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特許拒絶査定不服審判

2020-002392

複合部材の製造方法及び複合部材

審判番号
2020-002392
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-567882外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年02月21日
審決日
2020年12月14日
公報発行日
2021年02月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (B29C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017-567882「複合部材の製造方法及び複合部材」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月24日国際公開、WO2017/141381、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 13項目
【理 由】

第1 手続の経緯

本願は、2016年(平成28年)2月17日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 1年 8月30日付け:拒絶理由通知
令和 1年11月 5日  :意見書及び手続補正書の提出
令和 1年11月18日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 2年 2月21日  :審判請求書の提出

第2 原査定の理由の概要

原査定の理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1-9に係る発明は、以下の引用文献1-3に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧

1.特開2001-225346号公報

2.国際公開第2005/046957号

3.特開2012-11676号公報

第3 本願発明

本願の請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、令和1年11月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
母材と樹脂部材とを接合した複合部材の製造方法であって、
前記母材の表面に、マイクロオーダー又はナノオーダーの凹凸を形成する表面処理工程と、
前記表面処理工程により形成された前記凹凸を有する前記母材の表面に、前記樹脂部材を射出成形により直接接合する接合工程と、
続きを表示(全32行)
を備え、
前記表面処理工程において前記凹凸が形成された前記母材の表面の算術平均傾斜は、0.17~0.50である、複合部材の製造方法。
【請求項2】
母材と樹脂部材とを接合した複合部材の製造方法であって、
前記母材の表面に、マイクロオーダー又はナノオーダーの凹凸を形成する表面処理工程と、
前記表面処理工程により形成された前記凹凸を有する前記母材の表面に、前記樹脂部材を射出成形により直接接合する接合工程と、
を備え、
前記表面処理工程において前記凹凸が形成された前記母材の表面の二乗平均平方根傾斜は、0.27~0.60である、複合部材の製造方法。
【請求項3】
前記表面処理工程は、ブラスト加工により前記凹凸を形成する工程である請求項1又は2に記載の複合部材の製造方法。
【請求項4】
前記ブラスト加工における噴射圧力は、0.5~2.0MPaである請求項3に記載の複合部材の製造方法。
【請求項5】
前記ブラスト加工における噴射材の粒子径は、30~300μmである請求項3又は4に記載の複合部材の製造方法。
【請求項6】
前記母材の材料は、金属、ガラス、セラミックス又は樹脂である請求項1~5の何れか一項に記載の複合部材の製造方法。
【請求項7】
その表面にマイクロオーダー又はナノオーダーの凹凸を有する母材と、
前記母材の表面に直接接触する樹脂部材と、
を備え、
前記母材の表面の算術平均傾斜は、0.17~0.50である、複合部材。
【請求項8】
その表面にマイクロオーダー又はナノオーダーの凹凸を有する母材と、
前記母材の表面に直接接触する樹脂部材と、
を備え、
前記母材の表面の二乗平均平方根傾斜は、0.27~0.60である、複合部材。
【請求項9】
前記母材の材料は、金属、ガラス、セラミックス又は樹脂である請求項7又は8に記載の複合部材。」

第4 主な引用文献の記載事項等

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1.引用文献1の記載事項

引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線については、当審において付与した。

「【0016】実施例において、樹脂成形に用いたインサート金属部品の形状を図1に、この金属部品を射出成形用金型にインサートして熱可塑性樹脂で射出成形することにより得られた樹脂成形品の形状を図2に示す。また、上記樹脂成形品を使用して行なった気密性評価における試験装置の概略図を図3に示す。更に、実施例において、気密性の評価に用いた方法は以下の通りである。
(1) 気密性試験
評価用サンプルとして図2に示す樹脂成形品を使用し、図3に示す試験装置を用いて気密性の評価を行った。先ず、評価サンプルのセット方法は、耐圧気密容器の金属製容器部に樹脂成形品をゴム製Oリングを介してセットし、次に金属製上蓋部で樹脂成形品を挟み込むように固定する(容器部と上蓋部にはそれぞれ雄雌ネジが切ってあり、これにより固定する)。この耐圧気密容器を水槽に投入し、所望の圧力に達するまで圧縮エアーバルブを徐々に開放して耐圧気密容器内の圧力を上げていき、金属インサート部からのエアー漏れの有無を確認した。所定の圧力をかけて1分間の静置状態においてエアー漏れが無ければ、当該圧力下での気密性はOKと判定した。試験は0.1 MPa から開始し、OKであれば順次0.1MPa ずつ上げていき、最大0.6 MPa まで試験を行った。初期状態の気密性試験で0.6 MPa でOKであったサンプルについては、次に記す耐ヒートショック性試験を所定サイクル行った後、同様に気密性試験を実施した。なお、試験はn =5のサンプルで行った。
(2) 耐ヒートショック性試験
市販のヒートショック試験装置を使用し、(-50℃×2hr~150 ℃×2hr)を1サイクルとし、20サイクル毎に樹脂成形品を槽内から取り出して上記気密性試験を行い、耐ヒートショック性の評価とした。
実施例1
図1に示す形状の黄銅製のインサート部品に、市販の液体ホーニング装置を使用して、粒度が#220(中心粒径;44~74μm )のアルミナ研磨剤を濃度20%、ゲージ圧0.4 MPa の条件で吹き付け、粗化処理を行った。ここで、市販の表面粗さ計を使用し、日本工業規格(JIS)B0601に記載される方法に従い、粗化処理したインサート部品の表面粗さを測定した。測定結果は算術平均粗さ(Ra;単位μm )で表示した(表3)。
【0017】次に、このインサート部品を射出成形用金型にセットし、ガラス繊維30重量%(ここで、「重量%」は質量百分率のことを意味する。以下同じ)及び炭酸カルシウム30重量%を含有するポリフェニレンサルファイド樹脂を使用し、表1に示す成形条件にて射出成形を行い、図2に示す形状の評価用サンプルを得て、上記気密性試験を行った。結果を表3に示す。」
「【0021】
」

2.引用文献1に記載された発明

引用文献1の記載、特に実施例1についてみると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「黄銅製のインサート部品とポリフェニレンサルファイド樹脂とにより樹脂成形品を得る方法であって、
黄銅製のインサート部品について、その表面を算術平均粗さRaで1.92μmとなるように粗化処理を行う工程と、
上記粗化処理が施されたインサート部品を射出成形用金型にセットし、ポリフェニレンサルファイド樹脂を使用して射出成形を行う工程と、を備える、樹脂成形品を得る方法。」

第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「黄銅製のインサート部品」は、本願発明1の「母材」に相当し、以下同様に、「ポリフェニレンサルファイド樹脂」は「樹脂部材」に、「樹脂成形品」は「複合部材」に、それぞれ相当する。

引用発明においては、「黄銅製のインサート部品を射出成形用金型にセットし、ポリフェニレンサルファイド樹脂を使用して射出成形」しているものであるから、引用発明の「黄銅製のインサート部品」と「ポリフェニレンサルファイド樹脂」とは「接合」されているものである。

引用発明の「樹脂成形品を得る方法」は、本願発明1の「複合部材の製造方法」に相当する。

引用発明の「その表面を算術平均粗さRaで1.92μmとなるように粗化処理を行う工程」は、「黄銅製のインサート部品」の「表面」を「算術平均粗さRaで1.92μm」、すなわち「マイクロオーダーの凹凸」となるようにしているから、本願発明1の「マイクロオーダー又はナノオーダーの凹凸を形成する表面処理工程」に相当する。

引用発明の「上記粗化処理が施されたインサート部品を射出成形用金型にセットし、ポリフェニレンサルファイド樹脂を使用して射出成形を行う工程」は、本願発明1の「表面処理工程により形成された凹凸を有する母材の表面に、樹脂部材を射出成形により直接接合する接合工程」に相当する。

してみると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。

・一致点

「母材と樹脂部材とを接合した複合部材の製造方法であって、
前記母材の表面に、マイクロオーダー又はナノオーダーの凹凸を形成する表面処理工程と、
前記表面処理工程により形成された前記凹凸を有する前記母材の表面に、前記樹脂部材を射出成形により直接接合する接合工程と、を備えた複合部材の製造方法。」

・相違点

表面処理工程において凹凸が形成された母材の表面について、本願発明1は、「算術平均傾斜は、0.17~0.50である」と特定されるのに対し、引用発明は、「算術平均粗さRaで1.92μm」と特定するものであって、算術平均傾斜として特定されていない点。

(2)相違点についての判断

上記相違点について検討する。

引用文献1には、黄銅製のインサート部品の表面の粗さについて、算術平均粗さRaの記載があるものの、算術平均傾斜が0.17~0.50であることについて記載も示唆もされていない。また、算術平均粗さRaを算術平均傾斜に換算できることが、技術常識といえる根拠もない。そうすると、引用発明の黄銅製のインサート部品の表面が、算術平均傾斜としてどのような値となるのか不明である。

引用文献2の明細書第15ページ第3-6行には、インサート部材にショットブラスト処理を行うことで、樹脂との密着性を高める旨の記載があるものの、算術平均傾斜については記載がない。

引用文献3の【0032】には、加飾シート10の裏面をサンドブラスト処理する旨、【0063】には、加飾シート10の十点平均粗さRzJIS、算術平均粗さRaについて記載されているものの、算術平均傾斜については記載がない。

さらに、引用発明において、黄銅製のインサート部品の表面の算術平均傾斜を0.17~0.50とすることが設計的事項であるとする根拠もない。

そして、引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項からみて、本願発明1は、「実用的な剪断応力を大幅に上回」るという(本願明細書の【0053】)、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、引用文献1-3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2-9について

本願発明2-9についても、引用文献1-3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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