2020-003150
複合型磁性制振材
- 審判番号
- 2020-003150
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-004497外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年03月06日
- 審決日
- 2021年01月22日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】タキロンシーアイ株式会社
- 【請求人代理人】西澤 和純
- 【請求人代理人】伊藤 英輔
- 分類
- P18 .121-WY (F16F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成28年1月13日の出願であって、平成31年4月18日付けで拒絶理由通知がされ、令和1年6月20日に手続補正がされ、令和1年8月5日付けで最後の拒絶理由通知がされ、令和1年10月1日に手続補正がされ、令和1年12月12日付けで令和1年10月1日の手続補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和2年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和1年12月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし7に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特許第4233526号公報
2.特開2001-250712号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平1-321606号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和2年3月6日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】拘束層、粘弾性層、高透磁率層及び磁性層をこの順で備え、前記磁性層の磁力により被着面に吸着する複合型磁性制振材であり、前記高透磁率層のヤング率が1GPa以上であり、前記高透磁率層の厚さ/前記拘束層の厚さの比が0.2以上0.5以下であり、前記高透磁率層の厚さ/前記粘弾性層の厚さの比が0.03以上0.5以下であり、前記高透磁率層の厚さ/前記磁性層の厚さの比が0.2以上0.5以下であり、前記高透磁率層の厚さが0.3mm以上1.0mm以下であることを特徴とする複合型磁性制振材。」
なお、本願発明2ないし7は、概略、それぞれ本願発明1を減縮した発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した(以下、同様。)。
「【請求項1 】磁性固着層、粘弾性材層及び拘束層を順に積層して備え、前記磁性固着層の磁力により被着面に装着して使用される複合型制振材であって、前記粘弾性材層を、粘着性を有する未架橋又は部分架橋のブチルゴムにより構成し、その厚さを1.5mm~25mmとし、その針入度を3~90とし、前記拘束層を、鋼板、塗装鋼板、メッキ鋼板、ステンレス、アルミニウム、その他の金属板、ヤング率300Pa以上のセラミック系板、ヤング率300Pa以上の合成樹脂系板、ヤング率300Pa以上の合板鋼板等その他の複合材のいずれかにより構成し、その厚さを0.6mm~18mmとし、前記磁性固着層は、可撓性を有する多極着磁された磁性固着層とし、被着面に対して50g/cm2以上の吸着力を有することを特徴とする複合型制振材。」
「【0005】・・・・・(略)・・・・・前記磁性固着層、粘弾性材層及び拘束層は、図1に示すようにそれぞれ1層ずつ順に積層される。尚、前記各層がそれぞれ1層ずつ積層されるものに限定されるものではなく、図2に示されるように磁性固着層2、粘弾性材層3、拘束層4、粘弾性材層3及び拘束層4を順に積層するようにしたり、図3に示すように、磁性固着層2、粘弾性材層3、拘束層4、磁性固着層2、粘弾性材層3及び拘束層4を順に積層する等組み合わせは任意である。尚、図3に示すものでは、複合型積層材の中央に示す磁性固着層2と拘束層4とは磁力により接合されるものである。上記のようにして得られた本発明の複合型制振材1は、例えば、図8に示すように被着体である鉄道用レール5のウェブ部5w、或いは、レール5の下部のフランジ5fに取り付けて使用される。このとき、本発明の複合型制振材1の粘弾性材層3は、拘束層4よりも厚く構成されるため、同図(a)に示すように、レールのウェブ部5wに磁性固着層2を固着させるだけで、磁性固着層2が粘弾性材層3とともにレール側に引っ張られ、最終的に、同図(b)に示すようにレール5のウェブ表面に沿って複合型制振材が固着されることになる。従って、レール等の曲面を備える被着体への固着作業は極めて容易にすることができ、しかも、被着体5の振動を確実に粘弾性材層3に伝えることができる。また、拘束層をロール巻きできる程度の弾性を有する厚さ又は材料により構成すれば、複合型制振材を容易に湾曲させることができるようになり、大きな湾曲した表面を有する被着体にも追従させることができる。尚、本発明の複合型制振材1は、図示しないが、枕木間の鉄道用レールの底部に設けることもできる。また、本発明の複合型制振材は、図8で示した鉄道用レールのみに使用される以外にも、例えば、図9に示すように鉄道橋におけるレール5側方の側壁8に固着して使用したり、図10に示すように道路橋における道路6と道路を支える橋脚7との間の主桁10の側面に使用する等、振動の大きい場所に使用することができる。尚、本発明の複合型制振材を被着体への固着の安定性を高めるために必要に応じて複合型制振材の外側から被着体側へ、複合型制振材を押圧することができる支持体を設けるようにしてもよい。」
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「拘束層4、粘弾性材層3及び磁性固着層2をこの順で備え、前記磁性固着層2の磁力により被着面に装着して使用される複合型制振材1。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0005】【発明が解決しようとする課題】上記の磁石吸着具70は磁気的吸着力のみでセンサを固定することから十分に大きな吸着力が確保されていなければならない。それには希土類磁石等の最大エネルギー積の大きな磁石を使用するだけでなく、磁石から発生する磁力線の漏れの少ない磁気回路を形成することが求められる。磁気回路における磁力線の漏れを無くすにはN極S極間の磁路を磁性材料で形成しかつ磁束が飽和しない磁路の断面積を確保すればよい。・・・(略)・・・」
「【0014】磁石1aは矩形形状のものを使用でき、折り曲げた端部1dと並べてヨーク1bに接着する。着磁方向は磁気回路を形成しやすいようヨーク1bに接着される面と外表面72aと対向する面とに磁極が現れるように着磁する。磁石には日立金属社製希土類磁石HS-42AH等を好適に使用することができる。板状材料(ヨーク1b)は強磁性材料であり市販の圧延鋼板、例えばSPCやSPCC材等を好適に使用することができる。補強部1eはヨーク1bの曲げ強度を高める働きをするもので、折曲げ方向は容器側でもよい。また、ヨーク1bに十分な強度があれば省略してもよい。」
「【図1】」(図1)
したがって、磁石とヨークに係る技術常識を考慮すると、上記引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「磁気的吸着力を高めるために、強磁性材料からなるヨークを、磁石と接着するように設けること。」
3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「第3図は、本発明の外力を重力で与えた感熱吸着具の側面図であり、1は永久磁石、2はバックヨーク3は永久磁石に吸着される吸着具である。永久磁石1の組成、製法及び性能は実施例1と同様である。吸着具3の重量は、永久磁石の吸引力に対して反対方向に働く外力になっており、その重量を調整することにより、吸着具3を永久磁石1より離す温度が決められる。所定の温度に達すれば、吸着具3は永久磁石1より離れ下方に落下するが、吸着具3の下方に吸着具を受けとめるストッパーを用意しておき(図示せず)、落下した吸着具を受けとめ、吸着具3と永久磁石1とのギャップを調整することにより、温度が低下したときに再び吸着具3を永久磁石1に吸着することも可能である。また、再吸着の必要がなければ、ストッパーを用意せずにそのまま落下させてしまうか、もしくは永久磁石1と吸着具3とのギャップを大きくとればよい。」(3ページ左下欄下から3行ないし右下欄15行)
「」(第3図)
したがって、磁石とヨークに係る技術常識を考慮すると、上記引用文献3には、次の技術的事項(以下、「引用文献3に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「磁気的吸着力を高めるために、永久磁石にバックヨークを設けること。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「拘束層4」、「粘弾性材層3」、「磁性固着層2」、「被着面に装着して使用される」及び「複合型制振材1」は、その機能・構造等からして順に、本願発明1における「拘束層」、「粘弾性層」、「磁性層」、「被着面に吸着する」及び「複合型磁性制振材」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「拘束層、粘弾性層及び磁性層をこの順で備え、前記磁性層の磁力により被着面に吸着する複合型磁性制振材。」
(相違点)
本願発明1は、「拘束層、粘弾性層、高透磁率層及び磁性層をこの順で備え」、「前記高透磁率層のヤング率が1GPa以上であり、前記高透磁率層の厚さ/前記拘束層の厚さの比が0.2以上0.5以下であり、前記高透磁率層の厚さ/前記粘弾性層の厚さの比が0.03以上0.5以下であり、前記高透磁率層の厚さ/前記磁性層の厚さの比が0.2以上0.5以下であり、前記高透磁率層の厚さが0.3mm以上1.0mm以下である」のに対し、引用発明では、「拘束層4、粘弾性材層3及び磁性固着層2をこの順で備え」るものの、「高透磁率層」を備えず、したがって、そのヤング率及び厚さ並びに拘束層、粘弾性層及び磁性層との厚さの比も特定できない点。
(2) 相違点についての判断
上記相違点について検討すると、「引用文献2に記載された技術的事項」及び「引用文献3に記載された技術的事項」をまとめると、引用文献2及び3から、「磁気的吸着力を高めるために、強磁性材料からなるヨークやバックヨークを、磁石と接着するように設けること」という技術的事項が知られていたといえるし、特に、「強磁性材料からなるヨークやバックヨークを、磁石と接着するように設けること」は本願発明1における「高透磁率層及び磁性層をこの順で備え」る点に相当しているといえる。
しかしながら、仮に、磁気的吸着力を高めるとの課題のもとに、引用発明をして上記相違点に係る本願発明1の「高透磁率層及び磁性層をこの順で備え」る構成とし得たとしても、さらに引用発明をして上記相違点に係る本願発明1の「前記高透磁率層のヤング率が1GPa以上であり、前記高透磁率層の厚さ/前記拘束層の厚さの比が0.2以上0.5以下であり、前記高透磁率層の厚さ/前記粘弾性層の厚さの比が0.03以上0.5以下であり、前記高透磁率層の厚さ/前記磁性層の厚さの比が0.2以上0.5以下であり、前記高透磁率層の厚さが0.3mm以上1.0mm以下である」との構成(以下、当該構成を「構成A」という。)とすることに係る証拠はない。 そして、本願の明細書には、その段落【0021】ないし【0026】に、
「【0021】高透磁率層3の材料としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、鋼、ステンレス、パーマロイ、センダスト、ソフトフェライト等の軟磁性材料が挙げられる。高透磁率層3は、上記軟磁性材料を含む板材またはシートであることが好ましい。高透磁率層3の全質量に対する上記軟磁性材料の含有量は、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、95~100質量%がさらに好ましい。上記軟磁性材料の含有量が高まる程、吸着力を増加させることができる。よって、高透磁率層3は軟磁性材料のみからなることが特に好ましい。【0022】高透磁率層3を構成する軟磁性材料の具体例としては、例えば、鉄板、ニッケル板、コバルト板、鋼板、ステンレス板、その他の高透磁率金属板またはシート、鉄粉、パーマロイ粉、センダスト粉、ソフトフェライト粉等の軟磁性粉体を配合した樹脂、エラストマーまたはゴムからなる高透磁率磁性シート等が挙げられる。続きを表示(全21行)高透磁率層3の材料は、剛性の高い材料であってもよく、剛性の低い材料であってもよいが、剛性の高い材料が好ましい。すなわち拘束層に用いられる材料のうち、上記した透磁率を有するものが好適な材料として挙げられる。高透磁率層3が剛性の高い材料である場合、高透磁率層3の剛性によって高透磁率層3が粘弾性層2の伸びを抑制することによる振動抑制効果が得られるため、優れた制振効果が得られる。また、上記板材のヤング率は、1GPa以上であることが好ましい。1GPa以上であると、高透磁率層3の形状を被着面と同じ形状とすることにより、その剛性により、磁性層4の形状を被着面に容易に沿わせることができる。ここでヤング率は、JIS Z 2241:2011「鋼材の引張試験方法」で測定される値である。【0023】高透磁率層3の厚さは、0.1mm~18mmが好ましく、0.2mm~3.0mmがより好ましく、0.3mm~1.0mmがさらに好ましい。上記厚さが0.1mm以上であると、優れた制振効果が得られ易い。上記厚さが18mm以下であると、高透磁率層3が嵩張らず、鉄道用レールと車輪の軌道の間隙等の狭い場所にも複合型磁性制振材10を容易に吸着させることができる。さらに、高透磁率層3が自重によって磁性層4から剥離することを防止できる。【0024】高透磁率層3と拘束層1の厚さの比(高透磁率層3の厚さ/拘束層1の厚さ)は、例えば、0.05~2が好ましく、0.1~1がより好ましく、0.2~0.5がさらに好ましい。上記範囲であると、拘束層1に対する高透磁率層3の剛性が適度となり、複合型磁性制振材10を被着面の形状に沿わせて、磁性層4を被着面に対してより容易に密着させることができる。これにより、優れた吸着力及び制振効果が得られる。【0025】高透磁率層3と粘弾性層2の厚さの比(高透磁率層3の厚さ/粘弾性層2の厚さ)は、例えば、0.01~1が好ましく、0.03~0.5がより好ましく、0.06~0.1がさらに好ましい。上記範囲であると、粘弾性層2における内部損失による制振効果がより一層発揮され易くなる。【0026】高透磁率層3と磁性層4の厚さの比(高透磁率層3の厚さ/磁性層4の厚さ)は、0.05~2が好ましく、0.1~1がより好ましく、0.2~0.5がさらに好ましい。上記厚さの比が0.05以上であると、高透磁率層3がヨークとして充分に機能し、磁性層4の磁力、即ち複合型磁性制振材10全体の磁力を高められるため、磁性層4の吸着力及び制振効果が高められる。また、高透磁率層3が剛性の高い材料である場合には、高透磁率層3が粘弾性層2の伸びを抑制することによる振動抑制効果が得られるため、優れた制振効果が得られる。上記厚さの比が2以下であると、磁性層4の被着体への吸着に伴って複合型磁性制振材10の全体が変形する際に、高透磁率層3とともに粘弾性層2及び拘束層1が磁性層4の変形に容易に追従することができる。これにより、優れた吸着力及び制振効果が得られる。」
と記載されていることから、本願発明1の「構成A」は、少なくとも、吸着及び制振に係る効果を奏する構成であるといえるので、当業者といえども「構成A」を採用することが単なる設計事項にすぎないということもできない。
そうすると、本願発明1は、当業者であっても引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7も、本願発明1の「構成A」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし7は、当業者が引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定に理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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