(引用発明)は、前記第2の2(3)イにおいて認定したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の2(3)にて、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討した本件補正発明において、「歯科用補綴物用のジルコニア組成物の製造方法」から「歯科用補綴物用」という発明特定事項を省いたものである。 そうしてみると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(3)で検討したとおり、引用文献1に記載された発明並びに引用文献10及び12に記載された周知技術ないし公知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明についても、同様の理由により、引用文献1に記載された発明並びに引用文献10及び12に記載された周知技術ないし公知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 前記第3で検討したとおり、本願発明、すなわち、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-004997

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