2020-003086
チャープ進行波解及びスペクトル
- 審判番号
- 2020-003086
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-532911外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年03月05日
- 審決日
- 2021年01月28日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】グルプラサド ベンカタ
- 【請求人代理人】草間 攻
- 分類
- P18 .537-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第2条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 8項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成27年2月13日にされた外国語特許出願(パリ条約による優先権主張、2014年12月17日、米国)であって、平成29年8月3日に翻訳文が提出され、平成30年10月29日付けの拒絶理由通知に対し、令和元年5月1日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(原査定の謄本の送達日:同年11月5日)、これに対して、令和2年3月5日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 請求項1の記載
令和元年5月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】電磁、音響又は他の波のスペクトル成分であり、前記波の1つ又は複数の波源から前記波の受信機へ有限の速さで進むスペクトル成分であって、波源は、受信機から様々な距離に配置され、また、スペクトル成分は、受信機において、第1組の変動レートで、位相又は振幅以外の1つ又は複数の時間依存特性において、時間に伴い連続単調変動を呈するスペクトル成分。」
第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
「特許・実用新案審査基準」(以下「審査基準」という。)は、明確性要件違反の類型として、「請求項に係る発明の属するカテゴリーが不明確であるため、又はいずれのカテゴリーともいえないため、発明が不明確となる場合」を挙げている(II部第2章第3節「明確性要件」2.2における、「明確性要件違反の類型」の(3)を参照)。
令和元年5月1日付け手続補正による補正後の請求項1には、「スペクトル成分」について記載されているところ、「スペクトル成分」は、物及び方法のいずれのカテゴリーとも認定できない。
請求項1は、審査基準における「いずれのカテゴリーともいえないため、発明が不明確となる場合」に該当し、発明が不明確である。
意見書において、「スペクトル成分」自体は、「請求項15-20」に記載の方法を実行することで実現されるものである旨主張しているが、請求項1は、物及び方法のいずれのカテゴリーとも認定できない。
よって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
第4 当審の判断
1 請求項1の「スペクトル成分」について
請求項1は、上記第2において示したとおり、「電磁、音響又は他の波のスペクトル成分」である。例えば、フーリエ変換のように、電磁波や音波などの波動が時間の関数f(t)として表されるとき、その時間の関数f(t)を周波数の関数F(ω)についての周波数ωの積分で表されるように表現の変換をすると、F(ω)という、上記波動の周波数成分が得られることは、広く知られている。このような技術常識も踏まえると、請求項1の「スペクトル成分」は、「1つ又は複数の波源から」「受信機へ有限の速さで進む」「電磁、音響又は他の波」の周波数成分に関するものであると考えられる。
しかながら、「スペクトル成分」という表現では、どのような事項を指すのか明らかではない。
そこで、以下では、請求項1の「スペクトル成分」が具体的に何を指すのかを明らかにするために、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌して検討する。
2 発明の詳細な説明の「スペクトル成分」について
(1)発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明において、「スペクトル成分」に関わる記載は、概ね以下のとおりである(下線は当審が付与した。)。
「【技術分野】【0001】A 発明の分野本発明は、電磁、音響又は他の波の1つ又は複数の波源への距離の決定と、受信機に到着する類似の物理的性質の全ての波の全体から1つ又は複数の所望の波源からのそのような波の選択又は区別と、に関する。【0002】特に、本発明は、受信機におけるスペクトル分解又は選択を介した波源からの移動時間又は距離の物理的な情報の顕在化に関する。」
「【発明の概要】【0084】上記の並びに明らかな他の目的は、受信機から様々な距離に配置された1つ又は複数の波源から受信機に有限の速さで進む電磁、音響又は他の波のスペクトル成分であって、位相や振幅以外の1つ又は複数の特性において、受信機における時間に伴う単調な変動を有するスペクトル成分として進行波解を提供することによって、また、そのようなスペクトル成分を得るための方法を提供することによって達成される。【課題を解決するための手段】続きを表示(全61行)【0085】本発明は、光学分光計の回折格子による等、計算がアナログであっても、スペクトル及びその成分が、定義によって、スペクトル分解又は選択において暗示的な計算の人為結果であるという事実や、スペクトル分解又は選択性は、一般的に、波を受信する過程に関わるという事実や、スペクトル分解又は選択は、一般的に、時間についての積分を伴い、また、スペクトル成分を独特な周波数を有する時間の周期関数として提供するという事実を活用する。本発明のスペクトル成分としての進行波解は、更に、時間と共に、それらの波源からの距離を伴い、従って、周波数値を完全に波源に関係付けるエンティティとしても物理的に重要である。【0086】特に、本発明の進行波解は、進行波解の位相又は振幅以外の1つ又は複数の特性における時間と共に単調変動を誘起するように、受信機でのスペクトル分解又は選択において、1つ又は複数の基準量を時間と共に変動することによって、受信機において構成される。基準量は、積分におけるカーネル関数の周波数に対応し、従って、それらの変動は、位相勾配特許のスペクトル位相勾配と等価であり、また、各積分についてのみ単調である必要がある。基準量の変動による進行波解の位相又は振幅以外の1つ又は複数の特性における時間に伴う単調変動の導入は、積分によって確保される。【0087】カーネル関数の周波数の変動によるスペクトル分解又は選択は、従来技術のフーリエスペクトル又は正弦波進行波解に帰着し得ない。その理由は、後者は、双方共、カーネル関数における周波数の定常性によって定義されるためである。逆に、基準量の変動があると、各周波数における連続的なサイクルは、変換計算において連続的なビンにカウントされ、その結果、各ビンは、加速時、DSNサイクルカウンタによって意図せずに提供される連続的に異なる周波数でのサイクルのカウント値を担持するが、これに対して、フーリエ変換は、各ビンが単一の周波数をカウントする必要がある。【0088】従って、本発明の進行波解は、受信機でのスペクトル分解又は選択における時間に伴う基準量の変動を表すこと、位相又は振幅以外のそれら自体の特性における時間に伴う変動を呈示すること、の双方において、更に一般的である【0089】従来技術の進行波解に対する利点は、波源から受信機への進行時の単調変動の停止に起因する単調に変動する特性の遅延に存し、そして、これによって、進行した距離又は時間に比例する。進行中の変動の停止は、一般的な形式[数29]を有する進行波方程式の一般解を定義するダランベールの原理によって保証されるが、ここで、形式[数30]の関数として、rは、波源からの距離であり、cは、波の速さであり、tは、受信機において測定される時間である。ψは、和の関数[数31]でなければならないが、これまで別々に仮定されたように、必ずしも時間t又は距離rのものとは限らないことから、その形状及び形状を特徴付ける特性は、和[数31]の任意の固定された値について、即ち、進行中、変化できない。【0090】【数29】(省略)【0091】【数30】(省略)【0092】【数31】(省略)【0093】本発明は、従って、波長及び周波数、ウェーブレット変換[数32]におけるaのような時間スケール係数、波が横波である場合の偏光、並びにそのような特性の組合せ又は関数に関係する。振幅は、通常、進行中、減少し、これにより、振幅の遅延が、進行距離又は時間の目安として信頼できなくなる。位相遅延は、各サイクルで繰り返すため、進行距離及び時間の単調な目安として信頼できないことから、個々の成分の位相もまた除外される。【0094】【数32】(省略)【0095】偏光面は、所定の用途における対象の距離又は進行時間の範囲において、実質的に単調であるのに充分なほどゆっくりと変動し得るように含まれる。偏光面の単調変動を誘起するための変動される基準量は、カーネル位相の代わりに、積分中、受信機のアンテナの方位を制御するパラメータであり、従って、スペクトル分解又は選択は、そうでない場合、そのまま維持し得る。【0096】遠隔の波源から生じる進行波スペクトル成分は、従って、進行不変特性の単調時間変動の遅延によって受信機において特徴付けられ、また、本発明に含まれる。本発明の進行波スペクトル成分から受信機において再構成された時間領域波形は、例えば、数式(1)において考察したように、逆変換を介して本発明の進行波スペクトル成分と数学的に等価であり、また、このように、本発明に含まれる。線形及び指数関数的な変動は、分析的に、また、実施するのに最も単純であるが、任意の単調変動が、本発明の範囲内で許され、また、想定され、結果的に生じる遅延は、一般的に、形式(4)[数33]のテイラー級数によって記述される。上式において、ξ(t)は、単調に変動される特性を示し、本発明の進行波解の振幅及び位相を除外し、[数34]は、ξの変動の比率であり、β(1)≡ξ-1d2ξ/dt2、β(2)≡ξ-1d3ξ/dt3等は、受信機におけるξの瞬時高次分数導関数である。不連続の変動は、無限次数の導関数を必然的に伴い、また、ξの有限の数の導関数だけを、有限の数の構成要素を備えた電子回路又は機械的な設計によって実現し得ることから、ξの達成される変動は、一般的に円滑である。【0097】【数33】(省略)【0098】【数34】(省略)【0099】周波数の単調変動を有する本発明の進行波スペクトル成分から再構成された時間領域波形の時間スケールの遅延は、第1次の距離に比例する時間の遅れを表す。各スペクトル分解又は選択プロセスは、単一の比率による遅延及び時間の遅れを有する本発明の単一の進行波スペクトルを生成するため、任意の時間の遅れにおける波の可観測性は、単に、従来技術の多数の受信機によるそれらの独立した可観測性と等価である。更に、遅延は、距離比例性により、波源において観察可能ではない。遅延特性は、受信機への進行波スペクトル成分による進行に必要な時間の間同じ変動割合で展開し得る場合、波源においてそれらの値に展開する波源の過去のスペクトル状態を表す。遅延は、波の速さcが、例えば、導波管、伝送線路及び屈折媒体中で減少するため、更に厳密に進行の時間に対応する。波源から受信機までの進行時間、また、従って、進んだ距離に対する比例性によって、全てのそのような遅延は、進行時間及び距離の物理的な情報を表し、1つ又は複数の波源において実施し得る変調又は符号化とは独立し、また、それらに追加し得る。【0100】本質的なCW-FMレーダ及び既知のエコー位置特定のメカニズムに対する利点について、この場合、距離情報は、うなり周波数振動から導出され、また、それは、瞬時発信送信機信号に対する各戻りエコーによって生成される遅延でもあるが、該利点は、本発明の進行波解は、スペクトル成分として、全ての波源にとって利用可能であるということであり、遅延は、戻りエコーだけでの代わりに、受信機からのそれらそれぞれの距離の物理的な情報を表し、任意の波源において、周波数変調を必要とすることはない。【0101】宇宙論的なシフト及び時間の遅れに対する利点は、ハッブルの法則によって距離比例でもあるが、距離スケール固有の線形性に存し、遅延の大きさスケール及び符号は、宇宙の環境の代わりに、そのスペクトル分解又は選択の変動の比率の受信機の実装によって単に決定され、進行波スペクトル成分を提供する。ハッブル定数Hoは、現在の技術の限界を定義するアラン偏差に対して小さいため、実装された比率は、一般的に、Hoより何桁も大きい。大きな比率は、いずれの場合でも、ほとんどの通信や測距用途に一般的に伴う距離に渡って有用な遅延を生成するのに必要である。【0102】宇宙船の地球フライバイのNASAの追跡における範囲比例シフトに対する利点は、「背景技術」において推測されるが、地上局を基準とした宇宙船加速の特別な環境の代わりに、再度、遅延の大きさスケールや符号の受信機の制御にある。【0103】位相勾配特許によって提供される距離比例シフトに対する利点は、全ての進行波解についてのダランベールの原理によって、確実性にあるが、これは、受信機において得られた本発明の進行波スペクトル成分のシフトされた周波数及び波長が、実際には、波源において発生し、波源からの進行による変化無しで、受信機に到着するというものである。特に、波源における搬送波周波数及びその変調側波帯に渡る瞬時位相分布は、受信機において得られた本発明の進行波スペクトル成分に同様に再生される。従って、更なる利点は、スペクトル選択が、従来の周波数の上方又は下方変換に存在しない再構成された信号の時間の遅れだけを条件として、対応する変調側波帯を認める限り、受信機での搬送波周波数のスペクトル選択により得られた本発明の進行波スペクトル成分に適用される復調又は復号により波源において変調又は符号化される情報の受信機における完全な回復可能性の確実性にある。【0104】関係する利点は、測距ための、即ち、波源の距離を決定するための位相勾配特許と、多数の波源から同じ周波数で送信された信号を分離するための多重化特許と、の双方に対して、2つ以上の組の本発明の進行波スペクトル成分を互いに位相について関係付ける受信機での機会として、生じ、各組は、変動の異なる比率(β)及びその導関数を呈し、これによって、対応して異なるシフトされた周波数で受信される。回復され変調された又は符号化された情報の時間スケール差異に対する補正は、特に、デジタル実施例では取るに足らないことである。【0105】ξ0が、波源における周波数又は波長の現在値を示す場合、遅延(数式4)による受信機におけるそのシフトされた値は、2つの未知数r及びξ0により、ξ=ξ0(1-βr/c+・・・)であるが、その理由は、波の速さcが独立に既知であり、比率β及びその導関数が、受信機における基準量の変動によって決定されるためである。異なる比率β’≠β及びその導関数を持つ第2組の進行波スペクトル成分は、ξ0及びr双方を、r=-c(ξ-ξ’)/(ξβ’-ξ’β)及びξ0=ξ/(1-βr/c)として決定し得るように、値ξ’=ξ0(1-β’r/c)を生成する。第2組の成分は、極限のβ’=0の場合、ξが周波数又は波長を示し、従って、波源におけるξの値が独立した知識と等価である時、フーリエスペクトルになる。その周波数の知識無しで、波源までの範囲を推論するために2つ以上の比率を組み合わせると、第1位相勾配特許に述べているように、周波数領域の視差に達する。信号分離のための逆の用途では、相関関係への入力は、どのシフトされた周波数帯が、本発明の進行波スペクトル成分を得るために用いられるかに依存して、異なる波源からの信号の非対称的な寄与を有する。相関関係は、一部の波源の信号を強化し、他の波源のそれらを抑制する。本発明の進行波スペクトル成分は、位相による相関関係付けを可能にし、これは、範囲解像度及び信号隔離の双方について有益である。【0106】また、これら全ての先行する利点は、偏光面における単調な変動を効果的に呈する本発明の進行波解と共に生じ、また、更なる利点は、周波数における単調な変動を伴う時間の遅れに対する補正を必要としないことである。【0107】追加の利点は、受信機において、信号の波源からの本発明の進行波スペクトル成分から変調又は符号化信号を回復すること、並びに、好適な周波数と搬送波周波数との間の差異に等しい得られた本発明の進行波スペクトル成分に周波数遅延を生成するように、適切なレートでそのスペクトル分解又は選択における1つ又は複数の基準量を変動することによって、信号の波源において変調又は符号化に用いられる搬送波周波数と異なる好適な周波数で受信機において得られたその変調又は符号化信号を担持すること、の確実性から、多重化特許に対して生じる。【0108】第1の追加の利点は、受信機が、信号の波源において任意の搬送波周波数で変調又は符号化された信号を、受信機のアパーチャ又はアンテナフロントエンドによって許容された好適な周波数で回復し、受信機の設計を潜在的に簡素化し、また、受信機によって受信、復調、又は復号し得る搬送波周波数の範囲を拡張できることにある。【0109】第2のそのような利点は、受信機が、波の経路上で妨害されるであろう搬送波周波数で信号の波源において変調又は符号化された信号を、変調又は符号化された信号を有する信号の波源から本発明の進行波スペクトル成分を得るための好適な周波数ほどは妨害されない周波数を選択し、それによりその障害物を克服又は迂回することによって、回復できるようにすることにある。克服又は迂回される障害物には、波の経路中の媒体又はチャネルによる波長特定の減衰、及び信号の波源における変調又は符号化の搬送波周波数でのジャミング又は干渉が含まれる。【0110】第3のそのような利点は、好適な周波数周辺の狭帯域に送信を限定する導波管又はチャネルの一端に配置された受信機が、同時に又は時分割で、導波管又はチャネルの他方の端に接続された波源からの異なる搬送波周波数で変調又は符号化され、また、従って、受信機からの導波管又はチャネルによって定義されたほぼ同じ効果的な距離において、好適な周波数の各信号の波源からの本発明の進行波スペクトル成分を得ることによって、1つ又は複数の信号を回復することを可能にすることにある。【0111】そして、各波源に対応する本発明の進行波スペクトル成分は、その波源における変調又は符号化に用いられる搬送波周波数から好適な周波数の差異に等しい得られた本発明の進行波スペクトル成分に周波数遅延を生ずるように、1つ又は複数の基準量の独特な特定のレートの変動を用いて、スペクトル分解又は選択によって得られる。このようにして得られた各信号の本発明の進行波スペクトル成分は、独特な誘起された周波数変動比率を担持し、本発明の進行波スペクトル成分に対してそれらを直交させ、受信機によって回復される他の各信号も生成する。1つ又は複数の信号の全ての本発明の進行波スペクトル成分は、従って、導波管又はチャネルにおいて、好適な周波数周辺の同じ狭帯域を介して独立に且つ同時に受信され、従って、導波管又はチャネルの容量は、通信理論で定義されたように、効果的に逓倍される。【0112】周波数生成特許に対する利点は、受信機において周波数又は波長遅延と共に得られた本発明の進行波スペクトル成分は、得られた遅延周波数又は波長でそれらの波源から始まったという確実性から生じ、その点において、得られた本発明の進行波スペクトル成分は、これによって、波源から受信機への途中で、得られた周波数又は波長で物体又は媒体との相互作用の効果を持ち、そして、それらの効果を測定するために、又は得られた周波数又は波長で途中の物体又は媒体の特徴又は特性を画像化するために用い得る。その利点は、受信機において得られた周波数又は波長において波源からずっと続く測定値及び画像の整合性にある。」
(2)発明の詳細な説明の記載に基づく認定事項
上記記載事項から、次のア~オに示した内容を読み取ることができる。
ア 上記【0001】及び【0002】から、「受信機に到着する類似の物理的性質の全ての波の全体」について、「受信機」において「スペクトル分解又は選択」を行い、「所望の波源から」の「波」を「選択又は区別」して、「電磁、音響又は他の波の1つ又は複数の波源」までの「距離」を「決定」することが読み取れる。
イ 上記【0084】~【0086】から、「受信機」において行われる「スペクトル分解又は選択」は、「時間についての積分を伴い」、「スペクトル成分を独特な周波数を有する時間の周期関数として提供する」ものであり、「スペクトル成分としての進行波解」は、「時間」と「それらの波源からの距離」の関数として、「周波数値を完全に波源に関係付ける」ものであることが読み取れる。
ウ 上記【0086】及び【0087】から、「進行波解」は、「受信機でのスペクトル分解又は選択において」、「1つ又は複数の基準量」である「積分におけるカーネル関数の周波数」を「時間と共に変動することによって、受信機において構成される」ものであり、「カーネル関数の周波数の変動によるスペクトル分解又は選択」は、「カーネル関数における周波数の定常性によって定義される」「フーリエ変換」により得られる「フーリエスペクトル又は正弦波進行波解に帰着し得ない」ものであることが読み取れる。
エ 上記【0089】及び【0096】から、「遠隔の波源から生じる進行波スペクトル成分」は、「波源から受信機への進行時」に「単調変動」が「停止」することによる「単調変動」「特性の遅延」が「進行した距離又は時間に比例する」ものとして「受信機において特徴付けられ」、「進行波スペクトル成分から受信機において再構成された時間領域波形」は、「逆変換を介して」「進行波スペクトル成分と数学的に等価」であることが読み取れる。
オ 上記【0099】及び【0100】から、「周波数の単調変動を有する」「進行波スペクトル成分から再構成された時間領域波形の時間スケールの遅延は、第1次の距離に比例する時間の遅れを表す」ものであり、「遅延特性」は、「波源の過去のスペクトル状態を表す」ものであり、「そのような遅延」は、「波源から受信機までの進行時間」及び「進んだ距離」に対して「比例」するから、「波源」から「受信機」までの「距離」という「物理的な情報」を表すものであることが読み取れる。
カ 上記ア~オにおいて読み取った内容を総合すると、本願の発明の詳細な説明には、「スペクトル成分」に関して、以下の事項(以下「スペクトル成分関連事項」という。)が記載されていると認められる。
<スペクトル成分関連事項>
「受信機に到着する類似の物理的性質の全ての波の全体について、受信機においてスペクトル分解又は選択を行い、所望の波源からの波を選択又は区別して、電磁、音響又は他の波の1つ又は複数の波源までの距離を決定する際に、(上記ア)スペクトル分解又は選択は、時間についての積分を伴って、スペクトル成分を独特な周波数を有する時間の周期関数として提供し、スペクトル成分としての進行波解は、時間とそれらの波源からの距離の関数として、周波数値を波源に関係付けるものであり、(上記イ)進行波解は、受信機でのスペクトル分解又は選択において、積分におけるカーネル関数の周波数を時間と共に変動することによって、受信機において構成されるものであり、カーネル関数の周波数の変動によるスペクトル分解又は選択は、カーネル関数における周波数の定常性によって定義されるフーリエ変換により得られるフーリエスペクトル又は正弦波進行波解に帰着し得ないものであり、(上記ウ)遠隔の波源から生じる進行波スペクトル成分は、波源から受信機への進行時に単調変動が停止することによる単調変動特性の遅延が、進行した距離又は時間に比例するものとして受信機において特徴付けられ、進行波スペクトル成分から受信機において再構成された時間領域波形は、逆変換により進行波スペクトル成分と数学的に等価になり、(上記エ)周波数の単調変動を有する進行波スペクトル成分から再構成された時間領域波形の時間遅延は、距離に比例する時間の遅れを表すものであり、遅延特性は、波源の過去のスペクトル状態を表し、波源から受信機までの距離という物理的な情報を表すものであること。(上記オ)」
(3)「スペクトル成分」の具体的内容
ア 上記スペクトル成分関連事項によれば、スペクトル成分とは、受信機に到着する類似の物理的性質の全ての波の全体から、所望の波源からの波を選択又は区別するために、受信機で行われるスペクトル分解又は選択において提供される、時間についての積分を伴った独特な周波数を有する時間の周期関数で表現され、進行波スペクトル成分から受信機において再構成された時間領域波形は、逆変換により進行波スペクトル成分と数学的に等価になるものである。
イ そして、上記スペクトル成分関連事項によれば、周波数の単調変動を有する進行波スペクトル成分から再構成された時間領域波形の時間遅延は、距離に比例する時間の遅れを表し、この遅延特性は、波源から受信機までの距離という物理的な情報を表すから、請求項1の「スペクトル成分」は、「波源から受信機までの距離」に対応づけることができる。
ウ そこで、このような「スペクトル成分」が具体的にどのようなものであるかを見るために、さらに、本願の発明の詳細な説明の段落【0137】~【0176】の記載に注目して検討する。
上記段落には、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。
「【0137】C.本発明の数学的な説明指数関数チャープの瞬時角周波数は、ω0=ω(0)とすると、ω(t)=ω0eβtによって与えられる。その瞬時位相は、[数36]であり、上式において、定数項及び高次の項は、周波数の非定常性から生じる。位相は、極限β→0では、ロピタルの定理により、正弦波形態ω0t+定数になる。【0138】続きを表示(全86行)【数36】【0139】C-1.チャープダランベール解指数関数チャープ進行波の位相は、進行遅延をr/cとして、ψ(r,t)=-ωβ-1exp[β(t±r/c)]である。Δt≡(t-r/c)を用いると、第1及び第2次導関数は、[数37]式(5)の通りである。そして、同様に、[数38]式(6)の通りであり、全く同様に[数39]を意味し、その結果、一次元の波動方程式[数40]は、[数41]と設定することによって、満足される。【0140】【数37】(省略)【0141】【数38】(省略)【0142】【数39】【0143】【数40】【0144】【数41】【0145】補完チャープ波関数[数42]及び三次元空間へのこの結果の拡張は、単純明快である。この結果は、本発明のチャープ波関数[数43]が、現在の物理学の正弦波の波動関数として波を表すための同様に有効なダランベール解であることを立証する。これらの指数関数チャープ波形は、指数関数振幅の減衰と簡単に組み合わせて、ラプラス及びz変換のためのチャープ化固有関数を得ることができる。それらの波動解としての妥当性は、いずれにせよ驚くようなものではない。その理由は、任意の「遅延された」(進行が遅れた)時間の関数ψ(t-r/c)が与えられた場合、関係[数44]式(7)が、τ=t-r/cの代入時、成立し、ψが波動方程式を満足することが分かる。解に対する唯一の条件は、第1及び第2次導関数、及び進行遅延r/cの存在である。【0146】【数42】【0147】【数43】【0148】【数44】(省略)【0149】ベッセル関数及びラゲールの多項式等の任意の系統の直交関数へ分解すると、遅延を有する類似した連続帯の他のスペクトルが生じるが、これらの他の関数は、波長の変動が相対的にほとんどないことを示し、また、原点から離れて、正弦曲線と区別できなくなり、その結果、それらの遅延も平滑になり、距離の目安として使用不能になる。線形又は指数関数チャープのみが、無限の線形シフトを確保し、従って、好適である。【0150】C-2.進行波チャープスペクトルのヒルベルト空間受信機において初期角周波数ω0及び比率βの基準チャープ信号であり、距離rにある波源から到着し、未知の初期角周波数ω0’及び変化率β’の進行波チャープスペクトル成分の積の積分は、数サイクルより長い時間間隔Tにおいて、また、同じ表記法Δt≡(t-r/c)により、積分にx=0が含まれる場合且つその場合にのみ、∫δ(x)dx=1と定義されたディラックのデルタ関数を用いて、[数45]式(8)として評価するが、その理由は、被積分関数の位相が、ω0及びβの双方において基準に整合し、また、そうでなければ、振動する成分だけに対して一定であることによる。そして、整合する成分は、間隔T≒(ω0Τ)/2π≡ν0Tにおけるサイクルの数に比例して寄与し、これに対して、他の各成分は、せいぜい1サイクル寄与する。数式(8)は、極限β=β’→0において、フーリエ直交定理になるが、この極限値において、整合周波数の成分は、また、ν0Tに比例して積分に寄与するが、他の成分は、いずれもせいぜい1サイクルの間寄与する。【0151】【数45】【0152】対照的に、フーリエ変換理論は、積分時間極限値T→±∞における収束問題を伴うが、これは、非整合チャープとは異なり、各非整合正弦曲線は、決められた数の周期毎の後、周期的に無限に寄与する。従って、収束の保証は、チャープの場合、改善されている。【0153】比率導関数β(1)、β(2)、・・・は、追加の因子δ(β(1)-β’(1))、δ(β(2)-β’(2))等を付与し、従って、進行波スペクトルは、瞬時周波数及びそれらの変化率の二次元の積空間Ω×Β*≡{ω}×{β,β(1),・・・}を網羅する。フーリエ、ラプラス及びz並びにウェーブレットを含む従来技術による変換には、ゼロの部分空間Ω×{0,0,・・・}が含まれ、そこでは、距離情報を表すシフト率z=βr/cが零になる。距離情報は、逆に、本発明について述べる非ゼロの部分空間Ω×[Β*-{0,0,・・・}]に限定される。【0154】また、数式(8)は、フーリエ条件における時間不変性前提[数46]式(9)を緩和することによって、結果的に当然生じるが、これは、数式(8)に対して責任を負う振動及び収束の特性は、周波数の定常性又は指数関数的な変動に依存しないためである。従って、更に一般的に、数式(9)は、基準角周波数ωがゆっくりと変化する場合、成分角周波数ω’が時間の経過に伴って同じように変化するだけである場合、積の積分は、ゼロでないことを意味するが、これは、そうでない場合、被積分関数における位相係数ei(ω-ω’)tが振動するという理由による。この結果は、数式(8)について説明したものと同じ理由により、T→±∞について及び多数のサイクルに跨る有限の積分時間Tについて当てはまり、また、後述するように、一般的な分光測定法び被変調信号の受信の双方において、本発明のスペクトル成分を実現するための設計の一般的なベースである。【0155】【数46】【0156】フーリエ理論にあるように、直交性それ自体が、関係[数47]式(10)を介して、スペクトル分解を可能にする。上式は、単一のチャープ波成分の係数Fβ(ω0)が、チャープ波動関数[数48]の線形の組合せから抽出されることを示す。角括弧は、Fβ’から再構成された時間領域関数f(t-r/c)を生成する逆変換の境界を定める。【0157】【数47】【0158】【数48】【0159】C-3.指数関数チャープスペクトルに対するパーセヴァル-プランシュレル定理一般化されたパーセヴァル-プランシュレル定理が、[数49]式(11)のように、遅延Δt≡r/cの場合、複素数値化時間領域信号f及びそのスペクトル係数Fについて、再度L2ノルムに続く。上式は、初期の角周波数に対して、冗長な接尾辞0を省略する。上記結果は、β=β’→0におけるフーリエ変換に対するパーセヴァル定理になり、波源における同じ振動について述べる際、図2aについて言及したように、波源におけるチャープ及びフーリエ係数の相等性、即ち、ロピタルの定理によるチャープ位相のフーリエ値への収束を用いる[数50]式(12)を意味する。【0160】【数49】【0161】【数50】【0162】数式(12)は、波源において変調又は符号化された全ての情報は保持されること、即ち、周波数シフトによって表される時間の遅れは、送信速度を変えるが、内容は変えないことを意味する。【0163】数式(11)は、全波源エネルギ∫T|f(t)|2dtが、係数Fβ(ωμ)に含まれる変調された情報と共に、全ての遅延Δtで、従って、遅延及び時間の遅れの連続帯において、同様に利用可能であることを意味するが、これは、Δtが係数に存在せず、ノルムから消えるためである。【0164】C-4.本発明の周波数遅延の分析の原点実際の原子の放射線並びに任意の種類の変調の通信信号には、トーンの線形の組合せ[数51]が必ず含まれる。波源に対して静止し、同じ重力ポテンシャルにあり、波源から距離rの受信機において、瞬時に到着する組み合わせ信号は、[数52]である。そのチャープ変換は、従って、[数53]を生成する。上式において、成分角周波数ω’jは、進行によって変化しない。{Fβ}は、普通のチャープスペクトルを示し、これは、ωについて平坦であるが、その理由は、各トーンω’jが、あるサイクルで位相が各チャープ成分[数54]と密接に整合するためである。逆変換は、カーネル[数55]を用いて、サンプリング雑音、有限の積分時間及び計算精度による歪だけがある状態で、トーンの組合せを再生する。位相遅延[数56]は、中継時、波源における成分位相の進みを示し、角周波数ω’jによって与えられたそれらの進む速度は、一定である。波源における同様な分解は、[数57]式(13)を生成する。【0165】【数51】【0166】【数52】【0167】【数53】【0168】【数54】【0169】【数55】【0170】【数56】【0171】【数57】【0172】周波数は、積分時間T中、継続して展開するが、T中の局所的な展開は、T≪r/βcである場合、即ち、積分が短い場合、又はr≫βcΤである場合、無視し得るが、その結果、進行が積分時間を超過する。数式(13)は、進行遅延r/cが、付加位相φ’jだけに影響を及ぼすようになっている場合の全ての現在の考え方に基づく受信機の解析を表し、[数58]を生成する。【0173】【数58】【0174】上式は、時間の遅れの無い信号から受信機において構築されたチャープについて述べている。しかしながら、波源におけるそれらの前進速度が、進行時間r/c≫Tにおいて一定ではないω’jによって定義されるため、位相遅延[数56]は、正確ではあり得ない。チャープ位相遅延式は、進行全体において波源周波数変動を表さなければならないが、周波数遅延を意味することなく、数式(13)のデルタ関数において、進行遅延r/cを時間tに加算する方法は存在しない。【0175】ダランベールの解として、チャープ成分は、更に、波源からずっとそれらの周波数及び変化率を保持しなければならない。唯一の可能な進行遅延の包含は、[数59]式(14)を生成する。上式は、数式(8)と同じであるが、複数の成分を伴うためのものであり、同じ係数Fβ’jが、遅延係数e-βr/c≒1-βr/cによってオフセットされた周波数で出現することを示す。偏光は、通常、受信機において、2つの横切る座標面について別個の係数Fβ’jによって表される。そして、偏光面の有効な単調変動は、対応する遅延と共に、1つの横切る座標面から他方への対応する振幅の伝達として現れる。【0176】【数59】」
エ 上記【0137】~【0149】の記載から、角周波数ωを指数関数的に時間変化させたときの瞬時角周波数(指数関数チャープ)は、ω0=ω(0)とすると、ω(t)=ω0eβtで表され、
指数関数チャープの進行波として、一次元波動方程式(ダランベール方程式)である【数40】
を満たす解(チャープダランベール解)は、【数43】
で与えられることが読み取れる。
オ 上記【0150】~【0155】の記載から、上記【数43】で与えられるチャープダランベール解
は、【数45】
の関係を満たし、これは、極限β=β’→0においてフーリエ直交定理に相当することが読み取れる。
カ 上記【0156】~【0158】の記載から、【数48】
で表されるチャープ波動関数の単一のチャープ波成分の係数Fβ(ω0)が、
【数47】
を介して抽出されることから、上記【数47】の左辺の角括弧[ ]で括られた中にある積分の式
は、Fβ’から再構成された時間領域関数f(t-r/c)を生成する逆変換を表すことが読み取れる。すなわち、次の式が成り立つ。
キ 上記【0159】~【0163】の記載から、【数49】
に示されているように、指数関数チャープスペクトルに対して、一般化されたパーセヴァル-プランシュレル定理が成り立ち、これは、β=β’→0の極限では、フーリエ変換におけるパーセヴァル定理になることが読み取れる。
ク 上記【0164】~【0176】の記載から、偏光(偏波)などの複数の成分を伴う場合には、
【数45】
の関係(正規直交性)は、
【数59】
に示すような関係になることが読み取れる。
ケ 上記オ~クにおいて読み取った内容を総合すると、上記【数43】
で与えられるチャープダランベール解は正規直交系をなし、このチャープダランベール解により張られる関数空間は、ヒルベルト空間であることが読み取れる。そして、β=β’→0の極限では、フーリエ変換が示す性質と同等になることが読み取れる。
すなわち、上記【0150】~【0163】の記載(「C-2.進行波チャープスペクトルのヒルベルト空間」、「C-3.指数関数チャープスペクトルに対するパーセヴァル-プランシュレル定理」)は、【数43】
で与えられるチャープダランベール解を正規直交系として用いたヒルベルト空間では、フーリエ変換の議論と同じような議論が可能であることを確認した記述であると認められる。
コ 一般に時間の関数f(t)を周波数の関数F(ω)に変換するフーリエ変換の公式は、次のとおりである。
また、周波数の関数F(ω)を時間の関数f(t)に変換するフーリエ逆変換の公式は次のとおりである。
この2つの関係式から、次の式が導出できる。
この式をさらに式変形すると、次のようになる。
サ ここで、上記【数47】
について、上記コの最後に示したフーリエ変換の関係式と対比させて検討すれば、その左辺の角括弧[ ]で括られた中にある積分の式
は、上記カにおいて検討したとおり、時間領域関数
となり、これを用いると、【数47】は、次のように表現できる。
そして、このFβ(ω0)は周波数の関数となり、上記コにおいて示したフーリエ変換とフーリエ逆変換の関係を類推して考えれば、時間領域関数f(t-r/c)と周波数領域関数Fβ(ω0)の関係は、変換・逆変換の関係にあるといえる。
ケ そうすると、上記アにおいて述べたとおり、請求項1の「スペクトル成分」については、「進行波スペクトル成分から受信機において再構成された時間領域波形は、逆変換により進行波スペクトル成分と数学的に等価になるものである」ところ、この時間領域波形は、
であり、逆変換によりこれと数学的に等価になる進行波スペクトル成分は、
次式(以下「式A」という。)
であるから、式Aで表現されるものが、請求項1の「スペクトル成分」に他ならない。
3 請求項1に係る発明の明確性について
(1)請求項1の属するカテゴリー
上記2の(3)において検討したとおり、請求項1の「スペクトル成分」は、具体的には、式A、すなわち、
で表されるものであるから、請求項1は、要するに、波源から受信機までの距離に対応づけることができる式Aで表されるものを主題としていると認められる。
しかしながら、このようなものは、有体物ではなく、譲渡性を有するものとは認められない。また、プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)でもなく、その他電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものでもない(特許法2条3項1号及び4項参照)。
したがって、請求項1が対象とする「スペクトル成分」は、「物(プログラム等を含む)の発明」であるとはいえない。また、「方法の発明」でも、「物を生産する方法の発明」でもない。
そして、上記「第3 原査定の概要」において示したとおり、「特許・実用新案審査基準」の第II部第2章第3節「明確性要件」2.2では、「明確性要件違反の類型」(3)として、「請求項に係る発明の属するカテゴリーが不明確であるため、又はいずれのカテゴリーともいえないため、発明が不明確となる場合」が示されているから、この基準に照らして検討すれば、請求項1の属するカテゴリーは、「物」と「方法」のいずれのカテゴリーともいえないため、請求項1は、発明の明確性の要件を満たしてないことになる。
(2)請求人の主張について
審判請求書において、請求人は次のとおり主張している。
「III:本願発明が特許されるべき理由1. 拒絶査定の認定は、基本的には、『請求項1-14には、「スペクトル成分」または「時間領域波形」について記載されているところ、「スペクトル成分」も「時間領域波形」も、物及び方法のいずれのカテゴリーとも認定できないため、発明が不明確である。』という点にある。しかしながら本願発明は、その請求項1に記載するように、「電磁、音響又は他の波のスペクトル成分であり、前記波の1つ又は複数の波源から前記波の受信機へ有限の速さで進むスペクトル成分であって、波源は、受信機から様々な距離に配置され、また、スペクトル成分は、受信機において、第1組の変動レートで、位相又は振幅以外の1つ又は複数の時間依存特性において、時間に伴い連続単調変動を呈するスペクトル成分。」である。当該スペクトル成分は、位相又は振幅以外の1つ又は複数の特性における時間に伴う連続単調変動があるものとしての「スペクトル成分」であり、このものは、原審において特許許可し得るものとして認定された請求項15-20に記載の方法を実行することで実現されるものである。続きを表示(全12行)すなわち、受信機から様々な距離に配置された1つ又は複数の波源から受信機に有限の速さで進む電磁、音響又は他の波のスペクトル成分であって、位相や振幅以外の1つ又は複数の特性において、受信機における時間に伴う単調な変動を有するスペクトル成分として進行波解を提供するものなのである。2. したがって、「スペクトル成分」は、一つのスペクトルとして得られるものであって、スペクトルシステムとしての「物」として把握し得るものである。事実、「特許・実用新案 審査基準」の第II部第2章第3節「明確性要件」2.2には、「明確性要件違反の類型」(3)として、「請求項に係る発明の属するカテゴリーが不明確であるため、又はいずれのカテゴリーともいえないため、発明が不明確となる場合」において、「システム」は「物」のカテゴリーを意味する用語として扱う旨を明記している。3. また、「スペクトル成分」なる用語は、本願発明が属する技術分野において慣用的に用いられている用語であり、多くの特許出願明細書の特許請求範囲の記載において、問題なく記載されている技術用語であり、かかる特許出願明細書においては、「スペクトル成分」を「物」のカテゴリーに属するものとして把握し、記載しているのである。4. また、「時間領域波形」については、本願発明の「物」としてのスペクトル成分から再編成されるものであり、したがって、かかる「時間領域波形」も一つのシステムとしてのスペクトル成分であるといえる。5.そうであれば、本願の請求項1-14に記載の発明は「物」のカテゴリーに属する発明として明確であり、拒絶査定に認定は誤りであると思料する。」(下線は当審が付与した。)
しかしながら、請求人のいう「スペクトルシステム」とは何を指すのか不明であって、そもそも本願の請求項1には、「システム」という表現は存在しないのであるから、「物の発明」のカテゴリーに属するとの主張を採用することはできない。
第5 むすび
以上検討したとおり、請求項1は発明が明確であるとはいえないから、その記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない請求項1を含む本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-003086