2020-004270
工作機械
- 審判番号
- 2020-004270
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-178079外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年04月01日
- 審決日
- 2020年11月05日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (B23B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月10日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和元年12月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1-4に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2013/027283号
2.特開2015-74070号公報
3.国際公開第2014/188600号
4.特開平6-126585号公報(周知技術を示す文献)
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(以下、「請求時補正」という。)は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
請求時補正によって請求項1に「それぞれが有する一対のチャックと、前記一対のチャックを回転させる回転軸と、を」という事項を追加したことは、搬送ロボットが有する要素をさらに特定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)における発明の詳細な説明の段落0018-0019,0044-0045、図5(a)(b),6(a)(b)等の記載からみて、新規事項の追加には該当しない。
請求時補正によって、補正前の請求項1に記載した「前記交換位置において、前記爪取付面は、前記作業エリアから見て、上側、前側、左側、右側のいずれかを向いていること」の発明特定事項を、「前記制御装置は、前記回転軸を回転させ、前記交換位置において、前記一対のチャックそれぞれが有する前記爪取付面のうちの前記交換作業の対象である前記爪が取り付けられている前記爪取付面を、前記作業エリアから見て、下側を向かないように、上側、前側、左側、右側のいずれかを向くように位置決めすること」としたことは、制御装置の制御内容に関して、回転軸を回転させること、交換位置において位置決めされる爪取付面が、一対のチャックそれぞれが有する爪取付面のうちの交換作業の対象であり、下側を向かないように位置決めするものであることを、上記発明特定事項に対してさらに特定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)における発明の詳細な説明の段落0007,0018-0019,0028,0034,0035,0044-0045、図5(a)(b),6(a)(b)等の記載からみて、新規事項の追加には該当しない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、上記請求時補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1は、以下のとおりの発明である。(下線は、請求時補正による補正箇所に当審で付したものである。)
【請求項1】 ワークを把持、解放可能な爪と、前記爪が交換可能に取り付けられる爪取付面と、をそれぞれが有する一対のチャックと、前記一対のチャックを回転させる回転軸と、を有し前記ワークを搬送する搬送ロボットと、前記搬送ロボットを案内する走行台と、を有するワーク搬送装置と、
前記ワークに所定の加工を施す機械本体と、
前記ワーク搬送装置および前記機械本体を制御する制御装置と、
開口が設けられ前記搬送ロボットと前記機械本体を覆うカバーと、
前記開口を開閉可能な扉と、
を備える工作機械であって、
前記走行台の延在する方向を左右方向、水平面内において前記左右方向に直交する方向を前後方向、前記左右方向および前記前後方向に直交する方向を上下方向として、
前記カバーの内側であって、前記ワーク搬送装置により前記ワークが搬送され、前記機械本体により前記ワークが加工されるエリアを搬送加工エリアとし、
前記カバーの外側であって、前記搬送加工エリアの前側のエリアを、作業者が前記爪の交換作業を行うための作業エリアとした場合に、
前記制御装置は、前記爪の前記交換作業の際、前記搬送ロボットを、前記搬送加工エリア内であって、前記扉が開かれた状態の前記開口を介して、前記作業者が、前記作業エリアから前記爪を交換可能な位置である交換位置に位置決めし、
前記制御装置は、前記回転軸を回転させ、前記交換位置において、前記一対のチャックそれぞれが有する前記爪取付面のうちの前記交換作業の対象である前記爪が取り付けられている前記爪取付面を、前記作業エリアから見て、下側を向かないように、上側、前側、左側、右側のいずれかを向くように位置決めすることを特徴とする工作機械。
本願発明2-4は、請求項1を引用する引用形式請求項の発明であって、本願発明1の発明特定事項の全てを含むものである。
第5 引用文献
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与したもの。)。
(a)「[0006] 本発明の目的は、多関節ロボットとNC工作機械を備えるNC工作機械システムにおいて、多関節ロボットを初めて操作する作業者であっても、安全に操作することのできるNC工作機械システムを提供することにある。」
(b)「[0015][図1]本発明の一実施形態に係るNC工作機械システムの正面図。[図2]前フェンスを省略したNC工作機械システムの正面図。[図3]工作機械内に移動したときの多関節ロボットの側面図。[図4]パレットの上方に移動したときの多関節ロボットの側面図。続きを表示(全11行)[図5]多関節ロボットの斜視図。・・・(略)・・・[図11]ロボットハンドの斜視図。[図12]待機位置において待機姿勢を取る多関節ロボットの側面図。・・・(略)・・・[図16]J2軸給油姿勢を取る多関節ロボットの側面図。[図17]J5,J6軸給油姿勢を取る多関節ロボットの側面図。」
(c)「[0020] 図5に示すように、多関節ロボット40は、6軸(J1軸~J6軸)を有する。多関節ロボット40は、水平方向と一致するJ1軸に沿って移動するロボットベース41を備えている。ロボットベース41は、ガントリーレール30に対し、ガントリーレール30の長手方向に沿って移動可能に取り付けられている。ロボットベース41には、ラックアンドピニオン型のレール駆動部が設けられている。レール駆動部は、図6に示すJ1軸モータM1を備えている。ガントリーレール30のラックにJ1軸モータM1の出力軸に設けられたピニオンが噛み合うため、J1軸モータM1が駆動されると、ロボットベース41は、図2に示すガントリーレール30の右側走行端REと左側走行端LEの間を移動する。J1軸は、走行軸である。[0021] ロボットベース41上には、J1軸と平行なJ2軸周りに揺動するJ2軸アーム42が連結されている。J2軸アーム42は、ロボットベース41に設けられた減速機構付きのJ2軸モータM2により揺動する。J2軸アーム42の先端には、J2軸と平行なJ3軸周りに揺動するJ3軸ケーシング43が連結されている。J3軸ケーシング43は、J3軸ケーシング43に内蔵された減速機構付きのJ3軸モータM3により揺動する。[0022] J3軸ケーシング43の先端には、J3軸と直交するJ4軸周りに回動するJ3軸アーム44が連結されている。J3軸アーム44は、J3軸ケーシング43に設けられた減速機構付きのJ4軸モータM4により回動する。J3軸アーム44の先端には、J4軸と直交するJ5軸周りに揺動するJ6軸ユニット45が連結されている。J6軸ユニット45は、J3軸アーム44に内蔵された減速機構付きの図6に示すJ5軸モータM5により揺動する。図4及び図5に示すように、J6軸ユニット45の先端部は、J5軸と直交するJ6軸周りに回動する。J6軸ユニット45の先端部は、J6軸ユニット45に内蔵された減速機構付きのJ6軸モータM6により回動する。J6軸ユニット45の先端部には、ロボットハンド46が連結されている。[0023] 図11に示すように、ロボットハンド46は、ベース46aを介してJ6軸ユニット45に固定されている。ベース46aの対向する一対の端面のうち一方にはローディングハンド46bが固定され、他方にはアンローディングハンド46cが固定されている。ローディングハンド46b及びアンローディングハンド46cのそれぞれには、複数のジョー46dが設けられている。ジョー46dが作動して、ワーク80が把持されたり、ワーク80の把持が解除されたりする。J2軸からJ6軸はいずれも旋回軸である。[0024] 図5に示すように、J2軸アーム42が水平状態で+X方向に向いたときのJ2軸周りの回転角を0度とする。J2軸アーム42が0度から上方向へ回転するときの回転角度を+とし、下向き方向へ回転するときの回転角度を-とする。J3軸アーム44が鉛直下方(-Z方向)に向いたときの回転角を+180度とする。すなわち、J3軸アーム44が鉛直上方(+Z方向)に向いたときの回転角が0度である。J3軸アーム44が0度から前方向へ回転するときのJ3軸周りの回転角度を+とし、後方向へ回転するときのJ3軸周りの回転角度を-とする。J3軸アーム44の基準部位44aが+X方向に向いたときのJ4軸周りの回転角を0度とする。0度の位置からJ3軸アーム44の基準部位44aが+Y方向へ向くときのJ4軸周りの回転角度を+とし、-Y方向へ回転するときのJ4軸周りの回転角度を-とする。J6軸ユニット45がJ3軸アーム44と一直線状態に配置されたときのJ5軸周りの回転角を0度とする。J6軸ユニット45が0度から一方向(図5の前方向)へ回転するときのJ5軸周りの回転角度を-とし、反対方向(図5の後方向)へ回転するときのJ5軸周りの回転角度を+とする。[0025] 図11に示すように、J6軸ユニット45に取り付けられたロボットハンド46の基準部位46eがJ3軸アーム44の基準部位44aと同一方向に向いたときのJ6軸周りの回転角を0度とする。すなわち、この状態は、ローディングハンド46b及びアンローディングハンド46cが水平状態で、かつY軸に沿って並んでいる状態に対応する。ロボットハンド46の基準部位46eが0度から+Y方向へ向くときのJ6軸周りの回転角度を+とし、-Y方向へ回転するときのJ6軸周りの回転角度を-とする。ロボットハンド46は、パレット60上のワーク80を把持してNC工作機械10へ供給するとともに、NC工作機械10で加工が終了したワーク80をパレット60上に排出する。[0026] 図1、図2、図3及び図4に示すように、NC工作機械10及びパレット60の周囲には、安全柵としての前フェンス70、側面フェンス72、及び後フェンス74が配置されている。前フェンス70には、NC工作機械10及びパレット60にそれぞれ対応するドア76、78が開閉自在に設けられている。ドア76,78には、窓76a,78aが設けられている。前フェンス70において、NC工作機械10の窓76a付近には、第1操作盤22が設けられている。パレット60の窓78a付近には、第2操作盤24が設けられている。第1操作盤22及び第2操作盤24は、NC工作機械用の操作盤に相当する。窓78a付近には、ティーチングボックス26が設けられている。ティーチングボックス26は、図6に示すロボット制御装置50に対し電気的に接続されている。」
(d)「[0041] S20では、CPU410は、現在位置情報に基づいて、多関節ロボット40が段取り位置に位置しているか否かを判定する。段取りとは、一般的にオペレータがNC工作機械システムを作動させるために種々の準備をするための作業を指すが、ここでは、多関節ロボットのハンドを交換するための作業を示す。従って、段取り位置は、オペレータが多関節ロボットのハンドを交換するときの多関節ロボット40の位置であり、待機位置とは異なる。詳しくは、多関節ロボット40は、所定のプログラムにより実行されるか、ティーチングボックス26の手動操作により移動させられて、段取り位置に移動し、段取りのための姿勢を取る。S20では、CPU410は、多関節ロボット40がその段取り位置にあるか否かを判定する。多関節ロボット40が段取り位置に位置している場合、CPU410は、S22においてプログラムされたパターン1の処理を行う。[0042] パターン1の処理では、CPU410は、段取り位置に位置している多関節ロボット40を待機位置Gに復帰させるため、各軸モータに対して回転制御指令を付与する。段取り位置に位置する多関節ロボット40の各アーム及びロボットハンド46の位置姿勢は、予め待機位置復帰プログラムにより設定されている。このため、多関節ロボット40は、その位置姿勢から待機位置Gに復帰させられる。この場合、終点である待機位置Gと現在位置情報に基づく現在位置との間が複数の区間に区分されている。そして、CPU410は、ロボットハンド46を、区間毎に直線補間、円弧補間又は関節補間により動作制御して、待機位置Gに移動させる。パターン1のプログラムは、多関節ロボット40が待機位置Gまで各区間を移動する場合、前フェンス70,後フェンス74、及び側面フェンス72と干渉しないように設定されている。なお、多関節ロボット40が待機位置Gに復帰したときの各アーム及びロボットハンド46の位置姿勢は、後述するS32,S42,S56,S83,S84,S86,S87,S93,S94,S96,S97,S103,S104,S106,S107の各処理において待機位置Gに復帰したときの位置姿勢と同じである。[0043] S22において、CPU410は、待機位置Gに多関節ロボット40を復帰させた後、待機位置復帰プログラムの実行を終了する。」
(e)「[0046] ここで、J2軸の給油のための位置及び姿勢について説明する。[0047] 図16は、多関節ロボット40のJ2軸給油姿勢を示す。J2軸給油姿勢では、J2軸-90度、J3軸+105度、J4軸0度、J5軸+75度、J6軸0度である。J2~J6軸の座標位置を上記の角度に位置決めしてから、給油が行われる。J2軸の給油のための位置及び姿勢は、多関節ロボット40を構成する各アームの構造に応じて変更される。・・・(略)・・・[0051] S40では、CPU410は、現在位置情報に基づいて、多関節ロボット40が図17のJ5軸及びJ6軸の給油のための位置及び姿勢になっているか否かを判定する。本実施形態において、J5軸及びJ6軸の給油姿勢は、J2軸-30度、J3軸+220度、J4軸0度、J5軸+50度、J6軸0度である。J5軸及びJ6軸の給油のための位置及び姿勢の説明は、多関節ロボット40を構成する各アームの構造に応じて変更される。」
上記(c)の段落0026の記載及び図1から、前フェンス70に、NC工作機械10及びパレット60にそれぞれ対応して開閉自在に設けられたドア76、78は、前フェンス70に開口が存在し、この開口を開閉可能なものであることが明らかである
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が、記載されていると認められる。
ワーク80を把持、把持解除が可能なジョー46dと、前記ジョー46dが設けられたローディングハンド46b及びアンローディングハンド46cと、前記ローディングハンド46b及びアンローディングハンド46cを回転させる旋回軸J2-J6と、を有し前記ワーク80を搬送する多関節ロボット40と、前記多関節ロボット40を案内するガントリーレール30と、を有するワーク80を把持してNC工作機械10へ供給するとともに排出する装置と、
前記ワーク80に所定の加工を施すNC工作機械10と、
前記ワーク80を把持してNC工作機械10へ供給するとともに排出する装置および前記NC工作機械10を制御するロボット制御装置50及びNC制御装置20と、
開口が設けられ前記NC工作機械10を囲む安全柵としての前フェンス70、側面フェンス72、及び後フェンス74と、
前記開口を開閉可能なドア76,78と、
を備えるNC工作機械システムであって、
前記ガントリーレール30の延在する方向を左右方向、水平面内において前記左右方向に直交する方向を前後方向、前記左右方向および前記前後方向に直交する方向を上下方向として、
前記安全柵としての前フェンス70、側面フェンス72、及び後フェンス74の内側であって、前記ワーク80を把持してNC工作機械10へ供給するとともに排出する装置により前記ワーク80が搬送され、前記NC工作機械により前記ワーク80が加工されるエリアを搬送加工エリアとした場合に、
前記ロボット制御装置50及びNC制御装置20は、前記多関節ロボット40の前記ローディングハンド46b及びアンローディングハンド46cを備えたロボットハンド46を交換する段取りの際、前記多関節ロボット40を、前記搬送加工エリア内であって、オペレータが、前記ロボットハンド46の段取りが可能な位置に位置決めし、
前記ロボット制御装置50及びNC制御装置20は、前記旋回軸J2-J6を回転させ、前記ロボットハンド46の段取りが可能な位置において、前記多関節ロボット40にロボットハンド46の段取りのための姿勢を取らせる
NC工作機械システム。
なお、「搬送加工エリア」という用語については引用文献1に記載がないが、本願発明における領域に対応する部分について、上記引用文献1記載の発明の認定に流用した。
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,段落0005-0007,0017-0018,0021-0025,0034-0056、0073-0100、及び図1-6,10の記載からみて、アーム制御部203が、先端側にフィンガー111Bが配置されたハンド111であるエンドエフェクターの着脱指示を取得すると、アーム部材11Eの先端に設けられた着脱部112のエンドエフェクターの着脱面112Bが水平上向きとなるようにアーム部材11Eの位置及び向きを調整し、作業者が両手を用いてエンドエフェクター(ハンド111)を交換するロボットについて記載されていると認められる。
3.その他の文献について
原査定で引用した引用文献3には、段落0036-0044、及び図1-11の記載からみて、マシニングセンタ3の主軸チャックにワーク搬送装置である搬送ロボット20からワークを受け渡し、ワークの加工位置となるマシニングセンタ3の上流側にワーク搬入位置である左側のワークストッカ4L、下流側にワーク搬出位置である右側のワークストッカ4Rを設けることが、記載されている。
同じく原査定で引用した引用文献4には、段落0010、及び図1,3,4に、「機体(10)の前面には、機械の調整、修理、加工作業の監視等のために窓付の扉(11)が配設される」ことが、記載されている。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用文献1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用文献1記載の発明の「ワーク80を把持、把持解除が可能なジョー46d」、「ローディングハンド46b及びアンローディングハンド46c」、「旋回軸J2-J6」、「多関節ロボット40」、「ガントリーレール30」、「ワーク80を把持してNC工作機械10へ供給するとともに排出する装置」、「NC工作機械10」、「ロボット制御装置50及びNC制御装置20」、「ドア76,78」、「NC工作機械システム」、及び「オペレータ」は、それぞれ、本願発明1における「ワークを把持、解放可能な爪」、「一対のチャック」、「回転軸」、「搬送ロボット」、「走行台」、「ワーク搬送装置」、「機械本体」、「ワーク搬送装置および機械本体を制御する制御装置」、「扉」、「工作機械」、及び「作業者」に相当する。
そして、引用文献1記載の発明の「開口が設けられ前記NC工作機械10を囲む安全柵としての前フェンス70、側面フェンス72、及び後フェンス74」は、本願発明1の「開口が設けられ搬送ロボットと機械本体を覆うカバー」と、開口が設けられた機械本体周囲の囲い手段である点を限度に一致する。
次いで、引用文献1記載の発明の「ロボットハンド46の段取り」は、本願発明1の「爪の交換作業」と、搬送ロボットの段取り作業であることでは一致し、また、このことから、引用文献1記載の発明の「前記多関節ロボット40を、前記搬送加工エリア内であって、オペレータが、前記ロボットハンド46の段取りが可能な位置に位置決め」することは、本願発明1の「前記搬送ロボットを、前記搬送加工エリア内であって、前記作業者が、前記爪を交換可能な位置である交換位置に位置決め」することと、搬送ロボットを、搬送加工エリア内であって、作業者が、搬送ロボットの段取り作業が可能な位置に位置決めすることでは一致する。
加えて、引用文献1記載の発明の「前記ロボットハンド46の段取りが可能な位置において、多関節ロボット40にロボットハンド46の段取りのための姿勢を取らせる」ことは、本願発明1の「前記交換位置において、前記一対のチャックそれぞれが有する前記爪取付面のうちの前記交換作業の対象である前記爪が取り付けられている前記爪取付面を、前記作業エリアから見て、下側を向かないように、上側、前側、左側、右側のいずれかを向くように位置決めする」ことと、搬送ロボットの段取り作業が可能な位置において、搬送ロボットの姿勢を決めることにおいて、共通な動作といえる。
したがって、本願発明1と引用文献1記載の発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
ワークを把持、解放可能な爪をそれぞれが有する一対のチャックと、前記一対のチャックを回転させる回転軸と、を有し前記ワークを搬送する搬送ロボットと、前記搬送ロボットを案内する走行台と、を有するワーク搬送装置と、
前記ワークに所定の加工を施す機械本体と、
前記ワーク搬送装置および前記機械本体を制御する制御装置と、
開口が設けられた前記機械本体周囲の囲い手段と、
前記開口を開閉可能な扉と、
を備える工作機械であって、
前記走行台の延在する方向を左右方向、水平面内において前記左右方向に直交する方向を前後方向、前記左右方向および前記前後方向に直交する方向を上下方向として、
前記囲い手段の内側であって、前記ワーク搬送装置により前記ワークが搬送され、前記機械本体により前記ワークが加工されるエリアを搬送加工エリアとした場合に、
前記制御装置は、前記搬送ロボットの段取り作業の際、前記搬送ロボットを、前記搬送加工エリア内であって、前記作業者が、前記搬送ロボットの段取り作業が可能な位置に位置決めし、
前記制御装置は、前記搬送ロボットの段取り作業が可能な位置において、前記搬送ロボットの姿勢を決める工作機械。
(相違点1)
本願発明1は、開口が設けられた機械本体周囲の囲い手段として、搬送ロボットと機械本体を囲うカバーを備えるのに対して、引用文献1記載の発明の当該囲い手段は、NC工作機械10(機体本体)を囲む(覆う)安全柵としての前フェンス70、側面フェンス72、及び後フェンス74であって、上面及び多関節ロボット40(搬送ロボット)を覆うものではない点。
(相違点2)
搬送ロボットの段取り作業について、本願発明1では、カバーの外側であって、搬送加工エリアの前側の作業エリアから扉が開かれた状態の開口を介して、作業者が搬送ロボットの爪を交換することが可能であるのに対して、引用文献1記載の発明では、オペレータ(作業者)が交換する対象が、本願発明1のように交換可能に一対のチャックの爪取付面に取り付けられた搬送ロボットの爪ではなく、ローディングハンド46b及びアンローディングハンド46c(一対のチャック)を備えたロボットハンド46であり、また、本願発明1のように作業エリアの位置、及び作業者がこの作業エリアから扉が開かれた状態の開口を介して作業可能であるか否かが不明な点。
(相違点3)
制御装置による搬送ロボットの段取り作業が可能な位置における制御が、本願発明1のものは、回転軸を回転させ、一対のチャックそれぞれが有する爪取付面のうちの交換作業の対象である爪が取り付けられている爪取付面を、作業エリアから見て、下側を向かないように、上側、前側、左側、右側のいずれかを向くように位置決めするのに対して、引用文献1記載の発明は、多関節ロボット40(搬送ロボット)に予め待機位置復帰プログラムにより設定されている段取り姿勢を取らせるものの、その具体的な姿勢については特定がなく、したがって、この爪取付面をどの方向に向くように位置決めするか不明である点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3から検討する。
引用文献1の段落0041-0042には、段取り位置における搬送ロボットである多関節ロボット40の制御について記載され、多関節ロボット40が待機位置とは異なる段取り位置に移動して、段取り姿勢を取ること、あるいは、段取り位置に位置する多関節ロボット40の各アーム及びロボットハンド46の位置姿勢は、予め待機位置復帰プログラムにより設定されていることが記載されているものの、本願発明1のような一対のチャックそれぞれが有する爪取付面のうちの交換作業の対象である爪が取り付けられている爪取付面をどの方向に向くように位置決めするかについては記載されていない。
加えて、引用文献1記載の発明の段取り作業における作業者であるオペレータが交換する対象が、爪自体ではなく、爪を有する一対のチャックであるローディングハンド46b及びアンローディングハンド46cを備えたロボットハンド46であり、本願発明1のような交換作業の対象である爪が取り付けられている爪取付面が特定されないものであって、当該爪取付面の向きにより、ロボットハンド46の交換作業の難度が変わるものではない。
次いで、引用文献2には、引用文献1記載のロボットハンド46に対応するハンド111の着脱の際に、その着脱面が水平上向きとなるように位置及び向きが調整されるものであることが認められる。
そうすると、引用文献1記載の発明において、引用文献2記載の発明を適用しても、前者はロボットハンド46を、後者はハンド111を、それぞれ着脱するものであって、本願発明1のように爪を交換するものではないから、本願発明1のような「一対のチャックそれぞれが有する前記爪取付面のうちの前記交換作業の対象である前記爪が取り付けられている前記爪取付面」を位置決めするという技術的思想は導き出されない。
さらに、引用文献1記載の1対のチャックであるローディングハンド46b、アンローディングハンド46cは、この1対のチャック(爪)であるローディングハンド46b、アンローディングハンド46cの二つのハンドを有するロボットハンド46ごと交換するものであって、そのいずれか一つのハンド(ローディングハンド46b又はアンローディングハンド46c)を交換作業の対象として択一的に選択するものではないから、本願発明1のように、爪を交換すべく、「一対のチャックそれぞれが有する前記爪取付面のうちの前記交換作業の対象である前記爪が取り付けられている前記爪取付面」を位置決めすることを示唆、あるいはこれに至る動機も存在しないことが明らかである。
また、他の引用文献についてみても、その記載内容は、上記「第5 引用文献」の「3.その他の文献について」のとおりであり、上記相違点3に係る構成を示すものではない。
したがって、上記相違点1及び相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1-4記載の発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2.本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1の特定事項の全てを含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1-4記載の発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第7 原査定について
原査定の理由(特許法第29条第2項)について、
上記第3の請求時補正により、本願発明1-4は、上記第4の内容のとおり補正されており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基いて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
なお、上記第6の1(1)の相違点3に関し、引用文献1の図1-2のNC工作機械システムの正面図、図3-5の多関節ロボットの側面図及び斜視図、図11のロボットハンドの斜視図、図12の待機位置において待機姿勢を取る多関節ロボットの側面図、図16-17の給油位置において給油姿勢を取る多関節ロボットの斜視図には、1対のチャックを構成する複数のジョー46dを取付面に備えたロボットハンド46が図示され、令和元年5月30日付け拒絶理由通知書においては図12に関し、「待機位置において、爪取付面が左右方向を向くことが看取され」と説示されているように、 これらの図面には、爪取付面が左右方向を向いた状態を示すものも含まれる。
しかし、上記いずれの図面も、「段取り位置」におけるロボットハンド46に関するものであることは示されておらず、また、図5の記載からみて、爪取付面は任意の方向に向くように位置決めできるものであるところ、そもそも爪を交換するものではない引用文献1記載の発明において、段取り位置においても、当然に爪取付面が左右方向を向くように制御されると推定できる根拠を見出すことができない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-004270