2020-000513
導電性基板、導電性基板の製造方法
- 審判番号
- 2020-000513
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-076163外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年01月15日
- 審決日
- 2021年01月08日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】住友金属鉱山株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 分類
- P18 .113-WY (H05K) / P18 .121-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第4項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月5日の出願であって、平成31年1月10日付け拒絶理由通知に対して同年3月15日に手続補正がなされ、令和1年5月24日付け拒絶理由通知に対して同年7月25日に手続補正がなされたが、同年10月4日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、令和2年1月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
本願の請求項1ないし4に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.理由2(特許法第29条第2項)について
本願の請求項1ないし4に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1. 特開2007-317782号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、補正前の請求項1ないし4に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第1銅層は、含有する結晶の結晶粒径が1μm以上2μm以下であり」について、さらに「X線回折パターンから、Scherrerの式により算出した」との事項を付加するものであり、補正前の請求項1ないし4に記載された発明と補正後の請求項1ないし4に記載された発明は産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
そして、「第4 本願発明」ないし「第6 対比・判断」に示すように、補正後の請求項1ないし4に係る発明は、独立して特許を受けることができるものであるから、特許法第17条の2第6項で準用する同法126条第7項の規定にも適合する。
また、当該「X線回折パターンから、Scherrerの式により算出した」という事項は、当初明細書の【0028】、【0051】、【0092】に記載されており、当該補正は当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
さらに、当該補正は特許法第17条の2第4項の規定に違反するところもない。
したがって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項の規定に違反するところはない。
第4 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和2年1月15日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】絶縁性基材と、前記絶縁性基材の少なくとも一方の面上に形成された第1銅層と、前記第1銅層上に第2銅層と、を有し、続きを表示(全15行)前記第1銅層は、X線回折パターンから、Scherrerの式により算出した含有する結晶の結晶粒径が1μm以上2μm以下であり、前記絶縁性基材が折り曲げ可能である導電性基板。【請求項2】前記絶縁性基材の材料は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリカーボネートから選択された1種以上の樹脂であり、前記絶縁性基材の厚さが12.5μm以上100μm以下である請求項1に記載の導電性基板。【請求項3】絶縁性基材の少なくとも一方の面上に、乾式めっき法により第1銅層を形成する第1銅層形成工程と、前記第1銅層上に、湿式めっき法により第2銅層を形成する第2銅層形成工程と、を有しており、前記第1銅層は、X線回折パターンから、Scherrerの式により算出した含有する結晶の結晶粒径が1μm以上2μm以下であり、前記絶縁性基材が折り曲げ可能である導電性基板の製造方法。【請求項4】前記絶縁性基材の材料は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリカーボネートから選択された1種以上の樹脂であり、前記絶縁性基材の厚さが12.5μm以上100μm以下である請求項3に記載の導電性基板の製造方法。」
第5 引用文献
1 原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付加した。)。
(1)「【0001】本発明は、耐屈折性を向上させた銅メッキ層を有する銅フレキシブル配線基板に関する。【背景技術】【0002】フレキシブル配線基板は、ハードディスクの読み書きヘッドやプリンターヘッドなどの屈曲性を必要とされる電子機器やデジタルカメラ内の屈折配線などに広く用いられている。フレキシブル配線基板には、電解銅箔や圧延銅箔をポリイミドフィルムに接着剤で接着した通称3層基板(銅層/接着剤層/絶縁性ベースフィルム層)と、ポリイミドフィルムにメッキ等で直接銅層を形成したメッキ基板もしくは銅箔に直接ポリイミドワニスを塗って絶縁層を形成したキャスト基板等の通称2層基板(銅層/絶縁性ベースフィルム層)の2種類がある。」
(2)「【0008】本発明は、表面に導電性を付与した銅メッキ2層メッキフレキシブル配線基板において、銅メッキ皮膜の結晶比が0.08~0.3になるようにメッキ皮膜中の結晶粒の大きさを制御することで、耐屈折性の良い2層フレキシブル配線基板を得ることを可能にするものである。具体的には基板となるポリイミド樹脂フィルム表面を導電化処理した後、銅メッキで銅メッキ皮膜厚が4~18μmの範囲で所望の厚さに銅メッキを行う。次に、メッキした基板をオーブン等の加熱装置で温度と加熱時間を調節し加熱処理を行い、熱処理後の銅メッキ皮膜断面の平均結晶粒径を測定し、平均結晶粒径と皮膜の厚さ結晶比が0.08~0.3になるように銅メッキ皮膜中の結晶粒径を制御すれば良く、熱処理条件もここで決定される。なお、本発明では結晶比で基板の耐屈折性が決定されるため、一度熱処理条件を決定すればメッキ厚を変えない限りメッキ皮膜の平均結晶粒径を測定する必要はない。【0009】前記絶縁性フィルム基材としてはポリイミド基板を使用することができる。さらに詳細について説明すると、絶縁性基材としてはフィルム状にした場合柔らかく、耐熱性、耐久性の良いポリイミド樹脂が良いが、熱処理温度と時間を適当に調整すれば他の樹脂でも良い。」
(3)「【0011】(実施例、比較例)次に、実施例及び比較例を用いて本発明を説明する。本実施例及び比較例では、厚さ38μmのポリイミドフィルムの表面に銅を厚さ0.2μmにスパッタして導電性を付与した銅-ポリイミド基板を用い、硫酸銅メッキ浴で市販の添加剤を用いて該銅-ポリイミド基板の銅スパッタ膜の表面に銅メッキを施し、銅メッキ層の層厚の異なる基板を作製した。銅メッキの条件はいずれもメッキ浴温度25℃、電流密度4A/dm2とし、時間を変えて厚さ8μmと10μmのメッキ層を形成した。次に、それぞれの基板を表1に示すように温度と時間を変えて熱処理した後、銅結晶の平均結晶粒径と銅メッキ層厚を測定し、これらの測定値から算出した結晶比と耐屈折回数を調べた。なお、平均結晶粒径および銅メッキ層厚は、通常の金属材料の結晶組織観察で行う断面研磨法を採用し、耐屈折回数はMIT耐折度試験で調べた。MIT耐折度試験条件は、R=0.38mm、荷重500g、屈折回転数175rpmでJIS-P-8115に準じて行った。図1に銅メッキ2層フレキシブル基板の断面構造と結晶比の求め方を説明する図を示す。また、図2に結晶比と耐屈折回数の関係を示す。」
(4)「【0015】【図1】断面構造と結晶比の求め方を説明する図である。【図2】結晶比と耐屈折回数の関係を示す図である。【符号の説明】【0016】1 絶縁性フレキシブル基材2 銅スパッタ膜3 銅メッキ層4 銅結晶粒 」
(5)「(当審注:図中「3」は「2」の誤記であり、「2」は「3」の誤記である。)」
(6)【表1】(【0012】)には、第4実施例の銅メッキ層の平均粒径(μm)が1.61であることが記載されている。
2 引用文献1の上記記載、図面及びこの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。
・上記(1)によれば、銅フレキシブル配線基板は、耐屈折性を向上させた銅メッキ層を有するものである。
・上記(3)ないし(5)によれば、銅フレキシブル配線基板は、絶縁性フレキシブル基材、銅スパッタ膜及び銅メッキ層から構成されるものである。
・上記(4)及び(5)によれば、絶縁性フレキシブル基材の表面に銅スパッタ膜が形成されているから、絶縁性フレキシブル基材が上記(3)の銅-ポリイミド基板におけるポリイミドフィルムを指すことは明らかである。
・上記(3)によれば、銅スパッタ膜は、ポリイミドフィルムの表面に銅をスパッタして形成したものである。
・上記(3)によれば、銅メッキ層は、銅スパッタ膜の表面に銅メッキを施して形成してたものである。
・上記(3)及び(6)によれば、銅メッキ層における銅結晶の平均結晶粒径は、通常の金属材料の結晶組織観察で行う断面研磨法による測定で1.61μmである。
3 以上によれば、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」)が記載されていると認められる。
「耐屈折性を向上させた銅メッキ層を有する銅フレキシブル配線基板であって、絶縁性フレキシブル基材、銅スパッタ層及び銅メッキ層から構成され、絶縁性フレキシブル基材はポリイミドフィルムであり、銅スパッタ層は、ポリイミドフィルムの表面に銅をスパッタして形成し、銅メッキ層は、銅スパッタ膜の表面に銅メッキを施して形成したものであり、銅メッキ層における銅結晶の平均結晶粒径は、通常の金属材料の結晶組織観察で行う断面研磨法による測定で1.61μmである、銅フレキシブル配線基板。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア.引用発明の「絶縁性フレキシブル基材」は本願発明1の「絶縁性基材」に相当する。
また、引用発明の「絶縁性フレキシブル基材」が折り曲げ可能であることは明白であり、本願発明1の「絶縁性基材が折り曲げ可能である」ことに相当する。
イ.引用発明の「銅スパッタ膜」は、絶縁性フレキシブル基材であるポリイミドフィルムの表面にスパッタして形成したものであり、本願発明1の「前記絶縁性基材の少なくとも一方の面上に形成された第1銅層」に相当する。
ウ.引用発明の「銅メッキ層」は、銅スパッタ膜の表面に銅メッキを施して形成するから、本願発明1の第1銅層上にある「第2銅層」に相当する。
ただし、本願発明1は「前記第1銅層は、X線回折パターンから、Scherrerの式により算出した含有する結晶の結晶粒径が1μm以上2μm以下であ」るのに対し、引用発明はその旨の特定がない点で相違する。
エ.引用発明の「絶縁性フレキシブル基材」、「銅スパッタ膜」及び「銅メッキ層」から構成される「銅フレキシブル配線基板」は、本願発明1の「導電性基板」に相当する。
上記アないしエによれば、本願発明1と引用発明とは、
「絶縁性基材と、前記絶縁性基材の少なくとも一方の面上に形成された第1銅層と、前記第1銅層上に第2銅層と、を有し、前記絶縁性基材が折り曲げ可能である導電性基板。」である点で一致し、
以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明1は「前記第1銅層は、X線回折パターンから、Scherrerの式により算出した含有する結晶の結晶粒径が1μm以上2μm以下であ」るのに対し、引用発明はその旨の特定がない点。
(2)相違点についての判断
ア.本願発明1と引用発明とでは、結晶粒径を測定値する箇所及び測定方法が異なっており、本願発明1が「第1銅層」の結晶粒径を「X線回折パターンから、Scherrerの式により算出」するのに対して、引用発明は「銅スパッタ膜」(本願発明1の「第1銅層」に相当)の上層に形成された「銅メッキ層」(本願発明1の「第2銅層」に相当)の結晶粒径を「金属材料の結晶組織観察で行う断面研磨法」により測定している。また、引用文献1には「銅メッキ層の顕微鏡組織写真を撮り図1のように任意の部分で線を引く・・・」(【0010】)と記載されているから、当該図1は実際の顕微鏡組織写真をもとに作成したものと認められるが、【表1】(【0012】)記載の各実施例は、銅スパッタ膜と銅メッキ層の各々の部分において結晶の分布や結晶粒径が全て図1のとおりであるかは定かでない。
そうすると、引用発明の「銅メッキ層の結晶粒径」が「断面研磨法による測定で1.61μm」(【表1】の第4実施例)であれば、銅メッキ層の下にある銅スパッタ膜が上記相違点の構成を奏する根拠はなく、引用発明の銅メッキ層における結晶粒径の測定値1.61μmがそのまま本願発明1の相違点に係る構成にはならない。
よって、相違点に係る構成は、実質的に引用文献1に記載されたものではなく、本願発明1は引用発明と同一であるとはいえない。
イ.本願発明1と引用文献1記載の発明はともに金属配線の耐屈折性を向上させることを課題にしているが、本願発明1は第1銅層の結晶粒径を特定することにより課題を解決している(【0025】-【0026】参照)のに対して、引用文献1記載の発明は銅メッキ層の銅結晶の平均結晶粒径(d)と銅メッキ層厚(t)との「比(d/t)」を特定することにより課題を解決している。したがって、引用文献1記載の発明は、既に別の手段で課題を解決しているのだから、本願発明1の構成に書かれている手段を組み合わせる動機がない。また、上記相違点の構成が周知であるとの証拠もなく、当業者にとって自明であるといえる合理的な理由もない。
よって、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし4について
本願発明1を引用する本願発明2、独立請求項の本願発明3、及び本願発明3を引用する本願発明4は、いずれも上記相違点で特定される事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明と同一といえるものではなく、また、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
1 理由1(特許法第29条第1項3号)について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし4は「前記第1銅層は、X線回折パターンから、Scherrerの式により算出した含有する結晶の結晶粒径が1μm以上2μm以下であ」るとの事項を有するものとなっており、上記「第6 1(2)ア.」で示したように、引用発明と同一であるとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。
2 理由2(特許法第29条第2項)について
同様に、審判請求時の補正により、本願発明1ないし4は「前記第1銅層は、X線回折パターンから、Scherrerの式により算出した含有する結晶の結晶粒径が1μm以上2μm以下であ」るとの事項を有するものとなっており、上記「第6 1(2)イ.」で示したように、当業者であっても、引用発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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