特許拒絶査定不服審判
2020-000233
溶融核燃料収納容器
- 審判番号
- 2020-000233
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-059427
- 請求日
- 2020年01月08日
- 審決日
- 2021年03月19日
- 公報発行日
- 2021年06月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
- 【請求人代理人】堀 城之
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬川 勝久
- 審判官 井上 博之
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P18 .121-WZ (G21F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 59427「溶融核燃料収納容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-180593〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月23日の出願であって、平成30年12月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、令和元年5月16日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、令和元年9月25日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は令和元年10月8日に請求人に送達された。これに対して、令和2年1月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日に手続補正書が提出され、その後、令和2年9月16日付けで当審から拒絶理由が通知され、これに対して、令和2年11月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~12に係る発明は、令和2年11月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである(下線部は補正箇所である。)。
「【請求項1】
溶融した核燃料である溶融核燃料を内部に収容する溶融核燃料収納容器であって、
下側が閉じ上側が開口された円筒形状の外殻部と、
前記外殻部の内部に収容され、下側が閉じ上側が開口され、前記溶融核燃料を内部に収容する円筒形状の内殻部と、
前記外殻部の内部に前記内殻部が収容された状態で、前記外殻部の内面と前記内殻部の外面との間に複数の粒子状の粒状体が粒体状態で充填されることによって形成された中性子吸収層と、
前記内殻部の内部に設けられ、水素を水に変換する反応を促進する脱水素触媒と、
を具備し、
前記粒状体が、中性子吸収断面積が100バーン以上である元素、又はその化合物を含む平均粒径が50μm~1000μmの微粒子の焼結体から構成され1mm~2mmのJISに規定される円相当径の平均値としての平均粒径を有し、
前記中性子吸収層に鬆を有さず、
かつ、小片状の複数の前記脱水素触媒が収容され前記内殻部の内部に臨む触媒室が、前記脱水素触媒の数の調整が可能に構成されたことを特徴とする溶融核燃料収納容器。」
第3 引用文献に記載された事項
1 引用文献1
(1)当審からの拒絶の理由に引用された、引用文献1である特開2000-275391号公報には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】使用済燃料を貯蔵又は輸送及び貯蔵する使用済燃料用キャスクにおいて、該キャスク内に使用済燃料を配列し収納するバスケット,キャスク本体を兼ねるγ線遮へい体,中性子遮へい体からなり、キャスク本体を兼ねるγ線遮へい体の内側かつバスケットの外側に中性子遮へい体を有することを特徴とする使用済燃料貯蔵キャスク。
【請求項2】請求項1に記載の使用済燃料用キャスクにおいて、中性子遮へい体が無機材料から構成され、中性子吸収効果の高い物質であるB,Cd,Hf,Ir,Hg及びR.E.(希土類元素)等を含む単体又は化合物からなり、例えば、中性子遮へい体の材料としては好適であるBの単体及び化合物としてB,BN,FeB,AlB2,BaB6,CeB6,CrB,CrB2,HfB2,LaB6,MgB2,MnB,MoB,NbB2,NiB,SiB4,TaB,TaB2,TiB2,VB2,WB,ZrB2,B2O3,BPO4,BP,B2S3,H3BO3等の無機材料から構成されることを特徴とする使用済燃料貯蔵キャスク。」
イ 「【0008】しかしながら、前記乾式貯蔵キャスクは、内部に収納した使用済燃料から発生する中性子線の遮へいのために高分子化合物を用いている。該中性子遮へい材は、形状変化及び重量減少を考慮して、遮へい機能が確保される制限温度として約150℃に制限されている。そのために、冷却期間の短いものや燃焼度の高い使用済燃料及びMOX燃料のような発熱量の大きな使用済燃料を貯蔵しようとした場合には、その貯蔵体数の増加を図ることが困難であった。」
ウ 「【0011】
【課題を解決するための手段】そこで、乾式貯蔵キャスクの構造として、中性子遮へい体を無機材料により構成し、かつ該中性子遮へい体をキャスク本体を兼ねるγ線遮へい体内部に設置することにより、キャスク本体にフィンのない構造とした、上記課題を解決する乾式貯蔵キャスクを提供する。」
エ 「【0013】
【発明の実施の形態】(第1実施例)本発明の一実施例を図1に示す。図1は本発明による使用済燃料貯蔵キャスクの垂直断面図である。使用済燃料が発する放射線のうち中性子線の遮へいについて、上部蓋部では内部に設けた遮へい体22を無機物質よりなる材料にて構成される構造となっている。側部では、使用済燃料が発する放射線のうち中性子線の遮へいについて、構造強度を有するγ遮へい体23の内部に設けた遮へい体22を無機物質よりなる材料にて構成される構造となっている。底部についても使用済燃料が発する放射線のうち中性子線の遮へいについて、構造強度を有するγ遮へい体23の内部に設けた遮へい体22を無機物質よりなる材料にて構成される構造となっている。」
オ 「【0025】(第4実施例)本発明の別の実施例を図5に示す。図5は本発明による使用済燃料を収納するバスケット6を角管型の形状とした場合の使用済燃料貯蔵キャスクの水平断面図である。使用済燃料が発する放射線のうち中性子線の遮へいについて、構造強度を有するγ遮へい体23の内部に設けた遮へい体22を無機物質よりなる材料にて構成される構造となっている。
【0026】上記構成の使用済燃料貯蔵キャスクにおいては、使用済燃料を収納するバスケット6を角管型の形状とした場合に、該バスケット6と使用済燃料より発するγ線の遮へい体23を兼ねる使用済燃料貯蔵キャスク構造体としての胴部との間隙部全てに、中性子の遮へい体22として400℃程度の高温でも耐久性があり、かつ高温中性子吸収効果の高い無機材料を充填することにより、使用済燃料より発する放射線を効果的に遮へいする構造となっている。この場合中性子の遮へい体の材料として、中性子吸収効果の高い物質であるB,Cd,Hf,Ir,Hg及びR.E.(希土類元素)等を含む単体又は化合物からなる。例えば、B4C はBWR炉心の制御棒の材料に用いられた実績があるため、本発明で用いる中性子遮へい体の材料としては好適である。B4C を用いた場合の該物質の形状は、粉末或いは焼結体のいずれでも良い。
【0027】上記構成の使用済燃料貯蔵キャスクは、従来中性子遮へい体としては高分子化合物が用いられていたが、形状変化及び重量減少を考慮して遮へい機能が維持される制限温度として約150℃程度までの温度しか許容されなかったが、中性子遮へい体として上記のような無機材料を用いることにより、400℃程度の高温でも使用可能であり、高温耐久性を著しく改善する。また、同時に従来の構造の使用済燃料貯蔵キャスクは使用済燃料を収納するバスケットと使用済燃料より発するγ線の遮へい体を兼ねる使用済燃料貯蔵キャスク構造体としての胴部との間隙部にはHeガスが充填され、Heガスの放射・伝熱効果により、使用済燃料が発する崩壊熱を使用済燃料貯蔵キャスク外表面へ逃すことにより、使用済燃料の除熱を行っていたが、本発明によれば、従来の使用済燃料キャスクに充填されたHeの替りに中性子遮へい体として例えばB4C の焼結体をバスケットと使用済燃料より発するγ線の遮へい体23を兼ねる使用済燃料貯蔵キャスク構造体としての胴部との間隙部全てに充填することにより、B4C の熱伝導度はHeに比べて約100倍程度高いために大幅な除熱効果の向上が図れる。なお、本発明の使用済燃料貯蔵キャスクでは、構造強度を持つγ遮へい体23の内側に中性子遮へい体22があるために、落下時のような場合においても中性子遮へい体の損失がしがたい構造を有する。別の効果として、トラニオン部へも中性子遮へい体を均一に充填することができる。」
カ 「【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば使用済燃料の収納体数の増加が図れ、構造の簡素化が図られた安価な使用済燃料貯蔵キャスクが提供出来る。」
キ 上記オの記載を参酌しつつ、図5から、γ線の遮へい体23は円筒形状であることが看て取れる。
(2)引用発明
上記(1)からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「使用済燃料を貯蔵又は輸送及び貯蔵する使用済燃料用キャスクにおいて、該キャスク内に使用済燃料を配列し収納するバスケット,キャスク本体を兼ねるγ線遮へい体,中性子遮へい体からなり、キャスク本体を兼ねるγ線遮へい体の内側かつバスケットの外側に中性子遮へい体を有し、(【請求項1】)
使用済燃料を収納するバスケット6を角管型の形状とし、(【0025】)
該バスケット6と使用済燃料より発するγ線の遮へい体23を兼ねる使用済燃料貯蔵キャスク構造体としての胴部との間隙部全てに、中性子の遮へい体22として400℃程度の高温でも耐久性があり、かつ高温中性子吸収効果の高い無機材料を充填することにより、使用済燃料より発する放射線を効果的に遮へいする構造となっており、該中性子遮へい体の材料としてB4Cを用いており、B4C を用いた場合の該物質の形状は、粉末或いは焼結体のいずれでも良く、(【0026】)
γ線の遮へい体23は円筒形状である、(上記キ)
使用済燃料用キャスク。」
2 引用文献2
当審からの拒絶の理由に引用された、引用文献2である「燃料デブリ収納・移送・保管技術開発(平成25年度実績概要),技術研究組合 国際廃炉研究開発機構,2014年6月27日[online]<URL: https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/140627/140627_01_039.pdf>」には、以下の事項が記載されている。
ア 「1.全体計画」、「1.2「燃料デブリ収納・移送・保管技術開発」の目的と目標」」「【本研究の前提条件】」、
「燃料デブリの輸送や保管方法として、収納缶に収容することで、使用済み燃料の輸送や貯蔵で実績ある方法(金属キャスク等)がそのまま適用できることを前提とする。」(p.2)
イ 「2.H25年度実施結果」、「2.2 破損燃料移送・保管に関する調査」、「破損燃料移送・保管に関する調査結果の概要」の表の「基本的な安全設計」、「閉込め」の行、「TMI-2事例(燃料デブリ移送)」の列、
「収納缶の移送容器(キャスク)は密封構造とし、水素再結合触媒で水素発生量を管理した。」(p.7)
3 引用文献3
当審からの拒絶の理由に引用された、引用文献3である国際公開第2015/008370号には、以下の事項が記載されている。
「[0045]本実施例3では、中性子吸収ガラスとB4Cの複合化を検討した。中性子吸収ガラスとB4Cの粉末を混合し、金型で成形し、低酸素雰囲気中で加熱することによって図2で示した中性子吸収材料の焼結体を作製した。低酸素雰囲気中で加熱する理由は、B4Cの酸化を少しでも抑制、防止するためである。中性子吸収ガラスとしては、表2で示した実施例A-14のガラスを用い、スタンプミルとジェットミルによって30μm以下に粉砕した。B4Cは150μm以下の市販の粉末を用いた。実施例A-14の中性子吸収ガラス粉末を25体積%、B4C粉末を75体積%の割合で配合、混合し、金型を用いて1トン/cm2の条件で直径5mm、厚み5mmの円柱状の成形体を多数作製した。これらの成形体を低酸素雰囲気中のトンネル炉に流し、約800℃で実施例A-14のガラス粉末を軟化流動させることによって中性子吸収材料の焼結体を作製した。得られた焼結体は、10~20%程度体積収縮していた。」
4 引用文献4
当審からの拒絶の理由に引用された、引用文献4である特開2014-109485号公報には、以下の事項が記載されている。
「【0071】
(実施例1)(ガドリニア粒子の粒子状中性子吸収材)
中性子吸収材として、以下のようにして粒状のガドリニアを製造した。増粘剤(商品名ポバール、クラレ(株)製)15gを添加した水溶液220mLにガドリニア粉末を100gを溶解して滴下原液を調製した。この滴下原液をアセトン中に滴下して粗ガドリニア粒子を生成した。生成した粗ガドリニア粒子を集め、洗浄し、乾燥し、次いで1150℃で焼結することによりガドリニア粒子を得た。得られたガドリニア粒子の平均粒径は0.9mmであり、密度は6.7g/cm3であった。得られたガドリニア粒子を図1に示した。図1に示される容器の中に収容されている白っぽい粒子がガドリニア粒子である。このガドリニア粒子をこの発明に係る粒子状中性子吸収材として使用することができる。」
5 引用文献5
当審からの拒絶の理由に引用された、引用文献5である荒川政文、「粉体の粒度と充填性」,粉体および粉末冶金,第15巻第2号,pp.55-61,1968年3月25日には、以下の事項が記載されている。
ア 「2.粉体の粒度と見かけ密度
粉体がこまかくなるほど見かけ密度が小さく,かさ高くなることは経験的によく知られている.この現象を定量的に取り扱ったものとして有名なRollerの実験がある。彼は4種の工業粉体について,その粒度と空隙容積VEの関係を調べて次のような実験式を得ている.
Dは粒子径,Dcは試料と充填方法によって定まる限界粒子径で,(1)式はDc以上の大きな粒子からなる粉体では常に一定の充填容積を与 えることを示している.しかし,Dc以下の粒子では粒子径が小さいほどVEは大になる.」(p.55左欄)
イ Fig.2は以下のとおりである。(p.56左欄)
6 引用文献7
当審からの拒絶の理由に引用された、引用文献7である特開2002-286893号公報には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放射性廃棄物処理方法に関し、特に放射性廃棄物を容器内に収納し、セメントで固化させた放射性廃棄物処理方法に関する。」
イ 「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係わる水素除去方法を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】図1は、本発明に係わる水素除去方法を示す概念図である。
【0016】図1において、金属廃棄物100がドラム缶110に収納されると共に、モルタルセメント120で固化され、固化体130を形成している。
【0017】そして、触媒150は、蓋140に設置された茶漉し状のSUS製の金網160に収納されている。
【0018】ここで触媒としては、水素の酸化触媒であるPd-アルミナ、Pt-アルミナ、疎水性担体に担持したPtなど、常温で水素を水に転換させる触媒を用いる。」
ウ 図1は以下のとおりである。
第4 対比、判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「使用済燃料を貯蔵又は輸送及び貯蔵する使用済燃料用キャスク」は、本願発明の「溶融した核燃料である溶融核燃料を内部に収容する溶融核燃料収納容器」と、「核燃料を内部に収容する核燃料収納容器」である点で、一致する。
(2)引用発明の「キャスク本体を兼ねるγ線遮へい体」は、「円筒形状であ」り、下側が閉じ上側が開口された容器状の形状であることは明らかであるから、本願発明の「下側が閉じ上側が開口された円筒形状の外殻部」に相当する。
(3)引用発明の「該キャスク内に使用済燃料を配列し収納するバスケット」は、内部に燃料を収納するので下側が閉じ上側が開口された容器状の形状であることは明らかであるから、本願発明の「外殻部の内部に収容され、下側が閉じ上側が開口され、前記溶融核燃料を内部に収容する円筒形状の内殻部」と、「外殻部の内部に収容され、下側が閉じ上側が開口され」、「核燃料を内部に収容する内殻部」である点で一致する。
(4)引用発明において「該バスケット6と使用済燃料より発するγ線の遮へい体23を兼ねる使用済燃料貯蔵キャスク構造体としての胴部との間隙部全てに、中性子の遮へい体22として400℃程度の高温でも耐久性があり、かつ高温中性子吸収効果の高い無機材料を充填することにより、使用済燃料より発する放射線を効果的に遮へいする構造となっており、該中性子遮へい体の材料としてB4Cを用いており、B4C を用いた場合の該物質の形状は、粉末或いは焼結体のいずれでも良い」から、引用発明の「中性子遮へい体」は、本願発明の「粒状体」に相当し、引用発明の上記構成は、本願発明の「前記外殻部の内部に前記内殻部が収容された状態で、前記外殻部の内面と前記内殻部の外面との間に複数の粒子状の粒状体が粒体状態で充填されることによって形成された中性子吸収層」との構成を有する。
(5)したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点1-5がある。
(一致点)
「核燃料を内部に収容する核燃料収納容器であって、
下側が閉じ上側が開口された円筒形状の外殻部と、
前記外殻部の内部に収容され、下側が閉じ上側が開口され、前記核燃料を内部に収容する内殻部と、
前記外殻部の内部に前記内殻部が収容された状態で、前記外殻部の内面と前記内殻部の外面との間に複数の粒子状の粒状体が粒体状態で充填されることによって形成された中性子吸収層と、
を具備する、
核燃料収納容器。」
(相違点1)
核燃料について、本願発明は「溶融した核燃料である溶融核燃料」であるのに対し、引用発明は「使用済燃料」である点。
(相違点2)
本願発明は「前記内殻部の内部に設けられ、水素を水に変換する反応を促進する脱水素触媒」を具備し、「小片状の複数の前記脱水素触媒が収容され前記内殻部の内部に臨む触媒室が、前記脱水素触媒の数の調整が可能に構成され」ているのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。
(相違点3)
粒状体について、本願発明は「中性子吸収断面積が100バーン以上である元素、又はその化合物を含む平均粒径が50μm~1000μmの微粒子の焼結体から構成され1mm~2mmのJISに規定される円相当径の平均値としての平均粒径を有する」のに対し、引用発明は「B4Cを用いて」いる点。
(相違点4)
内殻部について、本願発明は「円筒形状」であるのに対し、引用発明は、角管型の形状である点。
(相違点5)
中性子吸収層について、本願発明は「鬆を有さ」ないのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。
2 判断
(1)相違点1について
引用文献2には、「燃料デブリの輸送や保管方法として、収納缶に収容することで、使用済み燃料の輸送や貯蔵で実績ある方法(金属キャスク等)がそのまま適用できること」が記載されており、当該記載事項を、引用発明に適用して、引用発明のキャスクをデブリの容器に転用し、相違点1に係る本願発明の構成のようにすることは当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。
(2)相違点2について
引用文献2には、TMI-2事例(燃料デブリ移送)での閉じ込めにおける基本的な安全設計として「水素再結合触媒で水素発生量を管理」することが記載されており、引用発明の「使用済燃料貯蔵キャスク」においても、「溶融核燃料の収納容器」として用いる際に「水素再結合触媒」を配置することは当業者であれば容易に想到し得たものである。
そして、「水素再結合触媒」を配置する位置として、引用文献7に記載されているような蓋部に設けられた茶漉し状の金網状のもの(触媒室に相当)に触媒を配置するようにし、「内殻部の内部に臨む触媒室」を設けることも格別の事項ではない。また、触媒室を設ける際に、触媒室のサイズの範囲内で触媒の数量の調整が可能であることは自明であり、相違点2に係る「脱水素触媒の数の調整が可能に構成され」る点は、触媒室を設けることにより自ずと満たされる事項にすぎない。
(3)相違点3について
B4C微粒子を50~1000μm程度のサイズとすることは、引用文献3に「150μm以下の市販の粉末を用いた」と記載されているように格別な数値ではなく、また、中性子吸収体として、数mm程度の粒状体を用いることも、引用文献4に「ガドリニア粒子の平均粒径は0.9mmであり」、引用文献3に「直径5mm、厚み5mmの円柱状の成形体を多数作製した」と記載されているように格別な数値とは言えず、粒状体をどの程度のサイズとするかは、引用文献5に記載されたような粒子のサイズと充填の効率性を考慮して、当業者が適宜設定しうる設計事項にすぎない。さらに、本願発明の上記数値限定には格別の臨界的意義は認められない。
また、引用発明では、粒状体として「B4C」を用いていることから、中性子吸収断面積が100バーンである蓋然性がきわめて高く、仮にそうでないとしても、その程度の中性子吸収断面積とすることは、当業者が適宜設定しうる設計事項にすぎない。
(4)相違点4について
一般的に、収納される材料の形状に応じて、収納体の形状を変えることは、通常行われる事項であるところ、上記(1)で説示したように、引用発明のキャスクをデブリの容器に転用する場合には、デブリの形状に合わせて収納体の形状を変える動機付けはあるといえる。
そして、引用発明において、収納体にあたるバスケット6は角管型の形状であるものの、収納体の形状として円筒形状はきわめて一般的な形状であり、また、引用発明のγ線の遮へい体23も円筒形状であることから、上記した動機付けのもと、引用発明のバスケットを円筒形状とすることは当業者が容易に想到しうる事項にすぎない。
(5)相違点5について
本願発明の「鬆を有さ」ないとの限定は、本願明細書の「【0022】・・・内筒20の外側面と外筒10の内側面との間に中性子吸収層30を形成する際に、中性子吸収層30を空隙(鬆)を発生させずに形成することが困難である。・・・【0023】・・・粒状体30Pの平均粒径が上記の範囲よりも小さな場合には、中性子吸収層30に空隙(鬆)が発生しやすくなる。一方、粒状体30Pの平均粒径が上記の範囲よりも大きな場合には、隣接する粒状体30P間に形成される空間が広くなるために、中性子吸収能力が低下する。この平均粒径のより好ましい範囲は1mm~2mmである。平均粒径は、攪拌の条件やその際の粘度の調整等によって設定できる。」の記載などを参酌すると、全く隙間がないという意味ではなく、一定程度の隙間がないようにするという意味であると解される。
しかしながら、具体的な隙間のサイズ等について限定されていないため、上記限定は、実質的な限定とはいえず、相違点5は実質的な相違点でない。
あるいは、一定程度の限定と見なせるとしても、引用発明は、「該バスケット6と使用済燃料より発するγ線の遮へい体23を兼ねる使用済燃料貯蔵キャスク構造体としての胴部との間隙部全てに、中性子の遮へい体22として・・・高温中性子吸収効果の高い無機材料を充填する」ものであるから、一定程度の隙間がないようにしていることは明らかであり、引用発明においても鬆を有さないということができ、そのような観点から、相違点5は実質的な相違点とはいえない。
3 作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2-5、7に記載された事項から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。
4 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2-5、7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2-5、7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-000233