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特許拒絶査定不服審判

2024-013652

通信機器

審判番号
2024-013652
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-018512
請求日
2024年08月23日
審決日
2026年06月18日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ソフトバンク株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審判長/審判官
  • 審判長 後藤 亮治
  • 審判官 道祖土 新吾
  • 審判官 関口 英樹
分類
P18 .537-WZ (G01S)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2023- 18512「通信機器」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 8月22日出願公開、特開2024-113489〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、令和5年2月9日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和6年 3月 8日付け:拒絶理由通知書 同年 4月22日 :意見書、手続補正書の提出 同年 5月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 6月11日 :原査定の謄本の送達) 同年 8月23日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和8年 2月 2日付け:拒絶理由通知書 同年 3月23日 :意見書、手続補正書の提出 2 本願発明について 本願発明の認定 本願の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」のようにいう。)は、令和8年3月23日に提出された手続補正書により補正された請求項1~4に記載された次に示す事項により特定されるものである。 「【請求項1】 無線媒体を用いた第一の通信方式により端末装置と通信する通信機器であって、 測位衛星が発した電波を用いる第二の通信方式で周期的に測位を繰り返し、当該通信機器の位置を示す位置情報を周期的に繰り返し生成する測位部と、 前記無線媒体を発する発信部と、 前記測位衛星が発した電波に基づいて前記位置情報を補正するための補正情報を生成する他の装置から、前記補正情報を取得する取得部と、 前記位置情報の補正が必要である場合に、前記位置情報および前記補正情報に基づいて、当該通信機器の補正後の位置を示す補正位置情報を生成する補正部と、 を備え、 前記発信部は、前記補正部が前記補正位置情報を生成したタイミング、および前記測位部が前記位置情報を生成したけれども当該位置情報の補正が必要でないとされたタイミングで、前記無線媒体を発する、 通信機器。 【請求項2】 無線媒体を用いた第一の通信方式により端末装置と通信する通信機器であって、 測位衛星が発した電波を用いる第二の通信方式で周期的に測位を繰り返し、当該通信機器の位置を示す位置情報を周期的に繰り返し生成する測位部と、 前記無線媒体を発する発信部と、 前記測位衛星が発した電波に基づいて前記位置情報を補正するための補正情報を生成する他の装置から、前記補正情報を取得する取得部と、 前記位置情報の補正が必要である場合に、前記位置情報および前記補正情報に基づいて、当該通信機器の補正後の位置を示す補正位置情報を生成する補正部と、 第三の通信方式で測位し、当該通信機器の位置を示す位置情報を生成する第二測位部と、 を備え、 前記発信部は、前記補正部が前記補正位置情報を生成したタイミング、および前記測位部が前記位置情報を生成したけれども、当該位置情報の補正が必要でないとされ、かつ前記第二測位部が位置情報を生成したタイミングで、前記無線媒体を発する、 通信機器。 【請求項3】 前記第一の通信方式は、Bluetooth(登録商標)またはWi-Fi(登録商標)である、 請求項1または2に記載の通信機器。 【請求項4】 請求項1または2に記載の通信機器を備えるシステムであって、 前記無線媒体を受信した場合に、当該無線媒体に関する関連情報を生成する関連情報生成部と、 前記関連情報に基づいて、前記端末装置の位置を示す端末位置情報を生成する端末位置情報生成部と、 をさらに備え、 前記端末位置情報生成部は、 前記補正部が前記補正位置情報を生成したタイミングでは前記補正位置情報および前記関連情報に基づいて前記端末位置情報を生成し、 前記測位部が前記位置情報を生成したけれども前記補正部が当該位置情報に基づく前記補正位置情報を生成していないタイミングでは前記位置情報及び前記関連情報に基づいて端末位置情報を生成する、 システム。」 3 当審において通知した拒絶の理由の概要 当審において令和8年2月2日付けで通知した拒絶の理由の、本願発明1~3に対する理由1(明確性要件違反)は、概略次のものを含む。 本願は、特許請求の範囲の記載が下記(1)~(3)の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1) 請求項1、2について 請求項1及び請求項2の記載において、「無線媒体を発する」とあるが、何に対してどのような内容の情報を発することを意味するのかが明りょうでない。 (2) 請求項1について 請求項1の記載において、「前記発信部は、前記補正部が一の前記補正位置情報を生成してから次の前記補正位置情報を生成するまでの間に前記測位部が前記位置情報を生成することとなった場合」とあるが、そもそも「補正位置情報」が「前記位置情報および前記補正情報に基づいて」生成されるものであることを考えれば、「位置情報」が「補正位置情報を生成するまでの間」に生成されることは当然であり、当該記載が通信機器の構成をどのように特定するものであるのかが不明である。 (3) 請求項2について 請求項2において、「前記発信部は、前記測位部が前記位置情報を生成した場合であって、前記補正部が一の前記補正位置情報を生成してから次の前記補正位置情報を生成するまでの間に前記第二測位部が前記位置情報を生成することとなった場合、当該位置情報の生成を契機として前記無線媒体を発する、」とあるが、「第二測位部」は「第三の通信方式で測位[する]」ものであるから、「第二の通信方式で測位[する]」「測位部」が生成する「位置情報」に基づいて「補正位置情報を生成する補正部」とは独立して動作するものと認められるところ、その独立して動作する二つが情報を生成するタイミングを「前記補正部が一の前記補正位置情報を生成してから次の前記補正位置情報を生成するまでの間に前記第二測位部が前記位置情報を生成することとなった場合」と限定することに、どのような技術的意味があるのかが不明である。 4 理由1についての当合議体の判断 (1) 理由1の(1)についての検討 ア 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきものである。 イ そこで、令和8年3月23日に提出された手続補正書により補正された、請求項1及び請求項2の記載における「無線媒体を発する」の記載について検討するに、下記(ア)~(オ)のとおり、当該「無線媒体を発する」ことが、どのような内容の情報を発することを意味するのかが未だ明りょうでない。 (ア) 前記補正による補正後の請求項1及び請求項2は下記のとおりであって(下線は補正箇所を示す)、前記補正により、請求項1及び請求項2の「無線媒体を用いた第一の通信方式による通信が可能な端末装置と通信する通信機器であって、」の記載は「無線媒体を用いた第一の通信方式により端末装置と通信する通信機器であって、」と補正された。 「 【請求項1】 無線媒体を用いた第一の通信方式により端末装置と通信する通信機器であって、 測位衛星が発した電波を用いる第二の通信方式で周期的に測位を繰り返し、当該通信機器の位置を示す位置情報を周期的に繰り返し生成する測位部と、 前記無線媒体を発する発信部と、 前記測位衛星が発した電波に基づいて前記位置情報を補正するための補正情報を生成する他の装置から、前記補正情報を取得する取得部と、 前記位置情報の補正が必要である場合に、前記位置情報および前記補正情報に基づいて、当該通信機器の補正後の位置を示す補正位置情報を生成する補正部と、 を備え、 前記発信部は、前記補正部が前記補正位置情報を生成したタイミング、および前記測位部が前記位置情報を生成したけれども当該位置情報の補正が必要でないとされたタイミングで、前記無線媒体を発する、 通信機器。 【請求項2】 無線媒体を用いた第一の通信方式により端末装置と通信する通信機器であって、 測位衛星が発した電波を用いる第二の通信方式で周期的に測位を繰り返し、当該通信機器の位置を示す位置情報を周期的に繰り返し生成する測位部と、 前記無線媒体を発する発信部と、 前記測位衛星が発した電波に基づいて前記位置情報を補正するための補正情報を生成する他の装置から、前記補正情報を取得する取得部と、 前記位置情報の補正が必要である場合に、前記位置情報および前記補正情報に基づいて、当該通信機器の補正後の位置を示す補正位置情報を生成する補正部と、 第三の通信方式で測位し、当該通信機器の位置を示す位置情報を生成する第二測位部と、 を備え、 前記発信部は、前記補正部が前記補正位置情報を生成したタイミング、および前記測位部が前記位置情報を生成したけれども、当該位置情報の補正が必要でないとされ、かつ前記第二測位部が位置情報を生成したタイミングで、前記無線媒体を発する、 通信機器。」 (イ) しかし、請求項1及び2においては、「無線媒体」に関する特定事項は、「発信部」が発信するものであることと、「発信部」が発するタイミングが特定されているものの、それ以上の特定はなく、依然として、「無線媒体」の情報の内容をうかがい知ることはできない。 (ウ) 無線媒体の内容に関連して、本願明細書の記載を参酌するに、以下の記載がある。(下線は、当合議体において付した。) 「 【0015】 〔発信部〕 発信部14は、機器側制御部13の制御に従って無線媒体を発する。すなわち、発信部14は、第一の通信方式により端末装置5と通信する。本実施形態に係る発信部14は、Bluetooth(登録商標)またはWi-Fi(登録商標)により端末装置5と通信する。すなわち、本実施形態に係る発信部14が発する無線媒体は、電波である。端末装置、特にスマートフォンやタブレット端末の多くは、Bluetooth(登録商標)通信やWi-Fi(登録商標)通信を行う機能を有している。このため、機器側通信部11を上記のように構成することで、既存の端末装置であっても特別な機能を搭載させることなく、測位の精度を向上させることができる。なお、第一の通信方式は、Bluetooth(登録商標)通信およびWi-Fi(登録商標)通信以外の通信方式、例えばUWB(Ultra Wide Band)、RFID(Radio Frequency Identification)等であってもよい。また、通信機器1と端末装置5との「通信」は、信号のやり取りを伴うものに限られない。例えば、発信部14が発した無線媒体を端末装置5がスキャン(単に届いたことだけを検知)するような動作も通信に含まれる。また、無線媒体は、電波以外の媒体、例えば超音波、可視光等であってもよい。また、発信部14は、機器側通信部11が兼ねていてもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0023】 (発信制御部) 発信制御部137は、機器側測位部131が位置情報を生成した場合に、発信部14が無線媒体を発するよう、当該発信部14を制御する。本実施形態に係る発信制御部137は、機器側測位部131が位置情報を生成した場合であって、補正部135が補正位置情報を生成した場合に、発信部14が無線媒体を発するよう、当該発信部14を制御する。これにより、後述する第二サーバ4は、通信機器1の正確な位置が得られた場合に端末装置5の位置を算出するようになる。その結果、測位システム100のユーザは、端末装置5のより正確な位置を得ることができるようになる。 【0024】 本実施形態に係る発信制御部137は、補正部135が補正位置情報を生成した場合のみ、発信部14が無線媒体を発するよう、当該発信部14を制御する。これにより、補正位置情報が生成されていないときに通信機器1が無線媒体を発してしまい、端末装置5による測位の精度が低下してしまうのを防ぐことができるようになる。 【0025】 なお、発信制御部137は、情報未生成時に機器側測位部131が位置情報を生成することとなった場合、当該位置情報の生成を契機として発信部14が無線媒体を発するよう、当該発信部14を制御するものであってもよい。情報未生成時は、補正部135が一の補正位置情報を生成してから次の補正位置情報を生成するまでの間の期間である。測位衛星Sが発した電波を用いた測位は、基準となる測位衛星Sの相対的な位置が変化しないため、この測位によって得られる位置情報は一定の信頼性を有する。このため、発信制御部137をこのように構成すれば、第二サーバ4は、補正位置情報が得られない期間ができた場合であっても、位置情報に基づいて、端末装置5の概ね正確な位置を算出することができる。 【0026】 また、発信制御部137は、情報未生成時に第二測位部132が位置情報を生成することとなった場合、当該位置情報の生成を契機として発信部14が無線媒体を発するよう、当該発信部14を制御するものであってもよい。基地局からの第二の電波を用いた測位は、基準となる基地局が動かないため、この測位によって得られる位置情報は一定の信頼性を有する。このため、発信制御部137をこのように構成すれば、第二サーバ4は、補正位置情報が得られない期間ができた場合であっても、位置情報に基づいて、端末装置5の概ね正確な位置を算出することができる。 【0027】 {通信機器の作用効果} WLANアクセスポイントは、移動することがある。このため、従来技術では、測位を行っても、WLANアクセスポイントのずれの大きさによって測位結果が所定範囲から外れ、測位結果が得られない、といった問題が生じる可能性があった。これに対し、以上説明してきた通信機器1によれば、自身が正確な位置にあることが確認できた(補正位置情報を生成した、補正の必要が無いことが確認できた)場合に無線媒体を発する。このため、第二サーバ4は、正確でない可能性のある古い位置情報に基づいて誤った端末装置5の位置を算出してしまうことなく、最新の位置情報を基準として、当該端末装置5の位置を正確に算出することができるようになる。その結果、端末装置5、または端末装置5を搭載する機器(例えば自動運転車両、ドローン、農業機械等)は、より正確かつ高度な動作を行うことができるようになる。」 (エ) 前記(ウ)の記載から、「無線媒体」が、通信機器1の発信部14が発するものであること、電波や、電波以外の媒体、例えば超音波、可視光等であってもよいこと、発する契機がいかなるものか、及び、端末装置5の位置を正確に算出することができるようになるものであることは把握できるものの、「無線媒体」の情報の内容がいかなるものであって、「無線媒体」の情報のいかなる処理に応じて、端末装置5の位置を正確に算出することができるようになるかは依然として不明である。 (オ) そして、請求人は、無線媒体の内容に関する技術常識の立証も何ら行っていない。 ウ この点について、令和8年3月23日に提出された意見書(以下「意見書」という。)の「2.拒絶理由に対する意見」「2-1.理由1(特許法第36条第6項第2号違反)に対する意見」「(1)請求項1について」において、本件審判請求人は概略次のように主張している。 請求項1に係る通信機器が行う「通信」には、明細書の段落0015に記載されているように、「無線媒体を端末装置5がスキャン(単に届いたことだけを検知)するような動作も通信に含まれ」るため、無線媒体は、必ずしも情報を含んでいる必要はない。 なお、前記主張において指摘されている、明細書の段落【0015】の関係すると思われる記載を再掲する。 「【0015】 〔発信部〕 発信部14は、機器側制御部13の制御に従って無線媒体を発する。すなわち、発信部14は、第一の通信方式により端末装置5と通信する。 ・・・<中略>・・・ また、通信機器1と端末装置5との「通信」は、信号のやり取りを伴うものに限られない。例えば、発信部14が発した無線媒体を端末装置5がスキャン(単に届いたことだけを検知)するような動作も通信に含まれる。また、無線媒体は、電波以外の媒体、例えば超音波、可視光等であってもよい。また、発信部14は、機器側通信部11が兼ねていてもよい。」 エ しかしながら、前記段落【0015】の記載は「通信」を説明するものにすぎず、「無線媒体」の内容を何ら説明するものではないから、採用することができない。 なお、無線媒体が何の情報を含む必要がないとすれば、発信部14から発せられた無線媒体と、他の発信源から発せられた無線媒体とを区別することもできず、そもそも、発信部14が発した無線媒体を端末装置5が単に届いたことを検知することもできないから、主張の前提において失当である。 オ 以上検討のとおり、前記補正後の請求項1の「前記補正部が前記補正位置情報を生成したタイミング、および前記測位部が前記位置情報を生成したけれども当該位置情報の補正が必要でないとされたタイミングで、」「前記無線媒体を発する」の記載、及び前記補正後の請求項2の「前記補正部が前記補正位置情報を生成したタイミング、および前記測位部が前記位置情報を生成したけれども、当該位置情報の補正が必要でないとされ、かつ前記第二測位部が位置情報を生成したタイミングで、」「前記無線媒体を発する」の記載が、どのような内容の情報を発することを意味するのかが未だ明りょうでないから、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといわざるを得ない。 したがって、本願発明1~2、及び請求項1~2の記載を引用する本願発明3~4は明りょうでない。 (2) 理由1の(2)、(3)についての検討 これらの理由の関連性の高さに鑑みて、以下併せて検討する。 ア これらの理由に関して、令和8年3月23日に提出された手続補正書により補正された請求項1及び請求項2について検討すると、請求項1及び請求項2の記載は下記イ~オのとおり、未だ明りょうでない。 イ(ア) 前記(1)イ(ア)の補正により、請求項1においては「前記発信部は、前記補正部が一の前記補正位置情報を生成してから次の前記補正位置情報を生成するまでの間に前記測位部が前記位置情報を生成することとなった場合、当該位置情報の生成を契機として前記無線媒体を発する、」の記載が、「前記発信部は、前記補正部が前記補正位置情報を生成したタイミング、および前記測位部が前記位置情報を生成したけれども当該位置情報の補正が必要でないとされたタイミングで、前記無線媒体を発する、」と補正された。 (イ) 前記補正後の請求項1において、「前記測位部が前記位置情報を生成したけれども当該位置情報の補正が必要でないとされたタイミング」とあるが、「補正が必要でない」ことを特定する主体は何であるのか、また「補正が必要でない」とはどのような場合を指すのかが不明である。 請求項1においては、「前記位置情報の補正が必要である場合」や「当該位置情報の補正が必要でない」といった記載はあるものの、それらがどのような条件で決定されるかについて、何ら特定する記載は含まれていない。 (ウ) また、本願明細書の記載を参酌するに、本願明細書の記載全体を見ても、「補正が必要でない」ことに関して、具体的な説明は記載されていない。 a 本願明細書における「補正が必要である場合」に関する説明として、段落【0021】に次のような記載がある。 「【0021】 (補正部) 補正部135は、位置情報の補正が必要である場合に、位置情報および補正情報に基づいて、補正位置情報を生成する。補正位置情報は、通信機器1の補正後の位置を示す情報である。「位置情報の補正が必要である場合」には、例えば、以下の(1)、(2)の場合等が含まれる。(1)補正情報の内容が、新たに生成した位置情報と、現状の(例えば、第二サーバ4のデータベース422に記憶されている、または自身が直近に補正した)位置情報との間に差分があることを示している場合。(2)補正が不要な場合には補正情報を送信しない第一サーバ3から補正情報を取得した場合。補正部135は、補正位置情報の生成を繰り返し行う。補正部が補正位置情報の生成を繰り返す周期は、機器側測位部131が位置情報の生成を繰り返す周期よりも長くなる場合がある。」 前記記載における「位置情報の補正が必要である場合」の(1)、(2)は例示事項であるから、それ以外の場合を「補正が必要でない」場合と特定することはできない。仮にそのような場合を検討しようとしても、前記(1)の場合は「補正情報の内容が、・・・差分があることを示している場合。」をどのように決定するのかが不明である。唯一、「補正情報の内容」が補正値ゼロの場合を前記差分がないことを示している場合、すなわち「補正が必要でない」場合とし、それ以外の場合を「補正が必要である場合」と善解すれば、「補正が必要でない」場合を特定することができるが、補正値ゼロの場合とは「補正位置情報」と「位置情報」が同一となる場合であるから、「前記補正部が前記補正位置情報を生成したタイミング」と「前記測位部が前記位置情報を生成したけれども当該位置情報の補正が必要でないとされたタイミング」を区別して取り扱うことの技術的な意味は不明であるといわざるを得ない。 また、前記(2)の場合は、そもそも第一サーバにおいて「補正が不要な場合」がどのようにして決定されるのかも不明である。 b また、本願明細書には、「補正位置情報」ではなく、「位置情報の生成を契機として」「無線媒体を発する」実施例の説明として、段落【0025】の記載があることから、再掲の上、検討する。 「【0025】 なお、発信制御部137は、情報未生成時に機器側測位部131が位置情報を生成することとなった場合、当該位置情報の生成を契機として発信部14が無線媒体を発するよう、当該発信部14を制御するものであってもよい。情報未生成時は、補正部135が一の補正位置情報を生成してから次の補正位置情報を生成するまでの間の期間である。測位衛星Sが発した電波を用いた測位は、基準となる測位衛星Sの相対的な位置が変化しないため、この測位によって得られる位置情報は一定の信頼性を有する。このため、発信制御部137をこのように構成すれば、第二サーバ4は、補正位置情報が得られない期間ができた場合であっても、位置情報に基づいて、端末装置5の概ね正確な位置を算出することができる。」 前記記載からは、その技術的意義の理解は困難であるにせよ、形式的には「補正位置情報が得られない期間」において「位置情報の生成を契機として」「無線媒体を発する」ことが記載されているようにもみえる。 しかしながら、当該記載は「補正位置情報が得られない期間」において「無線媒体を発する」というものであって、「位置情報の補正が必要でないとされたタイミング」において「無線媒体を発する」ものでないから、前記段落【0025】の実施例の記載は、本願発明1を説明するものではない。 ウ(ア) 次に、前記(1)イ(ア)の補正により、請求項2においては「前記発信部は、前記測位部が前記位置情報を生成した場合であって、前記補正部が一の前記補正位置情報を生成してから次の前記補正位置情報を生成するまでの間に前記第二測位部が前記位置情報を生成することとなった場合、当該位置情報の生成を契機として前記無線媒体を発する、」の記載が、「前記発信部は、前記補正部が前記補正位置情報を生成したタイミング、および前記測位部が前記位置情報を生成したけれども、当該位置情報の補正が必要でないとされ、かつ前記第二測位部が位置情報を生成したタイミングで、前記無線媒体を発する、」と補正された。 (イ) 前記補正後の請求項2において、「前記測位部が前記位置情報を生成したけれども、当該位置情報の補正が必要でないとされ、かつ前記第二測位部が位置情報を生成したタイミング」とあるが、「補正が必要でない」ことを特定する主体は何であるのか、また「補正が必要でない」とはどのような場合を指すのかが不明である。 請求項2においては、「前記位置情報の補正が必要である場合」や「当該位置情報の補正が必要でない」といった記載はあるものの、それらがどのような条件で決定されるかは何ら特定する記載は含まれていない。 (ウ) また、そもそも「第二測位部」は「第三の通信方式で測位[する]」ものであるから、「第二の通信方式で測位[する]」「測位部」が生成する「位置情報」に基づいて「補正位置情報を生成する補正部」とは独立して動作するものと認められ、また「位置情報」及び「補正位置情報」と「第二測位部」の「位置情報」それぞれの精度についても何ら特定されていないのであるから、「前記測位部が前記位置情報を生成したけれども、当該位置情報の補正が必要でないとされ[る]」場合の「前記第二測位部が位置情報を生成したタイミング」を選択することに、どのような技術的意味があるのかも不明である。 (エ) また、前記イ(ウ)と同様に、本願明細書の記載全体を見ても、「補正が必要でない」ことに関して、具体的な説明は記載されていない。 なお、請求人が意見書において請求項2に係る補正の根拠として提示する段落【0026】を再掲すると、次のような記載がある。 「【0026】 また、発信制御部137は、情報未生成時に第二測位部132が位置情報を生成することとなった場合、当該位置情報の生成を契機として発信部14が無線媒体を発するよう、当該発信部14を制御するものであってもよい。基地局からの第二の電波を用いた測位は、基準となる基地局が動かないため、この測位によって得られる位置情報は一定の信頼性を有する。このため、発信制御部137をこのように構成すれば、第二サーバ4は、補正位置情報が得られない期間ができた場合であっても、位置情報に基づいて、端末装置5の概ね正確な位置を算出することができる。」 前記記載からは、その技術的意義の理解は困難であるにせよ、形式的には「情報未生成時(注:段落【0025】より、「情報未生成時」とは「補正部135が一の補正位置情報を生成してから次の補正位置情報を生成するまでの間の期間」のことである。)」において「第二測位部132が位置情報を生成」したことを契機として「無線媒体を発する」ことが記載されているようにもみえる。 しかしながら、当該記載は「情報未生成時」すなわち「補正部135が一の補正位置情報を生成してから次の補正位置情報を生成するまでの間の期間」に「無線媒体を発する」というものであって、「位置情報の補正が必要でないとされ[る]」タイミングで「無線媒体を発する」ものでないから、前記段落【0026】の記載は、本願発明2を説明するものではない。 (オ) また、意見書の「2.拒絶理由に対する意見」「2-1.理由1(特許法第36条第6項第2号違反)に対する意見」「(2)請求項2について」において、本件審判請求人は「発信部が「無線媒体を発する」のは、補正部が前記補正位置情報を生成したタイミング、および測位部が位置情報を生成したけれども、当該位置情報の補正が必要でないとされ、かつ第二測位部が位置情報を生成したタイミングであることが明確となった。」と主張しているが、前記(イ)~(ウ)において説示したように、「補正が必要でない」ことを特定する主体は何であるのか、また「補正が必要でない」とはどのような場合を指すのかが不明であるし、このようなタイミングの選択により、どのような技術的意味があるのかも不明である。 エ また、請求人は、位置情報の補正が必要でないとされる事項に関する技術常識の立証も何ら行っていない。 オ 以上検討のとおり、前記補正後の請求項1の「前記測位部が前記位置情報を生成したけれども当該位置情報の補正が必要でないとされたタイミング」、及び、前記補正後の請求項2の「前記測位部が前記位置情報を生成したけれども、当該位置情報の補正が必要でないとされ、かつ前記第二測位部が位置情報を生成したタイミング」が、どのような場合であって、いかなる技術的意味を有するのかは未だ明りょうでないから、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといわざるを得ない。 カ したがって、本願発明1~2、及び請求項1~2の記載を引用する本願発明3~4は明りょうでない。 5 むすび 以上検討のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-013652

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